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有限責任監査法人トーマツ
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境及びトレンド
とトランジション・ファイナンスの今後の需要
講演資料
2022年 5月 27日
目次
1.サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド P.3
2.トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 P.21
3.トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには P.34
4.質疑応答 P.55
5.APPENDIX P.57
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
1.サステナビリティ活動を取り巻く
外部環境・トレンド
3 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
4
インベストメントチェーンから見た公益活動コンセプトの位置付け
公益活動のコンセプトは、インベストメントチェーンの中におけるステークホルダーの問題意識
によってそれぞれ位置付けが異なります
銀行 企業
国民
(年金受給
者)
融資
投資 リターン
賛同/反対
価値創造
投資
リターン
リターン
運用機関
アセット
オーナー
(公的年金
(GPIF等)、
企業年金等)
リターン
投資
リターン
投資
企業は持続可能な社
会に貢献しているか?
企業は地域社会への
責任を果たしているか?
企業は社会的価値を
生めているか?
投資は“正しく”
使われているか?
投資は期待通り
に回収できるか?
投資は期待通り
に回収できるか?
投資は“正しく”
使われているか?
ESG
SDGs
CSR
CSV
ESG
気候変動
リスク
気候変動
リスク
融資は期待通り
に回収できるか?
気候変動
リスク
問題意識
コンセプト
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
5
各公益活動コンセプトの普及・発展段階
公益活動コンセプトは普及・発展プロセスにおいて各々位置付けが異なるが、金融業界を
中心に国際的に取組が順守されているという点で、 TCFDは比較的先進的な概念です
※但し、公害や金融危機などの突発的で緊急対応を要する社会問題については、上記の発展プロセスを経ず当初から業界ルールや法律が形成される場合も存在する
評
価
方
法
一部の機関・有識者・著
名人が提唱する、問題提
起や行動の呼びかけであ
り、特定の団体や業界で
の合意にまで至っていない
もの
金融やその他一部の産
業セクターの中で認知さ
れ、取組の必要性につい
て合意がなされているもの
特定業界のみならず広く
世間・他業界の企業にも
認知され活動に組み入れ
られているもの
順守に拘束力があり、違
反時には法的根拠を持っ
てペナルティが適用される
もの
ペナルティは存在しないも
のの、効率的な社会活
動・ビジネスの推進のため
に順守が当然とみなされ
ているもの
概
要
法律
業界ルール
業界慣習
合意事項
課題意識
CSR
公益活動コンセプトの普及・発展プロセス
CSV
SDGs
ESG TCFD
具
体
例
慣習・民間団体の個別の指標・指針に従い価値付け 国内・海外の共通の基準に基づき価値付け
炭素税
公益活動
コンセプト
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
6
公益活動コンセプトの概念整理
ESG/SDGsは社会的責任を果たす上でのコンセプトであったCSR・CSV・気候変動リスクと比
較し、具体的な評価軸や達成目標・評価指標を提供している点で新しい概念といえます
導
入
背
景
創
出
価
値
位
置
付
け
取
組
主
体
 1990年代に多国籍企業
の引き起こす社会・環境・
経済的問題に対する世の
中からの批判に応える形
で企業の社会的責任
(CSR)を果たす取り組
みで導入され始める
企業が本業を通じて社会貢
献活動を行うものであり、利
益創出よりも社会貢献価値
の創出に軸足を置く
CSR
企業が社会的責任を果たす
上でのコンセプト
外部
要請
対応
付加
価値
創出
企業
投資
家
公的
機関
 2011年マイケル・ポーター
教授が「事業を通じた社
会的課題解決」を提唱し
認知される
 CSRの経済的価値と社会
的価値の二律背反を否
定し、両者を統合した点
で画期的
事業を通じて社会的課題解
決を目指すものであり、利益
創出と社会貢献の両立を志
向する
CSV
企業活動の経済的価値と社
会的価値両立のためのコンセ
プト
外部
要請
対応
付加
価値
創出
企業
投資
家
公的
機関
 2006年に国連のコフィ・ア
ナン氏が長期的に環境・
社会に配慮した投資を宣
言し始まる
 宣言に同意した投資家は
「責任投資原則(PRI)」
に署名し、ESG投資家とし
て登録される
投資活動を通じて企業の環
境・社会への負の影響を抑
制し、事業の存続を目指すも
の。最終目的は株主価値の
向上に置かれる
ESG
投資家の意思決定にあたって
の企業活動の評価軸
外部
要請
対応
付加
価値
創出
企業
投資
家
公的
機関
 2015年に国連の「持続可
能な開発サミット」で新た
な持続可能な開発アジェ
ンダが採択されたことによ
り開始
 定性的であったMDGsの反
省から具体的な評価指
標を設定
企業の事業活動を通じて17
の項目と169のターゲット、
244の具体的な評価指標を
用いて、社会的課題の解決
に軸足を置く
SDGs
個別企業の公益活動におけ
る 達成目標・評価指標
外部
要請
対応
付加
価値
創出
企業
投資
家
公的
機関
 気候変動のリスクにさらさ
れる資産の評価と配分を
金融セクターが適切に行う
ため、FSBによって、事業会
社が抱える気候変動のリ
スクと機会の評価の枠組
の構築のためTCFDが設立
される
気候変動領域に限定し、そ
のインパクト算定とその対処、
及び開示・投資家との対話を
志向する
気候変動リスク
気候変動が生じた場合の金
融市場の安定を目的として
算出される
外部
要請
対応
付加
価値
創出
企業
投資
家
公的
機関
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
社会の意識変革
生活者および投資家の公益活動や地球環境へ配慮した事業活動に対する意識は年々
大きく伸びており、行政も消費者の意識変革に伴う企業の行動変容を促しています
従業員は企業に対するESGへの取り組みに関して、とても関心が高くアクションを求めている
従業員は投資家の次に気候変動に対する企業アクションを促す存在なっている
「長時間労働」・「キャリアアップ」から「ワークライフバランスを保った働き方」に就業意識の軸が変化
しており、企業選択の大きな理由の一つになりつつある
透明性の低い企業で働きたくないという従業員が多く、透明性の高さが求められている
従業員
生活者のSDGs/気候変動への認知は年々大きく伸びている
企業の事業運営上の地球環境への配慮や責任ある行動への関心が高い
購買行動の際にも「社会課題への解決姿勢」や「企業のビジョン・価値観」を重視する消費者の方が継続
購入や他者への紹介を積極的に行っている
消費者
国内でも、投資をする際に「企業のESGに対する取組を考慮する」の回答率が一年間で約6割から約8割に
増加
海外では、投資家が株式分野でのESG投資になじみ、債券や不動産にもESG意識が浸透してきている
投資家
出所:企業広報戦略研究所 『 2020年度ESG/SDGs に関する意識調査 』、日経ESG報道
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
7
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
ESG認知率
国内の生活者の公益活動の認知率は急激に伸びており、特に20代男性、50代男性の
認知率が高い傾向にあります
SDGs認知率
1.5
1.7
2.0
2.6
3.8
5.5
7.3
7.2
10.0
13.3
14.8
11.3
13.8
12.4
15.7
19.3
24.7
20.6
20.8
28.4
83.7
87.0
84.2
85.0
80.5
75.1
68.0
72.2
69.2
58.4
6.4
6.4
9.2
9.5
15.1
11.3
17.9
17.0
20.1
27.2
19.3
20.1
21.2
21.1
26.2
27.8
30.3
29.6
27.9
34.5
74.3
73.5
69.6
69.4
58.7
60.9
51.8
53.4
52.0
38.3
4.2
5.5
14.1
18.2
81.7
76.3
7.1
14.0
17.1
25.8
75.8
60.2
認知率
23.7
18.3
認知率
39.8
24.2
詳しく知っている 聞いたことはある 知らない 詳しく知っている 聞いたことはある 知らない
男性20代
男性30代
女性60代
女性50代
女性40代
女性30代
女性20代
男性60代
男性50代
男性40代
男性20代
男性30代
女性60代
女性50代
女性40代
女性30代
女性20代
男性60代
男性50代
男性40代
(%) (%)
41.6
30.8
16.3
13.0
15.8
15.0
19.5
24.9
32.0
27.8
61.7
48.0
25.7
26.5
30.5
30.7
41.3
39.1
48.2
46.6
(%) (%)
出所:企業広報戦略研究所 『2019年度ESG/SDGs に関する意識調査 』、 『2020年度ESG/SDGs に関する意識調査 』
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
8
2020年
(n=10500)
2019年
(n=10500)
2020年
(n=10500)
2019年
(n=10500)
従業員
消費者
投資家
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
9
地球温暖化/気候変動の認知・関心及び行動変化
地球温暖化や気候変動問題への関心度は20代で約5割、60代では8割と高く、認知して
いる人の約半数が地球環境に配慮して行動を変えた・変えたいと考えています
80
70
63
56
46
18
26
33
36
43
2
4
4
8
11
60代
50代
40代
30代
20代
地球温暖化/気候変動問題の認知・関心
19
18
15
14
16
41
39
41
38
38
40
43
44
48
46
60代
50代
40代
30代
20代
認知している人の行動への影響
(%) (%)
地球温暖化/気候変動問題という言葉は聞いたことがあり、興味もある
地球温暖化/気候変動問題という言葉は聞いたことがあるが、興味はなし
地球温暖化/気候変動問題という言葉は聞いたことがない
自分の行動を変えた
行動を変えたいとは思っているが、変わっていない
特に自分の行動は変わっていない
 年齢層が高くなればなるほど、地球温暖化や気候変動問題に関
心が強い
 最も関心度が低い20代でも、約半数は関心があり、気候変動は
消費者の大きな関心事項となっている
 認知している人のうち、行動を変えた人はどの年代においても2割
程度。行動を変えたいと思っている人は約4割と、多くの人が環
境に配慮した行動をとりたいと感じている
従業員
消費者
投資家
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
10
企業に求められる環境への配慮
消費者は企業に「リサイクルの仕組み構築」や「環境にやさしい製品を開発・販売する」こと
を期待しており、自社事業における環境配慮・責任が問われています
出所:サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果(ボストンコンサルティンググループ; 2022年3月)
18
16
22
30
44
44
その他
環境を守る活動に参加する
環境に優しい生産設備や店舗開発をする
環境にやさしい製品を開発・販売する
販売後のリサイクルの仕組みを構築する
環境にやさしい活動をしている団体や技術
開発のために資金を提供する
地球温暖化/気候変動に関して企業に期待すること
(%)
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
エシカル行動実践内容
実際に、「リサイクル活動・購入」を実践している消費者が60%、「環境配慮商品の購入」
が約30%と、エシカル消費として環境に配慮している企業の商品が選ばれています
0.5
1
2
2.3
5.4
9.7
12.1
12.7
18.4
20
20.1
30.6
50.7
52.6
60.2
61.9
73.7
86.8
その他
エシカルファッション
エシカル消費につながる取り組みを行う企業への投資
エシカル消費につながる取り組みを行う団体への加入
被災地以外の国内外への寄付
地域コミュニティ活動への参加
再生可能エネルギーの利用
寄付型商品の購入
フェアトレード商品の購入
有機食品・製品の購入
被災地への寄付
環境配慮商品の購入
地産地消
国産品の購入
リサイクル活動・購入
食品ロス削減
電気をこまめに消す等の省エネ
マイバッグ等の利用
 エシカル消費を実践している人の
うち、とくに消費の観点では、「リ
サイクル活動・購入」が多く約
60%を超えている
 「環境配慮型商品の購入」は約
30%とある程度重視されており、
環境への配慮が商品選択の判
断基準となっている
出所:消費者庁「倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査報告書」に基づき、Deloitte作成
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
11
従業員
消費者
投資家
エシカル行動実践内容とその割合
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サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
12
従業員の企業のESG対応に対する就労意欲
従業員からは、企業が法令遵守を全うするだけでなく、事業活動の中で地球環境に配慮
し、従業員や地域社会を重んじる姿勢をもつことが期待されています
ESGのどの項目を大事にしている企業で働きたいと思うか
84% 83% 86%
環境 社会 ガバナンス
出典:ESGに関するサーベイシリーズ2021(pwc:2021)
従業員
消費者
投資家
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
13
気候変動に関するアクションにおける従業員の影響度(環境)
環境面においては、投資家や株主に次いで、従業員は企業の気候変動に対するアクション
に影響を与える無視できない圧力になっています
出所:気候変動に関する企業経営者の意識調査 2021(デロイトトーマツグループ; 2021年4月)
投資家または株主からの要求
社会的アクティビズムや従業員アクティビズムの増加
気候関連災害の深刻化
自社の業務や財務への直接的なマイナスの影響
同問題や問題解決に向けた企業の役割に対するマスコミ報道の増加
新たな規制基準/報告要件
政府のアクション/懲罰から受ける損失
気候変動を理由とした従業員の身体とメンタルの健康に対するマ
イナス影響の増加
競争上の圧力
再生可能ではない原材料や資源に対するアクセスの減少
消費者または従業員による自社事業のボイコット
人材獲得や定着の難しさ
14
15
18
19
19
19
30
31
31
32
35
38
(%)
気候変動に関する企業のアクションに影響を与える外部圧力
従業員
消費者
投資家
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
14
就業に対する意識の変化(社会)
働き方に関して、従業員の間では「給料や出世で報われなくても、ワークライフバランスを
保って、好きな仕事や家庭生活を優先したい」という思いがより強まっています
出所:野村総合研究所「就業意識の変化から見た働き方改革」
従業員
消費者
投資家
過去約20年の間に、自分の趣味や家庭を仕事より優先する価値観はより強まっており、
それらの要望にうまく応えられない場合、必要な人材が確保できない可能性があります
43%
42%
55%
73%
40%
39%
49%
65%
たとえ収入が少なくなっても、勤務時間が短い方が良い
出世や昇進のためには、多少つらいことでも我慢したい
人並み程度の仕事をすればよい
会社や仕事のことより、自分や家庭のことを優先したい
1997年
2015年
1997→2015年の就業意識の変化
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サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
15
働き方改革に関する政府の方針・取組(社会)
さらに、政府においても働き方改革が積極的に推進され、2018年には「働き方改革関連
法」が成立し社会全体でのサステナブルな働き方の定着が推し進められています
政府の働き方改革の取組の歩み
 「働き方改革実行計画」が閣議決定
 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇
改善、賃金引上げと労働生産性向上、罰
則付き時間外労働の上限規制の導入、等
について方針を策定
2017
2018
 「働き方改革関連法」が成立
 時間外労働の上限について、臨時的な特別
な事情がある場合でも年720時間、単月100
時間未満を原則とし、長時間労働の抑制を
義務化
2019
 「働き方改革関連法」が順次施行
 年次有給休暇の確実な取得奨励
 月60時間以上残業に対する割増賃金率の
引き上げ
 労働時間状況の確実な把握 等
 「働き方改革実現推進室」の発足
 長時間労働の是正、そして、同一労働同一
賃金、高齢者の方々の就労促進・拡大、テ
レワークなどの柔軟な働き方を実現するための
組織として設立
2016
出所:首相官邸HP「働き方改革の実現」
現状同一労働でも非正規の社員の処遇
が正社員と異なることから、モチベーション
が低く、生産性向上の阻害要因となって
いる
同一労働
同一賃金
長時間労働は仕事と家庭生活の両立を
困難にし、少子化の原因や女性のキャリ
ア形成、男性の家庭参加を阻む要因と
なっている
長時間労働
の是正
付加価値の高い産業への人材移管が進
んでいないことから、国全体の生産性向
上のため、転職しやすい労働市場・企業
慣行を確立することが必要
キャリアパスの
多様化
政府の働き方改革への問題意識
従業員
消費者
投資家
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
16
従業員による企業の透明性への意識(ガバナンス)
加え、企業活動における透明性の高さは、従業員からも評価をされるようになってきており、
優秀な人材の獲得には透明性が高く倫理的な業務の遂行が必要です
出所:EY(2015)『アジア太平洋不正行為サーベイ』、 Slack (2018)『Future of Work』
78%
贈収賄や汚職に関与
する企業で働きたくない
25歳未満の回答者うち86%が
非倫理的な企業では働かない/辞めると回答
従業員
消費者
投資家
贈収賄や汚職に関係する企業に対する認識
87%
「次の仕事は透明性が
あるところがよい」
80%「雇用主がどのように意思決定
しているのかもっと知りたい」
Future of Work 調査結果
ミレニアム世代は、同問題に対し関心が特に高い
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
2019
2020
投資の際にESGを考慮すると回答した割合
企業への投資の面からみても、投資時に「企業のESGへの取組を考慮する」と回答した割
合は増加しており、企業経営の根幹にESG要素が組み入れられつつあります
77.6%
出所:企業広報戦略研究所 『2019年度ESG/SDGs に関する意識調査 』、 『2020年度ESG/SDGs に関する意識調査 』
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
17
従業員
消費者
投資家
とても考慮する
18%
少し考慮する
44%
あまり考慮しない
15%
まったく考慮しない
3%
企業への投資を考
えない/投資に興
味がない
20%
62.1%
とても考慮する
22%
少し考
慮する
56%
あまり考
慮しない
18%
まったく考
慮しない
4%
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サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
18
環境・社会・ガバナンスへの対応に関する「投資家」の動向
ESG要素の投資への組み込みにコミットするPRIへの署名者数は2006年以降急激に増えて
おり、ESG要素に配慮できない企業は投資対象にならない世の中が訪れつつあります
従業員
消費者
投資家
18
2021年時点で3,826の金融機関が署名し、全世界
で運用資金残高は約1京5,000兆円に達する※
実際のPRI署名者数推移
PRIの6つの投資原則
1
私たちは投資分析と意思決定プロセスにESGの課
題を組み込みます
2
私たちは活動的な株式所有者となり、株式の所
有方針と所有習慣にESG問題を組込みます
3
私たちは投資対象に対してESG問題について適切
な開示を求めます
4
私たちは資産運用業界において本原則が受け入
れられ、実行に移されるように働きかけを行います
5
私たちは本原則を実行する際の効果を高めるた
めに協働します
6
私たちは本原則の実行に関する活動状況や進
歩状況に関して報告します
ESGに配慮できない企業は
投資を受けにくい社会へ
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
運用資産
PRI署名数
(兆円) (署名者数)
出所:PRI HP及びBroomberg「日本のESG投資、遅れている年金基金を動かす必要」
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
世界のESG投資の状況と傾向
海外の投資家の意識として、アメリカの機関投資家PIMCO*1のESG責任者は、株式だけで
なく債権や不動産にもESG意識が浸透してきていることを述べています
出所:日経ESG『米PIMCO オリビア・アルブレヒト氏「ESG投資は株式から債券へ、リターンとインパクト両立』
*1:パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(Pacific Investment Management Company LLC)。アメリカのグローバル資産運用会社であり、債券運用残高では世界最
大級のアクティブ運用会社
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
19
従業員
消費者
投資家
PIMCO
ESGビジネス
戦略責任者
オリビア・アルブレヒト氏
 欧州の機関投資家をはじめ、オーストラリアやカナダ、アメリカの
機関投資家、さらには個人投資家も、債券分野でのESG投資
に関心を持っています
 株式分野でのESG投資が先行し、投資家がESG投資になじみ、
株式だけでなく、債券や不動産などすべての資産クラスに当て
はめる動きが始まっています
 例えば、グリーンボンドは、誕生してから5年以上たち、2018年
の発行残高は1550億ドル(約17兆円)に達しました
株式分野でのESG投資が先行し、投資家がESG投資になじんできた。
そして株式だけでなく、債券や不動産などにも波及
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
20
金融機関と大企業のグリーンリストに基づく開示義務
EUでは、事業ポートフォリオにおいて採用する技術種類・閾値まで設定し、そのうえで事業
内容をグリーンか否かの選別結果の開示を義務化しています
電力会社X社の売上高の構成割合
石炭火力
20%
ガス火力
50%
風力発電
30%
タクソノミー適合要件
① グリーン・リストの該当セクター? No Yes Yes
② 技術スクリーニング基準をクリア? No Yes
③ DNSH基準をクリア? Yes
④ ミニマム・セーフガードをクリア? Yes
X社の売上高タクソノミー適合率
0% 0% 30%
全社で30%
適
合
率
計
量
イ
メ
ー
ジ
金融機関 大企業(事業会社)
資産運用事業者等のサステナビリティ・リスク
情報の開示に関する規則
(Sustainable Finance Disclosure Regulation: SFDR)
非財務情報開示指令
(Non-Financial Reporting Directive: NFRD)
(2014年)改訂予定
根拠
規則
 タクソノミー活用状況
 投融資タクソノミー適合率
 貢献する環境目標(6項目)の種類
 売上高タクソノミー適合率
 グリーンリスト該当経済活動のCAPEX(設備
投資)とOPEX(支出経費)の割合
開示
内容
投資先
企業
各社の売上高
タクソノミー
適合率
本ファンドに
占める各社の
投資割合
各社の
本ファインドに
占める適合率
本ファンドの
タクソノミー
適合率
経済
活動の
説明
A社 12% × 重み30% = 3.6%
B社 8% × 重み50% = 4.0%
C社 15% × 重み20% = 3.0%
左記
合計
10.6%
投融資先企業の低・脱炭素に向けた取組を単一指標で横並び比較や、特定企業の時系列変化も把握されることに
従業員
消費者
投資家
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2.トランジション・ファイナンスの概要と
今後の需要
21 トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
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トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
22
地球温暖化がもたらす気候変動及び経済・社会にもたらすインパクト
地球温暖化により生じる海面上昇や洪水、熱波は、生産可能な土地の喪失や経済の停
滞、食料不足、健康被害など経済・社会に深刻な負のインパクトをもたらしています
温度上昇がもたらす様々な変化
海面上昇
洪水
干ばつ
熱波
生態系崩壊
氷河や氷床の融解や海水温の上
昇による熱膨張により海水量が増
加
上昇気流や湿度の変化により生
じる豪雨により、沿岸部や河川が
氾濫
人口増加や貧困などによる過耕
作や過放牧、森林減少などによる
気候変動により干ばつが発生。繰
り返される干ばつは砂漠化を進行
温室効果ガスの排出量の急増に
より、地球上の熱が閉じ込められ、
生命を脅かすほど気温が上昇。
山火事の原因としても懸念される
生息地の変化、干ばつ、洪水、
気温上昇などにより、4,000種以
上が絶滅危惧種となっている
様々な変化が与える経済的・社会的インパクト
働く人々の
生産性の低下
国際通貨の
不安定化
投資機会や
生産効率の鈍化
生産可能な
土地の喪失
健康状態の悪化・
ウェルビーイングの低下
食料不足の深刻化
熱波による健康被害やそのほか異常気象に
よる妨げにより、労働者の生産性低下を招く
暴風や洪水等異常気象により失業や事業
停止、住居・インフラ損失など、気候変動に
よる通貨の変動リスクが高まり不安定に
被害地域の再生による資金の投入が膨大に
なり、革新的技術等を促す資金を圧迫し経
済停滞を招く
高潮の被害や田畑への海水侵入による農
作物が育たない、また水没して使用できない
など被害が生じる
熱波や洪水などの被害により、疾病率や死
亡率の上昇を招き、健康及びウェルビーイン
グを損なう
干ばつや熱波、生態系の変化により農業生
産が難しくなり、生産性が低下、またそれらに
より食料資源不足を招く
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トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
23
パリ協定と目標実現のためのトランジションの必要性
度重なるCOP開催の末、パリ協定が採択され「世界の平均気温上昇を2度以内に抑える」
という国際社会の目標を設定しました。しかし、目標実現には膨大な資金供給が必要です
1992 国連気候変動枠組条約
1995 国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)
1997 COP3 京都議定書採択
2009 COP15 コペンハーゲン合意
2010 COP16 カンクン合意
2011 COP17 ダーバン合意
2013 COP19 ワルシャワ決定
2014 COP20 気候行動のためのリマ声明
2015 COP21 パリ協定採択
全ての国が参加する制度の構築に合意。世界で目指すべき
目標を設定
自国の貢献案の事前情報や交渉要素案を設定
2020年以降の削減目標の提出時期を設定
全ての国が参加する新たな枠組み構築に向けADP設置
各国が提出した削減目標等を国連文書に整理
先進国・途上国の2020年度までの削減目標・行動のリスト
化を呼びかけ
先進国を中心とした気候変動に対する取り組み内容であり、
米国不参加のため制度としては不十分
気候変動への取り組みを検討するため、以降、毎年開催
197か国・機関が締約。1994年に発行
官民連携による、気候変動に対応するための
様々なファイナンスアプローチ及びそれらのガイドライン等
制度整備の必要性
世界の平均気温上昇を工業化以前から2度以内に
抑える
目標
取り組み
全ての国が削減目標を5年ごとに提出し、国内で
の実施状況を報告すると共にレビューを受け、5
年毎に世界全体での実施状況を検討
課題
 目標実現のための具体的な実施指針の提供
 製造工程の低炭素化やクリーンエネルギー・
グリーンマテリアル開発、省エネ技術等技術
開発・事業展開を支える資金供給やそれらを
促す仕組みの導入
気候変動に対する国際会議の開催と取り決め パリ協定
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“パリ協定で定
められた・・・世
界的な目標を
達成するには、
極めて巨額の
資金が必要に
なる。”
トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
24
トランジション・ファイナンスとは
ICMAはパリ協定の目標実現に必要な“移行”に対し巨額の資金供給を促すため、同目標
の実現に貢献する投資目的をもったトランジション・ファイナンスを定義しました
”脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略に則り、着実なGHG削減の取組
を行う企業に対し、その取組を支援することを目的とした新しいファイナンス手法“
国際資本市場協会
2019年にトランジショナル・ファイナ
ンスのワーキンググループを設置し、
ハンドブックを作成
クライメート・トランジション・
ファイナンス・ハンドブック(2020)
①ボンド・
ローン発行
②資金調
達・事業実
施・報告・
償還
②
トランジション・ファイナンス
トランジション・ファイナンスとは
①発行の目的がパリ協定の目標を達成するためのトランジ
ションであること
①発行された債券がグリーンボンドやサステナビリティボンド、
サステナビリティ・リンク・ボンドの原則に整合したもの
②4要素の推奨開示が求められる:
実施の透明性
科学的根拠のある戦略(目標と経路)
ビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティ
トランジション戦略とガバナンス
1
2
3
4
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トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
25
トランジション・ファイナンス活動の概念
既に、移行を目的・意識した民間企業等によるカーボンニュートラルやゼロエミッション、省エ
ネなど様々な活動が実施されていますが、本講演では狭義のTFをご説明します
狭義の
トランジション・ファイナンス
広義の
トランジション・ファイナンス
GBP等原則を踏まえTF開示4要
素に対応し、政府の公的支援
を受け実施される活動
GBP等原則を踏まえTF開示4要素
に対応するが、公的支援を受けず、
民間独自で推進される活動
CNやゼロエミッションなどTFの狙いと合
致するが、TFハンドブックやGBP等原則
に整合せず、独自で実施される活動
本講演でご説明する範囲
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もたらされる変化
資金供給・循環システム導入
仕組みの整備
トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
26
トランジション・ファイナンスの仕組みと狙い
利率優遇等を行うことで企業に動機を与え、企業の透明性向上により信頼を獲得し、さら
なる投資資金の呼び込みやリファイナンスなど資金が循環する仕組みを構築します
パリ協定採択
ICMA
トランジション・
ファイナンスハンド
ブック公開
タクソノミーとの
整合
GNP・SBP・SLBP
の原則に整合
TCFDの開示フ
レームワークの
活用
トランジ
ション・
ファイナ
ンス開
示4要
素の要
求
利率等優遇
債券・ローン発
行/投資
社債発行・
資金調達
TFプロジェクトの
実施
レポーティングに
よる透明性の
確保
外部評価による
信憑性担保
リファイナンス
低・脱炭素
技術発達
省エネ・
高効率化
グリーン素材・
商品の流通
購入・協力
社会
全体で
パリ協
定目標
の実現
戦略・目標・事業報告等情報
開示によるESG評価向上
ESG投資拡大
基本指針やロードマップ
の提供・金融支援
自治体・金融機関
企業
機関投資家・
アセットマネジャー
ESG評価機関
第三者評価機関
政府
家計
COP21
技術・素材
利用
中小企業
1
2
3
4
5
6 7
8
10
12
13
14
15
16
17
18
検証
償還
9
11
トランジション・ファイナンスの
要求事項明確化
トランジション・ファイナン
スによりもたらされる
変化
トランジション・ファイナンス
資金の供給促進
トランジションプ・ロジェクト
の普及促進
科学的根拠に基づいた達成経路
及び透明性ある以降体制の構築
Push: 政府自治体による事業組成支援
Pull: 投資家からのESG対応要請
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トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
27
気候変動に対する様々なファイナンス手法の発展とトランジション・ボンドの範囲
気候変動への対応を目的とするグリーンボンドやサステナビリティボンド、サステナビリティ・リ
ンク・ボンドの原則に整合したファイナンスのうち、開示4要素を含む手法が該当します
目的
発行体
用途
要求
事項
グリーンボンド サステナビリティボンド トランジションボンド**
サステナビリティ・リンク・
ボンド/ローン
企業や地方自治体等が、国内外の
グリーンプロジェクトに要する資金を調
達するために発行する債券
①調達資金の使途はグリーンプロジェ
クトに限定②事業の評価と選定のプ
ロセス③調達資金の追跡管理④レ
ポーティングによる透明性の確保
グリーンボンド①~④と同様
パリ協定の目標貢献を前提とし、グ
リーンボンド発行に至らないがこれから
“移行”する企業に対し発行する債券
 気候変動・環境に配慮した内容
 再生可能エネルギーに関する事業、
汚染の防止と管理に関する事業、
関する事業、生物多様性保全に
関する事業、環境配慮製品、環
境に配慮した製造技術・プロセス
に関する事業、グリーンビルディング
に関する事業等
環境・社会・ガバナンス面での持続可
能性に貢献する企業に対し発行する、
資金用途が特定されない債券/融資
①KPIの選定②SPTs(サステナビリ
ティ・パフォーマンス・ターゲット)の測定③
債券の特性(成果に対する利率の
変動等)④レポーティング⑤検証
 環境・社会・ガバナンスの観点から
持続可能性に貢献する事業。資
金の使用用途の制約はない。
 (使用例)再生可能エネルギー利
用率向上、温室効果ガス排出量
削減、環境に配慮したポートフォリオ
編成、サステナビリティ製品の売上
増加
 ①エネルギー:ガスエンジン発電
所のCO2排出量削減、二酸化炭
素貯蔵、ガス輸送インフラ、石炭
ガスの転換、廃棄物発電利用
 ②交通:船舶の使用燃料転換、
航空機における代替燃料の利用
 ③インダストリー:セメント、メタル、
ガラスの効率的な利用等
①調達資金の使用はエネルギー、交
通、インダストリーに限定②事業選定
における評価③追跡管理④定期的
な報告による透明性確保・事業評価
*グリーンボンドプリンシプル、ソーシャルボンド、プリンシプルの略称
**AXA Investment Managersの「Guidelines for Transition Bonds」を参考
地球環境および社会化課題解決双
方に資するプロジェクトに限定し発行
する債券(GBPとSBP*に整合)
 グリーンボンドと同様。ソーシャルボ
ンドで指定される10領域も含む
 例:貧困ライン以下で暮らしてい
る人々、排除され、あるいは社会
から取り残されている人々、あるい
はコミュニティ、障がい者、移民や
難民)
トランジション・ファイナンスは、上記のうち奨励開示4要素(トランジション戦略・ガバナンス、
環境面のマテリアリティ、科学的根拠ある戦略、実施の透明性)を考慮したもの
企業
自治
体
金融
機関
企業
自治
体
金融
機関
企業
自治
体
金融
機関
企業
自治
体
金融
機関
資金用途制約:
対象領域 :
なし
あり
グリーン ソーシャル
資金用途制約:
対象領域 :
なし
あり
グリーン ソーシャル
資金用途制約:
対象領域 :
なし
あり
グリーン ソーシャル
資金用途制約:
対象領域 :
なし
あり
グリーン ソーシャル
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トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
28
トランジション・ファイナンスに関する国際動向
国際動向を見ると、トランジション・ファイナンスは任意の取り組みではなく、タクソノミーとの
整合やTCFD開示フレームへの落とし込みなど制度として組み込まれていく傾向にあります
2019 2021
TCFD「Guidance on
Metrics, Targets, and
Transition Plans」の公開
[2021/10]
オーストラリアロードマップ
の公開。2025年までに
Sustainable Finance
Taxonomyを策定
[2020/011]
TEGによる「タクソ
ノミー最終報告」
の公[2020/03]
AXAIM「トランジションボンド
ガイドライン」発行
ICMA トランジション・ファイナ
ンスのためのWGの組成
[2019/06]
CBIホワイトペーパーにて信号機
システムを用いアセット毎の適
格性を評価
シンガポールタクソノミー案
(信号機型タクソノミー)の公開
[2020/09]
アジア地域向けタクソノミー
策定に向け運営委員会
「ASEAN Taxonomy
Board」組成 [2021/03]
IMCA「Climate
Transition Finance
Handbook」を公開
[2020/12]
マレーシアタクソノミーにて事
業活動毎に5つのカテゴ
リーを分類[2021/04]
日本「クライメート・トランジション・ファ
イナンスに関する基本指針」公開
日本「アジア・エネルギー トランジション
イニシアティブ」設立
EUタクソノミー「委託法」(緩和と
適応のみ)の採択 [2021/5]
2020
カナダタクソノミー案の
公開[2020/02]
1
2
EUタクソノミー:移行計画の開示推奨
 2021年、Platform on Sustainable Financeが「Transition
finance report」にて、タクソノミーレポートに「移行計画」
や「移行計画」においてどのようにタクソノミ
ーと整合しているかを開示するよう推奨
 今後、“移行”を踏まえ環境に負の影響を
与える活動や企業が停止すべき活動等を
整理し、EUタクソノミーに新たな基準を盛
り込む考えを示している
TCFD Transition Planの開示ガイダンス
 投資家が企業の気候関連のリスクと機会を適切に評価
するための企業の情報開示フレームワーク(戦略・ガバナ
ンス・リスク管理・指標と目標)に対し、
移行に対する開示情報として、新たに
Transition Planを公表
 移行に伴う予算や目標の設定、シナリオ
分析、移行計画や成果のレビュー体制等
へのガイダンスが盛り込まれている
1 2
TCFD (2021)
「Guidance on
Metrics, Targets, and
Transition Plans」
Platform on Sustainable
Finance (2021)
「Transition finance
report」
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トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
29
国内におけるトランジション・ファイナンスの動向
日本においては、金融庁・経産省・環境庁が基本指針を策定し、情報共有プラットフォーム
を提供。民間サイドではMUFGがASEAN主要銀行と連携しスタディグループを推進しています
金融庁・経産省・環境庁
「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」
MUFG(三菱UFJ銀行)
「Asia Transition Finance Study Group」
「クライメート・トランジション・ファ
イナンスに関する基本指針」
 パリ協定の目標実現に向けて、
国内においても移行のための資
金供給を促すべく、金融庁・経
産省・環境庁主導により、
ICMAのハンドブックを基にした
「クライメート・トランジション・ファ
イナンスに関する基本指針」を
策定
 特にCO2排出量の多いインダス
トリーに対し、トランジション・ファ
イナンス推進のためのロードマッ
プを随時公開
ロードマップ
各分野において、カーボ
ンニュートラルや脱炭素
のための導入・開発技
術やパリ協定目標実
現に向けた2050年まで
のロードマップを公開
鉄鋼分野
化学分野
電力分野
ガス分野
石油分野
紙・パルプ分野
セメント分野
国際海運分野
内航海運分野
航空分野
その他の分野
経済産業分野
※2022年4月時点で公開している分野
 三菱UFJ銀行のリードにより、アジア地域におけるトラ
ンジションに関する取り組みに対する資金供給に向け、
金融機関へのガイドライン作成と政策への提言をまと
めることを目的とし同スタディグループを設置(2022年
10月にガイドライン・政策提言公表予定)
 トランジション活動の定義/原則、カーボンオフセット、
脱炭素経路・エネルギーミックス・技術ロードマップ、利
用可能性・運用性についてを主要テーマとし議論
(出典)金融庁・経産省・環境庁(2021)「トランジション ファイナンス」、三菱UFJ銀行(2022)「Asia Transition Finance Study Groupの活動について」を基にトーマツ作成
参加団体
メンバー(18行)
MUFG
MIZUHO
SMBC
アユタヤ銀行
大华银行
BDO
SMTB
Danamon
Citi
VietinBank
SECURITY BANK
Mandiri
Maybank
KASHIKORNBANK
BARCLAYS
MACQUAIRE
Standard Chartered
HSBC
オブザーバー
(7開発銀行、14政府機関)
IFC、GBJ、JBIC、NEXI、DBS、
EXIM、MIGA
ASEAN Taxonomy Board、
SFIA、フィリピン共和国エネル
ギー省、日本財務省、日本金
融庁、日本経済産業省、全
国銀行協会、オーストラリア政
府等
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
30
世界における気候変動に対する債券発行額規模・推移
世界では、グリーンボンド・サステナビリティボンドの発行額が年率65.9%で成長しており、
2021には約85.7兆円に達し、市場規模が年々拡大しています
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
グリーンボンド発行額 サステナビリティボンド発行額
(億ドル)
121
482
889
1,711
4,343
6,929億USD
(約85.7兆円)
337
1,904
3,132
(出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル 市場普及状況(国内・海外)」
CAGR
65.9%
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
11,682
10,958
5,210
1,110
200
3
15
36
83
148
190
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
2016 2017 2018 2019 2020 2021
ソーシャルボンド グリーンボンド サステナビリティボンド サステナビリティ・リンク・ローン トランジションボンド 発行件数
トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
31
国内における気候変動等に関する債券発行規模・推移
国内では、ソーシャルボンド・グリーンボンドを中心に発行金額・件数共に急増し、2021年に
は2.9兆円に到達。近年、サステナビリティボンドやトランジションボンドも増加しています
450
1,891
4,884
12,039
21,619
29,164
(億円) (件)
(出典)証券業界のSDGs「SDGs債の発行状況」を基にトーマツ作成
CAGR
101.7%
「グリーンボンド等
促進体制整備支
援事業」開始
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
32
グリーンボンド等促進体制整備支援事業の後押し
グリーンボンドの発行・事業実施を促進するために、2018年より環境省にてグリーンボンド事
業の形成支援を実施しており、その件数は国内同ボンド発行件数の半数以上を占めます
27
46
53 55
79% 79%
67%
56%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0
10
20
30
40
50
60
2018 2019 2020 2021
(件数)
(出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル 市場普及状況(国内・海外)」
外部レビュー、グリーンボンド等コンサルティング、グリーンボンド事業形成において登録
された発行支援者(登録発行支援者)が、要件を満たすグリーンボンド等の発行
支援計画を合同で作成。グリーンボンド等が発行された場合に補助金を交付
グリーンボンド等促進体制整備支援事業
発行体 国内に拠点を有する法人・自治体等
通貨・市場 円建て・外貨建て、外債・内債、公募債・私募債
準拠する規則・
原則
 グリーンボンドガイドライン
 発行市場や投資家層に応じてグリーンボンド原則、ASEAN
Green Bond Standard、Climate Bonds Standard等選択可能
調達資金の
使途
対象事業者・
補助対象費用
外部レビュー機関
コンサルティング会社
外部レビューの付与に要するコスト
(発行前・発行後・期中)
グリーンボンドフレームワークのコンサル
ティング等に要する費用
調達した資金のすべてがグリーンプロジェクトに充当されるもので
あって、かつ以下のいずれかを満たすもの
 主に国内の脱炭素化に資する事業(再エネ、省エネ等)
 脱炭素化効果及び地域活性化効果が高い事業
1
2
必ずしも申請年にグリーンボンドが発行されてい
るわけではないが、2018年に同支援事業を開
始して以来、グリーンボンド発行数に対し約8割、
2021では約6割もの登録発行支援が実施され
ている
同支援事業申請件数とグリーンボンド発行
件数に対する申請件数割合
© 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
33
グリーンボンド事例
近年、再生可能エネルギー利用や省エネルギー対策、バイオマスによるクリーンエネルギー開
発、汚染防止のための水質管理やグリーンビルの建設などが実施されています
カテゴリー 発行体
グリーンボンド等促進
体制整備支援事業*
発行時期 発行金額 資金使途 利率 償還期間
金融 三井住友FG あり
2021 5億米ドル
再生可能エネルギーおよび省エネルギー事業等の一定の要件を満た
す事業に対するファイナンス
0.51% 3年
2022 5億米ドル
再生可能エネルギーおよび省エネルギー事業等の一定の要件を満た
す事業に対するファイナンス
2.47% 7年
金融 みずほFG あり 2022 5億米ドル
みずほ銀行に対する融資に充当し、みずほ銀行はグリーンプロジェク
トに対する融資に充当
3.26% 8.3年
交通・運輸 飯野海運 あり 2021 50億円
グリーンビルディングの建設事業費
0.49% 3年
交通・運輸
西武
ホールディングス
あり 2021 100億円
従来の運行車両よりも消費電力の少ない車両の新規調達費用の
リファイナンスに充当
0.18% 5年
エネルギー 九州電力 なし 2021 150億円
新竹田水力発電所、軸丸水力発電所及び大岳地熱発電所に係
る新規投資及び既存投資のリファイナンス
0.31% 10年
科学・エネル
ギー
エクシオグループ なし 2021 100億円
木質バイオマス発電所建設、木質バイオマスガス化発電の技術開
発と木質バイオマスガス化発電所建設資金ならびに太陽光発電設
備建設資金
0.10% 5年
製造業 日立造船 あり 2021 100億円
グリーンプロジェクトとして受注したごみ焼却発電施設にかかる資材
購入などの費用としての運転資金に充当
0.43% 5年
製造業 三菱重工業 なし 2021 150億円
再生可能エネルギー/クリーンエネルギー事業(風力発電設備/
事業・地熱発電設備/事業・水素発電設備/事業)に関連する
新規又は既存の事業・プロジェクト
0.09% 5年
製造業 日本硝子 なし 2021 100億円
「カーボンニュートラル」「循環型社会」「自然との共生」の実現に寄与
する製品とサービスの開発・提供、および製造プロセスの確立に係る
投資
0.18% 7年
自治体 東京都 なし
2021 150億円都有施設への太陽光発電の導入、下水道整備による浸水対策等 0.00% 5年
2021 150億円河川護岸、調節池の整備、防潮堤、水門等の整備等 0.74% 30年
(出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル 発行データ」を参考にトーマツ作成
*支援事業実施はボンド発行年と異なる場合がある
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3.トランジション・ファイナンスを
事業機会として取り込むには
34 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
35
トランジション・ファイナンスに向けた事業機会獲得及びリスク評価
環境へ配慮したビジネスへの転換、それら企業への資金供給の波に乗るためには、世界水
準を満たすグリーンな技術の把握と移行に向けたリスク評価の実施が重要です
インテリジェンス リスクの査定
どのように機会をとらえるか? どのように機会を評価するか?
 トランジションへの具体的なアクションが必要な
領域を見極めたうえで、トランジションに向け選
択すべき技術は何かを把握
トランジションへのアクションが
必要な領域はどこか?
移行の際に選ばれる技術は何
か?
1
2
グリーン
成長戦略
ロード
マップ
政府の戦略や移行に向けた
ロードマップより、日本のどの
産業に注目すべきかを特定
環境・社会に配慮した使用
技術の基準を示すタクソノ
ミーを参考
EU
タクソノミー 国・地域
別タクソノ
ミー
 移行リスク:移行に伴い政策や市場が変化する
中で、不要技術・製品が生まれる。それらの整
理と事業方針・存続への影響を分析
1 2 3
市場変化の方向
性は?
政策・制度、市場等
リスクを分析し、変化
の方向性を整理
どのような技術が
不要・必要か?
市場変化の方向性
より、不要・必要
(新技術)を特定
ハイリスク事業者
は誰か?
ヒートマップによるハイ
リスク事業者層の可
視化
リスクの高い業種は
どこか?
金融4業種、非金融4
業種13セクターをハイ
リスク業種とする
リスクをどのように評
価するか?
将来の洪水リスクが増
大に伴い洪水インパク
ト算定式を構築
どこまでを分析範囲
とするか?
取引先など直接関係
ある重要拠点だけでな
くSC全体を含める
 物理的リスク:異常気象などにより被る損害リ
スクが高い業種の整理、それら業種・業態の特
性を踏まえリスクを定量的に分析
1 2 3
移行リスク
物理的リスク
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インテリジェンス
36 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
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2025年カーボン
ニュートラルに伴う
グリーン成長戦略
(内閣官房及び
各省庁)
トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
37
トランジションへのアクションが必要な領域
グリーン成長戦略と整合した経産省・国交省のロードマップでは、GHG排出量の多い経済
産業分野・航空・海運分野において、トランジションへのアクションが求められています
移行へのアクションが求められる領域
化学分野
紙・パルプ分野
ガス分野
石油分野
セメント分野
航空分野
国際海運分野
内航海運分野
鉄鋼分野
電力分野
国内においても、化学分野は製造業の中で鉄鋼業に次ぐ規模のCO2を排出しており、同分野のネット
ゼロに向けた移行は不可欠
紙・パルプ産業は現時点でCO2多排出な産業分野であり、国内の製造業の中で4番目の規模の
CO2を排出。化石燃料への依存度が高く、紙・パルプ分野のネットゼロに向けた移行は不可欠
ガスは需要サイド での燃焼に伴い都市ガス由来で約8,900万トン、LPガス由来で約3,000万トンの
CO2が排出さ れており、ガス分野のネットゼロに向けた移行は不可欠
石油精製プロセスの低炭素・脱炭素化に向けた取組のみならず、CCS・CCUをはじめとする脱炭素技
術の導入やバイオ燃料・合成燃料などの脱炭素燃料の供給体制へのシフト等多様な選択肢を視野に
トランジションを進めることが不可欠
コンクリート製造時のCO2排出源の大宗は原料であるセメントから排出されるため、セメント分野に おけ
るトランジションによる対策が極めて重要
グリーン成長戦略における航空機の技術開発に係る工程表を踏まえ、運航効率の改善等によりCO2排
出量の削減や2030年時点のSAF使用量につ いて、「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに
置き換える」という目標を設定
GHG削減戦略に基づき、2050年までに国際海運の平均効率を約80%以上改善(対2008年比)。
燃費の悪い船舶の燃費改善や高性能な船舶への代替を促進
地球温暖化対策計画に基づき、内航海運の2030年度のCO2排出削減目標181万t、更なる省エネ
を追求した船舶の開発・普及や2050年に向けLNG燃料船、水素FC船、バッテリー船等の実証・導入
鉄鋼は現時点では世界的に多排出な産業分野であり、国内でも製造業の中で最大 規模のCO2を排
出しており、鉄鋼分野のネットゼロに向けた移行は不可欠
2021年10月「エネルギー基本計画」が閣議決定された。国内のCO2排出量のうち、電力由来の間接
排出は約4割を占めており、電力分野におけるCO2排出量の削減は喫緊の課題となっている
航
空
・
海
運
分
野
経
済
産
業
分
野
トランジションに向けた
産業毎のロードマップ
グリーン成長戦略と整合
しながら、特にGHG排出
量の多い産業に対し、脱
炭素化推進・トランジ
ションファイナンス推進の
ためのロードマップを作成
経済産業省・
国土交通省
国全体の方向性
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
38
低炭素社会に向けて選ばれる技術:世界の基準
環境・社会に配慮した使用技術の基準を示すEUタクソノミーが世界基準となっており、同タ
クソノミーを参考に、各地で国・地域単位のタクソノミーの検討が広がっています
EUタクソノミー
各国・地域限定
タクソノミー
 EUタクソノミーとは別に、国や地域特有の産業や経済活動に
合った移行支援を促進するために、国や地域で策定するタクソ
ノミー
 既に、カナダ、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、中国、韓
国、アジア地域などでタクソノミーの検討が進んでいる
 カナダでは、化石燃料資源などを要素に加え、EUタクソノミーと
の統合を踏まえ策定予定
 今後、日本においては、アジア地域におけるタクソノミーの策定
にあたり、EUタクソノミーを基準としながらも準拠していく可能性
 EUにより整備された、サステイナブルファイナンスの資金充当先と
して、環境・社会に配慮した経済活動かどうかを示す基準
 6つの環境目標と、経済活動が環境的に持続可能であるとみ
なされるための4要件によって、どの経済活動が「グリーン=環境
的に持続可能」かを規定
 企業に対し、タクソノミー適合率の開示を要求。投融資先企業
の低・脱炭素に向けた取組を単一指標で横並び比較や、特定
企業の時系列変化も把握可能に
気候変動の緩和
気候変動への適応
水・海洋資源の持続可能な利用
と保全
循環経済への移行
環境汚染の防止
生物多様性および生態系の保
護・回復
6つの環境目標
1
2
3
4
5
6
環境目標
環境目標
気候変動緩和
気候変動適応
健全なエコシステムと生物多様性の保全
資源レジリエンスとサーキュラーエコノミーの
促進
著しい害を及ぼさないこと
トランジションへの救済措置
ASEANタクソノミー(初版)
世界基準
1
2
3
4
1
2
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
39
低炭素社会に向かう新市場の獲得
タクソノミーを参考に、世界水準に適った製造プロセス・商品開発や事業活動、資金供給を
行うことで低炭素社会における市場と信頼の獲得、投資機会の拡大を狙います
省エネ・
高効率化
低炭素技
術・素材開
発・製造
低炭素素
材・エネル
ギー等使用
環境的配慮を
行う企業として
の信頼を獲
得・ニーズが高
まるグリーンマテ
リアルや技術
などの開発・提
供により事業
活動を活発化
トランジション
に伴う投資機
会の拡大やパ
リ協定の目標
を達成するため
の事業活動の
促進、貢献に
よるステークホ
ルダーからの信
頼獲得
企業
自治体・
金融機関
投資/債券・
ローン発行
移行に伴う
事業戦略
〔例〕CO2排出量の少ないLNG燃料フェリーの購入・再生可能エネ
ルギーの導入
〔例〕排ガス等からのCO2分離回収、紙・パルプ製造工程(抄紙
機ドライヤー・キルン)の電化
製造時のCO2排出量が低い素材の使用や使用時の環
境汚染を軽減する商品の購入、クリーンエネルギー等を
導入。責任ある事業活動実施による投資家・顧客からの
支持獲得
製造過程におけるCO2排出量が抑えられたる素材の開
発やそれらを製造する技術開発、電化技術開発・導入。
グリーンな技術・商品の提供により新市場獲得
〔例〕AI技術等の活用による高頃操業の高効率化・省エネ、バッチ
法からフロー法への生産フローの転換
製造過程における省エネルギー・高効率化を図るため
AI/IT技術の導入や製造プロセスの集約、また高効率な
製造方法へシフト。グリーン企業として投資を呼び込み
低炭素社会に向けた事業戦略及び投資機会
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
40
グリーン・サステナブルボンド等事業のうち、
開示4要素を踏まえたトランジション・ファイナンス事例(1/2)
発行体/借り手 業種 所在国 案件・概要 発行年
Castle Peak Power 電力 香港
再エネの開発が難しい地域における天然ガス火力発電所への建設を資金
使途(石炭火力発電から移行)とし、CLP(親会社)のフレームワークを
活用して発行。
2017/7、
2020/6
SNAM S.P.A ガス イタリア
二酸化炭素排出削減、再生可能エネルギー、省エネ、グリーン開発を資金
使途として5億ユーロを調達。償還年数は6.5年
2019/2
ENEL 電力 イタリア
気候変動緩和を目的に再生可能エネルギー関連等の目標達成を条件とし
たSDGsリンクボンド(25億ユーロ)を発行
2019/9
EBRD 開発銀行 欧州
省エネやサステナブルなインフラ等、低炭素への移行(特に高炭素排出産
業のネットゼロに向けた移行)に関する事業向け融資を資金使途として発
行
2019/10-12
Etihad 航空 アラブ首長国連邦
2050年ネットゼロ、2035年50%の排出削減へのコミットメントの実現に向け
たトランジションスクーク(イスラム債)を発行。発行額:6億ドル
2020/10
BPCE 金融 フランス
トランジションボンド型の非優先シニア債を発行し、Natixisの多排出産業の
低炭素化に向けたプロジェクトやコーポレートローンに充当 発行額:1億ユー
ロ / 償還年限:10年、クーポン0.55%
2020/12
Bank of China 金融 中国
公共インフラ、セメント、鉄鋼など多排出産業をはじめとする業界において、
BOCが定める規定に沿ったプロジェクトに充当(リファイナンス含む) 発行
額:5億ドル / 償還年限:3年、クーポン0.875%
2021/1
Cadent ガス 英国
2度目のトランジションボンドフレームワークに基づく債券を発行。調達した資
金はガスネットワークの更新に活用 発行額:6.25億ユーロ/償還年限:
9年
2021/3
川崎汽船 船舶 日本
次世代型環境対応LNG自動車専用船の購入を使途としてCTFHに基づき、
トランジション・ローンにて調達目標額:59億円/償還年限:14.5年
2021/3
(出典)トランジション・ファイナンスに関する国際動向(2021)「トランジション・ファイナンスに関する国際動向」を基にトーマツ作成
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
41
グリーン・サステナブルボンド等事業のうち、
開示4要素を踏まえたトランジション・ファイナンス事例(2/2)
発行体/借り手 業種 所在国 案件・概要 発行年
PKN ORLEN 石油 ポーランド
再生可能エネルギーや低炭素交通、汚染防止・管理を資金使途としてGBP及び
GLPと整合したフレームワークを構築、戦略についてはCTFHと整合
2021/5
Port of
Newcastle
港湾施設 豪州
グリーンローン原則とCTFHに整合した形で0.5億豪ドルを調達。資金使途には再エ
ネをはじめ汚染防止や水の持続可能な利用、クリーンな輸送など幅広く設定
2021/5
Eni 石油 イタリア
KPIを再生可能エネルギーの導入容量、上流でのカーボンフットプリント、ライフサイ
クルでのGHG排出量、炭素集約度(Scope1~3)としたフレームワークを構築
2021/6
Repsol 石油・ガス スペイン
CTFHなどを踏まえ、トランジションファイナンスフレームワークを策定。同フレームワークに
基づき、CO2排出量に関する指標をKPIとしたSLBを発行 (6.5億€(8年)、6億
€(12年))
2021/6
日本郵船 船舶 日本
CTFHや基本指針を基にトランジション・ファイナンス・フレームワークを構築。今回は、
LNG燃料船等を資金使途としたトランジションボンドにて合計250億円を調達
2021/7
商船三井 船舶 日本
LNG燃料フェリー2隻の建造資金としてトランジション・ローンによる借入を実施。商
船三井は総合海運会社として世界で初めてカーボンニュートラルを宣言しており、
LNG燃料フェリーは同社目標達成に向けた戦略の中に位置づけられている
2021/9
川崎汽船 船舶 日本
2030年までのGHG総排出量削減目標に対する毎年度の目標を線形補完したも
の、トンマイルあたりCO2排出量、CDP評価SPTとしたCTFH、SLLPに準拠したトランジ
ション・リンク・ローンを実施
2021/9
(出典)トランジション・ファイナンスに関する国際動向(2021)「トランジション・ファイナンスに関する国際動向」を基にトーマツ作成
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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リスクの査定
42 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
43
リスク査定において検討すべき2つのリスク
リスク査定において、政策や市場の変化により事業方針や存続に影響を与える移行リスク、
自然災害によるサプライチェーン分断などで受ける損害リスクの2つの検討が重要です
リスク査定
低炭素経済への移行による気候変動関連の政策・法規制・技術・市場
の変化に適応する際、不要となる技術や製品、新たに作り出す必要のあ
る製品などが生まれ事業方針や存続に影響を与える
台風や洪水などによる損害リスクが可視化できておらず、未対応のままの
場合、資産に対する直接的な損傷やサプライチェーンの寸断から生じる
間接的な膨大な損害などを受けるリスクが高まる
将来洪水リスクの増大が想定される。しかし、既存の
洪水リスク分析では、業種分別なく主な拠点(本店)
のみを対象とし、適切でないセグメントから損失を算
出していたりと、リスクを十分にかつ適切に可視化で
きていないケースがみられる
俯瞰的にリスクの所在をつかむため、リスクの高い
業種の整理、さらにサプライチェーンまで含め局所
をターゲットとし、そのうえで適切な売り上げ損失
の算出が必要
低炭素経済への移行に伴うリスク 対応しなかった場合の物理的リスク
課題
移行に伴いグリーンでない製品やそれらの製造技術
等需要の大幅な減少が想定されるが、それら政策/
市場の方向性や淘汰される技術、そして誰が事業危
機に瀕しているかなどの情報収集が不十分な事業者
が多くみられる
課題
インテリジェンス リスクの査定
産業毎に、政治・市場等移行の方向性を分析し、
不要となる技術・採用される新技術や、サプライ
チェーン上、最も需要減のリスクがある事業者の
整理が必要
移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
44
移行リスクにより生じる事業への影響
TCFDでは、移行に伴う政策・法規制や市場の変化により、環境負荷の少ない技術・製品
の需要が増加し、製造や事業運営の存続に大きな影響をもたらすと指摘しています
移行リスクとは
最終報告書
気候関連財務情報開
示タスクフォースの勧告
(2017)
政策及び法規制のリスクや技術のリスク、市場のリスク、評判上のリスク
の4つが存在・・・
政策及び法規制のリスク
気候変動に影響を及ぼす活動の制限や適
応を促す政策の執行、ステークホルダーからの
気候関連への訴訟が増加する
技術のリスク
再生可能エネルギーなど新技術の開発や利
用が企業間の競争を活発化し、勝者と敗
者が現れる
市場のリスク
気候関連のリスク及び機会が特定の商品・
製品・サービスの需要と供給に変化を及ぼす
評判上のリスク
低炭素経済への貢献活動に対する顧客や
社会の認識に変化を及ぼす
グリーン技術の基準整理や政府のグリーン成長戦略に伴い、
製造すべき自動車の種類に制約がかかる
例)×ガソリン・ディーゼル車 〇:HV、PHV、EV、FCV
EV化に伴い不要となる部品や新たに開発される部品が生ま
れ、不要となる部品メーカーは製造部品への転換やGHG排
出量の少ない技術の高度化などが必要
ガソリン車・ディーゼル車の販売禁止により、EV車主流の市
場となる。また、環境に配慮した消費者の行動の変化によ
り、EV車の需要が増加するなどが想定される
世界的な規制への働きかけや、投資家たちのサステイナブル
な投資志向から、ガソリン・ディーゼル車を製造し続ける企業
に対し、投資対象外など厳しい反応を受ける可能性も
自動車産業を例に挙げると
4つの移行リスク
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
45
自動車産業における脱炭素の政策・市場の変化
例として自動車産業では、各国でEV化推進・内燃機関車規制強化が並行して進み、新
車販売台数に占める内燃機関搭載車は2034年もしくはさらに前倒しでピークアウトします
産業政策としてのEV化推進
規制の強化
海外 日本
 欧州では法的拘束力を設
けCN推進を加速
 米国もバイデン政権下でCN
積極化へ転換。2030までに
EV/FCVを新車の半数に
 中国は現時点EV台数が世
界の頂点。3060目標のもと
一層推進
 「グリーン成長戦略」のもと
14分野の推進分野を掲げ、
その一角に自動車産業を
位置づけEV化を国を挙げ推
進
 グリーンスローモビリティ等マイ
カーに代わる新たな低炭素
移動手段の推進を図る
• 欧州・北米・アジア圏の各
国で早くて遅くとも40年頃
を目途にガソリン車・ディー
ゼル車の販売禁止の規制
が開始される
• CO2削減目標達成のため
PHEVすらも販売禁止へ
• とりわけ欧米において、
2025年から電気バスのみ
走行、2030年までに特定
の都市・市街地へのディー
ゼル車乗入れの禁止と
いった走行禁止の規制が
開始されようとしている
販売禁止 走行禁止
《シミュレーション結果》
世界の新車販売台数は2050年まで伸びてゆき、2050年にはEVの割
合が8割に。内燃機関搭載車は2034年を境にピークアウトし衰退して
ゆく見通し。但し、このピークアウト時期は早まる可能性がある
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
ZEV PHV HV ICE
(万台)
2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
0
2000
4000
6000
8000
10000
2015
2017
2019
2021
2023
2025
2027
2029
2031
2033
2035
2037
2039
2041
2043
2045
2047
2049
2050年までの新車販売台数予測
・・・うち、PHV・HV・ICEの合計販売台数の推移
ピークアウト
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
46
EV化による需要減インパクト
EV化によるサプライチェーン×製品のマイナスインパクトをヒートマップ化。製造部品の需要減
などによりTier1, 2に多く含まれる中小部品製造事業者への影響が最も甚大となっています
完成車
メーカー/
メガ
Tier1
100% 40% 0%
23% 8% 0%
50% 20% 0%
エンジン
駆動・
伝導部品
サプライチェーン上の立ち位置
Teir1,2
Teir3
内装 電装部品
(既存)
0% 0% 70%
0% 0% 13%
0% 0% 35%
製品
 鉄鋼メーカーについては、自動車用鋼板の
減少率6.6%に自動車向け出荷比率29%を
掛けて算出
 完成車メーカー/メガTier1サプライヤーは、部
品/モジュールごとの専業ではなく、自動車部
品全体を手掛けていることから、個別製品
減のインパクトを各製品の自動車全体に対
する付加価値割合と定義
 サプライチェーンにおいて、Tier1/Tier2サプライ
ヤーは部品/モジュール単位での完成品部品
を供給すると定義。個別製品の減少インパ
クトを100%受けると仮定
 これに対し、Tier3サプライヤーは金属の一
次・二次加工など部品/モジュールの一部部
材を提供する加工事業者と定義。通常、
自動車以外の産業向けも手掛けているため、
自動車部品の個別製品の減少インパクトを
50%受けると仮定
自動車のEV化による影響度
高
中
低 10%以下
50%以上
10%~50%
影響無し 0%
鉄鋼
メーカー 1.9% N/A N/A
制御部品 車体
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
47
全国的な脱炭素化に向けたEV需要の増大の結果、ガソリン車の出荷額15兆円弱減少、
不要となる部品メーカーは売上減少により72万弱の雇用機会を喪失すると想定されます
自
動
車
の
EV
化
に
伴
う
他
業
種
へ
の
変
化
自動車
電
子
部
品
鉄
鋼
 脱炭素化に向けEV需要が増大し、結果、
ガソリン車の37%もの既存部品のが不要に
 EV普及とともに完成車台数が増加すると
しても、不要となる部品メーカーは生き残れ
るかの瀬戸際
出荷額
15兆円弱 減
(-26%)
雇用
72万人弱 減
EV化による国内の自動車・鉄鋼・電子部品産業への経済インパクト
 国内需要のうち29%が自動車向で建築と
並びトップシェア。その自動車が脱炭素化
に向け軽量化へ走り、素材が鉄鋼からア
ルミ・CFRP等軽量素材へシフト
出荷額
3千億円強 減
雇用
36,000人強 減
 自動車のEV化に伴い、エンジン向電子部
品の需要が喪失するも、EV用車載電装シ
ステムの需要激増が補い余らしめる
出荷額
432億円強 増
(-26%)
雇用
6,500人弱 増
EV化による需要減インパクト
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
48
自動車業界におけるカーボンニュートラル施策の現状
トヨタやソニーでは取引先に対してCO2排出削減目標を設定しており、その他、自動車メー
カーではサプライヤーに対する排出削減スローガンを掲示するなどの動きがみられます
トヨタ
マツダ
日産
ホンダ
スバル
• 主要1次取引先に対し、21年の二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標として20年
比1ポイント厳しい、前年比3%減を要請
• 同時にサプライヤーのCO2排出量を調査し、削減を促す活動を実施2次、3次以降
の取引先にも広げる方針
• 2050年までにサプライチェーン全体でCO2排出実質ゼロを目標としている
• 上記達成に向けサプライヤーのCO2排出削減を支援する方針
• 2022年にも取引先の自動車部品メーカーにCO2排出量を減らすよう要請
• 排出量の削減目標比率は年内に設定する予定だが、「部品会社ごとに目標を立て
る」として一律の削減は求めない方針
• 主要部品メーカーに50年のCO2排出量ゼロに向けた工程表の提出を要請
• サプライヤーに対し、 25年度から19年度比年4%のCO2排出削減を要請したが、この
数値は目安との位置付けで、業態や規模を考慮した上で排出削減を促す意向
• サプライチェーンにおけるグリーン調達、統合環境マネジメントシステムの構築と環境負荷
物資削減のためのグリーン調達をさらに推進するとの方針を掲げるにとどまる
出所:各社アニュアルレポート、公開記事を基にDeloitte作成
ソニー
• すべての取引先に対してスコープ1、2についての開示を要求
• サプライチェーン全体で2018年度比2030年までに45%減。排出量で10%を占めるサプラ
イヤーに、2025年までに科学に基づく目標を設定
自動車
業界
その他
業界
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
49
EV化・脱炭素化対応を奇禍とした産業発展のための正のサイクル(グッドサイクル)
脱炭素化を奇禍とし、強靭な経営の筋肉をつくる”守り”と、新市場への積極進出により競
争に勝つ”攻め”のサイクルの両輪が未来の新たなSCの生き残りの道と考えらます
脱炭素化は旧来の下請け体質を温存しようとする企業にとっては脅威となる一方、
中小サプライヤーが下請けを脱し、自立した提案・開発型の企業として生まれ変わる契機にも
販売機会
の安定化
脱炭素を
きっかけとした
OEM/Teir1
のパートナーとして
の地位確立
開発原資と
新製品提案
接点の確保
新加工法・
製品の誕生
による競争
優位性の獲得
顧客との
新領域製品・
工程の共同
開発推進
コアコンピタンス
(経営の核)
の見極め
脱炭素対応
施策と
経営高度化の
同時推進
脱炭素対応
の成功例
としての
評判確立
“攻め”
サイクル
“守り”
サイクル
脱炭素対応
における・・・
脱炭素を契機と
した、経営体
制・事業の見直
しを実施
構築された顧客
との官営から新
製品提案機会
を獲得
CO2削減効果
等の脱炭素対
応事例としてだ
けではなく、優れ
た経営体制の
企業としての評
価を確立
製品付加価値
が高いだけでなく、
共同開発による
顧客との関係
性強化も寄与し、
サプライヤー間で
競争優位に
個別の脱炭素
対応施策では
なく、諸施策を
有機的に結び
付け、結果とし
ての経営高度
化を目指す取
組を実施
新製品・新技
術提案により、
新領域における
顧客との共同
開発を創発
結果として、収
益が安定拡大
脱炭素対応及びそれによる高度
な経営体制、新製品開発実績
により、顧客から信頼されるビジ
ネスパートナーとしての地位確立
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
50
物理的リスクにより生じる財務的影響
TCFDは、洪水や熱波などにより、サプライチェーン障害による製造能力減少や操業コスト増
大、施設への損傷による資本コスト増大など様々な財務的影響を受けると指摘しています
物理的リスクとは
最終報告書
気候関連財務情報開示
タスクフォースの勧告
(2017)
急性リスク
台風や洪水などの異常気象の激化により
受ける損傷や浸水、サプライチェーンの寸断
慢性リスク
海面上昇や長期的な熱波などによる操業
設備費の追加投入や生産可能面積縮小
サプライチェーン障害や輸送困難による製造能力減少や収入減少
従業員の健康・安全への影響による収入減少及び高コスト化
不動産・資産の損傷による現有資産の償却及び早期除却
発電所への不十分な水供給などによる操業コストの増大
施設への損傷による資本コストの増大
販売量・生産量低下による収入の減少
これらの物理的リスクは、下記のような財務的影響を受ける可能性がある
急性リスクと慢性リスクの2つが存在・・・
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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51
将来高まる洪水リスク
業種 リスク/パラメータ
2030 2040 2050
日本 EU 米国 日本 EU 米国 日本 EU 米国
化学 洪水被害額 31.7
億USD/年
22.0
億USD/年
19.7
億USD/年
36.7
億USD/年
25.4
億USD/年
22.9
億USD/年
41.7
億USD/年
28.7
億USD/年
26.1
億USD/年
不動産管理・開発 洪水被害額 31.7
億USD/年
22.0
億USD/年
19.7
億USD/年
36.7
億USD/年
25.4
億USD/年
22.9
億USD/年
41.7
億USD/年
28.7
億USD/年
26.1
億USD/年
貯蓄・抵当・不動
産金融
洪水被害額 31.7
億USD/年
22.0
億USD/年
19.7
億USD/年
36.7
億USD/年
25.4
億USD/年
22.9
億USD/年
41.7
億USD/年
28.7
億USD/年
26.1
億USD/年
保険 洪水被害額 31.7
億USD/年
22.0
億USD/年
19.7
億USD/年
36.7
億USD/年
25.4
億USD/年
22.9
億USD/年
41.7
億USD/年
28.7
億USD/年
26.1
億USD/年
紙製品・林製品
森林火災発生率 1.690% 1.690% 1.690% 2.367% 2.367% 2.367% 3.045% 3.045% 3.045%
水ストレス 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高
食品・農業
洪水被害額、 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年
水ストレス 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高
主要作物の収穫量 -2.36% -0.75% -1.96% -3.70% -1.16% -3.04% -5.02% -1.58% -4.14%
飲料 水ストレス 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高
石油・ガス・石炭 洪水被害額 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年
鉄道 洪水被害額 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年
電力 洪水被害額 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年
金属・鉱業
労働生産性の低下
率
0.39% 0.04% 0.54% 0.60% 0.06% 0.84% 0.82% 0.08% 1.13%
気候変動による大きな懸念の一つとして、高い水準で将来洪水リスクが増大し、化学・不
動産・金融・エネルギーなど様々な業種がリスクに晒されることが予想されます
トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
※各セクターの主要なリスクをTCFD報告書・各種レポート・業界個社情報等から特定
※物理リスクについては4℃シナリオを想定
洪水リスク
中~高
洪水リスク
中
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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売上への影響推計
52 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
洪水リスク算出までの3段階アプローチ
洪水リスクを算定する方法として、影響度の大きい業種に対し、事業の特性やサプライ
チェーンを踏まえた洪水インパクト算定式を構築し、インパクトを算出することが可能です
洪水リスク計算
売上情報の採取(計算式の構築)
Ⅰ Ⅲ
計算式の構築
業種の分類
業種の絞込 計算要素の収集
b a
a b
貸出先の業種と企業数
をインプットし、洪水が関
係ない業種を除外する
※広告、人材、コンサル業
の貸出先は検討対象外
タ
ス
ク
事業にとって泣き所と
なる「場所」を業種ごとに
類型化する
例)製造業では「工場」、
小売では「店舗」など重要
拠点を特定。
拠点の種別(工場や店
舗)ごとに計算式を確
立。
※基本的には1日当たり売
上を求める計算式を構築
貸出先企業の拠点住
所、売上などの計算要
素のデータを収集し、拠
点ごとの1日当たり売上
を計算
ハザードマップを用い、浸
水深を特定し、復旧期
間を設定して洪水インパ
クトを計算する
1,800
2,000
検証対象
貸出先
成
果
物
 対象業種・企業一覧
 インパクト考察のため
の業種分類一覧
 洪水インパクト
算定式
 計算用データ
 洪水インパクト
算定結果
本店 工場 店舗
〇 〇 〇
〇 〇 ー
〇 ー 〇
A
B
C
サプライチェーン類型
製造小売
製造
小売
本店 工場 店舗
〇 a式 b式
〇 a式 ー
〇 ー b式
A
B
C
工場
店舗
店舗
拠点
AA区
BB区
CC区
住所
1日当
売上
a式
b式
b式
インターネットなどで収集
10-20m
3-5m
0.5-3m
ハザードマップ情報
復旧
期間
浸水深
10日
5日
3日
洪水
インパクト
1日当
売上
×
復旧期間
吉
野
家
Ⅱ
ハイリスク業種との
無差別な分析
1
サプライチェーンを
無視した分析範囲
2
売上損失が生じる
拠点の不明確さ
3
対
策
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
53
サプライチェーンを含めた業種別リスク分析アプローチ
既存の方法では業種分別なく本店のみを対象とし、売り上げ損失の算出方法が適切でな
い場合がありますが、サプライチェーンまで考慮したより詳細な分析方法を開発しています
A
B
C
D
生産機能に
依存
生産機能と
販売機能に
依存
貨物・旅客の
運送に依存
有形の
拠点や商材に
依存しない
産業
グループ
・製造
・製造小売
・飲食
・運送
・鉄道
・広告
・人材
・コンサル
業種例 特徴
〇
本店
サプライチェーン
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
-
-
〇
〇
-
〇
-
-
-
-
〇
-
管理 運営 製造 物流
販売/
サービス
商圏
拠点
事務所 事務所 工場 物流センター 店舗
XXXXX円
XXXXX円
XXXXX円
XXXXX円
拠点1日当
売上
ハイリスク業種との
無差別な分析
1
売上損失が生じる
拠点の不明確さ
3
サプライチェーンを
無視した分析範囲
2
 企業を産業グループ
別に分類し、特に洪
水リスクの高い業種
を抽出する
 拠点毎の売り上げを
把握し、洪水リスクに
よる売り上げ損失を
適切に算出する
 各業種ごとにサプライチェーンを整理し、重要拠点を特定する
 さらに同様のサプライチェーン・重要拠点を持つ業種をグループ化し、
サプライチェーンを含めた洪水リスク計算式に適応する
〇 該当あり
- 該当なし
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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54 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
洪水リスク分析によるリスクの可視化(最終成果物イメージ)
貸出先企業の拠点情報とハザード情報を紐付けることにより、ハザードレベルに応じた洪水
インパクトを算出し、取引先・拠点別洪水リスクを一覧化することでリスクを可視化します
企業別拠点情報 ハザード情報 洪水リスク
取引
先名
拠点情報
郵便番号 住所 業種
計算
方式
全社
売上
(百万円)
拠点1日当
売上
(百万円)
浸水深(m) 復旧期間(日)
PML
売上換算
(百万円)
拠点
拠点
種別
A社 aa工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 20 ~ 30 165,000
A社 bb工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 10 ~ 20 25 137,500
A社 cc工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 5 ~ 10 20 110,000
A社 dd工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 3 ~ 5 15 82,500
A社 ee工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 0.5 ~ 3 10 55,000
A社 ff工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 ~ 0.5 5 27,500
A社 gg工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 N/A 0 0
B社 aa工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 548 0.5 ~ 3 10 5,480
B社 aa店 店舗 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 0.45 0.5 ~ 3 10 4.5
B社 bb店 店舗 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 0.45 0.5 ~ 3 10 4.5
B社 cc 店 店舗 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 0.45 0.5 ~ 3 10 4.5
C社 aaセンター 物流センター XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 2,192 0.5 ~ 3 10 21,920
C社 bbセンター 物流センター XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 2,192 0.5 ~ 3 10 21,920
C社 aa 営業所 XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 0.5 0.5 ~ 3 10 5
C社 bb 営業所 XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 0.5 0.5 ~ 3 10 5
拠点別事業展開情報
ハザード
情報
洪水インパクト
▣ 製造業の例:
生産拠点である工場をベースに
1日当たり売上を均等割り
浸水深により復旧期間
が決まる
拠点1日当売上に復旧期間
を掛けることでPMLを推算
国土交通省による
ハザードマップ上の定義
に従い、各拠点の住所
について浸水深を設定
【定義】
河川が氾濫した際に
浸水が想定される
区域と水深
インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
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5. 質疑応答
55 質疑応答
これまでのESGに関するトレンド、およびトラン
ジション・ファイナンスへの対応などについて、
ご質問・ご意見いただけますと幸いです
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担当者紹介
56
担当者のご紹介
永井 希依彦
kiyohiko.nagai@tohmatsu.co.jp
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部
新規事業推進|フィナンシャルインダストリー
シニアマネジャー
デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて、航空宇宙・防衛業界を中心に
した戦略策定・財務分析・マーケティング及び金融機関向事業性評価に係る
コンサルティングプロジェクトに多数従事。その後航空機エンジン製造企業立上
に参画。執行役員(経営企画統括)として量産事業を軌道に乗せる。現在
は、監査法人トーマツにてファイナンスとインダストリノウハウを相互に融合を図る
コンサルティングプロジェクトに従事。航空宇宙、医療、農業及び製造業などの
業界において、新規事業立上/事業性評価支援、アセット評価態勢構築、
ICT関連事業開発(データマネジメント・AI・IoTを起点とする経営改善プロダ
クト/サービスの開発などに従事。
成果連動型委託契約事業(PFS)やソーシャル・インパクト・ボンドなどの新し
いファイナンス手法を活用した案件形成やインパクト評価を取り入れた経営・事
業計画に合った新規事業立案、公益活動事業の社会的価値評価支援にお
いてコンサルティングサービスを提供。これまでに、内閣府や国土交通省、そのほ
か地方自治体に対しPFS/SIBの案件形成支援を実施。他、文化庁や自治
体、民間企業に対しインパクト事業評価に係る支援実績多数。
山崎 遥
haruka.yamasaki@tohmatsu.co.jp
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部
新規事業推進
スタッフ
国内総合コンサルティング会社を経て、有限責任監査法人トーマツ入社。財
務諸表監査を目的としたシステム監査業務に従事。IT統制監査を中心に、
データを活用した監査により財務諸表監査に貢献。その後社内の新規事業推
進部門において各種クライアント 経営/リスクマネジメントにおけるデータ/デジタル
技術の活用を趣旨としたコンサルティング業務に従事。証券会社における流動
性リスク管理に係るデータ活用支援。
丁子 博司
hiroshi.choji@tohmatsu.co.jp
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部
新規事業推進
マネジャー
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APPENDIX
57 APPENDIX
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APPENDIX
58
Deloitteの支援メニュー(上流から下流まで)
DeloitteはESG活動の評価にとどまらず、ESG活動のテーマ選択から対外説明に至る多様な
サービスを有しており、一貫したESG活動支援が可能です
テーマ
設定
 社会的ニーズ、自社のミッション・
事業内容との親和性、他団体
とのすみ分け等の観点で企業に
最適な公益活動テーマを選択
実行
運営
 公益活動の円滑な立上・運営
のためのアクション項目・ロード
マップ・態勢・資金計画。活動の
モニタリング・改善プロセスの実行
(PDCA)
計画
立案
 企業本体の経営計画との整合
性・一貫性を具備した公益活
動の位置付け定義。実効性・
効率性を向上させるための外部
連携のあり方
成果
測定
 活動が受益者・社会に創出す
る実効的インパクトの多面的で
定量的評価
IR
活動
 企業価値・投資効率観点に注
目した、投資家等外部ステーク
ホルダ向ESG活動の成果の評
価・対外説明準備(ESG
Analytics)
PR
活動
 公益活動の効果的な周知、期
待する認知の獲得のため、PR方
針・ツール、コミュニケーション施
策を設計
2
4
6
1
3
5
※貴社および貴社の関係会社とデロイト トーマツ グループの関係において監査人としての独立性が要求される場合、本サービス内容がご提供できない可能性があります。詳細
はお問合せください。
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  • 3. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 1.サステナビリティ活動を取り巻く 外部環境・トレンド 3 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド
  • 4. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 4 インベストメントチェーンから見た公益活動コンセプトの位置付け 公益活動のコンセプトは、インベストメントチェーンの中におけるステークホルダーの問題意識 によってそれぞれ位置付けが異なります 銀行 企業 国民 (年金受給 者) 融資 投資 リターン 賛同/反対 価値創造 投資 リターン リターン 運用機関 アセット オーナー (公的年金 (GPIF等)、 企業年金等) リターン 投資 リターン 投資 企業は持続可能な社 会に貢献しているか? 企業は地域社会への 責任を果たしているか? 企業は社会的価値を 生めているか? 投資は“正しく” 使われているか? 投資は期待通り に回収できるか? 投資は期待通り に回収できるか? 投資は“正しく” 使われているか? ESG SDGs CSR CSV ESG 気候変動 リスク 気候変動 リスク 融資は期待通り に回収できるか? 気候変動 リスク 問題意識 コンセプト
  • 5. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 5 各公益活動コンセプトの普及・発展段階 公益活動コンセプトは普及・発展プロセスにおいて各々位置付けが異なるが、金融業界を 中心に国際的に取組が順守されているという点で、 TCFDは比較的先進的な概念です ※但し、公害や金融危機などの突発的で緊急対応を要する社会問題については、上記の発展プロセスを経ず当初から業界ルールや法律が形成される場合も存在する 評 価 方 法 一部の機関・有識者・著 名人が提唱する、問題提 起や行動の呼びかけであ り、特定の団体や業界で の合意にまで至っていない もの 金融やその他一部の産 業セクターの中で認知さ れ、取組の必要性につい て合意がなされているもの 特定業界のみならず広く 世間・他業界の企業にも 認知され活動に組み入れ られているもの 順守に拘束力があり、違 反時には法的根拠を持っ てペナルティが適用される もの ペナルティは存在しないも のの、効率的な社会活 動・ビジネスの推進のため に順守が当然とみなされ ているもの 概 要 法律 業界ルール 業界慣習 合意事項 課題意識 CSR 公益活動コンセプトの普及・発展プロセス CSV SDGs ESG TCFD 具 体 例 慣習・民間団体の個別の指標・指針に従い価値付け 国内・海外の共通の基準に基づき価値付け 炭素税 公益活動 コンセプト
  • 6. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 6 公益活動コンセプトの概念整理 ESG/SDGsは社会的責任を果たす上でのコンセプトであったCSR・CSV・気候変動リスクと比 較し、具体的な評価軸や達成目標・評価指標を提供している点で新しい概念といえます 導 入 背 景 創 出 価 値 位 置 付 け 取 組 主 体  1990年代に多国籍企業 の引き起こす社会・環境・ 経済的問題に対する世の 中からの批判に応える形 で企業の社会的責任 (CSR)を果たす取り組 みで導入され始める 企業が本業を通じて社会貢 献活動を行うものであり、利 益創出よりも社会貢献価値 の創出に軸足を置く CSR 企業が社会的責任を果たす 上でのコンセプト 外部 要請 対応 付加 価値 創出 企業 投資 家 公的 機関  2011年マイケル・ポーター 教授が「事業を通じた社 会的課題解決」を提唱し 認知される  CSRの経済的価値と社会 的価値の二律背反を否 定し、両者を統合した点 で画期的 事業を通じて社会的課題解 決を目指すものであり、利益 創出と社会貢献の両立を志 向する CSV 企業活動の経済的価値と社 会的価値両立のためのコンセ プト 外部 要請 対応 付加 価値 創出 企業 投資 家 公的 機関  2006年に国連のコフィ・ア ナン氏が長期的に環境・ 社会に配慮した投資を宣 言し始まる  宣言に同意した投資家は 「責任投資原則(PRI)」 に署名し、ESG投資家とし て登録される 投資活動を通じて企業の環 境・社会への負の影響を抑 制し、事業の存続を目指すも の。最終目的は株主価値の 向上に置かれる ESG 投資家の意思決定にあたって の企業活動の評価軸 外部 要請 対応 付加 価値 創出 企業 投資 家 公的 機関  2015年に国連の「持続可 能な開発サミット」で新た な持続可能な開発アジェ ンダが採択されたことによ り開始  定性的であったMDGsの反 省から具体的な評価指 標を設定 企業の事業活動を通じて17 の項目と169のターゲット、 244の具体的な評価指標を 用いて、社会的課題の解決 に軸足を置く SDGs 個別企業の公益活動におけ る 達成目標・評価指標 外部 要請 対応 付加 価値 創出 企業 投資 家 公的 機関  気候変動のリスクにさらさ れる資産の評価と配分を 金融セクターが適切に行う ため、FSBによって、事業会 社が抱える気候変動のリ スクと機会の評価の枠組 の構築のためTCFDが設立 される 気候変動領域に限定し、そ のインパクト算定とその対処、 及び開示・投資家との対話を 志向する 気候変動リスク 気候変動が生じた場合の金 融市場の安定を目的として 算出される 外部 要請 対応 付加 価値 創出 企業 投資 家 公的 機関
  • 7. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 社会の意識変革 生活者および投資家の公益活動や地球環境へ配慮した事業活動に対する意識は年々 大きく伸びており、行政も消費者の意識変革に伴う企業の行動変容を促しています 従業員は企業に対するESGへの取り組みに関して、とても関心が高くアクションを求めている 従業員は投資家の次に気候変動に対する企業アクションを促す存在なっている 「長時間労働」・「キャリアアップ」から「ワークライフバランスを保った働き方」に就業意識の軸が変化 しており、企業選択の大きな理由の一つになりつつある 透明性の低い企業で働きたくないという従業員が多く、透明性の高さが求められている 従業員 生活者のSDGs/気候変動への認知は年々大きく伸びている 企業の事業運営上の地球環境への配慮や責任ある行動への関心が高い 購買行動の際にも「社会課題への解決姿勢」や「企業のビジョン・価値観」を重視する消費者の方が継続 購入や他者への紹介を積極的に行っている 消費者 国内でも、投資をする際に「企業のESGに対する取組を考慮する」の回答率が一年間で約6割から約8割に 増加 海外では、投資家が株式分野でのESG投資になじみ、債券や不動産にもESG意識が浸透してきている 投資家 出所:企業広報戦略研究所 『 2020年度ESG/SDGs に関する意識調査 』、日経ESG報道 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 7
  • 8. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. ESG認知率 国内の生活者の公益活動の認知率は急激に伸びており、特に20代男性、50代男性の 認知率が高い傾向にあります SDGs認知率 1.5 1.7 2.0 2.6 3.8 5.5 7.3 7.2 10.0 13.3 14.8 11.3 13.8 12.4 15.7 19.3 24.7 20.6 20.8 28.4 83.7 87.0 84.2 85.0 80.5 75.1 68.0 72.2 69.2 58.4 6.4 6.4 9.2 9.5 15.1 11.3 17.9 17.0 20.1 27.2 19.3 20.1 21.2 21.1 26.2 27.8 30.3 29.6 27.9 34.5 74.3 73.5 69.6 69.4 58.7 60.9 51.8 53.4 52.0 38.3 4.2 5.5 14.1 18.2 81.7 76.3 7.1 14.0 17.1 25.8 75.8 60.2 認知率 23.7 18.3 認知率 39.8 24.2 詳しく知っている 聞いたことはある 知らない 詳しく知っている 聞いたことはある 知らない 男性20代 男性30代 女性60代 女性50代 女性40代 女性30代 女性20代 男性60代 男性50代 男性40代 男性20代 男性30代 女性60代 女性50代 女性40代 女性30代 女性20代 男性60代 男性50代 男性40代 (%) (%) 41.6 30.8 16.3 13.0 15.8 15.0 19.5 24.9 32.0 27.8 61.7 48.0 25.7 26.5 30.5 30.7 41.3 39.1 48.2 46.6 (%) (%) 出所:企業広報戦略研究所 『2019年度ESG/SDGs に関する意識調査 』、 『2020年度ESG/SDGs に関する意識調査 』 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 8 2020年 (n=10500) 2019年 (n=10500) 2020年 (n=10500) 2019年 (n=10500) 従業員 消費者 投資家
  • 9. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 9 地球温暖化/気候変動の認知・関心及び行動変化 地球温暖化や気候変動問題への関心度は20代で約5割、60代では8割と高く、認知して いる人の約半数が地球環境に配慮して行動を変えた・変えたいと考えています 80 70 63 56 46 18 26 33 36 43 2 4 4 8 11 60代 50代 40代 30代 20代 地球温暖化/気候変動問題の認知・関心 19 18 15 14 16 41 39 41 38 38 40 43 44 48 46 60代 50代 40代 30代 20代 認知している人の行動への影響 (%) (%) 地球温暖化/気候変動問題という言葉は聞いたことがあり、興味もある 地球温暖化/気候変動問題という言葉は聞いたことがあるが、興味はなし 地球温暖化/気候変動問題という言葉は聞いたことがない 自分の行動を変えた 行動を変えたいとは思っているが、変わっていない 特に自分の行動は変わっていない  年齢層が高くなればなるほど、地球温暖化や気候変動問題に関 心が強い  最も関心度が低い20代でも、約半数は関心があり、気候変動は 消費者の大きな関心事項となっている  認知している人のうち、行動を変えた人はどの年代においても2割 程度。行動を変えたいと思っている人は約4割と、多くの人が環 境に配慮した行動をとりたいと感じている 従業員 消費者 投資家
  • 10. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 10 企業に求められる環境への配慮 消費者は企業に「リサイクルの仕組み構築」や「環境にやさしい製品を開発・販売する」こと を期待しており、自社事業における環境配慮・責任が問われています 出所:サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果(ボストンコンサルティンググループ; 2022年3月) 18 16 22 30 44 44 その他 環境を守る活動に参加する 環境に優しい生産設備や店舗開発をする 環境にやさしい製品を開発・販売する 販売後のリサイクルの仕組みを構築する 環境にやさしい活動をしている団体や技術 開発のために資金を提供する 地球温暖化/気候変動に関して企業に期待すること (%)
  • 11. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. エシカル行動実践内容 実際に、「リサイクル活動・購入」を実践している消費者が60%、「環境配慮商品の購入」 が約30%と、エシカル消費として環境に配慮している企業の商品が選ばれています 0.5 1 2 2.3 5.4 9.7 12.1 12.7 18.4 20 20.1 30.6 50.7 52.6 60.2 61.9 73.7 86.8 その他 エシカルファッション エシカル消費につながる取り組みを行う企業への投資 エシカル消費につながる取り組みを行う団体への加入 被災地以外の国内外への寄付 地域コミュニティ活動への参加 再生可能エネルギーの利用 寄付型商品の購入 フェアトレード商品の購入 有機食品・製品の購入 被災地への寄付 環境配慮商品の購入 地産地消 国産品の購入 リサイクル活動・購入 食品ロス削減 電気をこまめに消す等の省エネ マイバッグ等の利用  エシカル消費を実践している人の うち、とくに消費の観点では、「リ サイクル活動・購入」が多く約 60%を超えている  「環境配慮型商品の購入」は約 30%とある程度重視されており、 環境への配慮が商品選択の判 断基準となっている 出所:消費者庁「倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査報告書」に基づき、Deloitte作成 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 11 従業員 消費者 投資家 エシカル行動実践内容とその割合
  • 12. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 12 従業員の企業のESG対応に対する就労意欲 従業員からは、企業が法令遵守を全うするだけでなく、事業活動の中で地球環境に配慮 し、従業員や地域社会を重んじる姿勢をもつことが期待されています ESGのどの項目を大事にしている企業で働きたいと思うか 84% 83% 86% 環境 社会 ガバナンス 出典:ESGに関するサーベイシリーズ2021(pwc:2021) 従業員 消費者 投資家
  • 13. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 13 気候変動に関するアクションにおける従業員の影響度(環境) 環境面においては、投資家や株主に次いで、従業員は企業の気候変動に対するアクション に影響を与える無視できない圧力になっています 出所:気候変動に関する企業経営者の意識調査 2021(デロイトトーマツグループ; 2021年4月) 投資家または株主からの要求 社会的アクティビズムや従業員アクティビズムの増加 気候関連災害の深刻化 自社の業務や財務への直接的なマイナスの影響 同問題や問題解決に向けた企業の役割に対するマスコミ報道の増加 新たな規制基準/報告要件 政府のアクション/懲罰から受ける損失 気候変動を理由とした従業員の身体とメンタルの健康に対するマ イナス影響の増加 競争上の圧力 再生可能ではない原材料や資源に対するアクセスの減少 消費者または従業員による自社事業のボイコット 人材獲得や定着の難しさ 14 15 18 19 19 19 30 31 31 32 35 38 (%) 気候変動に関する企業のアクションに影響を与える外部圧力 従業員 消費者 投資家
  • 14. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 14 就業に対する意識の変化(社会) 働き方に関して、従業員の間では「給料や出世で報われなくても、ワークライフバランスを 保って、好きな仕事や家庭生活を優先したい」という思いがより強まっています 出所:野村総合研究所「就業意識の変化から見た働き方改革」 従業員 消費者 投資家 過去約20年の間に、自分の趣味や家庭を仕事より優先する価値観はより強まっており、 それらの要望にうまく応えられない場合、必要な人材が確保できない可能性があります 43% 42% 55% 73% 40% 39% 49% 65% たとえ収入が少なくなっても、勤務時間が短い方が良い 出世や昇進のためには、多少つらいことでも我慢したい 人並み程度の仕事をすればよい 会社や仕事のことより、自分や家庭のことを優先したい 1997年 2015年 1997→2015年の就業意識の変化
  • 15. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 15 働き方改革に関する政府の方針・取組(社会) さらに、政府においても働き方改革が積極的に推進され、2018年には「働き方改革関連 法」が成立し社会全体でのサステナブルな働き方の定着が推し進められています 政府の働き方改革の取組の歩み  「働き方改革実行計画」が閣議決定  同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇 改善、賃金引上げと労働生産性向上、罰 則付き時間外労働の上限規制の導入、等 について方針を策定 2017 2018  「働き方改革関連法」が成立  時間外労働の上限について、臨時的な特別 な事情がある場合でも年720時間、単月100 時間未満を原則とし、長時間労働の抑制を 義務化 2019  「働き方改革関連法」が順次施行  年次有給休暇の確実な取得奨励  月60時間以上残業に対する割増賃金率の 引き上げ  労働時間状況の確実な把握 等  「働き方改革実現推進室」の発足  長時間労働の是正、そして、同一労働同一 賃金、高齢者の方々の就労促進・拡大、テ レワークなどの柔軟な働き方を実現するための 組織として設立 2016 出所:首相官邸HP「働き方改革の実現」 現状同一労働でも非正規の社員の処遇 が正社員と異なることから、モチベーション が低く、生産性向上の阻害要因となって いる 同一労働 同一賃金 長時間労働は仕事と家庭生活の両立を 困難にし、少子化の原因や女性のキャリ ア形成、男性の家庭参加を阻む要因と なっている 長時間労働 の是正 付加価値の高い産業への人材移管が進 んでいないことから、国全体の生産性向 上のため、転職しやすい労働市場・企業 慣行を確立することが必要 キャリアパスの 多様化 政府の働き方改革への問題意識 従業員 消費者 投資家
  • 16. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 16 従業員による企業の透明性への意識(ガバナンス) 加え、企業活動における透明性の高さは、従業員からも評価をされるようになってきており、 優秀な人材の獲得には透明性が高く倫理的な業務の遂行が必要です 出所:EY(2015)『アジア太平洋不正行為サーベイ』、 Slack (2018)『Future of Work』 78% 贈収賄や汚職に関与 する企業で働きたくない 25歳未満の回答者うち86%が 非倫理的な企業では働かない/辞めると回答 従業員 消費者 投資家 贈収賄や汚職に関係する企業に対する認識 87% 「次の仕事は透明性が あるところがよい」 80%「雇用主がどのように意思決定 しているのかもっと知りたい」 Future of Work 調査結果 ミレニアム世代は、同問題に対し関心が特に高い
  • 17. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 2019 2020 投資の際にESGを考慮すると回答した割合 企業への投資の面からみても、投資時に「企業のESGへの取組を考慮する」と回答した割 合は増加しており、企業経営の根幹にESG要素が組み入れられつつあります 77.6% 出所:企業広報戦略研究所 『2019年度ESG/SDGs に関する意識調査 』、 『2020年度ESG/SDGs に関する意識調査 』 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 17 従業員 消費者 投資家 とても考慮する 18% 少し考慮する 44% あまり考慮しない 15% まったく考慮しない 3% 企業への投資を考 えない/投資に興 味がない 20% 62.1% とても考慮する 22% 少し考 慮する 56% あまり考 慮しない 18% まったく考 慮しない 4%
  • 18. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 18 環境・社会・ガバナンスへの対応に関する「投資家」の動向 ESG要素の投資への組み込みにコミットするPRIへの署名者数は2006年以降急激に増えて おり、ESG要素に配慮できない企業は投資対象にならない世の中が訪れつつあります 従業員 消費者 投資家 18 2021年時点で3,826の金融機関が署名し、全世界 で運用資金残高は約1京5,000兆円に達する※ 実際のPRI署名者数推移 PRIの6つの投資原則 1 私たちは投資分析と意思決定プロセスにESGの課 題を組み込みます 2 私たちは活動的な株式所有者となり、株式の所 有方針と所有習慣にESG問題を組込みます 3 私たちは投資対象に対してESG問題について適切 な開示を求めます 4 私たちは資産運用業界において本原則が受け入 れられ、実行に移されるように働きかけを行います 5 私たちは本原則を実行する際の効果を高めるた めに協働します 6 私たちは本原則の実行に関する活動状況や進 歩状況に関して報告します ESGに配慮できない企業は 投資を受けにくい社会へ 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 運用資産 PRI署名数 (兆円) (署名者数) 出所:PRI HP及びBroomberg「日本のESG投資、遅れている年金基金を動かす必要」
  • 19. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 世界のESG投資の状況と傾向 海外の投資家の意識として、アメリカの機関投資家PIMCO*1のESG責任者は、株式だけで なく債権や不動産にもESG意識が浸透してきていることを述べています 出所:日経ESG『米PIMCO オリビア・アルブレヒト氏「ESG投資は株式から債券へ、リターンとインパクト両立』 *1:パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(Pacific Investment Management Company LLC)。アメリカのグローバル資産運用会社であり、債券運用残高では世界最 大級のアクティブ運用会社 サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 19 従業員 消費者 投資家 PIMCO ESGビジネス 戦略責任者 オリビア・アルブレヒト氏  欧州の機関投資家をはじめ、オーストラリアやカナダ、アメリカの 機関投資家、さらには個人投資家も、債券分野でのESG投資 に関心を持っています  株式分野でのESG投資が先行し、投資家がESG投資になじみ、 株式だけでなく、債券や不動産などすべての資産クラスに当て はめる動きが始まっています  例えば、グリーンボンドは、誕生してから5年以上たち、2018年 の発行残高は1550億ドル(約17兆円)に達しました 株式分野でのESG投資が先行し、投資家がESG投資になじんできた。 そして株式だけでなく、債券や不動産などにも波及
  • 20. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. サステナビリティ活動を取り巻く外部環境・トレンド 20 金融機関と大企業のグリーンリストに基づく開示義務 EUでは、事業ポートフォリオにおいて採用する技術種類・閾値まで設定し、そのうえで事業 内容をグリーンか否かの選別結果の開示を義務化しています 電力会社X社の売上高の構成割合 石炭火力 20% ガス火力 50% 風力発電 30% タクソノミー適合要件 ① グリーン・リストの該当セクター? No Yes Yes ② 技術スクリーニング基準をクリア? No Yes ③ DNSH基準をクリア? Yes ④ ミニマム・セーフガードをクリア? Yes X社の売上高タクソノミー適合率 0% 0% 30% 全社で30% 適 合 率 計 量 イ メ ー ジ 金融機関 大企業(事業会社) 資産運用事業者等のサステナビリティ・リスク 情報の開示に関する規則 (Sustainable Finance Disclosure Regulation: SFDR) 非財務情報開示指令 (Non-Financial Reporting Directive: NFRD) (2014年)改訂予定 根拠 規則  タクソノミー活用状況  投融資タクソノミー適合率  貢献する環境目標(6項目)の種類  売上高タクソノミー適合率  グリーンリスト該当経済活動のCAPEX(設備 投資)とOPEX(支出経費)の割合 開示 内容 投資先 企業 各社の売上高 タクソノミー 適合率 本ファンドに 占める各社の 投資割合 各社の 本ファインドに 占める適合率 本ファンドの タクソノミー 適合率 経済 活動の 説明 A社 12% × 重み30% = 3.6% B社 8% × 重み50% = 4.0% C社 15% × 重み20% = 3.0% 左記 合計 10.6% 投融資先企業の低・脱炭素に向けた取組を単一指標で横並び比較や、特定企業の時系列変化も把握されることに 従業員 消費者 投資家
  • 21. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 2.トランジション・ファイナンスの概要と 今後の需要 21 トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要
  • 22. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 22 地球温暖化がもたらす気候変動及び経済・社会にもたらすインパクト 地球温暖化により生じる海面上昇や洪水、熱波は、生産可能な土地の喪失や経済の停 滞、食料不足、健康被害など経済・社会に深刻な負のインパクトをもたらしています 温度上昇がもたらす様々な変化 海面上昇 洪水 干ばつ 熱波 生態系崩壊 氷河や氷床の融解や海水温の上 昇による熱膨張により海水量が増 加 上昇気流や湿度の変化により生 じる豪雨により、沿岸部や河川が 氾濫 人口増加や貧困などによる過耕 作や過放牧、森林減少などによる 気候変動により干ばつが発生。繰 り返される干ばつは砂漠化を進行 温室効果ガスの排出量の急増に より、地球上の熱が閉じ込められ、 生命を脅かすほど気温が上昇。 山火事の原因としても懸念される 生息地の変化、干ばつ、洪水、 気温上昇などにより、4,000種以 上が絶滅危惧種となっている 様々な変化が与える経済的・社会的インパクト 働く人々の 生産性の低下 国際通貨の 不安定化 投資機会や 生産効率の鈍化 生産可能な 土地の喪失 健康状態の悪化・ ウェルビーイングの低下 食料不足の深刻化 熱波による健康被害やそのほか異常気象に よる妨げにより、労働者の生産性低下を招く 暴風や洪水等異常気象により失業や事業 停止、住居・インフラ損失など、気候変動に よる通貨の変動リスクが高まり不安定に 被害地域の再生による資金の投入が膨大に なり、革新的技術等を促す資金を圧迫し経 済停滞を招く 高潮の被害や田畑への海水侵入による農 作物が育たない、また水没して使用できない など被害が生じる 熱波や洪水などの被害により、疾病率や死 亡率の上昇を招き、健康及びウェルビーイン グを損なう 干ばつや熱波、生態系の変化により農業生 産が難しくなり、生産性が低下、またそれらに より食料資源不足を招く
  • 23. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 23 パリ協定と目標実現のためのトランジションの必要性 度重なるCOP開催の末、パリ協定が採択され「世界の平均気温上昇を2度以内に抑える」 という国際社会の目標を設定しました。しかし、目標実現には膨大な資金供給が必要です 1992 国連気候変動枠組条約 1995 国連気候変動枠組条約締約国会議(COP) 1997 COP3 京都議定書採択 2009 COP15 コペンハーゲン合意 2010 COP16 カンクン合意 2011 COP17 ダーバン合意 2013 COP19 ワルシャワ決定 2014 COP20 気候行動のためのリマ声明 2015 COP21 パリ協定採択 全ての国が参加する制度の構築に合意。世界で目指すべき 目標を設定 自国の貢献案の事前情報や交渉要素案を設定 2020年以降の削減目標の提出時期を設定 全ての国が参加する新たな枠組み構築に向けADP設置 各国が提出した削減目標等を国連文書に整理 先進国・途上国の2020年度までの削減目標・行動のリスト 化を呼びかけ 先進国を中心とした気候変動に対する取り組み内容であり、 米国不参加のため制度としては不十分 気候変動への取り組みを検討するため、以降、毎年開催 197か国・機関が締約。1994年に発行 官民連携による、気候変動に対応するための 様々なファイナンスアプローチ及びそれらのガイドライン等 制度整備の必要性 世界の平均気温上昇を工業化以前から2度以内に 抑える 目標 取り組み 全ての国が削減目標を5年ごとに提出し、国内で の実施状況を報告すると共にレビューを受け、5 年毎に世界全体での実施状況を検討 課題  目標実現のための具体的な実施指針の提供  製造工程の低炭素化やクリーンエネルギー・ グリーンマテリアル開発、省エネ技術等技術 開発・事業展開を支える資金供給やそれらを 促す仕組みの導入 気候変動に対する国際会議の開催と取り決め パリ協定
  • 24. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. “パリ協定で定 められた・・・世 界的な目標を 達成するには、 極めて巨額の 資金が必要に なる。” トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 24 トランジション・ファイナンスとは ICMAはパリ協定の目標実現に必要な“移行”に対し巨額の資金供給を促すため、同目標 の実現に貢献する投資目的をもったトランジション・ファイナンスを定義しました ”脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略に則り、着実なGHG削減の取組 を行う企業に対し、その取組を支援することを目的とした新しいファイナンス手法“ 国際資本市場協会 2019年にトランジショナル・ファイナ ンスのワーキンググループを設置し、 ハンドブックを作成 クライメート・トランジション・ ファイナンス・ハンドブック(2020) ①ボンド・ ローン発行 ②資金調 達・事業実 施・報告・ 償還 ② トランジション・ファイナンス トランジション・ファイナンスとは ①発行の目的がパリ協定の目標を達成するためのトランジ ションであること ①発行された債券がグリーンボンドやサステナビリティボンド、 サステナビリティ・リンク・ボンドの原則に整合したもの ②4要素の推奨開示が求められる: 実施の透明性 科学的根拠のある戦略(目標と経路) ビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティ トランジション戦略とガバナンス 1 2 3 4
  • 25. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 25 トランジション・ファイナンス活動の概念 既に、移行を目的・意識した民間企業等によるカーボンニュートラルやゼロエミッション、省エ ネなど様々な活動が実施されていますが、本講演では狭義のTFをご説明します 狭義の トランジション・ファイナンス 広義の トランジション・ファイナンス GBP等原則を踏まえTF開示4要 素に対応し、政府の公的支援 を受け実施される活動 GBP等原則を踏まえTF開示4要素 に対応するが、公的支援を受けず、 民間独自で推進される活動 CNやゼロエミッションなどTFの狙いと合 致するが、TFハンドブックやGBP等原則 に整合せず、独自で実施される活動 本講演でご説明する範囲
  • 26. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. もたらされる変化 資金供給・循環システム導入 仕組みの整備 トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 26 トランジション・ファイナンスの仕組みと狙い 利率優遇等を行うことで企業に動機を与え、企業の透明性向上により信頼を獲得し、さら なる投資資金の呼び込みやリファイナンスなど資金が循環する仕組みを構築します パリ協定採択 ICMA トランジション・ ファイナンスハンド ブック公開 タクソノミーとの 整合 GNP・SBP・SLBP の原則に整合 TCFDの開示フ レームワークの 活用 トランジ ション・ ファイナ ンス開 示4要 素の要 求 利率等優遇 債券・ローン発 行/投資 社債発行・ 資金調達 TFプロジェクトの 実施 レポーティングに よる透明性の 確保 外部評価による 信憑性担保 リファイナンス 低・脱炭素 技術発達 省エネ・ 高効率化 グリーン素材・ 商品の流通 購入・協力 社会 全体で パリ協 定目標 の実現 戦略・目標・事業報告等情報 開示によるESG評価向上 ESG投資拡大 基本指針やロードマップ の提供・金融支援 自治体・金融機関 企業 機関投資家・ アセットマネジャー ESG評価機関 第三者評価機関 政府 家計 COP21 技術・素材 利用 中小企業 1 2 3 4 5 6 7 8 10 12 13 14 15 16 17 18 検証 償還 9 11 トランジション・ファイナンスの 要求事項明確化 トランジション・ファイナン スによりもたらされる 変化 トランジション・ファイナンス 資金の供給促進 トランジションプ・ロジェクト の普及促進 科学的根拠に基づいた達成経路 及び透明性ある以降体制の構築 Push: 政府自治体による事業組成支援 Pull: 投資家からのESG対応要請
  • 27. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 27 気候変動に対する様々なファイナンス手法の発展とトランジション・ボンドの範囲 気候変動への対応を目的とするグリーンボンドやサステナビリティボンド、サステナビリティ・リ ンク・ボンドの原則に整合したファイナンスのうち、開示4要素を含む手法が該当します 目的 発行体 用途 要求 事項 グリーンボンド サステナビリティボンド トランジションボンド** サステナビリティ・リンク・ ボンド/ローン 企業や地方自治体等が、国内外の グリーンプロジェクトに要する資金を調 達するために発行する債券 ①調達資金の使途はグリーンプロジェ クトに限定②事業の評価と選定のプ ロセス③調達資金の追跡管理④レ ポーティングによる透明性の確保 グリーンボンド①~④と同様 パリ協定の目標貢献を前提とし、グ リーンボンド発行に至らないがこれから “移行”する企業に対し発行する債券  気候変動・環境に配慮した内容  再生可能エネルギーに関する事業、 汚染の防止と管理に関する事業、 関する事業、生物多様性保全に 関する事業、環境配慮製品、環 境に配慮した製造技術・プロセス に関する事業、グリーンビルディング に関する事業等 環境・社会・ガバナンス面での持続可 能性に貢献する企業に対し発行する、 資金用途が特定されない債券/融資 ①KPIの選定②SPTs(サステナビリ ティ・パフォーマンス・ターゲット)の測定③ 債券の特性(成果に対する利率の 変動等)④レポーティング⑤検証  環境・社会・ガバナンスの観点から 持続可能性に貢献する事業。資 金の使用用途の制約はない。  (使用例)再生可能エネルギー利 用率向上、温室効果ガス排出量 削減、環境に配慮したポートフォリオ 編成、サステナビリティ製品の売上 増加  ①エネルギー:ガスエンジン発電 所のCO2排出量削減、二酸化炭 素貯蔵、ガス輸送インフラ、石炭 ガスの転換、廃棄物発電利用  ②交通:船舶の使用燃料転換、 航空機における代替燃料の利用  ③インダストリー:セメント、メタル、 ガラスの効率的な利用等 ①調達資金の使用はエネルギー、交 通、インダストリーに限定②事業選定 における評価③追跡管理④定期的 な報告による透明性確保・事業評価 *グリーンボンドプリンシプル、ソーシャルボンド、プリンシプルの略称 **AXA Investment Managersの「Guidelines for Transition Bonds」を参考 地球環境および社会化課題解決双 方に資するプロジェクトに限定し発行 する債券(GBPとSBP*に整合)  グリーンボンドと同様。ソーシャルボ ンドで指定される10領域も含む  例:貧困ライン以下で暮らしてい る人々、排除され、あるいは社会 から取り残されている人々、あるい はコミュニティ、障がい者、移民や 難民) トランジション・ファイナンスは、上記のうち奨励開示4要素(トランジション戦略・ガバナンス、 環境面のマテリアリティ、科学的根拠ある戦略、実施の透明性)を考慮したもの 企業 自治 体 金融 機関 企業 自治 体 金融 機関 企業 自治 体 金融 機関 企業 自治 体 金融 機関 資金用途制約: 対象領域 : なし あり グリーン ソーシャル 資金用途制約: 対象領域 : なし あり グリーン ソーシャル 資金用途制約: 対象領域 : なし あり グリーン ソーシャル 資金用途制約: 対象領域 : なし あり グリーン ソーシャル
  • 28. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 28 トランジション・ファイナンスに関する国際動向 国際動向を見ると、トランジション・ファイナンスは任意の取り組みではなく、タクソノミーとの 整合やTCFD開示フレームへの落とし込みなど制度として組み込まれていく傾向にあります 2019 2021 TCFD「Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans」の公開 [2021/10] オーストラリアロードマップ の公開。2025年までに Sustainable Finance Taxonomyを策定 [2020/011] TEGによる「タクソ ノミー最終報告」 の公[2020/03] AXAIM「トランジションボンド ガイドライン」発行 ICMA トランジション・ファイナ ンスのためのWGの組成 [2019/06] CBIホワイトペーパーにて信号機 システムを用いアセット毎の適 格性を評価 シンガポールタクソノミー案 (信号機型タクソノミー)の公開 [2020/09] アジア地域向けタクソノミー 策定に向け運営委員会 「ASEAN Taxonomy Board」組成 [2021/03] IMCA「Climate Transition Finance Handbook」を公開 [2020/12] マレーシアタクソノミーにて事 業活動毎に5つのカテゴ リーを分類[2021/04] 日本「クライメート・トランジション・ファ イナンスに関する基本指針」公開 日本「アジア・エネルギー トランジション イニシアティブ」設立 EUタクソノミー「委託法」(緩和と 適応のみ)の採択 [2021/5] 2020 カナダタクソノミー案の 公開[2020/02] 1 2 EUタクソノミー:移行計画の開示推奨  2021年、Platform on Sustainable Financeが「Transition finance report」にて、タクソノミーレポートに「移行計画」 や「移行計画」においてどのようにタクソノミ ーと整合しているかを開示するよう推奨  今後、“移行”を踏まえ環境に負の影響を 与える活動や企業が停止すべき活動等を 整理し、EUタクソノミーに新たな基準を盛 り込む考えを示している TCFD Transition Planの開示ガイダンス  投資家が企業の気候関連のリスクと機会を適切に評価 するための企業の情報開示フレームワーク(戦略・ガバナ ンス・リスク管理・指標と目標)に対し、 移行に対する開示情報として、新たに Transition Planを公表  移行に伴う予算や目標の設定、シナリオ 分析、移行計画や成果のレビュー体制等 へのガイダンスが盛り込まれている 1 2 TCFD (2021) 「Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans」 Platform on Sustainable Finance (2021) 「Transition finance report」
  • 29. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 29 国内におけるトランジション・ファイナンスの動向 日本においては、金融庁・経産省・環境庁が基本指針を策定し、情報共有プラットフォーム を提供。民間サイドではMUFGがASEAN主要銀行と連携しスタディグループを推進しています 金融庁・経産省・環境庁 「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」 MUFG(三菱UFJ銀行) 「Asia Transition Finance Study Group」 「クライメート・トランジション・ファ イナンスに関する基本指針」  パリ協定の目標実現に向けて、 国内においても移行のための資 金供給を促すべく、金融庁・経 産省・環境庁主導により、 ICMAのハンドブックを基にした 「クライメート・トランジション・ファ イナンスに関する基本指針」を 策定  特にCO2排出量の多いインダス トリーに対し、トランジション・ファ イナンス推進のためのロードマッ プを随時公開 ロードマップ 各分野において、カーボ ンニュートラルや脱炭素 のための導入・開発技 術やパリ協定目標実 現に向けた2050年まで のロードマップを公開 鉄鋼分野 化学分野 電力分野 ガス分野 石油分野 紙・パルプ分野 セメント分野 国際海運分野 内航海運分野 航空分野 その他の分野 経済産業分野 ※2022年4月時点で公開している分野  三菱UFJ銀行のリードにより、アジア地域におけるトラ ンジションに関する取り組みに対する資金供給に向け、 金融機関へのガイドライン作成と政策への提言をまと めることを目的とし同スタディグループを設置(2022年 10月にガイドライン・政策提言公表予定)  トランジション活動の定義/原則、カーボンオフセット、 脱炭素経路・エネルギーミックス・技術ロードマップ、利 用可能性・運用性についてを主要テーマとし議論 (出典)金融庁・経産省・環境庁(2021)「トランジション ファイナンス」、三菱UFJ銀行(2022)「Asia Transition Finance Study Groupの活動について」を基にトーマツ作成 参加団体 メンバー(18行) MUFG MIZUHO SMBC アユタヤ銀行 大华银行 BDO SMTB Danamon Citi VietinBank SECURITY BANK Mandiri Maybank KASHIKORNBANK BARCLAYS MACQUAIRE Standard Chartered HSBC オブザーバー (7開発銀行、14政府機関) IFC、GBJ、JBIC、NEXI、DBS、 EXIM、MIGA ASEAN Taxonomy Board、 SFIA、フィリピン共和国エネル ギー省、日本財務省、日本金 融庁、日本経済産業省、全 国銀行協会、オーストラリア政 府等
  • 30. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 30 世界における気候変動に対する債券発行額規模・推移 世界では、グリーンボンド・サステナビリティボンドの発行額が年率65.9%で成長しており、 2021には約85.7兆円に達し、市場規模が年々拡大しています 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 グリーンボンド発行額 サステナビリティボンド発行額 (億ドル) 121 482 889 1,711 4,343 6,929億USD (約85.7兆円) 337 1,904 3,132 (出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル 市場普及状況(国内・海外)」 CAGR 65.9%
  • 31. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 11,682 10,958 5,210 1,110 200 3 15 36 83 148 190 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 2016 2017 2018 2019 2020 2021 ソーシャルボンド グリーンボンド サステナビリティボンド サステナビリティ・リンク・ローン トランジションボンド 発行件数 トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 31 国内における気候変動等に関する債券発行規模・推移 国内では、ソーシャルボンド・グリーンボンドを中心に発行金額・件数共に急増し、2021年に は2.9兆円に到達。近年、サステナビリティボンドやトランジションボンドも増加しています 450 1,891 4,884 12,039 21,619 29,164 (億円) (件) (出典)証券業界のSDGs「SDGs債の発行状況」を基にトーマツ作成 CAGR 101.7% 「グリーンボンド等 促進体制整備支 援事業」開始
  • 32. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 32 グリーンボンド等促進体制整備支援事業の後押し グリーンボンドの発行・事業実施を促進するために、2018年より環境省にてグリーンボンド事 業の形成支援を実施しており、その件数は国内同ボンド発行件数の半数以上を占めます 27 46 53 55 79% 79% 67% 56% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0 10 20 30 40 50 60 2018 2019 2020 2021 (件数) (出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル 市場普及状況(国内・海外)」 外部レビュー、グリーンボンド等コンサルティング、グリーンボンド事業形成において登録 された発行支援者(登録発行支援者)が、要件を満たすグリーンボンド等の発行 支援計画を合同で作成。グリーンボンド等が発行された場合に補助金を交付 グリーンボンド等促進体制整備支援事業 発行体 国内に拠点を有する法人・自治体等 通貨・市場 円建て・外貨建て、外債・内債、公募債・私募債 準拠する規則・ 原則  グリーンボンドガイドライン  発行市場や投資家層に応じてグリーンボンド原則、ASEAN Green Bond Standard、Climate Bonds Standard等選択可能 調達資金の 使途 対象事業者・ 補助対象費用 外部レビュー機関 コンサルティング会社 外部レビューの付与に要するコスト (発行前・発行後・期中) グリーンボンドフレームワークのコンサル ティング等に要する費用 調達した資金のすべてがグリーンプロジェクトに充当されるもので あって、かつ以下のいずれかを満たすもの  主に国内の脱炭素化に資する事業(再エネ、省エネ等)  脱炭素化効果及び地域活性化効果が高い事業 1 2 必ずしも申請年にグリーンボンドが発行されてい るわけではないが、2018年に同支援事業を開 始して以来、グリーンボンド発行数に対し約8割、 2021では約6割もの登録発行支援が実施され ている 同支援事業申請件数とグリーンボンド発行 件数に対する申請件数割合
  • 33. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスの概要と今後の需要 33 グリーンボンド事例 近年、再生可能エネルギー利用や省エネルギー対策、バイオマスによるクリーンエネルギー開 発、汚染防止のための水質管理やグリーンビルの建設などが実施されています カテゴリー 発行体 グリーンボンド等促進 体制整備支援事業* 発行時期 発行金額 資金使途 利率 償還期間 金融 三井住友FG あり 2021 5億米ドル 再生可能エネルギーおよび省エネルギー事業等の一定の要件を満た す事業に対するファイナンス 0.51% 3年 2022 5億米ドル 再生可能エネルギーおよび省エネルギー事業等の一定の要件を満た す事業に対するファイナンス 2.47% 7年 金融 みずほFG あり 2022 5億米ドル みずほ銀行に対する融資に充当し、みずほ銀行はグリーンプロジェク トに対する融資に充当 3.26% 8.3年 交通・運輸 飯野海運 あり 2021 50億円 グリーンビルディングの建設事業費 0.49% 3年 交通・運輸 西武 ホールディングス あり 2021 100億円 従来の運行車両よりも消費電力の少ない車両の新規調達費用の リファイナンスに充当 0.18% 5年 エネルギー 九州電力 なし 2021 150億円 新竹田水力発電所、軸丸水力発電所及び大岳地熱発電所に係 る新規投資及び既存投資のリファイナンス 0.31% 10年 科学・エネル ギー エクシオグループ なし 2021 100億円 木質バイオマス発電所建設、木質バイオマスガス化発電の技術開 発と木質バイオマスガス化発電所建設資金ならびに太陽光発電設 備建設資金 0.10% 5年 製造業 日立造船 あり 2021 100億円 グリーンプロジェクトとして受注したごみ焼却発電施設にかかる資材 購入などの費用としての運転資金に充当 0.43% 5年 製造業 三菱重工業 なし 2021 150億円 再生可能エネルギー/クリーンエネルギー事業(風力発電設備/ 事業・地熱発電設備/事業・水素発電設備/事業)に関連する 新規又は既存の事業・プロジェクト 0.09% 5年 製造業 日本硝子 なし 2021 100億円 「カーボンニュートラル」「循環型社会」「自然との共生」の実現に寄与 する製品とサービスの開発・提供、および製造プロセスの確立に係る 投資 0.18% 7年 自治体 東京都 なし 2021 150億円都有施設への太陽光発電の導入、下水道整備による浸水対策等 0.00% 5年 2021 150億円河川護岸、調節池の整備、防潮堤、水門等の整備等 0.74% 30年 (出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル 発行データ」を参考にトーマツ作成 *支援事業実施はボンド発行年と異なる場合がある
  • 34. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 3.トランジション・ファイナンスを 事業機会として取り込むには 34 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
  • 35. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 35 トランジション・ファイナンスに向けた事業機会獲得及びリスク評価 環境へ配慮したビジネスへの転換、それら企業への資金供給の波に乗るためには、世界水 準を満たすグリーンな技術の把握と移行に向けたリスク評価の実施が重要です インテリジェンス リスクの査定 どのように機会をとらえるか? どのように機会を評価するか?  トランジションへの具体的なアクションが必要な 領域を見極めたうえで、トランジションに向け選 択すべき技術は何かを把握 トランジションへのアクションが 必要な領域はどこか? 移行の際に選ばれる技術は何 か? 1 2 グリーン 成長戦略 ロード マップ 政府の戦略や移行に向けた ロードマップより、日本のどの 産業に注目すべきかを特定 環境・社会に配慮した使用 技術の基準を示すタクソノ ミーを参考 EU タクソノミー 国・地域 別タクソノ ミー  移行リスク:移行に伴い政策や市場が変化する 中で、不要技術・製品が生まれる。それらの整 理と事業方針・存続への影響を分析 1 2 3 市場変化の方向 性は? 政策・制度、市場等 リスクを分析し、変化 の方向性を整理 どのような技術が 不要・必要か? 市場変化の方向性 より、不要・必要 (新技術)を特定 ハイリスク事業者 は誰か? ヒートマップによるハイ リスク事業者層の可 視化 リスクの高い業種は どこか? 金融4業種、非金融4 業種13セクターをハイ リスク業種とする リスクをどのように評 価するか? 将来の洪水リスクが増 大に伴い洪水インパク ト算定式を構築 どこまでを分析範囲 とするか? 取引先など直接関係 ある重要拠点だけでな くSC全体を含める  物理的リスク:異常気象などにより被る損害リ スクが高い業種の整理、それら業種・業態の特 性を踏まえリスクを定量的に分析 1 2 3 移行リスク 物理的リスク
  • 36. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. インテリジェンス 36 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
  • 37. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 2025年カーボン ニュートラルに伴う グリーン成長戦略 (内閣官房及び 各省庁) トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 37 トランジションへのアクションが必要な領域 グリーン成長戦略と整合した経産省・国交省のロードマップでは、GHG排出量の多い経済 産業分野・航空・海運分野において、トランジションへのアクションが求められています 移行へのアクションが求められる領域 化学分野 紙・パルプ分野 ガス分野 石油分野 セメント分野 航空分野 国際海運分野 内航海運分野 鉄鋼分野 電力分野 国内においても、化学分野は製造業の中で鉄鋼業に次ぐ規模のCO2を排出しており、同分野のネット ゼロに向けた移行は不可欠 紙・パルプ産業は現時点でCO2多排出な産業分野であり、国内の製造業の中で4番目の規模の CO2を排出。化石燃料への依存度が高く、紙・パルプ分野のネットゼロに向けた移行は不可欠 ガスは需要サイド での燃焼に伴い都市ガス由来で約8,900万トン、LPガス由来で約3,000万トンの CO2が排出さ れており、ガス分野のネットゼロに向けた移行は不可欠 石油精製プロセスの低炭素・脱炭素化に向けた取組のみならず、CCS・CCUをはじめとする脱炭素技 術の導入やバイオ燃料・合成燃料などの脱炭素燃料の供給体制へのシフト等多様な選択肢を視野に トランジションを進めることが不可欠 コンクリート製造時のCO2排出源の大宗は原料であるセメントから排出されるため、セメント分野に おけ るトランジションによる対策が極めて重要 グリーン成長戦略における航空機の技術開発に係る工程表を踏まえ、運航効率の改善等によりCO2排 出量の削減や2030年時点のSAF使用量につ いて、「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに 置き換える」という目標を設定 GHG削減戦略に基づき、2050年までに国際海運の平均効率を約80%以上改善(対2008年比)。 燃費の悪い船舶の燃費改善や高性能な船舶への代替を促進 地球温暖化対策計画に基づき、内航海運の2030年度のCO2排出削減目標181万t、更なる省エネ を追求した船舶の開発・普及や2050年に向けLNG燃料船、水素FC船、バッテリー船等の実証・導入 鉄鋼は現時点では世界的に多排出な産業分野であり、国内でも製造業の中で最大 規模のCO2を排 出しており、鉄鋼分野のネットゼロに向けた移行は不可欠 2021年10月「エネルギー基本計画」が閣議決定された。国内のCO2排出量のうち、電力由来の間接 排出は約4割を占めており、電力分野におけるCO2排出量の削減は喫緊の課題となっている 航 空 ・ 海 運 分 野 経 済 産 業 分 野 トランジションに向けた 産業毎のロードマップ グリーン成長戦略と整合 しながら、特にGHG排出 量の多い産業に対し、脱 炭素化推進・トランジ ションファイナンス推進の ためのロードマップを作成 経済産業省・ 国土交通省 国全体の方向性 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 38. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 38 低炭素社会に向けて選ばれる技術:世界の基準 環境・社会に配慮した使用技術の基準を示すEUタクソノミーが世界基準となっており、同タ クソノミーを参考に、各地で国・地域単位のタクソノミーの検討が広がっています EUタクソノミー 各国・地域限定 タクソノミー  EUタクソノミーとは別に、国や地域特有の産業や経済活動に 合った移行支援を促進するために、国や地域で策定するタクソ ノミー  既に、カナダ、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、中国、韓 国、アジア地域などでタクソノミーの検討が進んでいる  カナダでは、化石燃料資源などを要素に加え、EUタクソノミーと の統合を踏まえ策定予定  今後、日本においては、アジア地域におけるタクソノミーの策定 にあたり、EUタクソノミーを基準としながらも準拠していく可能性  EUにより整備された、サステイナブルファイナンスの資金充当先と して、環境・社会に配慮した経済活動かどうかを示す基準  6つの環境目標と、経済活動が環境的に持続可能であるとみ なされるための4要件によって、どの経済活動が「グリーン=環境 的に持続可能」かを規定  企業に対し、タクソノミー適合率の開示を要求。投融資先企業 の低・脱炭素に向けた取組を単一指標で横並び比較や、特定 企業の時系列変化も把握可能に 気候変動の緩和 気候変動への適応 水・海洋資源の持続可能な利用 と保全 循環経済への移行 環境汚染の防止 生物多様性および生態系の保 護・回復 6つの環境目標 1 2 3 4 5 6 環境目標 環境目標 気候変動緩和 気候変動適応 健全なエコシステムと生物多様性の保全 資源レジリエンスとサーキュラーエコノミーの 促進 著しい害を及ぼさないこと トランジションへの救済措置 ASEANタクソノミー(初版) 世界基準 1 2 3 4 1 2 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 39. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 39 低炭素社会に向かう新市場の獲得 タクソノミーを参考に、世界水準に適った製造プロセス・商品開発や事業活動、資金供給を 行うことで低炭素社会における市場と信頼の獲得、投資機会の拡大を狙います 省エネ・ 高効率化 低炭素技 術・素材開 発・製造 低炭素素 材・エネル ギー等使用 環境的配慮を 行う企業として の信頼を獲 得・ニーズが高 まるグリーンマテ リアルや技術 などの開発・提 供により事業 活動を活発化 トランジション に伴う投資機 会の拡大やパ リ協定の目標 を達成するため の事業活動の 促進、貢献に よるステークホ ルダーからの信 頼獲得 企業 自治体・ 金融機関 投資/債券・ ローン発行 移行に伴う 事業戦略 〔例〕CO2排出量の少ないLNG燃料フェリーの購入・再生可能エネ ルギーの導入 〔例〕排ガス等からのCO2分離回収、紙・パルプ製造工程(抄紙 機ドライヤー・キルン)の電化 製造時のCO2排出量が低い素材の使用や使用時の環 境汚染を軽減する商品の購入、クリーンエネルギー等を 導入。責任ある事業活動実施による投資家・顧客からの 支持獲得 製造過程におけるCO2排出量が抑えられたる素材の開 発やそれらを製造する技術開発、電化技術開発・導入。 グリーンな技術・商品の提供により新市場獲得 〔例〕AI技術等の活用による高頃操業の高効率化・省エネ、バッチ 法からフロー法への生産フローの転換 製造過程における省エネルギー・高効率化を図るため AI/IT技術の導入や製造プロセスの集約、また高効率な 製造方法へシフト。グリーン企業として投資を呼び込み 低炭素社会に向けた事業戦略及び投資機会 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 40. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 40 グリーン・サステナブルボンド等事業のうち、 開示4要素を踏まえたトランジション・ファイナンス事例(1/2) 発行体/借り手 業種 所在国 案件・概要 発行年 Castle Peak Power 電力 香港 再エネの開発が難しい地域における天然ガス火力発電所への建設を資金 使途(石炭火力発電から移行)とし、CLP(親会社)のフレームワークを 活用して発行。 2017/7、 2020/6 SNAM S.P.A ガス イタリア 二酸化炭素排出削減、再生可能エネルギー、省エネ、グリーン開発を資金 使途として5億ユーロを調達。償還年数は6.5年 2019/2 ENEL 電力 イタリア 気候変動緩和を目的に再生可能エネルギー関連等の目標達成を条件とし たSDGsリンクボンド(25億ユーロ)を発行 2019/9 EBRD 開発銀行 欧州 省エネやサステナブルなインフラ等、低炭素への移行(特に高炭素排出産 業のネットゼロに向けた移行)に関する事業向け融資を資金使途として発 行 2019/10-12 Etihad 航空 アラブ首長国連邦 2050年ネットゼロ、2035年50%の排出削減へのコミットメントの実現に向け たトランジションスクーク(イスラム債)を発行。発行額:6億ドル 2020/10 BPCE 金融 フランス トランジションボンド型の非優先シニア債を発行し、Natixisの多排出産業の 低炭素化に向けたプロジェクトやコーポレートローンに充当 発行額:1億ユー ロ / 償還年限:10年、クーポン0.55% 2020/12 Bank of China 金融 中国 公共インフラ、セメント、鉄鋼など多排出産業をはじめとする業界において、 BOCが定める規定に沿ったプロジェクトに充当(リファイナンス含む) 発行 額:5億ドル / 償還年限:3年、クーポン0.875% 2021/1 Cadent ガス 英国 2度目のトランジションボンドフレームワークに基づく債券を発行。調達した資 金はガスネットワークの更新に活用 発行額:6.25億ユーロ/償還年限: 9年 2021/3 川崎汽船 船舶 日本 次世代型環境対応LNG自動車専用船の購入を使途としてCTFHに基づき、 トランジション・ローンにて調達目標額:59億円/償還年限:14.5年 2021/3 (出典)トランジション・ファイナンスに関する国際動向(2021)「トランジション・ファイナンスに関する国際動向」を基にトーマツ作成 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 41. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 41 グリーン・サステナブルボンド等事業のうち、 開示4要素を踏まえたトランジション・ファイナンス事例(2/2) 発行体/借り手 業種 所在国 案件・概要 発行年 PKN ORLEN 石油 ポーランド 再生可能エネルギーや低炭素交通、汚染防止・管理を資金使途としてGBP及び GLPと整合したフレームワークを構築、戦略についてはCTFHと整合 2021/5 Port of Newcastle 港湾施設 豪州 グリーンローン原則とCTFHに整合した形で0.5億豪ドルを調達。資金使途には再エ ネをはじめ汚染防止や水の持続可能な利用、クリーンな輸送など幅広く設定 2021/5 Eni 石油 イタリア KPIを再生可能エネルギーの導入容量、上流でのカーボンフットプリント、ライフサイ クルでのGHG排出量、炭素集約度(Scope1~3)としたフレームワークを構築 2021/6 Repsol 石油・ガス スペイン CTFHなどを踏まえ、トランジションファイナンスフレームワークを策定。同フレームワークに 基づき、CO2排出量に関する指標をKPIとしたSLBを発行 (6.5億€(8年)、6億 €(12年)) 2021/6 日本郵船 船舶 日本 CTFHや基本指針を基にトランジション・ファイナンス・フレームワークを構築。今回は、 LNG燃料船等を資金使途としたトランジションボンドにて合計250億円を調達 2021/7 商船三井 船舶 日本 LNG燃料フェリー2隻の建造資金としてトランジション・ローンによる借入を実施。商 船三井は総合海運会社として世界で初めてカーボンニュートラルを宣言しており、 LNG燃料フェリーは同社目標達成に向けた戦略の中に位置づけられている 2021/9 川崎汽船 船舶 日本 2030年までのGHG総排出量削減目標に対する毎年度の目標を線形補完したも の、トンマイルあたりCO2排出量、CDP評価SPTとしたCTFH、SLLPに準拠したトランジ ション・リンク・ローンを実施 2021/9 (出典)トランジション・ファイナンスに関する国際動向(2021)「トランジション・ファイナンスに関する国際動向」を基にトーマツ作成 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 42. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. リスクの査定 42 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには
  • 43. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 43 リスク査定において検討すべき2つのリスク リスク査定において、政策や市場の変化により事業方針や存続に影響を与える移行リスク、 自然災害によるサプライチェーン分断などで受ける損害リスクの2つの検討が重要です リスク査定 低炭素経済への移行による気候変動関連の政策・法規制・技術・市場 の変化に適応する際、不要となる技術や製品、新たに作り出す必要のあ る製品などが生まれ事業方針や存続に影響を与える 台風や洪水などによる損害リスクが可視化できておらず、未対応のままの 場合、資産に対する直接的な損傷やサプライチェーンの寸断から生じる 間接的な膨大な損害などを受けるリスクが高まる 将来洪水リスクの増大が想定される。しかし、既存の 洪水リスク分析では、業種分別なく主な拠点(本店) のみを対象とし、適切でないセグメントから損失を算 出していたりと、リスクを十分にかつ適切に可視化で きていないケースがみられる 俯瞰的にリスクの所在をつかむため、リスクの高い 業種の整理、さらにサプライチェーンまで含め局所 をターゲットとし、そのうえで適切な売り上げ損失 の算出が必要 低炭素経済への移行に伴うリスク 対応しなかった場合の物理的リスク 課題 移行に伴いグリーンでない製品やそれらの製造技術 等需要の大幅な減少が想定されるが、それら政策/ 市場の方向性や淘汰される技術、そして誰が事業危 機に瀕しているかなどの情報収集が不十分な事業者 が多くみられる 課題 インテリジェンス リスクの査定 産業毎に、政治・市場等移行の方向性を分析し、 不要となる技術・採用される新技術や、サプライ チェーン上、最も需要減のリスクがある事業者の 整理が必要 移行 物理
  • 44. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 44 移行リスクにより生じる事業への影響 TCFDでは、移行に伴う政策・法規制や市場の変化により、環境負荷の少ない技術・製品 の需要が増加し、製造や事業運営の存続に大きな影響をもたらすと指摘しています 移行リスクとは 最終報告書 気候関連財務情報開 示タスクフォースの勧告 (2017) 政策及び法規制のリスクや技術のリスク、市場のリスク、評判上のリスク の4つが存在・・・ 政策及び法規制のリスク 気候変動に影響を及ぼす活動の制限や適 応を促す政策の執行、ステークホルダーからの 気候関連への訴訟が増加する 技術のリスク 再生可能エネルギーなど新技術の開発や利 用が企業間の競争を活発化し、勝者と敗 者が現れる 市場のリスク 気候関連のリスク及び機会が特定の商品・ 製品・サービスの需要と供給に変化を及ぼす 評判上のリスク 低炭素経済への貢献活動に対する顧客や 社会の認識に変化を及ぼす グリーン技術の基準整理や政府のグリーン成長戦略に伴い、 製造すべき自動車の種類に制約がかかる 例)×ガソリン・ディーゼル車 〇:HV、PHV、EV、FCV EV化に伴い不要となる部品や新たに開発される部品が生ま れ、不要となる部品メーカーは製造部品への転換やGHG排 出量の少ない技術の高度化などが必要 ガソリン車・ディーゼル車の販売禁止により、EV車主流の市 場となる。また、環境に配慮した消費者の行動の変化によ り、EV車の需要が増加するなどが想定される 世界的な規制への働きかけや、投資家たちのサステイナブル な投資志向から、ガソリン・ディーゼル車を製造し続ける企業 に対し、投資対象外など厳しい反応を受ける可能性も 自動車産業を例に挙げると 4つの移行リスク インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 45. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 45 自動車産業における脱炭素の政策・市場の変化 例として自動車産業では、各国でEV化推進・内燃機関車規制強化が並行して進み、新 車販売台数に占める内燃機関搭載車は2034年もしくはさらに前倒しでピークアウトします 産業政策としてのEV化推進 規制の強化 海外 日本  欧州では法的拘束力を設 けCN推進を加速  米国もバイデン政権下でCN 積極化へ転換。2030までに EV/FCVを新車の半数に  中国は現時点EV台数が世 界の頂点。3060目標のもと 一層推進  「グリーン成長戦略」のもと 14分野の推進分野を掲げ、 その一角に自動車産業を 位置づけEV化を国を挙げ推 進  グリーンスローモビリティ等マイ カーに代わる新たな低炭素 移動手段の推進を図る • 欧州・北米・アジア圏の各 国で早くて遅くとも40年頃 を目途にガソリン車・ディー ゼル車の販売禁止の規制 が開始される • CO2削減目標達成のため PHEVすらも販売禁止へ • とりわけ欧米において、 2025年から電気バスのみ 走行、2030年までに特定 の都市・市街地へのディー ゼル車乗入れの禁止と いった走行禁止の規制が 開始されようとしている 販売禁止 走行禁止 《シミュレーション結果》 世界の新車販売台数は2050年まで伸びてゆき、2050年にはEVの割 合が8割に。内燃機関搭載車は2034年を境にピークアウトし衰退して ゆく見通し。但し、このピークアウト時期は早まる可能性がある 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 ZEV PHV HV ICE (万台) 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 0 2000 4000 6000 8000 10000 2015 2017 2019 2021 2023 2025 2027 2029 2031 2033 2035 2037 2039 2041 2043 2045 2047 2049 2050年までの新車販売台数予測 ・・・うち、PHV・HV・ICEの合計販売台数の推移 ピークアウト インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 46. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 46 EV化による需要減インパクト EV化によるサプライチェーン×製品のマイナスインパクトをヒートマップ化。製造部品の需要減 などによりTier1, 2に多く含まれる中小部品製造事業者への影響が最も甚大となっています 完成車 メーカー/ メガ Tier1 100% 40% 0% 23% 8% 0% 50% 20% 0% エンジン 駆動・ 伝導部品 サプライチェーン上の立ち位置 Teir1,2 Teir3 内装 電装部品 (既存) 0% 0% 70% 0% 0% 13% 0% 0% 35% 製品  鉄鋼メーカーについては、自動車用鋼板の 減少率6.6%に自動車向け出荷比率29%を 掛けて算出  完成車メーカー/メガTier1サプライヤーは、部 品/モジュールごとの専業ではなく、自動車部 品全体を手掛けていることから、個別製品 減のインパクトを各製品の自動車全体に対 する付加価値割合と定義  サプライチェーンにおいて、Tier1/Tier2サプライ ヤーは部品/モジュール単位での完成品部品 を供給すると定義。個別製品の減少インパ クトを100%受けると仮定  これに対し、Tier3サプライヤーは金属の一 次・二次加工など部品/モジュールの一部部 材を提供する加工事業者と定義。通常、 自動車以外の産業向けも手掛けているため、 自動車部品の個別製品の減少インパクトを 50%受けると仮定 自動車のEV化による影響度 高 中 低 10%以下 50%以上 10%~50% 影響無し 0% 鉄鋼 メーカー 1.9% N/A N/A 制御部品 車体 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 47. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 47 全国的な脱炭素化に向けたEV需要の増大の結果、ガソリン車の出荷額15兆円弱減少、 不要となる部品メーカーは売上減少により72万弱の雇用機会を喪失すると想定されます 自 動 車 の EV 化 に 伴 う 他 業 種 へ の 変 化 自動車 電 子 部 品 鉄 鋼  脱炭素化に向けEV需要が増大し、結果、 ガソリン車の37%もの既存部品のが不要に  EV普及とともに完成車台数が増加すると しても、不要となる部品メーカーは生き残れ るかの瀬戸際 出荷額 15兆円弱 減 (-26%) 雇用 72万人弱 減 EV化による国内の自動車・鉄鋼・電子部品産業への経済インパクト  国内需要のうち29%が自動車向で建築と 並びトップシェア。その自動車が脱炭素化 に向け軽量化へ走り、素材が鉄鋼からア ルミ・CFRP等軽量素材へシフト 出荷額 3千億円強 減 雇用 36,000人強 減  自動車のEV化に伴い、エンジン向電子部 品の需要が喪失するも、EV用車載電装シ ステムの需要激増が補い余らしめる 出荷額 432億円強 増 (-26%) 雇用 6,500人弱 増 EV化による需要減インパクト インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 48. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 48 自動車業界におけるカーボンニュートラル施策の現状 トヨタやソニーでは取引先に対してCO2排出削減目標を設定しており、その他、自動車メー カーではサプライヤーに対する排出削減スローガンを掲示するなどの動きがみられます トヨタ マツダ 日産 ホンダ スバル • 主要1次取引先に対し、21年の二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標として20年 比1ポイント厳しい、前年比3%減を要請 • 同時にサプライヤーのCO2排出量を調査し、削減を促す活動を実施2次、3次以降 の取引先にも広げる方針 • 2050年までにサプライチェーン全体でCO2排出実質ゼロを目標としている • 上記達成に向けサプライヤーのCO2排出削減を支援する方針 • 2022年にも取引先の自動車部品メーカーにCO2排出量を減らすよう要請 • 排出量の削減目標比率は年内に設定する予定だが、「部品会社ごとに目標を立て る」として一律の削減は求めない方針 • 主要部品メーカーに50年のCO2排出量ゼロに向けた工程表の提出を要請 • サプライヤーに対し、 25年度から19年度比年4%のCO2排出削減を要請したが、この 数値は目安との位置付けで、業態や規模を考慮した上で排出削減を促す意向 • サプライチェーンにおけるグリーン調達、統合環境マネジメントシステムの構築と環境負荷 物資削減のためのグリーン調達をさらに推進するとの方針を掲げるにとどまる 出所:各社アニュアルレポート、公開記事を基にDeloitte作成 ソニー • すべての取引先に対してスコープ1、2についての開示を要求 • サプライチェーン全体で2018年度比2030年までに45%減。排出量で10%を占めるサプラ イヤーに、2025年までに科学に基づく目標を設定 自動車 業界 その他 業界
  • 49. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 49 EV化・脱炭素化対応を奇禍とした産業発展のための正のサイクル(グッドサイクル) 脱炭素化を奇禍とし、強靭な経営の筋肉をつくる”守り”と、新市場への積極進出により競 争に勝つ”攻め”のサイクルの両輪が未来の新たなSCの生き残りの道と考えらます 脱炭素化は旧来の下請け体質を温存しようとする企業にとっては脅威となる一方、 中小サプライヤーが下請けを脱し、自立した提案・開発型の企業として生まれ変わる契機にも 販売機会 の安定化 脱炭素を きっかけとした OEM/Teir1 のパートナーとして の地位確立 開発原資と 新製品提案 接点の確保 新加工法・ 製品の誕生 による競争 優位性の獲得 顧客との 新領域製品・ 工程の共同 開発推進 コアコンピタンス (経営の核) の見極め 脱炭素対応 施策と 経営高度化の 同時推進 脱炭素対応 の成功例 としての 評判確立 “攻め” サイクル “守り” サイクル 脱炭素対応 における・・・ 脱炭素を契機と した、経営体 制・事業の見直 しを実施 構築された顧客 との官営から新 製品提案機会 を獲得 CO2削減効果 等の脱炭素対 応事例としてだ けではなく、優れ た経営体制の 企業としての評 価を確立 製品付加価値 が高いだけでなく、 共同開発による 顧客との関係 性強化も寄与し、 サプライヤー間で 競争優位に 個別の脱炭素 対応施策では なく、諸施策を 有機的に結び 付け、結果とし ての経営高度 化を目指す取 組を実施 新製品・新技 術提案により、 新領域における 顧客との共同 開発を創発 結果として、収 益が安定拡大 脱炭素対応及びそれによる高度 な経営体制、新製品開発実績 により、顧客から信頼されるビジ ネスパートナーとしての地位確立 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 50. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 50 物理的リスクにより生じる財務的影響 TCFDは、洪水や熱波などにより、サプライチェーン障害による製造能力減少や操業コスト増 大、施設への損傷による資本コスト増大など様々な財務的影響を受けると指摘しています 物理的リスクとは 最終報告書 気候関連財務情報開示 タスクフォースの勧告 (2017) 急性リスク 台風や洪水などの異常気象の激化により 受ける損傷や浸水、サプライチェーンの寸断 慢性リスク 海面上昇や長期的な熱波などによる操業 設備費の追加投入や生産可能面積縮小 サプライチェーン障害や輸送困難による製造能力減少や収入減少 従業員の健康・安全への影響による収入減少及び高コスト化 不動産・資産の損傷による現有資産の償却及び早期除却 発電所への不十分な水供給などによる操業コストの増大 施設への損傷による資本コストの増大 販売量・生産量低下による収入の減少 これらの物理的リスクは、下記のような財務的影響を受ける可能性がある 急性リスクと慢性リスクの2つが存在・・・ インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 51. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 51 将来高まる洪水リスク 業種 リスク/パラメータ 2030 2040 2050 日本 EU 米国 日本 EU 米国 日本 EU 米国 化学 洪水被害額 31.7 億USD/年 22.0 億USD/年 19.7 億USD/年 36.7 億USD/年 25.4 億USD/年 22.9 億USD/年 41.7 億USD/年 28.7 億USD/年 26.1 億USD/年 不動産管理・開発 洪水被害額 31.7 億USD/年 22.0 億USD/年 19.7 億USD/年 36.7 億USD/年 25.4 億USD/年 22.9 億USD/年 41.7 億USD/年 28.7 億USD/年 26.1 億USD/年 貯蓄・抵当・不動 産金融 洪水被害額 31.7 億USD/年 22.0 億USD/年 19.7 億USD/年 36.7 億USD/年 25.4 億USD/年 22.9 億USD/年 41.7 億USD/年 28.7 億USD/年 26.1 億USD/年 保険 洪水被害額 31.7 億USD/年 22.0 億USD/年 19.7 億USD/年 36.7 億USD/年 25.4 億USD/年 22.9 億USD/年 41.7 億USD/年 28.7 億USD/年 26.1 億USD/年 紙製品・林製品 森林火災発生率 1.690% 1.690% 1.690% 2.367% 2.367% 2.367% 3.045% 3.045% 3.045% 水ストレス 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 食品・農業 洪水被害額、 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年 水ストレス 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 主要作物の収穫量 -2.36% -0.75% -1.96% -3.70% -1.16% -3.04% -5.02% -1.58% -4.14% 飲料 水ストレス 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 中~高 中~高 高 石油・ガス・石炭 洪水被害額 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年 鉄道 洪水被害額 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年 電力 洪水被害額 31.7億USD/年 22.0億USD/年 19.7億USD/年 36.7億USD/年 25.4億USD/年 22.9億USD/年 41.7億USD/年 28.7億USD/年 26.1億USD/年 金属・鉱業 労働生産性の低下 率 0.39% 0.04% 0.54% 0.60% 0.06% 0.84% 0.82% 0.08% 1.13% 気候変動による大きな懸念の一つとして、高い水準で将来洪水リスクが増大し、化学・不 動産・金融・エネルギーなど様々な業種がリスクに晒されることが予想されます トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには ※各セクターの主要なリスクをTCFD報告書・各種レポート・業界個社情報等から特定 ※物理リスクについては4℃シナリオを想定 洪水リスク 中~高 洪水リスク 中 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 52. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 売上への影響推計 52 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 洪水リスク算出までの3段階アプローチ 洪水リスクを算定する方法として、影響度の大きい業種に対し、事業の特性やサプライ チェーンを踏まえた洪水インパクト算定式を構築し、インパクトを算出することが可能です 洪水リスク計算 売上情報の採取(計算式の構築) Ⅰ Ⅲ 計算式の構築 業種の分類 業種の絞込 計算要素の収集 b a a b 貸出先の業種と企業数 をインプットし、洪水が関 係ない業種を除外する ※広告、人材、コンサル業 の貸出先は検討対象外 タ ス ク 事業にとって泣き所と なる「場所」を業種ごとに 類型化する 例)製造業では「工場」、 小売では「店舗」など重要 拠点を特定。 拠点の種別(工場や店 舗)ごとに計算式を確 立。 ※基本的には1日当たり売 上を求める計算式を構築 貸出先企業の拠点住 所、売上などの計算要 素のデータを収集し、拠 点ごとの1日当たり売上 を計算 ハザードマップを用い、浸 水深を特定し、復旧期 間を設定して洪水インパ クトを計算する 1,800 2,000 検証対象 貸出先 成 果 物  対象業種・企業一覧  インパクト考察のため の業種分類一覧  洪水インパクト 算定式  計算用データ  洪水インパクト 算定結果 本店 工場 店舗 〇 〇 〇 〇 〇 ー 〇 ー 〇 A B C サプライチェーン類型 製造小売 製造 小売 本店 工場 店舗 〇 a式 b式 〇 a式 ー 〇 ー b式 A B C 工場 店舗 店舗 拠点 AA区 BB区 CC区 住所 1日当 売上 a式 b式 b式 インターネットなどで収集 10-20m 3-5m 0.5-3m ハザードマップ情報 復旧 期間 浸水深 10日 5日 3日 洪水 インパクト 1日当 売上 × 復旧期間 吉 野 家 Ⅱ ハイリスク業種との 無差別な分析 1 サプライチェーンを 無視した分析範囲 2 売上損失が生じる 拠点の不明確さ 3 対 策 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 53. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 53 サプライチェーンを含めた業種別リスク分析アプローチ 既存の方法では業種分別なく本店のみを対象とし、売り上げ損失の算出方法が適切でな い場合がありますが、サプライチェーンまで考慮したより詳細な分析方法を開発しています A B C D 生産機能に 依存 生産機能と 販売機能に 依存 貨物・旅客の 運送に依存 有形の 拠点や商材に 依存しない 産業 グループ ・製造 ・製造小売 ・飲食 ・運送 ・鉄道 ・広告 ・人材 ・コンサル 業種例 特徴 〇 本店 サプライチェーン 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 - - 〇 〇 - 〇 - - - - 〇 - 管理 運営 製造 物流 販売/ サービス 商圏 拠点 事務所 事務所 工場 物流センター 店舗 XXXXX円 XXXXX円 XXXXX円 XXXXX円 拠点1日当 売上 ハイリスク業種との 無差別な分析 1 売上損失が生じる 拠点の不明確さ 3 サプライチェーンを 無視した分析範囲 2  企業を産業グループ 別に分類し、特に洪 水リスクの高い業種 を抽出する  拠点毎の売り上げを 把握し、洪水リスクに よる売り上げ損失を 適切に算出する  各業種ごとにサプライチェーンを整理し、重要拠点を特定する  さらに同様のサプライチェーン・重要拠点を持つ業種をグループ化し、 サプライチェーンを含めた洪水リスク計算式に適応する 〇 該当あり - 該当なし インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 54. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 54 トランジション・ファイナンスを事業機会として取り込むには 洪水リスク分析によるリスクの可視化(最終成果物イメージ) 貸出先企業の拠点情報とハザード情報を紐付けることにより、ハザードレベルに応じた洪水 インパクトを算出し、取引先・拠点別洪水リスクを一覧化することでリスクを可視化します 企業別拠点情報 ハザード情報 洪水リスク 取引 先名 拠点情報 郵便番号 住所 業種 計算 方式 全社 売上 (百万円) 拠点1日当 売上 (百万円) 浸水深(m) 復旧期間(日) PML 売上換算 (百万円) 拠点 拠点 種別 A社 aa工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 20 ~ 30 165,000 A社 bb工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 10 ~ 20 25 137,500 A社 cc工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 5 ~ 10 20 110,000 A社 dd工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 3 ~ 5 15 82,500 A社 ee工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 0.5 ~ 3 10 55,000 A社 ff工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 ~ 0.5 5 27,500 A社 gg工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 製造業 b式 30,000,000 11,700 N/A 0 0 B社 aa工場 工場 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 548 0.5 ~ 3 10 5,480 B社 aa店 店舗 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 0.45 0.5 ~ 3 10 4.5 B社 bb店 店舗 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 0.45 0.5 ~ 3 10 4.5 B社 cc 店 店舗 XXX-XXXX XX県XX市 飲食業 c式 200,000 0.45 0.5 ~ 3 10 4.5 C社 aaセンター 物流センター XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 2,192 0.5 ~ 3 10 21,920 C社 bbセンター 物流センター XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 2,192 0.5 ~ 3 10 21,920 C社 aa 営業所 XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 0.5 0.5 ~ 3 10 5 C社 bb 営業所 XXX-XXXX XX県XX市 運送業 e式 1,600,000 0.5 0.5 ~ 3 10 5 拠点別事業展開情報 ハザード 情報 洪水インパクト ▣ 製造業の例: 生産拠点である工場をベースに 1日当たり売上を均等割り 浸水深により復旧期間 が決まる 拠点1日当売上に復旧期間 を掛けることでPMLを推算 国土交通省による ハザードマップ上の定義 に従い、各拠点の住所 について浸水深を設定 【定義】 河川が氾濫した際に 浸水が想定される 区域と水深 インテリジェンス リスクの査定 移行 物理
  • 55. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 5. 質疑応答 55 質疑応答 これまでのESGに関するトレンド、およびトラン ジション・ファイナンスへの対応などについて、 ご質問・ご意見いただけますと幸いです
  • 56. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 担当者紹介 56 担当者のご紹介 永井 希依彦 kiyohiko.nagai@tohmatsu.co.jp 有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 新規事業推進|フィナンシャルインダストリー シニアマネジャー デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて、航空宇宙・防衛業界を中心に した戦略策定・財務分析・マーケティング及び金融機関向事業性評価に係る コンサルティングプロジェクトに多数従事。その後航空機エンジン製造企業立上 に参画。執行役員(経営企画統括)として量産事業を軌道に乗せる。現在 は、監査法人トーマツにてファイナンスとインダストリノウハウを相互に融合を図る コンサルティングプロジェクトに従事。航空宇宙、医療、農業及び製造業などの 業界において、新規事業立上/事業性評価支援、アセット評価態勢構築、 ICT関連事業開発(データマネジメント・AI・IoTを起点とする経営改善プロダ クト/サービスの開発などに従事。 成果連動型委託契約事業(PFS)やソーシャル・インパクト・ボンドなどの新し いファイナンス手法を活用した案件形成やインパクト評価を取り入れた経営・事 業計画に合った新規事業立案、公益活動事業の社会的価値評価支援にお いてコンサルティングサービスを提供。これまでに、内閣府や国土交通省、そのほ か地方自治体に対しPFS/SIBの案件形成支援を実施。他、文化庁や自治 体、民間企業に対しインパクト事業評価に係る支援実績多数。 山崎 遥 haruka.yamasaki@tohmatsu.co.jp 有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 新規事業推進 スタッフ 国内総合コンサルティング会社を経て、有限責任監査法人トーマツ入社。財 務諸表監査を目的としたシステム監査業務に従事。IT統制監査を中心に、 データを活用した監査により財務諸表監査に貢献。その後社内の新規事業推 進部門において各種クライアント 経営/リスクマネジメントにおけるデータ/デジタル 技術の活用を趣旨としたコンサルティング業務に従事。証券会社における流動 性リスク管理に係るデータ活用支援。 丁子 博司 hiroshi.choji@tohmatsu.co.jp 有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 新規事業推進 マネジャー
  • 57. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. APPENDIX 57 APPENDIX
  • 58. © 2022. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. APPENDIX 58 Deloitteの支援メニュー(上流から下流まで) DeloitteはESG活動の評価にとどまらず、ESG活動のテーマ選択から対外説明に至る多様な サービスを有しており、一貫したESG活動支援が可能です テーマ 設定  社会的ニーズ、自社のミッション・ 事業内容との親和性、他団体 とのすみ分け等の観点で企業に 最適な公益活動テーマを選択 実行 運営  公益活動の円滑な立上・運営 のためのアクション項目・ロード マップ・態勢・資金計画。活動の モニタリング・改善プロセスの実行 (PDCA) 計画 立案  企業本体の経営計画との整合 性・一貫性を具備した公益活 動の位置付け定義。実効性・ 効率性を向上させるための外部 連携のあり方 成果 測定  活動が受益者・社会に創出す る実効的インパクトの多面的で 定量的評価 IR 活動  企業価値・投資効率観点に注 目した、投資家等外部ステーク ホルダ向ESG活動の成果の評 価・対外説明準備(ESG Analytics) PR 活動  公益活動の効果的な周知、期 待する認知の獲得のため、PR方 針・ツール、コミュニケーション施 策を設計 2 4 6 1 3 5 ※貴社および貴社の関係会社とデロイト トーマツ グループの関係において監査人としての独立性が要求される場合、本サービス内容がご提供できない可能性があります。詳細 はお問合せください。