1. 奥さんのヘソクリ
亡くなったのは老人ホームに入所していた９９歳の女性でした。 独身でお子さんは無く、故人様の兄弟もすでに他界。
時々面会に行き面倒をみていた姪にあたる方とそのご主人が施主を務める事になり、打ち合わせを始めました。
最初はご主人の方が話し始めて、「もう高齢で家族も友人もいないし、そんなに予算を掛けられないので火葬だけでいい。」
そんなご希望でしたので、火葬だけ行う設定で見積もりを出していったのですが・・・
暫く成り行きを見ていた奥様（故人の姪）が「若い頃に随分お世話になったから最期はチャンと送ってあげたいの。」と一言！
そんな訳で奥様のご希望により、お寺さんも呼んで・戒名もいただいて・祭壇はキレイなお花のタイプにして・料理はコレにして・・・
と、横で文句を付けながら心配しているご主人をよそに予算がどんどん増えていく！ 総額１００万ほどになってしまいました。
「気持ちは分かるけど、こんなに無理だろ～！」と言い出したご主人に奥様は「大丈夫。これくらいなら何とかなるから。」とアッサリ！
ご主人： 「え！ そんな金あるのか！？」
奥様（姪）：「これくらいなら私のヘソクリで何とかなるから大丈夫ヨ♪」
ご主人： 「えええ～～～っ !!! ヘソクリなんてあるのか、お前！！！」
奥様（姪）：「当たり前じゃない！ 何があるか分かんないんだから、それくらいチャンとあるわよ。」
愕然としているご主人はそっちのけになりまして・・・ その後の打ち合わせは全て奥様と進める事に。
我にかえったご主人は葬儀の事なんてドッカ行っちゃって奥様のヘソクリに興味津々！
・・・「すごいなぁお前。いつのまにヘソクリなんてしてたんだ？」
・・・「おい、いったいイクラあるんだ？ 女ってのは怖いなぁ～！」
と、このご主人、あまりにもうるさくきいて奥様に「みっともないからヤメテッ！」と叱られてました。（笑）
故人様はお子さんのいない方でしたから、兄弟の子供である甥や姪をとても可愛がっていたんでしょうね。
奥様（姪）のご希望通り、シッカリとした仏式でキレイな花祭壇での葬儀となりました。
祭壇の花は全て棺に納められ故人様がたくさんの花に囲まれている様子を見て、奥様（姪）は嬉しそうに涙を流していらっしゃいました。
９９歳といえば大往生です。 でも、ご主人も子供もいなくて甥や姪に見送られる・というと寂しい葬儀に聞こえてしまいそうですが、
そんな事はありません！ とっても温かくて楽しい葬儀となりました。
この方のように、たとえ結婚していなくて子供や孫がいなかったとしても温かい気持ちで幸せな最期を見送ってもらえる・・・
そんな生き方をしたいものです。
2011 お葬式相談センターくにたち 杉村由佳