「患者さんは科学的根拠とどのように向き合っているか」から学ぶＥＢＰー看護情報学で患者さんの語りを利用した授業事例
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2018年10月27日 DIPExJapan第6回教育ワークショップ・発表資料（友滝愛／国立看護大学校 ）
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「患者さんは科学的根拠とどのように向き合っているか」から学ぶＥＢＰー看護情報学で患者さんの語りを利用した授業事例
- 1. 看護情報学で患者さんの語り を利⽤した授業事例 国⽴看護⼤学校 人間科学 情報学 友滝 愛 1 DIPEx Japan 第6回 教育ワークショップ 2018/10/27
- 3. Today’s Summary • 動画を使⽤した授業は、看護系⼤学1年⽣ 対象の「統計学や研究方法」を学ぶ科目 • 位置づけは「研究者の育成」ではなく、 「実践で研究結果を利⽤できる人材の 育成」 • 学習の意義を理解し、学習のモチベー ションを促す⼯夫の⼀環で、動画を利⽤ • 患者さんの語りの動画は、学びと実践を リンクさせるうえで重要な役割 3
- 4. 看護情報学@国⽴看護⼤学校 • 看護学科の単科⼤学 • 人数：1学年 約100人 • 看護情報学：1・3年次の必修科目 ＊1年⽣・前期（看護情報学Ｉ）で DIPEx Japanの動画を利⽤した事例 4
- 5. 看護情報学Ⅰの到達目標 1. 医療・看護情報を⼊⼿し、情報の内容を 吟味することができる 2. 現在の医療（医学・看護学）を⽀えている 科学的思考方法について、説明することができる 3. 学術論⽂を読み解くために必要な医療統計学の 基本を習得することができる 4. 情報処理の技術（Word, Excel, PowerPoint）を 習得する 5
- 6. DIPExの動画を教材として利⽤させて 頂くことになった背景 • 現場での看護師の動き、看護学と研究の接点、 患者さんの実際について、具体的なイメージを 持てていない学⽣も多い – ⼤学に⼊学したばかりの1年⽣・前期の授業 • 理系科目やパソコンに対する苦⼿意識が強い – 「情報学」という科目名に対する先⼊観 「看護情報学を学ぶ意義」の 理解を促すための⼯夫が必要 6
- 8. 動画を利⽤した⽇の授業 • 授業：4月末（全28回の5回目） • テーマ：「科学的な考え方に基づく議論」の 考え方を学ぼう • 学習目標 1)「科学的な考え方に基づく議論」の考え方を学ぶ 2) 「看護実践」と「科学的な根拠」の関係に ついて学ぶ 3) 患者さんの⽴場にたって「治療やケア」の 科学的根拠について、考えることができる 8
- 10. 課題３：「信頼できる情報」とは何か？ 患者さんの⽴場にたって考えてみよう • これから3本の動画を試聴します • ワークシートの課題をやってみましょう • グループ内で意⾒交換してみましょう • 発表をしてもらいます！ 10 授業スライド
- 11. DIPEx Japan 健康と病いの語り 乳がんの語り・補完代替療法 • 動画①以前からとても信頼していた皮膚科の医師に、 患者の尿の成分を転写して作るという「情報⽔」を 勧められたので1年半ほど飲んだが、効いたかどうか はわからない • 動画②よく「免疫を上げて治す」というが、それが 何を意味するのかきちんとした説明がないことが多く、 研究段階のものになけなしのお⾦をつぎ込むべきでは ない • 動画③健康⾷品は宣伝⽂句であれに効いたこれに 効いたと聞いても、科学的に実証されない限りは 信⽤するのは避けている 11 授業スライド
- 12. 2. ワークシートの課題 1. 動画をみた率直な感想を、まずは書いて みましょう 2. もしあなたが患者さんから「○○の⺠間 療法って、効果あるのですか？」と 聞かれたら、どのように答えますか？ 3. 動画①の「情報⽔」の効果を科学的な 方法で検証するためには、どのような 研究が必要でしょうか？ ＊ワークシートは無記名式で、授業後に提出 12
- 13. 3. 動画を視聴した感想① 患者さんの気持ちを知る • 精神的に不安定な中での情報を選択する ことの難しさ • ⺠間療法が精神的な⽀えになることも • 同じ乳がんという病気であっても、患者 さんによって考え方や冷静さが違う • 患者さんも⾃分で勉強している 13
- 14. 3. 動画を視聴した感想② 医療者としてのあり⽅ • 科学的に検証されていない⺠間療法が 患者さんに勧められるという実態 • 患者さんの不安な気持ちに寄り添うこと の⼤切さ • 医療者から患者さんへの説明の重さ 14
- 15. 4. 「○○の⺠間療法って、効果ある のですか？」と尋ねられたら？ どのように説明するか • 選択するときの利点・⽋点を説明 – 標準治療と⺠間療法の違い • ⾃分の意⾒を伝える – ⾃分ならやらない、おススメはしない • 効果は人それぞれです • 私はわかりません 15
- 16. 4. 「○○の⺠間療法って、効果ある のですか？」と尋ねられたら？ 説明後、どのように⾏動するか • ⼀緒に考えましょう • 専門家に相談してください • ⾃分で決めてください、調べてください • 回答なし 16
- 17. 看護情報学の授業づくり 17
- 18. 1. 動画の選択 • 教員が考える意⾒（正解らしきもの）を、 最初から学⽣に押し付けることを避ける – 科学的な方法で検証されていない、 「だから⺠間療法はダメ」？？ • それでも⺠間療法に頼ってしまう 患者さんの⼼理を理解する – 患者さんの多様な意⾒・思い 18
- 19. 2. 教授法の⾒直し • 医療統計・研究方法論の教授法は、 知識提供型の講義形式が多い – 調査実習を採⽤している⼤学も⼀部ある • 目的を「実践で研究結果を利⽤できる 人材の育成」とするなら、患者さんの 体験とリンクさせて学ぶことは必須 19
- 20. 3.今後について • 評価方法は検討中 – まずは「患者さんの多様な思いを知り、⾃分 の中の未知の部分に気付く」ことがスタート – この時点では、回答の正解不正解はない • ただし、EBMに対する”態度”の観点では、 改善の余地もある – まずは後期（看護情報学Ⅱ）でフォロー 20
- 21. 患者さんの思いを知る • 看護師の⽴場での物の⾒方は、 これからどんどん学んでいく • 看護師の⽴場で物事を考える習慣がつく まえに、まずは患者さんの声を知る • 「患者さんに、患者さんの気持ちを聞く」 ことの重要性に気付く 21
- 22. 授業で動画を⽤いるときのまとめ 1. 患者さんの⽴場をふまえて「いま学んで いることの意義」の理解を促す 2. 対象者の学習状況をふまえて、動画教材 の利点を活かす 3. 「良い動画、だから良い授業」ではなく、 「動画を使⽤すると、より効果的に 学習目標を達成できる！」を目指す 22