TPP合意と今後の知的財産分野への影響と問題点
一般社団法人インターネットユーザー協会事務局長
香月啓佑
2016.2.25@産業経理協会 経済時事講座
一般社団法人インターネットユーザー協会
Movements for the Internet Active Users
MIAUの目的
インターネットやデジタル機器等の技術発展や
利用者の利便性に関わる分野における
意見の表明・知識の普及などの活動
MIAUのめざすもの
利用者がより創造的に活動でき
そして技術自身が発展できるような環境
既存のシステムを守るための制度が
技術の発展を制限しない環境
MIAUの活動内容
インターネットおよびデジタル技術に関わる
法制度に関する正確な知識の供給
インターネットおよびデジタル技術について
技術発展や利用者の利便性に関わるような法制度への対応
関連する政府報告書のパブリックコメントに対する
意見提出活動および政策提言活動
インターネット利用者の情報リテラシー向上の支援
MIAUの最近の主な活動(国内)
著作権法改正への動き:
• 改正著作権法における「違法ダウンロード刑事罰化」

「アクセスコントロール回避規制」へ反対
• 国会議員に向けてのロビー活動、院内勉強会の開催
• 参議院文教科学委員会にて参考人として意見表明
• 文化庁審議会への委員としての参加
• クラウド小委員会(Dropboxに補償金?)
• 今年度は私的録音録画補償金についての議論がスタート
医薬品のネット販売規制への動き:
• 「一般用医薬品の通信販売の再開を求める要望書」を提出
• 楽天三木谷社長、ケンコーコム後藤社長と共同
東京都知事選への動き:
• 都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート実施
• 都知事選候補者へ向けて都政におけるネット活用や

インターネット規制についてアンケート
MIAUの最近の主な活動(海外)
ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)への動き:
• 秘密交渉へ反対し、公開された英語条文を独自に日本語翻訳し公開
• ニコニコ生放送を用いて解説番組を放送
• ACTA東京ラウンドの非公式協議に参加。
• 国会による承認前に民主党議員グループの求めで

院内勉強会を開催
TPPへの動き:
• 「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」(thinkTPPIP)を

立ち上げ
• TPP交渉の透明化及びIP Chapterへの反対(TPP全体への反対ではない)
• ニュージランドで開催された「NZ Digital Rights Camp」に参加
• 海外との国際連携を深める
• TPP交渉ニュージランドラウンドの取材
その他最近意見発表したもの
個人情報保護法とプライバシー
 個人情報の共同利用問題・マイナンバー制度・PRISM
児童ポルノ禁止法改正問題・都条例問題
 表現規制・ブロッキング
出版社への権利付与問題
 電子出版権・出版社へ著作隣接権を付与?
ネットリテラシー教育
 高校生・大学生・オトナに向けてのリテラシー教育
TPPの21分野30項目
第1章.冒頭規定・一般的定義章
第2章 内国民待遇及び物品の市場アクセス章
第3章 原産地規則及び原産地手続章
第4章 繊維及び繊維製品章
第5章 税関当局及び貿易円滑化章
第6章 貿易上の救済章
第7章 衛生植物検疫(SPS)措置章
第8章 貿易の技術的障害(TBT)章
第9章 投資章
第10章 国境を越えるサービスの貿易章
第11章 金融サービス章
第12章 ビジネス関係者の一時的な入国章
第13章 電気通信章
第14章 電子商取引章
第15章 政府調達章
第16章 競争政策章
第17章 国有企業及び指定独占企業章
第18章 知的財産章
第19章 労働章
第20章 環境章
第21章 協力及び能力開発章
第22章 競争力及びビジネスの円滑化章
第23章 開発章
第24章 中小企業章
第25章 規制の整合性章
第26章 透明性及び腐敗行為の防止章
第27章 運用及び制度に関する規定章
第28章 紛争解決章
第29章 例外章
第30章 最終規定章
インターネットに関係ありそうな分野
第1章.冒頭規定・一般的定義章
第2章 内国民待遇及び物品の市場アクセス章
第3章 原産地規則及び原産地手続章
第4章 繊維及び繊維製品章
第5章 税関当局及び貿易円滑化章
第6章 貿易上の救済章
第7章 衛生植物検疫(SPS)措置章
第8章 貿易の技術的障害(TBT)章
第9章 投資章
第10章 国境を越えるサービスの貿易章
第11章 金融サービス章
第12章 ビジネス関係者の一時的な入国章
第13章 電気通信章
第14章 電子商取引章
第15章 政府調達章
第16章 競争政策章
第17章 国有企業及び指定独占企業章
第18章 知的財産章
第19章 労働章
第20章 環境章
第21章 協力及び能力開発章
第22章 競争力及びビジネスの円滑化章
第23章 開発章
第24章 中小企業章
第25章 規制の整合性章
第26章 透明性及び腐敗行為の防止章
第27章 運用及び制度に関する規定章
第28章 紛争解決章
第29章 例外章
第30章 最終規定章
電気通信
電気通信章の概説(政府TPP対策本部)
公衆電気通信サービスへのアクセス及びその利用に関す
る措置等のサービス貿易一般協定(GATS)電気通信附属
書と同種の規律の他、競争条件の確保のためのセーフガー
ド、主要なサービス提供者との相互接続等のGATS第四議
定書と同種の規律、国際移動端末ローミング、再販売等の
電気通信分野に係る貿易促進のための規律等を規定。
国内法の改正の必要性(政府TPP対策本部評価)
なし
電子商取引
電気通信章の概説(政府TPP対策本部)
デジタル・プロダクト(デジタル式に符号化され、商業的又は流
通のために生産され、及び電子的に送信されるコンピュータ・プ
ログラム等)の無差別待遇、 国境を超える情報移転の自由の確
保、サーバ等のコンピュータ関連設備の現地 化要求の禁止等、
電子商取引を阻害するような過剰な規制が導入されないよう
各種規律を規定。また、電子商取引利用者の個人情報の保護、
オンライン消費者の保護に関する規律を定めるなど、消費者が
電子商取引を安心して利用できる 環境の整備についても規定。
国内法の改正の必要性(政府TPP対策本部評価)
なし
TPP交渉の再難航分野
知的財産分野
Intellectual property (IP)
出典:特許庁「知的財産権入門(平成24年度)」
著作権は権利の束
出典:ベンチャー必読!15分でわかる著作権の基礎(STORIA法律事務所)
http://storialaw.jp/topics/atoz/650
知的財産章の概説(政府TPP対策本部)
知的財産の保護(知的財産の種類毎の保護水準及び権利行使
手続等)について規定。本章は、商標、地理的表示、特許、意匠、
著作権、開示されていない情報等の知的財産を対象とし、これら
の知的財産の保護につき、WTO協定の一部である 「知的所有権
の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)には含まれてい
ない、より高度又は詳細な規律を含めている。また、これらの知
的財産権の行使 に関し、民事上及び刑事上の権利行使手続、
国境措置等について規定。
国内法の改正の必要性(政府TPP対策本部の評価)
あり(特許、著作権、法定損害賠償)
TPP知的財産章の構造
A節:総則
B節:協力
C節:商標
D節:国名
E節:地理的表示
F節:特許及び開示されていない試験データその他のデータ
G節:意匠
H節:著作権及び関連する権利
I節:権利行使
J節:インターネット・サービス・プロバイダ
K節:最終規定
• 医薬品のデータ保護期間
• グレースピリオドの導入
• 期間補償のための

特許権存続期間延長
著作権保護期間延長
アクセスコントロール回避規制
非親告罪化、法定損害賠償
Notice-and-Takedown
(日本は例外)
2
TPP協定の概要
1.グレースピリオド(猶予期間:12月)の導入を義務付け。
2.期間補償のための特許権の存続期間の延長制度の導入を義務付け。
TPP協定の概要
◆第18.38条(猶予期間)
各締約国は、 少なくとも、発明が新規性又は進歩性のあるものであるかどうかの判断に際して用いる公衆に開示された情報に
ついて、その開示が次の(a)及び(b)の要件を満たす場合には、当該情報を考慮に入れない。
(a) 特許出願人又は特許出願人から直接若しくは間接に当該情報を入手した者により行われたものであること。
(b) 当該締約国の領域における出願の日の前十二箇月以内に行われたものであること。
◆第18.46条(不合理な遅延についての特許期間の調整)
1 各締約国は、不合理又は不必要な遅延を回避することを目的として、効率的かつ適時に特許出願を処理するため最善の努
力を払う。
2 締約国は、特許出願人の特許出願の審査を迅速に行うことを当該特許出願人が要請するための手続を定めることができる。
3 締約国は、自国における特許の付与において不合理な遅延がある場合には、当該遅延について補償するために特許期間を
調整するための手段を定め、及び特許権者の要請があるときは当該遅延について補償するために特許期間を調整する。
4 この条の規定の適用上、不合理な遅延には、少なくとも、締約国の領域において出願した日から五年又はその出願の審査
の請求が行われた後三年のうちいずれか遅い方の時を経過した特許の付与の遅延を含む。締約国は、そのような遅延の決定
において、特許を与える当局による特許出願の処理又は審査の間に生じたものではない期間、特許を与える当局が直接に責め
に帰せられない期間及び特許出願人の責めに帰せられる期間を除外することができる。
TPP協定の条文(グレースピリオド・期間補償のための特許権の存続期間の延長制度の整備)
出典:TPP協定を担保するための特許法改正について(特許庁, 平成28年2月12日)
3
TPP協定の担保の在り方(新規性喪失の例外規定:特許法第30条)
現行:6月(TPP協定:12月)
公表内容に
ついて出願
学会等での公表により、
出願された発明の
新規性等が否定されない学会等での公表
◆特許法では、特許出願前に既に公表されている発明は、新規性がないものとして権利化することができな
いのが原則であるところ、公表から6月以内に出願した場合について、例外として救済する措置を規定して
いる。
現行の制度(新規性喪失の例外規定)
TPP協定の要請を受け、この新規性喪失の例外期間を現行の6月から12月に延長し、多様な
発明をより適切に保護する。
出典:TPP協定を担保するための特許法改正について(特許庁, 平成28年2月12日)
4
TPP協定の担保の在り方(特許権の存続期間の延長:特許法第67条等)
◆我が国の特許法には、期間補償のための特許権の存続期間の延長制度は存在しない。
◆特許権の存続期間は、原則、出願から20年で満了するため、権利化までに時間がかかった場合には、
その分の権利期間が短くなる。
現行の制度(期間補償のための特許権の存続期間の延長制度)
TPP協定が要請する「不合理な遅延」の補償のために、特許出願の日から5年を経過した日又
は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後に特許権の設定
の登録があった場合に、特許権の存続期間の延長ができる制度を設け、適切な権利期間を確
保する。
延長登録出願により特許権の存続期間を延長することができるとし、当該延長登録出願につい
て審査官が審査を行う。
出願 審査請求 特許権の設定の登録 出願から20年
3年
5年
いずれか
遅い日
期間延長
適切な権利期間を
確保
出典:TPP協定を担保するための特許法改正について(特許庁, 平成28年2月12日)
TPP知的財産章の著作権関係論点
A節:総則
B節:協力
C節:商標
D節:国名
E節:地理的表示
F節:特許及び開示されていない試験データその他のデータ
G節:意匠
H節:著作権及び関連する権利
I節:権利行使
J節:インターネット・サービス・プロバイダ
K節:最終規定
医薬品のデータ保護期間
著作権保護期間延長
アクセスコントロール回避規制
非親告罪化、法定損害賠償
Notice-and-Takedown
(日本は例外?)
政府における著作権法制に関する議論のプラットフォーム
文化審議会
著作権分科会
文部科学大臣又は文化庁長官の諮問に応じて、

文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項を

調査審議し、文部科学大臣又は文化庁長官に意見を述べる
著作権制度に関する重要事項を調査審議する
•
使用料部会
•
法制・基本問題小委員会
•
新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するWT
•
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会
•
国際小委員会
TPP著作権はここで議論
著作権保護期間延長
種類 現行法
著作物
原則 著作者の死後70年
無名・変名 公表後50年
団体名義 公表後50年
映画 公表後70年
実演 実演が行われた後50年
レコード レコードの発行後50年
TPP
著作者の死後70年
公表後70年
公表後70年
公表後70年
実演が行われた後70年
レコードの発行後70年
50年だったものが70年に
忘れ去られてしまうものが増える
……孤児著作物問題
ミッキーマウス法とも揶揄される
……伸び続ける著作権保護期間
著作権保護期間の世界で続く"戦後"

……戦時加算問題
著作権侵害の一部非親告罪化
著作権侵害に関して公訴を提起できるように
• 市場にて権利者により有償で提供または提示されているもの
• 原作のまま、すなわち著作物等に改変を加えずに著作物等を利用する行為
• 著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合
対象は複製権にとどまらず
• TPPで求められているのはpiracy(=「複製」による著作権侵害)
• 今回の法改正では譲渡権や公衆送信権も対象に
「一部」非親告罪化とは?
対象になる行為として挙がっているもの
• 販売中の漫画や小説本の海賊版を販売する行為
• 映画の海賊版をネット配信する行為
対象にならない行為として挙がっているもの
• 漫画などの同人誌をコミケで販売する行為
• 漫画のパロディをブログに投稿する行為
• (映画の映像と音は全く同じでも、字幕でパロディを作る行為)
二次創作だけの問題ではない
こんなことせずに仕事になりますか?
• 自社に関連する新聞記事をコピーして保存
• 自社に関連する新聞記事をスキャンして社内イントラ掲載
• ウェブ上にある写真を使って社内文書作成
• ウェブ上の記事を会議の参考資料で印刷して配布
• 新人研修でマナーの本の1章をコピーして配布
業務複製に著作権法30条は適用されない
法定損害賠償・追加的損害賠償
損害の程度ではなく、法律で賠償額を規定
下記の基準で損害額を算出
侵害物の数量
正規品の利益額
侵害者の得た利益
使用料相当額
加えて著作権管理事業者が管理している場合は

その利用料規定をもとに賠償額を請求できる
著作権法114条
TPP
アクセスコントロール回避規制の強化
複製を伴う回避行為だけでなく、回避行為自体を禁止
• CSS(DVD)
• AACS(Blu-ray)
• B-CAS(地上デジタル放送)
• ソフトウェアドングル など
信号付加型と暗号型を対象とする
例外規定の整備を!
•オープンソースソフトウェアなどを用いた情報アクセス
•視聴を目的とした複製のための回避行為
•引用や批評、二次創作を目的とした回避行為
•機器やソフトウェアの安全性チェックを目的とした回避行為
•ユーザーが自分の機器で自由なソフトウェアを

動作させるための回避行為
•技術の互換性や相互運用性を保つための回避行為
•解除技術が提供されなくなったコンテンツや

ソフトウェアを利用するための回避行為
•不正告発のための回避行為
コピーコントロール(アクセスコントロール)された
DVD・Blu-ray・地デジ番組のコピーを禁止!
米国では来年から新たなDMCAの例外が
• 善意のセキュリティ調査
• スマートフォンだけでなくタブレットやスマートTVのJailbreak
• ビデオゲームの保存やアーカイブ化
• DVD/Blu-rayビデオからのリミックス
情報が世界を支配する
インターネットが可能にしたもの
Access To Knowledge
知へのアクセス
“情報はその成長につれて、
オープンな環境から
クローズドなビジネスモデルへ
移行する”
- Tim Wuu
保護と利用のバランスが大切
フェアユース規定の導入を!
TPP合意と今後の知的財産分野への影響と問題点
一般社団法人インターネットユーザー協会事務局長
香月啓佑
2016.2.25@産業経理協会 経済時事講座

TPP合意と今後の知的財産分野への影響と問題点