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2・正式よりも大切な事
- 1. 正式よりも大切な
正式よりも大切な事
よりも大切
大正生まれの90代の女性が亡くなりました。 喪主は一人息子・・・独身!
最後は施設に入所されて亡くなったのですが、優しい息子さんは毎週末必ず面会に通っていたそうです。
そして、お元気だった頃にはしょっちゅう説教されていたそうです。(笑) 息子さんのことが心配だったんでしょうね。
ご納棺は喪主様とご親戚2人と私の4人で行いました。
その時喪主様が「母から棺に入れるように頼まれた物があるんですけど・・・。」と大きな紙袋を出してきました。
喪主様も母親が危篤となった時に初めて中を見たんだそうですが、中には丁寧に手縫いされた死装束が準備されていました。
白地に青いカスリ模様の入った生地で作られた着物。 白い鼻緒の付いた草履。 首から下げるズタ袋。 額に付ける天冠もありました!
昔 死装束はご家族が手縫いして準備する風習もあったそうですから、息子さんの事を心配してご自分で用意していたんでしょうね。
そして、袋の中には他にも色々入っていて・・・その中に、戒名らしきものが書かれた紙が見つかりました。
今回、菩提寺さんが無いので遠い親戚のお坊さんに来ていただいて戒名をいただき読経もしていただくことになっていたので、
すぐに連絡をして調べていただきました。 すると・・・残念ながらそれは正式な戒名では無い事が分かりました。
でも、お母様はそんな事知らなかったかもしれません。 息子さんも何とかこの名前で送ってやれないか・・・と・・・。
お坊さんも快く承諾してくださり、そのお名前を使ってお勤めをしてくださいました。
自分にもしもの事があったときに息子が困らないように・・・と母親が準備した死装束やお名前。
生前息子さんに「これを棺に入れるように。それだけでいいから。」と言っていたそうです。
死装束もお名前も、正式なものではありませんでしたが・・・
息子さんは、母親の希望を叶えられた事・言い付けをキチンと守れた事に安心していらっしゃいました。
時には たとえ正式では無いとしても、それよりもずっと大切な事もあります。
故人様は、息子さんのために縫い上げたご自分の死装束を身に付け、用意した名前を持って旅立たれました。
母親が施設に入所して数年・・・息子さんはずっと一人暮らしをしてきたので、これからも普段の生活には特に変わりは無いそうです。
でも、「毎週末の予定が亡くなってしまったなぁ~・・・。」と、寂しそうに言っていました。
2011 お葬式相談センターくにたち 杉村由佳