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応募区分 大学
チームID
SL600319
専修大学・3年
チーム名
OPCD(Organization for
Proverb Cooperation and
Development)
メンバー名
◎今野有彩
碇谷堅樹
風間大輝
柚木健
指導教員 一ノ宮士郎
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1 私たちが日常生活の中で消費している商品は、( モノ )と( サービス )の2種類に大別される。
2 下の図は、一国の経済を構成する経済主体間の主な関係を示している。空欄の3つの
各主体は何か?
3 財やサービスの取引(交換)の手段として使われている貨幣(通貨)に関する次の各文のうち、誤っ
ているものは? ( b )
a.貨幣には、商品と交換する際に誰もが受取を拒否しないという共通の価値がある。
b.各国の通貨の価値は、現在でも一定量の金(きん)を尺度にして決められている。
c.通貨には、紙幣や硬貨からなる現金通貨と、当座預金や普通預金などの預金通貨
の2種類がある。
d.現金通貨は、強制的な通用力が法的に認められていることから法定通貨(法貨)
と呼ばれる。
4 現在の日本の年間出生数は約 100 万人で、第二次世界大戦直後と比べると約( 6 )割、30 年前と
の比較でも約( 3 )割まで低下している。
5 今後、少子高齢化が進むことによる日本の社会や経済への影響に関する次の各文のうち、誤って
いるものは? ( c )
a.日本の人口は 2008 年をピークに減少傾向が続いている。
b.少子化や人口流出によって、将来、消滅する自治体が出てくる可能性もある。
c.少子高齢化による商品市場へのマイナスの影響は全ての分野に共通して現れる。
d.生産年齢人口の減少により、公的年金や医療保険の財政はますます厳しくなる。
【基礎学習(必須)】
*別添の学習ガイドブックをチーム全員がしっかり読んだ上で、必ず、すべての設問に解答
してください
政府 企業
家計
公共サービス・補助金・代金等
税金・財・サービス等
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6 グローバル化の進展に関する次の各文のうち、誤っているものは? ( b )
a.あらゆる分野で多くの企業が世界規模で事業展開を行っている。
b.先進国企業による発展途上国への海外投資では、途上国側のメリットは雇用の創出のみで限
定的である。
c.国内にある生産拠点の海外移転により地域経済が衰退する「空洞化」の問題が懸
念されている。
d.グローバル化の進展は経済だけにとどまらず、文化の面でも大きなインパクトをもたらす。
7 近年は、利害が一致しやすい2つ以上の国や地域間で協定を締結する事例が増えている。具体
的には、自由貿易を促進する( FTA )と、「環太平洋経済連携協定(TPP)のようにより幅広い分野
での協力を規定する( EPA )がある。
8 グローバルな対応が求められているグローバルな課題(グローバル・イシュー)として適切でないも
のは? ( f )
a.地球環境問題 b.人口問題 c.感染症対策 d.国際経済格差と貧困
e.核廃絶 f.ワーク・ライフ・バランス g.すべて適切
9 GDP(国内総生産)に関する次の各文のうち、誤っているものは? ( a )
a.GDPとは、一定期間に国民全体として生産したモノやサービスの付加価値の合
計額をさす。
b.GDPとは、一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額を
さす。
c.GDPには名目GDPと実質GDPとがあり、その違いは物価の変動分を考慮するかどうかにあ
る。
d.近年は実質GDPが名目GDPを上回っており、これは日本がデフレ状態にあることを示してい
る。
10 需要・供給の法則のポイントは、( 価格 )が消費者・生産者の行動に対し( インセンティブ )とし
て機能することである。
11 直接金融の例として適切でないものは? ( 銀行預金 )
a.社債 b.公債 c.株式 d.銀行預金 e.投資信託 f.すべて適切
12 株式を所有することで得られる金銭的な利益には、インカムゲインと呼ばれる( 配当金 )とキャピ
タルゲインと呼ばれる( 売却益)とがある。
13 株式投資などの際に考慮すべきリスクとして適切でないものは? ( f )
a.価格変動 b.金利変動 c.為替変動 d.インフレ
e.自然災害 f.すべて適切
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■目次
第一章 要旨
第一節 はじめに
第二節 関連記事
第二章 投資テーマ選定理由
第三章 スクリーニング
第一節 ことわざの選定
第二節 ことわざの代理変数化
第三節 スクリーニング手順
第四節 構成比
第四章 投資家へのアピール
第一節 銘柄紹介
第二節 ポートフォリオのリスクとリターン
第三節 リスク分析
第五章 ヒアリング調査
第六章 日経 stock リーグを通して学んだこと
第七章 参考文献
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第一章 要旨
第一節 はじめに
バブル崩壊前、日本には大きな自信と余裕があった。商業地の地価は 1986 年から 1987 年の
1 年で 2 倍以上上昇し、1989 年には日経平均株価が史上最高値である 38,957 円 44 銭を記録し
た。また、企業の設備投資や合併買収も活発だった。しかし、現在はかつての自信や余裕はなく
なり、国内経済も活力がないように感じられる。例えば、少子高齢化による人口減少、年金や医療
費、待機児童の問題、二酸化炭素による地球温暖化、企業の不祥事などがあげられる。また、経
済に関してもグローバル化が進み、アメリカのリーマンショックやイギリスの EU 離脱など、日本か
ら遠く離れた地域で起きた出来事でも強く日本に影響を及ぼすようになった。そんな中、近年個人
投資家が増加傾向にある。主な理由は四つある。
一つ目の理由は、日銀の「超低金利政策」である。超低金利政策は不況を乗り越えるため 1999
年に施行されたもので、金利を限界まで引き下げることによって、企業は銀行からの資金借り入
れコストが減らすことができる。それにより企業へ設備投資や研究開発を促し、企業利益を増加さ
せる。企業利益が増加することで、従業員の所得も増え、消費も拡大する…といった好循環を目
指す政策である。なぜこれが個人投資家の増えた要因になるのかというと、金利が低いということ
は、預貯金につく利子も低くなってしまう。そのため、従来の預貯金よりも多くのリターンを期待で
きる資産運用方法として、株式投資が注目され始めたのである。
二つ目の理由は、1996 年から 2001 年にかけて日本で行われた「金融ビッグバン」である。証
券・銀行の取扱業務の拡大、各種手数料の自由化、ディスクロージャー制度の徹底、投資信託の
窓口販売の導入などの改革が行われ、個人が株式に投資しやすくなった。また、2003 年には配
当課税の軽減という、株式の取引で得られた利益に掛かる税金を軽減する税制改正が行われた。
このような証券市場の規制緩和も、個人投資家増加の背景として考えられている。
三つ目の理由は、昨今のインターネットの普及である。インターネットの普及によって、新たにオ
ンライントレードが使われるようになった。オンライントレードとは、名前の通りインターネット上で株
の取引をすることができるものである(証券会社は「ネット証券」と「総合証券」に分けられるが、オ
ンライントレードは前者に相当する)。これにより、証券会社の営業時間に関係なく、いつでもどこ
でもパソコンや携帯電話を通じて株の売買ができるようになった。また、総合証券と比べて人件費
がかからない分、手数料が安いというメリットもある。
四つ目の理由は、少額投資非課税制度「NISA」のスタートである。NISA とは、株や投資信託な
どの運用益や配当を一定額非課税にする制度であり、投資利益への課税を軽減する制度が
2013 年に終了したのを期に 2014 年から始まった。NISA の非課税の期間は最大 5 年間となって
いるが、毎年投資金額 120 万円までの株や投資信託にかかる値上がり益や配当金が非課税にな
ることから、制度導入時点の 2014 年 1 月 1 日から 2016 年 3 月末時点と比較すると NISA 口座数
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474 万 7923 件から 1012 万 809 件と 113.2%も口座数が増えている(金融庁より)。個人投資家の
増加には、以上の 4 つのような背景がある。
図1-1 個人株主数(延べ人数)の推移
出所:日本取引所グループ
(注)2004 年度から 2009 年度までは、ジャスダック証券取引所上場会社分を含む。
個人投資家が増加すると、上場している企業がより幅広くから多くの資金を集められるようにな
り、その分社会に多くのモノやサービスを供給できるようになる。つまり、個人投資家の増加は国
内の企業活動の活性化に繋がる。また、全世界の投資家による投資インパクト(投資総額)は 100
兆ドル(日本円にして 1 京円)にのぼると言われており、国連からも私利私欲のためではなく国内
経済や世界経済のことも考え、より慎重な投資判断をするよう求める声明が発表されている。そ
れほど投資家の判断が経済へ与える影響が大きいということである。さらに、投資家が増えること
で企業は様々なステークホルダーを持つようになる。これにより、企業を監視する眼は企業の知ら
ない様々なところに存在するようになる。以上のような国内の企業活動がより活発になるという点
から、個人投資家の増加は国内経済の活性化にも繋がるということがわかる。
しかし、単純に企業へ投資するだけでは意味がない。一番大事なことは、「社会が本当に必要
としているモノ・サービスを提供する企業」を見極めることである。社会に必要でないモノやサービ
スを提供したところで、それらは消費されずに溜まっていくだけである。逆に、社会が必要としてい
るモノやサービスを提供すれば、それらは消費され、必然的にその企業の業績は伸びる。業績が
伸びた企業は、獲得した資金を使ってさらに社会に役立つモノやサービスを製造・開発し、結果的
に日本経済へ良い影響を与える。さらに、投資した企業の業績が伸びれば、自身のリターンも大
25,000
30,000
35,000
40,000
45,000
50,000
55,000
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
人
数
(
千
人
)
年
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きくなる。株式投資で資産運用をすることは、日本にとっても自身にとっても良いことであり、まさに
一石二鳥なのである。
しかし、前述したように現代社会には様々な社会問題が乱立している。情報が複雑化している
上、多くのステークホルダーに囲まれた環境の下では、従来の理論で「社会が本当に必要として
いるモノ・サービスを提供する企業」を見極めることは難しい。この「社会が本当に必要としている
モノ・サービスを提供する企業」を見極めることのできる投資家こそが、日本経済を発展させるた
めに必要なのではないだろうか。
第二節 関連記事
(1)足し算社会
日付:2015 年 11 月 25 日
出所:日経 BizGate
現代社会は商品の増加、機能の増加、情報の増加など社会が複雑化しており、放っておけ
ば何もかもが増えていく「足し算社会」になる。このような環境下の中で企業は何をして何を
考えることがベストなのかわからなくなっている。同時に企業活動を支援する投資家も信用し
て投資をした企業が不祥事や急な経済の動きによって企業価値が落ちることで投資した分を
無駄にしてしまう。
(2) 「17 年は運用リスクとる」HC アセット森本氏(投資家の金言)
日付:2016 年 12 月 25 日
出所:日本経済新聞
英国の EU 離脱や米大統領選について、市場関係者は不確実な情報を基に投資の判断を
しているのではないか。科学的な根拠のないことについて議論するのではなく、自分が責任
ある信念を持って判断できることは何か考えるべきである。今は不確実性の時代であり、確
実に分かる本質をとらえて投資する必要がある。
第二章 投資テーマ選定理由
第一章で述べたように、企業を取り巻く環境は日々複雑化している。一方で、世界にはこのよう
な環境の中でも確実に投資に成功している投資家がいる。例えばバークシャーハサウェイ社のウ
ォーレン・バフェット氏や次期アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏が代表的である。そういった投
資家たちが投資判断として注視しているものが、現在の環境下で信頼できる企業を見つけるヒン
トにならないだろうか。私たちは、成功した投資家の理念に関する参考文献を探し、調べてみた。
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しかし、財務諸表を隅々まで見ることや、割安株を買うなど漠然としたことしか書いておらず、結局
どんな要因で成功したのか明確な理論はよくわからなかった。
いったいどのような要因で成功しているのかを探しているときに、私たちはある共通点を見出し
た。それは、成功した投資家には感覚的な信念・格言があるということである。投資家の信念や格
言を調べてみると、その投資家が持っている投資哲学や教訓が見えてくる。しかし、投資家の感
覚的な言葉そのままだと表現が抽象的であるため、正確に実践することは難しい。この、投資家
の抽象的な信念・格言を端的かつ具体的に表現できるモノとして、何か使えるツールは無いだろう
か。
そこで私たちが着目したものが「ことわざ」である。「ことわざ」は平安時代から記録されており、
庶民の生活の中で生み出された教訓を端的に表したものである。また、庶民の実体験が元となっ
ていることから、信憑性も非常に高い。
まず、投資家たちの信念や格言を集約し、ことわざに置き換えることにより、投資家の視点を単
純化する。さらに、置き換えたことわざを代理変数に換えることで、投資家の視点を具体化する。
このステップを踏む事によって、投資家の抽象的な信念・格言を、端的かつ具体的に表現すること
ができ、現環境下での最適な投資企業を選定することができると考えた。これが私たちの投資テ
ーマを「ことわざ」とした理由である。
第三章 スクリーニング
第一節 ことわざの選定
ことわざを選定するために、まず歴代の著名な投資家計 41 人を調査し、各投資家の活躍した
年代や手法、エピソードを以下の表にまとめた。
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表3-1 著名な投資家の活躍した年代と特徴
1615 年~1868 年(江戸時代)
投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど
河村 瑞賢
1617 年~
1699 年
・社会情勢から相場を予測し、成功した。
本間 宗久
1724 年~
1803 年
・酒田五法(酒田罫線法)、ローソク足の考案者。
・社会情勢とテクニカル分析で相場を予測し、成功した。
田中 平八
1834 年~
1884 年
・東京株式取引所の設立者。
・生糸、為替、洋銀、米相場で成功した。
・具体的な投資手法は不明。
渋沢 成一郎
1838 年~
1912 年
・経済学に長けており、相場師・実業家として成功した。
・具体的な手法は不明。
本多 静六
1866 年~
1952 年
・具体的な手法は不明。
・投資家引退の際にほぼすべての利益を教育、公共機関
に寄付した。
福沢 桃介
1868 年~
1938 年
・日露戦争後の株式投機で成功した。
1868 年~1912 年(明治時代)
投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど
松井 房吉
1871 年~
1950 年
・テクニカル分析で成功した。
ジェシー・
リバモア
1877 年~
1940 年
・ファンダメンタルズ分析で成功した。
・年代や時期に応じて手法を使い分ける。
鈴木 久五郎
1877 年~
1943 年
・日比谷焼き討ち事件や日露戦争などの社会問題から相
場を予測し、成功した。
石井 定七
1879 年~
1945 年
・凶作情報から相場を予測し、成功した。
・日露戦争の材木相場、第 1 次世界大戦の銅相場でも利
益を出した。
野村 徳七
(2 代目)
1878 年~
1945 年
・会社の業績や将来性を分析する。
・市場性がないものは与えるべく協力する。
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太田 収
1890 年~
1938 年
・情報収集能力と冷静な分析力が持ち味。
・具体的な手法は不明。
山崎 種二
1893 年~
1983 年
・買いより売りを重視。
・二・二六事件で相場が大暴落した際の乱高下相場で成功
した。
ベンチャミン・
グレアム
1894 年~
1976 年
・徹底的に会社の財務状況を分析する。
・会社がどんなパフォーマンスをしているかを見る。
是川 銀蔵
1897 年~
1997 年
・社会情勢から相場を予測し、成功した。
フィリップ・
フィッシャー
1907 年~
2004 年
・会社の成長性を分析する。中でも「株主に対する誠実性」
「研究開発の意欲」「経営の安定性」に注目する。
1912 年~1926 年(大正時代)
投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど
石井 久
1923 年~
2016 年
・社会情勢から相場を予測する。
チャーリー・
マンガー
1924 年~ ・リスク分析に注力している。
1926 年~1989 年(昭和時代)
投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど
ウォーレン・
バフェット
1930 年~
・バリュー投資(特に「事業の内容が理解できる」「長期的な
好業績が予想される」「経営者に能力がある」「価格が魅力
的である」の 4 点)で成功した。
ジョージ・
ソロス
1930 年~
・ジムロジャースと共にクォンタムファンドを設立した。
・社会情勢から相場を予測する。
久世 雄三 1930 年~ ・徹底的に企業研究をおこなう。
竹田 和平
1933 年~
2016 年
・竹田製菓の元代表取締役。
・配当を株主への感謝と考える。
カール・
アイカーン
1936 年~
・投資した会社の株を買い占め、自らが企業の経営権を握
り、企業統治改善を図る。
チャールズ・
エリス
1937 年~ ・自分の投資戦略を信じ、新しい情報に惑わされない。
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ジェームズ・
シモンズ
1938 年~ ・具体的な手法は語られていない。
加藤 あきら 1941 年~
・兜町最強の仕手筋と呼ばれていた。
・詳しい手法は不明
ジム・
ロジャーズ
1942 年~
・ヘッジファンドの先駆者。
・社会情勢などから需給の変化を予測し投資する。
澤上 篤人 1947 年~
・企業の本質(どんな事業をしているか)を見極め、良い仕事
をしていると判断した企業に投資する。
ベルナール・
アルノー
1949 年~ ・ファッションブランド業界に好んで投資する。
藤巻 健史 1950 年~
・ジョージソロス氏のアドバイザー。
・世界経済の動向から相場を予測する。
ピーター・
リンチ
1950 年
前後?~
・ファンダメンタルズ分析で成功した。
・投資企業を 6 種類に分類し、株価を予測する。
ジム・
クレイマー
1955 年~ ・期待収益率、PER、負債額から企業の将来を予測する。
村上 世彰 1959 年~
・モノ言う投資家として有名。
・投資した会社の株を買い占め、積極的に株主提案をし、
自らの手で企業価値向上を図る。
ダニエル・
ローブ
1961 年~ ・グローバルな競争力のある企業を好んで投資する。
清原 達郎
1980 年
前後?~
・PER10~15 倍、PBR1 倍~2 倍前後の銘柄に注目する。
・テクニカル分析にも長けている。
1989 年~(平成時代)
投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど
B.N.F
2000 年
前後?~
・テクニカル分析で成功した。
・常に 700 銘柄を監視する。
cis
2000 年
前後?~
・テクニカル分析で成功した。
株之助
2000 年
前後?~
・テクニカル分析で成功した。
デービッド・
アインホーン
2000 年
前後?~
・社会情勢から相場を予測する。
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次に、手法やエピソードを参考に投資家一人一人からことわざを導き、ジャンルごとに分けて集
計し、最終的に代理変数化可能な5つのことわざを決定した。なお、テクニカル分析だけで成功し
た投資家や、具体的な手法が語られていない投資家など、企業のどこを見ているのかが不明な
投資家からはことわざを導いていない。導いた 5 つのことわざは以下の通りである。
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当期純利益÷総資産=ROA
売上総利益÷売上高=売上高総利益率
第二節 ことわざの代理変数化
1 朱に交われば赤くなる
朱に交われば赤くなるとは、「人は関わる相手や環境によって、良くも悪くもなる」というたとえ
である。私たちは ROA に目を付けた。ROA は総資産利益率のことで分母に総資産、分子に当期
純利益を取る。
ROA は事業に投下した資産でどれだけ利益を獲得したか示す指標である。分子の当期純利益
は税戦略含め企業の最終的な戦略的成功を意味する。また ROA の向上には経営者の実績や能
力、資質なども関わる。まさに企業のおかれた環境やかかわる相手との関係が全て反映している
指標が ROA であるから、この指標を選択した。
2 一念天に通ず
一念天に通ずとは、物事を成し遂げようと一心になれば、それが天に通じて、必ず成功すると
いうことである。物事を成し遂げようと日々努力する姿勢を企業の事業に対する一途な想いと考え、
私たちはマイケル・ポーターの「競争戦略」の「差別化戦略」と「コスト戦略」に置き換えることがで
きるのではないかと考えた。
まず、差別化戦略とは、競合他社の商品と比較して、機能やサービス面(付加価値)で差別化を
図り優位性を得ようとする戦略である。この戦略は原価に対して高い付加価値を加え高価格で販
売することにより、売上高と売上原価との間に大きな開きがあることが想定される。このことにより
差別化戦略を行っている企業は売上高総利益率が高いといえる。売上高総利益率は分母に売上
高を取り、分子に売上総利益を取る。
14 / 30
自己資本÷総資本=自己資本比率
次に、コスト戦略とは、コスト削減・低価格を実現することで顧客を集め、優位性を確保する戦略
である。この戦略は販売の低価格を実現するために大量生産・大量販売を行うため、期末の棚卸
資産の水準と、期中に獲得した売上高水準の差が大きく開く可能性があり、このことによりコスト
集中戦略を行っている企業は棚卸資産回転率が高くなるといえる。棚卸資産回転率は分母に棚
卸資産(当期・前期末平均)を取り、分子に売上高を取る。
売上高÷棚卸資産=棚卸資産回転率
業種により数値に差があることからそれぞれの業種の平均以上であることを基準とし、スクリー
ニングを行った。また、マイケル・ポーターが二つの戦略を同時に行うと、その企業はスタックイン
ザミドルに陥る可能性があると論じていることから、売上高総利益率と棚卸資産回転率の二つと
も業種平均以上だった企業はスクリーニング対象外とした。
以上をまとめたものが下の図である。
図3-2-1 一念天に通ず指標
売上高総利益率 棚卸資産回転率
コスト戦略 低い 高い
差別化戦略 高い 低い
3 砂上の楼閣
砂上の楼閣という諺があらわす意味は以下のようになる。
「崩れやすい砂の上に建てられた楼閣は、基礎が不安定なのですぐに崩れること」
このことから企業の基礎である純資産に目を向けた。純資産のうち株主からの出資分である自
己資本については借入金とは異なり返済義務がない。したがって、自己資本比率の高い企業は
返済不要の資金を元手に事業を行っているので経営が安定しているといえる。自己資本比率は
分母に総資本を取り、分子に自己資本を取る。
「借入金を積極的に活用して利益につなげてもROEは上昇する。借入金への依存度が高い企業への
投資は敬遠されやすくなる。自己資本を総資産で割った自己資本比率の高い企業は、健全な財務体
質と受け止められ、この指標への関心も高まる。」
(2014/3/2 日本経済新聞 高収益×健全な財務 調整局面でも株価底堅く )
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この記事では ROE が高くても財務体制が健全でなければ投資は行われずに株価は上がらな
いことを言っている。借入金の依存度が高いと経営が安定しているとは言えないからだ。企業の
基礎である自己資本比率を見ることで財務基盤が安定しているか見ることができる。
一般に自己資本比率は 50%前後が優良企業だと言われているが、業種により差があることか
らそれぞれの業種の平均以上であることを基準とし、スクリーニングを行った。
4 備えあれば憂いなし
備えあれば憂いなしとは、普段から準備しておけば、いざというときに心配がないということであ
る。企業にとって備えとは何かを考えたときに、私たちは企業の支払能力を表す指標の一つであ
る流動比率に目を向けた。流動比率とは流動資産を分子、流動負債を分母にとる指標である。
100%を超えていれば短期的な支払能力が支払義務をまかなって余りあることで、支払能力に余
力があると推測ができる。支払能力に余力があれば、もし急な支払が起きた時に備えることがで
きる。また、企業が研究開発のために資金調達を行う際も買い入れをせず流動資産から出すこと
ができれば、新たに借り入れをすることもなく捻出することができる。
流動資産÷流動負債=流動比率
しかし、流動比率には棚卸資産や前払費用を含んでしまうという問題がある。棚卸資産や前払
費用は短期的に換金することのできる資産と考えられているが、実際には換金性が低く過剰在庫
を抱えている企業を見ぬけないという問題である。
黒字倒産したアーバンコーポレーションを例に挙げると、流動比率が 200%以上で支払能力に
問題ないと考えられるが、実際には過剰在庫を抱えており流動比率が安全性指標として機能して
いなかった。
私たちはこのような換金性の低い資産を除いた支払余力を見るために、流動資産の代わりに
当座資産を分子にとった当座比率で企業を見ることにした。当座資産には現金及び預金や売掛
金、有価証券と換金性の高い資産を含んでおり、より厳密な支払い余力を見ることができる。
当座資産÷流動負債=当座比率
当座比率は 100%以上あれば支払余力に問題がないとされる。しかし、飲食店やスーパーなど
日銭を稼げる業種の場合や銀行などは 100%を下回っても問題ないとされるので、100%を基準
にするにするのではなく、業種ごとに業種平均以上を基準にスクリーニングを行った。
16 / 30
5 善因善果
善因善果とは、善い行いをすればそれが元となり後に必ず良い報いがあるという意味である。
善い行いとは、非財務情報に関する活動と考え、良い報いとは、企業価値の向上(株価の上昇)
と考え、ESG 投資に着目した。ESG 投資とは環境(Environment)への対応、社会(Social)との関係、
企業統治(Governance)の在り方といった非財務情報による情報を考慮して企業を評価する投資
方法のことをいう。評価するにあたって、書物によって ESG の定義が異なることから、最近の日経
記事や日経 stock リーグホームページの「いま聞きたい Q&A」を参考に以下の項目をあげた。
図3-2-2 善因善果項目
まず、E(環境)の項目は「ISO14001 を取得している企業」をあげた。ISO14001 は PDCA サイク
ルによる環境マネジメントシステムのことで、これを取得している企業は環境保全に努めている企
業であるとみなされる。S(社会)の項目は、ワーク・ライフ・バランス支援の観点から「育児・介護制
度の充実性」、地域社会を守り育てるという点から「本業を除く地域貢献活動の有無」、女性の社
会進出支援の観点から「女性雇用率の推移」の 3 点をあげた。G(企業統治)の項目は、コンプラ
イアンスの在り方という点から「過去に大きな不祥事があったかどうか」、ディスクロージャーの観
点から「中期経営計画の開示」、社外取締役の独立性の観点から「社外取締役の人数」、社外取
締役の多様性の観点から「企業外又は女性の取締役の有無」の 4 点をあげた。
17 / 30
第三節 スクリーニング手順
スクリーニングの流れは、第三章第一節の当てはまる投資家の多いことわざから行うことにし
た。また、当てはまる投資家数が同じだった「備えあれば憂いなし」と「善因善果」は、定性分析と
なる善因善果を後に行った。以上の 3539 社をスクリーニングしまとめたものが下の図である。
図3-3 スクリーニング手順
第四節 構成比
次に、以上のスクリーニングの結果選定された 19 社の最適ポートフォリオを導いた。
最適ポートフォリオを導くにあたり、平均分散モデルを用いてポートフォリオ最適化問題
を解いた。平均分散モデルの定式は以下の通りである。
V(R) = ∑ ∑ 𝑐𝑜𝑣𝑖𝑘
19
𝑘=1
19
𝑖=1
𝑥𝑖 𝑥 𝑘 , 𝜇 𝑝
≥ 𝜇 𝐸
18 / 30
∑ 𝑥𝑖
19
𝑖=1
= 1
𝑥𝑖 ≥ 0, (𝑖 = 1,2, ⋯ ,19)
V(R)はポートフォリオの分散、𝜇 𝑝はポートフォリオの期待収益率、𝜇 𝐸は投資家の要求期待収益率、
𝑐𝑜𝑣𝑖𝑘は企業 i と企業 k の共分散、𝑥𝑖は各企業の投資比率をそれぞれ表している。なお、投資家
の要求期待収益率には日経平均のリターンである 0.01318 を用いた(第 4 章第 2 節参照)。この
ポートフォリオ最適化問題を解いたところ、19 銘柄のうち 10 銘柄が導き出された。図3-4は最
終的に私たちが導いたポートフォリオの銘柄と構成比をまとめたものである。
図3-4 構成比
銘柄名 証券コード 取得株数(株) 取得金額(円) 比率
アイカ工業 4206 383 1,143,638 0.2287
日東紡績 3110 120 53,400 0.0107
オーテック 1736 1,607 1,579,681 0.3159
兼房 5984 1,128 734,328 0.1469
日本化薬 4272 135 178,335 0.0357
ライト工業 1926 66 83,028 0.0166
OSGコーポレーション 6757 539 513,667 0.1027
藤倉化成 4620 279 171,585 0.0343
松風 7979 267 360,717 0.0721
MARUWA 5344 31 127,255 0.0255
無リスク資産(現金) 964 0.0002
売買手数料 53402 0.0107
合計 5,000,000 1.0000
第四章 投資家へのアピール
第一節 銘柄紹介
最適ポートフォリオから導き出された 10 社には、特色のある製品を提供し、特定のニッチ分野
で世界や国内で高シェアを誇る企業という共通点があり、その事業も紹介する。
19 / 30
※指標の()内の値は業界平均
藤倉化成
業種:化学(東証) 企業コード:4620
主な事業:コーティング・建材塗装・電子材料・化成品の 4 事業を柱として展開
高シェア事業:自動車市場のプラスティック用コーティング材
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
6% (5.8%) 23.9% (28.7%) 12.3% (9.1%) 57.8% (53.5%) 173.7% (172.8%)
日本化薬
業種:化学(東証) 企業コード: 4272
主な事業:医薬品や農薬などの薬品のほか火薬なども製造
高シェア事業:色素材料事業
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
8.3% (5.8%) 40.7% (28.7%) 4.1% (9.1%) 69.3% (53.5%) 249.5%(172.8%)
ライト工業
業種:建設業(東証) 企業コード:1926
主な事業:斜面対策工事、地盤改良工事などの基礎土木分野や建設事業を行う。
高シェア事業:斜面対策工事、地盤改良工事などの基礎土木の分野
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
11.2% (3.3%) 18.6% (12.8%) 12.6% (27.1%) 57.8% (19.2%) 159.2% (128.6%)
20 / 30
オーテック
業種:建設業(東証) 企業コード:1736
主な事業:管材事業、システム事業、環境機器事業を行う
高シェア事業:建物の管工機材販売
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
7.5% (3.3%) 18.3% (12.8%) 11.4% (27.1%) 52.7% (19.2%) 158.5% (128.6%)
日東紡積
業種:ガラス・土石製品(東証) 企業コード:3110
主な事業:
繊維事業、グラスファイバー事業、環境・ヘルス事業、プロパティマネジメント事業を行う
高シェア事業:繊維事業
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
7.9% (3.6%) 33.9% (24.0%) 3.9% (7.0%) 52.3% (46.9%) 143.0% (141.2%)
アイカ工業
業種:化学(東証) 企業コード:4206
主な事業:化粧板などの住宅関連用品・接着剤の製造・販売を行う。化成品、機能材料、建
装、建材の 4 部門が主要事業。自社独自の技術である樹脂技術を使った商品が特徴。
高シェア事業:化成品事業
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
11.1% (5.8%) 28.0% (28.7%) 12.7% (9.1%) 70.4% (53.5%) 250.5% (172.8%)
21 / 30
MARUWA
業種:ガラス・土石製品(東証) 企業コード:5344
主な事業:セラミック部品事業と照明機器事業を展開している。そのうちセラミック部品事業は
セラミック部門、電子部品・デバイス部門、石英部門の 3 つの領域で構成されている。電子部品
用セラミックの大手メーカー。
高シェア事業:セラミック部品事業
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
7.9% (3.6%) 35.9% (24.0%) 4.2% (7.0%) 85.9% (46.9%) 379.8% (141.2%)
松風
業種:精密機器(東証) 企業コード:7979
主な事業:歯科医院・歯科技工向けに歯科器材の製造販売を行う
高シェア事業:デンタル関連事業
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
5.7% (3.2%) 57.4% (34.5%) 4.4% (6.0%) 75.7% (52.2%) 251.8% (219.1%)
OSG コーポレーション
業種:電気機器(東証) 企業コード:6757
主な事業:浄水器・アルカリイオン整水器などの製造を行う
高シェア事業:水関連機器事業
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
14.8% (4.8%) 44.7% (26.3%) 3.9% (7.9%) 66.1% (52.2%) 183.2% (180.3%)
22 / 30
兼房
業種:金属製品(東証) 企業コード:5984
主な事業:工業用機械刃物の製造を行う
高シェア事業:工業用機械刃物
ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率
5.4% (3.9%) 32.0% (21.7%) 3.9% (16.3%) 80.2% (45.6%) 176.2% (148.5%)
第二節 ポートフォリオのリスクとリターン
まず、私たちが作成したポートフォリオの特徴を分析するため、私たちの作成したポートフォリオ
のリスク、リターンを求め、日経平均のリスク、リターンと比較した(表4-1)。リターンは株価の平
均騰落率、リスクは株価の騰落率の標準偏差であらわす。また、各企業のリスクとリターンの算出
には、2011 年 12 月 1 日から 2016 年 11 月 30 日までの株価の月次データを用いた。日経平均の
リスクとリターンも同様に算出した。ポートフォリオのリスクとリターンの式は以下のとおりである。
𝜇 𝑝 = ∑ 𝑥𝑖
10
𝑖=1
𝜇𝑖
𝜎 𝑝 = √∑(𝑥𝑖 𝜎𝑖)2+2(𝑥1 𝑥2 𝑐𝑜𝑣1,2+𝑥1 𝑥3 𝑐𝑜𝑣1,3+ ⋯ + 𝑥9 𝑥10 𝑐𝑜𝑣9,10)
10
𝑖=1
𝜇 𝑝 : ポートフォリオのリターン 𝜇𝑖 : 各企業のリターン
𝜎 𝑝 : ポートフォリオのリスク 𝜎𝑖 : 各企業のリターン
𝑥𝑖 : 各企業の投資比率 𝑐𝑜𝑣1,𝑘 : 企業iと企業kの共分散
表4-1 リターンとリスクの比較
列 1 ポートフォリオ 日経平均
リターン 0.01346 0.01318
リスク 0.03681 0.05292
23 / 30
図を見てみると、私たちの作成したポートフォリオのリターンは、日経平均とさほど大きな差は
見られない。しかしリスクに注目してみると、私たちの作成したポートフォリオが 0.037、日経平均
が 0.053 の値をとっていることから、日経平均と比べてローリスクであるということが分かった。
第三節 リスク分析
第二節では、私たちの作成したポートフォリオが「日経平均と比べてローリスクである」という特
徴が明らかになった。本節では、日経平均との相関とボラティリティの観点からこの特徴をさらに
詳しく分析する。まず、10 社の日経平均との相関の強さを企業ごとに調査した。データは 2006 年
12 月 1 日から 2016 年 11 月 30 日までの月次データを使用した。結果は以下の通りである。
図4-3-1 日経平均との相関
列 1 松風 ライト工業 オーテック 兼房 MARUWA
相関係数 0.241 0.335 0.346 0.362 0.470
相関の強さ 弱 弱 弱 弱 中
列 1 日東紡 アイカ工業 藤倉化成 OSG 日本化薬
相関係数 0.510 0.570 0.618 0.646 0.700
相関の強さ 中 中 中 中 強
図4-3-2 標本数別限界値
標本数(n) 5%有意水準 1%有意水準
90 0.207 0.270
100 0.197 0.256
150 0.160 0.210
図4-3-3 基本統計量
列 1 アイカ工業 MARUWA 松風 藤倉化成 ライト工業
平均値 0.0079 0.0097 0.0015 -0.0015 0.0162
中央値 0.0088 0.0055 -0.0013 -0.0123 0.0060
最小値 -0.1562 -0.2660 -0.2031 -0.2253 -0.2696
最大値 0.2102 0.3703 0.1777 0.3787 0.3522
標準偏差 0.0632 0.1075 0.0666 0.0903 0.1131
24 / 30
列 1 日東紡績 OSG オーテック 兼房 日本化薬
平均値 0.0076 0.0074 0.0056 -0.0009 0.0062
中央値 -0.0042 0.0101 -0.0011 0.0017 0.0160
最小値 -0.3791 -0.2701 -0.1602 -0.1846 -0.3030
最大値 0.3697 0.2678 0.2558 0.1957 0.2062
標準偏差 0.1240 0.0983 0.0663 0.0646 0.0814
列 1 日経平均
平均値 0.0024
中央値 0.0034
最小値 -0.2383
最大値 0.1285
標準偏差 0.0609
無相関検定を行ったところ、すべての相関係数が 5%の有意水準で有意に推定されたため、帰
無仮説を棄却する。また図4-2より、10 社中 5 社が中程度の相関、4 社が弱い相関、1 社が強
い相関があるという結果になり、総合的にこのポートフォリオと日経平均には弱い相関があるとい
うことが分かった。
次に GARCH モデル(1,1)による条件付き分散推定をおこない、ボラティリティの観点からリスク
を分析した。データの範囲は先ほどと同様に 2006 年 12 月 1 日から 2016 年 11 月 30 日までの株
価の月次データを使用した。推定式と推定結果は以下のとおりである。μはポートフォリオのリター
ン、εは誤差項、hは条件付き分散(ボラティリティ)を示している。
・推定式
𝜇 𝑡 = 𝜃0+𝜃1 𝜇 𝑡−1+𝜀𝑡, 𝐸𝑡−1(𝜀𝑡) = 0, 𝐸𝑡−1(𝜀𝑡−1
2
) = ℎ 𝑡
ℎ 𝑡 = 𝜔 + 𝛼𝜀𝑡−1
2
+ 𝛽ℎ 𝑡−1
・推定結果
𝜇 𝑡 = 0.004673 + 0.148564𝜇 𝑡−1
ℎ 𝑡 = 0.001445 − 0.024611𝜀𝑡−1
2
+ 0.455033ℎ 𝑡−1
25 / 30
図4-3-4 条件付き分散推定の時系列データ
図4-3-5 基本統計量
列 1 ポートフォリオ 日経平均
平均値 0.00254 0.00349
中央値 0.00257 0.00343
最小値 0.00264 0.00526
最大値 0.00182 0.00285
標準偏差 0.00012 0.00037
グラフを見てみると、私たちのポートフォリオの変動は日経平均と多少連動しているが、振れ幅
は小さいということが見て取れる。以上のような日経平均との相関が弱く、リスクの変動幅も小さ
いという結果から、私たちの作成したポートフォリオはローリスクであり、景気の動向による影響を
受けにくい性質があるのではないかと結論づける。
では、なぜこのような特徴を持ったのだろうか。投資家のタイプはリスク回避者、リスク中立者、
リスク愛好家の 3 つのタイプに分けられる。現代のポートフォリオ理論ではすべての投資家はリス
ク回避者であるということを仮定しており、ほとんどの投資家はリターンが同じであればリスクの低
いほうを選ぶとされている。これは、第二章第一節で調査した投資家たちの大半に当てはまること
でもある。これらのことから、このポートフォリオが「ローリスクかつ景気の動向に左右されない」と
いう性質を持ったのは、投資家たちのリスク回避的な思考が集約されたポートフォリオだからなの
ではないかと考察する。
26 / 30
第五章 ヒアリング調査内容
質問内容
・競争戦略について
・ESG についての考え方
・企業名 アイカ工業株式会社
・メールによる取材
・戦略について
建築用接着剤などの化成品、建装材、住器建材を取り扱っている。独自の「化学合成技術」と
「積層技術」で、不燃機能を持つ壁面材などの製品を開発。最近では海外の接着剤会社買収など
で海外売上比率に重点をおいている。
・ESG について
E(環境)→ 2002 年度から本格的に co2 削減に着手。2011 年に温室効果ガス排出削減(売上原
単位を前年比3%削減し、2020年度に2005年度売上原単位値の25%削減)の中長期目標を決定。
S(社会)→ コンテストとセミナーを開催している。セミナーでは年に数回、建築家やデザイナーを
講師として招待し、デザインセミナーを開催している。場所は札幌や金沢、広島、福岡など全国の
地方都市。無料。地方都市ということで、なかなか講演会の少ない地域のため毎回好評。コンテ
ストではデザインコンテストや施行例コンテストを開催している。
G(企業統治)→ コーポレートガバナンスを最重要課題としている。具体的には、監査役制度の
導入、取締役会を月 1 回開催、2008 年 4 月から内部統制委員会を設置し、財務報告の信頼性向
上を図る。
・企業名 日本化薬株式会社
・メールによる取材
・ESG について
E(環境)→ 2011 年度から 2020 年度までの中期環境目標達成に向けた取り組みを実施してい
る。
S(社会)→ 2015 年 2 月、「リウマチら・ら・ら」はリウマチ患者様のための情報提供サイトとして公
開。同年 4 月には IBD の患者様のための IBD-INFO も公開。他にもピンクリボン活動や LRI への
支援なども行っている。
G(企業統治)→ 2005 年 8 月から、経営の「意思決定・監督機能」と「業務執行機能」の役割を明
確に分離し、適切な意思決定と迅速な業務執行を行っている。また、経営責任および執行責任の
明確化のため、取締役と執行役員の任期を 1 年としている。さらに、2013 年 6 月から社外取締役
を選任した。
27 / 30
・企業名 ライト工業株式会社
・訪問取材
インタビューの方々
[取締役 経営企画本部長] 西 誠 様
[経営企画部 担当部長] 橋本 貴宏 様
[経営企画部 グループ長] 平戸 聡一 様
2016 年 12 月 14 日、非財務情報(CSR,ESG)についての定性情報を集める目的としてライト工業
本社を訪問した。おそらく、多くの大学生が建設業界は「汚い」「つらい現場だ」というイメージを持
っているのではないか。しかし、経営陣の方々からは、お話をお伺いする中で仕事に対するやり
がい、熱い使命感を感じ取ることが出来た。
・業務内容について
「全国 50 万か所に今後地すべりが起きる可能性があります。私たちはそれを防止・復旧すること
を主な事業内容としております。建物の新設よりも防災事業がメインです。事業内容自体が社会
貢献に近いといえます。」
「自然災害が起きたとき、私たちは自衛隊や消防の方々と同じように被災地に向かいます。災害
は私たちが食い止めるのだ、という使命感を常に持っております。」
他の建設企業との差別化戦略については、耐震補強のための液体化技術開発力により差別化し
ているとのことでした。
・CSR 活動について
「地域の保育所とつながるお絵かきの展示や六甲の防災工事の現場説明会、工場見学開催など
に取り組んでおります。このような活動は短期的には企業利益にはプラスにはなっていません、
むしろ押し下げてしまうかもしれません。私たちは建設業のイメージを変えたいと考えております。
たとえば、工場見学を通して、学生の皆さんに建設業の魅力をお伝えすることで将来建設業界に
就職したいという動機づけになります。長期的には企業利益にプラスになると考えて、こういった
活動に取り組んでいる次第であります。」
・ESG について
E(環境)→環境方針として、①地域環境の維持・向上②温暖化防止③持続的発展が可能な循環
型の構築を掲げる。そのために、環境緑化・土壌汚染対策・農地除染技術の開発により環境保護
活動に取り組む。
S(社会)→事業活動を通じて地域社会との協調を図り、地域の自治体、学校、NPO などのステー
クホルダー との対話を通じて、各事業所における地域社会とのコミュニケーション、学会や教育
機関への人的貢献などを通して未来への人材育成と地域の発展に貢献する。
G(企業統治)→経営基本方針である「顧客、株主、社員をはじめ関係するすべての人々の繁栄を
図る」を実現する。取締役会は 9 名の取締役(うち社外取締役 2 名) で構成し、原則として毎月 1
回の取締役会と必要に応じて臨時取締役会を開催し、経営の重要事項についての意思決定を行
うとともに、経営の監視・監督機関として、各取締役の職務執行の状況の監督を行う。
28 / 30
第六章 日経 stock リーグを通して学んだこと
今、世界では個人投資家が増加しつつある。第一章で述べたように、個人投資家が増えること
は経済にとっては良い事である。しかし、企業に投資したからといえども投資した企業の業績が伸
びなければ意味がない。さらに、現代の投資家たちはリスク回避型であるため、一度損をして株
式投資の印象が悪くなると個人投資家の減少につながる可能性もある。そこで、私たちは個人投
資家が「社会が本当に必要としている製品・サービスを提供する企業」を見極めるための手助け
になるべく、ことわざというツールを使った企業の選定方法を提案した。
このテーマで活動をしている中で、「ことわざ」と「投資家の信念」は全く関係のないようで実は似
ている部分があるのではないかと感じた。まず、ことわざは日常生活で人々が体験していることか
ら作られた教訓であり、投資家の信念は過去の自分ないし他の投資家の成功例に基づいて築き
上げられたものである。つまり両者は過去の経験に基づいた、「成功する、または失敗しない」た
めの教訓となっている。そこで、私たちの作成したポートフォリオがローリスクになった理由の一つ
として、第四章第三節では「投資家たちのリスク回避的な思考が集約されたポートフォリオだから
ではないか」と結論付けたが、もう二つ理由が考えられる。一つ目は特定のニッチ分野で高シェア
を誇る企業ということ、つまり「社会が本当に必要としている製品・サービスを提供する企業」であ
ったということである。二つ目は、感覚的な話になるのだが人間の教訓と投資家の教訓両方を併
せ持っていることからより失敗しにくい、すなわちリスクが低いポートフォリオになったとも推測でき
るのではないか。
しかし、本研究の課題もまた、「投資家の信念」と「ことわざ」にあると感じている。何かというと、
「投資家の信念や手法からことわざを導く」→「導いたことわざを具体的な指標に置換」というプロ
セスにおいては、どうしても主観的な判断が入ってしまうという点である。例えば、今回私たちは投
資家の信念からことわざを導いたが、最終的に考えていることは投資家本人しかわからないので
ある。また、今回私たちは第三章で述べた5つのことわざを選出したが、その投資家の信念の解
釈の仕方も人それぞれであり、それに伴い導かれることわざも変わっていくだろう。さらに、世界に
は 43000 種類ものことわざがあるといわれており、日本国内のことわざはそのうちわずか 700 種
類前後である。今回私たちは国によってライフスタイルや文化・風土が異なるという理由から国内
のことわざに限定し調査をしたが、日本やアメリカだけでなく欧米やアジア諸国など、世界中のこ
とわざに目を向けてみると、今回導いたことわざ以上に投資家たちの信念とフィットするものが出
てくるかもしれない。このように、投資家の信念をことわざに置き換えるというアプローチは客観的
な判断が重要であり、考える余地はまだまだありそうである。
現在、銀行を筆頭に金融機関の力は弱まっている。また、価値観の変化から主要な資金調達方
法が銀行から株式市場へ変化している。つまり、今後の日本経済を支えるのは他の誰でもない投
資家であると言っても過言ではない。「社会が本当に必要としている製品・サービスを提供する企
29 / 30
業」を見極めることは決して簡単なことではないが、この論文が少しでも日本経済を活性化させる
企業を探す手掛かりになれば幸いである。
終わりに、このような学習の場を設けてくださった日経ストックリーグ事務局の皆さま、お忙しい
中、ヒアリングやメール取材に快く対応していただいた企業の皆さま、親身になってご指導してい
ただいた一ノ宮先生、共に切磋琢磨してレポートを作り上げたチームのみんなに心から感謝し、
御礼を申し上げます。ありがとうございました。
30 / 30
第七章 参考文献
・ジョージ・ソロス(2008 年) 「超バブル崩壊=悪夢のシナリオ」、 講談社。
・澤上 篤人(2012 年) 「金融の本領‐長期投資の精神と価値ある人生について」、中央経済社。
・松田 修一(2006 年) 「会社の読み方(ビジネス・ゼミナール)」、日本経済新聞社。
・宮宇地 俊岳(2010 年 6 月) 「企業分析における経営戦略分析」、Graduate School of
Management, Kyoto University。
・Porter, M. E.(1980) 「Competitive Strategy」 The Free Press. (土岐 坤, 服部 照夫, 中辻 万治
翻訳『競争の戦略』,ダイヤモンド社,1982 年)
・山本 祐樹(2010 年) 「事業ポートフォリオの包括的評価 -統計モデルを用いた分析-」、日本ア
ナリスト協会。
・北岡 孝義・高橋 青天・矢野順二(2008 年) 「Eviews で学ぶ実証分析入門 応用編」、日本評論
社。
・向後千春・富永敦子(2009 年) 「統計学がわかる 回帰分析・因子分析編」、株式会社技術評論
社。
・ジャック・D. シュワッガー(2014 年) 「マーケットの魔術師 エッセンシャル版--投資で勝つ 23 の
教え」、ダイヤモンド社。
・枇々木 規雄・伊理 正夫・西田 俊夫・森村 英典・刀根 薫・長谷川 利治(2001 年 3 月)「金融
工学と最適化(経営科学のニューフロンティア)」、朝倉書店。
・故事ことわざ辞典 HP http://kotowaza-allguide.com/
・Yahoo!ファイナンス HP http://finance.yahoo.co.jp/
・藤倉化成株式会社 HP http://www.fkkasei.co.jp/
・日本化薬株式会社 HP http://www.nipponkayaku.co.jp/
・ライト工業株式会社 HP https://www.raito.co.jp/
・株式会社オーテック HP http://www.o-tec.co.jp/
・日東紡績株式会社 HP http://www.nittobo.co.jp/
・アイカ工業株式会社 HP http://www.aica.co.jp/
・株式会社 MARUWA HP http://www.maruwa-g.com/
・株式会社松風 HP https://www.shofu.co.jp/
・オーエスジー株式会社 HP http://www.osg.co.jp/

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  • 1. 1 / 30 応募区分 大学 チームID SL600319 専修大学・3年 チーム名 OPCD(Organization for Proverb Cooperation and Development) メンバー名 ◎今野有彩 碇谷堅樹 風間大輝 柚木健 指導教員 一ノ宮士郎
  • 2. 2 / 30 1 私たちが日常生活の中で消費している商品は、( モノ )と( サービス )の2種類に大別される。 2 下の図は、一国の経済を構成する経済主体間の主な関係を示している。空欄の3つの 各主体は何か? 3 財やサービスの取引(交換)の手段として使われている貨幣(通貨)に関する次の各文のうち、誤っ ているものは? ( b ) a.貨幣には、商品と交換する際に誰もが受取を拒否しないという共通の価値がある。 b.各国の通貨の価値は、現在でも一定量の金(きん)を尺度にして決められている。 c.通貨には、紙幣や硬貨からなる現金通貨と、当座預金や普通預金などの預金通貨 の2種類がある。 d.現金通貨は、強制的な通用力が法的に認められていることから法定通貨(法貨) と呼ばれる。 4 現在の日本の年間出生数は約 100 万人で、第二次世界大戦直後と比べると約( 6 )割、30 年前と の比較でも約( 3 )割まで低下している。 5 今後、少子高齢化が進むことによる日本の社会や経済への影響に関する次の各文のうち、誤って いるものは? ( c ) a.日本の人口は 2008 年をピークに減少傾向が続いている。 b.少子化や人口流出によって、将来、消滅する自治体が出てくる可能性もある。 c.少子高齢化による商品市場へのマイナスの影響は全ての分野に共通して現れる。 d.生産年齢人口の減少により、公的年金や医療保険の財政はますます厳しくなる。 【基礎学習(必須)】 *別添の学習ガイドブックをチーム全員がしっかり読んだ上で、必ず、すべての設問に解答 してください 政府 企業 家計 公共サービス・補助金・代金等 税金・財・サービス等
  • 3. 3 / 30 6 グローバル化の進展に関する次の各文のうち、誤っているものは? ( b ) a.あらゆる分野で多くの企業が世界規模で事業展開を行っている。 b.先進国企業による発展途上国への海外投資では、途上国側のメリットは雇用の創出のみで限 定的である。 c.国内にある生産拠点の海外移転により地域経済が衰退する「空洞化」の問題が懸 念されている。 d.グローバル化の進展は経済だけにとどまらず、文化の面でも大きなインパクトをもたらす。 7 近年は、利害が一致しやすい2つ以上の国や地域間で協定を締結する事例が増えている。具体 的には、自由貿易を促進する( FTA )と、「環太平洋経済連携協定(TPP)のようにより幅広い分野 での協力を規定する( EPA )がある。 8 グローバルな対応が求められているグローバルな課題(グローバル・イシュー)として適切でないも のは? ( f ) a.地球環境問題 b.人口問題 c.感染症対策 d.国際経済格差と貧困 e.核廃絶 f.ワーク・ライフ・バランス g.すべて適切 9 GDP(国内総生産)に関する次の各文のうち、誤っているものは? ( a ) a.GDPとは、一定期間に国民全体として生産したモノやサービスの付加価値の合 計額をさす。 b.GDPとは、一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額を さす。 c.GDPには名目GDPと実質GDPとがあり、その違いは物価の変動分を考慮するかどうかにあ る。 d.近年は実質GDPが名目GDPを上回っており、これは日本がデフレ状態にあることを示してい る。 10 需要・供給の法則のポイントは、( 価格 )が消費者・生産者の行動に対し( インセンティブ )とし て機能することである。 11 直接金融の例として適切でないものは? ( 銀行預金 ) a.社債 b.公債 c.株式 d.銀行預金 e.投資信託 f.すべて適切 12 株式を所有することで得られる金銭的な利益には、インカムゲインと呼ばれる( 配当金 )とキャピ タルゲインと呼ばれる( 売却益)とがある。 13 株式投資などの際に考慮すべきリスクとして適切でないものは? ( f ) a.価格変動 b.金利変動 c.為替変動 d.インフレ e.自然災害 f.すべて適切
  • 4. 4 / 30 ■目次 第一章 要旨 第一節 はじめに 第二節 関連記事 第二章 投資テーマ選定理由 第三章 スクリーニング 第一節 ことわざの選定 第二節 ことわざの代理変数化 第三節 スクリーニング手順 第四節 構成比 第四章 投資家へのアピール 第一節 銘柄紹介 第二節 ポートフォリオのリスクとリターン 第三節 リスク分析 第五章 ヒアリング調査 第六章 日経 stock リーグを通して学んだこと 第七章 参考文献
  • 5. 5 / 30 第一章 要旨 第一節 はじめに バブル崩壊前、日本には大きな自信と余裕があった。商業地の地価は 1986 年から 1987 年の 1 年で 2 倍以上上昇し、1989 年には日経平均株価が史上最高値である 38,957 円 44 銭を記録し た。また、企業の設備投資や合併買収も活発だった。しかし、現在はかつての自信や余裕はなく なり、国内経済も活力がないように感じられる。例えば、少子高齢化による人口減少、年金や医療 費、待機児童の問題、二酸化炭素による地球温暖化、企業の不祥事などがあげられる。また、経 済に関してもグローバル化が進み、アメリカのリーマンショックやイギリスの EU 離脱など、日本か ら遠く離れた地域で起きた出来事でも強く日本に影響を及ぼすようになった。そんな中、近年個人 投資家が増加傾向にある。主な理由は四つある。 一つ目の理由は、日銀の「超低金利政策」である。超低金利政策は不況を乗り越えるため 1999 年に施行されたもので、金利を限界まで引き下げることによって、企業は銀行からの資金借り入 れコストが減らすことができる。それにより企業へ設備投資や研究開発を促し、企業利益を増加さ せる。企業利益が増加することで、従業員の所得も増え、消費も拡大する…といった好循環を目 指す政策である。なぜこれが個人投資家の増えた要因になるのかというと、金利が低いということ は、預貯金につく利子も低くなってしまう。そのため、従来の預貯金よりも多くのリターンを期待で きる資産運用方法として、株式投資が注目され始めたのである。 二つ目の理由は、1996 年から 2001 年にかけて日本で行われた「金融ビッグバン」である。証 券・銀行の取扱業務の拡大、各種手数料の自由化、ディスクロージャー制度の徹底、投資信託の 窓口販売の導入などの改革が行われ、個人が株式に投資しやすくなった。また、2003 年には配 当課税の軽減という、株式の取引で得られた利益に掛かる税金を軽減する税制改正が行われた。 このような証券市場の規制緩和も、個人投資家増加の背景として考えられている。 三つ目の理由は、昨今のインターネットの普及である。インターネットの普及によって、新たにオ ンライントレードが使われるようになった。オンライントレードとは、名前の通りインターネット上で株 の取引をすることができるものである(証券会社は「ネット証券」と「総合証券」に分けられるが、オ ンライントレードは前者に相当する)。これにより、証券会社の営業時間に関係なく、いつでもどこ でもパソコンや携帯電話を通じて株の売買ができるようになった。また、総合証券と比べて人件費 がかからない分、手数料が安いというメリットもある。 四つ目の理由は、少額投資非課税制度「NISA」のスタートである。NISA とは、株や投資信託な どの運用益や配当を一定額非課税にする制度であり、投資利益への課税を軽減する制度が 2013 年に終了したのを期に 2014 年から始まった。NISA の非課税の期間は最大 5 年間となって いるが、毎年投資金額 120 万円までの株や投資信託にかかる値上がり益や配当金が非課税にな ることから、制度導入時点の 2014 年 1 月 1 日から 2016 年 3 月末時点と比較すると NISA 口座数
  • 6. 6 / 30 474 万 7923 件から 1012 万 809 件と 113.2%も口座数が増えている(金融庁より)。個人投資家の 増加には、以上の 4 つのような背景がある。 図1-1 個人株主数(延べ人数)の推移 出所:日本取引所グループ (注)2004 年度から 2009 年度までは、ジャスダック証券取引所上場会社分を含む。 個人投資家が増加すると、上場している企業がより幅広くから多くの資金を集められるようにな り、その分社会に多くのモノやサービスを供給できるようになる。つまり、個人投資家の増加は国 内の企業活動の活性化に繋がる。また、全世界の投資家による投資インパクト(投資総額)は 100 兆ドル(日本円にして 1 京円)にのぼると言われており、国連からも私利私欲のためではなく国内 経済や世界経済のことも考え、より慎重な投資判断をするよう求める声明が発表されている。そ れほど投資家の判断が経済へ与える影響が大きいということである。さらに、投資家が増えること で企業は様々なステークホルダーを持つようになる。これにより、企業を監視する眼は企業の知ら ない様々なところに存在するようになる。以上のような国内の企業活動がより活発になるという点 から、個人投資家の増加は国内経済の活性化にも繋がるということがわかる。 しかし、単純に企業へ投資するだけでは意味がない。一番大事なことは、「社会が本当に必要 としているモノ・サービスを提供する企業」を見極めることである。社会に必要でないモノやサービ スを提供したところで、それらは消費されずに溜まっていくだけである。逆に、社会が必要としてい るモノやサービスを提供すれば、それらは消費され、必然的にその企業の業績は伸びる。業績が 伸びた企業は、獲得した資金を使ってさらに社会に役立つモノやサービスを製造・開発し、結果的 に日本経済へ良い影響を与える。さらに、投資した企業の業績が伸びれば、自身のリターンも大 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000 55,000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 人 数 ( 千 人 ) 年
  • 7. 7 / 30 きくなる。株式投資で資産運用をすることは、日本にとっても自身にとっても良いことであり、まさに 一石二鳥なのである。 しかし、前述したように現代社会には様々な社会問題が乱立している。情報が複雑化している 上、多くのステークホルダーに囲まれた環境の下では、従来の理論で「社会が本当に必要として いるモノ・サービスを提供する企業」を見極めることは難しい。この「社会が本当に必要としている モノ・サービスを提供する企業」を見極めることのできる投資家こそが、日本経済を発展させるた めに必要なのではないだろうか。 第二節 関連記事 (1)足し算社会 日付:2015 年 11 月 25 日 出所:日経 BizGate 現代社会は商品の増加、機能の増加、情報の増加など社会が複雑化しており、放っておけ ば何もかもが増えていく「足し算社会」になる。このような環境下の中で企業は何をして何を 考えることがベストなのかわからなくなっている。同時に企業活動を支援する投資家も信用し て投資をした企業が不祥事や急な経済の動きによって企業価値が落ちることで投資した分を 無駄にしてしまう。 (2) 「17 年は運用リスクとる」HC アセット森本氏(投資家の金言) 日付:2016 年 12 月 25 日 出所:日本経済新聞 英国の EU 離脱や米大統領選について、市場関係者は不確実な情報を基に投資の判断を しているのではないか。科学的な根拠のないことについて議論するのではなく、自分が責任 ある信念を持って判断できることは何か考えるべきである。今は不確実性の時代であり、確 実に分かる本質をとらえて投資する必要がある。 第二章 投資テーマ選定理由 第一章で述べたように、企業を取り巻く環境は日々複雑化している。一方で、世界にはこのよう な環境の中でも確実に投資に成功している投資家がいる。例えばバークシャーハサウェイ社のウ ォーレン・バフェット氏や次期アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏が代表的である。そういった投 資家たちが投資判断として注視しているものが、現在の環境下で信頼できる企業を見つけるヒン トにならないだろうか。私たちは、成功した投資家の理念に関する参考文献を探し、調べてみた。
  • 8. 8 / 30 しかし、財務諸表を隅々まで見ることや、割安株を買うなど漠然としたことしか書いておらず、結局 どんな要因で成功したのか明確な理論はよくわからなかった。 いったいどのような要因で成功しているのかを探しているときに、私たちはある共通点を見出し た。それは、成功した投資家には感覚的な信念・格言があるということである。投資家の信念や格 言を調べてみると、その投資家が持っている投資哲学や教訓が見えてくる。しかし、投資家の感 覚的な言葉そのままだと表現が抽象的であるため、正確に実践することは難しい。この、投資家 の抽象的な信念・格言を端的かつ具体的に表現できるモノとして、何か使えるツールは無いだろう か。 そこで私たちが着目したものが「ことわざ」である。「ことわざ」は平安時代から記録されており、 庶民の生活の中で生み出された教訓を端的に表したものである。また、庶民の実体験が元となっ ていることから、信憑性も非常に高い。 まず、投資家たちの信念や格言を集約し、ことわざに置き換えることにより、投資家の視点を単 純化する。さらに、置き換えたことわざを代理変数に換えることで、投資家の視点を具体化する。 このステップを踏む事によって、投資家の抽象的な信念・格言を、端的かつ具体的に表現すること ができ、現環境下での最適な投資企業を選定することができると考えた。これが私たちの投資テ ーマを「ことわざ」とした理由である。 第三章 スクリーニング 第一節 ことわざの選定 ことわざを選定するために、まず歴代の著名な投資家計 41 人を調査し、各投資家の活躍した 年代や手法、エピソードを以下の表にまとめた。
  • 9. 9 / 30 表3-1 著名な投資家の活躍した年代と特徴 1615 年~1868 年(江戸時代) 投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど 河村 瑞賢 1617 年~ 1699 年 ・社会情勢から相場を予測し、成功した。 本間 宗久 1724 年~ 1803 年 ・酒田五法(酒田罫線法)、ローソク足の考案者。 ・社会情勢とテクニカル分析で相場を予測し、成功した。 田中 平八 1834 年~ 1884 年 ・東京株式取引所の設立者。 ・生糸、為替、洋銀、米相場で成功した。 ・具体的な投資手法は不明。 渋沢 成一郎 1838 年~ 1912 年 ・経済学に長けており、相場師・実業家として成功した。 ・具体的な手法は不明。 本多 静六 1866 年~ 1952 年 ・具体的な手法は不明。 ・投資家引退の際にほぼすべての利益を教育、公共機関 に寄付した。 福沢 桃介 1868 年~ 1938 年 ・日露戦争後の株式投機で成功した。 1868 年~1912 年(明治時代) 投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど 松井 房吉 1871 年~ 1950 年 ・テクニカル分析で成功した。 ジェシー・ リバモア 1877 年~ 1940 年 ・ファンダメンタルズ分析で成功した。 ・年代や時期に応じて手法を使い分ける。 鈴木 久五郎 1877 年~ 1943 年 ・日比谷焼き討ち事件や日露戦争などの社会問題から相 場を予測し、成功した。 石井 定七 1879 年~ 1945 年 ・凶作情報から相場を予測し、成功した。 ・日露戦争の材木相場、第 1 次世界大戦の銅相場でも利 益を出した。 野村 徳七 (2 代目) 1878 年~ 1945 年 ・会社の業績や将来性を分析する。 ・市場性がないものは与えるべく協力する。
  • 10. 10 / 30 太田 収 1890 年~ 1938 年 ・情報収集能力と冷静な分析力が持ち味。 ・具体的な手法は不明。 山崎 種二 1893 年~ 1983 年 ・買いより売りを重視。 ・二・二六事件で相場が大暴落した際の乱高下相場で成功 した。 ベンチャミン・ グレアム 1894 年~ 1976 年 ・徹底的に会社の財務状況を分析する。 ・会社がどんなパフォーマンスをしているかを見る。 是川 銀蔵 1897 年~ 1997 年 ・社会情勢から相場を予測し、成功した。 フィリップ・ フィッシャー 1907 年~ 2004 年 ・会社の成長性を分析する。中でも「株主に対する誠実性」 「研究開発の意欲」「経営の安定性」に注目する。 1912 年~1926 年(大正時代) 投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど 石井 久 1923 年~ 2016 年 ・社会情勢から相場を予測する。 チャーリー・ マンガー 1924 年~ ・リスク分析に注力している。 1926 年~1989 年(昭和時代) 投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど ウォーレン・ バフェット 1930 年~ ・バリュー投資(特に「事業の内容が理解できる」「長期的な 好業績が予想される」「経営者に能力がある」「価格が魅力 的である」の 4 点)で成功した。 ジョージ・ ソロス 1930 年~ ・ジムロジャースと共にクォンタムファンドを設立した。 ・社会情勢から相場を予測する。 久世 雄三 1930 年~ ・徹底的に企業研究をおこなう。 竹田 和平 1933 年~ 2016 年 ・竹田製菓の元代表取締役。 ・配当を株主への感謝と考える。 カール・ アイカーン 1936 年~ ・投資した会社の株を買い占め、自らが企業の経営権を握 り、企業統治改善を図る。 チャールズ・ エリス 1937 年~ ・自分の投資戦略を信じ、新しい情報に惑わされない。
  • 11. 11 / 30 ジェームズ・ シモンズ 1938 年~ ・具体的な手法は語られていない。 加藤 あきら 1941 年~ ・兜町最強の仕手筋と呼ばれていた。 ・詳しい手法は不明 ジム・ ロジャーズ 1942 年~ ・ヘッジファンドの先駆者。 ・社会情勢などから需給の変化を予測し投資する。 澤上 篤人 1947 年~ ・企業の本質(どんな事業をしているか)を見極め、良い仕事 をしていると判断した企業に投資する。 ベルナール・ アルノー 1949 年~ ・ファッションブランド業界に好んで投資する。 藤巻 健史 1950 年~ ・ジョージソロス氏のアドバイザー。 ・世界経済の動向から相場を予測する。 ピーター・ リンチ 1950 年 前後?~ ・ファンダメンタルズ分析で成功した。 ・投資企業を 6 種類に分類し、株価を予測する。 ジム・ クレイマー 1955 年~ ・期待収益率、PER、負債額から企業の将来を予測する。 村上 世彰 1959 年~ ・モノ言う投資家として有名。 ・投資した会社の株を買い占め、積極的に株主提案をし、 自らの手で企業価値向上を図る。 ダニエル・ ローブ 1961 年~ ・グローバルな競争力のある企業を好んで投資する。 清原 達郎 1980 年 前後?~ ・PER10~15 倍、PBR1 倍~2 倍前後の銘柄に注目する。 ・テクニカル分析にも長けている。 1989 年~(平成時代) 投資家名 生年~没年 特徴・エピソードなど B.N.F 2000 年 前後?~ ・テクニカル分析で成功した。 ・常に 700 銘柄を監視する。 cis 2000 年 前後?~ ・テクニカル分析で成功した。 株之助 2000 年 前後?~ ・テクニカル分析で成功した。 デービッド・ アインホーン 2000 年 前後?~ ・社会情勢から相場を予測する。
  • 13. 13 / 30 当期純利益÷総資産=ROA 売上総利益÷売上高=売上高総利益率 第二節 ことわざの代理変数化 1 朱に交われば赤くなる 朱に交われば赤くなるとは、「人は関わる相手や環境によって、良くも悪くもなる」というたとえ である。私たちは ROA に目を付けた。ROA は総資産利益率のことで分母に総資産、分子に当期 純利益を取る。 ROA は事業に投下した資産でどれだけ利益を獲得したか示す指標である。分子の当期純利益 は税戦略含め企業の最終的な戦略的成功を意味する。また ROA の向上には経営者の実績や能 力、資質なども関わる。まさに企業のおかれた環境やかかわる相手との関係が全て反映している 指標が ROA であるから、この指標を選択した。 2 一念天に通ず 一念天に通ずとは、物事を成し遂げようと一心になれば、それが天に通じて、必ず成功すると いうことである。物事を成し遂げようと日々努力する姿勢を企業の事業に対する一途な想いと考え、 私たちはマイケル・ポーターの「競争戦略」の「差別化戦略」と「コスト戦略」に置き換えることがで きるのではないかと考えた。 まず、差別化戦略とは、競合他社の商品と比較して、機能やサービス面(付加価値)で差別化を 図り優位性を得ようとする戦略である。この戦略は原価に対して高い付加価値を加え高価格で販 売することにより、売上高と売上原価との間に大きな開きがあることが想定される。このことにより 差別化戦略を行っている企業は売上高総利益率が高いといえる。売上高総利益率は分母に売上 高を取り、分子に売上総利益を取る。
  • 14. 14 / 30 自己資本÷総資本=自己資本比率 次に、コスト戦略とは、コスト削減・低価格を実現することで顧客を集め、優位性を確保する戦略 である。この戦略は販売の低価格を実現するために大量生産・大量販売を行うため、期末の棚卸 資産の水準と、期中に獲得した売上高水準の差が大きく開く可能性があり、このことによりコスト 集中戦略を行っている企業は棚卸資産回転率が高くなるといえる。棚卸資産回転率は分母に棚 卸資産(当期・前期末平均)を取り、分子に売上高を取る。 売上高÷棚卸資産=棚卸資産回転率 業種により数値に差があることからそれぞれの業種の平均以上であることを基準とし、スクリー ニングを行った。また、マイケル・ポーターが二つの戦略を同時に行うと、その企業はスタックイン ザミドルに陥る可能性があると論じていることから、売上高総利益率と棚卸資産回転率の二つと も業種平均以上だった企業はスクリーニング対象外とした。 以上をまとめたものが下の図である。 図3-2-1 一念天に通ず指標 売上高総利益率 棚卸資産回転率 コスト戦略 低い 高い 差別化戦略 高い 低い 3 砂上の楼閣 砂上の楼閣という諺があらわす意味は以下のようになる。 「崩れやすい砂の上に建てられた楼閣は、基礎が不安定なのですぐに崩れること」 このことから企業の基礎である純資産に目を向けた。純資産のうち株主からの出資分である自 己資本については借入金とは異なり返済義務がない。したがって、自己資本比率の高い企業は 返済不要の資金を元手に事業を行っているので経営が安定しているといえる。自己資本比率は 分母に総資本を取り、分子に自己資本を取る。 「借入金を積極的に活用して利益につなげてもROEは上昇する。借入金への依存度が高い企業への 投資は敬遠されやすくなる。自己資本を総資産で割った自己資本比率の高い企業は、健全な財務体 質と受け止められ、この指標への関心も高まる。」 (2014/3/2 日本経済新聞 高収益×健全な財務 調整局面でも株価底堅く )
  • 15. 15 / 30 この記事では ROE が高くても財務体制が健全でなければ投資は行われずに株価は上がらな いことを言っている。借入金の依存度が高いと経営が安定しているとは言えないからだ。企業の 基礎である自己資本比率を見ることで財務基盤が安定しているか見ることができる。 一般に自己資本比率は 50%前後が優良企業だと言われているが、業種により差があることか らそれぞれの業種の平均以上であることを基準とし、スクリーニングを行った。 4 備えあれば憂いなし 備えあれば憂いなしとは、普段から準備しておけば、いざというときに心配がないということであ る。企業にとって備えとは何かを考えたときに、私たちは企業の支払能力を表す指標の一つであ る流動比率に目を向けた。流動比率とは流動資産を分子、流動負債を分母にとる指標である。 100%を超えていれば短期的な支払能力が支払義務をまかなって余りあることで、支払能力に余 力があると推測ができる。支払能力に余力があれば、もし急な支払が起きた時に備えることがで きる。また、企業が研究開発のために資金調達を行う際も買い入れをせず流動資産から出すこと ができれば、新たに借り入れをすることもなく捻出することができる。 流動資産÷流動負債=流動比率 しかし、流動比率には棚卸資産や前払費用を含んでしまうという問題がある。棚卸資産や前払 費用は短期的に換金することのできる資産と考えられているが、実際には換金性が低く過剰在庫 を抱えている企業を見ぬけないという問題である。 黒字倒産したアーバンコーポレーションを例に挙げると、流動比率が 200%以上で支払能力に 問題ないと考えられるが、実際には過剰在庫を抱えており流動比率が安全性指標として機能して いなかった。 私たちはこのような換金性の低い資産を除いた支払余力を見るために、流動資産の代わりに 当座資産を分子にとった当座比率で企業を見ることにした。当座資産には現金及び預金や売掛 金、有価証券と換金性の高い資産を含んでおり、より厳密な支払い余力を見ることができる。 当座資産÷流動負債=当座比率 当座比率は 100%以上あれば支払余力に問題がないとされる。しかし、飲食店やスーパーなど 日銭を稼げる業種の場合や銀行などは 100%を下回っても問題ないとされるので、100%を基準 にするにするのではなく、業種ごとに業種平均以上を基準にスクリーニングを行った。
  • 16. 16 / 30 5 善因善果 善因善果とは、善い行いをすればそれが元となり後に必ず良い報いがあるという意味である。 善い行いとは、非財務情報に関する活動と考え、良い報いとは、企業価値の向上(株価の上昇) と考え、ESG 投資に着目した。ESG 投資とは環境(Environment)への対応、社会(Social)との関係、 企業統治(Governance)の在り方といった非財務情報による情報を考慮して企業を評価する投資 方法のことをいう。評価するにあたって、書物によって ESG の定義が異なることから、最近の日経 記事や日経 stock リーグホームページの「いま聞きたい Q&A」を参考に以下の項目をあげた。 図3-2-2 善因善果項目 まず、E(環境)の項目は「ISO14001 を取得している企業」をあげた。ISO14001 は PDCA サイク ルによる環境マネジメントシステムのことで、これを取得している企業は環境保全に努めている企 業であるとみなされる。S(社会)の項目は、ワーク・ライフ・バランス支援の観点から「育児・介護制 度の充実性」、地域社会を守り育てるという点から「本業を除く地域貢献活動の有無」、女性の社 会進出支援の観点から「女性雇用率の推移」の 3 点をあげた。G(企業統治)の項目は、コンプラ イアンスの在り方という点から「過去に大きな不祥事があったかどうか」、ディスクロージャーの観 点から「中期経営計画の開示」、社外取締役の独立性の観点から「社外取締役の人数」、社外取 締役の多様性の観点から「企業外又は女性の取締役の有無」の 4 点をあげた。
  • 17. 17 / 30 第三節 スクリーニング手順 スクリーニングの流れは、第三章第一節の当てはまる投資家の多いことわざから行うことにし た。また、当てはまる投資家数が同じだった「備えあれば憂いなし」と「善因善果」は、定性分析と なる善因善果を後に行った。以上の 3539 社をスクリーニングしまとめたものが下の図である。 図3-3 スクリーニング手順 第四節 構成比 次に、以上のスクリーニングの結果選定された 19 社の最適ポートフォリオを導いた。 最適ポートフォリオを導くにあたり、平均分散モデルを用いてポートフォリオ最適化問題 を解いた。平均分散モデルの定式は以下の通りである。 V(R) = ∑ ∑ 𝑐𝑜𝑣𝑖𝑘 19 𝑘=1 19 𝑖=1 𝑥𝑖 𝑥 𝑘 , 𝜇 𝑝 ≥ 𝜇 𝐸
  • 18. 18 / 30 ∑ 𝑥𝑖 19 𝑖=1 = 1 𝑥𝑖 ≥ 0, (𝑖 = 1,2, ⋯ ,19) V(R)はポートフォリオの分散、𝜇 𝑝はポートフォリオの期待収益率、𝜇 𝐸は投資家の要求期待収益率、 𝑐𝑜𝑣𝑖𝑘は企業 i と企業 k の共分散、𝑥𝑖は各企業の投資比率をそれぞれ表している。なお、投資家 の要求期待収益率には日経平均のリターンである 0.01318 を用いた(第 4 章第 2 節参照)。この ポートフォリオ最適化問題を解いたところ、19 銘柄のうち 10 銘柄が導き出された。図3-4は最 終的に私たちが導いたポートフォリオの銘柄と構成比をまとめたものである。 図3-4 構成比 銘柄名 証券コード 取得株数(株) 取得金額(円) 比率 アイカ工業 4206 383 1,143,638 0.2287 日東紡績 3110 120 53,400 0.0107 オーテック 1736 1,607 1,579,681 0.3159 兼房 5984 1,128 734,328 0.1469 日本化薬 4272 135 178,335 0.0357 ライト工業 1926 66 83,028 0.0166 OSGコーポレーション 6757 539 513,667 0.1027 藤倉化成 4620 279 171,585 0.0343 松風 7979 267 360,717 0.0721 MARUWA 5344 31 127,255 0.0255 無リスク資産(現金) 964 0.0002 売買手数料 53402 0.0107 合計 5,000,000 1.0000 第四章 投資家へのアピール 第一節 銘柄紹介 最適ポートフォリオから導き出された 10 社には、特色のある製品を提供し、特定のニッチ分野 で世界や国内で高シェアを誇る企業という共通点があり、その事業も紹介する。
  • 19. 19 / 30 ※指標の()内の値は業界平均 藤倉化成 業種:化学(東証) 企業コード:4620 主な事業:コーティング・建材塗装・電子材料・化成品の 4 事業を柱として展開 高シェア事業:自動車市場のプラスティック用コーティング材 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 6% (5.8%) 23.9% (28.7%) 12.3% (9.1%) 57.8% (53.5%) 173.7% (172.8%) 日本化薬 業種:化学(東証) 企業コード: 4272 主な事業:医薬品や農薬などの薬品のほか火薬なども製造 高シェア事業:色素材料事業 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 8.3% (5.8%) 40.7% (28.7%) 4.1% (9.1%) 69.3% (53.5%) 249.5%(172.8%) ライト工業 業種:建設業(東証) 企業コード:1926 主な事業:斜面対策工事、地盤改良工事などの基礎土木分野や建設事業を行う。 高シェア事業:斜面対策工事、地盤改良工事などの基礎土木の分野 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 11.2% (3.3%) 18.6% (12.8%) 12.6% (27.1%) 57.8% (19.2%) 159.2% (128.6%)
  • 20. 20 / 30 オーテック 業種:建設業(東証) 企業コード:1736 主な事業:管材事業、システム事業、環境機器事業を行う 高シェア事業:建物の管工機材販売 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 7.5% (3.3%) 18.3% (12.8%) 11.4% (27.1%) 52.7% (19.2%) 158.5% (128.6%) 日東紡積 業種:ガラス・土石製品(東証) 企業コード:3110 主な事業: 繊維事業、グラスファイバー事業、環境・ヘルス事業、プロパティマネジメント事業を行う 高シェア事業:繊維事業 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 7.9% (3.6%) 33.9% (24.0%) 3.9% (7.0%) 52.3% (46.9%) 143.0% (141.2%) アイカ工業 業種:化学(東証) 企業コード:4206 主な事業:化粧板などの住宅関連用品・接着剤の製造・販売を行う。化成品、機能材料、建 装、建材の 4 部門が主要事業。自社独自の技術である樹脂技術を使った商品が特徴。 高シェア事業:化成品事業 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 11.1% (5.8%) 28.0% (28.7%) 12.7% (9.1%) 70.4% (53.5%) 250.5% (172.8%)
  • 21. 21 / 30 MARUWA 業種:ガラス・土石製品(東証) 企業コード:5344 主な事業:セラミック部品事業と照明機器事業を展開している。そのうちセラミック部品事業は セラミック部門、電子部品・デバイス部門、石英部門の 3 つの領域で構成されている。電子部品 用セラミックの大手メーカー。 高シェア事業:セラミック部品事業 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 7.9% (3.6%) 35.9% (24.0%) 4.2% (7.0%) 85.9% (46.9%) 379.8% (141.2%) 松風 業種:精密機器(東証) 企業コード:7979 主な事業:歯科医院・歯科技工向けに歯科器材の製造販売を行う 高シェア事業:デンタル関連事業 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 5.7% (3.2%) 57.4% (34.5%) 4.4% (6.0%) 75.7% (52.2%) 251.8% (219.1%) OSG コーポレーション 業種:電気機器(東証) 企業コード:6757 主な事業:浄水器・アルカリイオン整水器などの製造を行う 高シェア事業:水関連機器事業 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 14.8% (4.8%) 44.7% (26.3%) 3.9% (7.9%) 66.1% (52.2%) 183.2% (180.3%)
  • 22. 22 / 30 兼房 業種:金属製品(東証) 企業コード:5984 主な事業:工業用機械刃物の製造を行う 高シェア事業:工業用機械刃物 ROA 売上高総利益率 棚卸資産回転率 自己資本比率 当座比率 5.4% (3.9%) 32.0% (21.7%) 3.9% (16.3%) 80.2% (45.6%) 176.2% (148.5%) 第二節 ポートフォリオのリスクとリターン まず、私たちが作成したポートフォリオの特徴を分析するため、私たちの作成したポートフォリオ のリスク、リターンを求め、日経平均のリスク、リターンと比較した(表4-1)。リターンは株価の平 均騰落率、リスクは株価の騰落率の標準偏差であらわす。また、各企業のリスクとリターンの算出 には、2011 年 12 月 1 日から 2016 年 11 月 30 日までの株価の月次データを用いた。日経平均の リスクとリターンも同様に算出した。ポートフォリオのリスクとリターンの式は以下のとおりである。 𝜇 𝑝 = ∑ 𝑥𝑖 10 𝑖=1 𝜇𝑖 𝜎 𝑝 = √∑(𝑥𝑖 𝜎𝑖)2+2(𝑥1 𝑥2 𝑐𝑜𝑣1,2+𝑥1 𝑥3 𝑐𝑜𝑣1,3+ ⋯ + 𝑥9 𝑥10 𝑐𝑜𝑣9,10) 10 𝑖=1 𝜇 𝑝 : ポートフォリオのリターン 𝜇𝑖 : 各企業のリターン 𝜎 𝑝 : ポートフォリオのリスク 𝜎𝑖 : 各企業のリターン 𝑥𝑖 : 各企業の投資比率 𝑐𝑜𝑣1,𝑘 : 企業iと企業kの共分散 表4-1 リターンとリスクの比較 列 1 ポートフォリオ 日経平均 リターン 0.01346 0.01318 リスク 0.03681 0.05292
  • 23. 23 / 30 図を見てみると、私たちの作成したポートフォリオのリターンは、日経平均とさほど大きな差は 見られない。しかしリスクに注目してみると、私たちの作成したポートフォリオが 0.037、日経平均 が 0.053 の値をとっていることから、日経平均と比べてローリスクであるということが分かった。 第三節 リスク分析 第二節では、私たちの作成したポートフォリオが「日経平均と比べてローリスクである」という特 徴が明らかになった。本節では、日経平均との相関とボラティリティの観点からこの特徴をさらに 詳しく分析する。まず、10 社の日経平均との相関の強さを企業ごとに調査した。データは 2006 年 12 月 1 日から 2016 年 11 月 30 日までの月次データを使用した。結果は以下の通りである。 図4-3-1 日経平均との相関 列 1 松風 ライト工業 オーテック 兼房 MARUWA 相関係数 0.241 0.335 0.346 0.362 0.470 相関の強さ 弱 弱 弱 弱 中 列 1 日東紡 アイカ工業 藤倉化成 OSG 日本化薬 相関係数 0.510 0.570 0.618 0.646 0.700 相関の強さ 中 中 中 中 強 図4-3-2 標本数別限界値 標本数(n) 5%有意水準 1%有意水準 90 0.207 0.270 100 0.197 0.256 150 0.160 0.210 図4-3-3 基本統計量 列 1 アイカ工業 MARUWA 松風 藤倉化成 ライト工業 平均値 0.0079 0.0097 0.0015 -0.0015 0.0162 中央値 0.0088 0.0055 -0.0013 -0.0123 0.0060 最小値 -0.1562 -0.2660 -0.2031 -0.2253 -0.2696 最大値 0.2102 0.3703 0.1777 0.3787 0.3522 標準偏差 0.0632 0.1075 0.0666 0.0903 0.1131
  • 24. 24 / 30 列 1 日東紡績 OSG オーテック 兼房 日本化薬 平均値 0.0076 0.0074 0.0056 -0.0009 0.0062 中央値 -0.0042 0.0101 -0.0011 0.0017 0.0160 最小値 -0.3791 -0.2701 -0.1602 -0.1846 -0.3030 最大値 0.3697 0.2678 0.2558 0.1957 0.2062 標準偏差 0.1240 0.0983 0.0663 0.0646 0.0814 列 1 日経平均 平均値 0.0024 中央値 0.0034 最小値 -0.2383 最大値 0.1285 標準偏差 0.0609 無相関検定を行ったところ、すべての相関係数が 5%の有意水準で有意に推定されたため、帰 無仮説を棄却する。また図4-2より、10 社中 5 社が中程度の相関、4 社が弱い相関、1 社が強 い相関があるという結果になり、総合的にこのポートフォリオと日経平均には弱い相関があるとい うことが分かった。 次に GARCH モデル(1,1)による条件付き分散推定をおこない、ボラティリティの観点からリスク を分析した。データの範囲は先ほどと同様に 2006 年 12 月 1 日から 2016 年 11 月 30 日までの株 価の月次データを使用した。推定式と推定結果は以下のとおりである。μはポートフォリオのリター ン、εは誤差項、hは条件付き分散(ボラティリティ)を示している。 ・推定式 𝜇 𝑡 = 𝜃0+𝜃1 𝜇 𝑡−1+𝜀𝑡, 𝐸𝑡−1(𝜀𝑡) = 0, 𝐸𝑡−1(𝜀𝑡−1 2 ) = ℎ 𝑡 ℎ 𝑡 = 𝜔 + 𝛼𝜀𝑡−1 2 + 𝛽ℎ 𝑡−1 ・推定結果 𝜇 𝑡 = 0.004673 + 0.148564𝜇 𝑡−1 ℎ 𝑡 = 0.001445 − 0.024611𝜀𝑡−1 2 + 0.455033ℎ 𝑡−1
  • 25. 25 / 30 図4-3-4 条件付き分散推定の時系列データ 図4-3-5 基本統計量 列 1 ポートフォリオ 日経平均 平均値 0.00254 0.00349 中央値 0.00257 0.00343 最小値 0.00264 0.00526 最大値 0.00182 0.00285 標準偏差 0.00012 0.00037 グラフを見てみると、私たちのポートフォリオの変動は日経平均と多少連動しているが、振れ幅 は小さいということが見て取れる。以上のような日経平均との相関が弱く、リスクの変動幅も小さ いという結果から、私たちの作成したポートフォリオはローリスクであり、景気の動向による影響を 受けにくい性質があるのではないかと結論づける。 では、なぜこのような特徴を持ったのだろうか。投資家のタイプはリスク回避者、リスク中立者、 リスク愛好家の 3 つのタイプに分けられる。現代のポートフォリオ理論ではすべての投資家はリス ク回避者であるということを仮定しており、ほとんどの投資家はリターンが同じであればリスクの低 いほうを選ぶとされている。これは、第二章第一節で調査した投資家たちの大半に当てはまること でもある。これらのことから、このポートフォリオが「ローリスクかつ景気の動向に左右されない」と いう性質を持ったのは、投資家たちのリスク回避的な思考が集約されたポートフォリオだからなの ではないかと考察する。
  • 26. 26 / 30 第五章 ヒアリング調査内容 質問内容 ・競争戦略について ・ESG についての考え方 ・企業名 アイカ工業株式会社 ・メールによる取材 ・戦略について 建築用接着剤などの化成品、建装材、住器建材を取り扱っている。独自の「化学合成技術」と 「積層技術」で、不燃機能を持つ壁面材などの製品を開発。最近では海外の接着剤会社買収など で海外売上比率に重点をおいている。 ・ESG について E(環境)→ 2002 年度から本格的に co2 削減に着手。2011 年に温室効果ガス排出削減(売上原 単位を前年比3%削減し、2020年度に2005年度売上原単位値の25%削減)の中長期目標を決定。 S(社会)→ コンテストとセミナーを開催している。セミナーでは年に数回、建築家やデザイナーを 講師として招待し、デザインセミナーを開催している。場所は札幌や金沢、広島、福岡など全国の 地方都市。無料。地方都市ということで、なかなか講演会の少ない地域のため毎回好評。コンテ ストではデザインコンテストや施行例コンテストを開催している。 G(企業統治)→ コーポレートガバナンスを最重要課題としている。具体的には、監査役制度の 導入、取締役会を月 1 回開催、2008 年 4 月から内部統制委員会を設置し、財務報告の信頼性向 上を図る。 ・企業名 日本化薬株式会社 ・メールによる取材 ・ESG について E(環境)→ 2011 年度から 2020 年度までの中期環境目標達成に向けた取り組みを実施してい る。 S(社会)→ 2015 年 2 月、「リウマチら・ら・ら」はリウマチ患者様のための情報提供サイトとして公 開。同年 4 月には IBD の患者様のための IBD-INFO も公開。他にもピンクリボン活動や LRI への 支援なども行っている。 G(企業統治)→ 2005 年 8 月から、経営の「意思決定・監督機能」と「業務執行機能」の役割を明 確に分離し、適切な意思決定と迅速な業務執行を行っている。また、経営責任および執行責任の 明確化のため、取締役と執行役員の任期を 1 年としている。さらに、2013 年 6 月から社外取締役 を選任した。
  • 27. 27 / 30 ・企業名 ライト工業株式会社 ・訪問取材 インタビューの方々 [取締役 経営企画本部長] 西 誠 様 [経営企画部 担当部長] 橋本 貴宏 様 [経営企画部 グループ長] 平戸 聡一 様 2016 年 12 月 14 日、非財務情報(CSR,ESG)についての定性情報を集める目的としてライト工業 本社を訪問した。おそらく、多くの大学生が建設業界は「汚い」「つらい現場だ」というイメージを持 っているのではないか。しかし、経営陣の方々からは、お話をお伺いする中で仕事に対するやり がい、熱い使命感を感じ取ることが出来た。 ・業務内容について 「全国 50 万か所に今後地すべりが起きる可能性があります。私たちはそれを防止・復旧すること を主な事業内容としております。建物の新設よりも防災事業がメインです。事業内容自体が社会 貢献に近いといえます。」 「自然災害が起きたとき、私たちは自衛隊や消防の方々と同じように被災地に向かいます。災害 は私たちが食い止めるのだ、という使命感を常に持っております。」 他の建設企業との差別化戦略については、耐震補強のための液体化技術開発力により差別化し ているとのことでした。 ・CSR 活動について 「地域の保育所とつながるお絵かきの展示や六甲の防災工事の現場説明会、工場見学開催など に取り組んでおります。このような活動は短期的には企業利益にはプラスにはなっていません、 むしろ押し下げてしまうかもしれません。私たちは建設業のイメージを変えたいと考えております。 たとえば、工場見学を通して、学生の皆さんに建設業の魅力をお伝えすることで将来建設業界に 就職したいという動機づけになります。長期的には企業利益にプラスになると考えて、こういった 活動に取り組んでいる次第であります。」 ・ESG について E(環境)→環境方針として、①地域環境の維持・向上②温暖化防止③持続的発展が可能な循環 型の構築を掲げる。そのために、環境緑化・土壌汚染対策・農地除染技術の開発により環境保護 活動に取り組む。 S(社会)→事業活動を通じて地域社会との協調を図り、地域の自治体、学校、NPO などのステー クホルダー との対話を通じて、各事業所における地域社会とのコミュニケーション、学会や教育 機関への人的貢献などを通して未来への人材育成と地域の発展に貢献する。 G(企業統治)→経営基本方針である「顧客、株主、社員をはじめ関係するすべての人々の繁栄を 図る」を実現する。取締役会は 9 名の取締役(うち社外取締役 2 名) で構成し、原則として毎月 1 回の取締役会と必要に応じて臨時取締役会を開催し、経営の重要事項についての意思決定を行 うとともに、経営の監視・監督機関として、各取締役の職務執行の状況の監督を行う。
  • 28. 28 / 30 第六章 日経 stock リーグを通して学んだこと 今、世界では個人投資家が増加しつつある。第一章で述べたように、個人投資家が増えること は経済にとっては良い事である。しかし、企業に投資したからといえども投資した企業の業績が伸 びなければ意味がない。さらに、現代の投資家たちはリスク回避型であるため、一度損をして株 式投資の印象が悪くなると個人投資家の減少につながる可能性もある。そこで、私たちは個人投 資家が「社会が本当に必要としている製品・サービスを提供する企業」を見極めるための手助け になるべく、ことわざというツールを使った企業の選定方法を提案した。 このテーマで活動をしている中で、「ことわざ」と「投資家の信念」は全く関係のないようで実は似 ている部分があるのではないかと感じた。まず、ことわざは日常生活で人々が体験していることか ら作られた教訓であり、投資家の信念は過去の自分ないし他の投資家の成功例に基づいて築き 上げられたものである。つまり両者は過去の経験に基づいた、「成功する、または失敗しない」た めの教訓となっている。そこで、私たちの作成したポートフォリオがローリスクになった理由の一つ として、第四章第三節では「投資家たちのリスク回避的な思考が集約されたポートフォリオだから ではないか」と結論付けたが、もう二つ理由が考えられる。一つ目は特定のニッチ分野で高シェア を誇る企業ということ、つまり「社会が本当に必要としている製品・サービスを提供する企業」であ ったということである。二つ目は、感覚的な話になるのだが人間の教訓と投資家の教訓両方を併 せ持っていることからより失敗しにくい、すなわちリスクが低いポートフォリオになったとも推測でき るのではないか。 しかし、本研究の課題もまた、「投資家の信念」と「ことわざ」にあると感じている。何かというと、 「投資家の信念や手法からことわざを導く」→「導いたことわざを具体的な指標に置換」というプロ セスにおいては、どうしても主観的な判断が入ってしまうという点である。例えば、今回私たちは投 資家の信念からことわざを導いたが、最終的に考えていることは投資家本人しかわからないので ある。また、今回私たちは第三章で述べた5つのことわざを選出したが、その投資家の信念の解 釈の仕方も人それぞれであり、それに伴い導かれることわざも変わっていくだろう。さらに、世界に は 43000 種類ものことわざがあるといわれており、日本国内のことわざはそのうちわずか 700 種 類前後である。今回私たちは国によってライフスタイルや文化・風土が異なるという理由から国内 のことわざに限定し調査をしたが、日本やアメリカだけでなく欧米やアジア諸国など、世界中のこ とわざに目を向けてみると、今回導いたことわざ以上に投資家たちの信念とフィットするものが出 てくるかもしれない。このように、投資家の信念をことわざに置き換えるというアプローチは客観的 な判断が重要であり、考える余地はまだまだありそうである。 現在、銀行を筆頭に金融機関の力は弱まっている。また、価値観の変化から主要な資金調達方 法が銀行から株式市場へ変化している。つまり、今後の日本経済を支えるのは他の誰でもない投 資家であると言っても過言ではない。「社会が本当に必要としている製品・サービスを提供する企
  • 30. 30 / 30 第七章 参考文献 ・ジョージ・ソロス(2008 年) 「超バブル崩壊=悪夢のシナリオ」、 講談社。 ・澤上 篤人(2012 年) 「金融の本領‐長期投資の精神と価値ある人生について」、中央経済社。 ・松田 修一(2006 年) 「会社の読み方(ビジネス・ゼミナール)」、日本経済新聞社。 ・宮宇地 俊岳(2010 年 6 月) 「企業分析における経営戦略分析」、Graduate School of Management, Kyoto University。 ・Porter, M. E.(1980) 「Competitive Strategy」 The Free Press. (土岐 坤, 服部 照夫, 中辻 万治 翻訳『競争の戦略』,ダイヤモンド社,1982 年) ・山本 祐樹(2010 年) 「事業ポートフォリオの包括的評価 -統計モデルを用いた分析-」、日本ア ナリスト協会。 ・北岡 孝義・高橋 青天・矢野順二(2008 年) 「Eviews で学ぶ実証分析入門 応用編」、日本評論 社。 ・向後千春・富永敦子(2009 年) 「統計学がわかる 回帰分析・因子分析編」、株式会社技術評論 社。 ・ジャック・D. シュワッガー(2014 年) 「マーケットの魔術師 エッセンシャル版--投資で勝つ 23 の 教え」、ダイヤモンド社。 ・枇々木 規雄・伊理 正夫・西田 俊夫・森村 英典・刀根 薫・長谷川 利治(2001 年 3 月)「金融 工学と最適化(経営科学のニューフロンティア)」、朝倉書店。 ・故事ことわざ辞典 HP http://kotowaza-allguide.com/ ・Yahoo!ファイナンス HP http://finance.yahoo.co.jp/ ・藤倉化成株式会社 HP http://www.fkkasei.co.jp/ ・日本化薬株式会社 HP http://www.nipponkayaku.co.jp/ ・ライト工業株式会社 HP https://www.raito.co.jp/ ・株式会社オーテック HP http://www.o-tec.co.jp/ ・日東紡績株式会社 HP http://www.nittobo.co.jp/ ・アイカ工業株式会社 HP http://www.aica.co.jp/ ・株式会社 MARUWA HP http://www.maruwa-g.com/ ・株式会社松風 HP https://www.shofu.co.jp/ ・オーエスジー株式会社 HP http://www.osg.co.jp/