Anderson局在による金属絶縁体転移
- スケーリング理論と微視的理論の
2つの視点からの考察 -
大橋研究室 修士1年 黒柳敬一
• 研究対象とする実験
• 金属絶縁体転移とAnderson局在の直観的描像
• Anderson局在に関する実験
• スケーリング理論によるAnderson転移
• ミクロ理論によるAnderson弱局在
• 纏めと展望
概要
研究対象とする実験
Localization of Bosonic Atoms by Fermionic Impurities
in a Three-Dimensional Optical Lattice
PRL 96, 180403 (2006)
光格子中のBose原子気体超流動にFermi気体
の不純物を加えた系
光格子によるSI転移の他に不純物効果が効く
S. Ospelkaus, C. Ospelkaus et al.
冷却原子気体の実験論文
a) pure Boson超流動のSI転移
b) Boson超流動にFermi不純物
が20%加わった系のSI転移
Time of flight の吸収イメージ
a) pure Boson超流動 b) Bosonと引力相互作用す
るFermi不純物によりUF B
を有効的に感じる
光格子中のBoson(赤)Fermion(青)のイメージ(1,2D)
c) Fermi不純物との散乱
のBosonの伝搬経路
d) Fermi不純物による
壁が作られている
e) Mott絶縁体の状態
Anderson局在による金属絶縁体転移
1958年、P. W. Andersonは金属において乱れがある程度
の大きさになる、もしくはある程度の不純物量で電気抵抗
が無限に大きくなると予言
Anderson局在している
Anderson局在
井戸型ポテンシャルのような簡単なポテ
ンシャルの場合には束縛状態か散乱状態
のどちらかに固有状態は分類される
乱れによって絶縁体になっている系の電
子の固有状態はどちらにも属さない局在
した状態になっている
V (r)
ψ1
ψ2
ψext
リンの不純物を入れたシリコン
の金属絶縁体転移
電気伝導度
不純物濃度
スケーリング理論について
1958年のAndersonの問題提起があったものの、不規則系の不純物
との散乱、電子の波動関数のふるまいに対しては取り扱いが難しい
Anderson局在に対する取り組み
1979年、P. W. Anderson、E. Abrahams、D. C. Licciardello、
T. V. Ramakrishnanの画期的なスケーリング理論が提出される
局在状態の問題としてではなく、試料のコンダクタンス
の試料サイズ依存性をみるという新しい視点の理論
スケーリング理論
?
スケーリングの仮定
繰り込み群方程式
無次元のコンダクタンスを定義
左辺 右辺
L → νL g(νL) g(L)を求めるにはの下で さえ解っていればよい
両辺対数を取り ln ν で割ると
スケーリング理論による繰り込み群方程式の導出
R = ρ
L
S
3D金属
(     )
コンダクタンスのサイズ依存度が
わかる微分方程式になっている
金属的でコンダクタンスが大きい時 絶縁的でコンダクタンスが小さい時
の両極限の振る舞いがわかったので滑らかに
つながると仮定すれば
β(g)
1、2次元ではつねに絶縁体であるのに対して
3次元では金属絶縁体転移する
3次元のコンダクタンスの大きい領域
繰り込み群方程式に代入
3次元の金属的な領域において、系が大きく
なるとともに伝導率は減少する
3次元における弱局在効果
(ただし数係数がわからない)
繰り込み群方程式から導く弱局在効果
g0
金属に一様電場が加わったハミルトニアン
1次摂動 (       )
電気伝導度の久保公式
線形応答理論による電気伝導度の久保公式
3D金属
直流伝導率
E
金属に含まれる不純物分布の空間平均を取っている
1電子グリーン関数
以下、不純物分布の空間平均を
取った形での不純物効果を含ん
だ1電子グリーン関数を用いて
この2点グリーン関数を計算
2点グリーン関数の表式への変形と不純物平均
不純物のある金属の電気伝導度の計算をするために、不純物効果を考える
= + +
! ! !
…
弱局在の効果を見たいので、金属領域では
不規則ポテンシャルが弱いとして摂動展開
! ! ! !
imp
=
! ! !
!
! !
+ +
の下で平均を取ると
v は偶数次のみ残る
例:4次の摂動項 (a) (b) (c)
不純物効果を含めた1電子グリーン関数
対象とする系と前提
不純物分布 で存在する金属、また不規則ポテンシャルは弱いとして、短距離力
また3次以上の項では3個以上の
の積の平均から、同じ不純物と3回以
上相互作用する項が残るが、不純物の
つくるポテンシャルが弱いとして無視
ρk1−k2
! !
(a)タイプのダイアグラム
Σ0 は自己エネルギー
(b)タイプのダイアグラム !
!
自己エネルギー部分に含まれるグリーン関数が
不純物効果を繰り込んだもので置き換えられる
(a)(b)のダイアグラム計算
不純物ポテンシャルは短距離力
! !
(c)タイプのダイアグラム
金属領域を考えていて
により無視できる
不純物のある1電子グリーン関数
伝導率計算に用いる
(c)の計算、最終的な不純物のある1電子グリーン関数
電子の分布関数
!
! !
!
! !
! !
!
!
!
!
!
!
!
= + + + ・・・
電気伝導度の計算に関わるグリーン関数
(a) (b) (c)
Drudeの公式 梯子近似 補正摂動項
(b)の梯子型無限級数の第一項
k kと の向きに依存しないので
梯子型はすべて電気伝導度に寄与しない
(a)の計算
Drudeの公式と梯子近似
Drudeの公式
imp
×
×× ××
×
+ + +
Γ = × + × × + × × +×
(c)の補正摂動項の計算
スケーリング理論では得られなかった係数
が明らかで、局在の前触れを表している
補正項の各項の計算
• スケーリング理論において弱局在の前触れを見ることができるが、伝導率
の数係数まで求めれない。
• 微視的理論から数係数が得られる
• 金属系においてAnderson局在の勉強をしたが、さらに金属超伝導おい
て不純物効果について調べる
• BECに関して、不純物効果の研究をする
纏め
展望
Appendix
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A
B
A
左側の図のような場合では干渉項は多数の不純物があれば、ABのすべての経路を
足し合わせれば、ゼロになりますが、右のような、時間反転対称性のある系にお
いて、原点に戻ってくるような経路の場合には、この経路のペアの位相差はゼロ
になり、干渉項は原点で強め合い、足し上げても相殺せず振幅を大きくする。

Anderson局在入門