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反転授業における
学生の事前学習への取り組み方と
成績の関係
◯京都大学大学院教育学研究科 M2 澁川幸加
shibukawa.sachika.86a@kyoto-u.jp
京都大学高等教育研究開発推進センター 田口真奈
2018.9.30(日)11:10〜13:10 日本教育工学会 第34回全国大会 於 東北大学
1
反転授業における事前学習へ着目する重要性
2
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
⇔ 反転授業の事前学習にまつわる課題が報告されている
事前学習 対面授業
反転授業
 対面授業時の理解を深める前提として事前学習は重要な役割
 事前学習へ取り組まない学生
(e.g., Kraut, 2015; Sahin, Cavlazoglu, & Zeytuncu, 2015; Scott et al., 2016)
 学生が事前学習の負荷を感じる
(e.g., Braun et al., 2014; DeSantis, Van Curen, Putsch, & Metzger, 2015; Van Sickle, 2016)
 事前学習時に講義映像の内容を理解することができない
(e.g., Palmer, 2015; Scott et al., 2016; Tawfik & Lilly, 2015)
Njie-Carr et al. (2017)
反転授業に最適な事前学習や対面授業での活動や,
教材の種類,学生のレベルを把握する調査研究が求められる
先行研究:学生の事前学習への取り組み方やその設計
3
教員
ノート作る
ワークシートに取り組む
作らない
取り組まない
VS
特定の事前学習への取り組み方
に焦点を当てた効果検証
e.g. 塙(2014),稲垣・佐藤(2016)
澁川・西岡(2016),澁川・田口(2017)
学習者 学習者
⇔他の取り組み方と比較していない:介入すべき取り組み方の優先度が不明確
→負荷を最小限にするため介入すべき優先度を考えるべき
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
先行研究:学生の事前学習への取り組み方やその設計
4
教員
ノート作る
ワークシートに取り組む
作らない
取り組まない
VS
特定の事前学習への取り組み方
に焦点を当てた効果検証
e.g. 塙(2014),稲垣・佐藤(2016)
澁川・西岡(2016),澁川・田口(2017)
学習者 学習者
学習者
講義映像をどのように視聴していたか
に焦点を当て事前学習の内実を調査
大山・根岸・山口(2016) 巻き戻しの活用
視聴しながら
ノートを作る
⇔他の取り組み方と比較していない:介入すべき取り組み方の優先度が不明確
→負荷を最小限にするため介入すべき優先度を考えるべき
 事前学習の内実を把握することは事前学習を設計する上で意義がある
 その他の取り組み方の内実や学習内容の理解との関係について検討されていない
 事前学習の内実や取り組み方と理解の関係を追求する必要
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
本研究の目的
5
目的1)学生が事前学習へどのように取り組んでいたのか
その内実を明らかにする
目的2)事前学習への取り組み方と成績の関係を検討する
薬学部における反転授業実践科目で
2年間(2017〜2018年度)調査を行った
2017 2018
質問紙調査・
学生インタビュー 質問紙調査
↑澁川・田口(2018)SHIBUKAWA & TAGUCHI (2018)
にて報告
本発表
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
調査対象科目の詳細
京都大学薬学部2年対象の必修授業科目「生理学2」
 薬が作用する生体分子に関する膨大な知識を学ぶ。
 習得型の反転授業 ✓ 担当教員は反転授業を導入して2〜3年目の実践
6
• 小テスト(多肢選択・5問)10分
• 小テストの解説5分
• 演習課題(5〜7問)
• 2017年度はグループワーク
• 2018年度は個人作業
70分
対面授業の流れ事前学習について
その他教材
図表を印刷したプリント
教科書
LMS上にスライドのレジュメ・過去問
講義映像
15~25分の自作映像
毎週1本
スライド+ナレーション
教員の指示
事前学習への取り組み方につい
て教員からの指示はなかった
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
調査対象科目の詳細(2017年度の様子・30s)
7
※データが重いので割愛しました
※2018年度はグループワークではなく個別に問題へ取り組んだ
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
8
2017年度の調査(予備調査)の結果
学生S:毎週3時間事前学習・成績平均
スライドと一字一句同じように
書き写された精緻なノート
学生T:毎週6時間事前学習・成績高
スライドと一字一句同じように
PCで書き起こされたノート
事前学習時間が平均より長い学生4名へインタビューをした結果…
 重要な箇所がわからず漫然と学習していた
 学習内容の理解よりも精緻なノート作りを優先する傾向
主目的:学生は事前学習へどのように取り組んでいたのか明らかにする
澁川・田口(2018), SHIBUKAWA & TAGUCHI (2018)
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
←「ポイントがわからない」
= 注意の焦点化に
困難を感じる学生
↑「スライドを全て書き写す」
=情報の比較・統合が非効率
目標の認識
9→情報の選択・比較・統合において改善の余地があると示唆
→事前学習時に学習目標を認識することが学習内容の理解に重要だと示唆された
予習から授業理解に至る情報処理プロセス(篠ヶ谷 2013)をもとに解釈
授業理解
(講義映像の理解)
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
2018年度の調査対象科目の詳細
2017年度の調査結果をふまえて対面授業の終わりに
次週の学習目標(単元のポイント)を解説するように
• 小テスト(多肢選択・5問)10分
• 小テストの解説5分
• 演習課題(5〜7問)
• 2017年度はグループワーク
• 2018年度は個人作業
70分
• 次週の学習目標(単元の
ポイント)を解説5分
対面授業の流れ事前学習について
その他教材
図表を印刷したプリント
教科書
LMS上にスライドのレジュメ・過去問
講義映像
15~25分の自作映像
毎週1本
スライド+ナレーション
教員の指示
事前学習への取り組み方につい
て教員からの指示はなかった
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
2018年度の調査の目的
11
事前学習
初期(PRE) 終盤(POST)
理解 理解
取り組み方 取り組み方
③ ③
②
教員
①
目的1)学生の事前学習への取り組み方の内実を明らかにする
①事前学習時に学習目標を活用したか注目する
②1タームを通した取り組み方の変遷に注目する
 反転授業の初期と終盤では必要な支援が異なる可能性
目的2)③事前学習への取り組み方と成績の関係を検討する
学習目標の提示
2018年度の第3回・第14回の授業にて質問紙調査を行う
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
調査手続き
12
調査対象:2018年度の「生理学2」受講者103名
調査方法:
2017年度の予備調査の結果をもとに質問紙を作成
2018年度の第3回,第14回の授業にて質問紙調査を行った
調査結果と成績 (小・中間・期末テスト)を変数として使用
PRE・POSTともに回答した学生に限定し分析を進める
中間
テスト
(40点)
第14回第3回
PRE POST
期末
テスト
(50点)
有効回答数(n=67〜68) 有効回答数(n=39〜40)
第2〜6回
小テスト
第8〜12回
小テスト
小テストの合計点(55点)
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
質問項目
POST調査ではこれらに加えて…
事前学習への取り組み方で新たに工夫・変更したことはなにか?(自由記述)
※2017年度の調査結果をもとに項目を作成
事前学習への取り組み方(1:全く行わなかった〜5:とても熱心に行った)
講義映像を視聴する
配布プリントを参照する
ノートを作成する
ノートを読み直す
◯時間◯分と自由記述
1週間あたりの事前学習時間
2値(はい・いいえ)
学習目標を事前学習時に参照したか?
教科書を読む
過去問を解く
自分でテスト問題を作って勉強する
講義映像の視聴方法(最も近いものを1つ選択)
講義映像を全く視聴しなかった
講義映像を一部スキップしながら,飛ばし飛ばし視聴した
講義映像をスキップすることなく,最初から最後まで通して1度だけ視聴した
巻き戻し機能等を使いながら,講義映像を1度以上視聴した
+
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
事前学習時の目標の活用と成績の関係
14
PRE POST
68名中26名が使用 39名中22名が使用
12名が
継続的に使用
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
事前学習時の目標の活用と成績の関係
 事 前 学 習 時に 学 習 目 標を 活 用 す るこ と が
成 績 の 向 上に 有 益 で ある こ と が 示唆 さ れ た
15
学習目標を活用し続けた (n=12)
VS
時々活用or活用していない(n=27)
小テスト (Z=4.56, p<.01, r=.65)
中間テスト(Z=3.94, p<.01, r=.50)
期末テスト(Z=3.40, p<.01, r=.57)
 学習目標を活用し続けた学生が
有意に成績が高かった
POST時 学習目標を活用した (n=22)
VS
活用していない(n=17)
小テスト (Z=2.67, p<.01, r=.45)
中間テスト(Z=2.76, p<.01, r=.46)
 学習目標を参照した学生が
有意に成績が高かった
PRE POST
68名中26名が使用 39名中22名が使用
12名が
継続的に使用
PRE・POSTともに回答した学生(n=39)に対し 学習目標の活用と成績の関係を
マンホイットニー検定を用いて検討した
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
事前学習への取り組み方:要約統計量
変数名
PRE (n=67~68) POST (n=39~40)
N 平均値 SD N 平均値 SD
講義映像を視聴する 68 4.029 1.065 40 3.975 1.165
配布プリントを参照する 68 3.971 1.133 40 4.100 0.928
教科書を読む 67 2.239 1.220 40 2.800 1.114
ノートを作成する 68 3.941 1.359 40 4.200 1.224
ノートを読み直す 68 3.015 1.377 39 3.821 1.275
過去問を解く 68 1.368 0.809 39 2.923 1.365
自分でテスト問題を
作って勉強する
68 1.132 0.571 40 1.300 0.648
友人と予習する 68 1.676 1.215 40 2.025 1.349
PRE・POSTともに
 講義映像の視聴,配布プリントの参照,ノートの作成・読み直しが多い
POSTでは
 LMS上で公開されている過去問を解く学生が増えた
→担当科目の教員は学習内容を横断的・統合的に理解する手段として
過去問を普段から活用することを推奨する授業観をもっていた
16
事前学習への取り組み方(1:全く行わなかった〜5:とても熱心に行った)
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
事前学習への取り組み方と成績の相関
 事前学習時にノートを作成したりノートを見直したりする
ことと成績に関係がある可能性 17
PRE調査結果と成績から
見られた正の相関
プリントを参照する・中間テス
ト (r=.26, p<.05)
ノートを作成する・中間テスト
(r=.26, p<.05)
ノートを作成する・期末テスト
(r=.35, p<.01)
POST調査結果と成績から
見られた正の相関
ノートを作成する・中間テス
ト (r=.49, p<.01)
ノートを見直す・期末テスト
(r=.38, p<.05)
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
事前学習への取り組み方の変遷
18
PRE・POST調査ともに回答した学生に注目し,POST-PREの値を算出した
 講 義 映 像 への 重 き を 置か な く な る学 生 が 増 加
ウィルコクソンの符号化順位検定でPOSTーPREの変化を比較したところ
「ノートを読み直す」「過去問を解く」は有意な変化であった
(Z= -2.38, r= -.27, p<.05;Z = -4.66, r= -.53, p<.01)
 ノ ー ト を 読み 直 し た り過 去 問 を 解く 学 生 が 増加
変数名
PRE (n=67~68) POST (n=39~40) POST- PRE
N 平均値 SD N 平均値 SD 平均値 有意差
講義映像を視聴する 68 4.029 1.065 40 3.975 1.165 -0.051
配布プリントを参照する 68 3.971 1.133 40 4.100 0.928 0.000
教科書を読む 67 2.239 1.220 40 2.800 1.114 0.263
ノートを作成する 68 3.941 1.359 40 4.200 1.224 0.179
ノートを読み直す 68 3.015 1.377 39 3.821 1.275 0.526 p<.05
過去問を解く 68 1.368 0.809 39 2.923 1.365 1.474 p<.01
自分でテスト問題を
作って勉強する
68 1.132 0.571 40 1.300 0.648 0.154
友人と予習する 68 1.676 1.215 40 2.025 1.349 0.179
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
講義映像の視聴の仕方の変遷
19
 1 1 名 中 9 名 は 「 過 去 問 を 解 く 」 の 点 数 が 向 上
 中 に は ノ ー ト の ま と め 方 を 過 去 問 ベ ー ス へ 変 化 さ せ た 学 生 も
 講 義 映 像 へ の 重 き を 置 か な く な る ≠ 講 義 映 像 を 視 聴 し な く な る
 視 聴 す る だ け で な く 知 識 の 体 系 化 や 外 化 へ 力 を 入 れ る よ う に 変 遷
POST-PREで講義映像の視聴の度合いが-2以上変化した学生の詳細
有効回答39名中11名が「講義映像の視聴」取り組み方の得点が低下
⇔視聴しなくなったのは11名中2名のみ
視聴の仕方の変遷 得点の変容 増えた取り組み方
飛ばし飛ばし視聴
→視聴しなくなる
-3 1名
配布プリントを参照,教科書を読む,ノートを作
成する,ノートを読み直す,過去問を解く
1度だけ視聴
→視聴しなくなる
-4 1名 過去問を解く
1度以上視聴
→飛ばし飛ばし視聴
−2 2名 過去問を解く
−3 1名
配布プリントを参照,教科書を読む,
ノートを作成する
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
アンケートへの記述内容からみる取り組み方の変遷
20
 丸写し→考えたことも書くように変化
 列挙→表などにしてまとめるように変化
反転授業の初期では
 スライドの丸写しをするような
ノートのまとめ方の傾向?
 理解の助けになりそうなときは図を書いた
 メカニズムを意識しながら予習した
反転授業の後半では
 理解や知識の関係性を意識
した取り組み方へ
 過去問を見て,どのようなことが問われや
すいかを理解してから予習するように
 過去問との関連性を考えながらノート作成
 知識を体系化したり理解する
ツールとして過去問を活用
反転授業の初期では…
 丸写しや列挙をするノートを作成する可能性
授業を重ねていくうちに…
 知識の体系化や内容理解を重視するように意識が変化した学生もいた
ア ン ケ ー ト へ の 記 述 内 容 考 察
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
考察:学習目標の提示の有効性と介入が必要となる活動
篠ヶ谷の予習から授業理解へいたる情報処理モデルに今回明らかになったことを重ねてみると
21
ノートの作成・読み直しが
成績と関係
授業の初期と終盤で
情報の比較・統合が
変化する可能性
→その質に個人差あり?
目標の認識が
理解に有益
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
22
まとめ
目的1)学生の事前学習への取り組み方の内実を明らかにする
目的2)③事前学習への取り組み方と成績の関係を検討する
反転授業初期(PRE)
講義映像の視聴
プリントの参照
ノートの作成・見直し
(丸写し・列挙)
反転授業終盤(POST)
講義映像の視聴
プリントの参照
ノートの作成・見直し
(自らの考えを書く)
過去問を解く
 今後の課題:どのような学生がなぜ取り組み方が変化したのか検討する
 授業の初期と終盤で
情報の比較・統合,
理解への意識が変化
する可能性
 学習目標の活用
ノートの作成
ノートを見直し
が成績と関係
研究背景 研究目的 研究方法 予備調査 結果・考察
参考文献
• Kraut, G. L. (2015). Inverting an introductory statistics classroom. PRIMUS, 25(8),
683e693.
• Sahin, A., Cavlazoglu, B., & Zeytuncu, Y. E. (2015). Flipping a college calculus course:
A case study. Educational Technology & Society, 18(3), 142e152.
• Scott, C. E., Green, L. E., & Etheridge, D. L. (2016). A comparison between flipped and
lecture-based instruction in the calculus classroom. Journal of Applied Research in
Higher Education, 8(2), 252e264.
• Braun, I., Ritter, S., & Vasko, M. (2014). Inverted classroom by topic: A study in
mathematics for electrical engineering students. International Journal of Engineering
Pedagogy, 4(3), 11e17.
• DeSantis, J., Van Curen, R., Putsch, J., & Metzger, J. (2015). Do students learn more
from a flip? An exploration of the efficacy of flipped and traditional lessons. Journal of
Interactive Learning Research, 26(1), 39e63.
• Van Sickle, J. (2016). Discrepancies between student perception and achievement of
learning outcomes in a flipped classroom. Journal of the Scholarship of Teaching and
Learning, 16(2), 29e38.
• Palmer, K. (2015). Flipping a calculus class: One instructor's experience. PRIMUS,
25(9e10), 886e891.
• Scott, C. E., Green, L. E., & Etheridge, D. L. (2016). A comparison between flipped and
lecture-based instruction in the calculus classroom. Journal of Applied Research in
Higher Education, 8(2), 252e264.
23
24
• Tawfik, A. A., & Lilly, C. (2015). Using a flipped classroom approach to support
problem-based learning. Technology, Knowledge and Learning, 20(3), 299e315.
• 塙雅典 (2014). 大学専門科目におけるICTを活用したアクティブラーニング. 電子情
報通信学会総合大会講演論文集., vol. 2014, p. 40-42.
• 稲垣忠, 佐藤靖泰 (2015). 家庭における視聴ログとノート作成に着目した反転授業の
分析. 日本教育工学会論文誌. vol. 39, 97-105.
• 澁川幸加, 西岡貞一(2016). 反転授業における予習の取り組み方が学習アプローチへ
及ぼす影響. 日本教育工学会第32回全国大会講演論文集, 603-604.
• 澁川幸加, 田口真奈 (2017). 反転授業におけるワークシートの利用が対面授業時のグ
ループディスカッションの発話内容に与える影響. 日本教育工学会第33回全国大会
講演論文集, 855-856.
• 大山牧子, 根岸千悠, 山口和也 (2016) 学生の理解を深める反転授業の授業デザイン
の特徴: 大学における化学の授業を事例に. 大阪大学高等教育研究, 4, 15-24.
• 篠ヶ谷圭太(2013). 予習が授業理解に与える影響とそのプロセスの検討:効果的な
予習指導の実現を目指して. 東京大学教育学研究科総合教育科学専攻博士論文.
• Sachika SHIBUKAWA, Mana TAGUCHI (2018) How Students Prepare in Flipped
Classrooms: A Case Study in a Physiology Class. 2018 International Symposium on
Educational Technology, pp.73-77.
• 澁川幸加,田口真奈(2018)反転授業における学生の事前学習の取り組み方:事前
学習時間と成績に着目して. 大学教育学会第40回大会発表要旨収録, 218-219.
参考文献

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JSET2018 反転授業における 学生の事前学習への取り組み方と 成績の関係

Editor's Notes

  1. 京都大学修士2年の澁川です.発表をさせていただきます. 本日の発表資料をSlide Shareに掲載しましたので,ご興味のある方はQRコードを読み込むか検索していただけると幸いです.
  2. 近年、高等教育では反転授業の実践が広まりつつあります。 反転授業では対面授業時の理解を深める前提として,事前学習は重要な役割を担います. 一方で,このような事前学習にまつわる課題も報告されております. そのため,反転授業に最適な事前学習や対面授業での活動や教材などのレベルを把握する調査研究が求められるといったことも指摘されております. ます.例えば,事前学習へ取り組まない学生や,事前学習に負荷を感じてしまう学生,講義映像の内容を理解することができないといった課題が報告されています. 負荷を感じるだけでなく理解や学習成果へ結びつけるためには
  3. 最適な事前学習の活動を検討する際に参考となる先行研究が報告されております. 例えば,事前学習時にノートやワークシートに取り組ませるといった,特定の取り組み方の効果検証をした事例があります. これはどのような取り組み方をさせるか検討する際に有益なエビデンスとなりますが,ノートやワークシート以外の取り組み方と学習効果を比較していないため,介入すべき取り組み方の優先度が不明確です.学生の負荷を増やさないためにも,他の取り組み方と比較し,介入すべき活動はなにか,優先度を考える必要があります. があります. これらは特定の取り組み方の使用に特化しており他の取り組み方と比較していないため,介入すべき取り組み方の優先度が不明確です. 効果がある取り組み方だとしても,学生の負荷になると実行可能性が下がるため,取り組ませたり介入する優先度の高い取り組み方を検討する必要があるといえます. 何に負荷を感じているのかわからない
  4. また,取り組み方の内実を把握するために講義映像をどのように視聴していたかに焦点を当てた調査報告もあります. このように事前学習の内実を把握することはどのように事前学習へ取り組ませるか検討する上で意義がありますが,この研究では映像の視聴に特化していたため,その他の取り組み方の内実や取り組み方と理解との関係について検討されていない課題があります. そのため,事前学習の質を向上するためには事前学習への取り組み方の内実や理解との関係を追求する必要があります 最適な事前学習の活動を検討する際に参考となる先行研究が報告されております. 例えば,事前学習時にノートやワークシートに取り組ませるといった,特定の取り組み方の効果検証に焦点を当てた事例や講義映像の視聴の仕方に着目した調査があります. しかし,実際に学生はどのような取り組み方をしているのかという内実や,取り組み方と理解の関係については十分に検討されていません. 事前学習の取り組み方については様々な研究がありますが,その具体的な取り組み方と理解の関係は十分には検討されていません. . 何に負荷を感じているのかわからない
  5. そこで本研究では, 学生が事前学習へどのように取り組んでいたのか,その内実を明らかにすること, 事前学習への取り組み方と成績の関係を検討することを目的とします. そのために,薬学部にの実践を対象に,昨年から2年間かけて調査を行いました. 本発表では,2018年度の調査内容を説明します.
  6. 調査は,京都大学薬学部2年対象の必修授業科目「生理学2」を対象に行いました. これは薬が作用する生体分子に関する膨大な知識を学ぶ習得型の反転授業で, 事前学習の教材として,教員が自作する講義映像,図表を印刷したプリントや教科書,映像と同じレジュメや過去問が提供されました. 教員は「ノートを作るように!」といった取り組み方について指示はありませんでした. そのため,学生は自主的に事前学習への取り組み方を選択していたといえます. 対面授業時は小テストを行った後,演習課題に取り組みました.2017年度はグループワーク形式でしたが,2018年度は個人作業形式で演習課題へ取り組みました.
  7. <PLAY>
  8. この授業を対象に2017年度は,そもそも学生はどうやって事前学習へ取り組んでいるのか探索的なケーススタディを行いました. 事前学習時間に3時間や6時間と平均より長い時間費やした学生へインタビューをしたところ,どこが大事がわからず漫然と学習をしていたこと,学習内容を理解することよりもスライドと一字一句同じような精緻なノート作りを優先する傾向があることがわかりました. 事前学習の質を上げるためには,対面授業時に深められるような疑問点を考えたり,作業よりも理解を優先する必要があるといえます.
  9. さらにこの結果を解釈するために,篠ヶ谷が予習時の学習方略,授業時の学習方略の関係をもとに作成した,予習から授業理解に至るプロセスを参照しました. 篠ヶ谷は授業理解を教員による説明型の講義の内容を理解することと定義していたため,反転授業ではこの授業理解までが事前学習で求められる講義映像の理解である,と捉えた上で,この図を使用しました. その結果,どこが重要かわからない学生は中尉を焦点化し情報を選択することに,スライドを全て書き写すよ言うな学生は情報の比較・統合が非効率だといえます.また,こうした困難を解消するためには,目標を認識することが重要であろうという仮説を得られました. このように事前学習時に理解へ至るための課題を, 篠ヶ谷は予習時の学習方略,授業時の学習方略の関係をもとに,予習から授業理解に至るプロセスを示しています。 今回の調査で見られた事前学習への取り組み方を,篠ヶ谷が示した予習から授業理解に至るプロセスをもとに解釈してみると わからない単語を調べたり,教員の意図を推測したりする,予習時の情報処理プロセスに当てはまる取り組み方もあった一方で 内容を理解しようと意識して取り組んだりスライドを全て書き写すような,情報を選択・比較・統合・モニタリングする学習方略も見受けられました。 さらに先程指摘した,事前学習時間の長い学生の課題を当てはめてみると,ポイントがわからないことは注意の焦点化がうまくできていないこと,スライドを全て書き写すというのは情報の比較・統合が非効率であるといえます。これらの方法の元をたどると,先程示唆として提示した「目標の認識」が効いてくるかもしれない,ということがわかります。 つまり,予習から授業理解へ至るプロセスを踏まえても,学習目標を認識することが学習内容の理解に重要であることが示唆されました。
  10. そこで,2018年度の実践では毎授業の終わりに次週の学習目標を解説するよう授業デザインを変更して実施いたしました.
  11. 今回の発表の目的です. 引き続き取り組み方の内実を明らかにすることを目標に設定し,学習目標を活用したか,反転授業の初期と終盤では必要な支援が異なる可能性があるため,1タームを通して取り組み方にどのような変遷があったかに注目します. また,取り組み方と成績の関係を検討することを目的に,質問紙調査を行いました. より多くの標本数を取り組み方の内実を
  12. 2017年度の結果を基に質問師を作成し,2018年度の第3回と第14回の授業回で質問紙調査をしました. この結果と,毎週行っていた小テストの合計得点,中間テスト,期末テストを変数として使用し,要旨では中間テストまでの結果しか言っていなかったのですが本発表ではPOSTまでとれましたので,PRE/POSTともに回答した学生に限定して分析を進めました.
  13. 調査に使用した質問項目です.事前学習時間と学習目標を活用したかどうか.事前学習への取り組み方として講義映像を視聴する,配布プリントを参照する,ノートを作成する,過去問を解くといったインタビューから見られた項目で構成しました.1を行わなかった,5をとても熱心に行ったとする5件法でとりました. さらに,講義映像をどのように視聴していたのか把握するべく,視聴しなかったのか,スキップしながら,1度だけ,何度も見たのかの4種類の項目をいれました. さらにPOST調査ではこれらに加えて,取り組み方で新たに工夫・変更したことがある場合,それは何かを自由記述で回答を求めました.
  14. 次に,事前学習時の目標を活用したか調べたところ,PREでは68名中26名が,POSTでは有効回答数が少ないのですが39名中22名が使用していると回答しました.うち,12名が継続的に使用していました
  15. このPOSTに回答した学生に限定して,学習目標を活用した群と活用していない群で比較をしたところ,活用していたほうが小テストと中間テストの得点が有意に高くなりました.次に継続的に使用していた12名とそれ以外の27名を比較したところ,成績全ての変数で活用した学生の方が有意に成績が高くなりました.このことから,事前学習時に学習目標を使うことが成績の向上に有益だと示唆されました. あいっっぁ
  16. 次に取り組み方に着目すると,こうした項目が多いことがわかりました. また,POSTではLMS上で公開されている過去問を解く学生が増えたのですが,これはテスト対策というよりは,担当科目の教員が学習内容を横断的・統合的に理解する手段として過去問を普段から活用することを推奨する授業観を持っていたことが関係する可能性があります.
  17. このような取り組み方と成績の関係をみたところ,プリントを参照する,やノートを作成する・見直すことに正の相関が見られました. このことから,とくにノートを作成したり見直すといったことが成績と関係がある可能性
  18. 次に,こうした取り組み方がどのように変遷したのか捉えるべく,PREとPOSTの差分を算出したところ,唯一マイナスになったのが講義映像の視聴となりました.さらに,変化に有意差がみられた取り組み方として,ノートを読み直す,過去問を解くことが見られました.
  19. 映像の視聴は39名中11名がネガティブな変容をしましたが,視聴しなくなったのは11名中2名のみでした.さらにこの内の多くは過去問を解く点数が向上し,中にはノートのまとめ方を過去問ベースへ変化させた学生もいました. そのため,講義映像をしなくなるというよりも,ただ視聴するだけでなく過去問を解いたりノートを作成する方に重きをおくようにし,知識を体系化したり該化するよう変遷していたことがわかりました.
  20. また,アンケートの自由記述を見るとこのようなことがかかれていまして,反転授業の初期ではスライドのまる写しをするようなノートを取っていた可能性のある記述や,授業が進むにつれて理解の助けを意識したりメカニズムを意識するといった,理解や知識の関係性を意識した取り組み方へ変容している可能性がみられました.また,過去問を見てどのようなことが問われやすいか理解してから予習する,といったように,知識を体系化したり理解するツールとして過去問を活用している学生もいることがわかりました. このように,授業の初期では丸写しや列挙をするノートを作成する可能性や,授業を重ねると内容理解を重視するよう意識が変化した学生もいたことが変化した学生もいました. をとっていたけれども,授業を重ねていくうちに知識を体系化したり内容理解を重視するように意識が変化した学生もいました.
  21. この結果を予習から授業理解へ至る情報処理モデルに当てはめますと,目標の認識がやはり理解に有益であることが仮説どおり確認されました. また,ノートの作成・読み直しが成績と関係すること,ノートの取り方が丸写しから考えを書くように変化があった学生がいたことから,情報の比較・統合が授業の初期と終盤で変化する可能性があること,また,その質には個人差がある可能性がある,と整理されました. ました.
  22. 今後はどのような学生がなぜ取り組み方が変化したのか検討していきたいです.以上です.