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中間圏における大気大循環の
南北両半球の比較
加藤諒一(九大・理)
廣岡俊彦(九大院・理)
江口菜穂(九大・応力研)
研究背景(上部成層圏)
80°𝑺
80°𝑵
W W
W W W
E
E E
E
E
太陽放射の影響を強く受け、
南北両半球ともに夏季に極大、
冬季に極小
夏季に東風、冬季に西風
春分秋分の時期には東西風
が弱い
気温、東西風ともに冬季には大きな変動が見られ、
その変動は北半球で特に顕著
帯状平均気温 帯状平均東西風
緯
度
(Hirota et al.,1983による)
目的
⇨成層圏・中間圏の全球的な解析を行った。
1. 中間圏における循環の南北両半球の比較
南北両半球の相違点・共通点
2. 中間圏と上部成層圏の循環の比較
中間圏と上部成層圏の相違点・共通点
使用データ
使用データ Aura EOS/MLS Version 4.2 Level 2 data
解析期間 2004年8月8日~2015年12月31日
使用変数 気温(T)、ジオポテンシャル高度(GPH)
鉛直層数 42層(261~0.001hPa;高度約10~97km)
水平解像度 経度緯度5°×5°格子
解析手法
1. もとの格子点値に東西方向のフーリエ解析を行い、
帯状平均場とプラネタリー波成分の振幅を求めた。
2. 帯状平均東西風はGPHから傾度風平衡の式を用い
て求めた。
⇨帯状平均気温・東西風、プラネタリー波の振幅について
時間変化を南北両半球で比較した。
CIRAモデルとの比較
帯状平均気温
(緯度高度分布)
 冬季において、高度約
10~30kmと高度約
50kmの高緯度から極
域にかけて、気温の南
北勾配が南半球の方が
大きい
 中間圏以高については、
MLSの観測データとの
相違が見られる
CIRA MLS
NH
高
度
SH
1月
7月
高
度
CIRAモデルとの比較
帯状平均東西風
(緯度高度分布)
 冬季成層圏の西風の
極大値が南半球の方
が倍以上大きい
 気温と同様、中間圏
以高でMLSの観測
データとの相違が見
られる
CIRA MLS
NHSH
高
度
1月
7月
SH NH
高
度
 太陽放射分布とは逆の、夏季
低温・冬季高温の逆温度勾配
となっている
 0.02hPa面では夏季におい
ても変動が見られる
 SSW発生時降温
70°𝑵
70°𝑺
70°𝑺
70°𝑵
1hPa
(高度約48km)
0.02hPa
(高度約75km)
帯状平均気温
 冬季は西風、夏季は東風
 西風の極大値は南半球の
方が大きい
 0.02hPa面では冬季中
緯度から高緯度で西風が
弱く、東風領域において
も変動が見られる
1hPa
(高度約48km)
0.02hPa
(高度約75km)
帯状平均東西風
緯
度
緯
度
(時間緯度断面)
 0.02hPa面において
も大きな振幅が見ら
れる。
 SSW発生前に増幅し
た振幅は、発生後に
小さくなり、その後
緩やかに回復してい
る
1hPa
(高度約48km)
0.02hPa
(高度約75km)
波数1成分の振幅
緯
度
緯
度
波数1成分の振幅
 振幅の極大は高度
40~60kmにあり、高い高
度まで非常に大きい。
 SSW発生後の振幅の回復
は成層圏に先行して中間圏
で起こっている。
 西風極大の位置と振幅極大
の位置は一致している。
(時間高度断面 70°N)
高
度
波数1成分の振幅
 振幅の極大は高度
40~60kmにあり、高い高
度まで非常に大きい。
 SSW発生後の振幅の回復
は成層圏に先行して中間圏
で起こっている。
 西風極大の位置と振幅極大
の位置は一致している。
(時間高度断面 70°N)
高
度
波数1成分の振幅
 振幅の極大は高度
30~50kmにあり、北半球
に比べ振幅は小さい。
 西風極大の位置と振幅極大
の位置はよく一致している。
 西風が非常に強く、プラネ
タリー波が鉛直伝播できな
い。
 西風が弱まる晩冬の70km
付近に極大が現れ、季節進
行とともに下降する。
(時間高度断面 70°S)
高
度
波数1成分の振幅
 振幅の極大は高度
30~50kmにあり、北半球
に比べ振幅は小さい。
 西風極大の位置と振幅極大
の位置はよく一致している。
 西風が非常に強く、プラネ
タリー波が鉛直伝播できな
い。
 西風が弱まる晩冬の70km
付近に極大が現れ、季節進
行とともに下降する。
(時間高度断面 70°S)
高
度
まとめ
1. 中間圏における循環場の南北両半球の比較
 帯状平均気温、東西風ともに南北両半球の間で顕著な相
違が見られた。
 冬季においては成層圏突然昇温を始めとする大規模な変
動が見られ、その変動は北半球の方が大きい。中間圏に
おいては夏季・冬季いずれも細かい変動が見られる。
2. 中間圏と上部成層圏の循環場の比較
 冬季中高緯度では西風が弱い。
 重力波の砕波によって東西風が減速され、温度風平衡の
関係から逆温度勾配が生じており、中間圏特有の循環場
を作っている。
今後の課題
今後はより定量的な解析を行うため、運動方程式の各
項の寄与をそれぞれ計算し、メカニズムを追う予定で
ある。
使用した観測データセットには、気温と等圧面高度だ
けでなく他の物理量もあるため、それぞれについて解
析を行うことで中間圏の大気大循環についてより深い
考察が可能になると考えられる。

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