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インパクト・スケーリング
社会的インパ クト ・マ ネ ジ メ ント の その 先へ
Version 1
9/10/2020
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ブルー・マーブル・ジャパンは、 より公正な社会づくりに貢献することを⽬的として、「複雑系にお
ける評価」を活⽤して、より本質的な課題解決・システム変⾰を⽬指しています。
ブルー・マーブル・ジャパンの社名の由来は、
我らが導師のマイケル・クィン・パットンが提唱するBlue Marble Evaluationです。
Blue Marble Evaluationは、持続可能な世界の実現に
向けて、システム変⾰を⽬的としたグローバルな取り組みを
評価するアプローチであり、複雑でダイナミックで相互に連結
した世界のシステム変⾰の分野で活動する評価者のグロー
バルなネットワーク、イニシアチブです。
マイケル・クイン・パットン
実⽤重視評価、発展的評価の提唱者かつ第⼀⼈者。全⽶評価学会会⻑
(1988)をはじめ、評価関連の要職を歴任。
⼀般財団法⼈CSOネットワーク主催の『伴⾛評価エキスパート育成事業』
(⽇本財団助成)の統括アドバイザーを務める。
⾃⼰紹介・組織紹介
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アジェンダ
3
1.インパクト・スケーリングとは︖
2.スケーリングの概念とその種類
3.適切なスケーリングのための4つのプリンシプル
4.おわりに
*本資料は、以下の知⾒を参考にながら、独⾃に私たちの解釈と解説を加えたものです。
・Evaluating “Scaling” in Social Innovation(Mark Cabaj)
・Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)
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1.インパクト・スケーリングとは︖
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問題意識 〜社会的インパクト・マネジメントのその先に〜
5
本スライドは、「社会的インパクト・マネジメント」が、当たり前に流通する世界の
その先を⾒据えて作成しました。
NPOや助成財団、企業、⾦融機関や投資家、⾏政など様々なアクターが、事業
単体として、あるいはコレクティブインパクトの試みを通じて、「最終的に⽣み出すべき
成果」を突き詰めていくと、⾃分たちが⽣み出す価値を最⼤化させたい、という思い
に⾏き当たるはずです。
これはすなわち、社会的インパクトを「どう最適にスケーリングさせるか」という問い
です。価値の最⼤化は、必ずしも社会的インパクトの「最⼤化」を意味するのでは
なく、むしろ「最適化」を志向することになります。
それでは、社会的インパクトをスケーリングさせることは、
具体的にどういうことで、何を考えれば良いでしょうか。
本スライドでは、それを皆さんと考えたいと思います。
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⽤語の定義
6
⽤語 定義
社会的インパクト
(⼀部、便宜的に
インパクトとも表記する)
短期、⻑期の変化を含め、当該事業や活動の結果として⽣じた社会的、環境的なアウト
カム(成果・変化・便益)
*内閣府/SIMI(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)/GSG国内諮問委員会で採⽤
⼈々あるいは地球に対する正負のアウトカムで現れる変化
*Impact Management Projectで採⽤
アウトカム 事業や取り組みのアウトプットがもたらす変化、便益
アウトプット 組織や事業の活動がもたらす製品、サービスを含む直接の結果
社会的インパクト評価 社会的インパクトを定量的・定性的に把握し、事業や活動について価値判断を加えること
*SIMIでは、「社会的インパクト・マネジメントを実践していくための評価」と定義
*内閣府実証事業では、「事業評価」が対応する
社会的インパクト・マネジ
メント
事業運営により得られた事業の社会的な効果や価値に関する情報にもとづいた事業改善
や意思決定を⾏い、社会的インパクトの向上を志向するマネジメントのこと
*SIMIで採⽤
インパクト投資 社会⾯・環境⾯での課題解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資⾏動のこと。
*GSG国内諮問委員会で採⽤。投資(株式・債券)、融資、リース等、⾦銭的リターンを求める⼀切の
⾦融取引をまとめて 「投資」と呼ぶ。寄付・補助⾦・助成⾦等は対象外とする。
コレクティブ・インパクト ⽴場の異なる組織(⾏政、企業、NPO、財団、有志団体など)が、組織の壁を越えてお
互いの強みを出し合い社会的課題の解決を⽬指すアプローチのこと
*John KaniaとMark KramaerによStanford Social Innovation Review,2011による定義
本スライドでは、以下のように⽤語を定義して使⽤します。
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社会的インパクトを扱うための第⼀歩
社会は、私たち⼀⼈ひとりの集合体であり、私たちはそれぞれ固有の価値観を持っている。
すなわち、社会とは多様な価値観の集合体である。
そのため社会的インパクトは、In Generalでも、On Averageでもなく、For Everyoneを考え
る必要がある。⼀律化・標準化して扱うことが簡単ではない社会的インパクトの性質を理解するこ
とが、社会的インパクトを扱うためのはじめの⼀歩である。
ジョン・ガルガーニ⽒ (Mr. John Gargani, Ph.D)
基調講演より
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社会的インパクトをスケーリングさせること
社会的インパクトの「スケーリング」を考える前に、
社会的インパクトに必要な「インテンション(意図)」と、
それを管理して⾼めるための「社会的インパクト・マネジメント」について、おさらいしましょう。
社会的インパクトの
「インテンション」
社会的インパクトの
「マネジメント」
社会的インパクトの
「スケーリング」
良い変化を⽣み出し、悪
い影響を最⼩限にするた
めには、全⽅位でインパク
トを把握し、その中で「意
図するインパクト」の狙いを
つけていくことが重要である
インパクトを効果的に⽣み
出すためには、学びと改善
活動のサイクルをつくる、意
図する社会的インパクトを
⾼めていくための「マネジメ
ント」が必要である
意図する社会的インパクト
を、⽬的や背景・⽂脈に
応じて、適切にスケーリン
グさせる
1 2 3
(注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
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プラスのインパクト マイナスのインパクト
予期しないインパクト
予期したインパクト
意図して⽣み出す
プラスのインパク
トの狙いをつけて
いく
出典︓ソーシャルインパクトディ2018 ジョン・ガルガーニ⽒講演資料(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)を元に筆者が作成
社会的インパクトの創出を図⽰すると、以下のようなイメージとなる。
社会的活動(介⼊)により、良い変化を⽣み出し、悪い影響を最⼩限にするためには、
その中で「意図するインパクト」の狙いをつけていくことが重要である。
社会的インパクトのインテンション1
「予期した」
「プラス」のイ
ンパクトの領
域を⼤きくし
ていくための
マネジメント
を⾏う
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社会的インパクト・マネジメントの基本プロセス
計画
(事業戦略の策定)
実⾏
(事業の実施)
効果の把握
(事業効果の検証)
報告・活⽤
(レポーティング・事業計画
への反映)
①事業⽬的は社会の
ニーズに対応しているか
ニーズ評価 ②この⽅策で課題解決に
貢献できるだろうか
セオリー評価
③実施プロセス
は適切か
プロセス評価
④社会課題の解決に貢献したか
アウトカム/インパクト評価
⑤これらの結果が事業
改善のために、適切に
活⽤されているか
このサイクルを健全に
回すための組織⽂化
とガバナンスが重要
2
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最適なスケーリング
事業の
FIRST IDEA
⼤
現在のスケール
最適な
スケール
3
社会的インパクト・マネジメントを⾏いながら、 「最終的に⽣み出すべき成果」に照らし合わせて、
それに⾒合った最適なスケーリングイメージを持つことが重要である。
問うべきこと
●⾃分たちの事業のスケーリン
グ状況の現在地はどこか︖
●事業の⽬的や背景・⽂脈
に照らし合わせたときの最適な
スケーリングの度合いはどこ
か︖
●最適な度合いをどのように
⾒出し、そこに向けてどのように
社会的インパクトをスケーリン
グさせていくか︖
スケーリングの「規模」(⼤⇆⼩)、「深度」(深⇆浅)における 「最適化」 の考え⽅
⼩
浅
深
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社会的インパクトを扱う際の評価の役割
12
事業
組織 社会
事業改善
ラーニング
アカウンタビリティーの
確保
組織基盤・
ガバナンス強化
評価的思考、
⽂化づくり
社会課題解決
社会価値創造
知⾒の蓄積
社会的価値を
創出する事業創造、
事業拡⼤
社会的価値を
継続的に⽣み出すための
組織の体質改善
究極的には
“社会の改善”
に向かっている
評価の⽬的・効果には、以下のようなものがある。
⼀般的には、「学び・改善」と「アカウンタビリティー確保」と⾔われるが、
究極的には、「社会の改善」に向かうものである。
それぞれの単位において、インパクト・スケーリングの最適化を考える際に、評価が⼒を発揮する
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評価をインパクト・スケーリングで活⽤するために
以下を頭に⼊れておきましょう。
13
p 評価の定義︓プログラムの活動、性質、アウトカムの情報を体系的に収集し、当該プロ
グラムについて何らかの判断を下し、プログラム介⼊による効果の改善を⾏い、将来のプ
ログラムについての決定を⾏うことである。(Patton)
p 評価の類型︓評価⽬的によって、アプローチや内容は異なる。
以下は、⽬的に照らした評価の3類型である。
発展的評価
Developmental Evaluation
形成的評価
Formative Evaluation
総括的評価
Summative Evaluation
事業(や事象)が発展・変
遷・様変わりしているとき
事業の改善の余地があるとき 事業がすでに確⽴しているとき
社会的介⼊の適応に向けたデ
ザインを⾏い、主に発展・変⾰
を志向する
進⾏中のプログラムのモニタリン
グおよび事業改善を志向する
プログラムが⽬標を達成したか
どうかの判断をあおぎ、アカウン
タビリティー確保を志向する
創出期 形成期 確⽴期
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2.スケーリングの概念とその種類
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スケーリングの概念の拡⼤
15
引⽤︓ Mark Cabaj, Complexity & Evaluation Evaluating “Scaling” in Social Innovation
Melbourne, Australia (May, 2018)
スケーリングには、以下の5つの類型がある。
Scaling
Out
Deep
Infra-
structure
Scree
Up
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スケーリングの概念の拡⼤
16
スケーリング・モデルと内容は、以下の通りである。スケーリングの形態や経路が異なる。
スケール・モデル 内容
Scaling Out
(受益者の拡⼤)
影響を受ける受益者の数がより多くなるような⽅法で、もともとのイノベー
ションを異なる⽂脈へ展開・拡⼤させる。
Scaling Up
(機構変⾰)
組織の内部規程や労務管理、政府の法律や規制等、機構レベルの変
⾰を実現させ、イノベーションの効率化や拡⼤を可能にする。
Scaling Deep
(⽂化)
⽀配的⾔説、価値観、信念、アイデンティティなど、⼈々、組織、コミュニ
ティの「⼼」を変えること。イノベーションが⽂化的なDNAの中に埋め込ま
れ、⽀えられるようになる。
Scaling Scree
(新しいイノベーション)
もともとのイノベーションと同様の結果を⽣み出すような他のアイデアやイ
ノベーションを奨励し、育成する。
Scaling
Infrastructure
(キャパシティ)
資本、データ、⼈材、知識、ネットワークなど、スケーリングのためのインフ
ラを整えることで、システムやコミュニティのキャパシティを向上させる。
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Scaling Out(スケール・アウト)
17
スケール・アウトは、⼀般的に考えらえているスケーリングであり、インパクトの受益者を
増やしていくことである。そのために、事業・活動(介⼊)を、異なる背景・⽂脈にお
いて適⽤させる。
(例)独⾃のメソッドを⽤いた障がい者の就労⽀援プログラムを、地域展開する。
その結果、受益者数が増加する。
【イメージ】
⽊の本数を増やす。
それにより、果実も増え
る。
(注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
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Scaling Out(スケール・アウト)
18
以下が、スケール・アウトにおける評価設問、指標の例である。
設問の例 指標の例
q イノベーション(社会的介⼊)のどの部分
が⽂脈依存度が⼤きく、簡単には展開でき
ないか? 異なる⽂脈に通⽤する「最低限の
仕様」(例えば、プログラムの特徴、原則)は
何か? これについての私たちの理解は、この
イノベーションの拡⼤に伴ってどのように変化
してきたのか︖
q イノベーション(社会的介⼊)がどのくらい
広がったのか︖ どのくらいの受益者が影響
を受けたか︖
q もともとのイノベーション(社会
的介⼊)の規模の拡⼤
q 同様な介⼊を実施する組織や
コミュニティの数の増加
q イノベーション(社会的介⼊)
の受益者数の増加
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Scaling Up(スケール・アップ)
19
【イメージ】
⽊を⼤きく育てる。
それにより、果実も増え
る。
スケール・アップは、事業・活動(介⼊)が⾏われる組織・機構を強化し、機能を向
上させることで、より⼤きなインパクトを創出させること。
(例)就労⽀援プログラムのトレーナー養成講座の質を向上させることで、より多く
の優秀なトレーナーを育成できるようになる。その結果、就労⽀援プログラムの成果
が向上する。
(注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
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Scaling Up(スケール・アップ)
20
以下が、スケール・アップにおける評価設問、指標の例である。
設問の例 指標の例
q イノベーション(社会的介⼊)を⽀援し、拡
⼤し、持続させるために必要な、機構的要
因はなにか(組織の場合は内部規程や労
務管理、予算策定・執⾏など。⾏政機構の
場合は法律・規制、予算策定・執⾏な
ど)︖
q これらの組織的・制度的整備はどの程度進
んでいるのか︖
q これらの整備は、もともとイノベーション(社会
的介⼊)のスケールアウトにいかなる影響を
与えたか︖
q もともとのイノベーション(社会
的介⼊)のパフォーマンスとス
ケーリングを⽀援する組織的・制
度的変更の数、多様性、意義
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Scaling Deep(スケール・ディープ)
21
スケール・ディープは、対象(個⼈、組織)の価値観や⽂化(当たり前と考えられて
いること、考えの「型」等)を変化させることで、インパクトを深めることを狙うものであ
る。与える「インパクトのマグニチュード」 と⾔うこともできる。
(例)就労⽀援プログラムで、受益者の⼦どもたちの価値観を⼤きく変えるような
深い体験を与える。その体験により影響を受けた価値観は⻑く持続し、将来の
就労に⼤きな影響を与える。
【イメージ】
⽊に栄養を与えて⼗分な
時間をかけて育てる。
それにより、果実を⼤きく
熟成させる。
(注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
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Scaling Deep(スケール・ディープ)
22
設問の例 指標の例
q イノベーションが育つために必要な⽂化的属
性(信念、⽀配的⾔説、価値観、アイデン
ティティ等)は何で、それらはどこに存在し、ど
こで抵抗を受けているのか︖
q ⽂化的な変化を理解し、探求し、⽀援する
ための⼈々や組織の巻き込みはどの程度進
展しているか︖
q これらの変化は、もともとイノベーション(社
会的介⼊)のスケールアウトにいかなる影響
を与えたか︖
q イノベーションとその根底にある
⽂化的属性への理解や⽀援を
⽰す⾏動の数、多様性、意義。
以下が、スケール・ディープにおける評価設問、指標の例である。
尚、IMP(Impact Management Project)のImpactの5次元の考え⽅では、「Impactの深さ」を
考えることの必要性を⽰しており、それとも整合性が取れている。
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SCALING SCREE
Scaling Scree(⾶び⽕)
23
スケーリングの⾶び⽕は、もともとのイノベーションと同様の結果を⽣み出すような
別のやり⽅が他地域、同業他社等で派⽣することである。
(例)先進的な就労⽀援プログラムの評判
が伝わり、違う⽅法で、より地域事情に合致した
⽀援プログラムが開発され、イノベーションが形を
変えて伝播していく。
【イメージ】
ある地域の⽊の実の種が、別地域
に⾶び、各地で新しい⽊が⽣えてく
る。それにより、果実が増える。
(注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
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Scaling Scree(⾶び⽕)
24
設問の例 指標の例
q もともとのイノベーション(社会的介⼊)が
誘発したアイデア、議論、実験は何か︖
q もともとのイノベーションは、どのような形でそ
の誘発に貢献したのか︖
q 新しいアイデアやイノベーションは、どの程度ま
でもともとのイノベーションを補完しているのか、
あるいはそれを変質させているのか。
q もともとのイノベーションと並⾏し
て、あるいはそれ以降に⽣まれ
たイノベーションの数、多様性、
意義。
以下が、スケールの⾶び⽕における評価設問、指標の例である。
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Scaling Infrastructure(インフラ・スケール)
25
インフラ・スケールは、資本、データ、⼈材、知識、ネットワークなどのスケーリングのための
インフラを整えることで、システムやコミュニティのキャパシティを向上させることである。
(例)就労⽀援プログラムの実施団体と
地域の他関係団体の連携強化、さらなる
ノウハウの蓄積を⾏うことで、⻑期的に
持続的なプログラム提供が可能となる。
SCALING INFRASTRUCURE
【イメージ】
⽊の根っこをより張り巡らせることで、
将来にわたって持続的に・安定的に
果実が収穫できるようになる。
(注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
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Scaling Infrastructure(インフラ・スケール)
26
設問の例 指標の例
q イノベーションの規模拡⼤を⽀援するには、
どのようなリソース、スキル、ネットワーク、知
識が必要か︖
q このインフラストラクチャーの構築はどの程度
進んでいるのか︖
q 現在のインフラストラクチャーはスケーリングに
どの程度役⽴つものか︖どのように改善でき
るか︖
q イノベーションの規模拡⼤を⽀
援するための作られた、または
強化されたインフラ要素の数、
多様性、有⽤性
以下が、インフラ・スケールにおける評価設問、指標の例である。
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スケーリングになっていないもの
27
ちなみに、以下のような状況は、スケーリングになっていないため注意。
NOT
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3.適切なスケーリングのための4つのプリンシプル
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適切なスケーリングのための4つのプリンシプル
29
スケーリング
に対する適切な評価
正当性 スケーリングの最適化
コーディネーション
適切なスケーリングを実現するために必要なのは、セオリーやロジックよりも、4つの基本姿勢=
プリンシプルです。
引⽤︓Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)
Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved.
適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(1)
30
スケーリングは必須でなく、任意である。ス
ケールさせるべきかどうかは意思が問われる。
では、その選択は、なにを基準に⾏われ、正
当性を与えられるのだろうか。
引⽤︓Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)
正当性
1. スケーリングは選択︓「⼤きければよい」というものではない。特に、スケーリングで直接の
影響を受ける主体(受益者、地域住⺠、介⼊の対象になりそうな階層・集団)への影
響は考慮しないといけない。
2. エビデンスと価値︓選択する・しないの意思決定で働くべきはエビデンス。すなわち、「こう
なればこうなるはず」という仮説とその蓋然性を⾼めるデータである。⼀⽅、事業主体や
受益者、その他ステークホルダーのもつ価値観が重要な役割を果たすことに⽬をそらして
はいけない。
3. 意思決定のオーナーシップを共有する︓⼀⽅的な意思決定ではなく、その介⼊で影響
を受ける多くのステークホルダーが選択にオーナーシップをもつことは重要。介⼊による正
負のインパクトやリスクが平等に分散することはまれで、であればなおさらである。
Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved.
適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(2)
31
スケーリングは、⼤きければ⼤きいほど良いと
いうわけではない。最適化をねらうことが肝
⼼。最適化を考える要件には、インパクトの
1)⼤きさ、2)多様性、3)持続性、
4)公平性の4つがある。
引⽤︓Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)
スケーリングの最適化
1. プリンシプル1で「正当性」が確保されたとしても、スケーリングの⼤きさ、深さ等、複数の
変数の中に最適解があり、それを多くのステークホルダーで模索しながら探していくことが
⼤事。
2. インパクトはプラス⇆マイナス、予期された⇆予期されないものが混ざり合って⽣成するこ
とを意識し、最適解を考える際にはこの4象限を包含した思考が必要。
3. インパクト最適化の4要件を意識し、どの要件からみても最適であることをチェックすること
も必要。
Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved.
適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(3)
32
スケーリングが発⽣する複雑系のシステムで
は柔軟性が重要。適切なコーディネーション
が存在するかはスケーリングの成否を左右す
る。
Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)から⼀部改変
コーディネーション
1. スケーリングは複雑系のシステム(社会システム)の中で発⽣する。そこでは、ステークホ
ルダーの関係性には相互性があり、事象の因果関係は多重のループで複雑に絡み合っ
ている。まずそのことを理解することが必要。
2. 複雑系システムにおいては、介⼊→結果も独⽴しては起こらない。スケーリングを起こそう
と思っても、その影響が意外なところに現れる。それを予期した柔軟性が重要。
3. コレクティブインパクトの試みのように、⼀群の介⼊に個別の強みをもった多様なステーク
ホルダーが関与する。これらの異なる利害や⽴場をうまく調整するコーディネーションの役
割は⼤きい。
Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved.
適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(4)
33
これまでの評価のアプローチではスケーリン
グは適切に評価できない。 複雑系・動的
な環境に対応できる評価体系を確⽴し、
実践することが求められている。
Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)から⼀部改変
スケーリング
に対する適切な評価
1. 従来の、介⼊→インパクトの因果関係を評価するアプローチだけでは不⼗分で、スケーリ
ング⾃体を評価する試みを開発しないといけない。そこでは、複雑系システムを前提に
し、最適化4要件のような価値基準を活⽤した評価体系が描かれる。
2. 学び・改善のサイクルを短時間で回し、スケーリングの前中後で評価を⾏っていく必要が
ある(発展的評価のアプローチが活⽤できる)。
3. スケーリングの中では、事業ゴールも評価設問も常に推移していく。新たな評価体系で
は、事象の変化に柔軟に対応する評価アプローチが求められている(ここでも発展的評
価のアプローチが活⽤できる)。
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4.おわりに
Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved.
まとめと今後に向けて
35
• 真の意味で社会課題の解決、社会価値の創出に寄与するには、社会的インパク
トの「スケーリング」の考え⽅が必要です。国内で、グローバルで⼭積する社会課題
を解決し、21世紀の新たな政治経済の動かし⽅を実装・実現していくためには、
イノベーションの⼒をいかにスケールするかの考えを抜きにすることはできません。
• スケーリングには5類型あり、中⻑期に⽣み出すべきアウトカム、事業の性質、事
業ステージ、対象となる受益者などの要因から、適切なスケーリング・モデルを組み
合わせ、最適なスケーリングを実践することが必要です。
• 適切なスケーリングの実践のためには、4つの基本姿勢(プリンシプル)を参考に、
スケーリングの最適解を探していくことが必要です。スケーリングで直接の影響を受
ける主体への影響を優先的に考える、最適化の4要件には公平性が含まれるな
ど、スケーリングの議論では通常あまり顧みられない重要な点があることに注意しま
しょう。
• 皆さんの事業が、「社会的インパクト・マネジメントのその先」を⾒据えて、スケーリン
グの最適解探しに邁進されることを⼼より応援しています。(お⼿伝いできることが
あればご連絡ください︕)
Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 36
ブルー・マーブル・ジャパンでは、
この「インパクト・スケーリング」の考え⽅を組み⼊れて
各種の事業⽀援を⾏なっています。
「実践⽅法について知りたい」
「具体的な事例を知りたい」
「評価/インパクト・マネジメントに関する相談」など
(株)ブルー・マーブル・ジャパン
office@blue-marble.co.jp
まで、お問い合わせください。
さらに詳しく知りたい⽅へ

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インパクト・スケーリング Impact Scaling

  • 1. インパクト・スケーリング 社会的インパ クト ・マ ネ ジ メ ント の その 先へ Version 1 9/10/2020
  • 2. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 2 ブルー・マーブル・ジャパンは、 より公正な社会づくりに貢献することを⽬的として、「複雑系にお ける評価」を活⽤して、より本質的な課題解決・システム変⾰を⽬指しています。 ブルー・マーブル・ジャパンの社名の由来は、 我らが導師のマイケル・クィン・パットンが提唱するBlue Marble Evaluationです。 Blue Marble Evaluationは、持続可能な世界の実現に 向けて、システム変⾰を⽬的としたグローバルな取り組みを 評価するアプローチであり、複雑でダイナミックで相互に連結 した世界のシステム変⾰の分野で活動する評価者のグロー バルなネットワーク、イニシアチブです。 マイケル・クイン・パットン 実⽤重視評価、発展的評価の提唱者かつ第⼀⼈者。全⽶評価学会会⻑ (1988)をはじめ、評価関連の要職を歴任。 ⼀般財団法⼈CSOネットワーク主催の『伴⾛評価エキスパート育成事業』 (⽇本財団助成)の統括アドバイザーを務める。 ⾃⼰紹介・組織紹介
  • 3. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. アジェンダ 3 1.インパクト・スケーリングとは︖ 2.スケーリングの概念とその種類 3.適切なスケーリングのための4つのプリンシプル 4.おわりに *本資料は、以下の知⾒を参考にながら、独⾃に私たちの解釈と解説を加えたものです。 ・Evaluating “Scaling” in Social Innovation(Mark Cabaj) ・Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)
  • 4. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 4 1.インパクト・スケーリングとは︖
  • 5. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 問題意識 〜社会的インパクト・マネジメントのその先に〜 5 本スライドは、「社会的インパクト・マネジメント」が、当たり前に流通する世界の その先を⾒据えて作成しました。 NPOや助成財団、企業、⾦融機関や投資家、⾏政など様々なアクターが、事業 単体として、あるいはコレクティブインパクトの試みを通じて、「最終的に⽣み出すべき 成果」を突き詰めていくと、⾃分たちが⽣み出す価値を最⼤化させたい、という思い に⾏き当たるはずです。 これはすなわち、社会的インパクトを「どう最適にスケーリングさせるか」という問い です。価値の最⼤化は、必ずしも社会的インパクトの「最⼤化」を意味するのでは なく、むしろ「最適化」を志向することになります。 それでは、社会的インパクトをスケーリングさせることは、 具体的にどういうことで、何を考えれば良いでしょうか。 本スライドでは、それを皆さんと考えたいと思います。
  • 6. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. ⽤語の定義 6 ⽤語 定義 社会的インパクト (⼀部、便宜的に インパクトとも表記する) 短期、⻑期の変化を含め、当該事業や活動の結果として⽣じた社会的、環境的なアウト カム(成果・変化・便益) *内閣府/SIMI(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)/GSG国内諮問委員会で採⽤ ⼈々あるいは地球に対する正負のアウトカムで現れる変化 *Impact Management Projectで採⽤ アウトカム 事業や取り組みのアウトプットがもたらす変化、便益 アウトプット 組織や事業の活動がもたらす製品、サービスを含む直接の結果 社会的インパクト評価 社会的インパクトを定量的・定性的に把握し、事業や活動について価値判断を加えること *SIMIでは、「社会的インパクト・マネジメントを実践していくための評価」と定義 *内閣府実証事業では、「事業評価」が対応する 社会的インパクト・マネジ メント 事業運営により得られた事業の社会的な効果や価値に関する情報にもとづいた事業改善 や意思決定を⾏い、社会的インパクトの向上を志向するマネジメントのこと *SIMIで採⽤ インパクト投資 社会⾯・環境⾯での課題解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資⾏動のこと。 *GSG国内諮問委員会で採⽤。投資(株式・債券)、融資、リース等、⾦銭的リターンを求める⼀切の ⾦融取引をまとめて 「投資」と呼ぶ。寄付・補助⾦・助成⾦等は対象外とする。 コレクティブ・インパクト ⽴場の異なる組織(⾏政、企業、NPO、財団、有志団体など)が、組織の壁を越えてお 互いの強みを出し合い社会的課題の解決を⽬指すアプローチのこと *John KaniaとMark KramaerによStanford Social Innovation Review,2011による定義 本スライドでは、以下のように⽤語を定義して使⽤します。
  • 7. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 7 社会的インパクトを扱うための第⼀歩 社会は、私たち⼀⼈ひとりの集合体であり、私たちはそれぞれ固有の価値観を持っている。 すなわち、社会とは多様な価値観の集合体である。 そのため社会的インパクトは、In Generalでも、On Averageでもなく、For Everyoneを考え る必要がある。⼀律化・標準化して扱うことが簡単ではない社会的インパクトの性質を理解するこ とが、社会的インパクトを扱うためのはじめの⼀歩である。 ジョン・ガルガーニ⽒ (Mr. John Gargani, Ph.D) 基調講演より
  • 8. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 8 社会的インパクトをスケーリングさせること 社会的インパクトの「スケーリング」を考える前に、 社会的インパクトに必要な「インテンション(意図)」と、 それを管理して⾼めるための「社会的インパクト・マネジメント」について、おさらいしましょう。 社会的インパクトの 「インテンション」 社会的インパクトの 「マネジメント」 社会的インパクトの 「スケーリング」 良い変化を⽣み出し、悪 い影響を最⼩限にするた めには、全⽅位でインパク トを把握し、その中で「意 図するインパクト」の狙いを つけていくことが重要である インパクトを効果的に⽣み 出すためには、学びと改善 活動のサイクルをつくる、意 図する社会的インパクトを ⾼めていくための「マネジメ ント」が必要である 意図する社会的インパクト を、⽬的や背景・⽂脈に 応じて、適切にスケーリン グさせる 1 2 3 (注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
  • 9. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 9 プラスのインパクト マイナスのインパクト 予期しないインパクト 予期したインパクト 意図して⽣み出す プラスのインパク トの狙いをつけて いく 出典︓ソーシャルインパクトディ2018 ジョン・ガルガーニ⽒講演資料(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)を元に筆者が作成 社会的インパクトの創出を図⽰すると、以下のようなイメージとなる。 社会的活動(介⼊)により、良い変化を⽣み出し、悪い影響を最⼩限にするためには、 その中で「意図するインパクト」の狙いをつけていくことが重要である。 社会的インパクトのインテンション1 「予期した」 「プラス」のイ ンパクトの領 域を⼤きくし ていくための マネジメント を⾏う
  • 10. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 10 社会的インパクト・マネジメントの基本プロセス 計画 (事業戦略の策定) 実⾏ (事業の実施) 効果の把握 (事業効果の検証) 報告・活⽤ (レポーティング・事業計画 への反映) ①事業⽬的は社会の ニーズに対応しているか ニーズ評価 ②この⽅策で課題解決に 貢献できるだろうか セオリー評価 ③実施プロセス は適切か プロセス評価 ④社会課題の解決に貢献したか アウトカム/インパクト評価 ⑤これらの結果が事業 改善のために、適切に 活⽤されているか このサイクルを健全に 回すための組織⽂化 とガバナンスが重要 2
  • 11. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 11 最適なスケーリング 事業の FIRST IDEA ⼤ 現在のスケール 最適な スケール 3 社会的インパクト・マネジメントを⾏いながら、 「最終的に⽣み出すべき成果」に照らし合わせて、 それに⾒合った最適なスケーリングイメージを持つことが重要である。 問うべきこと ●⾃分たちの事業のスケーリン グ状況の現在地はどこか︖ ●事業の⽬的や背景・⽂脈 に照らし合わせたときの最適な スケーリングの度合いはどこ か︖ ●最適な度合いをどのように ⾒出し、そこに向けてどのように 社会的インパクトをスケーリン グさせていくか︖ スケーリングの「規模」(⼤⇆⼩)、「深度」(深⇆浅)における 「最適化」 の考え⽅ ⼩ 浅 深
  • 12. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 社会的インパクトを扱う際の評価の役割 12 事業 組織 社会 事業改善 ラーニング アカウンタビリティーの 確保 組織基盤・ ガバナンス強化 評価的思考、 ⽂化づくり 社会課題解決 社会価値創造 知⾒の蓄積 社会的価値を 創出する事業創造、 事業拡⼤ 社会的価値を 継続的に⽣み出すための 組織の体質改善 究極的には “社会の改善” に向かっている 評価の⽬的・効果には、以下のようなものがある。 ⼀般的には、「学び・改善」と「アカウンタビリティー確保」と⾔われるが、 究極的には、「社会の改善」に向かうものである。 それぞれの単位において、インパクト・スケーリングの最適化を考える際に、評価が⼒を発揮する
  • 13. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 評価をインパクト・スケーリングで活⽤するために 以下を頭に⼊れておきましょう。 13 p 評価の定義︓プログラムの活動、性質、アウトカムの情報を体系的に収集し、当該プロ グラムについて何らかの判断を下し、プログラム介⼊による効果の改善を⾏い、将来のプ ログラムについての決定を⾏うことである。(Patton) p 評価の類型︓評価⽬的によって、アプローチや内容は異なる。 以下は、⽬的に照らした評価の3類型である。 発展的評価 Developmental Evaluation 形成的評価 Formative Evaluation 総括的評価 Summative Evaluation 事業(や事象)が発展・変 遷・様変わりしているとき 事業の改善の余地があるとき 事業がすでに確⽴しているとき 社会的介⼊の適応に向けたデ ザインを⾏い、主に発展・変⾰ を志向する 進⾏中のプログラムのモニタリン グおよび事業改善を志向する プログラムが⽬標を達成したか どうかの判断をあおぎ、アカウン タビリティー確保を志向する 創出期 形成期 確⽴期
  • 14. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 14 2.スケーリングの概念とその種類
  • 15. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. スケーリングの概念の拡⼤ 15 引⽤︓ Mark Cabaj, Complexity & Evaluation Evaluating “Scaling” in Social Innovation Melbourne, Australia (May, 2018) スケーリングには、以下の5つの類型がある。 Scaling Out Deep Infra- structure Scree Up
  • 16. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. スケーリングの概念の拡⼤ 16 スケーリング・モデルと内容は、以下の通りである。スケーリングの形態や経路が異なる。 スケール・モデル 内容 Scaling Out (受益者の拡⼤) 影響を受ける受益者の数がより多くなるような⽅法で、もともとのイノベー ションを異なる⽂脈へ展開・拡⼤させる。 Scaling Up (機構変⾰) 組織の内部規程や労務管理、政府の法律や規制等、機構レベルの変 ⾰を実現させ、イノベーションの効率化や拡⼤を可能にする。 Scaling Deep (⽂化) ⽀配的⾔説、価値観、信念、アイデンティティなど、⼈々、組織、コミュニ ティの「⼼」を変えること。イノベーションが⽂化的なDNAの中に埋め込ま れ、⽀えられるようになる。 Scaling Scree (新しいイノベーション) もともとのイノベーションと同様の結果を⽣み出すような他のアイデアやイ ノベーションを奨励し、育成する。 Scaling Infrastructure (キャパシティ) 資本、データ、⼈材、知識、ネットワークなど、スケーリングのためのインフ ラを整えることで、システムやコミュニティのキャパシティを向上させる。
  • 17. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Out(スケール・アウト) 17 スケール・アウトは、⼀般的に考えらえているスケーリングであり、インパクトの受益者を 増やしていくことである。そのために、事業・活動(介⼊)を、異なる背景・⽂脈にお いて適⽤させる。 (例)独⾃のメソッドを⽤いた障がい者の就労⽀援プログラムを、地域展開する。 その結果、受益者数が増加する。 【イメージ】 ⽊の本数を増やす。 それにより、果実も増え る。 (注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
  • 18. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Out(スケール・アウト) 18 以下が、スケール・アウトにおける評価設問、指標の例である。 設問の例 指標の例 q イノベーション(社会的介⼊)のどの部分 が⽂脈依存度が⼤きく、簡単には展開でき ないか? 異なる⽂脈に通⽤する「最低限の 仕様」(例えば、プログラムの特徴、原則)は 何か? これについての私たちの理解は、この イノベーションの拡⼤に伴ってどのように変化 してきたのか︖ q イノベーション(社会的介⼊)がどのくらい 広がったのか︖ どのくらいの受益者が影響 を受けたか︖ q もともとのイノベーション(社会 的介⼊)の規模の拡⼤ q 同様な介⼊を実施する組織や コミュニティの数の増加 q イノベーション(社会的介⼊) の受益者数の増加
  • 19. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Up(スケール・アップ) 19 【イメージ】 ⽊を⼤きく育てる。 それにより、果実も増え る。 スケール・アップは、事業・活動(介⼊)が⾏われる組織・機構を強化し、機能を向 上させることで、より⼤きなインパクトを創出させること。 (例)就労⽀援プログラムのトレーナー養成講座の質を向上させることで、より多く の優秀なトレーナーを育成できるようになる。その結果、就労⽀援プログラムの成果 が向上する。 (注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
  • 20. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Up(スケール・アップ) 20 以下が、スケール・アップにおける評価設問、指標の例である。 設問の例 指標の例 q イノベーション(社会的介⼊)を⽀援し、拡 ⼤し、持続させるために必要な、機構的要 因はなにか(組織の場合は内部規程や労 務管理、予算策定・執⾏など。⾏政機構の 場合は法律・規制、予算策定・執⾏な ど)︖ q これらの組織的・制度的整備はどの程度進 んでいるのか︖ q これらの整備は、もともとイノベーション(社会 的介⼊)のスケールアウトにいかなる影響を 与えたか︖ q もともとのイノベーション(社会 的介⼊)のパフォーマンスとス ケーリングを⽀援する組織的・制 度的変更の数、多様性、意義
  • 21. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Deep(スケール・ディープ) 21 スケール・ディープは、対象(個⼈、組織)の価値観や⽂化(当たり前と考えられて いること、考えの「型」等)を変化させることで、インパクトを深めることを狙うものであ る。与える「インパクトのマグニチュード」 と⾔うこともできる。 (例)就労⽀援プログラムで、受益者の⼦どもたちの価値観を⼤きく変えるような 深い体験を与える。その体験により影響を受けた価値観は⻑く持続し、将来の 就労に⼤きな影響を与える。 【イメージ】 ⽊に栄養を与えて⼗分な 時間をかけて育てる。 それにより、果実を⼤きく 熟成させる。 (注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
  • 22. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Deep(スケール・ディープ) 22 設問の例 指標の例 q イノベーションが育つために必要な⽂化的属 性(信念、⽀配的⾔説、価値観、アイデン ティティ等)は何で、それらはどこに存在し、ど こで抵抗を受けているのか︖ q ⽂化的な変化を理解し、探求し、⽀援する ための⼈々や組織の巻き込みはどの程度進 展しているか︖ q これらの変化は、もともとイノベーション(社 会的介⼊)のスケールアウトにいかなる影響 を与えたか︖ q イノベーションとその根底にある ⽂化的属性への理解や⽀援を ⽰す⾏動の数、多様性、意義。 以下が、スケール・ディープにおける評価設問、指標の例である。 尚、IMP(Impact Management Project)のImpactの5次元の考え⽅では、「Impactの深さ」を 考えることの必要性を⽰しており、それとも整合性が取れている。
  • 23. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. SCALING SCREE Scaling Scree(⾶び⽕) 23 スケーリングの⾶び⽕は、もともとのイノベーションと同様の結果を⽣み出すような 別のやり⽅が他地域、同業他社等で派⽣することである。 (例)先進的な就労⽀援プログラムの評判 が伝わり、違う⽅法で、より地域事情に合致した ⽀援プログラムが開発され、イノベーションが形を 変えて伝播していく。 【イメージ】 ある地域の⽊の実の種が、別地域 に⾶び、各地で新しい⽊が⽣えてく る。それにより、果実が増える。 (注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
  • 24. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Scree(⾶び⽕) 24 設問の例 指標の例 q もともとのイノベーション(社会的介⼊)が 誘発したアイデア、議論、実験は何か︖ q もともとのイノベーションは、どのような形でそ の誘発に貢献したのか︖ q 新しいアイデアやイノベーションは、どの程度ま でもともとのイノベーションを補完しているのか、 あるいはそれを変質させているのか。 q もともとのイノベーションと並⾏し て、あるいはそれ以降に⽣まれ たイノベーションの数、多様性、 意義。 以下が、スケールの⾶び⽕における評価設問、指標の例である。
  • 25. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Infrastructure(インフラ・スケール) 25 インフラ・スケールは、資本、データ、⼈材、知識、ネットワークなどのスケーリングのための インフラを整えることで、システムやコミュニティのキャパシティを向上させることである。 (例)就労⽀援プログラムの実施団体と 地域の他関係団体の連携強化、さらなる ノウハウの蓄積を⾏うことで、⻑期的に 持続的なプログラム提供が可能となる。 SCALING INFRASTRUCURE 【イメージ】 ⽊の根っこをより張り巡らせることで、 将来にわたって持続的に・安定的に 果実が収穫できるようになる。 (注意)本スライドでは、「社会的インパクト」のことを便宜的に「インパクト」と表記しています。
  • 26. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. Scaling Infrastructure(インフラ・スケール) 26 設問の例 指標の例 q イノベーションの規模拡⼤を⽀援するには、 どのようなリソース、スキル、ネットワーク、知 識が必要か︖ q このインフラストラクチャーの構築はどの程度 進んでいるのか︖ q 現在のインフラストラクチャーはスケーリングに どの程度役⽴つものか︖どのように改善でき るか︖ q イノベーションの規模拡⼤を⽀ 援するための作られた、または 強化されたインフラ要素の数、 多様性、有⽤性 以下が、インフラ・スケールにおける評価設問、指標の例である。
  • 27. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. スケーリングになっていないもの 27 ちなみに、以下のような状況は、スケーリングになっていないため注意。 NOT
  • 28. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 28 3.適切なスケーリングのための4つのプリンシプル
  • 29. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 適切なスケーリングのための4つのプリンシプル 29 スケーリング に対する適切な評価 正当性 スケーリングの最適化 コーディネーション 適切なスケーリングを実現するために必要なのは、セオリーやロジックよりも、4つの基本姿勢= プリンシプルです。 引⽤︓Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)
  • 30. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(1) 30 スケーリングは必須でなく、任意である。ス ケールさせるべきかどうかは意思が問われる。 では、その選択は、なにを基準に⾏われ、正 当性を与えられるのだろうか。 引⽤︓Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani) 正当性 1. スケーリングは選択︓「⼤きければよい」というものではない。特に、スケーリングで直接の 影響を受ける主体(受益者、地域住⺠、介⼊の対象になりそうな階層・集団)への影 響は考慮しないといけない。 2. エビデンスと価値︓選択する・しないの意思決定で働くべきはエビデンス。すなわち、「こう なればこうなるはず」という仮説とその蓋然性を⾼めるデータである。⼀⽅、事業主体や 受益者、その他ステークホルダーのもつ価値観が重要な役割を果たすことに⽬をそらして はいけない。 3. 意思決定のオーナーシップを共有する︓⼀⽅的な意思決定ではなく、その介⼊で影響 を受ける多くのステークホルダーが選択にオーナーシップをもつことは重要。介⼊による正 負のインパクトやリスクが平等に分散することはまれで、であればなおさらである。
  • 31. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(2) 31 スケーリングは、⼤きければ⼤きいほど良いと いうわけではない。最適化をねらうことが肝 ⼼。最適化を考える要件には、インパクトの 1)⼤きさ、2)多様性、3)持続性、 4)公平性の4つがある。 引⽤︓Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani) スケーリングの最適化 1. プリンシプル1で「正当性」が確保されたとしても、スケーリングの⼤きさ、深さ等、複数の 変数の中に最適解があり、それを多くのステークホルダーで模索しながら探していくことが ⼤事。 2. インパクトはプラス⇆マイナス、予期された⇆予期されないものが混ざり合って⽣成するこ とを意識し、最適解を考える際にはこの4象限を包含した思考が必要。 3. インパクト最適化の4要件を意識し、どの要件からみても最適であることをチェックすること も必要。
  • 32. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(3) 32 スケーリングが発⽣する複雑系のシステムで は柔軟性が重要。適切なコーディネーション が存在するかはスケーリングの成否を左右す る。 Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)から⼀部改変 コーディネーション 1. スケーリングは複雑系のシステム(社会システム)の中で発⽣する。そこでは、ステークホ ルダーの関係性には相互性があり、事象の因果関係は多重のループで複雑に絡み合っ ている。まずそのことを理解することが必要。 2. 複雑系システムにおいては、介⼊→結果も独⽴しては起こらない。スケーリングを起こそう と思っても、その影響が意外なところに現れる。それを予期した柔軟性が重要。 3. コレクティブインパクトの試みのように、⼀群の介⼊に個別の強みをもった多様なステーク ホルダーが関与する。これらの異なる利害や⽴場をうまく調整するコーディネーションの役 割は⼤きい。
  • 33. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 適切なスケーリングのための4つのプリンシプル(4) 33 これまでの評価のアプローチではスケーリン グは適切に評価できない。 複雑系・動的 な環境に対応できる評価体系を確⽴し、 実践することが求められている。 Scaling Impact Innovation for Social Good(Robert McLean & John Gargani)から⼀部改変 スケーリング に対する適切な評価 1. 従来の、介⼊→インパクトの因果関係を評価するアプローチだけでは不⼗分で、スケーリ ング⾃体を評価する試みを開発しないといけない。そこでは、複雑系システムを前提に し、最適化4要件のような価値基準を活⽤した評価体系が描かれる。 2. 学び・改善のサイクルを短時間で回し、スケーリングの前中後で評価を⾏っていく必要が ある(発展的評価のアプローチが活⽤できる)。 3. スケーリングの中では、事業ゴールも評価設問も常に推移していく。新たな評価体系で は、事象の変化に柔軟に対応する評価アプローチが求められている(ここでも発展的評 価のアプローチが活⽤できる)。
  • 34. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 34 4.おわりに
  • 35. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. まとめと今後に向けて 35 • 真の意味で社会課題の解決、社会価値の創出に寄与するには、社会的インパク トの「スケーリング」の考え⽅が必要です。国内で、グローバルで⼭積する社会課題 を解決し、21世紀の新たな政治経済の動かし⽅を実装・実現していくためには、 イノベーションの⼒をいかにスケールするかの考えを抜きにすることはできません。 • スケーリングには5類型あり、中⻑期に⽣み出すべきアウトカム、事業の性質、事 業ステージ、対象となる受益者などの要因から、適切なスケーリング・モデルを組み 合わせ、最適なスケーリングを実践することが必要です。 • 適切なスケーリングの実践のためには、4つの基本姿勢(プリンシプル)を参考に、 スケーリングの最適解を探していくことが必要です。スケーリングで直接の影響を受 ける主体への影響を優先的に考える、最適化の4要件には公平性が含まれるな ど、スケーリングの議論では通常あまり顧みられない重要な点があることに注意しま しょう。 • 皆さんの事業が、「社会的インパクト・マネジメントのその先」を⾒据えて、スケーリン グの最適解探しに邁進されることを⼼より応援しています。(お⼿伝いできることが あればご連絡ください︕)
  • 36. Copyright 2020 Blue Marble Japan, Inc. All Rights Reserved. 36 ブルー・マーブル・ジャパンでは、 この「インパクト・スケーリング」の考え⽅を組み⼊れて 各種の事業⽀援を⾏なっています。 「実践⽅法について知りたい」 「具体的な事例を知りたい」 「評価/インパクト・マネジメントに関する相談」など (株)ブルー・マーブル・ジャパン office@blue-marble.co.jp まで、お問い合わせください。 さらに詳しく知りたい⽅へ