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ベンチャー白書2016
ベンチャービジネスに関する年次報告
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
ベンチャーニュース特別版
ベンチャー白書 2016
ベンチャービジネスに関する年次報告
2016 年 11 月
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
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ベンチャーニュース
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冊子版
分
析
編
日本の VC による投資の動向 ● ●
海外の VC による投資の動向 ● ●
VB と大企業との協働 ● ●
VB 向けアンケート調査 ● ●
コラム ● ●
デ
ー
タ
VC 投資動向調査 ● ●
VC 等ファンド状況調査 ● ●
付
録 政府・関連団体のベンチャー支援 ● ●
● : 含まれていることを示す
VC : ベンチャーキャピタル
VB : ベンチャー企業
ベンチャーニュース : 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)の HP
にて無償で発信しているニュースレター
発行スケジュール
発行日 媒体 発行場所
電子版 2016 年 10 月 3 日 PDF
VEC の HP
コンテンツ販売サイト
データ提供先様サイト
ベンチャーニュース特別版
(このファイル)
2016 年 11 月 2 日 PDF VEC の HP
冊子版 2016 年 11 月 28 日 紙製本
全国の書店
オンライン書店
目次
ベンチャー白書 2016
海外のベンチャーキャピタルによる投資の動向
1.世界各国におけるベンチャー投資の動向
2.米国のベンチャー投資動向 I-17
- ベンチャーニュース特別版 -
各国のデータについて I-2
2015 年のファンド組成額の国際比較
(米国・欧州・中国・日本)
I-5
ベンチャー投資の国際比較(2011 ∼ 2015 年) I-4
2015 年のベンチャー投資の状況 I-17
2015 年のファンド組成状況 I-22
2015 年の Exit 状況 I-23
2016 年上半期のベンチャー投資の状況 I-27
3.欧州のベンチャー投資動向 I-39
欧州のプライベート・エクイティ投資の状況 I-40
2015 年のベンチャー投資の状況 I-41
欧州内 VC ファンドによる 2015 年の資金調達状況 I-45
2015 年の Exit 状況 I-48
2015 年のベンチャー投資の状況(国別) I-49
I-2
I-1
I-6アジアのベンチャー投資の概況①
I-8アジアのベンチャー投資の概況②
I-11中国のシード・アクセラレーター
I-14フィリピンのスタートアップ・エコシステム
I-29米国ベンチャー投資の変調
I-31株式型クラウドファンディングの幕開け
I-35シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情
I-33人気ドラマシリーズ「シリコンバレー」が風刺する
シリコンバレーのスタートアップ事情
I-50英国の巻き返し
I-51オーストリアの参戦
I-53熱きインド
I-52バンコクの春
I-55明るいベルリン
ベンチャー企業と大企業との協働
1.ベンチャー企業と大企業との協働
  ―協働をどのように進めていくか―
新興大企業と伝統的大企業…VB との向き合い方に大きな違い I-70
伝統的大企業にも大きな変化が
 …VB はイノベーションを起こす有力な選択肢の一つと認識
I-70
大企業における具体的な変化 I-76
協働相手の VB をどのように探すか I-72
おわりに
 ーイノベーション創出のために VB の担い手を増やすにはー I-84
2.仮想座談会 I-87
I-70
I-69
国際編 I-56
米国編 I-57
欧州編 I-60
データ集
I-73大企業とベンチャーのマッチングが花盛り
I-74メガバンク、ベンチャー支援の主役に フィンテックがきっかけ
I-75研究と開発の間 ―「魔の川」― をつなぐ仲介者 
I-85学び方革命
I-66ベンチャー争奪 欧州各国、起業イベントが花盛り
I-67海外で CVC、オープンイノベーションを促進
I-67増えるアフリカに挑戦する起業家 VC も意欲
I-95スマートニュースやメルカリ、大型調達
I-96VR にゲーム各社のファンドが集中
I-97有力ベンチャーキャピタル、農水産業に焦点
I-98大学系 VC が本格始動
I-99大学発ベンチャー、世界へ飛躍
I-100シェアリングエコノミー協会が発足 政府とも連動
I-101FinTech への挑戦
I-80大企業がベンチャーとともに事業作る
コーポレートアクセラレータープログラム
I-82カーブアウト、大企業の技術や人材生かす
I-77増加基調を続ける CVC 投資について留意すべきポイント
ベンチャー企業向けアンケート調査 I-103
付録
2.回答企業のプロフィール
I-105業種 I-
I-106ステージ
3.事業展開の状況
I-108海外展開の状況
I-109今後の事業計画
5.ベンチャー企業のニーズについて
I-115当面の経営ニーズ
I-116人材ニーズ
6.その他の傾向
I-117ピボットの有無
I-118何社目の起業か
7.ベンチャー企業の創出・成長のための
  政府等の政策面に関する要望
I-107ステージ × 従業員数
4.資金調達の状況
I-111直近 1 年間の資金調達状況
I-112設立から現在までの資金調達状況
I-114今後期待する資金調達元
1.2016 年調査概要 I-104
I-119
政府・関連団体のベンチャー支援 I-136
I-110起業するなら、米国? 日本?
I-122「地方創生ファンド」の現状と課題について
I-125専門的経営人材の蓄積が、創業と成長を加速させつつある
I-128ベンチャーと規制緩和
I-130ドローン規制
I-132ベンチャー創出は教育から
I-133ベンチャー企業、地方へ 地方での起業、促進の動きも
I-134ベンチャー倒産、水面下で休眠も相次ぐ
I-1
海外のベンチャーキャピタルによる投資の動向
I-2
1. 世界各国におけるベンチャー投資の動向
(1) 各国のデータについて
世界各国のベンチャー企業への投資の動向については、各国の関係組織がベンチャー投資に関
するデータを取りまとめている。本章では、米国、欧州、中国、日本の 4 地域に焦点を絞り、ベ
ンチャー投資の動向について比較する。また、米国と欧州については、NVCA(National Venture
Capital Association)および Invest Europe(旧名 EVCA : European Private Equity and Venture Capital
Association)による公表データをもとに、より詳細に解説する。
なお、各地域に関する公表資料については、下記の通り、各資料によって「ベンチャー投資」
に含まれる範囲が異なることに留意してほしい。また、日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)、
他 3 地域は暦年ベース(1 月~12 月)のデータである。
図表 2-1 各資料の「ベンチャー投資」に含まれるデータの内訳
(注 1)日本:日本での法人格を所有している VC が対象 欧州:欧州内に投資活動の拠点がある PE/VC が対象
米国/中国:詳細は不明
(注 2)a と b の 2 種類のデータが存在する(詳細は、3.欧州のベンチャー投資動向:I-39 ページ参照)。本章ではど
ちらのデータを使用しているか、各図表下に記載。
(注 3)「適格投資ラウンド」※
への投資参加、またはそれ以降の追加投資で、NVCA が調査対象とする VC 投資が満た
すべき基準を満たしているものを含む(バイアウトや現物出資ではなく現金出資など)
※募集/購入契約書、株主/投資家権利契約書、投資家適格性判断アンケートなどの法的効力を持つ文書に記載された案件への
投資
米国 欧州 中国 日本
NVCA YEARBOOK 2016
(NVCA)
2015 European Private
Equity Activity
(Invest Europe)
China VC/PE Market
Review 2015
(Zero2IPO)
ベンチャー白書2016
(VEC)
国内VC(注1)→ 国内ベンチャーへの投資 ○ ○a 注2 ○ ○
国外VC → 国内ベンチャーへの投資 ○ ○b 注2 ○ ×
国内VC(注1)→ 海外ベンチャーへの投資 × ○a 注2 × ○
政府機関による投資 ○ ○ 不明 ○
エンジェル、インキュベーター、
アクセラレーターによる投資
○注3 × × ×
「M&A」データの基準
・「売却」との区別なし
・secondary saleを含む
・マイノリティ投資でも含
まれるケースがある
「売却」の中に含む 不明 「売却」と区別している
その他 -
比較的成熟したベンチャー
企業への投資については
「グロース投資」として
データを取りまとめている
ため、「グロース投資」の
データの中には、VCから
出資を受けた企業について
も一定割合で含まれてい
る。そのため、「VC投
資」のデータについては、
実際の数字よりも小さく出
ている可能性がある。
- -
地域
データの出所
I-3
また、4 地域の比較に当たっては、各通貨の 2015 年の平均為替レートで 2011 年~2015 年のデ
ータを日本円に換算した。
地域 為替レート
米国 1 ドル=121.0 円
欧州 1 ユーロ=134.3 円
中国 1 人民元=19.4 円
I-4
(2) ベンチャー投資の国際比較(2011~2015 年)
米国、欧州、中国、日本の 4 地域におけるベンチャー企業に対する投資金額について、2011
年から 2015 年の 5 年間を比較すると、米国が群を抜いており、特に 2015 年は過去 5 年間で最高
額の 7 兆円超であった。米国に次いでベンチャー投資が活発なのは中国であり、米国と同様、2015
年は 2.5 兆円と最高額を記録している。欧州と日本については、過去 5 年間の投資金額に大きな
変化はみられず、横ばい状態が続いている。2015 年で言えば、日本のベンチャー投資の金額は、
米国の 2%にも及ばない状況である。
一方、投資先数をみると、投資金額と比例するように投資件数が伸びている中国と比べて、米
国の投資件数は過去 5 年間ほぼ横ばいである。2014 年と 2015 年を比較すると、投資金額が約 1
兆円増えているにもかかわらず、投資件数は 62 件減っていることから、2015 年は 1 件当たりの
投資金額が大きかったことがうかがえる。欧州の投資金額は米国、中国に比べて小さいが、投資
先社数は 5 年間の平均で 3000 件以上と 4 地域の中でも 2 番目に多い。したがって、欧州は 1 社
当たりの投資金額が小額であることがわかる。
図表 2-2 2015 年のベンチャー投資実行額の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
(注 1)欧州:件数ではなく、投資先「社数」を統計数字として使用
(注 2)欧州:欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)
(注 3)日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)
36,191
33,469
36,663
61,516
71,475
5,305 4,553 4,606 4,848 5,359
15,927
8,924 7,779
20,137
25,084
1,240 1,026 1,818 1,171 1,302
4,050
3,991
4,295 4,442 4,380
3,186 3,132 3,206
3,408
3,006
1,505
1,071
1,148
1,917
3,445
1,017
824
1,000 969
1,162
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
0
15,000
30,000
45,000
60,000
75,000
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(件/社)(億円)
米国(金額) 欧州(金額) 中国(金額) 日本(金額)
米国(件数) 欧州(社数) 中国(件数) 日本(件数)
I-5
(3) 2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
4 地域におけるベンチャーファンドの新規組成額について、2015 年から過去 5 年間を比較する
と、米国の組成額は 2014 年がピークとなっており、2015 年は前年よりも減少している。一方、
中国は 2012 年以降伸び悩んでいたが、2014 年から回復に転じ、2015 年は 2011 年を上回る約 3.9
兆円に達している。欧州については、過去 5 年間ほぼ横ばいである。日本は 2015 年度が 1,932
億円と伸びており、2014 年度までと比較して 2 倍程度増加している。
ファンド本数をみると、中国は 2015 年に 597 本の新規ファンドが組成されており、2014 年の
258 本と比べて 2 倍程度となっている。
図表 2-3 2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
(注)日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)
23,087
24,091
21,478
37,631
34,146
6,943
5,184
6,191
6,648
7,158
34,532
11,368
8,148
22,698
38,722
1,197
1,036 921 911
1,932
192 218
209
272
236
152
117 113 129
98
382
252
199
258
597
31 26 35 39 51
0
150
300
450
600
0
10,000
20,000
30,000
40,000
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(本)(億円)
米国(金額) 欧州(金額) 中国(金額) 日本(金額)
米国(本数) 欧州(本数) 中国(本数) 日本(本数)
I-6
近年、アジアのベンチャーブームが脚光を浴びている。中国やインドという大国だけでなく、東南アジ
アのベンチャー業界の動きも活発になってきており注目を集めている。
今回は、そもそもアジアのベンチャー業界の規模感は世界の他の地域に比べてどのぐらいの大きさなの
か、について統計データをもとに明らかにしたい。
KPMG International と CB Insights が共同で発表した、”Q4’15(2015 年第 4 四半期), Global Analysis
of Venture Funding” (2016/1/19)によると、2015 年のアジアのベンチャー投資総額は、397 億ドル
(年末時点の為替レートで約 4.7 兆円)に上り、過去最高額を記録した。しかも、これは 2011 年から 2014
年の 4 年間の投資総額の合計を超える額であり、いかに急激な成長を遂げているかが浮き彫りになってい
る(Figure1)。
Figure 1: 2011 年から 2015 年にかけてのアジアベンチャー投資トレンド
(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th
, 2016)
これを世界の他の地域と比較してみると Figure 2 の通り、アジアのベンチャー投資額は、第 1 位の北米
(742 億ドル)に続く第 2 位となっており、世界全体のベンチャー投資額(1,285 億ドル)の 30%を超
えるシェアとなっている。また、第 3 位のヨーロッパ(135 億ドル)を大きく引き離しており、その差は
実に 3 倍近くまで拡大している。
アジアのベンチャー投資の概況①
I-7
Figure2:地域別ベンチャー投資の規模比較(2015)
(KPMG International 及び CB Insights 発行の”Q4’15, Global Analysis of Venture Funding”のデータをもとに筆者作成)
興味深いのは、投資案件数で比較すると、アジアとヨーロッパの間にはあまり差がないということであ
る。これはアジアにおける 1 億ドル超のメガ投資案件が、特に 2015 年の前半に目立ったためである。
さらに、アジアのベンチャー投資額を地域・国別にブレークダウンすると(Figure3)、中国とインドの
二国が実に 90%近くを占めていることがわかる。東南アジアは 12.3 億ドル(年末時点の為替レートで約
1,450 億円)となっており、全体の 3%に過ぎないが、この額は、2015 年度の日本国内のベンチャーファ
ンド等組織の国内外ベンチャー投資総額(1,302 億円:VEC ベンチャー白書 2016)を超える数字となっ
ている。
Figure3: アジアにおけるベンチャー投資の地域・国別割合(2015)
(KPMG International 及び CB Insights 発行の”Q4’15, Global Analysis of Venture Funding”のデータをもとに筆者作成)
このように、2015 年のアジアベンチャー投資額は歴代最高を記録し、世界のベンチャー投資の中でもよ
り一層の存在感を示している。しかし、2015 年第 4 四半期(9 月〜12 月)にみられた米国のベンチャー
投資の急激なブレーキは、米国だけにとどまらず、アジアでも同じような急ブレーキの動きがみられてい
ることは注意したい。アジアでは第 3 四半期の投資額に比べて第 4 四半期は実に 32%もの落ち込みをみせ
ている。アジアベンチャー市場も、2016 年はまさに勝負の年となりそうだ。
【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.1」より転載(一部修正)】
I-8
アジアのベンチャー投資の概況①では、アジアのベンチャー投資が 2015 年に急拡大し、世界のベンチ
ャー投資の中では、北米に次ぐ第 2 位の規模となる 397 億ドル(約 4.7 兆円)を記録したことなどマクロ
的な動きを概観した。
本コラムでは、CB Insights 及び KPMG International がまとめたベンチャー投資レポート(Venture
Pulse Q4 2015)を参考に、アジアのベンチャー投資の特徴や北米との違いについて、いくつかポイント
を絞って紹介したい。
①インターネット、モバイルセクターへの偏重
アジアのベンチャー投資はインターネット及びモバイル分野への投資件数が全体の 80%と圧倒的に多
く、その他のセクターへの投資が少ない。北米では、インターネット及びモバイル分野への投資件数が全
体の 62%と半分以上を占めてはいるものの、ヘルスケア分野が 15%、インターネットやモバイル以外の
ソフトウェア分野への投資が 7%となっており、アジアに比べて多くのセクターに分散されている。 アジ
アにおける特定セクターへの投資の偏重は、アジアのベンチャー投資基盤の脆弱性を示唆していると言え
よう。
Figure 1: アジアのベンチャー投資におけるセクター比率(投資件数ベース)
(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th
, 2016)
アジアのベンチャー投資の概況②
I-9
Figure 2: 北米のベンチャー投資におけるセクター比率(投資件数ベース)
(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th
, 2016)
②メガディールへの集中
さらに、アジアにおける投資額が Top 10 の案件をみると、その合計は投資総額の 60.8%となっている。
これは北米における Top 10 案件が投資総額の 20%だけであることと対照的である。つまり、アジアでは
少数のメガディールに投資資金が集中しており 、案件が分散している北米に比べて、やはり基盤が脆弱で
あると言える。
Figure 3: アジアのベンチャー投資における Top 10 ディール(投資額ベース)
(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th
, 2016)
③CVC の投資が多い
北米ではベンチャー投資のうちコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による投資が直近で 23%と
なっているが、アジアでは 35%と、12%も高い数字を示している。北米では、 独立型ベンチャーキャピ
タルの存在が大きく歴史も長いが、アジアにおいては大企業の CVC が大きな存在感を示していることがわ
かる。アジアの CVC として存在感を示しているのは Alibaba、Tencent、Baidu、楽天などである。
I-10
CVC は親会社の方針や業績にも影響を受けやすく、かつ初期の段階で CVC から資金調達すると、その
企業の色が強くなり、以降は他ファンドからの調達が難しくなることもあり、決して安定した資金調達源
とは言えないだろう。
Figure 4: アジアのベンチャー投資における CVC の投資参加比率
(Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th
, 2016)
このように、アジアのベンチャー投資は規模こそ北米に次ぐ2位につけたものの、その中身をみると、
ベンチャー投資の基盤は未だ脆弱であると言わざるを得ない。しかし、アジアでのベンチャー投資の歴史
は北米に比べてまだ浅く、今後、時間をかけて成熟することでより安定感のある投資基盤ができていくの
ではないかと期待される。しかし、昨近噂されるシリコンバレーバブルの崩壊の影響が飛び火して、成長
しているアジアのベンチャー投資業界に冷水を浴びせるようなことがないことを願うばかりだ。
【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.2」より転載(一部修正)】
I-11
米国でブームとなったアクセラレーター設立の動きは世界中に飛び火し、中国でも数々のアクセラレー
ターが雨後の筍のように立ち上がっている。その中には中国人起業家を対象としたドメスティックなアク
セラレーターもあれば、中国市場進出の足掛かりとして参加希望する外国人起業家も対象とした、よりイ
ンターナショナルなアクセラレーターもある。
今回のコラムでは、サンフランシスコ在住の IT 起業家で、現在、中国・上海に拠点を置くアクセラレー
ターである”Chinaccelarator(中国加速)”に参加している David Collier さんの体験談インタビューをお
届けする。
David さんは英国出身のエンジニアで、ゲーム会社で CTO を務めるなどキャリアを積んだ後、サンフラ
ンシスコで RIKAI Labs というスタートアップを立ち上げ、英語学習者がチャットプラットフォームを通
してゲーム感覚で英語を習得できるユニークなチャットアプリを開発している。 中国では有数のアクセラ
レーターである Chinaccelarator の選考を通過し、2016 年 3 月から上海に滞在しながら、現地でプログ
ラムに参加している。
Chinaccelarator では、年に 2 回のバッチ(期)があり、選ばれたチームは 6%の株式比率と引き換え
に 3 万ドルの資金(転換社債の形)と起業サポートを受けられることになっている 。参加チームは上海に
最低 3〜6 ヶ月滞在し、アクセラレータープログラムに参加し、Demo Day で発表を行い、投資家と接触
をする。その過程で、現地の事業立ち上げに詳しいメンターと定期的に会ってディスカッションをしなが
ら戦略を深めていく。Chinaccelarator のウェブサイトを見ると、メンター陣は中国人だけでなく、多く
の外国人がリストアップされており、非常に国際的なプログラムであることがわかる。と同時に、現地で
の外国人の起業エコシステムの層の厚さを感じさせる。
中国のシード・アクセラレーター
I-12
以下、David さんの体験談をインタビュー形式で紹介する。
----------------
Q: まずは RIKAI Labs のコンセプトについて教えて下さい。
David: コンテントデリバリーのプラットフォームは約 7 年おきに変遷をとげており、これまで CD-ROM
からウェブへ、ウェブからスマホアプリへ、そして今まさに新たな動きとして(LINE、WhatsApp、
WeChat などの)メッセージングプラットフォームへの流れが出来つつあります。メッセージン
グプラットフォームは新たなブラウザー的な役割をするようになってきています。そして、今現
在、中国で最大のユーザーベースを抱える WeChat(日本での LINE 的存在のチャットメッセー
ジングプラットフォーム)は世界でも最も進んだメッセージングプラットフォームとなっており、
ペイメントシステムもビルトインされていて、アプリケーションがどんどん広がっています。私
たちはそこに目をつけ、この最先端のメッセージングプラットフォームをもとに、まずは手始め
に、英語学習のコンテンツをデリバリーするアプリケーションを開発しています。Chatbots、人
工知能、ゲームなどのメカニズムを取り入れて、新たなユーザーエクスペリエンスを開発してい
ます。
(Source: RIKAI Labs 提供)
Q: 中国のアクセラレーターに参加しようと思ったきっかけは?
David: 世界最大の英語学習者を抱える中国市場のマーケットの大きさ、そして世界で最も進んだ
WeChat プラットフォームがあることが中国に目をつけた理由ですが、ここ中国で外国人として
事業を展開するにあたり、現地のアクセラレーターに参加することは事業開発のための良い足掛
かりになると思ったからです。特に Chinaccelarator は外国人起業家を積極的に受け入れ、現地
で事業をする基盤作りを支援する環境を提供しているため、このアクセラレーターに参加するこ
とを決めました。
Q: どのぐらいの割合で外国人起業家が参加していますか? どのような国から来ていますか?
David: いま私が参加しているバッチには 12 のチームが参加していますが、そのうち半分が外国人のチー
ムですね。アメリカの他に、アルゼンチンとかメキシコなど様々です。あとは台湾とか香港から
来る人たちですね。皆、中国市場進出の足掛かりとして参加しています。
I-13
Q: 実際参加してみてどういう印象ですか? 良い面と悪い面は?
David: Co-Working Space を提供されていて、アメリカの施設などと比べても遜色ない充実した施設環
境ですね。スタッフも皆英語が話せる人たちです。来た当初は開発タスクで忙しくてオフィスに
缶詰になって作業していましたが、少しずつ現地のコンテントパートナーを模索したり、リーガ
ルの専門家と話をしたりと事業面の方に時間を割くようにしています。中国で外国人が事業をす
るには色々な規制があって、やはりこういうことは現地の専門家のサポートが必要なので、アク
セラレーターのようなサポートインフラは重要ですね。
悪い面としては、中国では規制のために Google とか GitHub などの欧米系のサービスがほとん
どアクセスできないこと! 米国にいた時と同じ環境でスムーズに開発できないのはちょっとイ
ライラしますね。
Q: どのような内容のスタートアップが多いですか?
David: かなり多様で、ソフトウェア系だけではなくて、ハードウェア系のスタートアップも多いですよ。
Q: アクセラレーターというと投資家とのコネクション作りが一つの機能ですが、実際に外国人チームに投
資する投資家もいますか?
David: 外国人が中国で事業をする場合、中国国内で信頼のできる中国人パートナーと共同で法人を設立
するか、WOFE(外資独資企業)を作るかなど色々と考慮しなければならない複雑な点がありま
すが、そのようなことをちゃんと理解した投資家とつながることができます。
Q: アクセラレータープログラムが終了した後はどうする予定ですか?
David: 中国と米国を行き来しながら事業を展開していく予定です。シリコンバレーの最新のテクノロジ
ーを中国の巨大市場に適用することで、大きな事業機会を掴んでいきたいです。実際、シリコン
バレーで学んできたリアルタイムテクノロジーの多くは WeChat プラットフォームに上手く適用
できており親和性を感じています。
Q: シリコンバレーではいつバブルが弾けるかと話題になっていますが、上海のスタートアップ業界はどん
な様子ですか?
David: うーん、まあバブルが弾けるとかそういう話は過去数年にわたり言われてきていることだし、中
国が本格的にバブルが弾けたら米国よりももっと大きな影響になるとみんなわかっているけど、
起業家はとにかく目の前のことに専念するしかないから、心配していてもしょうがないね。
----------------
David さんのインタビューを通して、中国では外国人の起業家やメンター人材のエコシステムも広がり
をみせていることがわかった。日本でも今後、起業エコシステムをより一層盛り上げていくには、日本人
だけではなく外国人起業家を支援する仕組みを作り、それと同時に外国人の起業サポーター(投資家、メ
ンターなど)の層も厚くしていく必要があると感じた。
【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.3」より転載(一部修正)】
I-14
先日、シリコンバレーにあるスタンフォード大学で、フィリピンのスタートアップ業界の現状について
のパネルディスカッションが開催された。近年注目される東南アジアのスタートアップ業界の中でも、毎
年 5%以上の経済成長を示し、1 億人以上の人口(世界で 3 番目に英語を話す人口が多いとされる)を誇
るフィリピンは注目を集めつつある。
現時点ではフィリピンのスタートアップ業界は先進国に比べると、まだまだ草創期といえるものの、フ
ィリピン政府は、「2020 年までに 500 社のスタートアップが総計 2 億米ドルの資金調達をして、企業価
値が合計で 20 億米ドルに達する」という非常に具体的な目標を掲げた政策ロードマップを発表するなど
積極的な動きをみせている。
スタンフォード大学のイベントでパネリストの一人だった Christopher Peralta 氏にインタビューを行
い、フィリピンのスタートアップ業界の現状と展望について話を聞いた。
Manila Valley 代表の Christopher Peralta 氏
Christopher 氏は、オーストラリア出身のフィリピン人で、Nokia の東南アジアの事業開発等に携わっ
たのち、シリコンバレーに移住をして、現在シリコンバレーとフィリピンをつなぐ起業支援活動を行って
いる。Manila Valley という新たなアクセラレーターの立ち上げに奮闘している。Christopher 氏曰く、フ
ィリピンのスタートアップのエコシステムに圧倒的に足りていないものは、リスクマネーとビジネスを立
ち上げるための知見や支援システムであるという。現在、フィリピンには 200~300 社のスタートアップ
があるとされるものの、フィリピン本拠のベンチャーキャピタルの数は KICKSTART など数えるほど。多
くのスタートアップがシンガポールなど他国のベンチャーキャピタルに資金を求めなければならない状況
が続いており、フィリピン国内での資金源の創出がエコシステム確立のためには重要だと考えている。
フィリピンのスタートアップ・エコシステム
I-15
フィリピンのスタートアップコミュニティ(Manila Valley 提供)
上記の図からもわかるように、フィリピンにもアクセラレーターやインキュベーターが新しく立ち上が
ってきていることは事実だ。Manila Valley はその中でも、シリコンバレーとのコネクションを差別化ポイ
ントとしている。先述の通りフィリピンは世界でも有数の英語大国であることからも、グローバル市場と
関わりの深い産業が多く出現している。特に、今後のフィリピン発スタートアップでグローバルに展開で
きる可能性を秘めた業界として以下を挙げている。
●アウトソーシングビジネス:世界有数の英語大国であることからも、かねてからアウトソーシングビ
ジネスは非常に活発であったが、今後スタートアップによりさらなるイノベーションが起こることが
期待されている。今後の一つのトレンドは先進国向けの遠隔医療。
●ゲーム:フィリピンはゲーム大国と言われており、3,000 万人がゲームを楽しみ、そのうち 40%が課
金を厭わないという。フィリピン発のゲーム会社はそのまま海外に進出できる基盤を備えている。
●フィンテック:国外で勤労するフィリピン労働者は現在 240 万人とも言われており、その多くが母国
に送金を行っている。海外送金の分野でイノベーションを起こすフィンテックスタートアップの出現
を期待。
●IoT:フィリピンは携帯保有率が人口の 113%とも言われており、通信業界が発達している。今世界
中で注目されている IoT の分野でも試験的マーケットとしてリードしていく素地を持っている。
I-16
このようなグローバル経済と連携した分野のフィリピン発スタートアップをシリコンバレーと繋げるこ
とで成長を後押しすることが Christopher 氏の狙いである。現在は、シリコンバレーとマニラを行き来し
ながら、フィリピンで優秀な起業家を発掘し、シード資金を提供し支援体制を整えてから、実際にシリコ
ンバレーに招待して、シリコンバレーのエコシステムを活用しながらグローバルな事業開発への支援を行
っている。現在はまだ立ち上がったばかりのため、選りすぐりの数社の支援に専念しているが、将来的に
はよりオープンなアクセラレータープログラムを企画・運営したいと考えているとのこと。
Christopher 氏は、フィリピン発スタートアップが日本の企業や投資家と連携する機会は多いとみてお
り、今後積極的な連携を目指している。
【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.4」より転載(一部修正)】
I-17
2. 米国のベンチャー投資動向
次に、米国のベンチャー投資の動向について、NVCA の公表データをもとに詳しく解説する。
NVCAYEARBOOK 2016 によれば、2015 年時点におけるベンチャーキャピタル(VC)の数は 798
社、ファンド数は 1,224 本であった。同レポートによれば、10 億ドル以上を運用する大型 VC は
全体の 4.5%(36 社)である一方、2,500 万ドル以下の運用に留まっている VC は 330 社であり、
全体の 41%を占める。
VC の所在地はカリフォルニア州に集中しており、2015 年末時点で VC 全体の運用額の 55%
を運用している(2014 年は 54%)。
図表 2-4 米国における VC 社数とファンド本数の推移
1995 2005 2014 2015
既存 VC 425 1,009 803 798
既存ファンド 688 1,764 1,206 1,224
(1) 2015 年のベンチャー投資の状況
① VC 投資金額・件数
2015 年の投資金額は総額 590.7 億ドルであった。この金額は 2000 年以降最高額であり、NVCA
の記録上においても 2 番目に多い金額である。しかし、投資件数は 4,380 件(3,709 社)であり、
前年の 4,442 件よりもやや減少している。NVCA による 2016 年 1 月 15 日付公表の四半期レポー
トによれば、2015 年のメガディール(1 億ドル以上の投資案件)は 74 件であり、2014 年の 50
件と比べると 24 件増えている。したがって、2015 年における投資金額の増加の一因として、メ
ガディールの増加による影響が考えられる。
図表 2-5 VC 投資金額および投資先数の推移
299.1
276.6
303.0
508.4
590.7
4,050 3,991
4,295
4,442 4,380
3,383 3,372
3,568
3,728
3,709
1,359 1,335 1,437 1,441 1,444
0
700
1,400
2,100
2,800
3,500
4,200
4,900
0
100
200
300
400
500
600
700
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(件 / 社)(億ドル)
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
投資金額 投資件数 投資先社数 新規資金調達社数
I-18
② 業種別内訳
2015 年の VC 投資金額 590.7 億ドルを業種別にみると、もっとも高いシェアを誇っているのは
約 4 割を占める「ソフトウェア」であり、ここ数年はトップを維持し続けている。次いで「バイ
オテクノロジー」が 1 割超、「消費財/サービス」「メディア/娯楽」がそれぞれ約 1 割弱の順とな
っている。
投資件数については、投資金額のランキングと変わらず、トップは「ソフトウェア」が 4 割程
度を占め、次いで「バイオテクノロジー」が 1 割超となっている。
図表 2-6 2015 年業種別投資金額
*その他:小売/流通 1.7%、ヘルスケア 1.4%、半導体 1.3%、コンピュータ/周辺機器 1.2%、通信 1.2%、
事業用製品/サービス 1.0%、エレクトロニクス 0.7%、ネットワーク/機器 0.5%、その他 0.1%
図表 2-7 2015 年業種別投資件数
*その他:ヘルスケア 1.8%、半導体 1.8%、エレクトロニクス 1.5%、コンピュータ/周辺機器 1.3%、小売/流通 1.3%、
通信 1.2%、事業用製品/サービス 1.1%、ネットワーク/機器 0.7%、その他 0.6%
ソフトウェア
39.8%
バイオテクノロジー
12.9%
消費財/サービス
8.2%
メディア/娯楽
8.0%
ITサービス
6.5%
金融
5.4%
工業/エネルギー
5.4%
医療機器
4.7%
その他*
9.2%
総投資金額
590.7億ドル
ソフトウェア
40.4%
バイオテクノロジー
10.8%
メディア/娯楽
9.6%
ITサービス
7.7%
医療機器
7.0%
工業/エネルギー
5.9%
消費財/サービス
5.5%
金融
1.9%
その他*
11.3%
総投資件数
4,380件
I-19
③ ステージ別内訳
2015 年の投資金額をステージ別でみると、「エクスパンション」がもっとも多く、全体の 37.5%
を占めている。次に「アーリー」33.8%、「レーター」27.0%と続いており、「シード」は全体の
2%にも満たない。
一方、2015 年の投資件数をみると、「アーリー」が全体の 50.7%を占めており、「シード」と
合わせると 55%に及ぶ。過去 5 年間において、1 件当たりの投資金額は小規模ながら、数多くの
若いベンチャー企業に投資する傾向がうかがえる。
投資金額および投資件数全体に対して各ステージが占める割合の傾向は、前年から大きな変化
はみられない。
図表 2-8 ステージ別投資金額の推移
図表 2-9 ステージ別投資件数の推移
11.2 8.5 10.3 8.3 10.0
91.1 85.3 104.4
161.4
199.6
99.3 95.9
99.2
214.5
221.7
97.5 86.9
89.1
124.3
159.4
0
100
200
300
400
500
600
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(億ドル)
シード アーリー エクスパンション レーター
(276.6)
(493.1
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)( )の数値は全ステージの合計金額
(299.1) (303.0)
(508.5)
(590.7)
27.0%
37.5%
33.8%
1.7%
436 304 243 207 186
1,669 1,826 2,203 2,206 2,219
1,025 1,007
1,034 1,162 1,146
920 854
815 867 829
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(件)
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
シード アーリー エクスパンション レーター
( )の数値は全ステージの合計件数
(4,050) (3,991)
(4,295) (4,442) (4,380)
18.9%
26.2%
50.7%
4.2%
I-20
④ 地域別内訳
2015 年の VC 投資について投資先企業の所在地別に焦点を絞ると、2015 年の全米 VC 総投資
金額 590.7 億ドルのうち、トップ 5 州で総投資金額の 81.6%、総投資件数の 67.2%を占めている。
カリフォルニア州所在の企業への投資金額は 338.7 億ドル(1,498 社に対し 1,779 件)であり、ト
ップ 5 の総額の 7 割、全体でも 6 割近くを占めている。特にシリコンバレー地区だけで 274.2 億
ドルに及んでおり、米国における VC 総投資金額の 46%を占めている。
図表 2-10 2015 年 VC 投資金額トップ 5 州
州 社数 件数
総投資件数
に対する比率
投資金額
(億ドル)
総投資金額
に対する比率
カリフォルニア 1,498 1,779 40.6% 338.7 57.3%
(内シリコンバレー) (1,007) (23.0%) (274.2) (46.4%)
ニューヨーク 405 463 10.6% 62.5 10.6%
マサチューセッツ 350 424 9.7% 56.8 9.6%
ワシントン 100 116 2.6% 12.1 2.0%
テキサス 133 163 3.7% 11.7 2.0%
トップ5合計 2,486 2,945 67.2% 481.8 81.6%
全米合計 3,709 4,380 100.0% 590.7 100.0%
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
I-21
⑤ CVC の進出
近年、CVC(Corporate Venture Capital)によるベンチャー投資が非常に活発化しており、全米
のベンチャー投資に占める割合は増加の一途をたどっている。2015 年の CVC 投資金額は総投資
金額の 13.1%、総投資件数の 21.2%を占めており、投資金額は 2001 年以降でもっとも多い額と
なっている。
本章における CVC の定義(NVCA YEARBOOK より)
「事業会社による直接投資(CVC 部門を通さない投資)」については、以下に該当する場合、CVC 投資に含める。
a) 研究開発や市場開拓の外注ではなく、投資収益の獲得を主な目的としていることが明確である投資
b) 適格投資ラウンド※
に該当しうる投資案件への共同投資
c) 適格投資ラウンド以降の追加投資で、NVCA が調査対象とする VC 投資が満たすべき基準を満たして
いる投資(バイアウトや現物出資ではなく現金出資、など)
※募集/購入契約書、株主/投資家権利契約書、投資家適格性判断アンケートなどの法的効力を持つ文書に記載された案件への投資
図表 2-11 CVC によるベンチャー投資金額・件数
図表 2-12 CVC によるベンチャー投資金額・件数の推移(1995 年~2015 年)
(単位:億ドル)
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
VC投資金額合計 299.1 276.6 303.0 508.4 590.7
内CVC投資金額 23.1 22.6 32.2 57.6 77.1
CVC比率 7.7% 8.2% 10.6% 11.3% 13.1%
(単位:件)
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
VC投資件数合計 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380
内CVC投資件数 611 631 741 809 930
CVC比率 15.1% 15.8% 17.3% 18.2% 21.2%
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
0
300
600
900
1200
1500
1800
2100
2400
0
20
40
60
80
100
120
140
160
(件)(億ドル)
CVC関与投資金額 CVC関与投資件数
I-22
(2) 2015 年のファンド組成状況
① コミットメント金額・本数
2015 年の米国内の VC ファンドへの新規コミットメントは、236 本のファンドに対し 282.2 億
ドルであり、2014 年の 272 本 311 億ドルからやや減少した。2015 年上半期におけるコミットメ
ント金額は 2014 年の上半期と同じペースを保っていたが、2015 年下半期に勢いが落ち着いたこ
とが要因とされる。
図表 2-13 VC ファンドに対する新規コミットメント金額と本数の推移
190.8 199.1
177.5
311.0
282.2
192
218 209
272
236
0
40
80
120
160
200
240
280
0
50
100
150
200
250
300
350
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(本)(億ドル)
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
コミットメント金額 ファンド本数
I-23
② 地域別内訳
2015 年の新規コミットメント金額をファンドの本拠地別にみると、カリフォルニア州が 139
億ドル(102 本)でトップであり、全体の 49.3%と半数近くを占めている。しかし、2014 年の
62%からは約 13 ポイント減少している。カリフォルニア州に次ぐのは、66.7 億ドル(31 本)の
ニューヨーク州である。ニューヨーク州は全体の 23.6%を占めており、前年の 13%から 2 倍近
く伸びている。ニューヨーク州は過去 3 年間ベンチャー投資が着実に増加している。新規の VC
が立ち上がったり、州外の既存 VC がニューヨーク拠点を設けたりしており、ベンチャーエコシ
ステムにおけるニューヨーク州の存在感が増してきているとの報告がある。ノースカロライナ州
については、州の年金基金が North Carolina Innovation Fund に多額の投資を行ったことが影響し、
2015 年はトップ 5 に滑り込んだ。
図表 2-14 2015 年新規コミットメント金額トップ 5 州
(3) 2015 年の Exit 状況
① 概況
2015 年における VC から出資を受けた企業の IPO 社数は、2014 年の 117 社から 77 社へと約
34%減少し、金額は 155.1 億ドルから 93.8 億ドルへと約 40%も減少している。また、VC から出
資を受けた企業の 2015 年の M&A 社数は、2014 年の 472 社から 360 社へと約 24%減少した。2015
年の M&A 総額は、取引額が報告された 87 社について約 170 億ドルであったが、2014 年の約 480
億ドルと比較すると 1/3 近くにまで落ち込んでいる。
図表 2-15 米国における VC から出資を受けた企業の IPO および M&A の社数・金額の推移
139.0億ドル
49.3%
66.7億ドル
23.6%
28.2億ドル
10.0%
11.7億ドル
4.2%
4.9億ドル
1.7% 31.6億ドル
11.2%
カリフォルニア州
ニューヨーク州
マサチューセッツ州
ワシントン州
ノースカロライナ州
その他
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
274.4
40.4 23.3 20.2
98.1
49.1
70.7
117.4
7.7
19.8
80.7 104.4
213.5
110.7
155.1 93.8
800.0
251.2
119.1
82.4
234.3
197.2
242.2
307.5
149.3 123.6
177.3
242.0 226.9
169.1
481.4
169.5
238
37 24
26
81 59
67
90
7
13
67 50 48
81
117 77
379 385 364
324
403
447
482 488
417
350
525
492
477
386
472
360
0
70
140
210
280
350
420
490
560
0
100
200
300
400
500
600
700
800
2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(社数)(億ドル)
IPO時の調達金額 M&A時の取引額 IPO社数 M&A社数
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
I-24
② IPO 社数・調達額
業種別に IPO 社数のトップ 3 をみると、2015 年のトップは「バイオテクノロジー」が全 77 社
中 41 社と、2014 年に引き続き半数以上を占めている。2 番手は 2014 年と 2015 年で入れ替わっ
ており、「医療機器」が前年より社数を伸ばしている。一方、「ソフトウェア」は前年の 20 社か
ら 9 社に減っており、IPO 時の調達額も大きく減少している。
トップ 3 について、1 社当たりの IPO 時の調達額で比較すると、3 番手の「ソフトウェア」が
約 1.7 億ドルとなっており、社数は減ったものの 1 社当たりの調達額は前年と同程度となってい
る。IPO 社数トップの「バイオテクノロジー」の 1 社当たりの調達額は 1 億ドルに届いておらず、
前年と同様に、IPO した企業の多くは小・中規模企業であったことがうかがえる。
図表 2-16 VC から出資を受けた業種別 IPO 社数・調達額の前年比較
2014年 2015年
業 種 社数
調達額
(百万ドル)
1社当たり
調達額
(百万ドル)
業 種 社数
調達額
(百万ドル)
1社当たり
調達額
(百万ドル)
バイオテクノロジー 66 5,356 81.2 バイオテクノロジー 41 4,001 97.6
ソフトウェア 20 3,451 172.6 医療機器 12 892 74.3
医療機器 9 586 65.1 ソフトウェア 9 1,507 167.4
メディア/娯楽 6 730 121.7 ITサービス 3 440 146.7
ITサービス 4 428 107.0 半導体 2 866 433.0
金融 3 1,302 434.0 工業/エネルギー 2 396 198.0
消費財/サービス 2 2,538 1,269.0 コンピュータ/周辺機器 1 489 489.0
小売/流通 2 487 243.5 小売/流通 1 307 307.0
ネットワーク/機器 2 279 139.5 ヘルスケア 1 180 180.0
ヘルスケア 2 272 136.0 消費財/サービス 1 121 121.0
工業/エネルギー 1 83 83.0 通信 1 65 65.0
事業用製品/サービス 0 0 - その他 1 50 50.0
コンピュータ/周辺機器 0 0 - メディア/娯楽 1 40 40.0
エレクトロニクス 0 0 - ネットワーク/機器 1 25 25.0
その他 0 0 - 事業用製品/サービス 0 0 -
半導体 0 0 - エレクトロニクス 0 0 -
通信 0 0 - 金融 0 0 -
合計 117 15,512 132.6 合計 77 9,379 121.8
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
I-25
③ M&A 社数・取引額
業種別に 2015 年の M&A 社数のトップ 3 をみると、「ソフトウェア」が 2014 年に引き続き首
位を維持しており、2 番手の「IT サービス」とは社数、取引額ともに 5 倍以上の差をつけている。
しかしながら、「ソフトウェア」の社数は M&A が好調だった 2014 年と比較して約 11%減に留
まっているが、取引額については約 73%減と大幅に減少しており、2013 年並に戻っている。「ソ
フトウェア」の 1 社当たりの取引額をみると、2014 年は 1 億ドルを超えていたが、2015 年は 4,000
万ドルにも達していないことから、小粒の M&A が多かったことがうかがえる。
2 番手、3 番手は 2014 年と順位は入れ替わっているが、メンバーは変わらず「IT サービス」「メ
ディア/娯楽」がトップ 3 入りを果たしている。どちらの業種も前年と比較して社数は減少して
いるが、取引額をみると「メディア/娯楽」については 2 割程度増えており、1 社当たりの取引
額は前年の 2 倍となっている。
図表 2-17 VC から出資を受けた業種別 M&A 社数・取引額の前年比較
2014年 2015年
業 種 社数
取引額
(百万ドル)
1社当たり
取引額
(百万ドル)
業 種 社数
取引額
(百万ドル)
1社当たり
取引額
(百万ドル)
ソフトウェア 203 24,937 122.8 ソフトウェア 181 6,805 37.6
メディア/娯楽 59 1,960 33.2 ITサービス 34 1,114 32.8
ITサービス 55 2,112 38.4 メディア/娯楽 30 2,388 79.6
バイオテクノロジー 36 6,086 169.1 バイオテクノロジー 24 2,834 118.1
工業/エネルギー 29 766 26.4 医療機器 24 2,234 93.1
医療機器 19 2,670 140.5 工業/エネルギー 13 121 9.3
通信 15 1,665 111.0 ヘルスケア 9 462 51.3
半導体 14 787 56.2 半導体 9 462 51.3
消費財/サービス 10 3,270 327.0 消費財/サービス 8 25 3.1
事業用製品/サービス 8 4 0.5 事業用製品/サービス 7 0 0.0
小売/流通 7 1,726 246.6 エレクトロニクス 4 182 45.5
コンピュータ/周辺機器 5 1,881 376.2 金融 4 72 18.0
ネットワーク/機器 5 159 31.8 コンピュータ/周辺機器 4 16 4.0
エレクトロニクス 4 1 0.3 通信 4 0 0.0
金融 2 117 58.5 小売/流通 3 80 26.7
ヘルスケア 1 0 0.0 その他 1 87 87.0
その他 0 0 - ネットワーク/機器 1 65 65.0
合計 472 48,140 102.0 合計 360 16,947 47.1
(出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
I-26
④ 米国における IPO と M&A の社数の推移
米国における VC から出資を受けた企業の IPO と M&A の社数について、1985 年から 2015 年
までの推移を NVCA の公表データをもとに下記に示す。IPO と M&A の割合は、2000 年の IT バ
ブル崩壊を境に大きく入れ替わっていることがわかる。
図表 2-18 VC から出資を受けた企業の IPO と M&A の社数割合の推移
※M&A には「trade sale(マイノリティ投資を含む)」「secondary sale」が含まれる
この M&A の長期的な興隆については、主に以下の要因が挙げられる※
。
・2000 年の IT バブル崩壊によって株式市場が低迷したこと
・2002 年 7 月に制定されたサーベンス・オクスリー(SOX)法によって、ベンチャー企業が
IPO するために必要な費用負担が上昇したこと
・他社との市場競争が高まったことにより、ベンチャー企業にとって、ある程度の段階で買収
され短期間で企業規模を拡大させる必要性が高まったこと
※参考
岩井浩一「JOBS 法の成立と米国 IPO 市場の今後の動向」野村資本市場クォータリー 2012 年秋号
小野正人 Working Paper「米国ベンチャーキャピタルのパフォーマンスと構造変化」2010 年 11 月
http://libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-WorkingP2010-02.pdf
秦信行 「ベンチャーコミュニティを巡って「IPO 再考」連載第 47 回」THE INDEPENDENTS 2012 年 10 月号
http://ovl.jp/article/item000400
CNET JAPAN「IPO よりも M&A が選ばれる米国の事情--GCA Savvian の Todd Carter 氏」インタビュー2013 年 10 月 1 日
http://japan.cnet.com/interview/35037888/
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
(出所:NVCA YEARBOOK 2015 & 2016、VEC作成)
IPO
M&A
I-27
(4) 2016 年上半期のベンチャー投資の状況
① VC 投資金額・件数
本項「2016 年上半期のベンチャー投資の状況」における 2015 年データは、NVCA のウェブサ
イトで公表されている 2016 年 7 月時点の公表データに基づいている。したがって、(1)~(3)
で引用した「NVCAYEARBOOK 2016」のデータとは異なる場合がある。
2016 年上半期の VC 投資状況は、2015 年上半期と比較すると投資金額、投資件数ともに減少
している。
図表 2-19 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期)
② 業種別内訳
2016 年上半期の VC 投資内訳を業種別でみると、2015 年に引き続き、「ソフトウェア」の投資
金額および件数が圧倒的に多く、次いで「バイオテクノロジー」の順となっている。「ソフトウ
ェア」企業への投資は、2015 年上半期よりも投資件数では 2 割近く減っているものの、投資金
額は 130.1 億ドルから 138.9 億ドルへとやや増加している。投資金額の増加の要因として、第 1、
第 2 四半期ともにメガディール(投資金額が 1 億ドル以上の案件)の半数以上が「ソフトウェア」
企業であったことが挙げられる。
図表 2-20 業種別 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期)
2016
上半期 下半期 2015年合計 上半期
投資金額(億ドル) 310.2 288.3 598.5 279.8
投資件数(件) 2,318 2,217 4,535 1,972
( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)
2015
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
ソフトウェア 958 130.1 858 106.9 1,816 237.0 775 138.9
バイオテクノロジー 259 38.7 225 38.0 484 76.7 224 36.4
ITサービス 170 17.1 167 21.5 337 38.6 151 17.1
メディア/娯楽 213 28.4 227 24.5 440 52.9 212 16.2
金融 49 12.1 45 21.1 94 33.2 51 14.1
工業/エネルギー 140 18.6 133 13.8 273 32.4 105 11.4
医療機器 159 13.2 168 15.1 327 28.3 119 10.6
コンピュータ/周辺機器 29 2.3 31 5.0 60 7.3 25 10.0
消費財/サービス 129 32.0 122 16.6 251 48.6 110 7.9
ヘルスケア 31 2.7 44 5.8 75 8.5 40 3.5
半導体 37 2.6 46 4.6 83 7.2 31 2.8
通信 38 5.3 21 1.9 59 7.3 29 2.8
エレクトロニクス/器具 38 2.4 31 1.7 69 4.1 27 2.5
小売/流通 23 1.8 37 8.5 60 10.3 33 1.9
事業用製品/サービス 19 0.9 37 1.6 56 2.6 28 1.9
ネットワーク/機器 14 1.3 14 1.5 28 2.9 10 1.7
その他 12 0.4 11 0.2 23 0.6 2 0.1
合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8
( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)
業種
2015 2016
上半期 下半期 2015年合計 上半期
I-28
③ ステージ別内訳
2016 年上半期の投資状況をステージ別にみると、投資件数では、2015 年の上/下半期に続き、
「アーリー」がもっとも多くの割合を占めている。また、投資金額では「エクスパンション」が
5 割近くを占めている。2016 年の上半期を 2015 年の上半期と比較すると、「シード」のみ件数、
金額ともに増加していることがわかる。
図表 2-21 ステージ別 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期)
④ 地域別内訳
VC 投資金額の地域トップ 5 について、2016 年上半期と 2015 年の上半期を比較すると、2016
年上半期の「シリコンバレー」への投資は約 20 億ドル減少しており、件数も 136 件少なくなっ
ている。「シリコンバレー」以外の地域をみると、唯一「南東部」が前年同期と比べて投資金額
が 9.9 億ドルから 14.6 億ドルへと約 32%増加しているが、件数は約 25%減少している。この金
額の増加は、前述の通り(I-23 ページ参照)、ノースカロライナ州のイノベーションファンドへ
の資金投入が影響しており、単発的な増加と言える。
図表 2-22 VC 投資金額トップ 5 の地域(2015 年上半期~2016 年上半期)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
シード 78 3.0 126 7.4 204 10.3 112 11.0
アーリー 1,156 95.8 1,141 107.1 2,297 202.8 877 85.6
エクスパンション 628 126.5 548 97.0 1,176 223.6 585 125.2
レーター 456 84.9 402 76.9 858 161.8 398 58.0
年間合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8
( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)
ステージ
2015 2016
上半期 下半期 2015年合計 上半期
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
件数
投資金額
(億ドル)
シリコンバレー 734 151.5 659 127.4 1,393 278.9 598 131.0
ニューヨーク都市圏 261 38.2 262 35.4 523 73.7 260 31.4
ロサンゼルス/オレンジ郡 170 30.5 164 21.0 334 51.5 144 27.4
ニューイングランド 259 28.8 242 33.2 501 62.0 221 26.3
南東部 147 9.9 135 13.3 282 23.2 110 14.6
全地域合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8
( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成)
地域 上半期
2015 2016
上半期 下半期 2015年合計
I-29
KPMG と CB Insights が 2016 年 1 月 19 日にリリースした「Venture Pulse Q4 2015」レポートによ
ると、米国におけるベンチャー投資は 2015 年全体で 724 億ドルを記録し、これはドットコムバブル最盛
期の 2000 年の投資額(1,060 億ドル)に続く歴代 2 位の記録となった。2014 年に比べて 26%の成長
率であった。しかし、投資案件数でみると、2014 年の 5,240 件から 4,672 件へと 11%の減少をみせて
いる。これは特に年の前半においてユニコーン企業と呼ばれる、未上場だが企業価値が 10 億ドルを超える
スタートアップの資金調達合戦によって 1 案件ごとの投資額が大きかったことを示唆している。
さらに資金調達の動きを四半期でみると、変調ぶりが際立ってくる。2015 年の Q4 には Q3 から 60
億ドルも投資額が減っており、30%以上の減少率をみせている。投資案件数も 22%減少しており、これ
は 2011 年の Q4 以来ぶりの最低水準となっている。
米国ベンチャー投資の変調
I-30
また、投資ラウンドごとにトレンドをみると、Q4 ではシードラウンドへの投資比率が 3 期連続で減少
している。Q4 の全体の投資額が前期に比べて 30%減少したことを考えると、シードスタートアップへの
投資資金は 40%以上減少したことになる。つまり、新たなアイデアへの投資に急ブレーキがかかってきて
いる。
これらの市場の変調の背景には、スタートアップ企業の IPO 成績が芳しくないことに反応して「観光客」
投資家(投資信託、ヘッジファンド)が一斉に資金を引き上げようとする動きをみせていること、企業評
価額は高いものの赤字を垂れ流して自転車操業しているユニコーン企業が多数浮き彫りになってきたこと
や、「ダウンラウンド(前回のラウンドよりも評価額が下がること)」が増えてきていることなどによって、
投資家マインドが一気に冷え込み始めてきている状況がある。また、2015 年 12 月の米国の利上げによっ
て、このような状況はさらに加速されてきているようだ。
KPMG Enterprise Innovative Startups Network の Co-Leader である Brian Hughes 氏は、以下の通
り警告する。
「2015 年の Q3 までは、収入>支出のスタートアップと同様に、収入<支出のスタートアップにも潤沢
な資金が流れ込んでいた。でも今我々は分岐点に来ている。2016 年は利益等のビジネスの基礎としての
財務状況がまた本当に重要になってくるだろう。ネガティブの粗利で、毎月の純資金支出額が過剰である
にも関わらず、過大な評価がされているスタートアップは最も影響を受けるだろう」(一部意訳)
今後の市場の調整が、ソフトランディングとなるか、ハードランディングとなるか、まだ予断を許さな
い状況にある。
【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.14」より転載(一部修正)】
I-31
2012 年に米国で成立した JOBS Act (Jumpstart Our Business Startups Act: ジョブズ法)はベン
チャー企業が資金調達を行いやすくするための一連の規制緩和法案であるが、その中でも目玉の一つであ
った「株式型」クラウドファンディングが 2016 年 5 月 16 日についに解禁された。
これまでクラウドファンディングと言えば、Kickstarter や Indiegogo などのポータルサイトで「寄付
型」や「購入型」のクラウドファンディングキャンペーンは活発に行われてきたが、金融取引が絡む「株
式型」のクラウドファンディングは SEC(米国証券取引委員会)が詳細規則を策定し施行するまでは不可
能だった。今回の施行により、適格投資家に当てはまらない個人の投資家(Non-accredited investors)
もベンチャー企業に株式投資をすることが可能となり、ベンチャー企業の資金調達の可能性が飛躍的に広
がることとなった。
JOBS Act が成立してから、株式型クラウドファンディングについては約 4 年間の月日をかけて規則策
定が行われてきたが、その道のりは決して平坦ではなかった。個人投資家が対象である本件については投
資家保護をミッションとする SEC はことさら慎重にならなければならなかったのだ。
今回施行された規則には以下のルールが含まれる。
●株式型クラウドファンディングで資金調達するベンチャー企業は 12 ヶ月の間で 100 万ドル以下の資
金を調達できる。
●株式型クラウドファンディングの公募には SEC から許可を得たオンラインポータルまたは仲介業者
を使わなければならない。
●公募するベンチャー企業は米国本拠の法人でなければならない。
●特定の財務情報を開示しなければならない。調達額によっては、財務諸表は会計士の監査を受けなけ
ればならない。
●定められた報告義務に従う必要がある。
●適格投資家と非適格投資家から投資を受けることができる。投資家は収入または純資産によって投資
できる金額が制限される。(例えば、年収または純資産が 10 万ドル未満の投資家は、年収か純資産の
うち低い方の 5%までしか投資は出来ない、など)
この規則には不満の声も聞かれる。登録や報告義務が煩雑でコストがかかるにもかかわらず、最大調達
額が 100 万ドルとは少なすぎるという点がそのひとつである。コストは会社組織がどれだけ複雑かなど調
達額にもよるが、Bloomberg の記事では、例えば、100 万ドルを調達しようとしているウィスキー製造ベ
ンチャーは、4 万ドル~5 万ドルのコストがかかると想定されるほか、10 万ドルを調達しようとしている
ハワイのコーヒープランテーション会社は 1,000 ドル~2 万ドルの間のコストがかかるという例を挙げて
いる。
株式型クラウドファンディングの幕開け
I-32
Wall Street Journal(WSJ)によると、 2016 年 5 月 16 日午後の時点で自主規制機関である金融取引
業規制機構(FINRA)は 9 社のポータルを承認したとのこと。さらに 10 社の仲介業者が当局に参加する
計画を示しているとのこと。二大ポータルサイトのひとつである Kickstarter は今のところ株式クラウドフ
ァンディングの機能を追加する予定はないとのことだが、そのライバルサイトである Indiegogo は予定を
している。
また、施行初日の 2016 年 5 月 16 日午後 6 時までに 17 社のベンチャー企業が資金調達に必要な登録手
続きを完了したと WSJ は伝えている。生分解性歯ブラシのメーカーや高級宿泊施設運営会社、グルメ志向
のドーナツ販売など様々な業態の企業が名を連ねているそうだ。17 社という数は、当初想定されていた数
よりは幾分控えめな数だったようだが、今後より公に認知されていくにつれて登録数も増大していくこと
が期待される。
今回の米国での株式クラウドファンディング解禁の動きは、今後日本や諸外国でのルール策定に大きな
影響を与えることが想定される。世界中でベンチャーバブル崩壊が間近かと警鐘が鳴らされる中、今回の
動きがどのようにベンチャー業界の資金調達事情に影響を与えていくか、引き続きウォッチしていきたい。
【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.16」より転載(一部修正)】
I-33
シリコンバレーのスタートアップ事情を描写したドラマシリーズ『シリコンバレー』が話題となってい
る。米国では 2014 年から第 1 シーズンの放映が始まり、2016 年には第 3 シーズンに突入した。その間、
エミー賞を受賞するなど、作品としても評価されている。日本でも 2016 年 3 月から Hulu で第 1 シーズ
ンの放映が開始しており、話題になっている。
ドラマは起業の聖地シリコンバレーを舞台に、データ圧縮技術を武器にスタートアップを立ち上げた 5
人の若者たちの奮闘ぶりを、時にコミカルに、時にシリアスに描いている。
(Source: HBO)
Hooli という(いかにも Google を連想させるような)シリコンバレーの巨大 IT 企業に勤務する、一見
うだつの上がらないテック・オタク的風貌のリチャードが主人公。リチャードは Hooli で働く傍ら、イン
キュベーターを自称するアーリックの家でエンジニア仲間と共同生活を送りながら音楽関連サービスを開
発する秘密プロジェクトに勤しんでいた。ある日、Hooli の同僚に何気なくそのシステムを見せたところ、
このシステムの基盤となるデータ圧縮技術がとんでもなく革新的であることが露見し、Hooli の CEO の耳
に伝わる。それにより Hooli から 1000 万ドルの技術買収の話を持ちかけられるが、この技術はもっと大
きなインパクトを世界にもたらすと確信したリチャードは、投資家からの 20 万ドルで 5%の株式持ち分と
いうオファーを受け入れ、自分の会社「パイド・パイパー」を立ち上げることを決意した。
しかし、経営のケの字も分からずにはじめた技術屋リチャード。会社を登記しなければならないという
基礎的なことも分からずに投資家からもらった小切手を銀行口座に預金しようとしてしまうほどのドジぶ
り。その後、Hooli を辞めてビジネス面の支援をしてくれることになったジャレッドも加わり、5 人で七転
び八起きのスタートアップの茨の道を邁進する・・・というのが、あらすじだ。
人気ドラマシリーズ「シリコンバレー」が風刺するシリコンバレーのスタートアップ事情
I-34
(Source: HBO)
なぜこのドラマが米国で大人気かというと、まずは、シリコンバレーのテックベンチャーと彼らを取り
巻く環境が精密に描かれていること。第 3 シーズンでは、Twitter 社の元 CEO である Costolo 氏を監修ア
ドバイザーに迎え入れ、シリコンバレーのインサイダー中のインサイダーの実体験と視点を取り入れてい
るほどだ。そして、一歩引いた客観的な視点からシリコンバレーの内情を風刺しているコメディ性も受け
ている。
例えば、
●スタートアップのピッチでよく耳にする”Making the world a better place”という理想主義的な言葉
が失笑を買っているところ
●ミレニアル世代の理想主義的な若手エンジニアと、「グレイヘア系」ビジネスエクゼクティブの間のす
れ違いと亀裂
●スタートアップが注目を浴びれば浴びるほど訴訟が舞い込んでくる、アメリカの訴訟社会の様子
●ベンチャーで大儲けした起業家や投資家の桁違いの散財ぶり、でもその一方で成功しても依然として
Socially awkward(社交下手)なエンジニア・ギークたち
などなど。
エピソードの中には、近い将来のバブルの崩壊の可能性を示唆するような台詞もみられ、現実社会とリ
ンクして話題を呼んでいる。ドラマのクリエイターもインタビューの中で、「実際に撮影されてから編集を
経て放映されるまでに、3〜4 ヶ月かかるから、その間にバブルが弾けてました、なんてことにならないこ
とを祈るばかりだよ!」と苦笑している。さてさて今後のドラマの展開が楽しみである。
【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.17」より転載(一部修正)】
I-35
近年、イスラエルにおけるスタートアップの盛り上がりが注目を浴びている。もともとイスラエルは強
い軍事産業に支えられた優秀なテクノロジー人材の宝庫として、その技術開発力は認知されてはいたもの
の、2013 年の Google によるイスラエル発の Waze(地図ナビゲーションアプリのスタートアップ)の買
収なども後押しして、ここ数年でシリコンバレーにおける「イスラエル発スタートアップ」の存在感が一
段と増してきている。
シリコンバレーのイスラエル起業家を支援する NPO 組織である IEFF(Israeli Executives & Founders
Forum)のサイトによると、現在シリコンバレーを拠点にするイスラエルのスタートアップは128社(2016
年 9 月時点)もあるという。イスラエルの人口は 800 万人強にすぎないことを考えると、その数は他国と
比べても圧倒的に多いと思われる。さすが人口当たりのスタートアップの数が世界一多い国と言われるだ
けある。
Figure1: シリコンバレーのイスラエル系スタートアップ(Source: IEFF)
同様にシリコンバレーを目指す諸外国からの起業家は年々増えているが、特にイスラエル発のスタート
アップは注目・実績ともに一歩先を行っている印象がある。その秘密を探りに、シリコンバレーを拠点に、
イスラエル起業家チームを支援するイスラエル系シードステージファンドとして活動している UpWest
Labs を訪ね、インタビューを行った。ここ数年で日本や中国やドイツなども、自国の起業家をシリコンバ
シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情
I-36
レーで支援する官民含めた活動は盛んになってはいるものの、いまひとつ成果が出ていないと聞くことも
多い。イスラエル系の UpWest Labs は具体的にどのような活動をしているのだろうか?
プログラム終了後の現地資金調達成功率は 7 割
UpWest Labs は 2012 年に創業された、イスラエル出身の起業家を支援するシードステージファンドで、
これまで 60 社以上のスタートアップを支援してきた。現在は年間 6〜8 社のスタートアップを厳選してシ
ード資金を投資する一方で、シリコンバレーにて 4 ヶ月のプログラムを提供し、現地での資金調達及び事
業展開を支援している。
Figure2: UpWest Labs のウェブサイト
参加チームに対しては、UpWest がビザや宿泊先をアレンジし、米国到着後すぐにプログラムに専念で
きる環境を整える。プログラムでは、米国にマーケットエントリーするためのプロダクト・マーケットフ
ィットのリサーチから始まり、現地潜在顧客との接触、ビジネスモデルの開発、投資家へのピッチ、現地
でのチームビルディングなどを UpWest やメンターからの支援をうけながら起業家が取り組む。UpWest
によると、このような一連の作業は、色々と試した結果、最低 4 ヶ月は必要だという結論に達したという。
実際に、プログラムを修了したチームの 7 割が現地での資金調達を得たという実績があり、外国人起業チ
ームとしては、その成功率は非常に高いと言える。
いかにしてそのような高い成功率が可能となるのか? UpWest のディレクターとの会話を通して以下
のヒントを得た。
(1)参加スタートアップの厳選
参加チームを厳選するときのクライテリアは 3 つ。1)イスラエル出身の起業家であること、2)事業の
メインのターゲット市場が米国であること、3)プログラム修了後も、米国に腰を落ち着かせて事業展開す
ると決心していること。イスラエルの中で優れたスタートアップであったとしても、米国で一から事業を
立ち上げるという決心をしていないチームは選ばないという。日本では、起業コンテストで上位入賞した
I-37
チームがその「ご褒美」としてシリコンバレーに短期間滞在したり、「シリコンバレーの空気を吸って現地
の雰囲気を味わうため」にシリコンバレーツアーが提供されることが多いが、そのような「観光客的な」
チームは対象外だという。もっとも、そのような条件に当てはまる優秀なスタートアップがそもそも数多
く存在するという層の厚さが前提となっているというのもあるが、UpWest 自身も自らの投資資金を投じ
ているわけで、次につながる案件でなければ先行きが難しくなるというビジネス原理も働いている。補助
金事業とは違うのだ。
(2)チームビルディングの大切さ
参加する起業チームは最低二人から構成されている必要があり、ビジネス担当の CEO と、技術責任者の
CTO がいる必要がある。日本の起業チームでは CEO が CTO を兼任しているケースや役割が曖昧なケース
が多いが、UpWest の参加チームには誰がビジネス担当で、誰が技術担当かをまずははっきりしてもらう
という。またシリコンバレーに来てからは、特にビジネス側の追加チームメンバーとしてはできるだけ現
地のアメリカ人をリクルートすることを推奨している。
また、米国で資金調達するためにも米国に法人を設立し、それを本社とする(米国の投資家は外国本社
のスタートアップにはお金を出したがらないため)。一方、イスラエルには技術開発センターを支社として
置くケースが多い。それはシリコンバレーのエンジニア人材の競争が熾烈で、Google や Apple などの資
金が潤沢な巨大テック企業に対してスタートアップが人材競争をするのは不利である反面、イスラエルで
は優秀な技術人材がより低い給料で雇える環境にあるためである。このように、シリコンバレーではビジ
ネス機能を、イスラエルには技術開発機能をと、切り分けて運営するケースが圧倒的に多いという。
(3)米国流コミュニケーション術の叩き込み
起業チームは英語を問題なく使いこなせる人がほとんどではあるものの、米国での経験が少ない人にと
っては、現地での英語の微妙なニュアンスを理解していないことが多い。そのため、”Talk English”と”Talk
American”は違う、ということを分かってもらい、現地企業とのミーティングでどのような会話があった
かを議論し、どのように意図を理解すべきか、どのように対応すべきかなど、かなり踏み込んでアドバイ
スを行うという。単に技術が良いだけではだめで、いかに現地の慣習に則ったビジネスをできるか、を重
視している。
(4)シリコンバレーの現地コミュニティとのつながり
UpWest が主催するイベントや、紹介するメンターやネットワークについては、シリコンバレーの現地
コミュニティとのつながりを意識的に重視している。日本関連の組織の同様の活動では、どうしても現地
の日本人や日本に特別に興味を持っている現地人たちの間での狭いコミュニティ(言わば「シリコンバレ
ーの中の日本村」)とのつながりに限定されがちだが、UpWest ではイベント等への参加者の 8 割はイスラ
エルとは直接関係のない現地人となっており、いかに現地の本流層に食い込めるかを重視している。その
ような層に興味を持ってもらうには、いかに成功実績を作れるかが重要だという。単に、イスラエルは素
晴らしい技術を持っている! と宣伝するだけでは興味を持ってもらえない。やはりこれまでの成功例や
実績があってこそ。そのため、これまで築き上げてきたトラックレコードが、さらに多くの現地人を引き
つけるという好循環を生み出しているという。
I-38
(5)大きく成功するなら米国かヨーロッパへ
イスラエルは人口が 800 万人強という小さい国であることからも、国内市場は限られているため、起業
家として大きく成功するなら、米国かヨーロッパへ行くしかないという考えがそもそも当たり前になって
いる。中途半端に国内市場が大きい日本では、まずやりやすい日本で始めて、軌道に乗ったら海外へとい
う考えのスタートアップが多い。野心家であるイスラエルの起業家からしてみると、イスラエル市場は、
プロトタイプを検証するためのテスト市場にすぎない。そのため、米国に来てから、米国でのプロダクト・
マーケットフィットの分析を再度行い、大幅に調整をせざるを得ないことも多々あるが、それは当然のこ
とと捉えられている。
上記の通り、シリコンバレーでイスラエル系のスタートアップが躍進している理由について、その背景
をほんの一面だが垣間見ることができた。イスラエルの動きは、シリコンバレーへの進出を考えている日
本のスタートアップや、その支援を行う組織に対しても幾つか重要な示唆を与えてくれることだろう。
【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.18」より転載(一部修正)】
I-39
3. 欧州のベンチャー投資動向
Invest Europe(旧名 EVCA:European Private Equity and Venture Capital Association)が公表して
いる欧州におけるプライベート・エクイティの 2015 年の活動に関するレポート『2015 European
Private Equity Activity』では、大きく分けて以下の 2 つの切り口によってデータが取りまとめら
れている。本項では、各図表の下にいずれの視点によるデータであるかを「(注)」で示す。
① 欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)
② 欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外 VC 等からの投資を含む)
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity)
なお、Invest Europe の調査対象国は以下の 26 カ国およびその他中央・東ヨーロッパ(旧ユー
ゴスラビアおよびスロバキア)である。
Invest Europe 調査対象国
オーストリア ドイツ ポーランド
バルト三国
(エストニア、ラトビア、リトアニア)
ギリシャ ポルトガル
ハンガリー ルーマニア
ベルギー アイルランド スペイン
ブルガリア イタリア スウェーデン
チェコ ルクセンブルク スイス
デンマーク オランダ ウクライナ
フィンランド ノルウェー 英国
フランス その他中央・東ヨーロッパ(旧ユーゴスラビアおよびスロバキアから成る)
I-40
(1) 欧州のプライベート・エクイティ投資の状況
欧州のプライベート・エクイティ投資において、その投資金額は「バイアウト投資」の占める
割合が圧倒的に大きく、2011 年~2015 年の 5 年間でみると、いずれの年も他形態の投資の 5 倍
以上である。「バイアウト投資」以外では、事業拡大を目指す比較的成熟した企業への投資を目
的とした「グロース投資」、次いで「VC 投資」の順となっている。
プライベート・エクイティ投資全体で投資金額をみると、2012 年以降は「バイアウト投資」
をはじめ、「グロース投資」「VC 投資」も年々伸びている。
投資先社数については「VC 投資」がもっとも多く、他形態の投資と比較して、1 社当たりの
投資規模は非常に小粒であることがわかる。一方、投資金額では他と大差をつけている「バイア
ウト投資」の投資先社数は「グロース投資」に次ぐ 3 番目であり、1 社当たりの金額が大きいこ
とを示している。
図表 2-23 投資形態別の投資金額の推移
(注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む)
(注 2)「グロース投資」…事業拡大を目指す比較的成熟した企業への投資
次ページ以降は、欧州における「VC 投資」を中心に解説していくが、「VC 投資」のデータを
読み取る際に注意すべき点がある。Invest Europe では、比較的成熟したベンチャー企業への投資
については「グロース投資」としてデータを取りまとめているため、「グロース投資」のデータ
の中には、VC から出資を受けた企業についても一定割合で含まれている。そのため、「VC 投資」
のデータについては、実際の数字よりも小さく出ている可能性がある。
39.5 33.9 34.3 36.1 39.9
358.8
287.1
297.3
317.6
365.3
52.4 41.4 36.7 54.6 60.8
19.7 14.6 12.9 10.3 8.1
3,186 3,132
3,206 3,408
3,006
894
904 857 968 954
958
1,090 1,145
1,294
1,130
185 186 168 146 128
0
900
1,800
2,700
3,600
0
100
200
300
400
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(社数)(億ユーロ)
VC(金額) バイアウト(金額) グロース(金額) その他(金額)
VC(社数) バイアウト(社数) グロース(社数) その他(社数)
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
I-41
(2) 2015 年のベンチャー投資の状況
① VC 投資金額・社数
2015 年のベンチャー投資は、3,006 社に対して総額 39.9 億ユーロであった。過去 5 年間でみる
と、2011 年の 39.5 億ユーロから一旦減少した投資金額は、2012 年以降緩やかに上昇している一
方で、投資件数はほぼ横ばいである。
図表 2-24 VC 投資金額および投資先社数の推移
(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)
39.5
33.9 34.3 36.1
39.9
3,186 3,132 3,206
3,408 3,006
0
700
1,400
2,100
2,800
3,500
0
10
20
30
40
50
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(社)(億ユーロ)
投資金額 社数
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
I-42
② VC 投資の業種別内訳
欧州内のベンチャー企業に対する 2015 年のベンチャー投資金額 38.1 億ユーロ(欧州内のベン
チャー企業に対する投資)の内訳を業種別にみると、「ライフサイエンス」(33.9%)、「コンピュ
ータ・コンシューマエレクトロニクス」(19.9%)、「通信」(18.6%)のトップ 3 で全体の約 7 割
以上を占めている。一方、投資先社数は、投資金額のトップ 3 とメンバーは変わりないが、トッ
プは「コンピュータ・コンシューマエレクトロニクス」(25.6%)、次いで「ライフサイエンス」
(22.4%)、「通信」(15.5%)となっている。
図表 2-25 業種別投資金額内訳
*その他…工業サービス 1.9%、化学 1.2%、運輸 1.1%、その他 0.4%、農業 0.2%、不動産 0.2%、建設 0.04%
(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外からの投資を含む)
図表 2-26 業種別投資先社数内訳
*その他…化学 1.8%、金融 1.4%、その他 1.0%、運輸 1.0%、農業 0.7%、不動産 0.3%、建設 0.2%
(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外からの投資を含む)
ライフサイエンス
33.9%
コンピュータ・コン
シューマエレクトロ
ニクス
19.9%
通信
18.6%
消費財・小売
7.0%
消費者サービス
5.8%
エネルギー・環境
3.6%
工業製品
3.3%
金融
2.8%
その他*
5.1%
総VC投資金額
38.1億ユーロ
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
コンピュータ・コン
シューマエレクトロ
ニクス
25.6%
ライフサイエンス
22.4%
通信
15.5%
工業製品
9.7%
消費財・小売
6.9%
エネルギー・環境
5.8%
工業サービス
4.1%
消費者サービス
3.7%
その他*
6.3%
総VC投資先社数
2,836社
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
I-43
③ VC 投資のステージ別内訳
Invest Europe では、ステージを以下の 3 つに区分している。VEC の年次報告におけるステー
ジ区分との比較を下記に示す。
Invest Europe VEC
1 シード 1 シード
2 スタートアップ 2 アーリー
3 レーター
3 エクスパンション
4 レーター
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity)
2015 年のベンチャー投資の総額 39.9 億ユーロをステージ別でみると、「スタートアップ」と「レ
ーター」を合わせて全体の 96.7%を占めており、「シード」は全体の 3.3%に留まっている。いず
れのステージにおいても過去 5 年間で投資金額の大きな変化はみられない。
図表 2-27 ステージ別投資金額の推移
(注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)
1.7 1.2 1.2 1.0 1.3
20.0 18.7 17.9 19.0 20.8
17.8
14.0 15.2 16.0
17.8
0
10
20
30
40
50
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(億ユーロ)
シード スタートアップ レーター
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
(39.5)
(33.9) (34.3) (36.1)
(39.9)
( )の数値は全ステージの合計金額
44.6%
52.1%
3.3%
I-44
次に、2015 年のステージ別投資先社数をみると、「スタートアップ」が 6 割以上を占めており、
「シード」と合わせると 8 割近くに及ぶ。過去 5 年間でみても、欧州では若いベンチャー企業に
数多く投資していることがわかる。
図表 2-28 ステージ別投資先社数の推移
(注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む)
(注 2)合計社数とステージの内訳社数の合計は一致しない
e.g. 1 つの企業が同年に別ステージで計 2 回出資を受けた場合、各ステージで 1 社ずつカウントし、
合計社数では 1 社とカウント
(注 3)構成比は内訳合計を 100 として算出
428 367 422 478 440
1,792 1,922 1,875
2,038 1,906
1,013 898 950
926
715
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(億ユーロ)
シード スタートアップ レーター
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
(3,186) (3,132) (3,206)
(3,408)
(3,006)
( )の数値は全ステージの合計社数
23.3%
62.3%
14.4%
I-45
(3) 欧州内 VC ファンドによる 2015 年の資金調達状況
① VC ファンド資金調達額・本数
2015 年の欧州内の VC ファンドによる資金調達額は、98 本のファンドで 53.3 億ユーロであっ
た。2014 年と比較すると、ファンド本数は 24%減少しているが、調達額は約 8%増えている。
過去 5 年間でみると、2012 年にいったん落ち込んだ調達額は、2013 年以降は年々増加してお
り、2015 年には過去 5 年間で最高額に達している。一方、ファンド本数は 2011 年の 152 本から
2015 年の 98 本へとほぼ右肩下がりに減少している。したがって、1 ファンド当たりの調達額は
ここ数年で増加しつつあることがうかがえる。
図表 2-29 VC ファンドの資金調達額および本数の推移
(注 1)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象
(注 2)調達額の一部にキャピタルゲインを含む
51.9
38.8
46.1 49.5 53.3
152
117 113 129
98
0
30
60
90
120
150
180
0
10
20
30
40
50
60
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(本)(億ユーロ)
資金調達額 ファンド本数
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
I-46
次に、ファンドの資金調達額および本数の推移を重点ステージ別に比較する。総調達額のもっ
とも多くの割合を占める「アーリー特化型」ファンドの 2015 年の調達額は、過去 5 年間で最高
額の 27.1 億ユーロに達している。また、全体に占める割合は小さい「レーター特化型」も前年
対比 3 倍の 8.7 億ユーロと 2011 年に次ぐ調達額となっている。一方、「バランス型」の調達金額
は、2013 年をピークに減少傾向にある。
ファンド本数でみると、過去 5 年間で 2015 年の調達額が最高額となった「アーリー特化型」
の本数は 2014 年と比べて約 3 割減少しており、過去 5 年間でみてももっとも少なくなっている。
また、「レーター特化型」および「バランス型」も、2011 年から緩やかながら右下がりの傾向を
示している。
図表 2-30 VC ファンドの重点ステージ別資金調達額および本数の推移
(注 1)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象
(注 2)調達額の一部にキャピタルゲインを含む
19.8
21.9 17.1
23.9 27.1
9.9
2.2
3.4
2.9
8.7
22.2
14.6 25.5
22.6
17.5
74
60
58
80
57
20
11 9 10
6
58
46 46
39
35
0
15
30
45
60
75
90
0
10
20
30
40
50
60
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(億ユーロ)
アーリー特化型(金額) レーター特化型(金額) バランス型(金額)
アーリー特化型(本数) レーター特化型(本数) バランス型(本数)
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
I-47
② VC ファンドの出資者
2015 年に新規に組成された VC ファンド 98 本の出資者内訳を金額比率で比較すると、もっと
も高い割合を占めているのは、「不明」を除き、「政府系機関」(20.6%)である。二番手は「事
業法人」であるが、「政府系機関」の半分以下の金額に留まっている。
図表 2-31 VC ファンドの出資者内訳(金額比率)
(注)欧州内に運営基盤のある VC ファンドの出資者(欧州外からの調達を含む)
政府系機関
20.6%
事業法人
9.5%
ファンドオブファンズ
7.8%
その他資金管理会社
7.0%
財団・基金
5.7%
個人・親族
4.9%
年金基金
4.7%
ファミリーオフィス
2.9%
保険会社
1.8%
銀行
0.8%
資本市場
0.2%
教育機関
0.05%
不明
34.1%
出資総額
53.3億ユーロ
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
I-48
(4) 2015 年の Exit 状況
① VC 投資案件の Exit 戦略別社数
2011 年から 2015 年までの 5 年間について、VC 投資案件の Exit を回収方法別にみると、「売却
(M&A を含む)」および「償却」が主な Exit ルートとなっている。特に、2015 年は「売却(M&A
を含む)」の割合が過去 5 年間でもっとも高く、全体の約 4 分の 1 を占めている。Exit 件数の推
移については、ほぼ変化はみられず、毎年 1,000 社程度を維持している。
図表 2-32 VC 投資案件の Exit 戦略別社数の推移
(注 1)欧州内の企業に対する投資の Exit 社数(欧州外 PE 会社[VC 含む]による Exit を含む)
(注 2)合計社数と Exit ルートの内訳社数の合計は一致しない
e.g. 2 つの異なるファンドが 1 つの企業について、別の方法で株式を手放す場合、各 Exit ルートで 1 社ずつカウントし、
合計社数では 1 社とカウント
212 164 215 221 248
71
47
77 84 77
233
252
278 269 243
290
243
202 191 203
60
103
79 81 86
60
63
46 65 58
13
52 14 13 35
97 78 93 90 70
31
31 26 21 12
0
200
400
600
800
1000
1200
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
(社)
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
その他による回収
経営陣への売却
金融機関への売却
他のPE会社への売却
資本的なローンの返済
匿名組合の返済
償却
株式公開
売却(M&Aを含む)
(1,030)
(1,012) (1,008)
(1,012) (1,005)
( )の数値は全Exitルートの合計社数
I-49
(5) 2015 年のベンチャー投資の状況(国別)
2015 年の投資状況を PE/VC 会社が所在する国別にみると、投資金額についてはイギリス、フ
ランス、ドイツの順で多く、それ以外の国は 2 億ユーロ以下に留まっている。欧州の総投資金額
34.9 億ユーロ(欧州内の投資家による欧州内のベンチャー企業に対する投資金額合計)のうち、
イギリス、フランス、ドイツの 3 カ国で 6 割以上を占めている。
投資先件数をみると、投資金額では 3 番手のドイツがもっとも多くのベンチャー企業に投資し
ている。ドイツの投資先社数 817 社は、金額トップのイギリスの 3 倍以上であり、少額投資が多
いことがうかがえる。
図表 2-33 PE/VC 会社の所在国別 VC 投資金額および投資先社数(2015 年)
(注)欧州内のベンチャー企業に対する投資
8.0
7.0
6.7
2.0
1.9
1.4
1.3 1.0 0.9 0.8 0.7 0.7 0.6 0.4 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 0.1
0.04 0.04 0.01 0.01
241
367
817
220
85
335
78
173
82 66 108
52 47
28 37
62 92
56 64
24
3 11 2 1
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
(社数)(億ユーロ)
投資金額 投資先社数
(出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)※ギリシャは投資金額、投資先社数ともに“0”
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ベンチャー白書2016

  • 2.
  • 3. ベンチャー白書 2016 ベンチャービジネスに関する年次報告 2016 年 11 月 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター ベンチャーニュース特別版
  • 4.
  • 5. ベンチャー白書 2016 に含まれているコンテンツ コンテンツ 電子版 ベンチャーニュース 特別版(このファイル) 冊子版 分 析 編 日本の VC による投資の動向 ● ● 海外の VC による投資の動向 ● ● VB と大企業との協働 ● ● VB 向けアンケート調査 ● ● コラム ● ● デ ー タ VC 投資動向調査 ● ● VC 等ファンド状況調査 ● ● 付 録 政府・関連団体のベンチャー支援 ● ● ● : 含まれていることを示す VC : ベンチャーキャピタル VB : ベンチャー企業 ベンチャーニュース : 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)の HP にて無償で発信しているニュースレター 発行スケジュール 発行日 媒体 発行場所 電子版 2016 年 10 月 3 日 PDF VEC の HP コンテンツ販売サイト データ提供先様サイト ベンチャーニュース特別版 (このファイル) 2016 年 11 月 2 日 PDF VEC の HP 冊子版 2016 年 11 月 28 日 紙製本 全国の書店 オンライン書店
  • 6. 目次 ベンチャー白書 2016 海外のベンチャーキャピタルによる投資の動向 1.世界各国におけるベンチャー投資の動向 2.米国のベンチャー投資動向 I-17 - ベンチャーニュース特別版 - 各国のデータについて I-2 2015 年のファンド組成額の国際比較 (米国・欧州・中国・日本) I-5 ベンチャー投資の国際比較(2011 ∼ 2015 年) I-4 2015 年のベンチャー投資の状況 I-17 2015 年のファンド組成状況 I-22 2015 年の Exit 状況 I-23 2016 年上半期のベンチャー投資の状況 I-27 3.欧州のベンチャー投資動向 I-39 欧州のプライベート・エクイティ投資の状況 I-40 2015 年のベンチャー投資の状況 I-41 欧州内 VC ファンドによる 2015 年の資金調達状況 I-45 2015 年の Exit 状況 I-48 2015 年のベンチャー投資の状況(国別) I-49 I-2 I-1 I-6アジアのベンチャー投資の概況① I-8アジアのベンチャー投資の概況② I-11中国のシード・アクセラレーター I-14フィリピンのスタートアップ・エコシステム I-29米国ベンチャー投資の変調 I-31株式型クラウドファンディングの幕開け I-35シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情 I-33人気ドラマシリーズ「シリコンバレー」が風刺する シリコンバレーのスタートアップ事情 I-50英国の巻き返し I-51オーストリアの参戦 I-53熱きインド I-52バンコクの春 I-55明るいベルリン
  • 7. ベンチャー企業と大企業との協働 1.ベンチャー企業と大企業との協働   ―協働をどのように進めていくか― 新興大企業と伝統的大企業…VB との向き合い方に大きな違い I-70 伝統的大企業にも大きな変化が  …VB はイノベーションを起こす有力な選択肢の一つと認識 I-70 大企業における具体的な変化 I-76 協働相手の VB をどのように探すか I-72 おわりに  ーイノベーション創出のために VB の担い手を増やすにはー I-84 2.仮想座談会 I-87 I-70 I-69 国際編 I-56 米国編 I-57 欧州編 I-60 データ集 I-73大企業とベンチャーのマッチングが花盛り I-74メガバンク、ベンチャー支援の主役に フィンテックがきっかけ I-75研究と開発の間 ―「魔の川」― をつなぐ仲介者  I-85学び方革命 I-66ベンチャー争奪 欧州各国、起業イベントが花盛り I-67海外で CVC、オープンイノベーションを促進 I-67増えるアフリカに挑戦する起業家 VC も意欲 I-95スマートニュースやメルカリ、大型調達 I-96VR にゲーム各社のファンドが集中 I-97有力ベンチャーキャピタル、農水産業に焦点 I-98大学系 VC が本格始動 I-99大学発ベンチャー、世界へ飛躍 I-100シェアリングエコノミー協会が発足 政府とも連動 I-101FinTech への挑戦 I-80大企業がベンチャーとともに事業作る コーポレートアクセラレータープログラム I-82カーブアウト、大企業の技術や人材生かす I-77増加基調を続ける CVC 投資について留意すべきポイント
  • 8. ベンチャー企業向けアンケート調査 I-103 付録 2.回答企業のプロフィール I-105業種 I- I-106ステージ 3.事業展開の状況 I-108海外展開の状況 I-109今後の事業計画 5.ベンチャー企業のニーズについて I-115当面の経営ニーズ I-116人材ニーズ 6.その他の傾向 I-117ピボットの有無 I-118何社目の起業か 7.ベンチャー企業の創出・成長のための   政府等の政策面に関する要望 I-107ステージ × 従業員数 4.資金調達の状況 I-111直近 1 年間の資金調達状況 I-112設立から現在までの資金調達状況 I-114今後期待する資金調達元 1.2016 年調査概要 I-104 I-119 政府・関連団体のベンチャー支援 I-136 I-110起業するなら、米国? 日本? I-122「地方創生ファンド」の現状と課題について I-125専門的経営人材の蓄積が、創業と成長を加速させつつある I-128ベンチャーと規制緩和 I-130ドローン規制 I-132ベンチャー創出は教育から I-133ベンチャー企業、地方へ 地方での起業、促進の動きも I-134ベンチャー倒産、水面下で休眠も相次ぐ
  • 10. I-2 1. 世界各国におけるベンチャー投資の動向 (1) 各国のデータについて 世界各国のベンチャー企業への投資の動向については、各国の関係組織がベンチャー投資に関 するデータを取りまとめている。本章では、米国、欧州、中国、日本の 4 地域に焦点を絞り、ベ ンチャー投資の動向について比較する。また、米国と欧州については、NVCA(National Venture Capital Association)および Invest Europe(旧名 EVCA : European Private Equity and Venture Capital Association)による公表データをもとに、より詳細に解説する。 なお、各地域に関する公表資料については、下記の通り、各資料によって「ベンチャー投資」 に含まれる範囲が異なることに留意してほしい。また、日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月)、 他 3 地域は暦年ベース(1 月~12 月)のデータである。 図表 2-1 各資料の「ベンチャー投資」に含まれるデータの内訳 (注 1)日本:日本での法人格を所有している VC が対象 欧州:欧州内に投資活動の拠点がある PE/VC が対象 米国/中国:詳細は不明 (注 2)a と b の 2 種類のデータが存在する(詳細は、3.欧州のベンチャー投資動向:I-39 ページ参照)。本章ではど ちらのデータを使用しているか、各図表下に記載。 (注 3)「適格投資ラウンド」※ への投資参加、またはそれ以降の追加投資で、NVCA が調査対象とする VC 投資が満た すべき基準を満たしているものを含む(バイアウトや現物出資ではなく現金出資など) ※募集/購入契約書、株主/投資家権利契約書、投資家適格性判断アンケートなどの法的効力を持つ文書に記載された案件への 投資 米国 欧州 中国 日本 NVCA YEARBOOK 2016 (NVCA) 2015 European Private Equity Activity (Invest Europe) China VC/PE Market Review 2015 (Zero2IPO) ベンチャー白書2016 (VEC) 国内VC(注1)→ 国内ベンチャーへの投資 ○ ○a 注2 ○ ○ 国外VC → 国内ベンチャーへの投資 ○ ○b 注2 ○ × 国内VC(注1)→ 海外ベンチャーへの投資 × ○a 注2 × ○ 政府機関による投資 ○ ○ 不明 ○ エンジェル、インキュベーター、 アクセラレーターによる投資 ○注3 × × × 「M&A」データの基準 ・「売却」との区別なし ・secondary saleを含む ・マイノリティ投資でも含 まれるケースがある 「売却」の中に含む 不明 「売却」と区別している その他 - 比較的成熟したベンチャー 企業への投資については 「グロース投資」として データを取りまとめている ため、「グロース投資」の データの中には、VCから 出資を受けた企業について も一定割合で含まれてい る。そのため、「VC投 資」のデータについては、 実際の数字よりも小さく出 ている可能性がある。 - - 地域 データの出所
  • 11. I-3 また、4 地域の比較に当たっては、各通貨の 2015 年の平均為替レートで 2011 年~2015 年のデ ータを日本円に換算した。 地域 為替レート 米国 1 ドル=121.0 円 欧州 1 ユーロ=134.3 円 中国 1 人民元=19.4 円
  • 12. I-4 (2) ベンチャー投資の国際比較(2011~2015 年) 米国、欧州、中国、日本の 4 地域におけるベンチャー企業に対する投資金額について、2011 年から 2015 年の 5 年間を比較すると、米国が群を抜いており、特に 2015 年は過去 5 年間で最高 額の 7 兆円超であった。米国に次いでベンチャー投資が活発なのは中国であり、米国と同様、2015 年は 2.5 兆円と最高額を記録している。欧州と日本については、過去 5 年間の投資金額に大きな 変化はみられず、横ばい状態が続いている。2015 年で言えば、日本のベンチャー投資の金額は、 米国の 2%にも及ばない状況である。 一方、投資先数をみると、投資金額と比例するように投資件数が伸びている中国と比べて、米 国の投資件数は過去 5 年間ほぼ横ばいである。2014 年と 2015 年を比較すると、投資金額が約 1 兆円増えているにもかかわらず、投資件数は 62 件減っていることから、2015 年は 1 件当たりの 投資金額が大きかったことがうかがえる。欧州の投資金額は米国、中国に比べて小さいが、投資 先社数は 5 年間の平均で 3000 件以上と 4 地域の中でも 2 番目に多い。したがって、欧州は 1 社 当たりの投資金額が小額であることがわかる。 図表 2-2 2015 年のベンチャー投資実行額の国際比較(米国・欧州・中国・日本) (注 1)欧州:件数ではなく、投資先「社数」を統計数字として使用 (注 2)欧州:欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む) (注 3)日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月) 36,191 33,469 36,663 61,516 71,475 5,305 4,553 4,606 4,848 5,359 15,927 8,924 7,779 20,137 25,084 1,240 1,026 1,818 1,171 1,302 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380 3,186 3,132 3,206 3,408 3,006 1,505 1,071 1,148 1,917 3,445 1,017 824 1,000 969 1,162 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 0 15,000 30,000 45,000 60,000 75,000 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (件/社)(億円) 米国(金額) 欧州(金額) 中国(金額) 日本(金額) 米国(件数) 欧州(社数) 中国(件数) 日本(件数)
  • 13. I-5 (3) 2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本) 4 地域におけるベンチャーファンドの新規組成額について、2015 年から過去 5 年間を比較する と、米国の組成額は 2014 年がピークとなっており、2015 年は前年よりも減少している。一方、 中国は 2012 年以降伸び悩んでいたが、2014 年から回復に転じ、2015 年は 2011 年を上回る約 3.9 兆円に達している。欧州については、過去 5 年間ほぼ横ばいである。日本は 2015 年度が 1,932 億円と伸びており、2014 年度までと比較して 2 倍程度増加している。 ファンド本数をみると、中国は 2015 年に 597 本の新規ファンドが組成されており、2014 年の 258 本と比べて 2 倍程度となっている。 図表 2-3 2015 年のファンド組成額の国際比較(米国・欧州・中国・日本) (注)日本のみ年度ベース(4 月~翌年 3 月) 23,087 24,091 21,478 37,631 34,146 6,943 5,184 6,191 6,648 7,158 34,532 11,368 8,148 22,698 38,722 1,197 1,036 921 911 1,932 192 218 209 272 236 152 117 113 129 98 382 252 199 258 597 31 26 35 39 51 0 150 300 450 600 0 10,000 20,000 30,000 40,000 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (本)(億円) 米国(金額) 欧州(金額) 中国(金額) 日本(金額) 米国(本数) 欧州(本数) 中国(本数) 日本(本数)
  • 14. I-6 近年、アジアのベンチャーブームが脚光を浴びている。中国やインドという大国だけでなく、東南アジ アのベンチャー業界の動きも活発になってきており注目を集めている。 今回は、そもそもアジアのベンチャー業界の規模感は世界の他の地域に比べてどのぐらいの大きさなの か、について統計データをもとに明らかにしたい。 KPMG International と CB Insights が共同で発表した、”Q4’15(2015 年第 4 四半期), Global Analysis of Venture Funding” (2016/1/19)によると、2015 年のアジアのベンチャー投資総額は、397 億ドル (年末時点の為替レートで約 4.7 兆円)に上り、過去最高額を記録した。しかも、これは 2011 年から 2014 年の 4 年間の投資総額の合計を超える額であり、いかに急激な成長を遂げているかが浮き彫りになってい る(Figure1)。 Figure 1: 2011 年から 2015 年にかけてのアジアベンチャー投資トレンド (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th , 2016) これを世界の他の地域と比較してみると Figure 2 の通り、アジアのベンチャー投資額は、第 1 位の北米 (742 億ドル)に続く第 2 位となっており、世界全体のベンチャー投資額(1,285 億ドル)の 30%を超 えるシェアとなっている。また、第 3 位のヨーロッパ(135 億ドル)を大きく引き離しており、その差は 実に 3 倍近くまで拡大している。 アジアのベンチャー投資の概況①
  • 15. I-7 Figure2:地域別ベンチャー投資の規模比較(2015) (KPMG International 及び CB Insights 発行の”Q4’15, Global Analysis of Venture Funding”のデータをもとに筆者作成) 興味深いのは、投資案件数で比較すると、アジアとヨーロッパの間にはあまり差がないということであ る。これはアジアにおける 1 億ドル超のメガ投資案件が、特に 2015 年の前半に目立ったためである。 さらに、アジアのベンチャー投資額を地域・国別にブレークダウンすると(Figure3)、中国とインドの 二国が実に 90%近くを占めていることがわかる。東南アジアは 12.3 億ドル(年末時点の為替レートで約 1,450 億円)となっており、全体の 3%に過ぎないが、この額は、2015 年度の日本国内のベンチャーファ ンド等組織の国内外ベンチャー投資総額(1,302 億円:VEC ベンチャー白書 2016)を超える数字となっ ている。 Figure3: アジアにおけるベンチャー投資の地域・国別割合(2015) (KPMG International 及び CB Insights 発行の”Q4’15, Global Analysis of Venture Funding”のデータをもとに筆者作成) このように、2015 年のアジアベンチャー投資額は歴代最高を記録し、世界のベンチャー投資の中でもよ り一層の存在感を示している。しかし、2015 年第 4 四半期(9 月〜12 月)にみられた米国のベンチャー 投資の急激なブレーキは、米国だけにとどまらず、アジアでも同じような急ブレーキの動きがみられてい ることは注意したい。アジアでは第 3 四半期の投資額に比べて第 4 四半期は実に 32%もの落ち込みをみせ ている。アジアベンチャー市場も、2016 年はまさに勝負の年となりそうだ。 【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.1」より転載(一部修正)】
  • 16. I-8 アジアのベンチャー投資の概況①では、アジアのベンチャー投資が 2015 年に急拡大し、世界のベンチ ャー投資の中では、北米に次ぐ第 2 位の規模となる 397 億ドル(約 4.7 兆円)を記録したことなどマクロ 的な動きを概観した。 本コラムでは、CB Insights 及び KPMG International がまとめたベンチャー投資レポート(Venture Pulse Q4 2015)を参考に、アジアのベンチャー投資の特徴や北米との違いについて、いくつかポイント を絞って紹介したい。 ①インターネット、モバイルセクターへの偏重 アジアのベンチャー投資はインターネット及びモバイル分野への投資件数が全体の 80%と圧倒的に多 く、その他のセクターへの投資が少ない。北米では、インターネット及びモバイル分野への投資件数が全 体の 62%と半分以上を占めてはいるものの、ヘルスケア分野が 15%、インターネットやモバイル以外の ソフトウェア分野への投資が 7%となっており、アジアに比べて多くのセクターに分散されている。 アジ アにおける特定セクターへの投資の偏重は、アジアのベンチャー投資基盤の脆弱性を示唆していると言え よう。 Figure 1: アジアのベンチャー投資におけるセクター比率(投資件数ベース) (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th , 2016) アジアのベンチャー投資の概況②
  • 17. I-9 Figure 2: 北米のベンチャー投資におけるセクター比率(投資件数ベース) (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th , 2016) ②メガディールへの集中 さらに、アジアにおける投資額が Top 10 の案件をみると、その合計は投資総額の 60.8%となっている。 これは北米における Top 10 案件が投資総額の 20%だけであることと対照的である。つまり、アジアでは 少数のメガディールに投資資金が集中しており 、案件が分散している北米に比べて、やはり基盤が脆弱で あると言える。 Figure 3: アジアのベンチャー投資における Top 10 ディール(投資額ベース) (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th , 2016) ③CVC の投資が多い 北米ではベンチャー投資のうちコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による投資が直近で 23%と なっているが、アジアでは 35%と、12%も高い数字を示している。北米では、 独立型ベンチャーキャピ タルの存在が大きく歴史も長いが、アジアにおいては大企業の CVC が大きな存在感を示していることがわ かる。アジアの CVC として存在感を示しているのは Alibaba、Tencent、Baidu、楽天などである。
  • 18. I-10 CVC は親会社の方針や業績にも影響を受けやすく、かつ初期の段階で CVC から資金調達すると、その 企業の色が強くなり、以降は他ファンドからの調達が難しくなることもあり、決して安定した資金調達源 とは言えないだろう。 Figure 4: アジアのベンチャー投資における CVC の投資参加比率 (Source: Venture Pulse, Q4’15, Global Analysis of Venture Funding, KPMG International and CB Insights, January 19th , 2016) このように、アジアのベンチャー投資は規模こそ北米に次ぐ2位につけたものの、その中身をみると、 ベンチャー投資の基盤は未だ脆弱であると言わざるを得ない。しかし、アジアでのベンチャー投資の歴史 は北米に比べてまだ浅く、今後、時間をかけて成熟することでより安定感のある投資基盤ができていくの ではないかと期待される。しかし、昨近噂されるシリコンバレーバブルの崩壊の影響が飛び火して、成長 しているアジアのベンチャー投資業界に冷水を浴びせるようなことがないことを願うばかりだ。 【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.2」より転載(一部修正)】
  • 19. I-11 米国でブームとなったアクセラレーター設立の動きは世界中に飛び火し、中国でも数々のアクセラレー ターが雨後の筍のように立ち上がっている。その中には中国人起業家を対象としたドメスティックなアク セラレーターもあれば、中国市場進出の足掛かりとして参加希望する外国人起業家も対象とした、よりイ ンターナショナルなアクセラレーターもある。 今回のコラムでは、サンフランシスコ在住の IT 起業家で、現在、中国・上海に拠点を置くアクセラレー ターである”Chinaccelarator(中国加速)”に参加している David Collier さんの体験談インタビューをお 届けする。 David さんは英国出身のエンジニアで、ゲーム会社で CTO を務めるなどキャリアを積んだ後、サンフラ ンシスコで RIKAI Labs というスタートアップを立ち上げ、英語学習者がチャットプラットフォームを通 してゲーム感覚で英語を習得できるユニークなチャットアプリを開発している。 中国では有数のアクセラ レーターである Chinaccelarator の選考を通過し、2016 年 3 月から上海に滞在しながら、現地でプログ ラムに参加している。 Chinaccelarator では、年に 2 回のバッチ(期)があり、選ばれたチームは 6%の株式比率と引き換え に 3 万ドルの資金(転換社債の形)と起業サポートを受けられることになっている 。参加チームは上海に 最低 3〜6 ヶ月滞在し、アクセラレータープログラムに参加し、Demo Day で発表を行い、投資家と接触 をする。その過程で、現地の事業立ち上げに詳しいメンターと定期的に会ってディスカッションをしなが ら戦略を深めていく。Chinaccelarator のウェブサイトを見ると、メンター陣は中国人だけでなく、多く の外国人がリストアップされており、非常に国際的なプログラムであることがわかる。と同時に、現地で の外国人の起業エコシステムの層の厚さを感じさせる。 中国のシード・アクセラレーター
  • 20. I-12 以下、David さんの体験談をインタビュー形式で紹介する。 ---------------- Q: まずは RIKAI Labs のコンセプトについて教えて下さい。 David: コンテントデリバリーのプラットフォームは約 7 年おきに変遷をとげており、これまで CD-ROM からウェブへ、ウェブからスマホアプリへ、そして今まさに新たな動きとして(LINE、WhatsApp、 WeChat などの)メッセージングプラットフォームへの流れが出来つつあります。メッセージン グプラットフォームは新たなブラウザー的な役割をするようになってきています。そして、今現 在、中国で最大のユーザーベースを抱える WeChat(日本での LINE 的存在のチャットメッセー ジングプラットフォーム)は世界でも最も進んだメッセージングプラットフォームとなっており、 ペイメントシステムもビルトインされていて、アプリケーションがどんどん広がっています。私 たちはそこに目をつけ、この最先端のメッセージングプラットフォームをもとに、まずは手始め に、英語学習のコンテンツをデリバリーするアプリケーションを開発しています。Chatbots、人 工知能、ゲームなどのメカニズムを取り入れて、新たなユーザーエクスペリエンスを開発してい ます。 (Source: RIKAI Labs 提供) Q: 中国のアクセラレーターに参加しようと思ったきっかけは? David: 世界最大の英語学習者を抱える中国市場のマーケットの大きさ、そして世界で最も進んだ WeChat プラットフォームがあることが中国に目をつけた理由ですが、ここ中国で外国人として 事業を展開するにあたり、現地のアクセラレーターに参加することは事業開発のための良い足掛 かりになると思ったからです。特に Chinaccelarator は外国人起業家を積極的に受け入れ、現地 で事業をする基盤作りを支援する環境を提供しているため、このアクセラレーターに参加するこ とを決めました。 Q: どのぐらいの割合で外国人起業家が参加していますか? どのような国から来ていますか? David: いま私が参加しているバッチには 12 のチームが参加していますが、そのうち半分が外国人のチー ムですね。アメリカの他に、アルゼンチンとかメキシコなど様々です。あとは台湾とか香港から 来る人たちですね。皆、中国市場進出の足掛かりとして参加しています。
  • 21. I-13 Q: 実際参加してみてどういう印象ですか? 良い面と悪い面は? David: Co-Working Space を提供されていて、アメリカの施設などと比べても遜色ない充実した施設環 境ですね。スタッフも皆英語が話せる人たちです。来た当初は開発タスクで忙しくてオフィスに 缶詰になって作業していましたが、少しずつ現地のコンテントパートナーを模索したり、リーガ ルの専門家と話をしたりと事業面の方に時間を割くようにしています。中国で外国人が事業をす るには色々な規制があって、やはりこういうことは現地の専門家のサポートが必要なので、アク セラレーターのようなサポートインフラは重要ですね。 悪い面としては、中国では規制のために Google とか GitHub などの欧米系のサービスがほとん どアクセスできないこと! 米国にいた時と同じ環境でスムーズに開発できないのはちょっとイ ライラしますね。 Q: どのような内容のスタートアップが多いですか? David: かなり多様で、ソフトウェア系だけではなくて、ハードウェア系のスタートアップも多いですよ。 Q: アクセラレーターというと投資家とのコネクション作りが一つの機能ですが、実際に外国人チームに投 資する投資家もいますか? David: 外国人が中国で事業をする場合、中国国内で信頼のできる中国人パートナーと共同で法人を設立 するか、WOFE(外資独資企業)を作るかなど色々と考慮しなければならない複雑な点がありま すが、そのようなことをちゃんと理解した投資家とつながることができます。 Q: アクセラレータープログラムが終了した後はどうする予定ですか? David: 中国と米国を行き来しながら事業を展開していく予定です。シリコンバレーの最新のテクノロジ ーを中国の巨大市場に適用することで、大きな事業機会を掴んでいきたいです。実際、シリコン バレーで学んできたリアルタイムテクノロジーの多くは WeChat プラットフォームに上手く適用 できており親和性を感じています。 Q: シリコンバレーではいつバブルが弾けるかと話題になっていますが、上海のスタートアップ業界はどん な様子ですか? David: うーん、まあバブルが弾けるとかそういう話は過去数年にわたり言われてきていることだし、中 国が本格的にバブルが弾けたら米国よりももっと大きな影響になるとみんなわかっているけど、 起業家はとにかく目の前のことに専念するしかないから、心配していてもしょうがないね。 ---------------- David さんのインタビューを通して、中国では外国人の起業家やメンター人材のエコシステムも広がり をみせていることがわかった。日本でも今後、起業エコシステムをより一層盛り上げていくには、日本人 だけではなく外国人起業家を支援する仕組みを作り、それと同時に外国人の起業サポーター(投資家、メ ンターなど)の層も厚くしていく必要があると感じた。 【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.3」より転載(一部修正)】
  • 22. I-14 先日、シリコンバレーにあるスタンフォード大学で、フィリピンのスタートアップ業界の現状について のパネルディスカッションが開催された。近年注目される東南アジアのスタートアップ業界の中でも、毎 年 5%以上の経済成長を示し、1 億人以上の人口(世界で 3 番目に英語を話す人口が多いとされる)を誇 るフィリピンは注目を集めつつある。 現時点ではフィリピンのスタートアップ業界は先進国に比べると、まだまだ草創期といえるものの、フ ィリピン政府は、「2020 年までに 500 社のスタートアップが総計 2 億米ドルの資金調達をして、企業価 値が合計で 20 億米ドルに達する」という非常に具体的な目標を掲げた政策ロードマップを発表するなど 積極的な動きをみせている。 スタンフォード大学のイベントでパネリストの一人だった Christopher Peralta 氏にインタビューを行 い、フィリピンのスタートアップ業界の現状と展望について話を聞いた。 Manila Valley 代表の Christopher Peralta 氏 Christopher 氏は、オーストラリア出身のフィリピン人で、Nokia の東南アジアの事業開発等に携わっ たのち、シリコンバレーに移住をして、現在シリコンバレーとフィリピンをつなぐ起業支援活動を行って いる。Manila Valley という新たなアクセラレーターの立ち上げに奮闘している。Christopher 氏曰く、フ ィリピンのスタートアップのエコシステムに圧倒的に足りていないものは、リスクマネーとビジネスを立 ち上げるための知見や支援システムであるという。現在、フィリピンには 200~300 社のスタートアップ があるとされるものの、フィリピン本拠のベンチャーキャピタルの数は KICKSTART など数えるほど。多 くのスタートアップがシンガポールなど他国のベンチャーキャピタルに資金を求めなければならない状況 が続いており、フィリピン国内での資金源の創出がエコシステム確立のためには重要だと考えている。 フィリピンのスタートアップ・エコシステム
  • 23. I-15 フィリピンのスタートアップコミュニティ(Manila Valley 提供) 上記の図からもわかるように、フィリピンにもアクセラレーターやインキュベーターが新しく立ち上が ってきていることは事実だ。Manila Valley はその中でも、シリコンバレーとのコネクションを差別化ポイ ントとしている。先述の通りフィリピンは世界でも有数の英語大国であることからも、グローバル市場と 関わりの深い産業が多く出現している。特に、今後のフィリピン発スタートアップでグローバルに展開で きる可能性を秘めた業界として以下を挙げている。 ●アウトソーシングビジネス:世界有数の英語大国であることからも、かねてからアウトソーシングビ ジネスは非常に活発であったが、今後スタートアップによりさらなるイノベーションが起こることが 期待されている。今後の一つのトレンドは先進国向けの遠隔医療。 ●ゲーム:フィリピンはゲーム大国と言われており、3,000 万人がゲームを楽しみ、そのうち 40%が課 金を厭わないという。フィリピン発のゲーム会社はそのまま海外に進出できる基盤を備えている。 ●フィンテック:国外で勤労するフィリピン労働者は現在 240 万人とも言われており、その多くが母国 に送金を行っている。海外送金の分野でイノベーションを起こすフィンテックスタートアップの出現 を期待。 ●IoT:フィリピンは携帯保有率が人口の 113%とも言われており、通信業界が発達している。今世界 中で注目されている IoT の分野でも試験的マーケットとしてリードしていく素地を持っている。
  • 24. I-16 このようなグローバル経済と連携した分野のフィリピン発スタートアップをシリコンバレーと繋げるこ とで成長を後押しすることが Christopher 氏の狙いである。現在は、シリコンバレーとマニラを行き来し ながら、フィリピンで優秀な起業家を発掘し、シード資金を提供し支援体制を整えてから、実際にシリコ ンバレーに招待して、シリコンバレーのエコシステムを活用しながらグローバルな事業開発への支援を行 っている。現在はまだ立ち上がったばかりのため、選りすぐりの数社の支援に専念しているが、将来的に はよりオープンなアクセラレータープログラムを企画・運営したいと考えているとのこと。 Christopher 氏は、フィリピン発スタートアップが日本の企業や投資家と連携する機会は多いとみてお り、今後積極的な連携を目指している。 【VEC Web サイトコラム:「アジア・スタートアップ通信 Vol.4」より転載(一部修正)】
  • 25. I-17 2. 米国のベンチャー投資動向 次に、米国のベンチャー投資の動向について、NVCA の公表データをもとに詳しく解説する。 NVCAYEARBOOK 2016 によれば、2015 年時点におけるベンチャーキャピタル(VC)の数は 798 社、ファンド数は 1,224 本であった。同レポートによれば、10 億ドル以上を運用する大型 VC は 全体の 4.5%(36 社)である一方、2,500 万ドル以下の運用に留まっている VC は 330 社であり、 全体の 41%を占める。 VC の所在地はカリフォルニア州に集中しており、2015 年末時点で VC 全体の運用額の 55% を運用している(2014 年は 54%)。 図表 2-4 米国における VC 社数とファンド本数の推移 1995 2005 2014 2015 既存 VC 425 1,009 803 798 既存ファンド 688 1,764 1,206 1,224 (1) 2015 年のベンチャー投資の状況 ① VC 投資金額・件数 2015 年の投資金額は総額 590.7 億ドルであった。この金額は 2000 年以降最高額であり、NVCA の記録上においても 2 番目に多い金額である。しかし、投資件数は 4,380 件(3,709 社)であり、 前年の 4,442 件よりもやや減少している。NVCA による 2016 年 1 月 15 日付公表の四半期レポー トによれば、2015 年のメガディール(1 億ドル以上の投資案件)は 74 件であり、2014 年の 50 件と比べると 24 件増えている。したがって、2015 年における投資金額の増加の一因として、メ ガディールの増加による影響が考えられる。 図表 2-5 VC 投資金額および投資先数の推移 299.1 276.6 303.0 508.4 590.7 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380 3,383 3,372 3,568 3,728 3,709 1,359 1,335 1,437 1,441 1,444 0 700 1,400 2,100 2,800 3,500 4,200 4,900 0 100 200 300 400 500 600 700 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (件 / 社)(億ドル) (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成) 投資金額 投資件数 投資先社数 新規資金調達社数
  • 26. I-18 ② 業種別内訳 2015 年の VC 投資金額 590.7 億ドルを業種別にみると、もっとも高いシェアを誇っているのは 約 4 割を占める「ソフトウェア」であり、ここ数年はトップを維持し続けている。次いで「バイ オテクノロジー」が 1 割超、「消費財/サービス」「メディア/娯楽」がそれぞれ約 1 割弱の順とな っている。 投資件数については、投資金額のランキングと変わらず、トップは「ソフトウェア」が 4 割程 度を占め、次いで「バイオテクノロジー」が 1 割超となっている。 図表 2-6 2015 年業種別投資金額 *その他:小売/流通 1.7%、ヘルスケア 1.4%、半導体 1.3%、コンピュータ/周辺機器 1.2%、通信 1.2%、 事業用製品/サービス 1.0%、エレクトロニクス 0.7%、ネットワーク/機器 0.5%、その他 0.1% 図表 2-7 2015 年業種別投資件数 *その他:ヘルスケア 1.8%、半導体 1.8%、エレクトロニクス 1.5%、コンピュータ/周辺機器 1.3%、小売/流通 1.3%、 通信 1.2%、事業用製品/サービス 1.1%、ネットワーク/機器 0.7%、その他 0.6% ソフトウェア 39.8% バイオテクノロジー 12.9% 消費財/サービス 8.2% メディア/娯楽 8.0% ITサービス 6.5% 金融 5.4% 工業/エネルギー 5.4% 医療機器 4.7% その他* 9.2% 総投資金額 590.7億ドル ソフトウェア 40.4% バイオテクノロジー 10.8% メディア/娯楽 9.6% ITサービス 7.7% 医療機器 7.0% 工業/エネルギー 5.9% 消費財/サービス 5.5% 金融 1.9% その他* 11.3% 総投資件数 4,380件
  • 27. I-19 ③ ステージ別内訳 2015 年の投資金額をステージ別でみると、「エクスパンション」がもっとも多く、全体の 37.5% を占めている。次に「アーリー」33.8%、「レーター」27.0%と続いており、「シード」は全体の 2%にも満たない。 一方、2015 年の投資件数をみると、「アーリー」が全体の 50.7%を占めており、「シード」と 合わせると 55%に及ぶ。過去 5 年間において、1 件当たりの投資金額は小規模ながら、数多くの 若いベンチャー企業に投資する傾向がうかがえる。 投資金額および投資件数全体に対して各ステージが占める割合の傾向は、前年から大きな変化 はみられない。 図表 2-8 ステージ別投資金額の推移 図表 2-9 ステージ別投資件数の推移 11.2 8.5 10.3 8.3 10.0 91.1 85.3 104.4 161.4 199.6 99.3 95.9 99.2 214.5 221.7 97.5 86.9 89.1 124.3 159.4 0 100 200 300 400 500 600 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (億ドル) シード アーリー エクスパンション レーター (276.6) (493.1 (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)( )の数値は全ステージの合計金額 (299.1) (303.0) (508.5) (590.7) 27.0% 37.5% 33.8% 1.7% 436 304 243 207 186 1,669 1,826 2,203 2,206 2,219 1,025 1,007 1,034 1,162 1,146 920 854 815 867 829 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (件) (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成) シード アーリー エクスパンション レーター ( )の数値は全ステージの合計件数 (4,050) (3,991) (4,295) (4,442) (4,380) 18.9% 26.2% 50.7% 4.2%
  • 28. I-20 ④ 地域別内訳 2015 年の VC 投資について投資先企業の所在地別に焦点を絞ると、2015 年の全米 VC 総投資 金額 590.7 億ドルのうち、トップ 5 州で総投資金額の 81.6%、総投資件数の 67.2%を占めている。 カリフォルニア州所在の企業への投資金額は 338.7 億ドル(1,498 社に対し 1,779 件)であり、ト ップ 5 の総額の 7 割、全体でも 6 割近くを占めている。特にシリコンバレー地区だけで 274.2 億 ドルに及んでおり、米国における VC 総投資金額の 46%を占めている。 図表 2-10 2015 年 VC 投資金額トップ 5 州 州 社数 件数 総投資件数 に対する比率 投資金額 (億ドル) 総投資金額 に対する比率 カリフォルニア 1,498 1,779 40.6% 338.7 57.3% (内シリコンバレー) (1,007) (23.0%) (274.2) (46.4%) ニューヨーク 405 463 10.6% 62.5 10.6% マサチューセッツ 350 424 9.7% 56.8 9.6% ワシントン 100 116 2.6% 12.1 2.0% テキサス 133 163 3.7% 11.7 2.0% トップ5合計 2,486 2,945 67.2% 481.8 81.6% 全米合計 3,709 4,380 100.0% 590.7 100.0% (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
  • 29. I-21 ⑤ CVC の進出 近年、CVC(Corporate Venture Capital)によるベンチャー投資が非常に活発化しており、全米 のベンチャー投資に占める割合は増加の一途をたどっている。2015 年の CVC 投資金額は総投資 金額の 13.1%、総投資件数の 21.2%を占めており、投資金額は 2001 年以降でもっとも多い額と なっている。 本章における CVC の定義(NVCA YEARBOOK より) 「事業会社による直接投資(CVC 部門を通さない投資)」については、以下に該当する場合、CVC 投資に含める。 a) 研究開発や市場開拓の外注ではなく、投資収益の獲得を主な目的としていることが明確である投資 b) 適格投資ラウンド※ に該当しうる投資案件への共同投資 c) 適格投資ラウンド以降の追加投資で、NVCA が調査対象とする VC 投資が満たすべき基準を満たして いる投資(バイアウトや現物出資ではなく現金出資、など) ※募集/購入契約書、株主/投資家権利契約書、投資家適格性判断アンケートなどの法的効力を持つ文書に記載された案件への投資 図表 2-11 CVC によるベンチャー投資金額・件数 図表 2-12 CVC によるベンチャー投資金額・件数の推移(1995 年~2015 年) (単位:億ドル) 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 VC投資金額合計 299.1 276.6 303.0 508.4 590.7 内CVC投資金額 23.1 22.6 32.2 57.6 77.1 CVC比率 7.7% 8.2% 10.6% 11.3% 13.1% (単位:件) 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 VC投資件数合計 4,050 3,991 4,295 4,442 4,380 内CVC投資件数 611 631 741 809 930 CVC比率 15.1% 15.8% 17.3% 18.2% 21.2% (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成) 0 300 600 900 1200 1500 1800 2100 2400 0 20 40 60 80 100 120 140 160 (件)(億ドル) CVC関与投資金額 CVC関与投資件数
  • 30. I-22 (2) 2015 年のファンド組成状況 ① コミットメント金額・本数 2015 年の米国内の VC ファンドへの新規コミットメントは、236 本のファンドに対し 282.2 億 ドルであり、2014 年の 272 本 311 億ドルからやや減少した。2015 年上半期におけるコミットメ ント金額は 2014 年の上半期と同じペースを保っていたが、2015 年下半期に勢いが落ち着いたこ とが要因とされる。 図表 2-13 VC ファンドに対する新規コミットメント金額と本数の推移 190.8 199.1 177.5 311.0 282.2 192 218 209 272 236 0 40 80 120 160 200 240 280 0 50 100 150 200 250 300 350 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (本)(億ドル) (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成) コミットメント金額 ファンド本数
  • 31. I-23 ② 地域別内訳 2015 年の新規コミットメント金額をファンドの本拠地別にみると、カリフォルニア州が 139 億ドル(102 本)でトップであり、全体の 49.3%と半数近くを占めている。しかし、2014 年の 62%からは約 13 ポイント減少している。カリフォルニア州に次ぐのは、66.7 億ドル(31 本)の ニューヨーク州である。ニューヨーク州は全体の 23.6%を占めており、前年の 13%から 2 倍近 く伸びている。ニューヨーク州は過去 3 年間ベンチャー投資が着実に増加している。新規の VC が立ち上がったり、州外の既存 VC がニューヨーク拠点を設けたりしており、ベンチャーエコシ ステムにおけるニューヨーク州の存在感が増してきているとの報告がある。ノースカロライナ州 については、州の年金基金が North Carolina Innovation Fund に多額の投資を行ったことが影響し、 2015 年はトップ 5 に滑り込んだ。 図表 2-14 2015 年新規コミットメント金額トップ 5 州 (3) 2015 年の Exit 状況 ① 概況 2015 年における VC から出資を受けた企業の IPO 社数は、2014 年の 117 社から 77 社へと約 34%減少し、金額は 155.1 億ドルから 93.8 億ドルへと約 40%も減少している。また、VC から出 資を受けた企業の 2015 年の M&A 社数は、2014 年の 472 社から 360 社へと約 24%減少した。2015 年の M&A 総額は、取引額が報告された 87 社について約 170 億ドルであったが、2014 年の約 480 億ドルと比較すると 1/3 近くにまで落ち込んでいる。 図表 2-15 米国における VC から出資を受けた企業の IPO および M&A の社数・金額の推移 139.0億ドル 49.3% 66.7億ドル 23.6% 28.2億ドル 10.0% 11.7億ドル 4.2% 4.9億ドル 1.7% 31.6億ドル 11.2% カリフォルニア州 ニューヨーク州 マサチューセッツ州 ワシントン州 ノースカロライナ州 その他 (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成) 274.4 40.4 23.3 20.2 98.1 49.1 70.7 117.4 7.7 19.8 80.7 104.4 213.5 110.7 155.1 93.8 800.0 251.2 119.1 82.4 234.3 197.2 242.2 307.5 149.3 123.6 177.3 242.0 226.9 169.1 481.4 169.5 238 37 24 26 81 59 67 90 7 13 67 50 48 81 117 77 379 385 364 324 403 447 482 488 417 350 525 492 477 386 472 360 0 70 140 210 280 350 420 490 560 0 100 200 300 400 500 600 700 800 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (社数)(億ドル) IPO時の調達金額 M&A時の取引額 IPO社数 M&A社数 (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
  • 32. I-24 ② IPO 社数・調達額 業種別に IPO 社数のトップ 3 をみると、2015 年のトップは「バイオテクノロジー」が全 77 社 中 41 社と、2014 年に引き続き半数以上を占めている。2 番手は 2014 年と 2015 年で入れ替わっ ており、「医療機器」が前年より社数を伸ばしている。一方、「ソフトウェア」は前年の 20 社か ら 9 社に減っており、IPO 時の調達額も大きく減少している。 トップ 3 について、1 社当たりの IPO 時の調達額で比較すると、3 番手の「ソフトウェア」が 約 1.7 億ドルとなっており、社数は減ったものの 1 社当たりの調達額は前年と同程度となってい る。IPO 社数トップの「バイオテクノロジー」の 1 社当たりの調達額は 1 億ドルに届いておらず、 前年と同様に、IPO した企業の多くは小・中規模企業であったことがうかがえる。 図表 2-16 VC から出資を受けた業種別 IPO 社数・調達額の前年比較 2014年 2015年 業 種 社数 調達額 (百万ドル) 1社当たり 調達額 (百万ドル) 業 種 社数 調達額 (百万ドル) 1社当たり 調達額 (百万ドル) バイオテクノロジー 66 5,356 81.2 バイオテクノロジー 41 4,001 97.6 ソフトウェア 20 3,451 172.6 医療機器 12 892 74.3 医療機器 9 586 65.1 ソフトウェア 9 1,507 167.4 メディア/娯楽 6 730 121.7 ITサービス 3 440 146.7 ITサービス 4 428 107.0 半導体 2 866 433.0 金融 3 1,302 434.0 工業/エネルギー 2 396 198.0 消費財/サービス 2 2,538 1,269.0 コンピュータ/周辺機器 1 489 489.0 小売/流通 2 487 243.5 小売/流通 1 307 307.0 ネットワーク/機器 2 279 139.5 ヘルスケア 1 180 180.0 ヘルスケア 2 272 136.0 消費財/サービス 1 121 121.0 工業/エネルギー 1 83 83.0 通信 1 65 65.0 事業用製品/サービス 0 0 - その他 1 50 50.0 コンピュータ/周辺機器 0 0 - メディア/娯楽 1 40 40.0 エレクトロニクス 0 0 - ネットワーク/機器 1 25 25.0 その他 0 0 - 事業用製品/サービス 0 0 - 半導体 0 0 - エレクトロニクス 0 0 - 通信 0 0 - 金融 0 0 - 合計 117 15,512 132.6 合計 77 9,379 121.8 (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
  • 33. I-25 ③ M&A 社数・取引額 業種別に 2015 年の M&A 社数のトップ 3 をみると、「ソフトウェア」が 2014 年に引き続き首 位を維持しており、2 番手の「IT サービス」とは社数、取引額ともに 5 倍以上の差をつけている。 しかしながら、「ソフトウェア」の社数は M&A が好調だった 2014 年と比較して約 11%減に留 まっているが、取引額については約 73%減と大幅に減少しており、2013 年並に戻っている。「ソ フトウェア」の 1 社当たりの取引額をみると、2014 年は 1 億ドルを超えていたが、2015 年は 4,000 万ドルにも達していないことから、小粒の M&A が多かったことがうかがえる。 2 番手、3 番手は 2014 年と順位は入れ替わっているが、メンバーは変わらず「IT サービス」「メ ディア/娯楽」がトップ 3 入りを果たしている。どちらの業種も前年と比較して社数は減少して いるが、取引額をみると「メディア/娯楽」については 2 割程度増えており、1 社当たりの取引 額は前年の 2 倍となっている。 図表 2-17 VC から出資を受けた業種別 M&A 社数・取引額の前年比較 2014年 2015年 業 種 社数 取引額 (百万ドル) 1社当たり 取引額 (百万ドル) 業 種 社数 取引額 (百万ドル) 1社当たり 取引額 (百万ドル) ソフトウェア 203 24,937 122.8 ソフトウェア 181 6,805 37.6 メディア/娯楽 59 1,960 33.2 ITサービス 34 1,114 32.8 ITサービス 55 2,112 38.4 メディア/娯楽 30 2,388 79.6 バイオテクノロジー 36 6,086 169.1 バイオテクノロジー 24 2,834 118.1 工業/エネルギー 29 766 26.4 医療機器 24 2,234 93.1 医療機器 19 2,670 140.5 工業/エネルギー 13 121 9.3 通信 15 1,665 111.0 ヘルスケア 9 462 51.3 半導体 14 787 56.2 半導体 9 462 51.3 消費財/サービス 10 3,270 327.0 消費財/サービス 8 25 3.1 事業用製品/サービス 8 4 0.5 事業用製品/サービス 7 0 0.0 小売/流通 7 1,726 246.6 エレクトロニクス 4 182 45.5 コンピュータ/周辺機器 5 1,881 376.2 金融 4 72 18.0 ネットワーク/機器 5 159 31.8 コンピュータ/周辺機器 4 16 4.0 エレクトロニクス 4 1 0.3 通信 4 0 0.0 金融 2 117 58.5 小売/流通 3 80 26.7 ヘルスケア 1 0 0.0 その他 1 87 87.0 その他 0 0 - ネットワーク/機器 1 65 65.0 合計 472 48,140 102.0 合計 360 16,947 47.1 (出所:NVCA YEARBOOK 2016、VEC作成)
  • 34. I-26 ④ 米国における IPO と M&A の社数の推移 米国における VC から出資を受けた企業の IPO と M&A の社数について、1985 年から 2015 年 までの推移を NVCA の公表データをもとに下記に示す。IPO と M&A の割合は、2000 年の IT バ ブル崩壊を境に大きく入れ替わっていることがわかる。 図表 2-18 VC から出資を受けた企業の IPO と M&A の社数割合の推移 ※M&A には「trade sale(マイノリティ投資を含む)」「secondary sale」が含まれる この M&A の長期的な興隆については、主に以下の要因が挙げられる※ 。 ・2000 年の IT バブル崩壊によって株式市場が低迷したこと ・2002 年 7 月に制定されたサーベンス・オクスリー(SOX)法によって、ベンチャー企業が IPO するために必要な費用負担が上昇したこと ・他社との市場競争が高まったことにより、ベンチャー企業にとって、ある程度の段階で買収 され短期間で企業規模を拡大させる必要性が高まったこと ※参考 岩井浩一「JOBS 法の成立と米国 IPO 市場の今後の動向」野村資本市場クォータリー 2012 年秋号 小野正人 Working Paper「米国ベンチャーキャピタルのパフォーマンスと構造変化」2010 年 11 月 http://libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-WorkingP2010-02.pdf 秦信行 「ベンチャーコミュニティを巡って「IPO 再考」連載第 47 回」THE INDEPENDENTS 2012 年 10 月号 http://ovl.jp/article/item000400 CNET JAPAN「IPO よりも M&A が選ばれる米国の事情--GCA Savvian の Todd Carter 氏」インタビュー2013 年 10 月 1 日 http://japan.cnet.com/interview/35037888/ 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% (出所:NVCA YEARBOOK 2015 & 2016、VEC作成) IPO M&A
  • 35. I-27 (4) 2016 年上半期のベンチャー投資の状況 ① VC 投資金額・件数 本項「2016 年上半期のベンチャー投資の状況」における 2015 年データは、NVCA のウェブサ イトで公表されている 2016 年 7 月時点の公表データに基づいている。したがって、(1)~(3) で引用した「NVCAYEARBOOK 2016」のデータとは異なる場合がある。 2016 年上半期の VC 投資状況は、2015 年上半期と比較すると投資金額、投資件数ともに減少 している。 図表 2-19 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期) ② 業種別内訳 2016 年上半期の VC 投資内訳を業種別でみると、2015 年に引き続き、「ソフトウェア」の投資 金額および件数が圧倒的に多く、次いで「バイオテクノロジー」の順となっている。「ソフトウ ェア」企業への投資は、2015 年上半期よりも投資件数では 2 割近く減っているものの、投資金 額は 130.1 億ドルから 138.9 億ドルへとやや増加している。投資金額の増加の要因として、第 1、 第 2 四半期ともにメガディール(投資金額が 1 億ドル以上の案件)の半数以上が「ソフトウェア」 企業であったことが挙げられる。 図表 2-20 業種別 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期) 2016 上半期 下半期 2015年合計 上半期 投資金額(億ドル) 310.2 288.3 598.5 279.8 投資件数(件) 2,318 2,217 4,535 1,972 ( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成) 2015 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) ソフトウェア 958 130.1 858 106.9 1,816 237.0 775 138.9 バイオテクノロジー 259 38.7 225 38.0 484 76.7 224 36.4 ITサービス 170 17.1 167 21.5 337 38.6 151 17.1 メディア/娯楽 213 28.4 227 24.5 440 52.9 212 16.2 金融 49 12.1 45 21.1 94 33.2 51 14.1 工業/エネルギー 140 18.6 133 13.8 273 32.4 105 11.4 医療機器 159 13.2 168 15.1 327 28.3 119 10.6 コンピュータ/周辺機器 29 2.3 31 5.0 60 7.3 25 10.0 消費財/サービス 129 32.0 122 16.6 251 48.6 110 7.9 ヘルスケア 31 2.7 44 5.8 75 8.5 40 3.5 半導体 37 2.6 46 4.6 83 7.2 31 2.8 通信 38 5.3 21 1.9 59 7.3 29 2.8 エレクトロニクス/器具 38 2.4 31 1.7 69 4.1 27 2.5 小売/流通 23 1.8 37 8.5 60 10.3 33 1.9 事業用製品/サービス 19 0.9 37 1.6 56 2.6 28 1.9 ネットワーク/機器 14 1.3 14 1.5 28 2.9 10 1.7 その他 12 0.4 11 0.2 23 0.6 2 0.1 合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8 ( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成) 業種 2015 2016 上半期 下半期 2015年合計 上半期
  • 36. I-28 ③ ステージ別内訳 2016 年上半期の投資状況をステージ別にみると、投資件数では、2015 年の上/下半期に続き、 「アーリー」がもっとも多くの割合を占めている。また、投資金額では「エクスパンション」が 5 割近くを占めている。2016 年の上半期を 2015 年の上半期と比較すると、「シード」のみ件数、 金額ともに増加していることがわかる。 図表 2-21 ステージ別 VC 投資金額・件数(2015 年上半期~2016 年上半期) ④ 地域別内訳 VC 投資金額の地域トップ 5 について、2016 年上半期と 2015 年の上半期を比較すると、2016 年上半期の「シリコンバレー」への投資は約 20 億ドル減少しており、件数も 136 件少なくなっ ている。「シリコンバレー」以外の地域をみると、唯一「南東部」が前年同期と比べて投資金額 が 9.9 億ドルから 14.6 億ドルへと約 32%増加しているが、件数は約 25%減少している。この金 額の増加は、前述の通り(I-23 ページ参照)、ノースカロライナ州のイノベーションファンドへ の資金投入が影響しており、単発的な増加と言える。 図表 2-22 VC 投資金額トップ 5 の地域(2015 年上半期~2016 年上半期) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) シード 78 3.0 126 7.4 204 10.3 112 11.0 アーリー 1,156 95.8 1,141 107.1 2,297 202.8 877 85.6 エクスパンション 628 126.5 548 97.0 1,176 223.6 585 125.2 レーター 456 84.9 402 76.9 858 161.8 398 58.0 年間合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8 ( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成) ステージ 2015 2016 上半期 下半期 2015年合計 上半期 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) 件数 投資金額 (億ドル) シリコンバレー 734 151.5 659 127.4 1,393 278.9 598 131.0 ニューヨーク都市圏 261 38.2 262 35.4 523 73.7 260 31.4 ロサンゼルス/オレンジ郡 170 30.5 164 21.0 334 51.5 144 27.4 ニューイングランド 259 28.8 242 33.2 501 62.0 221 26.3 南東部 147 9.9 135 13.3 282 23.2 110 14.6 全地域合計 2,318 310.2 2,217 288.3 4,535 598.5 1,972 279.8 ( PricewaterhouseCoopers/National Venture Capital Association MoneyTree™ Report, Data: Thomson Reuters、VEC作成) 地域 上半期 2015 2016 上半期 下半期 2015年合計
  • 37. I-29 KPMG と CB Insights が 2016 年 1 月 19 日にリリースした「Venture Pulse Q4 2015」レポートによ ると、米国におけるベンチャー投資は 2015 年全体で 724 億ドルを記録し、これはドットコムバブル最盛 期の 2000 年の投資額(1,060 億ドル)に続く歴代 2 位の記録となった。2014 年に比べて 26%の成長 率であった。しかし、投資案件数でみると、2014 年の 5,240 件から 4,672 件へと 11%の減少をみせて いる。これは特に年の前半においてユニコーン企業と呼ばれる、未上場だが企業価値が 10 億ドルを超える スタートアップの資金調達合戦によって 1 案件ごとの投資額が大きかったことを示唆している。 さらに資金調達の動きを四半期でみると、変調ぶりが際立ってくる。2015 年の Q4 には Q3 から 60 億ドルも投資額が減っており、30%以上の減少率をみせている。投資案件数も 22%減少しており、これ は 2011 年の Q4 以来ぶりの最低水準となっている。 米国ベンチャー投資の変調
  • 38. I-30 また、投資ラウンドごとにトレンドをみると、Q4 ではシードラウンドへの投資比率が 3 期連続で減少 している。Q4 の全体の投資額が前期に比べて 30%減少したことを考えると、シードスタートアップへの 投資資金は 40%以上減少したことになる。つまり、新たなアイデアへの投資に急ブレーキがかかってきて いる。 これらの市場の変調の背景には、スタートアップ企業の IPO 成績が芳しくないことに反応して「観光客」 投資家(投資信託、ヘッジファンド)が一斉に資金を引き上げようとする動きをみせていること、企業評 価額は高いものの赤字を垂れ流して自転車操業しているユニコーン企業が多数浮き彫りになってきたこと や、「ダウンラウンド(前回のラウンドよりも評価額が下がること)」が増えてきていることなどによって、 投資家マインドが一気に冷え込み始めてきている状況がある。また、2015 年 12 月の米国の利上げによっ て、このような状況はさらに加速されてきているようだ。 KPMG Enterprise Innovative Startups Network の Co-Leader である Brian Hughes 氏は、以下の通 り警告する。 「2015 年の Q3 までは、収入>支出のスタートアップと同様に、収入<支出のスタートアップにも潤沢 な資金が流れ込んでいた。でも今我々は分岐点に来ている。2016 年は利益等のビジネスの基礎としての 財務状況がまた本当に重要になってくるだろう。ネガティブの粗利で、毎月の純資金支出額が過剰である にも関わらず、過大な評価がされているスタートアップは最も影響を受けるだろう」(一部意訳) 今後の市場の調整が、ソフトランディングとなるか、ハードランディングとなるか、まだ予断を許さな い状況にある。 【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.14」より転載(一部修正)】
  • 39. I-31 2012 年に米国で成立した JOBS Act (Jumpstart Our Business Startups Act: ジョブズ法)はベン チャー企業が資金調達を行いやすくするための一連の規制緩和法案であるが、その中でも目玉の一つであ った「株式型」クラウドファンディングが 2016 年 5 月 16 日についに解禁された。 これまでクラウドファンディングと言えば、Kickstarter や Indiegogo などのポータルサイトで「寄付 型」や「購入型」のクラウドファンディングキャンペーンは活発に行われてきたが、金融取引が絡む「株 式型」のクラウドファンディングは SEC(米国証券取引委員会)が詳細規則を策定し施行するまでは不可 能だった。今回の施行により、適格投資家に当てはまらない個人の投資家(Non-accredited investors) もベンチャー企業に株式投資をすることが可能となり、ベンチャー企業の資金調達の可能性が飛躍的に広 がることとなった。 JOBS Act が成立してから、株式型クラウドファンディングについては約 4 年間の月日をかけて規則策 定が行われてきたが、その道のりは決して平坦ではなかった。個人投資家が対象である本件については投 資家保護をミッションとする SEC はことさら慎重にならなければならなかったのだ。 今回施行された規則には以下のルールが含まれる。 ●株式型クラウドファンディングで資金調達するベンチャー企業は 12 ヶ月の間で 100 万ドル以下の資 金を調達できる。 ●株式型クラウドファンディングの公募には SEC から許可を得たオンラインポータルまたは仲介業者 を使わなければならない。 ●公募するベンチャー企業は米国本拠の法人でなければならない。 ●特定の財務情報を開示しなければならない。調達額によっては、財務諸表は会計士の監査を受けなけ ればならない。 ●定められた報告義務に従う必要がある。 ●適格投資家と非適格投資家から投資を受けることができる。投資家は収入または純資産によって投資 できる金額が制限される。(例えば、年収または純資産が 10 万ドル未満の投資家は、年収か純資産の うち低い方の 5%までしか投資は出来ない、など) この規則には不満の声も聞かれる。登録や報告義務が煩雑でコストがかかるにもかかわらず、最大調達 額が 100 万ドルとは少なすぎるという点がそのひとつである。コストは会社組織がどれだけ複雑かなど調 達額にもよるが、Bloomberg の記事では、例えば、100 万ドルを調達しようとしているウィスキー製造ベ ンチャーは、4 万ドル~5 万ドルのコストがかかると想定されるほか、10 万ドルを調達しようとしている ハワイのコーヒープランテーション会社は 1,000 ドル~2 万ドルの間のコストがかかるという例を挙げて いる。 株式型クラウドファンディングの幕開け
  • 40. I-32 Wall Street Journal(WSJ)によると、 2016 年 5 月 16 日午後の時点で自主規制機関である金融取引 業規制機構(FINRA)は 9 社のポータルを承認したとのこと。さらに 10 社の仲介業者が当局に参加する 計画を示しているとのこと。二大ポータルサイトのひとつである Kickstarter は今のところ株式クラウドフ ァンディングの機能を追加する予定はないとのことだが、そのライバルサイトである Indiegogo は予定を している。 また、施行初日の 2016 年 5 月 16 日午後 6 時までに 17 社のベンチャー企業が資金調達に必要な登録手 続きを完了したと WSJ は伝えている。生分解性歯ブラシのメーカーや高級宿泊施設運営会社、グルメ志向 のドーナツ販売など様々な業態の企業が名を連ねているそうだ。17 社という数は、当初想定されていた数 よりは幾分控えめな数だったようだが、今後より公に認知されていくにつれて登録数も増大していくこと が期待される。 今回の米国での株式クラウドファンディング解禁の動きは、今後日本や諸外国でのルール策定に大きな 影響を与えることが想定される。世界中でベンチャーバブル崩壊が間近かと警鐘が鳴らされる中、今回の 動きがどのようにベンチャー業界の資金調達事情に影響を与えていくか、引き続きウォッチしていきたい。 【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.16」より転載(一部修正)】
  • 41. I-33 シリコンバレーのスタートアップ事情を描写したドラマシリーズ『シリコンバレー』が話題となってい る。米国では 2014 年から第 1 シーズンの放映が始まり、2016 年には第 3 シーズンに突入した。その間、 エミー賞を受賞するなど、作品としても評価されている。日本でも 2016 年 3 月から Hulu で第 1 シーズ ンの放映が開始しており、話題になっている。 ドラマは起業の聖地シリコンバレーを舞台に、データ圧縮技術を武器にスタートアップを立ち上げた 5 人の若者たちの奮闘ぶりを、時にコミカルに、時にシリアスに描いている。 (Source: HBO) Hooli という(いかにも Google を連想させるような)シリコンバレーの巨大 IT 企業に勤務する、一見 うだつの上がらないテック・オタク的風貌のリチャードが主人公。リチャードは Hooli で働く傍ら、イン キュベーターを自称するアーリックの家でエンジニア仲間と共同生活を送りながら音楽関連サービスを開 発する秘密プロジェクトに勤しんでいた。ある日、Hooli の同僚に何気なくそのシステムを見せたところ、 このシステムの基盤となるデータ圧縮技術がとんでもなく革新的であることが露見し、Hooli の CEO の耳 に伝わる。それにより Hooli から 1000 万ドルの技術買収の話を持ちかけられるが、この技術はもっと大 きなインパクトを世界にもたらすと確信したリチャードは、投資家からの 20 万ドルで 5%の株式持ち分と いうオファーを受け入れ、自分の会社「パイド・パイパー」を立ち上げることを決意した。 しかし、経営のケの字も分からずにはじめた技術屋リチャード。会社を登記しなければならないという 基礎的なことも分からずに投資家からもらった小切手を銀行口座に預金しようとしてしまうほどのドジぶ り。その後、Hooli を辞めてビジネス面の支援をしてくれることになったジャレッドも加わり、5 人で七転 び八起きのスタートアップの茨の道を邁進する・・・というのが、あらすじだ。 人気ドラマシリーズ「シリコンバレー」が風刺するシリコンバレーのスタートアップ事情
  • 42. I-34 (Source: HBO) なぜこのドラマが米国で大人気かというと、まずは、シリコンバレーのテックベンチャーと彼らを取り 巻く環境が精密に描かれていること。第 3 シーズンでは、Twitter 社の元 CEO である Costolo 氏を監修ア ドバイザーに迎え入れ、シリコンバレーのインサイダー中のインサイダーの実体験と視点を取り入れてい るほどだ。そして、一歩引いた客観的な視点からシリコンバレーの内情を風刺しているコメディ性も受け ている。 例えば、 ●スタートアップのピッチでよく耳にする”Making the world a better place”という理想主義的な言葉 が失笑を買っているところ ●ミレニアル世代の理想主義的な若手エンジニアと、「グレイヘア系」ビジネスエクゼクティブの間のす れ違いと亀裂 ●スタートアップが注目を浴びれば浴びるほど訴訟が舞い込んでくる、アメリカの訴訟社会の様子 ●ベンチャーで大儲けした起業家や投資家の桁違いの散財ぶり、でもその一方で成功しても依然として Socially awkward(社交下手)なエンジニア・ギークたち などなど。 エピソードの中には、近い将来のバブルの崩壊の可能性を示唆するような台詞もみられ、現実社会とリ ンクして話題を呼んでいる。ドラマのクリエイターもインタビューの中で、「実際に撮影されてから編集を 経て放映されるまでに、3〜4 ヶ月かかるから、その間にバブルが弾けてました、なんてことにならないこ とを祈るばかりだよ!」と苦笑している。さてさて今後のドラマの展開が楽しみである。 【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.17」より転載(一部修正)】
  • 43. I-35 近年、イスラエルにおけるスタートアップの盛り上がりが注目を浴びている。もともとイスラエルは強 い軍事産業に支えられた優秀なテクノロジー人材の宝庫として、その技術開発力は認知されてはいたもの の、2013 年の Google によるイスラエル発の Waze(地図ナビゲーションアプリのスタートアップ)の買 収なども後押しして、ここ数年でシリコンバレーにおける「イスラエル発スタートアップ」の存在感が一 段と増してきている。 シリコンバレーのイスラエル起業家を支援する NPO 組織である IEFF(Israeli Executives & Founders Forum)のサイトによると、現在シリコンバレーを拠点にするイスラエルのスタートアップは128社(2016 年 9 月時点)もあるという。イスラエルの人口は 800 万人強にすぎないことを考えると、その数は他国と 比べても圧倒的に多いと思われる。さすが人口当たりのスタートアップの数が世界一多い国と言われるだ けある。 Figure1: シリコンバレーのイスラエル系スタートアップ(Source: IEFF) 同様にシリコンバレーを目指す諸外国からの起業家は年々増えているが、特にイスラエル発のスタート アップは注目・実績ともに一歩先を行っている印象がある。その秘密を探りに、シリコンバレーを拠点に、 イスラエル起業家チームを支援するイスラエル系シードステージファンドとして活動している UpWest Labs を訪ね、インタビューを行った。ここ数年で日本や中国やドイツなども、自国の起業家をシリコンバ シリコンバレーのイスラエル発スタートアップ事情
  • 44. I-36 レーで支援する官民含めた活動は盛んになってはいるものの、いまひとつ成果が出ていないと聞くことも 多い。イスラエル系の UpWest Labs は具体的にどのような活動をしているのだろうか? プログラム終了後の現地資金調達成功率は 7 割 UpWest Labs は 2012 年に創業された、イスラエル出身の起業家を支援するシードステージファンドで、 これまで 60 社以上のスタートアップを支援してきた。現在は年間 6〜8 社のスタートアップを厳選してシ ード資金を投資する一方で、シリコンバレーにて 4 ヶ月のプログラムを提供し、現地での資金調達及び事 業展開を支援している。 Figure2: UpWest Labs のウェブサイト 参加チームに対しては、UpWest がビザや宿泊先をアレンジし、米国到着後すぐにプログラムに専念で きる環境を整える。プログラムでは、米国にマーケットエントリーするためのプロダクト・マーケットフ ィットのリサーチから始まり、現地潜在顧客との接触、ビジネスモデルの開発、投資家へのピッチ、現地 でのチームビルディングなどを UpWest やメンターからの支援をうけながら起業家が取り組む。UpWest によると、このような一連の作業は、色々と試した結果、最低 4 ヶ月は必要だという結論に達したという。 実際に、プログラムを修了したチームの 7 割が現地での資金調達を得たという実績があり、外国人起業チ ームとしては、その成功率は非常に高いと言える。 いかにしてそのような高い成功率が可能となるのか? UpWest のディレクターとの会話を通して以下 のヒントを得た。 (1)参加スタートアップの厳選 参加チームを厳選するときのクライテリアは 3 つ。1)イスラエル出身の起業家であること、2)事業の メインのターゲット市場が米国であること、3)プログラム修了後も、米国に腰を落ち着かせて事業展開す ると決心していること。イスラエルの中で優れたスタートアップであったとしても、米国で一から事業を 立ち上げるという決心をしていないチームは選ばないという。日本では、起業コンテストで上位入賞した
  • 45. I-37 チームがその「ご褒美」としてシリコンバレーに短期間滞在したり、「シリコンバレーの空気を吸って現地 の雰囲気を味わうため」にシリコンバレーツアーが提供されることが多いが、そのような「観光客的な」 チームは対象外だという。もっとも、そのような条件に当てはまる優秀なスタートアップがそもそも数多 く存在するという層の厚さが前提となっているというのもあるが、UpWest 自身も自らの投資資金を投じ ているわけで、次につながる案件でなければ先行きが難しくなるというビジネス原理も働いている。補助 金事業とは違うのだ。 (2)チームビルディングの大切さ 参加する起業チームは最低二人から構成されている必要があり、ビジネス担当の CEO と、技術責任者の CTO がいる必要がある。日本の起業チームでは CEO が CTO を兼任しているケースや役割が曖昧なケース が多いが、UpWest の参加チームには誰がビジネス担当で、誰が技術担当かをまずははっきりしてもらう という。またシリコンバレーに来てからは、特にビジネス側の追加チームメンバーとしてはできるだけ現 地のアメリカ人をリクルートすることを推奨している。 また、米国で資金調達するためにも米国に法人を設立し、それを本社とする(米国の投資家は外国本社 のスタートアップにはお金を出したがらないため)。一方、イスラエルには技術開発センターを支社として 置くケースが多い。それはシリコンバレーのエンジニア人材の競争が熾烈で、Google や Apple などの資 金が潤沢な巨大テック企業に対してスタートアップが人材競争をするのは不利である反面、イスラエルで は優秀な技術人材がより低い給料で雇える環境にあるためである。このように、シリコンバレーではビジ ネス機能を、イスラエルには技術開発機能をと、切り分けて運営するケースが圧倒的に多いという。 (3)米国流コミュニケーション術の叩き込み 起業チームは英語を問題なく使いこなせる人がほとんどではあるものの、米国での経験が少ない人にと っては、現地での英語の微妙なニュアンスを理解していないことが多い。そのため、”Talk English”と”Talk American”は違う、ということを分かってもらい、現地企業とのミーティングでどのような会話があった かを議論し、どのように意図を理解すべきか、どのように対応すべきかなど、かなり踏み込んでアドバイ スを行うという。単に技術が良いだけではだめで、いかに現地の慣習に則ったビジネスをできるか、を重 視している。 (4)シリコンバレーの現地コミュニティとのつながり UpWest が主催するイベントや、紹介するメンターやネットワークについては、シリコンバレーの現地 コミュニティとのつながりを意識的に重視している。日本関連の組織の同様の活動では、どうしても現地 の日本人や日本に特別に興味を持っている現地人たちの間での狭いコミュニティ(言わば「シリコンバレ ーの中の日本村」)とのつながりに限定されがちだが、UpWest ではイベント等への参加者の 8 割はイスラ エルとは直接関係のない現地人となっており、いかに現地の本流層に食い込めるかを重視している。その ような層に興味を持ってもらうには、いかに成功実績を作れるかが重要だという。単に、イスラエルは素 晴らしい技術を持っている! と宣伝するだけでは興味を持ってもらえない。やはりこれまでの成功例や 実績があってこそ。そのため、これまで築き上げてきたトラックレコードが、さらに多くの現地人を引き つけるという好循環を生み出しているという。
  • 46. I-38 (5)大きく成功するなら米国かヨーロッパへ イスラエルは人口が 800 万人強という小さい国であることからも、国内市場は限られているため、起業 家として大きく成功するなら、米国かヨーロッパへ行くしかないという考えがそもそも当たり前になって いる。中途半端に国内市場が大きい日本では、まずやりやすい日本で始めて、軌道に乗ったら海外へとい う考えのスタートアップが多い。野心家であるイスラエルの起業家からしてみると、イスラエル市場は、 プロトタイプを検証するためのテスト市場にすぎない。そのため、米国に来てから、米国でのプロダクト・ マーケットフィットの分析を再度行い、大幅に調整をせざるを得ないことも多々あるが、それは当然のこ とと捉えられている。 上記の通り、シリコンバレーでイスラエル系のスタートアップが躍進している理由について、その背景 をほんの一面だが垣間見ることができた。イスラエルの動きは、シリコンバレーへの進出を考えている日 本のスタートアップや、その支援を行う組織に対しても幾つか重要な示唆を与えてくれることだろう。 【VEC Web サイトコラム:「シリコンバレー通信 Vol.18」より転載(一部修正)】
  • 47. I-39 3. 欧州のベンチャー投資動向 Invest Europe(旧名 EVCA:European Private Equity and Venture Capital Association)が公表して いる欧州におけるプライベート・エクイティの 2015 年の活動に関するレポート『2015 European Private Equity Activity』では、大きく分けて以下の 2 つの切り口によってデータが取りまとめら れている。本項では、各図表の下にいずれの視点によるデータであるかを「(注)」で示す。 ① 欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む) ② 欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外 VC 等からの投資を含む) (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity) なお、Invest Europe の調査対象国は以下の 26 カ国およびその他中央・東ヨーロッパ(旧ユー ゴスラビアおよびスロバキア)である。 Invest Europe 調査対象国 オーストリア ドイツ ポーランド バルト三国 (エストニア、ラトビア、リトアニア) ギリシャ ポルトガル ハンガリー ルーマニア ベルギー アイルランド スペイン ブルガリア イタリア スウェーデン チェコ ルクセンブルク スイス デンマーク オランダ ウクライナ フィンランド ノルウェー 英国 フランス その他中央・東ヨーロッパ(旧ユーゴスラビアおよびスロバキアから成る)
  • 48. I-40 (1) 欧州のプライベート・エクイティ投資の状況 欧州のプライベート・エクイティ投資において、その投資金額は「バイアウト投資」の占める 割合が圧倒的に大きく、2011 年~2015 年の 5 年間でみると、いずれの年も他形態の投資の 5 倍 以上である。「バイアウト投資」以外では、事業拡大を目指す比較的成熟した企業への投資を目 的とした「グロース投資」、次いで「VC 投資」の順となっている。 プライベート・エクイティ投資全体で投資金額をみると、2012 年以降は「バイアウト投資」 をはじめ、「グロース投資」「VC 投資」も年々伸びている。 投資先社数については「VC 投資」がもっとも多く、他形態の投資と比較して、1 社当たりの 投資規模は非常に小粒であることがわかる。一方、投資金額では他と大差をつけている「バイア ウト投資」の投資先社数は「グロース投資」に次ぐ 3 番目であり、1 社当たりの金額が大きいこ とを示している。 図表 2-23 投資形態別の投資金額の推移 (注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による投資(欧州外への投資を含む) (注 2)「グロース投資」…事業拡大を目指す比較的成熟した企業への投資 次ページ以降は、欧州における「VC 投資」を中心に解説していくが、「VC 投資」のデータを 読み取る際に注意すべき点がある。Invest Europe では、比較的成熟したベンチャー企業への投資 については「グロース投資」としてデータを取りまとめているため、「グロース投資」のデータ の中には、VC から出資を受けた企業についても一定割合で含まれている。そのため、「VC 投資」 のデータについては、実際の数字よりも小さく出ている可能性がある。 39.5 33.9 34.3 36.1 39.9 358.8 287.1 297.3 317.6 365.3 52.4 41.4 36.7 54.6 60.8 19.7 14.6 12.9 10.3 8.1 3,186 3,132 3,206 3,408 3,006 894 904 857 968 954 958 1,090 1,145 1,294 1,130 185 186 168 146 128 0 900 1,800 2,700 3,600 0 100 200 300 400 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (社数)(億ユーロ) VC(金額) バイアウト(金額) グロース(金額) その他(金額) VC(社数) バイアウト(社数) グロース(社数) その他(社数) (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
  • 49. I-41 (2) 2015 年のベンチャー投資の状況 ① VC 投資金額・社数 2015 年のベンチャー投資は、3,006 社に対して総額 39.9 億ユーロであった。過去 5 年間でみる と、2011 年の 39.5 億ユーロから一旦減少した投資金額は、2012 年以降緩やかに上昇している一 方で、投資件数はほぼ横ばいである。 図表 2-24 VC 投資金額および投資先社数の推移 (注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む) 39.5 33.9 34.3 36.1 39.9 3,186 3,132 3,206 3,408 3,006 0 700 1,400 2,100 2,800 3,500 0 10 20 30 40 50 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (社)(億ユーロ) 投資金額 社数 (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
  • 50. I-42 ② VC 投資の業種別内訳 欧州内のベンチャー企業に対する 2015 年のベンチャー投資金額 38.1 億ユーロ(欧州内のベン チャー企業に対する投資)の内訳を業種別にみると、「ライフサイエンス」(33.9%)、「コンピュ ータ・コンシューマエレクトロニクス」(19.9%)、「通信」(18.6%)のトップ 3 で全体の約 7 割 以上を占めている。一方、投資先社数は、投資金額のトップ 3 とメンバーは変わりないが、トッ プは「コンピュータ・コンシューマエレクトロニクス」(25.6%)、次いで「ライフサイエンス」 (22.4%)、「通信」(15.5%)となっている。 図表 2-25 業種別投資金額内訳 *その他…工業サービス 1.9%、化学 1.2%、運輸 1.1%、その他 0.4%、農業 0.2%、不動産 0.2%、建設 0.04% (注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外からの投資を含む) 図表 2-26 業種別投資先社数内訳 *その他…化学 1.8%、金融 1.4%、その他 1.0%、運輸 1.0%、農業 0.7%、不動産 0.3%、建設 0.2% (注)欧州内のベンチャー企業に対する投資(欧州外からの投資を含む) ライフサイエンス 33.9% コンピュータ・コン シューマエレクトロ ニクス 19.9% 通信 18.6% 消費財・小売 7.0% 消費者サービス 5.8% エネルギー・環境 3.6% 工業製品 3.3% 金融 2.8% その他* 5.1% 総VC投資金額 38.1億ユーロ (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成) コンピュータ・コン シューマエレクトロ ニクス 25.6% ライフサイエンス 22.4% 通信 15.5% 工業製品 9.7% 消費財・小売 6.9% エネルギー・環境 5.8% 工業サービス 4.1% 消費者サービス 3.7% その他* 6.3% 総VC投資先社数 2,836社 (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
  • 51. I-43 ③ VC 投資のステージ別内訳 Invest Europe では、ステージを以下の 3 つに区分している。VEC の年次報告におけるステー ジ区分との比較を下記に示す。 Invest Europe VEC 1 シード 1 シード 2 スタートアップ 2 アーリー 3 レーター 3 エクスパンション 4 レーター (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity) 2015 年のベンチャー投資の総額 39.9 億ユーロをステージ別でみると、「スタートアップ」と「レ ーター」を合わせて全体の 96.7%を占めており、「シード」は全体の 3.3%に留まっている。いず れのステージにおいても過去 5 年間で投資金額の大きな変化はみられない。 図表 2-27 ステージ別投資金額の推移 (注)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む) 1.7 1.2 1.2 1.0 1.3 20.0 18.7 17.9 19.0 20.8 17.8 14.0 15.2 16.0 17.8 0 10 20 30 40 50 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (億ユーロ) シード スタートアップ レーター (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成) (39.5) (33.9) (34.3) (36.1) (39.9) ( )の数値は全ステージの合計金額 44.6% 52.1% 3.3%
  • 52. I-44 次に、2015 年のステージ別投資先社数をみると、「スタートアップ」が 6 割以上を占めており、 「シード」と合わせると 8 割近くに及ぶ。過去 5 年間でみても、欧州では若いベンチャー企業に 数多く投資していることがわかる。 図表 2-28 ステージ別投資先社数の推移 (注 1)欧州内の投資家[VC を含む PE 会社]による VC 投資(欧州外への投資を含む) (注 2)合計社数とステージの内訳社数の合計は一致しない e.g. 1 つの企業が同年に別ステージで計 2 回出資を受けた場合、各ステージで 1 社ずつカウントし、 合計社数では 1 社とカウント (注 3)構成比は内訳合計を 100 として算出 428 367 422 478 440 1,792 1,922 1,875 2,038 1,906 1,013 898 950 926 715 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (億ユーロ) シード スタートアップ レーター (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成) (3,186) (3,132) (3,206) (3,408) (3,006) ( )の数値は全ステージの合計社数 23.3% 62.3% 14.4%
  • 53. I-45 (3) 欧州内 VC ファンドによる 2015 年の資金調達状況 ① VC ファンド資金調達額・本数 2015 年の欧州内の VC ファンドによる資金調達額は、98 本のファンドで 53.3 億ユーロであっ た。2014 年と比較すると、ファンド本数は 24%減少しているが、調達額は約 8%増えている。 過去 5 年間でみると、2012 年にいったん落ち込んだ調達額は、2013 年以降は年々増加してお り、2015 年には過去 5 年間で最高額に達している。一方、ファンド本数は 2011 年の 152 本から 2015 年の 98 本へとほぼ右肩下がりに減少している。したがって、1 ファンド当たりの調達額は ここ数年で増加しつつあることがうかがえる。 図表 2-29 VC ファンドの資金調達額および本数の推移 (注 1)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象 (注 2)調達額の一部にキャピタルゲインを含む 51.9 38.8 46.1 49.5 53.3 152 117 113 129 98 0 30 60 90 120 150 180 0 10 20 30 40 50 60 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (本)(億ユーロ) 資金調達額 ファンド本数 (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
  • 54. I-46 次に、ファンドの資金調達額および本数の推移を重点ステージ別に比較する。総調達額のもっ とも多くの割合を占める「アーリー特化型」ファンドの 2015 年の調達額は、過去 5 年間で最高 額の 27.1 億ユーロに達している。また、全体に占める割合は小さい「レーター特化型」も前年 対比 3 倍の 8.7 億ユーロと 2011 年に次ぐ調達額となっている。一方、「バランス型」の調達金額 は、2013 年をピークに減少傾向にある。 ファンド本数でみると、過去 5 年間で 2015 年の調達額が最高額となった「アーリー特化型」 の本数は 2014 年と比べて約 3 割減少しており、過去 5 年間でみてももっとも少なくなっている。 また、「レーター特化型」および「バランス型」も、2011 年から緩やかながら右下がりの傾向を 示している。 図表 2-30 VC ファンドの重点ステージ別資金調達額および本数の推移 (注 1)欧州内に運営基盤がある VC ファンドが対象 (注 2)調達額の一部にキャピタルゲインを含む 19.8 21.9 17.1 23.9 27.1 9.9 2.2 3.4 2.9 8.7 22.2 14.6 25.5 22.6 17.5 74 60 58 80 57 20 11 9 10 6 58 46 46 39 35 0 15 30 45 60 75 90 0 10 20 30 40 50 60 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (億ユーロ) アーリー特化型(金額) レーター特化型(金額) バランス型(金額) アーリー特化型(本数) レーター特化型(本数) バランス型(本数) (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
  • 55. I-47 ② VC ファンドの出資者 2015 年に新規に組成された VC ファンド 98 本の出資者内訳を金額比率で比較すると、もっと も高い割合を占めているのは、「不明」を除き、「政府系機関」(20.6%)である。二番手は「事 業法人」であるが、「政府系機関」の半分以下の金額に留まっている。 図表 2-31 VC ファンドの出資者内訳(金額比率) (注)欧州内に運営基盤のある VC ファンドの出資者(欧州外からの調達を含む) 政府系機関 20.6% 事業法人 9.5% ファンドオブファンズ 7.8% その他資金管理会社 7.0% 財団・基金 5.7% 個人・親族 4.9% 年金基金 4.7% ファミリーオフィス 2.9% 保険会社 1.8% 銀行 0.8% 資本市場 0.2% 教育機関 0.05% 不明 34.1% 出資総額 53.3億ユーロ (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)
  • 56. I-48 (4) 2015 年の Exit 状況 ① VC 投資案件の Exit 戦略別社数 2011 年から 2015 年までの 5 年間について、VC 投資案件の Exit を回収方法別にみると、「売却 (M&A を含む)」および「償却」が主な Exit ルートとなっている。特に、2015 年は「売却(M&A を含む)」の割合が過去 5 年間でもっとも高く、全体の約 4 分の 1 を占めている。Exit 件数の推 移については、ほぼ変化はみられず、毎年 1,000 社程度を維持している。 図表 2-32 VC 投資案件の Exit 戦略別社数の推移 (注 1)欧州内の企業に対する投資の Exit 社数(欧州外 PE 会社[VC 含む]による Exit を含む) (注 2)合計社数と Exit ルートの内訳社数の合計は一致しない e.g. 2 つの異なるファンドが 1 つの企業について、別の方法で株式を手放す場合、各 Exit ルートで 1 社ずつカウントし、 合計社数では 1 社とカウント 212 164 215 221 248 71 47 77 84 77 233 252 278 269 243 290 243 202 191 203 60 103 79 81 86 60 63 46 65 58 13 52 14 13 35 97 78 93 90 70 31 31 26 21 12 0 200 400 600 800 1000 1200 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (社) (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成) その他による回収 経営陣への売却 金融機関への売却 他のPE会社への売却 資本的なローンの返済 匿名組合の返済 償却 株式公開 売却(M&Aを含む) (1,030) (1,012) (1,008) (1,012) (1,005) ( )の数値は全Exitルートの合計社数
  • 57. I-49 (5) 2015 年のベンチャー投資の状況(国別) 2015 年の投資状況を PE/VC 会社が所在する国別にみると、投資金額についてはイギリス、フ ランス、ドイツの順で多く、それ以外の国は 2 億ユーロ以下に留まっている。欧州の総投資金額 34.9 億ユーロ(欧州内の投資家による欧州内のベンチャー企業に対する投資金額合計)のうち、 イギリス、フランス、ドイツの 3 カ国で 6 割以上を占めている。 投資先件数をみると、投資金額では 3 番手のドイツがもっとも多くのベンチャー企業に投資し ている。ドイツの投資先社数 817 社は、金額トップのイギリスの 3 倍以上であり、少額投資が多 いことがうかがえる。 図表 2-33 PE/VC 会社の所在国別 VC 投資金額および投資先社数(2015 年) (注)欧州内のベンチャー企業に対する投資 8.0 7.0 6.7 2.0 1.9 1.4 1.3 1.0 0.9 0.8 0.7 0.7 0.6 0.4 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 0.1 0.04 0.04 0.01 0.01 241 367 817 220 85 335 78 173 82 66 108 52 47 28 37 62 92 56 64 24 3 11 2 1 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 (社数)(億ユーロ) 投資金額 投資先社数 (出所:Invest Europe, 2015 European Private Equity Activity, VEC作成)※ギリシャは投資金額、投資先社数ともに“0”