More Related Content Similar to 全部暗記でいいのに.pptx Similar to 全部暗記でいいのに.pptx (11) More from Mamoru "Bobby" Takahashi More from Mamoru "Bobby" Takahashi (9) Editor's Notes 「さて私は今何をやったらいいのだろう?」の状態から「今、私は何をやるべきかを知っています!」状態へと自分を勉強に導くためのアイデア(学習方略)をご紹介します。本日お話するアイデアは、目標の設定、毎日の自習活動のための精神的な準備、学習サイクル、およびメモを取る戦略、Anki appの使い方です。英語の勉強は、往々にして多くの場合、学習スキルを習得することではなく、テストすることに重点を置いています。意識的に学習スキルを習得するために、学習方略を明確に学ぶ必要があります。学習サイクル、アクティブリコール、および学習習慣は、わたしが近年遭遇した3つの理論的パラダイムです。何かを覚えることができるのは、学んだコンテンツを十分に繰り返す機会があるときです。効果的な方略の1つは、学習サイクルを使用することです。有名なファインマン学習テクニックは、学習サイクルの1つのバリエーションです。もう一つの学習方略であるアクティブリコールは、学習サイクルと組み合わせて使用できます。アクティブリコールは自己テストの行為のことです。アクティブ(つまり積極的に)リコール(つまり思い出す)ということです。アクティブリコールと学習サイクルを組み合わせて使用することにより、学習内容を繰り返し復習することができます。次に、いくつかのユニークなメモ取りのしかたのコレクションをご覧いただきます。それからAnki アプリの使い方をご紹介します。さらになぜ単語を覚えなくてはならないのかについてお話させていただき、最後に英語多読についてお話させていただきます。 最近、語彙集を使って新しい単語を覚えましたか?新しい単語を覚える習慣はありますか?私自身、最近また英語の単語の暗記を始めました。ボキャブラリーの教え方を研究している専門家は、同じ単語に異なる時間と場所で5回以上遭遇する必要があると言っています。言葉を学ぶためには、単語や文章を繰り返し見ることが不可欠です。繰り返し勉強するテクニックを知っているかと学生に聞くと、いつも「いいえ」と言われます。独学のテクニックを学ぶことは彼らにとって有益だと思うのですが。
2021年と2022年の秋学期に、私は教室でホワイトボードとMoodleのブックモジュールを使用して自習のテクニックを教えました。以下のことが私が彼らに教えた内容です。
a)目標の設定—やることリスト、箇条書き、カレンダー
b)精神的な準備とモチベーションの維持—ポモドーロテクニック
c)学習サイクル—アクティブリコール、ファインマン学習テクニック
d)メモを取るテクニック
e) Anki アプリの使い方
次に何を勉強するか知っているかどうか学生に尋ねたことはありますか?自分の勉強のスケジュールをどのように管理しているか教えてくれるように頼むと、学生たちは怖がります。彼らは通常、日常生活の中で勉強の計画やスケジュールを持っていません。私の大学のGPAでトップ5だった優秀な学生のやり方を見たことがあります。その人たちの共通の特徴は、よく組織化されていることです。普通の学生が優秀な学生から最初に学ぶ必要があるのは、目標を設定するという彼らの考えです。優秀な学生は、勉強する前夜にToDoリストを作成します。 ToDoリストは単純な買い物リストのように見えますが、強力なツールです。 ToDoリストがないと、学生は机の前に座ったときに次に何をすべきかわかりません。 Bullet Journalは、メモを取ると同時にスケジュールを管理できるメモを取るスタイルです。
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すぐに勉強を始めたくない時があります。 「積極的な先延ばし」(笑)という言葉があると聞いたことがありますが、通常、私たちはほとんどの場合には先延ばしは良くないと考えています。なぜ先延ばしにするのでしょうか?それは私たちが長い間同じことをするのにうんざりしているからです。私たちの脳は一定期間後に疲れます。私たちが休憩を取るとき、私たちの脳はよりよく働きます。次のグラフは、ガンマ波のレベルを示しています。上のグラフは、ガンマ波が短い休憩の後に再び上昇することを示し、下のグラフは、ガンマ波が下降し続けることを示しています。
先延ばしを防ぐために私たちにできる方法があります。それはポモドーロテクニックと呼ばれていて最近とても人気があります。 1990年代にフランチェスコ・チリッロによって作成されました。 https://francescocirillo.com/pages/pomodoro-technique
1.実行したい作業を選択します
2.キッチンタイマーで25分を設定します(私はYouTubeでポモドーロタイマーのビデオを使用しています)。
3.タイマーが鳴るまで作業に集中します
4.少し休憩します(約5分)
5.手順2〜4を4回繰り返してから、少し長い休憩を取ります
何かを学ぶためには、学習サイクルを意識するのが有効です。学習サイクルは、入力(聞く、読む)、想起・復習(自己テスト、思い出す)、出力(話す、書く)の3つの要素で構成されています。学習者は、文を聞いたり読んだり、文の意味を考えたり、メモを取ったりします。後でメモを読み、メモについて自分で自分に質問して復習し、その結果を話したり書いたりします。学習者はこのプロセスを繰り返します。これが学習サイクルです。
学習サイクルのバリエーションの中で、有名なのはファインマン学習テクニックです。出力する時に 6年生でも理解できる言葉で説明できるようにするのです。この学習サイクルでは、何かを選択してそれが何であるかを自分で自分に問いかけて、ノートに自分の言葉で答えを書き、さらに原典つまりオリジナルのテキストにもどって読み直してから自分の書いたものを書き直して、何度も復習します。これは、何かを徹底的に覚えておくのに役立ちます。
アクティブ・リコールとは、積極的な自問自答を意味します。認知心理学の研究によると、何も考えないでただテキストを読んだだけで復習をすませたグループと比較して、テキストの内容について自分で自分に質問し、答えを書いて復習したグループを比べると、後者ののスコアのほうが高いという結果がでていました。
高いレベルの学生は、学習サイクルを数え切れないほど繰り返します。彼らは単に読み直すのではなく、何が書かれているのかについて積極的に自分に質問を繰り返します。
講義中にメモをとったり、、レポートを書くための資料を読んでメモをとったり、会議に出席してメモを取ったりと、わたしたちには、いろいろな場面でメモを取る必要がまだまだ多くあります。
大別してメモ取りには2つのスタイルがあると思います。
1つ目のスタイルは、ノートやルーズリーフに書くときに、とにかく手をすばやく動かすことです。このタイプの方法を実践する人は、一見雑なノートを作ります。この人たちは試験の前にノートを読み直すだけなので、手書きの汚さはあまり気にしません。多くの時間を節約することができます。
2番目のスタイルは注意深く書かれたタイプです。この人たちは可能な限り注意深く要点だけを書き留め、可能であれば自宅できれいに清書します。ほとんどの人はこのタイプと前のタイプの間のどこかにいます。また、「LATEX(テフと読みます」を使ってきれいに書くだけです」(LATEXとはフリーの文書処理システムです)と言う学生もいます。彼らの場合、手書きのノートはメモを取るためだけのものであり、出力にはコンピューターとプリンターを使用します。美しいノートが彼らの知識のより良い理解、記憶、応用につながることはほぼ間違いないと思います。
これは、著名な「東大合格生のノートはかならず美しい」にまとめられた方法です。この本では、必ず行の先頭を揃える、余白を残するなどの7つの方法について説明しています。美しいノートの作り方を7つの方法ではなく一言で表現できますか? 美しいノートは縦に取るのです。横にダラダラと伸ばすのではなく、縦に並べてメモを取ることが重要です。
たまたま経営の先生が私と同じことをしているのを見て、それを県大ノートと名付けました。大学ノート(B5版ノート)の真ん中に縦線を引くだけです。それでおしまい。 B5サイズの大学ノートより1サイズ小さいA5バージョンのノートを忠実に使用している場合は、両側に縦線を引き、中央に約7cmのスペースを作成します。こうすれば、自然に行頭は整い、縦方向にメモがとれます。
名前がかっこいいからなのか?いままでこのスタイルのメモを紹介したとき、多くの学生がそれを使い始めました。(1)メモを取る、(2)キーワードを書く、(3)要約を書くという3つのセクションがあります。
インターネットの情報ですが、一級建築士を取得するためのノートを作るページを見ました。これらは、私たちが計画を立て、やる気を維持するための良い例です。
すべての情報を1冊の小さな百円ノートにまとめるというアイデアが本当に好きです。
Anki Flashcard アプリ (https://apps.ankiweb.net) は、利用可能なデジタル暗記ツールの中で最も人気のあるものの 1 つですが、そのユーザーインターフェイス、すなわち「パソコンやスマートフォンに画面として表示されているもの」は、アプリを最大限に活用する前にユーザーが慣れる必要があります。 ユーザーインターフェースに慣れたら、設定を変更し、定期的に使用することで新しい単語を学習し始めることができます。 ユーザーは、多数の無料のカード デッキにアクセスしたり、Quizlet から独自のカスタム デッキを変換して Anki で使用したりできます。 単語の形式と意味の関係を、たった 1 回やっただけで記憶することはできないことはよく知られていますが、新しい語彙を学習するには間隔をあけて繰り返す必要があります。 単語は、数日だけでなく、数週間、場合によっては数か月空けて復習する必要があります。 Anki は、この複雑なプロセスを自動化します。 Anki は非常に貴重なリソースですが、適切な効果を得るには、学習者が定期的に Anki を使用する自制心が必要です。 Anki アプリについて説明した後で、フラッシュカード アプリ、紙のフラッシュカード、単語帳などのスタディ サプリメントを使用したときの学生の反応に関する情報を、アンケート結果として最後に共有させていただきます。
私は学生たちに、時間をかけて繰り返し単語に遭遇することで語彙を学んでもらいたかったのです。 そのためには、Anki Flashcards アプリが最適です。 このアプリでは、適切な間隔で繰り返し語彙クイズが提供されます。残念なことに、ユーザーインターフェイスはあまりにも単純すぎます。 最初は、単語カードの画面で対象の単語の下に0+4+6のような数字が3つあるだけで、アプリのどこをタッチすればいいのかさえわかりませんでした。 設定や設定 (Anki Flashcards アプリではオプションと呼ばれます) の使用方法を注意深く調べた結果、最終的にその使用方法を理解しました。
学生たちに Anki Flashcards アプリに慣れてもらうために短いビデオを作成しました。 アップルのApp Store では、似たような見た目の暗記アプリが多数含まれているため、Anki Flashcards アプリのホームページに直接アクセスするようアドバイスしました。
これがそのロゴです。 Anki Flashcards アプリ を Mac、Windows、または Linux に正常にダウンロードすると、デスクトップ上に「Anki」という名前が表示されます。
こんな感じの画面が最初に表示されます。
この画面のパス単1級と究極の英単語が、わたしが現在勉強しているデッキです。この画面の下にある左側のボタン(共有デッキをダウンロード)をクリックすると、デッキをダウンロードすることができます。
これがダウンロードできるいデッキの一覧です。 色々なデッキをダウンロードできます。市販の単語帳、たとえばアルクから出ている「究極の英単語」とか英検から出ている「パス単1級」もあります。画面では必須4000語というような感じのタイトルのデッキが見えています。 1 日に学習するのに適切な数は、復習も含めて合計 10 ~ 20 個の単語であると個人的には思います。Ankiアプリを使う上で一番重要なコツは、オプションを変更して、新しい単語を 初期値の20 から 減らして、3にすることです。まず、これは私の MacBook Air のスクリーンショットです。 Anki アプリを起動すると、各デッキの右側に歯車のマークが表示されます。歯車マークをクリックすると選択肢が表示されます。
次に、オプションをクリックします(1 日に学習する単語数を制限できるボックスが表示されます)。この画面では、新しい単語の数が 3 の場合、復習する単語は 30 である必要があると書かれています。警告は無視して単語数を 2 に制限する必要があります。これはノートパソコンまたはデスクトップパソコンを使用している場合の単語数の変更方法です。
次のスクリーンショットは、iPad 上の Anki アプリのスクリーンショットです。右上の隅に歯車のマークはありますが、これをクリックしても学習するカードの数を変更するオプションは表示されません。 カード数を変更するのに使用する歯車マークは、別の場所にあります。 わたしたちがしなければならないことは、最初にデッキの1つを選択することです。 例としてパス単一級のデッキを使用します。 すると、スクリーンショットは次のようになります。
右下の隅に歯車のマークが見えます。 この歯車マークを使用すると次のようになります。
「よく使うアクション」(Frequent Actionsと書かれています)に注目してください。その 1 つが「スタディ オプション」ボタンです。 [スタディ オプション] ボタンをタッチすると、次のスクリーンショットが表示されます。
1 日あたりの制限を見てください。 [新しいカード/日] と [最大復習/日] の横にボックスがあります。 ご覧のとおり、新しいカード 3 枚とレビュー カード 2 枚をボックスに入れました。
ここまで、Anki アプリの 1 日の単語数制限の変更についてご説明してまいりましたが、なぜこれが必要なのでしょうか? 理由の1つは、1日にたくさんの単語を覚えようとすると効率的に勉強できなくなるからです。 私の意見では、1 日あたりの単語数を制限することが、Anki アプリを効果的に使用するために最も重要なことです。 ここからは、そもそもなぜ単語を覚える必要があるのかについてお話させていただきます。 Milton and Hopwood (2023)という単語の専門家たち は、外国語カリキュラムにおける語彙の中で、最も頻繁に使用される 2000 語はもちろん重要なのだけれども、その中には機能語が多く含まれていると書いています。 つまり、aとかtheとかat とかinとか、それらを知らないとそれ以上の難しいことは理解できないけれども、それ自体だけでは文を構成できない単語がこの2000語に多く含まれているということです。ですから語彙レベルが 2000語未満の生徒は、出てくる文の意味を理解できないということになります。それを表しているグラフが右上のグラフです。これは語彙数と理解度の関係を表していて、2000語までは理解度はゼロに近く、それが5000語くらいで80%になり、7000語くらいで90%台後半になります。これが何を表しているかといえば、5000語レベル(つまり英検2級レベル)というのは、本格的な文章に何が書かれているのか、その概略は理解できても、詳細は理解できないということです。
ちなみに左側のグラフは、単語のカバー率を表していて、5000語は本格的な文の90%台後半をカバーしているというグラフです。このカバー率のグラフは大分前から出回っていました。私自身はずっとこのグラフに騙されていて、5000語学べば英語は十分なのだから、学生にも5000語を覚えさせれば良いとずっと考えていました。
この図 は、授業で扱う単語を示したこのモデルです。1000 から 5000 までの内側の円がターゲット単語の全範囲を示し、楕円が授業で教える語彙であることを示しています。 授業中にこの絵をホワイトボードに描いたところ、学生たちはこのモデルをよく理解しました。 楕円は教室で教える語彙を示していますが、カバーできない単語も他にもたくさんあります。 私はこれまでずっと、偽初級レベル(英語でFalse-beginnersといいます。何年たっても英検5級B不合格の学生です。)の学生に中級レベルの言葉の使い方を教えれば十分だと思っていましたが、今ではそれが間違いだったと考えています。 低レベル学生のための授業であっても、生徒の理解力を向上させるためには、頻度の高い単語と頻度の低い単語の両方を含める必要があります。なぜ8,000語レベルの低頻度単語が必要なのでしょうか。それは英検1級試験で使用される単語だからです。 これらの単語を知っていれば、テレビやインターネットの英語ニュースを理解する上で必ず有利になります。 5000語レベルの人はニュースの要点を理解できますが、しかし8000語を知っていれば詳細を理解できます。英検 1 級は CEFR C1 レベルの試験です。このような具合で、8,000 語の語彙数が必要なのです。
英語学習者として、英語の学習に終わりはありません。 私は今でも空いた時間に英語を暗記し続けています。 単語を覚えた経験からわかったのは、単語はすぐに忘れてしまうということです。 数ヶ月に一度の復習を続けないと語彙力は増えません。 今のところ、単語を永久に習得するのにどれくらいの時間がかかるかはわかりませんし、専門家の間でもこれといった決め手はありません。 覚えた単語は、1週間は意味を思い出せても、数か月以内に消えてしまうことがよくあります。 だからこそ、学んだことを常に復習する必要があります。
意図的学習とは、意図して知識やスキルを身につける学習です。例えば英語学習においては、特定の単語を覚える行為です。ここまでは、意図的な学習についてお話させていただきました。
これから少しですが非意図的学習についてお話させていただきます。非意図的学習とは、その行いを通じて結果的に知識やスキルを身につけるような学習です。例えば英語学習において、関心のある英語の本を読んだり、英語で映画を見ているうちに語彙が増えるようなことです。
今話題として取り上げている英語多読は、非意図的学習に分類されます。英語多読と聞くと、ただ沢山本を読むという風に聞こえますが、英語教育においては英語多読とはただ沢山の本を読むという意味ではなくて、近年発展してきた英語習得のために計画的に行う活動のことです。
英語多読の学習活動の一環として、大学生がどれくらい英語の本を読むのかについて見てみましょう。
これは東北大学で英語多読を指導しているベン先生が、著書の中に載せている図表です。改めて驚いたのですが、最低でも年間に10万語を読んでいるというところです。東北大学生の基礎力の強さを見ました。 これは2019年度から2022年度に秋田県立大学に在籍したある学科の一年生の読書量を度数分布図にしたものです。東北大学と比べて残念ながらはっきりとしているのは、年間読書量が10万語未満の人がざっと100人位いることです。ここに県立大学生の基礎力の足りないところが表れています。しかし10万語以上を読んだ人を比較した場合は、さほど東北大学の学生を違いがないように見えます。平均すると年間12万語読んでおり、年間30万語以上読んだ人も大勢いました。
そもそも英語力が違う2つのグループを比較しても意味はないのですが、今回あえて並べてみた理由は、秋田県立大学生に向かって、東北大学生に追いつけ、追い越せという気持ちを持てと言いたかったただけです。 語学の教員で構成される国際多読学会によると英語多読の定義は、「易しい本を、楽しく、沢山」 読むことです。沢山読むことは、個人によってその解釈が異なります。ある人は、50ページの本を数ヶ月かけて読むのが沢山読むことだと考えます。またある人は、50ページの本を1日か2日で1冊読むのが多読であると考えます。ある人たちは結果的に年間に50万語から100万語の読書を行いましたが、ある人たちは、極端な場合、ゼロという結果に終わることもありました。わたしが授業の一環として英語多読を取り入れてからこれまで長い年月が経ちます。いままで私は、学生たちには、図書館にある英語多読用のGR(グレーディドリーダー)や図書館の提供するebookのGRを使って、楽に読める本から読み始めてくださいと指示を与えてきました。自分では英語多読を推進してきたつもりでしたが、よく考えてみると英語多読のやり方そのものについては、これまであまり丁寧な説明をしてきませんでした。ですから今回あらためて英語多読とは何をどのようにすることなのかまとめてみたいと思います。
英語多読は、易しい本を読むことです。易しい本という言葉の定義は、辞書なしでも楽に読めるということです。(「辞書なしで」という言葉を忘れないでください。)ある本のページを想像してみてください。もしもそのページが知らない単語だらけだったら、そのページは大半が黒塗りされたページも同然なのです。そのページに書かれていることの詳細な意味を理解するためには、そのページの大半の単語の意味を知っていなければなりません。ですから辞書なしでも楽に読めるレベルの本を選んで読むことが、英語多読ではまず初めに強調される点なのです。
英語学習のために書かれたグレーディドリーダーを読むことができる現代の学生は幸せです。さまざまな出版社から豊富な量のグレーディドリーダーが出版されています。グレーディドリーダーには、300語とか500語とかのヘッドワーズがついています。ヘッドワーズとは、それらの語数レベル以内でそのグレーディドリーダーが書かれていることを表します。各出版社ごとにヘッドワーズの選び方が異なっていますが、大体の目安として参考にするにはこれらのヘッドワーズで十分です。またグレーディドリーダーは、各出版社がそれぞれの基準で難易度をレベル分けしています。これらの英語学習者向けグレーディドリーダーに加えて、ネイティブの子供が読むための原書児童書も英語多読には使用されます。さらにレベルが高い人のために、ネイティブの若者向けのヤングアダルト文学書も英語多読には使用されます。 (ヤングアダルト小説の紹介ページ https://ameblo.jp/librarian-nightbird/entry-12789285981.html )
英語多読用の本を楽に読むためには、自分の語彙レベルに合った本を選ぶ必要があります。だから最初は、もっとも低いレベルの本を読むことから始めて、段々レベルの高い本を読むのが正しい英語多読のやり方です。英語多読をやっていると、段々語彙レベルも上がってきます。では、大学在学中にどのくらいのレベルに到達できるかという話ですが、通算して50万語から100万語くらいを読んだ人は、最終的には各出版社から出ている一番上のレベルの本を、辞書なしで1時間以上読み続けて、内容をきちんと理解できるようになります。3年生になってから50万語を達成したMさんから聞いた話では、50万語を超えた途端に英語を読むのがとても楽になったそうです。50万語に達する途中に30万語を通過しますが、30万語を超えたあたりで変化が起きるという人もいます。「30万語でやさしい本なら読めると実感でき、60~150万語でTOEIC得点が上昇し始め、300万語で英文多読が趣味になる、という変化があるようです。」(豊田高専の英語多読のページからの引用です。)英語学習者向けのGR(グレーディドリーダー)の最上級レベルを読めるようになれば、ネイティブ向けのヤングアダルト小説も楽に読めるようになります。大学生のうちにこのレベルまで到達するのが理想です。ここまで来れば、ネイティブ向けに書かれた全ての本が読めるようになる一歩手前まで来ています。
英語多読とは、楽しく本を読むことです。楽しく読むとは、どういう意味でしょうか。わたし自身は、本を読むことを苦痛だと感じた経験がありませんが、年間の読書量がゼロの学生は、おそらく読書自体が苦痛でしかないのでしょう。以前に読んだ論文では、書かれていることの50%以上が理解できない場合は苦痛を感じるのだそうです。ですから楽しく読むためには、まず自分が楽に理解できるという点が大切です。英語多読の指導者たちの中には、楽しく読むためには、内容が興味深くなければならないので、面白くなかったら、読むのをやめて他の本を読むように助言している人たちもいます。わたし自身は、本を読む時の段取りとして、まずタイトルを見て、本の裏表紙に書かれている要約を見て、それから一度ざっと本をめくって、全体像を把握して、自分の目的な興味を確認してから読み始めるので、途中で本を変えることは滅多にありません。英語多読を続ける上で大切なのは、内容に興味があるかどうかを自分に問いかけるよりも、むしろ自分に合うレベルの本を継続して読んでいるかどうかではないでしょうか。レベルが合っていれば、楽しく読み進められますし、そのシリーズのそのレベルの本を全部制覇するという目標を持つこともできます。
英語多読とは、本を沢山読むことですが、沢山読むとはどういう意味でしょうか。年間に50万語から100万語の英語を読むのを目標にして読書計画を立てることが、(結果的に年間25万語であっても)沢山読むということにつながります。50万語の読書は、一冊で5000語の本(レベル2とか3)ならば、100冊読めば達成できますし、1冊で1万語の本(レベル4とか5)ならば50冊で達成できます。1冊で10万語くらいの本格的な長編小説ならば5冊です。もう少し目標を下げて、30万語の読書を達成したいならば、1年間のうち8ヶ月の授業期間の間、毎日15分ずつ読むと達成します。(1分間100語 x 8ヶ月 x 30日 x 15分 = 36万語)あくまで計算上ですが、たった15分間の読書の継続で、やさしい本ならば読めると実感できるようになれるのです。
また訳さないということも気をつけるべき点です。教室で英語多読をしている時に、ページをめくる速度があまりにも遅いので、どうしたのか尋ねてみると、読んでいる英文を全て和訳しながら読んでいたという学生がたまにいます。全てを和訳しながら読むのは、決してお勧めできることではありません。読むとは、視覚的に入ってくる文字情報の意味を瞬時に理解することです。大体の学生は1分間に100語くらいのスピードで読むことができます。読書のスピードは、その人の持っている語彙の豊富さと、英文を見て意味を理解することができる読解力の高さに左右されるように思います。語彙を増やすために単語暗記をすることと、英文の読解力をつけるために英語多読をすることは、車の両輪のようなものだと思います。
本日は、効率よく学習するには何をどのようにしたらよいのだろうかということをお話して、アプリを使った英単語の暗記方法についてお話し、最後に英語多読についてもお話しさせていただきました。
テレビやインターネットの英語ニュースを理解したり、論文を読んだ利する上で8000語以上の語彙は役に立ちます。8000語以上を知っていれば詳細まで理解できます。英検 1 級、TOEIC950点レベルに達するために、8000語以上の単語を学ぶ必要があることを理解したら、あとは目標に向かって学ぶだけです。本日のスライドをスライドシェアに上げておきますので、必要に応じてダウンロードして活用していただけたら幸いです。
最後までお付き合いくださって、ありがとうございました。本日の受講者の皆様の学習が益々進展しますように、お祈り申し上げます。