課題再開時の注意の転換と前島皮質および前頭前野の活性化の関連性
- 4. 課題遂行の繰り返しによる自動的な集中の持続と,中断か
らの復帰を実験的に取り扱う認知課題にCued-switching
task (CST) がある (Sidlauskaite et al., 2014;
2016)
課題遂行(命令刺激)と課題予告(警告刺激)を用いることで,
課題遂行と課題遂行の準備を分けて評価することが可能
中断後の課題再開と課題遂行の繰り返しでは警告刺激に対する
前島皮質 (anterior insula: AI)の反応に差があることを明ら
かにした
中断後の課題再開は反応時間が有意に遅延
注意の転換には,AI が重要な役割を担うことを示唆
より詳細な注意の転換の神経基盤を明らかにするために,
以下の3点を検討
1.連続的課題と課題再開での課題遂行(命令刺激) に対する
脳活動の違い
2.反応時間の個人差と関連する脳活動
3.連続的課題と課題再開での前島皮質の機能的結合性の違い
- 5. 課題と刺激: 短縮版 Cued-switching task (CST)
Sidlauskaite et al. (2014) に基づきE-Prime2上で短縮版CSTを
作成(全118試行)
Task試行は直前の試行によりRest-TaskとTask-Taskに分類
警告刺激が Rest
cue
次の警告刺激まで安静に待つ(課題なし)
警告刺激が Task
cue
課題遂行の準備をし命令刺激の呈示を待つ
+
500 3500-
5500
500
Rest cue
1000
+ 3
Rest trial
Task trial Task cue
1000
500 3500-
5500
500
1000 1000
(ms)
(ms)
odd even
1-4, 6-9
- 6. 参加者
健常成人32名(女性8名,左利き8名, 23.47±4.24歳)
データの取得と解析
MRI: Siemens MAGNETOM Skyra 3T MRI + 20chヘッドコイル
fMRIデータ取得
GRE-EPI (TR=1000ms, TE=30ms, FA=80°, 3.3x3.3x3.2mm voxel)
fMRIデータ解析
ソフトウェア: MATLAB & SPM12
解析内容
1 or 2標本t検定: Rest-Task/Task-Task条件における警告/命令刺激に
対する脳活動部位の同定、Task条件間の比較
相関解析: 上記脳活動とボタン押し反応時間との相関
PPI: 前島皮質 (AI)と相関した活動を示す脳部位の同定、
活動の相関性のTask条件間での比較
- 10. -10
-5
0
5
10
15
-300 -100 100 300
脳活動量
反応時間 (ms)
-2
-1
0
1
2
-300 -100 100 300
脳活動量
反応時間 (ms)
-6
-3
0
3
6
-300 -100 100 300
脳活動量
反応時間 (ms)
-8
-4
0
4
8
-300 -100 100 300
脳活動量
反応時間 (ms)
right AI
[34, 22, -6]
left AI
[-40, 18, -2]
前帯状回
[-16, 22, 30]
外側前頭前野
[-42, 12, 54]
Task-Task条件の「課題の遂行」時の脳活動には 反応
時間と負の相関関係があった
A
B
C
Task-Task条件において命令刺激に対するAI・前帯状
回・外側前頭前野の活動が大きい人ほど反応が速い
D
- 12. Default mode network (DMN)の活動は,課題遂行時に低下
することが知られており (Harrison et al., 2008) ,
Task-Task条件の警告刺激に対するDMNの活動低下は,すでに
課題遂行状態であることを示している
警告刺激に対する反応性がRest-Task条件とTask-Task条件
間で異なるのは,中断後の課題再開 (Rest-Task条件) では
注意の転換が必要と考えられる
AIを含むSalience network (SN) は,
休憩から課題再開に脳の状態を切り替える
役割を担う (Sridharan, 2008)
Rest-Task条件では,課題に集中してお
らず警告刺激に顕著性があり,SNが活動し
課題遂行に備える
一方,Task-Task条件では課題へ集中して
おり注意の転換は必要がないため,SNの活
動は必要ない