日本情報考古学会第44回大会P-1
要旨:電子機器・コンピュータの発展とともに考古学資料の計測・記録・図化方法は多様化、高精度化した。しかしどのような機器・手法を用いてもオリジナルを100%再現することはできず、手法や記録・再現媒体の制約により情報の取捨選択・縮約・抽象化は必ず行われる。学史の上では、限られた可能な選択肢の中で目的に沿って最大の効果を得ることが模索されてきたが、それが定着・一般化すると目的より方法の順守が優先されるケースも見られる。記録される情報の標準化という観点からは一定のメリットもあるが、選択肢が増えた時点で再評価が必要なことは言うまでもない。
本発表では高密度点群・メッシュによる3D計測の普及をふまえて、従来の手法の限界と、新たな手法の導入による可能性を議論する。具体的には、土器様式論と密接に結びついている小林行雄による土器実測法と、製作技術の復元を一義的な目的としていた松沢亜生による石器実測図表現を取り上げ、それらが提唱当時の目的/制約の中でどのように確立されたのかを検討する。続いて、3D計測データから取得可能になった属性情報が、従来の方法を補完・更新するポテンシャルについて議論し、今後の有り方を展望する。