コミュニティキャピタル調査から見えてきたPTA課題克服のヒント（越谷市PTA連合会）

越谷市PTA連合会
コミュニティキャピタル調査から見えてきた
PTA課題克服のヒント
上智大学コミュニティキャピタル研究会
上智大学経済学部
川西諭
s-kawani@sophia.ac.jp 1

コミュニティキャピタル研究会とは？
2
目的
様々な団体や組織の中のコミュニティ（共同体）の状態を測定し、
状態改善の方法を明らかにすること
たとえるなら団体、組織の健康診断
自分の健康のことなのにわかっているようでわからない
自分の団体や組織のこともわかっているようでわからない
可視化することで、より良い状態にする参考にしてほしい
全国355NPO団体8275名を対象にしたアンケート調査からわかっ
てきたこと
３つの心理的要素（因子、Factor）が
コミュニティの状態の良さを決定する！

3
３つの因子（主因子法およびPromax回転より抽出）
質問項目  因子1  因子2  因子3 
第１因子「理念共感と貢献意欲」（α= 0.914） 
この団体に貢献したい　  .973  -.068  -.096 
この団体が目指していることを，自分も一緒に担っていきたい  .887  .077  -.104 
この団体に所属していることを誇りに思う  .791  -.092  .132 
この団体の活動理念に共感している  .655  -.053  .124 
この団体のためなら，とことん頑張れる  .596  .293  -.019 
この団体での活動は，将来自分のためになると思う　  .570  -.012  .088 
この団体での活動にやりがいや生きがいを感じる　  .557  .119  .160 
この団体が理屈抜きで好きだ  .504  -.064  .331 
第２因子「自己有用感」（α= 0.878） 
自分はこの団体に欠かせない存在だ  -.054  .847  .033 
自分はこの団体の中で重要な役割を任されている  -.059  .835  -.019 
自分がこの団体に役立っていると思う  -.012  .808  -.002 
この団体は，私のことを必要としてくれている  .106  .752  .003 
第３因子「居心地の良さ」（α= 0.858） 
この団体の仲間といると落ち着く  -.032  .041  .843 
この団体は，居心地がよい  .066  -.098  .775 
この団体のメンバーと一緒に活動することが楽しい  .136  -.011  .707 
この団体のメンバーとの関係は良好だと思う  .021  .195  .578 
α ：クロンバックのα係数（Cronbach’s Coefficient Alpha）

4
コミュニティの状態の良さを決定する３つの因子
これらを感じている人は団体への愛着が高く、
幸福感と健康感が高い傾向がある

5
コミュニティキャピタル診断
団体メンバーにアンケート調査をし、団体メンバーの因子得点の平均
値で団体の状態を測定します。

コミュニティキャピタル調査の概要
対象：越谷市の公立小中学校のPTAに属する保護者役員
実施時期：前期：2019年7月　後期：2020年2月　
回答：　 44校 544（540）人 43校 436（430）人
学校平均回答数：　　 12.3人　　 10人
学校ごとの回答数の分布

活動歴　　　　　　　　　　　性別　　　　　　　　　　　　職業 
回答：　 44校 544（540）人 43校 436（430）人

活動歴　　　　　　　　　　　性別　　　　　　　　　　　　職業 
回答：　 44校 544（540）人 43校 436（430）人
経験者が半数以上　　　　　　　　女性が8割以上

回答：　 44校 544（540）人 43校 436（430）人
回答数の子どもの数の分布

回答：　 44校 544（540）人 43校 436（430）人
回答者の子どもの数の分布

回答：　 44校 544（540）人 43校 436（430）人
•回答者数は2割減少したものの回答者の構成はそれほど大きく変
わっていない。
•経験者が半数以上（約60％）
•女性が80％以上
•二人以上の子どもがいる方が全体の90％
おそらくは全国公立学校のPTA保護者役員の標準的な数字

通常調査項目
・コミュニティキャピタル３因子
　第一因子（理念共感と貢献意欲）
　第二因子（自己有用感）
　第三因子（居心地の良さ）
・団体（PTA）への愛着
・主観的幸福感
・主観的健康感
PTA調査の独自調査項目
・PTAは（子ども、学校、地域、自分）のためになっていると思
うか？

14
分析１：NPO調査とPTA調査の比較
通常調査項目間の相関関係の比較
2019年度越谷PTA調査（回答者合計544名）
比較対象：2018年度NPO調査全体　変数の相関関係（回答者合計1819名）
注目点１：相関係数の傾向が驚くほどよく似ている！
→　いずれの回答者も真面目に回答してくれている証拠　感謝！
→　PTAもNPOと同じように分析が可能である
注目点２：３因子間の相関が強い！

15
2019年度越谷PTA調査（回答者合計544名）
比較対象：2018年度NPO調査全体　変数の相関関係（回答者合計1819名）
注目点３：すべての相関係数がプラスである！
いい状態のコミュニティは愛着が高く、幸福感も健康感も高める
注目点４：愛着への影響の強さが異なる！

まとめ ① 相関係数の傾向が驚くほどよく似ている！
② ３因子間の相関が強い！
③ すべての相関係数がプラスである！
④ 愛着への影響の強さが異なる！
団体（PTA）への愛着団体（NPO）への愛着
0.27-0.31
***
0.10-0.12
***
0.13-0.14
***
0.41-0.46
***
0.07-0.09
***
0.01-0.03
n.s.
PTA NPO

通常調査項目の平均値※
の比較この差が大きい！
この差の背景は？
NPO：理念に共感し目的意識を持って自主的に参加する人が多い
PTA：他に引き受け手がいないから仕方なく参加している人もいる
現状を考えれば当然の結果とも思える
※ 最高得点に対する得点率の平均値

PTA課題解決のヒント　その１
PTAは
目的意識を持って参加することが大事！
目的意識を高める余地は十分にあり、かつそれを高めることで、愛着
が高まることが期待できる。
では、どんな目的意識を持って参加してもらうのがよいのだろうか？18

分析２：何のために活動するのか？
通常調査項目とPTA独自調査項目間の相関関係
独自調査質問：PTA活動は○○のためになっていると思いますか？
回答の分布　前期

独自調査質問：PTA活動は○○のためになっていると思いますか？
回答の分布　後期
前期も後期も分布はおぼ同じ
傾向としては　　　　学校＞子ども＞地域＞自分

注目点１：目的意識とコミュニティキャピタルの相関は全てプラス
特に相関が強い
のは「自分」
注目点２：目的意識の相互間の相関関係も全てプラスで高い数値！

見せかけの相関の可能性を重回帰分析で検証すると・・・
☆☆☆
☆☆
☆☆
☆☆☆
☆☆☆
☆☆☆
☆☆☆ ▼▼▼

PTA課題解決のヒント　その２
PTA活動の目的意識は自分志向で良い！
自分のためになる、自分の子どものためになる、自分の地域のために
なると思って参加している人の方が貢献意欲も高くなり、自己有用感、
居心地、愛着も高くなる。
「学校のために」と思って参加している人が多数派ですが、それは本当
に主体的な参加にはつながらないのかもしれません。
23

分析３：カギを握る人たち
はじめての人と経験者の平均値の比較
はじめての人と経験者の比較　前期

• 経験者の方がコミュニティキャピタル変数が高い。
• 学校間比較をしても、経験者比率の高い学校ほど状態が良い。
• 特に第二因子（自己有用感）と愛着が高い。
• 因子間相関を考えると、第一因子、第三因子はもっと高くなけれ
ばならない。
はじめての人と経験者の比較　後期

• 因子間相関を考えると、第一因子、第三因子はもっと高くなけれ
ばならない。
はじめての人と経験者の比較　前期

• 因子間相関を考えると、第一因子、第三因子はもっと高くなければ
ならない。
以上の結果から読み取れること
• 経験者は重要な役割を任される　　　　　 ⇒高い自己有用感
• PTA活動においても経験は重要である　 ⇒高い学校平均値
• 経験者に意欲が高く保てず、満足できていない人がいる可能性が
ある。
新しい役員のなり手が見つからないから、本当は交代したかったのに
頼まれて仕方なく役員を継続している人が少なくないのではないか。

男性と女性の平均値の比較
男性と女性の比較　前期

• 男性の方がすべての項目で平均値が高い。
• 学校間比較をしても、男性比率の高い学校ほど状態が良い。
• 特に第一因子、第二因子が高い。
• 因子間相関を考えると、第三因子はもっと高くなければならない。
• この意味で、男性は「居心地の良さ」が低いと言える。
男性と女性の比較　後期

• 男性の方がすべての項目で平均値が高い。
• 学校間比較をしても、男性比率の高い学校ほど状態が良い。
• 特に第一因子、第二因子が高い。
• 因子間相関を考えると、第三因子はもっと高くなければならない。
• この意味で、男性は「居心地の良さ」が低いと言える。
以上の結果から読み取れること
• 「女性が８割」の中であえて引き受ける父親は意欲高い系
• 男性は重要な役割を任される　　　　　 ⇒高い自己有用感
• PTA活動に男性の活躍の場はある　 ⇒高い学校平均値
• 女性が多数派の中で、居心地が悪い思いをしている男性役員も
少なからずいる可能性がある。

PTA課題解決のヒント　その３
PTA活動は
経験者と男性がカギを握る！？
経験者と男性が多いPTAほど状態はいい傾向がある。
一方で、経験者は不本意ながら参加している可能性、
男性は居心地の悪い思いをしている可能性がうかがわれる。
経験者と男性が気持ちよく参加できるようにできるないか。
31

32
前期から後期への変化
• 第二因子（自己有用感）と愛着が高まっている。
• 1年間の活動を通じて、必要とされているという感覚が高まり、愛着
が強まっている可能性はある。
• 回答者が全体的に減少しているため、そのような変化が起きたと断
定はできない。
• 可能ならば、今後の研究で丁寧に検証していきたい。

PTA課題解決のヒント
• PTAは目的意識を持って参加することが大事！
• PTA活動の目的意識は自分志向で良い！
• PTA活動は経験者と男性がカギを握る！？
私たちに具体的にどんなことができるでしょう
か？
一緒に考えましょう！
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