9. 6.1.1 負定値カーネル
[証明]
› ): を負定値とする.ci 2 C (i = 1; : : : ; n) を任意にとり,c0 := `
Pn
i=1 ci
とすれば, の負定値性から任意の x0; x1; : : : ; xn 2 X に対して,
nX
i=0;j=0
ci—cj (xi; xj) » 0
が成り立つ.上式の左辺は i = 0; j = 0 の場合を外に出せば:
n
X
i=0;j=0
ci—cj (xi; xj) =
n
X
i=0
n
X
j=0
ci—cj (xi; xj)
=
n
X
i;j=1
ci—cj (xi; xj) + c0
n
X
i=1
ci (xi; x0) + c0
n
X
j=1
cj (x0; xj) + jc0j2
(x0; x0)
=
n
X
i;j=1
cicj (xi; xj) `
n
X
i;j=1
cicj (xi; x0) `
n
X
i;j=1
cicj (x0; xj) +
n
X
i;j=1
cicj (x0; x0)
= `
n
X
i;j=1
cicj’ (xi; xj)
となって,
Pn
i;j=1 cicj’ (xi; xj) – 0 から ’ は正定値である. ✷
9
13. 6.1.2 カーネルを生成する操作
命題 6.8
: X ˆ X ! C を,集合 X 上の負定値カーネルとする.任意の x; y 2 X について
(x; y) – 0 を満たす時,任意の ¸ > 0 について
log (¸ + (x; y))
は負定値カーネルとなる.また, (x; y) > 0 である時,
log ( (x; y))
は負定値カーネルとなる.
[証明]:積分表示
log (1 + (x; y)) =
Z 1
0
“
1 ` e`t (x;y)
” e`t
t
dt
により,命題 6.6 と同様に被積分関数が負定値カーネルであることから
log (1 + (x; y)) は負定値カーネルである.したがって,
log (¸ + ) = log
`
1 + 1
¸
´
+ log ¸ も負定値である.
[Remark]:
命題 6.1(3):
「任意の関数 f に対して, (x; y) = f (x) + f (y) は負定値カーネル.」
から, (x; y) := x + y は R 上の負定値カーネルであるので,
(x; y) = log (x + y) は (0; 1) 上の負定値カーネルである.13
14. 6.1.2 カーネルを生成する操作
以下の命題を用いれば,負定値カーネルから正定値カーネルを生成できる.
命題 6.9 負定値カーネルから正定値カーネルを生成
負定値カーネル が Re (x; y) – 0 を満たす時,
1
(x; y) + a
は正定値カーネルである.ただし,a は正の定数.
[証明]:積分表示
1
(x; y) + a
=
Z 1
0
e`t( (x;y)+a)
dt
より,命題 6.6 と同様にして被積分関数の正定値性から,正定値性をえる. ✷
14
15.
16. 6.2 Bochner の定理
Rn 上のカーネル k が平行移動不変である,とは Rn 上の関数:ffi があって,
k (x; y) = ffi (x ` y) と書けることである.(2 要素の差にのみ依存するカーネル e.g.
RBF カーネル) カーネルが平行移動不変であることは
k (x; y) = k (x + z; y + z) (8z 2 Rn) と同値である.
定義:正値関数
Rn 上の関数 ffi が正値である,とは
k (x; y) := ffi (x ` y)
により定義されるカーネル k が正定値であることをいう.
定理 6.10 Bochner の定理
ffi を Rn 上の複素数連続関数とする.この時 ffi が正値であることの必要十分条件は,Rn 上
の有限な非負 Borel 測度 ˜ があって,
ffi (x) =
Z
e
p
`1!Tx
d˜ (!) (6.1)
と表されることである.
16
17. 6.2 Bochner の定理:証明
› 十分性:
ffi (x) =
Z
e
p
`1!Tx
d˜ (!)
と表されるとする.
e
p
`1!T(x`y) = e
p
`1!Txe`
p
`1!Ty = e
p
`1!Txe
p
`1!Ty であるから
(純虚数 z に対して `z = z であることと exp
`
z
´
= exp (z) を使った),以下の
カーネル:
K (x; y) := ffi (x ` y) =
Z
e
p
`1!Tx
e
p
`1!Tyd˜ (!)
の被積分関数は命題 2.5(2) から正定値カーネルである.よって,その積分値として得
られる K も正定値カーネルであり,ffi は正値である. ✷
› 必要性: 省略.
Bochner の定理は,任意の正値連続関数が fe
p
`1!Tx j ! 2 Rng の非負結合とし
て表されることを主張している.
17
18. 6.2 周波数領域で見た RKHS, 命題 2.19
平行移動不変な正定値カーネルは周波数領域において陽な形で表現できる.(e.g. RBF
カーネル,ラプラスカーネル)
平行移動不変なカーネル K が以下のような形をもつと仮定する.
K (x; y) =
Z
e
p
`1!T(x`y)
ȷ (!) d!
ただし,ȷ は連続で,ȷ (!) > 0;
R
ȷ (!) d! < 1.
この時,K を再生核とする RKHS:HK は
HK =
(
f 2 L2
(R; dx) j
Z ˛
˛ ^f (!)
˛
˛2
ȷ (!)
d! < 1
)
hf; gi =
Z
^f (!) ^g (!)
ȷ (!)
d!
ただし, ^f は f の Fourier 変換: ^f (!) = 1
(2ı)m
R
f (x) e`
p
`1!Txd!
18
41. 正定値カーネルに対応する RKHS の陽な表示
Mercer の定理を用いると,正定値カーネルに対応する RKHS と,その内積の陽な表示を
与えることができる.(2.2.2.b:有限集合上の RKHS の表示の拡張として与えることがで
きる)
Mercer の定理と同じ条件の元,積分作用素 TK の非ゼロ固有値に対応する単位固有ベクト
ルに N (TK ) の正規直交基底を付け加えて L2 (˙; —) の完全正規直交基底 fffiig1
i=1
を構
成する.すると,fffiig1
i=1
はシャウダー基底となり,任意の f 2 H はそれらの基底の線
型結合として:
f =
1X
i=1
aiffii (ただし ai 2 R)
とできる.これを用いて L2 (˙; —) の部分ベクトル空間 H を
H :=
8
<
:
f 2 L2
(˙; —) j f =
1X
i=1
aiffii;
1X
i=1
jaij2
–i
< 1
9
=
;
(6.11)
により定義する.また,f =
P1
i=1 aiffii 2 H と g =
P1
i=1 biffii 2 H に対して,内
積を
hf; giH :=
1X
i=1
aibi
–i
(6.12)
と定める.このように定めた H が K を再生核とする RKHS になることを示す.41
42. H が正定値カーネルに対応する RKHS であること:証明 1
まず H がヒルベルト空間である (完備である) ことを示す.
ffng1
n=1 を H の Cauchy 列とする.式 6.11 から fn =
P1
i=1 ¸n;iffii とおくことが
できて,
P1
i=1
j¸n;ij
2
–i
< 1 であるので,
tn :=
(
¸n;i
p
–i
)1
i=1
は数列空間 l2 の Cauchy 列である.l2 は完備なので,ある t = f˛ig1
i=1 2 l2 が存在
し,tn ! t (n ! 1) である.この時,¸˜
i
:=
p
–i˛i とすると,
1X
i=1
˛
˛¸˜
i
˛
˛2
–i
=
1X
i=1
j˛ij2
< 1
`
f˛ig1
i=1 2 l2
から
´
1X
i=1
˛
˛an;i ` a˜
i
˛
˛2
–i
! 0
が成り立つ.すると,f =
P1
i=1 a˜
i
ffii 2 H に対して,kfn ` fkH ! 0 を得る.
42
43. H が正定値カーネルに対応する RKHS であること:証明 2
次に,H が K を再生核に持つことを示す.
K (x; ´) =
P1
i=1 –iffii (´) ffii (x) において,Mercer の定理から K (´; x) 2 H であ
る.8f =
P1
i=1 aiffii 2 H に対し,
hf; K (´; x)iH =
1X
i=1
ai–iffii (x)
–i
=
1X
i=1
aiffii = f (x)
となり,再生性が確認できた. ✷
以上から,正定値カーネルに対応する RKHS は式 6.11 で与えられる H に一致し,その
内積は式 6.12 のように,級数として与えられる.
43
44. ヒルベルト空間上の確率変数の平均
H:ヒルベルト空間 (関数空間),F :H 上の確率変数.ただし,E[kF k] < 1.
この時,f 2 H に対して H 上の線形汎関数 ffiF : H ! R を以下のように定める:
ffiF (f) := E[hf; F i]
リースの表現定理から,任意の f 2 H に対して,ある mF 2 H が存在し,
hf; mF i = ffiF (f) が成り立つ.よって
ffiF (f) = E[hf; F i] = hf; mF i (8.1)
をえる.この mF を確率変数 F の平均と呼び,E[F ] で表す.この時,
E[hf; F i] = hf; mF i = hf; E[F ]i
となり,平均と内積の操作は交換可能である.
44
45. RKHS における平均
(X; B):可測空間,X:X に値をとる確率変数,RKHS:(Hk; k) を考える.ただし,
E[
p
k (X; X)] < 1 を仮定する.
特徴写像 ˘ (x) = k (´; x) に対して,再生性から
k˘ (X)k2
= hk (´; X) ; k (´; X)i = hkX ; kX i = kX (X) = k (X; X)
が成り立つことに注意すれば,E k˘ (X)k < 1 となり,前項の仮定を満たし,確率変数
˘ (X) の平均 mk
X が存在する.この時,mk
X を,X の Hk における平均,と呼ぶ.式
(8.1) および再生性から,任意の f 2 H に対して
˙
f; mk
X
¸
= E[hf; ˘ (X)i] = E[f (X)] (8.2)
となり,任意の f に対して期待値 E[f (X)] が f と mk
X の内積で表される.
平均 mk
X の陽な表示を求める.mk
X 2 H から,任意の y 2 X について,再生性を用い
ると
mk
X (y) =
˙
mk
X ; k (´; y)
¸
= hE (˘ (X)) ; k (´; y)i
= E hk (´; X) ; k (´; y)i = E[k (X; y)] (8.8)
となって,平均 mk
X はカーネル関数の期待値として与えられる.
45