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IGDA日本 SIG-AI研究会で話した内容(2010年)
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三宅さんのゴツイスライド↓の補足としてください http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-51550428
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東京工芸大学で毎年冬頃にゲーム産業の現状について1コマ講義をしてSlideShareにアップしていますが、今年度は明治大学からもお願いされたので5月に一度作っています。この時期に作るとまだ統計発表前なので市場規模データが更新されていません。 冬頃の講義までまとうかと思ったのですが、先日とある国の貿易機構(日本だとJICAにあたる組織)相手に日本のゲーム産業の説明をしてこのファイルを送ったので、もう公開情報扱いにすることにしました。 申し訳ありませんが、eスポーツまわりは変動が激しすぎる時期なので、まだ一切触れていません。次回の改定をお待ちください。
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1.
社会シミュレーション の現状とこれから 小山友介(芝浦工業大学)
2.
社会シミュレーションって? シミュレーションという手法を使って,社会のさまざま な現象を分析・議論する学際的な学問分野 まだ学問的に発展途上で,経済学,経営学,政治学... などの分野別に分かれるほどの人数はいません
主に使われる手法:エージェントシミュレーション 理系出身者と文系出身者が混じっています 理系:主にコンピュータ系 技術の応用先のひとつとして参入 文系:経済学,社会学,経営学,政治学,...さまざま 問題解決のツールがたまたまシミュレーションだった 講演者(小山)は文系(経済学)出身です
3.
エージェント 社会シミュレーションでの基本単位 ゲームで言うところのキャラクター
内部状態と意思決定ルールを持つ 全キャラがNPCのデモがシミュレーションと思ってください RPGを例にエージェントを説明すると 内部状態 HPやMPのように,刻々と変化するパラメータ 種族のように,ゲーム中変化しないもの 意思決定ルール エージェントが直面するすべての環境で定義 環境には自分の内部状態(HP,MP)も含まれる
4.
イメージを持ってもらうために NHK(爆問学問)で前の職場(東工大・出口研)が紹 介されたときのビデオ(一部)を流します 15分ぐらい(長くてスミマセン)
社会シミュレーションのイメージが少し湧くはずです ビデオの内容をものすごく単純に言うと: マルチエージェント技術を使って, 箱庭世界(ただし,すごく単純)で, 感染症がどれぐらい広がるか, どういった政策が有効か を議論しています 以下,ビデオの補足スライドを並べます
5.
背景&想定(1) あなたはA市の防災担当責任者です.アメリカの炭疽 菌テロ(2001年)以降,細菌兵器によるバイオテロへ の対策を立てることが求められています. しかし,資金や人的および物的資源の限界から,準 備できることは限られています.
どういった対策が有効か,事前のシミュレーションで 検討しておきましょう.
6.
背景&想定(2)
7.
仮想都市の想定(1) 人口:1万人 右図:世代と人口構成
免疫 ベース感染確率に影響 あり:0% 少しあり:30% なし:80% 世代 年齢 人口 構成比 免疫 幼児 0-5 10% なし 子供 6-12 20% 学生 13-18 20% 若者 19-34 20% 中年 35-59 20% あり or 少しあり高齢者 60- 10%
8.
仮想都市の想定(2) 世帯構成 一人暮らし
or 核家族世帯が多い 施設など 交通:就労者・学生が移動で利用 小・中・高校:それぞれ3 会社 大規模:4,中規模:7,小規模:7 病院:1 (院内感染は考えない) 世帯構成 人口比 1人 20% 2人 30% 3人 15% 4人 10% 5人 10% 6人 5% 7人 3% 8人 2% 9人 2% 10人 3%
9.
病態遷移モデル 未感染 潜伏期 症状あり ウィルス排出 症状なし ウィルス排出 (不顕性感染) 症状悪化 入院 重体 死亡 軽快 回復 免疫 獲得 軽い症状 20% 80% 14日 3日 3日 3日 3日 2日 1日 2日 今回は考えない
10.
政策カードの選択順序
11.
政策パラメータ一覧 政策名 パラメータ ワクチン備蓄(人口比) 30%,60%,100% 1日当たりワクチン接種人数
20人,300人 感染確認からワクチン接種開 始までの時間遅れ日数 0日,10日 (今回は考えない) ワクチン対象者 社会全体,若者のみ,若者・感染者周囲のみ 学校閉鎖の有無 あり,なし ※ワクチン対象者:「若者・感染者周囲のみ」のワクチン対象者 感染者・感染者の家族・感染者の会社の同僚(もしくは学校の同級生)のうち,若者のみ
12.
100%,20人,学校閉鎖あり,ランダム
13.
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14.
30%,300人,学校閉鎖無し,young_red
15.
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16.
シミュレーション裏話 感染確率の設定:かなり苦し紛れ 数分間の接触で感染する/しない確率のデータはない!
動物実験のデータを援用 エージェントの行動:すごく単純 学校や会社に行って帰るだけ 重要な接触ポイントさえ押さえられれば,政策には十分 最重要は学校の閉鎖 ゴール:予測ではない! 現実味のあるあらゆる「シナリオ」の洗い出し 理解を共有して,実のある議論を補助するツール
17.
社会シミュレーションの面白さ フラグ管理でない「イベント」を読み解く面白さ NPC同士の連鎖反応で発生する予想外の現象
感染症の爆発的蔓延,ある製品のブーム,株価の暴騰・暴落... これを創発(emergence)と呼びます 鍵となるパラメータを操作すると,結果が劇的に変化 これを洗い出すのが研究目的 ランダム性があるので不完全だが,ある程度結果を操れるように (結果の作り込み) 予想外の結果に「振り回される」楽しさ カイヨワの4分類だと,イリンクス(めまい)
18.
話を戻します
19.
社会シミュレーションの2つのながれ(1) 第1世代:既存理論拡張 元ネタの理論モデルがある:モデルは数式の集合体
研究者単独の研究が多い:プログラム的にはシンプル 内容をリッチにしたら数学的に解けなくなった →コンピュータシミュレーション シンプルなモデルが多い(下表):詳細は文献リスト参照 セル型 GA・学習型 市場型 相互作用空間 格子空間 (均質的な空間) 特になし (ランダムマッチング) 市場 (取引所型/均衡型) 相互作用形態 1対1×周囲 1対1 N対N 備考 周辺とのみ 相互作用 内部モデルを充 実させる 集計量を通じた 相互作用 代表モデル ・Segregation ・SugarScape ・くりかえしPD ・Normの発生 Santa Fe 人工市場
20.
第1世代(補足) エージェントシミュレーション 以外だとシムシティ システムダイナミクスの理論 が下敷き 画像の出典
http://en.wikipedia.org/wiki/SimCity 図の出典 Langley and Larson(1994)
21.
第1世代(おまけ) ガンパレード・マーチ 学園モード:26人のキャラによるマルチ エージェントシミュレーション(風ゲーム)
発言力を消費して,他のキャラに影響を与え ることで,部隊の士気やパフォーマンスに影響 2種類(?)のイベント フラグ管理によるシナリオイベント 通常のゲームでよくあるもの エージェント間の相互作用で創発した, 思いもかけない状態(妄想イベント?) FC版DQ4のAI戦闘への妄想に近い? 画像の出典:アルファシステムWebページ http://www.alfasystem.net/game/gp/main.html
22.
社会シミュレーションの2つのながれ(2) 第2世代:フルスクラッチ 既存の理論とは全く関係な く,現実の一部を再現する モデルを作ったもの
政策への応用を目指す 個人研究者レベルを超えた, 大規模プロジェクトが多い 箱庭系ゲームに近い シェンムー,GTA(3以降) Sims 画像(シェンムー,GTA)の出典:wikipedia英語版
23.
第1世代と第2世代 世代区分:便宜的なもの(第1世代も現役) 第1世代の社会シミュレーションブーム:80~90年代
複雑系ブーム(90年代初頭)が後押し 第2世代:2000年頃~ コンピュータ性能の向上→もっとリアルを! 指向性の違い 第1世代:モデルがシンプル→理論指向 第2世代:モデルがリッチ→政策指向 科学的 理論志向 工学的 政策志向 第1世代 第2世代
24.
第2世代の特徴 誰がつくる?誰が使う? 文系の研究者では,イチからつくるのは厳しい
複雑さ:「シロウトのにわか勉強で何とか出来る」レベルを超える 理工系とコラボするか,使いやすい開発ツールが必要 研究者というよりは,実務者向け モデルの粒度が実際の現場レベル 研究モードの変化 第1世代:PCで研究可能 →シミュレーションをSmall Scienceにした 第2世代:様々な分野の研究者のコラボが不可欠 →再びBig Scienceに
25.
第2世代の困難まとめ 1. モデル化 社会科学系研究者のセンスがモデル化に不可欠 2.
実装 第2世代はモデルが複雑で敷居が高い 3. 計算時間 パラメータの自由度が巨大化し,総計算時間が莫大に 4. データマイニング さまざまな条件で多数回実行されたシミュレーションのロ グデータは莫大
26.
ヤッコー研究とゲーム ヤッコー(業界用語) 「シミュレーションをやったらこうなりました」の意味
過去の伝統と全く接続しない,やり逃げ 研究とゲームの違い 研究:裏付けが求められる 政策に使いたい→研究者のノリだけでは許されない 見た目は地味(クソゲーレベル)でもOK ゲーム:それっぽければOK 歴史シミュレーションゲーム:背後に理論があるわけではない 現実より派手な演出が好まれる つまらないリアルより楽しいヤッコー
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まとめ? 社会シミュレーションのキモ 2つのレベルのルール
エージェント間のインタラクションのさせ方 システムの基礎仕様を決定 エージェントの意思決定のアルゴリズム エージェントのパラメータ値と併せて,個性を決定 シミュレーションでやってること:すごく単純 以下の内容を規定ターン数繰り返す エージェント同士が何らかの方法でインタラクションする インタラクションの結果,エージェントのパラメータの値が変化する 配列とForループさえわかっていれば,社会シミュレーション は書ける! ・・・と,学生には言ってます
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参考文献(邦語中心) 人工社会(シュガースケープとセル系) エピスタイン&アクステル,『人工社会』,共立出版
山影進,服部正太,『コンピュータの中の人工社会』,構造 計画研究所 繰り返し囚人のジレンマ アクセルロッド,『つきあい方の科学』,ミネルヴァ書房 アクセルロッド,『対立と協調の科学』,ダイヤモンド社 人工市場 和泉潔,『人工市場』,森北出版
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