本資料は、特許庁による令和元年度バイオベンチャー企業出願動向調査報告書についてIP BASE主催の勉強会の発表に使った資料です。当職がアドバイザリーボードとして調査に関与し、種々の助言をしていたことから開催に結びついた勉強会ですので、ご興味のある方はぜひご一読下さい。

1. IP BASE 勉強会
2020/8/7
バイオベンチャー企業の
出願動向調査と
知財戦略事例紹介
⼤野総合法律事務所 パートナー 弁理⼠ 森⽥ 裕
1

2. 2
アジェンダ
• 特許庁による「令和元年度 バイオベンチャー企業出
願動向調査」
• ⽇欧⽶のベンチャー企業の統計データと傾向
• 具体的戦略事例
• 個別企業の事例
• 主要成功要因（ＫＳＦ）の考察

3. 3
特許庁による「令和元年度 バイオベンチャー企業出願動
向調査」の簡単なご紹介
本プレゼンテーションは、
上記調査からの図の抜粋を含み、
図番号は、調査資料の番号に
合わせています。
詳細を知りたいときは報告書で
確認ができます。

4. 4

5. 5
調査はベンチャー企業、市場環境、政策動向の３つの側⾯から

6. 日欧米のベンチャー企業
の統計データと傾向
6

7. 7

8. 8

9. 9
出⼝は、欧⽶はＭ＆Ａが９０％以上

10. 10
⾚字上場による資⾦調達からの急成⻑

11. 11
他国とそん⾊ないと思われる知財保護の実情

12. 12
⽇本特許庁による充実したベンチャー企業⽀援策

13. 13
⽶国で動いているエコシステムの正のスパイラル
我が国はどうか？

14. 14
シリアル起業家、ゴールからの逆算と効率的な開発、
規模の⼤きな資⾦調達
盤石な下地形成からの大きな成長

15. 15
⽇本のアカデミア段階での特許保護のありがちな失敗
保護の「型」について
ご紹介予定

16. 16
上場ベンチャー 時価総額 委員等による推薦
会社設立後１０年または上場の遅い年までが調査対象 → スタートアップ用の戦略抽出

17. 17
23社
注：時価総額としては、創薬が９割以上を占める

18. 具体的戦略事例
開発タイプと標準的出願戦略との関係
18

19. 19
開発タイプと出願戦略タイプの類型
導出する時期で類型化
モダリティで類型化 市場開拓法で類型化

20. 20
導出モデルによる類型化
⾃社開発型、早期シーズ導出型、プラットフォーム型
知財保護
（特許またはノウハウ）
創薬⽀援技術 → 導出
リードまで⾃社開発 → 導出
製品まで⾃社開発
他企業で開発
⼜は共同研究

21. 21
開発タイプと出願戦略タイプの類型
導出する時期で類型化
モダリティで類型化 市場開拓法で類型化

22. 22
種々な横断的な技術・特許が必要、
特許化に加えてライセンス戦略も重要
物質特許中⼼のLCM戦略
物質最適化→⽤途→製法→製剤→⽤量⽤法のLCMへ
ナノ粒⼦化・ベクター
抗体や核酸の⾻格・具体的成分

23. 23
低分⼦も抗体も最初は広く、その後狭く権利化
広範な誘導体合成と
広範な特許
最適化化合物の特許 抗体の結合特性
最適化した結合特性・
抗体のアミノ酸
広い特許から狭い特許への流れ

24. 24
開発タイプと出願戦略タイプの類型
導出する時期で類型化
モダリティで類型化 市場開拓型で類型化

25. 25
プラットフォームを保護できるかが分かれ⽬
特許⼜はノウハウで
基盤技術の独占
誰よりも早く物質を得て、
得られた物質を個別に特許
（⼤量の特許が⽣まれる）
得られた物質は、
個別に特許保護可。
※⾃ら対応しても
導出先で対応してもよい

26. 26
開発タイプと出願戦略タイプの類型
導出する時期で類型化
モダリティで類型化 市場開拓法で類型化

27. 27
市場を広げるか、性能を改善するか
⽤途を広げ、広がる市場に向けて
技術開発し、特許を取得する類型
性能アップ等に向けて技術開発
し、特許を取得する類型

28. 28
調査報告書の概要版で要チェック
（抜粋）

29. 医薬モダリティと
出願国の傾向
29

30. 30
⽇欧⽶を中⼼とした各国展開の状況
⽇本出願⼜は⽶国仮出願など
↓ ＰＣＴ出願
↓ 各国移⾏（本スライドはここの出願国選定の話）
最重要

31. 31
特許のタイプと出願国との関係性
物質特許
製法特許
単純⽅法特許（例：スクリーニング、ゲノム編集、診断、検査等）

32. 32
医薬モダリティ毎に出願国の傾向が異なる
バイオ医薬品は先進国中⼼、低分⼦は発展途上国含め広く

33. 個別企業の事例紹介
低分子、抗体、核酸をピックアップ
33

34. 34
エピゲノムに作⽤する低分⼦化合物

35. 35
３００程度の誘導体合成し、
関連化合物を広く権利化。
97．LSD1活性の阻害剤
（演者分析）
現在は活性の３段階評価（A〜Ｃ）
具体的な測定値は秘匿
→ 最適化合物がどれか分からない
必要以上の情報を与えない
98．KRAS G12Cの阻害剤

36. 36
⽇欧⽶5割

37. 37
物質特許が中⼼であり、⽤途特許も出願

38. 38
ラクダ抗体のArgenx（⼩さくて安定）

39. 39
ラクダ抗体で資⾦調達、ヒト化ラクダ抗体で共同開発開始
1 2
ヒト化抗体
ラクダのモノクローナル抗体
ラクダ抗体プラットフォームの特許化
3
製造

40. 40
ラクダ抗体プラットフォームで特許出願を固めることを徹底
種間交差性を有するラクダ抗体の製造⽅法
・モデル動物の抗原に結合→⾮臨床試験可
・ヒトの抗原に結合→臨床試験・実⽤化可
ラクダに似た抗原に対しても
抗体ができる！
ヒト化ラクダ抗体
ヒト-ラクダキメラ抗体
ラクダのモノクローナル抗体

41. 41
先進国中⼼の権利化
⽇欧⽶5.5割

42. 42
ほぼ物質特許

43. 43
商標による商品や役務の保護

44. 44
RNAiによる核酸医薬のAlnylam

45. 45
RNAi基本特許はアカデミア
→ ライセンスイン
RNAの基本⾻格の出願
（核酸安定化技術）
具体的医薬成分の出願
2014年Onpattro
がFDA承認。

46. 46
Onpattro（遺伝性のトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬）
RNAの安定化修飾
北⽶・欧州
先進国を中⼼に
展開国多数
(製薬会社との連携
による資⾦的余裕)

47. 47
基本⾻格の改良
（安定化技術）
具体的医薬成分
核酸DDS
（脂質粒⼦）
RNAの基本特許は
アカデミアから導⼊

48. 48
ライセンスイン
⾃社出願
Onpattroのオレンジブック収載特許
核酸安定化技術の⼀部を
Ionis（競合企業）から
ライセンスイン
脂質関係は、Arbutus Bio
（他企業）からライセンス
イン
基本特許は、アカデミア
からライセンスイン
トレンスサイレチンdsRNA
トランスサイレチン
dsRNAは⾃社特許
（塩基配列限定）
発表者作成
資料
まとめる⼒!！
成し遂げる⼒！

49. 49
標的遺伝⼦ごとに多数の出願ポートフォリオ
創
薬
へ
の
展
開
技
術
改
良

50. 50
先進国中⼼の権利化
⽇欧⽶6割

51. 51
ほぼ物質特許

52. 52
開発クオリティーや開発技術を商標保護

53. ５つの主要成功要因ＫＳＦ
53

54. 54
５つの主要成功要因（ＫＦＳ）
特許による権利⾏使が難しい技術分野では秘匿が有益。
※ 製造⽅法・スクリーニング⽅法等々。

55. 55
競合となる特許を踏まえながらの⾃社の特許戦略構築
特許の抜け道を通り抜ける。他社を先回りして封じる。
4

56. 56
技術動向に合わせた分割（継続）出願戦略の有効性
・分割（継続）出願は、完全な複製の出願であり、原出願の出願⽇の利益を受ける。
・特許化後は、権利範囲を広げることができない制約が存在。
・分割（継続）出願をしておき、原出願の権利化後の技術動向にあわせて権利範囲を変える。
原出願は初期化因⼦
のスクリーニング系
の特許として成⽴
(reporter assay系)
iPS細胞の製造技術においてOct4が
必要であることが明らかになる
分割（継続） 分割（継続）
分割（継続）
分割（継続）
演者注：「バイオ分野のスタートアップのための新しい特許戦略」、森田裕著、パテント、Vol. 72、No. 1、2019
11件の分割出願でiPS細胞
製造技術を権利化し、
Fate Ther.に独占ライセンス。

57. 57
資料p43

58. ご清聴ありがとうございました
58