Visible Learning and the
Science of How We Learn
Part 1 - Learning within classrooms
邦題:『教育効果を可視化する学習科学』
参考図書
Visible Learning and the Science of How We
Learn (English Edition): Hattie, John, Yates,
Gregory
教育効果を可視化する学習科学 | ジョン・ハッティ, グ
レゴリー・イエーツ, John Hattie, Gregory Yates, 原田 信之
他
第1章: なぜ生徒は学校で学ぶことが好きではないのか
生徒は学校があまり好きではない
なぜなら
1. 人は「記憶から思い出す」ことを「新たに思考する」よりも優先する
2. 「新たに思考する」ことは苦労を伴うため努力が必要
3. 努力をするためには「自己効力感」が必要
4. 自己効力感は新たに学ぶ内容に対して、自分が少しでも内容を知っているかがカ
ギとなる
「生徒が知っていること」と「教師が生徒に知って欲しいこと」の間に大きな隔たりがある
と、好奇心が湧いてこないので楽しいと思えなくなる。
やればできる!という感覚
第2章: 知識は教えることの障壁になるのか
知識に詳しい熟達者になっていても、教えることが上手とは限らない
● 熟達者は初心者にとっての課題の難しさを過小評価する
● 熟達者のヒントやコミュニケーションは貧相なものになりやすい
しかし生徒は、知識が豊富な先生から学ぼうとしている
● 知識を生徒に示すことで、生徒は教師を信頼。やる気を出すことにつながる
● どんなに知識を持っていても、「教師が獲得している知識」と、「生徒が求めている
指導」にギャップがあると問題を生じる
特に、習得する時間を
過小評価する
初心者の知識量を正確
に測ることができない
第3章: 教師と生徒の関係
生徒と教師の良好な関係は、生徒にとって長期的・持続的に良い作用がある
● 幼い生徒と教師の間の良好な関係は、反社会的行動の低下や長期にわたる行動
上の問題を改善する。
● 生徒と教師の関係性は、初期の段階で良好だった場合はその先も良好であること
が続く。
● 成績面でも良い影響を及ぼす。
(a)「生徒との関係性改善プログラム」を受けた教
師による授業を受けた生徒
(b) そうではない教師による授業を受けた生徒
とした時、(a)の方が成績が上がった
第4章: 教師としての人柄
● 生徒は教師が信頼できるかを常に評価している。
その評価は、生徒に対する教師の接し方が関係している。
○ ポジティブでオープンなコミュニケーションが重要
○ 非言語的な振る舞いが重要。教師が他者に対してどのように振る舞っているかを、生徒はロールモ
デルとして捉えている。
○ 「何を話しているか」よりも「どのように話しているか」に生徒は注意を向けている。
● 生徒は、難しいことを考えているときに、助けてくれると信頼できるような教師を高く
評価する。
○ 高い学力を達成するために「援助要請行動」が必要
○ 「援助要請行動」は内発的動機が高い生徒に見られる
○ 先生と教師の信頼関係があると、内発的動機をもとにして先生に質問などができる。
公平さ・威厳・個人の尊重
「自分のため」という動機
↔ 相手の評価を気にした動機
カリキュラムの時間配分を変えてテストの
結果を比べた研究によれば、
時間配分の減少は、選択式テストでは影響
がなかったが、記述式の問題では大きく得
点が下がった
第5章: 学級学習の絶対的な指標としての時間
● 単に「時間」といっても以下のような区分に分かれることに注意が必要
○ Allocated time: カリキュラムや時間割上確保された時間
○ Instructional time: 実際に指導している時間
○ Engaged time: 生徒が実際に学習対象に注意を向けている時間
○ Academic learning time: 生徒が学習し、高い達成度を得ている時間。知的学習時間とも呼ばれ
る。
● 勉強に費やす時間は、異なる能力である人同士で比較する場合は相関が見えづら
い。
● 単元を跨ぐような「知識の再統合」には、別の題材同士を結びつけるのに時間が必
要になる。
Allocated time と学情成
績の相関は強くない
第6章: Recitation method と学級学習の性質
Recitation method: 別名復唱式勉強法。まず(1)教師が生徒に対して情報をインプット
し、その後(2)いくつか内容に関する基本的な内容を質問する。
この復唱式勉強法は以下の理由から頻繁に批判の的となっている。
● 観察研究によると、教師の質問は大半が簡単ものにとどまり、単純な答えを要求し
ている。
● 一度に一人の生徒のみ活発になっている。大半の生徒はその間何もしていないこ
とが多い。
● 教育という活動が、「権威ある人物からパッケージ化された知識を得るもの」という
認識になってしまう。
● 予測のしやすいコミュニケーションのため、生徒にとっては刺激が少ない。
教師が生徒に対する威厳を保ちやすく、授業がコントロールしや
すい方法として、多く用いられている
第7章: 基礎学力における自発運動化に関する指導
● 自発運動化: 無意識に脳に負荷をかけずにできる能力のこと
● 自発運動化の欠如は、思考・理解する能力の欠如を引き起こす。
● 自発運動化により基礎的な技能が無意識でできるようになると、さらに深いレベル
で思考ができるようになる。
○ 反復による強化は知識を取り出しやすくするために役立つ。
○ 子供の生活に影響を及ぼす全ての大人が支援する必要がある。
例)単語を理解することに終始してしまい、全体の文脈を
理解することが難しくなる
教師にその役割を全て押し付けるのは不適切。
その一方、教授方法を工夫することで自発運動化を発展
させることは可能。
第8章: フィードバックの役割
● 教師はフィードバックをしてると主張するが、生徒は受け取っていないと主張するす
れ違いが多い。
○ 生徒:次回に繋がるような、「活動をどのように改善すれば良いか」を知りたい
○ 教師:過去の活動に対して「否定的なフィードバック」を返しがち
● フィードバックは、学業の到達度に関わる最も強力な要因の一つ。
○ 以下が満たされた時に効果を発揮する。
i. 生徒が成功とはどのようなものか知っていて、
ii. 生徒の現在地と、目的地との間の距離を減らすことが目指されていることを理解し、
iii. 次の地点についての情報が与えられた時
○ 「褒める」こと自体が学習に対してプラスになる研究結果は存在しないので注意。
否定的な表現は肯定的な
表現の数倍印象に残る
簡単な作業の時に生まれつきの能力を褒め
ると、困難な状況で諦めやすくなる
第9章: 社会的モデリングと明示的な教え方を通した複合的な
技能の習得
● 教師は学習に関して実演し、それを学習させるコーチやモデルの役割を担う
○ しかし、生徒は実演を見るだけで、何かが実現可能になるわけではない
○ 観察学習を促すためには、
i. 教師は慎重に段階を追った道筋を示し、
ii. 生徒が情報を段階を追って消化できるように努める必要がある。
● どのような手法を用いて思考するかは明確に教えられる必要がある
● 迷信:「個人の発見的に生み出される知識はよりしっかりしたものだ!」
○ 実際に発見的に生み出される知識が学習を支援する根拠はほとんど存在しない。
○ デメリットの方が多い
■ 認知負荷の増加
■ 確かで体系的な知識を得にくい
・探究学習の過程は、そのステップごとに焦点を提示し、それぞれのステップでどのような手法を、どのよ
うな目的で使用するのかを明確にする。
・認知的タスク分析に基づいて、適度に単純な作業を分解して授業を行うと、授業からの離脱度が下がっ
た(8%→1%)
きちんとしたモデルなしに作業を行うよりも、
注意深くモデルを観察した方が優れた結果が得られたと
いう研究もあり。
第10章: 専門的技能とはどのようなものか
● 専門的技能とは、繰り返し発揮される突出したパフォーマンスのことを表す
○ 学級での教授方法についても、専門的技能があることがわかっている
● 熟達者は以下の特徴を持つ
○ 専門としている領域でのみ特出している
○ 多くの、そして意味あるパターンを知覚することができる
○ 課題解決をほとんどミスなくこなす
○ 専門領域に関しては非常に大きな容量の短期記憶を持っている
○ 目に見える課題を、より深く本質的なレベルで捉える
○ 課題を慎重に定性的に分析することに、より時間を使う
○ 自己管理の卓越したスキルを持つ
● 熟達者は自身の行っていることを正しく説明するのが困難
○ 意識していないレベルの事柄が多くなるため(自発運動化も参照)
○ 一般人に対して熟達者が説明していることはあまり信用ならない
例えば、同じ程度の経験を積んでいる教師を比較し
ても、専門的技能を身につけている人とそうでない
人で教える能力に大きな差が見られる
一つのチャンク(グループ)
の中に非常に多くの情報を
含めることができる
第11章: どのようにして専門的技能は発達するのか
● 熟達者は「意識的な練習(deliverate practice)」を行っている
○ すでに獲得した技術を繰り返し練習すれば良いわけではない
○ 技能の改善に対して、明示的にコミットする必要がある
○ 短期的なゴールを設定したり、個別最適化されたフィードバックが必要になる
● 意識的な練習を経て、熟達者は高いレベルのスキルを無意識に発揮できるように
なる
○ 自発運動化によって獲得されるもの
○ 注意:自発運動化が一旦獲得されてしまうと、今まで自覚的に獲得していた技術が、無意識の段階
に移行して発達が止まってしまう ...!
● 早い段階で才能ある人を選別してしまうことは、潜在的により高い才能を持つ人を
排除してしまう危険性がある
○ 幼少期に天才的な能力を見出された人は、そのほとんどが大人になっても発達しない
○ 「早熟」と「天才的な能力」を混合しないことが大事
歌のレッスン中の観察によると、
(1) 素人歌手は自身が楽しむために練習する
(2) プロ歌手は自身の歌唱技術を上げることに焦点を当てる
● 指導領域において、熟達者がいることはわかっている
○ 生徒の到達度データに関する統計的な分析によって明らかに
● 熟達した教師は、教室の様子を読み取る能力を著しく高く有する
○ 特に以下のような点に焦点を当てている
■ 授業の構造についての情報
■ 自身の要求と期待
■ 生徒の活動の傾向
○ 生徒の理解を非言語的な側面から推測することに極めて正確だった
● 熟達した指導には、「知識と生徒との関係おける感受性」が重要
○ 生徒の努力を引き出すために、目標を設定したり挑戦心をくすぐったりする
○ 指導の方向性を決めやすくするために、生徒の学習をモニタリング・フィードバックする
○ 教え方を個々の状況に適合させ、指導上必要な事項を素早く判断できるように、高いレベルで知識
を活用する
第12章: 学級での指導領域における専門的技能
ビデオで授業の様子を見せる実験で明ら
かに。未熟な教師は、生徒の服装など表
層的なものに注目していた。
ただし生徒と親密である時のみ。生徒の性格を理解することで、「どのよ
うな時」に「どのような行動」をするのかを理解している

Visible Learning and the Science of How We Learn: Part 1

  • 1.
    Visible Learning andthe Science of How We Learn Part 1 - Learning within classrooms 邦題:『教育効果を可視化する学習科学』
  • 2.
    参考図書 Visible Learning andthe Science of How We Learn (English Edition): Hattie, John, Yates, Gregory 教育効果を可視化する学習科学 | ジョン・ハッティ, グ レゴリー・イエーツ, John Hattie, Gregory Yates, 原田 信之 他
  • 3.
    第1章: なぜ生徒は学校で学ぶことが好きではないのか 生徒は学校があまり好きではない なぜなら 1. 人は「記憶から思い出す」ことを「新たに思考する」よりも優先する 2.「新たに思考する」ことは苦労を伴うため努力が必要 3. 努力をするためには「自己効力感」が必要 4. 自己効力感は新たに学ぶ内容に対して、自分が少しでも内容を知っているかがカ ギとなる 「生徒が知っていること」と「教師が生徒に知って欲しいこと」の間に大きな隔たりがある と、好奇心が湧いてこないので楽しいと思えなくなる。 やればできる!という感覚
  • 4.
    第2章: 知識は教えることの障壁になるのか 知識に詳しい熟達者になっていても、教えることが上手とは限らない ● 熟達者は初心者にとっての課題の難しさを過小評価する ●熟達者のヒントやコミュニケーションは貧相なものになりやすい しかし生徒は、知識が豊富な先生から学ぼうとしている ● 知識を生徒に示すことで、生徒は教師を信頼。やる気を出すことにつながる ● どんなに知識を持っていても、「教師が獲得している知識」と、「生徒が求めている 指導」にギャップがあると問題を生じる 特に、習得する時間を 過小評価する 初心者の知識量を正確 に測ることができない
  • 5.
    第3章: 教師と生徒の関係 生徒と教師の良好な関係は、生徒にとって長期的・持続的に良い作用がある ● 幼い生徒と教師の間の良好な関係は、反社会的行動の低下や長期にわたる行動 上の問題を改善する。 ●生徒と教師の関係性は、初期の段階で良好だった場合はその先も良好であること が続く。 ● 成績面でも良い影響を及ぼす。 (a)「生徒との関係性改善プログラム」を受けた教 師による授業を受けた生徒 (b) そうではない教師による授業を受けた生徒 とした時、(a)の方が成績が上がった
  • 6.
    第4章: 教師としての人柄 ● 生徒は教師が信頼できるかを常に評価している。 その評価は、生徒に対する教師の接し方が関係している。 ○ポジティブでオープンなコミュニケーションが重要 ○ 非言語的な振る舞いが重要。教師が他者に対してどのように振る舞っているかを、生徒はロールモ デルとして捉えている。 ○ 「何を話しているか」よりも「どのように話しているか」に生徒は注意を向けている。 ● 生徒は、難しいことを考えているときに、助けてくれると信頼できるような教師を高く 評価する。 ○ 高い学力を達成するために「援助要請行動」が必要 ○ 「援助要請行動」は内発的動機が高い生徒に見られる ○ 先生と教師の信頼関係があると、内発的動機をもとにして先生に質問などができる。 公平さ・威厳・個人の尊重 「自分のため」という動機 ↔ 相手の評価を気にした動機
  • 7.
    カリキュラムの時間配分を変えてテストの 結果を比べた研究によれば、 時間配分の減少は、選択式テストでは影響 がなかったが、記述式の問題では大きく得 点が下がった 第5章: 学級学習の絶対的な指標としての時間 ● 単に「時間」といっても以下のような区分に分かれることに注意が必要 ○Allocated time: カリキュラムや時間割上確保された時間 ○ Instructional time: 実際に指導している時間 ○ Engaged time: 生徒が実際に学習対象に注意を向けている時間 ○ Academic learning time: 生徒が学習し、高い達成度を得ている時間。知的学習時間とも呼ばれ る。 ● 勉強に費やす時間は、異なる能力である人同士で比較する場合は相関が見えづら い。 ● 単元を跨ぐような「知識の再統合」には、別の題材同士を結びつけるのに時間が必 要になる。 Allocated time と学情成 績の相関は強くない
  • 8.
    第6章: Recitation methodと学級学習の性質 Recitation method: 別名復唱式勉強法。まず(1)教師が生徒に対して情報をインプット し、その後(2)いくつか内容に関する基本的な内容を質問する。 この復唱式勉強法は以下の理由から頻繁に批判の的となっている。 ● 観察研究によると、教師の質問は大半が簡単ものにとどまり、単純な答えを要求し ている。 ● 一度に一人の生徒のみ活発になっている。大半の生徒はその間何もしていないこ とが多い。 ● 教育という活動が、「権威ある人物からパッケージ化された知識を得るもの」という 認識になってしまう。 ● 予測のしやすいコミュニケーションのため、生徒にとっては刺激が少ない。 教師が生徒に対する威厳を保ちやすく、授業がコントロールしや すい方法として、多く用いられている
  • 9.
    第7章: 基礎学力における自発運動化に関する指導 ● 自発運動化:無意識に脳に負荷をかけずにできる能力のこと ● 自発運動化の欠如は、思考・理解する能力の欠如を引き起こす。 ● 自発運動化により基礎的な技能が無意識でできるようになると、さらに深いレベル で思考ができるようになる。 ○ 反復による強化は知識を取り出しやすくするために役立つ。 ○ 子供の生活に影響を及ぼす全ての大人が支援する必要がある。 例)単語を理解することに終始してしまい、全体の文脈を 理解することが難しくなる 教師にその役割を全て押し付けるのは不適切。 その一方、教授方法を工夫することで自発運動化を発展 させることは可能。
  • 10.
    第8章: フィードバックの役割 ● 教師はフィードバックをしてると主張するが、生徒は受け取っていないと主張するす れ違いが多い。 ○生徒:次回に繋がるような、「活動をどのように改善すれば良いか」を知りたい ○ 教師:過去の活動に対して「否定的なフィードバック」を返しがち ● フィードバックは、学業の到達度に関わる最も強力な要因の一つ。 ○ 以下が満たされた時に効果を発揮する。 i. 生徒が成功とはどのようなものか知っていて、 ii. 生徒の現在地と、目的地との間の距離を減らすことが目指されていることを理解し、 iii. 次の地点についての情報が与えられた時 ○ 「褒める」こと自体が学習に対してプラスになる研究結果は存在しないので注意。 否定的な表現は肯定的な 表現の数倍印象に残る 簡単な作業の時に生まれつきの能力を褒め ると、困難な状況で諦めやすくなる
  • 11.
    第9章: 社会的モデリングと明示的な教え方を通した複合的な 技能の習得 ● 教師は学習に関して実演し、それを学習させるコーチやモデルの役割を担う ○しかし、生徒は実演を見るだけで、何かが実現可能になるわけではない ○ 観察学習を促すためには、 i. 教師は慎重に段階を追った道筋を示し、 ii. 生徒が情報を段階を追って消化できるように努める必要がある。 ● どのような手法を用いて思考するかは明確に教えられる必要がある ● 迷信:「個人の発見的に生み出される知識はよりしっかりしたものだ!」 ○ 実際に発見的に生み出される知識が学習を支援する根拠はほとんど存在しない。 ○ デメリットの方が多い ■ 認知負荷の増加 ■ 確かで体系的な知識を得にくい ・探究学習の過程は、そのステップごとに焦点を提示し、それぞれのステップでどのような手法を、どのよ うな目的で使用するのかを明確にする。 ・認知的タスク分析に基づいて、適度に単純な作業を分解して授業を行うと、授業からの離脱度が下がっ た(8%→1%) きちんとしたモデルなしに作業を行うよりも、 注意深くモデルを観察した方が優れた結果が得られたと いう研究もあり。
  • 12.
    第10章: 専門的技能とはどのようなものか ● 専門的技能とは、繰り返し発揮される突出したパフォーマンスのことを表す ○学級での教授方法についても、専門的技能があることがわかっている ● 熟達者は以下の特徴を持つ ○ 専門としている領域でのみ特出している ○ 多くの、そして意味あるパターンを知覚することができる ○ 課題解決をほとんどミスなくこなす ○ 専門領域に関しては非常に大きな容量の短期記憶を持っている ○ 目に見える課題を、より深く本質的なレベルで捉える ○ 課題を慎重に定性的に分析することに、より時間を使う ○ 自己管理の卓越したスキルを持つ ● 熟達者は自身の行っていることを正しく説明するのが困難 ○ 意識していないレベルの事柄が多くなるため(自発運動化も参照) ○ 一般人に対して熟達者が説明していることはあまり信用ならない 例えば、同じ程度の経験を積んでいる教師を比較し ても、専門的技能を身につけている人とそうでない 人で教える能力に大きな差が見られる 一つのチャンク(グループ) の中に非常に多くの情報を 含めることができる
  • 13.
    第11章: どのようにして専門的技能は発達するのか ● 熟達者は「意識的な練習(deliveratepractice)」を行っている ○ すでに獲得した技術を繰り返し練習すれば良いわけではない ○ 技能の改善に対して、明示的にコミットする必要がある ○ 短期的なゴールを設定したり、個別最適化されたフィードバックが必要になる ● 意識的な練習を経て、熟達者は高いレベルのスキルを無意識に発揮できるように なる ○ 自発運動化によって獲得されるもの ○ 注意:自発運動化が一旦獲得されてしまうと、今まで自覚的に獲得していた技術が、無意識の段階 に移行して発達が止まってしまう ...! ● 早い段階で才能ある人を選別してしまうことは、潜在的により高い才能を持つ人を 排除してしまう危険性がある ○ 幼少期に天才的な能力を見出された人は、そのほとんどが大人になっても発達しない ○ 「早熟」と「天才的な能力」を混合しないことが大事 歌のレッスン中の観察によると、 (1) 素人歌手は自身が楽しむために練習する (2) プロ歌手は自身の歌唱技術を上げることに焦点を当てる
  • 14.
    ● 指導領域において、熟達者がいることはわかっている ○ 生徒の到達度データに関する統計的な分析によって明らかに ●熟達した教師は、教室の様子を読み取る能力を著しく高く有する ○ 特に以下のような点に焦点を当てている ■ 授業の構造についての情報 ■ 自身の要求と期待 ■ 生徒の活動の傾向 ○ 生徒の理解を非言語的な側面から推測することに極めて正確だった ● 熟達した指導には、「知識と生徒との関係おける感受性」が重要 ○ 生徒の努力を引き出すために、目標を設定したり挑戦心をくすぐったりする ○ 指導の方向性を決めやすくするために、生徒の学習をモニタリング・フィードバックする ○ 教え方を個々の状況に適合させ、指導上必要な事項を素早く判断できるように、高いレベルで知識 を活用する 第12章: 学級での指導領域における専門的技能 ビデオで授業の様子を見せる実験で明ら かに。未熟な教師は、生徒の服装など表 層的なものに注目していた。 ただし生徒と親密である時のみ。生徒の性格を理解することで、「どのよ うな時」に「どのような行動」をするのかを理解している