細胞培養と遺伝子改変植物
- 2. 細胞培養の歴史
• 挿木の技術は古代から知られていた(※)
• 1665年、Robert Hookeが細胞(細胞壁)を発見。
• 1892年、Klerchkerがプロトプラストを機械的な方法で分離。
• 1902年、Haberlandtが遊離細胞の培養を試みる。分化全能性の概念を提唱。
• 1910年、E. KüsterがKlerchkerの方法で得たプロトプラストで細胞融合を観察。
• 1926年、Wentがオーキシンの存在を示唆。
• 1931年、KöglがオーキシンとしてIAAを分離、同定。
• 1935年、Whiteがトマト根の長期継代培養に成功。
• 1939年、R. J. Gautheret(仏)、P. Nobécourt(仏)、White(米)がそれぞれ独立に植物組織の培養に成功。
• 1953年、WatsonとCrickによるDNAの分子構造決定。
• 1954年、Muir、Hildebrandt、Rikerにより遊離細胞の培養が成功。
• 1955年、Skoogらがカイネチン(サイトカイニンを発見。1926年のWent、1931年のKöglの研究で発見されていたオーキシン
(IAA)と組み合わせ、器官分化の研究が盛んに。
• 1958年、Stewardらがニンジンの単細胞から個体を再生。
• 1960年、Cockingが酵素を用いたプロトプラスト作成法を考案。プロトプラストを用いた研究が盛んに。
• 1962年、MurasigeとSkoogによるMS培地の考案。
• 1967年、GellertらがDNAリガーゼを発見。
• 1970年、Smithらが制限酵素を発見。
• 1970年、マンデルと比嘉が塩化カルシウム法による細胞へのDNA導入法を考案。
• 1972年、BergとKaiserが2分子のDNAから1分子環状DNAを作成。
• 1973年、BoyerとCohenが制限酵素、DNAリガーゼにより切断・連結した2種類のプラスミドを大腸菌に導入し、形質を
転換。組換えDNA技術が確立される。
• 1974年、KaoらとWallinらが独立にポリエチレングリコールを用いた高率の細胞融合法を考案。細胞融合の研究が急速に進
む。
• 1983年、Zambryskiらがアグロバクテリウム法により遺伝子組換えタバコを作出する。
• 1994年、遺伝子組換え作物としてトマトのFlavr Savrが米カルジーン社より発売される。
※ asahi.com: イチジクが最古の作物?米ハーバード大研究班が発表http://www.asahi.com/science/news/JJT200606020004.html
12年4月22日日曜日
- 3. 胚と不定胚
• 胚:種子の中にあり、小さな葉、
根を含んでいる。
• 不定胚:培養細胞塊に適当な比率
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/2-1.html
のオーキシン、サイトカイニンを
与えると得られる胚と同様な器
官。機能も胚と同様で完全な植物
体に再生できる。
http://www8.ocn.ne.jp/~rinse-21/page8/jyouhou18.3.htm
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- 4. プロトプラスト
• 細胞壁がない状態の細胞のこと
• 現在では細胞壁分解酵素を使って作る
方法が一般的
• 1892年にJ. Klerckerが作り出した方法は原
形質分離させた後に絞り出すというや http://www.sho-oh.ac.jp/blog_old/bio/2008/10/no306.html
り方
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- 5. カルス
• 未分化細胞の塊
• 植物の切断面に形成され、永続的な培養
が可能
• 適当な比率でオーキシン、サイトカイニン
を与えることでも作成できる(脱分化)
• オーキシンとサイトカイニンの比率によ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B9_(%E6%A4%8D%E7%89%A9)
り様々に再分化するが、一般的にはオー
キシンが多ければ不定根が、サイトカイ
ニンが多ければ不定芽が分化する。
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- 6. 葯培養
• 葯に含まれる花粉は半数体なの
で、葯を培養して作り出した植物
も半数体になる。
• 半数体をコルヒチン処理で倍加す
ると元の2倍体の植物になるが、こ
のとき全ての遺伝子がホモになる http://www.agri.hro.or.jp/center/kankoubutsu/hagres/no01.htm
ため、形質が完全に固定される。
• イネの育種への応用が有名。
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- 8. パーティクルガン法
• 金などの金属の微粒子にDNAを
コーティングし、高圧ガスの圧力な
どを利用して高速で細胞に打ち込ん
でDNAを導入するという力技
• どんな資料にも使えるが高率が悪い
• 昔の火薬を使うタイプは銃刀法に抵 wikipedia: パーティクル・ガン法
触するので許可が必要だったらしい
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- 9. プロトプラスト法
• 塩化カルシウム法
→プロトプラストを塩化カルシウム存在下で冷却する
とDNAを取り込みやすい細胞(コンピテントセル)にな
り、プラスミドなどの小型DNAを導入できる。
• ポリエチレングリコール(PEG)法
→PEG存在下ではDNAが細胞内に取り込まれる。原理
は現在も不明。
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- 10. アグロバクテリウム法
• Agrobacterium tumefaciensという細菌は自身の
プラスミド(Tiプラスミド)に含まれるあるDNA領
域(T-DNA)を宿主細胞に組み込むことができる
• T-DNAには植物ホルモンやオパイン(A. tumefaciens
が利用できるアミノ酸)を合成するための遺伝子が
含まれており、植物にはオパインを生成する腫瘍
ができる(根頭がんしゅ病)
https://kakibyo.dc.affrc.go.jp/list/detail.php?data_id=334
• Tiプラスミドの上記の遺伝子を切り取り、目的の
遺伝子配列を代わりに挿入すると、感染させるだ
けで目的遺伝子の導入ができるアグロバクテリウ
ムの完成!
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- 11. FLAVR SAVR
• 主要な細胞壁成分であるペクチンを分解する酵
素、ポリガラクツロナーゼ(PG)の遺伝子のアン
チセンス遺伝子を導入し、PGの働きを抑えた
• Flavr Savrは機械的な損傷(打ち身)やカビの害に
は強かったものの、軟化については通常の品種
と同様であった。当時の予想とは異なりPGは
軟化の主要因子ではなかった。
http://en.wikipedia.org/wiki/Flavr_Savr
• 1994年5月の発売当初は話題をさらったもの
の、商業的な成功は収めず1997年に生産終了。
Calgene社もMonsanto社に買収された。
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- 12. 参考文献
• 原田・駒嶺 編「植物細胞組織培養 実際・応用・展望」理工学社
→ 細胞培養の歴史について
• 池上正人 著「植物バイオテクノロジー」理工図書
→ アグロバクテリウム法やフレーバーセーバーについて
• 伊藤康博「トマトの成熟変異遺伝子の利用による日持ち性の改
善と低アレルゲン化について」食料-その科学と技術-No.45
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/nfri/
outline/012767.html
→ フレーバーセーバについて
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