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組織を目的に導くリーダーシップ
工業経営⑫
リーダーシップについての神話
• リーダーシップは生まれながらのものであり、つくられるもので
はない。
• リーダーシップは階層的なものであり、リーダーとみなされるた
めには公的な地位が必要である。
• 有能なリーダーになるためには、カリスマ性が必要である。
• 人々を導く標準的な方法は1つである。
• 有能なリーダーになるためには常識さえあればいい。
リーダーシップに関する研究成果はどうやら異なる…
リーダーシップについての神話
• リーダーシップはつくられるものであり、生まれながらのものではない。
• 今日の動的な組織において、リーダーシップはどの階層でも起こる。
• カリスマ性はリーダーシップの必要条件ではない。
• 組織や集団を動かすための唯一正しい方法はない。
• リーダーやリーダーシップ研究者のなかには、マネジメントとリーダーシップ
のプロセスを区別することは重要であると信じる者がいる。
• リーダーシップは教えることができる学問分野である。
リーダーシップの捉え方の変化
伝統的な捉え方 現在の捉え方
安定性,確実性,制御可能,
話す,地域 or グローバル,
階級的,金と実利,
金で動く,大学組織の各部門,
伝授する,教室内で学ぶ,説明,
弱みの改善,個人のあら探し,
受け取る(receiving),保護,競争,
制限を課す,批判的分析,
タイムマネジメント / バランス,
行動指針の設定
変化 / リスク,不確実性,カオス,
聴く,地域 and グローバル,
クモの巣状,価値とビジョン,
魂で動く,学びのコミュニティ,
学習する,どこでも学べる,探求,
強みの強化,個人の良いとこ探し,
内省(reflecting),繋がり,協同,
期待を課す,批判的思考,
マインドフルネス,
敏捷さ
• Luthans and Slocum(2004)
「これまでになく経済的,技術的,社会政治的,そして倫理・道徳的に変化の
激しい時代に直面している今,リーダーシップに関する新しい理論,新しい
実践,そしてシンプルで新しい考え方が必要」
リーダーシップの捉え方の変化
• 組織構造の変化
リーダーシップの捉え方が変わった
• 1970年代以降,互恵的リーダーシップ論と呼ばれるリーダーとフォロワー間の
関係的または互恵的な特性に焦点を合わせた理論が注目される。
ex.)サーヴァント・リーダーシップ,複雑性リーダーシップ理論 など
• 複雑性リーダーシップ理論の考え方
リーダーシップ=正式な地位にあるかどうかに関係ない一時的事象
→ 組織に関わる全ての人々のダイナミックな相互作用がカギ
• 適応リーダーシップ理論の考え方
→ リーダーシップは集団のメンバーが相互作用により適応した成果を生み
出した時に起こる。
• メンバー間でどのような関係性が築けているのかが重要になる。
→ 組織に参加する個人がいかなるリーダーシップ観を持っているか?
→ リーダーシップだけでなく,フォロワーシップも重要になる。
リーダーシップにおける関係性
• リーダーシップのプロセスでは,以下の3点が求められる。
① Knowing(知ること)あなたが知るべきことは?
あなた自身,変化はどのように生まれるか,どのように,なぜ他者は
あなたとは異なるモノの見方をするのか?
② Being(ありよう)あなたがあるべき姿は?
倫理的,原則に基づいた,正しい,開かれた,思いやりのある,
包含的である。
③ Doing(行うこと)あなたがとるべき行動は?
社会的責任に応える,一貫し,自己と一致している,コミュニティの
参加者として,自己の方針と情熱に基づいている。
関係性リーダーシップ
• 「関係性は組織における繊維であり(中略),誠実さの上に成り立つ
関係性が,組織を保つ接着剤である。」(Allen and Cherrey(2000))
• コミュニティにおけるリーダーと参加者に求められる素養
① 目的指向:ゴールあるいは活動に対し責任を持っていること。
② 包容的:個人的な見解,モノゴトへの取り組み方,スタイル,個性に
おける多様性を理解し,価値を置き,積極的に関与させる。
③ 権限付与:成功を期待しつつ,失敗やミスから学ぶことができる環境
を
構築し,他者の有意義な関与を導き出す。
④ 倫理的:より高い目的に向かうリーダーシップは本質的に倫理的。
⑤ プロセス指向:組織の成立,維持,目的の一連プロセスを図るために
他者と協同(Collaboration)する。
Process(プロセス)
Inclusive
(包容的)
Empowering
(権限付与的)
Ethical
(倫理的)
Purpose
(目的)
関係性リーダーシップ
他者や多様なモノの見方を
受け容れること
自己と他者を力づける
正しいことを行う
リーダーとメンバーが
共有するビジョン
リーダーとメンバーが変化を
達成するために協同する過程
関係性リーダーシップ
リーダーシップ
構成要素
Knowing
(知識・理解)
Being
(態度)
Doing
(スキル)
目的指向
・いかに変化が生まれるか
・変化の核となる要素
・ミッションやビジョンの役割
・共有されている価値
・共通の価値
・希望に満ちている
・献身的
・「できる」という態度
・改善することが好き
・社会的責任を全うしたい
・目標の確認
・イメージを描く
・意味付けを行う
・創造的思考
・ビジョン構築に他者を巻き込む
包容的
・自己と他者
・市民性
・枠組みと多元的現実
・相違点への寛容さ
・公平性に価値を置く
・蜘蛛の巣のような思考
・誰でも変化をもたらすことがで
きると信じる
・才能を開発する
・傾聴スキル
・連携を構築する
・定義と再定義
・礼儀正しい対話
権限付与
・権限
・いかに方針や手順が権限付与を
阻止,または促進するか
・個人の専門的技能
・コントロールは不可能
・個々人それぞれが貢献できる何かを持っ
ていると信じる
・自己尊重感
・他者の成長への関心
・他者の貢献に価値を置く
・パワーの共有に意欲を持つ
・取捨選択のスキル
・情報の共有 / 個人とチーム学習
・他者を勇気づけ肯定する
・能力育成 / セルフリーダーシップを推進
・自己再生の習慣
倫理的
・価値がどのように発達するか
・システムがどのように正義と配
慮に影響を及ぼすか
・自己と他者の価値
・倫理的な意思決定モデル
・社会的に責任的行動への専心
・立ち向かう行動
・誠実さに価値を置く
・信頼できる / 真正さ / 個性を確立する /
責任感のある / 高水準に対する期待
・自己の利益より,他者の利益を優先する
・言行一致
・信頼して任せる
・頼りになる
・勇気を持つ
・道徳心を持つ
プロセス指向
・コミュティ
・グループプロセス
・リーダーシップの関係的側面
・成果とプロセスを同等に重要と
みなす
・プロセスと成果を同等に評価する
・品質向上への努力
・システム思考を発達させる
・協同する / 内省をする
・意味生成をする
・チャレンジする
・問題に直面する
・対立する / 学習する
・フィードバックを与える(受け取る)
有能なフォロワーの条件
• 自分たちをうまくマネジメントし,
• 組織とその目的,規則,もしくは組織以外の他者に尽くし,
• 最大の影響を及ぼすために自分たちの能力を磨き,集中的に
努力し,
• 勇気があり,誠実で,信頼性が高い。
資質能力 概要
忠誠心を示す
組織への深いコミットメントを示す。
上司のビジョンと優先事項を支持する。
愛想良く反対し,個人の目標と集団の目標
を一致させる。
変化指向の環境においてうまく機能する
チェンジ・エイジェントとして働く。
機敏に動く。率いることと従うことを 流動
的に実践する。
チームにおいてうまく機能する
協同する。成果を分かち合う。
他者に対して責任を持って接する。
独立的に批判的に考える
勇気を持って異議を唱える。
主導権を取る。自己管理を実践する。
最も重要なことに対する誠実さを重んじる
信頼できる存在であり続ける。
真実を述べる。高いパフォーマンス水準を
維持する。誤りを認める。
フォロワーシップ
• フォロワーの資質能力
指揮者名 タイプ
演奏者との関わり方
(リーダーシップの発揮の仕方)
リッカルド・ムーティ
リヒャルト・シュトラウス
ヘルベルト・フォン・カラヤン
カルロス・クライバー
レナード・バーンスタイン
• イタイ・タルガム「偉大な指揮者に学ぶリーダーシップ」を見て,
オーケストラにおけるリーダーシップのあり方を類型化してみましょう
。

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