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虚アバタセプトの 
本邦における位置付け 
璽些〒 
でノ 
襲撃聖撃墜 
・昏醐 
喪主禦慧酔. 
樹.'jSiiJ遊 
撃準撃琴轡~幽 
醤替蔭甜義蓮 
如細章淫喜翫喜措蝕t窟組 
箇抄磁r潜 
l・. -- - .'・ .L      も こ1... 
太冊子に掲汚点の真剤のこ使用にあたっては 
顧鉢奉還 免監     蓉縫熟瀞 先生
高齢者RAの治療 
佐鯨 アバタセプトは点滴静注製剤(IV) 
発売から既に4年近くを経過し、全例調査 
も終了したことで日本の日常診療下におけ 
る有効性および安全性が明らかになって 
きました。また、皮下注製剤(SC)も発売 
されてもうすぐ1年となります。そこで今回 
は、アバタセプトの本邦での位置付けにつ 
いて、ご施設での経験も含めて討議してい 
きます。近年、関節リウマチ(RA)でも患 
者の高齢化が進んでおり、安全性にも一層 
の配慮が必要となってきていますが、平野 
先生には高齢発症のRAに関しての検討 
結果を紹介いただきたいと思います。 
平野 当科ではRAの診療レベル向上を 
目的として、私が赴任した2009年4月から 
RA患者の臨床データを記録しています。 
我々はこのデータベースを基に、 60歳以上 
で発症した高齢発症RA (Elderly-onset 
RA: EORA)、 16-59歳で発症した成人 
発症RA (Adult-onset RA: AORA)とで 
層別解析を行い、 EORAの特徴について 
検討しました。 2012年度に当科に通院 
していた818例のうち、 282例(34.5%)が 
EORAでした。 AORAとの患者背景の比 
較では、 EORAは男性の比率が高くなって 
いました(女性比率: 82.3% vs. 66.7%)0 
AORAのほうが雁病期間が長い(16.0 
年vs. 7.6年)ことを反映し、病期につい 
てはAORAのほうがStageⅢおよびⅣの 
比率が高いのですが(75.2% vs. 52.5%) 、 
機能障害度は年齢を反映してかEORA 
のほうがClass 3および4の比率が高い 
(28.0% vs. 43.4%)という結果となってい 
ました。また、EORAは抗CCP抗体陰 
性の割合がAORAよりも高く(23.7% vs. 
14.5%、 p-0.0016) 、 RFも含めた血清反応 
陰性の割合も高くなっていました(19.3% 
vs. ll.4%、 p-0.0016)。合併症について 
は、呼吸器合併症や糖尿病はEORAで 
多く、これらを反映してか、メトトレキサー 
ト(MTX)の投与率や投与例での平均投 
与量はEORAで低いという結果でした。 
EORAではMTXの代わりにサラゾスル 
フアピリジンが使用され⊂いる患者の割合 
が高く、ステロイド投与例の割合と投与量 
も高くなっていました。生物学的製剤の 
投与歴のある患者の割合は、 AORAでは 
33.2%、 EORAでは24.4%でした。疾患 
活動性については、 DAS28-ESRの寛解 
率はEORAよりもAORAのほうが高いも 
のの(28.8% vs. 39.2%、 p-0.0042)、低疾 
患活動性以下の割合に差はありませんで 
した(25.4%+28.8% vs. 39.2%+19.7%、 
p-0.2038) 0 
さて、 EORAを含め、増加する高齢者の 
RAの治療ではどのような病態があり、ど 
のような治療が必要とされるのでしょうか。 
オランダのBootsらは、最近の総説の中で 
これらの点について解説しています(Boots 
AMH, et al. Nat Rev Rheumato1 2013; 9: 
604-613.) 。まず、加齢が免疫系に与える影 
響については、 immunosenescence (免疫 
老化)と呼ばnる現象が生じることを紹介 
しています。例えば獲得免疫ではNaive 
T細胞が徐々に減少する一方でMemory 
T細胞が増加し、 T細胞受容体の多様性 
が減少していくことなどが知られています。 
このような免疫機能の変化は炎症性疾患 
や自己免疫疾患、感染症や悪性腫癌のリ 
スクを上げるものと考えらjtていますが、 
Bootsらは、高齢者では、合併症や身体の 
虚弱性ないし脆弱性(frailty)などのリスク 
∴  ~. / L:.I.(,-_∴・十l_- ・ El=.- 
佐藤正夫 先生 
国子の状況に応じて治療強度を層別化す 
る必要性を指摘しています。これは`go'、 
go-slow'. `n0-go'の3つに層別化するも 
ので、例えば80歳のRA患者で、 RA以外 
の合併症がなく、生活も独立しており、社 
会活動にも参加している患者であればgo 
approachとして若年者と同様の治療を行 
います。しかし、同じ80歳のRA患者で 
あっても、 unsuccessful agingとされるよ 
うな合併症や脆弱性を有しており、社会活 
動への参加も最小限の場合には、 go-slow 
approachとして、 DMARDsや生物学的製 
剤の安全性を考慮すること、さらに合併症 
の強い場合には、 DMARDsや生物学的 
製剤による治療は行わず、痔痛軽減を中心 
とした治療を行うn0-go approachにする 
というものです。 
さて、アバタセプトについては、全例調査 
の結果から、重篤な副作用のリスク因子、 
腎障害(ありvs.なし) 
肝韓書(ありvs.なし) 
呼吸器合併症既往歴(ありvs.なし) 
オッズ比l 95%Cl ■ p億 
2.055  1.0294103   0.041 
1.988 1.115-3.545 l o.020 
1.790 17142_表示 To111 
投与前リンJ昭数(<1,000/mm3vs・≧1,000/mm3)  1 1・759 聖_212・竺LI O・01 
副腎皮質ステロイ憎の併R]・(>5mg′日vs・0または≦5mg/日) 1・627 l 11009-2・623 1 01046 
c一ass(3&4vs. 1&2)             1 1・626 1・038-2・547 ; 0・034 
・アハタセプト投与中に1回でも副腎皮質ステロイド薬を授与された症例の投与量をプレにゾロン(PSL)換貸して1日土を32出o 
アバタセプト全例調査適正使用情報Vol 5 
_∴二  : .~ __ ミ・∴_≡- .:I:庁 
体重(<40kg vs. ≧40kg) 
呼吸器合併症既往歴(ありvs.なし) 
オッズ比   95%Cl l p値 
3.081 1.309-7.255 : 0・010 
2.443 115to-_4.52111~~ 0.004 
副腎皮貿ステロイド藁の俳が(>5mg/日vs・0または≦5mg/日) 2・169 ≡ 1・1494・095  0・017 
・7,ハタセプト投与中に1回でも副腎皮質ステロイド菜を授与された症例の投与tをプレドニソロン(PSL)換32して1日量を許出o 
アバクセプト全例調査適正使用情幸三Vo1 5 
-,ー≡ こ【JIL=SF巧ぎょ二∫」,r_;こ三の「)"の「」別L「,I-I 
堅甲甲______ 
感染症 
重篤副作用 
重篤感染症 
65歳未満 
(∩=2,1 70) 
314 (14.5%) 
105 (4.8%) 
40 (1.8%) 
18 (0.8%) 
65歳以上 
(n=1,712) 
294 (17.2%) 
123 (7.2%) 
58 (3.4%) 
22 (1.3%) 
p値 
l (XZ検定) 
0.021 
0. 002 
0.∝〉2 
N.S. 
アパタセプト全i;」i萄査道三.三軍′書き≡Vo1 5 
2
重篤な感染症のリスク因子として、表1お 
よび表2に示すものが挙げられています。 
なお、他の生物学的製剤では、重篤な感 
染症のリスク因子として65歳以上もしくは 
高齢が抽出されていますo アバタセプトに 
ついては、 65歳以上の高齢者では副作用、 
感染症、重篤な副作用の頻度が有意に 
高いという結果でしたが、重篤な感染症 
については有意な差はみられませんでし 
た(表3)。このような結果からは、アバタ 
セプトは高齢者においても比較的安全に 
使用しうる薬剤である可能性が示唆されて 
いると思います。 
佐症 アバタセプトは高齢者においても 
比較的安全に使用しうる可能性があると 
いうことですが、先生方はどのような印象 
ロi I:」、 ::-_/:∴I二、:二日二・∴tL. L.・・_日.I.り.:.'lL~ 
をお持ちですか。 
症/:,ここ 最近では高齢者の割合が増えてい 
ますが、高齢者では呼吸器疾患や糖尿病 
などの基礎疾患を合併していることが多 
く、また、腎機能障害などがあって思うよう 
にMTXが使用できないことが少なくあり 
ません。そうしたこともあり、生物学的製 
剤としては比較的安全性の高いアバタセプ 
トを使用する機会が徐々に増えてきている 
のではないかと思います。 
渋谷 私の場合は、MTXを使用しにくい 
症例にアバタセプトを単剤で使用すること 
が多いと思います。最近では、 MTXを含 
めいずれのDMARDsも使用できない症 
例にアバタセプトを単剤で使用した経験が 
あります。 
同望 生iL二ヨ学的Ll刑卜はlVeに三割するMT:luH-招じ別DAS28-CRPの方1E亨 
アバクセプト全例調査 
/つ 
J 
平野裕司 先生 
志諒 私もアバタセプトは合併症の多い 
症例や高齢者に使用する場合があります。 
初回からアバタセプト単剤による治療を行 
うという方法もありますが、 MTXはできれ 
ば併用したいと考えています。高齢者で 
あってもまずMTXを使用し、その後アバ 
クセプトを併用することが多いのですが、 
何らかの原因で途中からMTXを使用で 
きなくなり、アバタセプト単剤による治療と 
なった場合でも、疾患活動性をコントロー 
ルできている症例も経験しています。 
( 
メトトレキサート(MTX) 
併用の必要性の有無 
佐転 ではここで、 MTX併用の必要性に 
ついて、藤林先生にお話をいただきたいと 
思います。 
E上品′:tこ アバタセプトの全例調査では、MTX 
の併用の有無および生物学的製剤の治療 
歴の有無(Switch、 Na.1-ve)による層別解 
析が行われています。重篤な副作用の頻 
度については、 NaⅣeでMTX非併用の群 
とSwitchでMTX非併用の群との間に有 
意な差がみられましたが(1.2% vs. 3.3%、 
p-0.049、 X2検定)、それ以外には有意な 
差はみられませんでした。次に、 DAS28- 
CRPの変化量についてみると、 Naive群は 
Switch群に比べ改善の幅が大きいのです 
が、 Na'1've群ではMTXの併用の有無によ 
る差はみられませんでした(図1)。さらに、 
NaⅣe群についてMTXの併用量別に解析 
した結果をみると、 24週の時点ではいずれ 
の群も同様の分布であり、 MTXの併用量 
によるアバタセプトの有効性への影響は小 
さいものと考えられました(図2)。ところで、 
アバタセプトの安全性・有効性と併用薬 
の関連について、我々は名古屋大学整形
深谷直樹 先生 
外科関連施設での患者レジストリ(TBC) 
を用いて、タクロリムス併用(n-16)、 MTX 
併用(n-84)、アバタセプト単剤またはその 
他のDMARDs併用(n-48)の3群による 
層別解析を行いました。その結果、タクロ 
リムス併用群およびアバタセプト単剤また 
はその他のDMARDs併用群では有害事 
象による中止はみられず、 MTX併用群で 
は骨折、問質性肺炎、丘疹性紫斑、リンパ 
増殖性疾患、虫垂炎がみられました。継 
続率については群間の差は認められません 
でした。有効性については、 DAS28-CRP 
およびDAS28-ESRでは群間に差はみら 
れませんでしたが、 SDAIやCDAIでの評 
価ではタクロリムス併用群での改善の幅が 
大きいという結果でした。アバタセプトは 
抗原提示細胞(APC)からT細胞への共 
刺激経路を阻害してT細胞の活性化を抑 
制すると考えられており、一方でタクロリム 
スはカルシニューリンを阻害することでT 
細胞の活性化を抑制します。これはあくま 
で仮説ですが、 RAの病態の上流にあるT 
細胞の活性化を細胞外と細胞内の双方か 
ら抑制することで、 RAに対し高い有効性 
を示している可能性があるのではないかと 
考えています。 
住,ifT1号 藤林先生のお話では、 MTXの併用 
の有無にかかわらずアバタセプトには一定 
の有効性が期待できることと、タクロリムス 
との併用での有効性が高い可能性が示さ 
れたということですが、これらの点について 
先生方はどのようにお考えですか。 
平野 2014年のEULARでは、発症早 
期のRAに対しアバタセプト+MTX、ア 
バタセプト単剤、MTXの3群を投与し、 
寛解に達した場合に治療を中止するとい 
うAVERT試験の成績が報告されました 
(Emery P, et al. EULAR 2014; OPOO26.)0 
その結果、投与開始後12カ月の時点でアバ 
タセプト+MTX群では61.3%、アバクセプ 
ト単剤群では45.7%、 MTX群では43.1% 
が寛解(DAS28-CRP2.6未満)を達成して 
いました。このような報告からは、MTXを 
併用したほうが成績がよいとみることがで 
き、アバタセプトによる治療におけるMTX 
併用の意義についてはまだわからない部 
分があると思います。臨床成績については 
ベースラインの患者背景の影響が大きく、 
本来であれば患者背景を揃えた患者集団 
において比較試験を行う必要があります 
が、実臨床での印象では、たしかに単剤で 
も有効な例を経験することはあります。 
佐信 私も実際にMTX非併用でも有効 
であった症例を経験しているので、 MTX 
を併用しない場合でも有効である可能性 
はあると思います。ただ、 MTXが服用可 
能な症例ではMTXを中止する必要はない 
のではないかと思います。ところで、 TNF 
阻害薬の中にはMTXの用量で有効性が 
異なるという報告もありますが、この点はい 
かがでしょうか。 
I;読;こ たしかに、TNF阻害薬の中には十 
分量のMTXの併用が望ましいとされて 
いるものがあります。しかし、日本人では 
long/週以上の高用量のMTXの使用が 
ためらわれるような症例も少なくありませ 
ん。そのような場合には、アバタセプトが 
選択肢として挙げられるのではないかと思 
います。 
堤,T;~Ⅰ言 タクロリムスとの併用について、アバ 
タセプトの添付文書に「タクロリムス等の 
カルシニューリン阻害薬との併用について、 
仁-.二 ∴;二:/I. ニ:I.I,.:-「- -.二二.I:: L_二二._・丁・∴. 
藤林孝義 先生 
安全性は確立していない」との記載があり 
ますが、この点はいかがでしょうか。 
綜沫 これまでの時点では重篤な有害事 
象は認められていませんが、まだ症例数が 
少ないこともあり、安全性については今後 
の検討課題だと思います。 
TNF阻害薬と 
アバタセプトの比較試験 
佐転 アバタセプトについては、新しい作 
用機序の薬剤であり、 TNF阻害薬と比較 
して有効性や関節破壊抑制効果はどのよ 
うに異なるのかという点が注目されていま 
した。この点に関して、最近新たな報告が 
なされていますので、若林先生に紹介して 
いただきたいと思います。 
二品:メ:二 既に知られているように、 AMPLE 
試験はMTX効果不十分なRAに対し、 
MTX併用下でアバクセプトSCまたはア 
ダリムマブを使用した試験で、 2年目まで 
の成績が公表されています(SchiffM, et 
lTT集団 
4 
SchlffM,etal Ann Rheum DIS2014. 73 86-94
aI. Ann Rheum Dis 2014; 73: 86-94.)。生物 
学的製剤同士を直接比較した試験として 
は、アダリムマブとトシリズマブを比較した 
ADACTA試験(Gabay C, et al. Lancet. 
2013; 381: 1541-1550.)の成績が報告されて 
いますが、これはMTXを併用しない試験 
でした。 AMPLE試験では、 MTXの平均 
投与量が17mg/週を超えており、アダリム 
マブの治療効果が十分に発揮できる条件 
での比較検討だと思います。 AMPLE諌 
験については、 2年目までのACR改善率の 
推移(図3)や、関節破壊抑制効果(図4) 
において両群に差がみられなかったことが 
報告されています。 
2014年のEULARでは、 AMPLE試験 
の雁病期間による層別解析の結果が報告 
若林弘樹 先生 
されていました(schiffM, et al. EULAR2014; 
FRIOO19.)。これはベースラインの雁病期 
間が6カ月以下と6カ月超とでACR改善率 
の推移やHAQ-DI改善例の割合の推移に 
ついて解析したもので、雁病期間6カ月以 
内では、アバタセプトSC群は2年時点での 
ACR改善率が高い傾向にあり(ACR20 ; 
田∠ヨ AFv'dPLE試「,32年f==H=:別:3冶rnTSS u;icLnllLIla的場PrObabI=ty PIoL 
5 
アグリムマブ群52.9%、アバクセプトSC群 
56.3%、 ACR50 ;それぞれ37.1%、 42.3%、 
ACR70 ;それぞれ21.4%、 28.2%)、 HAQ-DI 
の改善例の割合が高い傾向がみられま 
した(それぞれ41.40/.、 52.10/.) 0 
AMPLE試験はbio-naⅣeの症例が対 
象ですが、実臨床ではアバタセプトが他の 
TNF阻害薬からのswitchで使用されるこ 
とも多いと思います。当科および共同研究 
施設においてアバクセプトを投与された症 
例のうち、naIve(n-13)とswitch(n-ll) 
とを比較したところ、 na'1've群はSwitch群 
よりも有意にDAS28-CRPおよびESRの 
改善の幅が大きいという結果でした。また、 
3剤あるいは4剤の生物学的製剤による治 
療歴を有するswitch例3例については低 
疾患活動性となった症例はみられませんで 
した。アバタセプトの全例調査では、生物 
学的製剤の治療歴による層別解析が行わ 
れていますが、我々の検討と同様、 na-l'veあ 
るいは2剤目の生物学的製剤として使用さ 
れた場合には、 3割日あるいは4割目として 
使用した場合よりも有効性が高いことが示 
されており(図5)、アバタセプトをswitchで 
使用する場合には、 2剤日で使用したほう 
がいいのではないかと考えられます。 
tjlEJ-kl; AMPLE試験では、 MTX併用下 
で臨床的有効性や関節破壊抑制効果に 
おいてアグリムマブに対し非劣性であるこ 
とが示されたという結果ですが、深谷先 
生、この点についてはどのように解釈すれ 
ばいいのでしょうか。また、switchでは2 
割目のほうが3剤目あるいは4剤日よりも 
有効性が高いという点についてはいかがで 
すか。 
渋谷 2013年に改訂されたEULARの 
リコメンデーション(Smolen JS, et al. Ann 
Rheum Dis 2014; 73: 492-509.)では、 MTX 
などで治療目標を達成できなかった場合 
に最初に使用する生物学的製剤として、 
TNF阻害薬とアバタセプトは同じ位置付 
けとなっています。この記述にはAMPLE 
試験の成績が反映されており、どの薬剤を 
最初の生物学的製剤として使用してもよい 
ということになるのだと思います。他の生 
物学的製剤からのswitchについては、お 
そらく多剤抵抗性の症例はどの生物学的 
製剤を使用してもあまり高い有効性は期待
B]6 CTLA4-dgによる旧0(indolearrilne 2.3-deoxygenase)の発現克起 
図7 RA,LTi者由荒天ミ/:tn'血望枝球からの孤田畑椎への分化にRJ・-jするアハタ七フトの.FT3', : 
K「uskal-WaHs Test p<0.0001 
::;: A:A:::A:A * 
Con廿ol s   未治療 
できないのではないかと思います。ただ、 
TNF阻害薬無効例については、抗体製剤 
が一次無効の場合には受容体蛋白の融合 
製剤に変更するとか、二次無効であれば別 
の抗体製剤を使用するという形で選択肢 
を確保しておき、長期にわたって治療して 
いくという方法もあると思います。 
佐藤 以前はTNF阻害薬がMTXで効 
果が不十分な症例に対するファーストライ 
ンとされていたわけですが、アバタセプト 
についても同じ位置付けとなってきている 
わけですね。 switchについては、トシリズ 
マブやアバタセプトなど、他の作用機序の 
薬剤に変更するという方法も考えられます 
が、平野先生はどのようにお考えですか。 
平野 私はアバタセプトについてはnaTve 
の症例に使用することが多いのですが、 
TNF阻害薬を有害事象により中止した場 
6 
MTX   抗T N F製剤  アバタセプト 
Bozec A. et al ScI TrarTS事Med 2014, 6(235) 235ra60 
合には、安全性を重視し、治療を再開する 
際にアバタセプトを選択するという方法も 
あるのではないかと思います。 
アバタセプトの作用機序に 
関する新たな知見 
一破骨細胞に対する作用- 
佐醸 AMPLE試験ではアバタセプトSC 
の関節破壊抑制作用はアダリムマブと同 
等であったとの結果が示されましたが、で 
はアバタセプトはどのような機序で関節破 
壊を抑制するのかという疑問が出てきま 
す。この点に関し、最近新たな知見が報告 
さjTでいますので、深谷先生に解説してい 
ただきたいと思います。 
深告 アバタセプトの主な作用機序は、 
Bozec A. et al SDI TraTISI Med 2014. 6(235) 235ra60 
APC上のCD80/86に対しT細胞上のCD28 
が結合するのを阻害することでT細胞の活 
性化を抑制するというもので、 T細胞の活性 
化が抑制される結果、破骨細胞の活性化 
が抑制されると考えられていました。この点 
について、ドイツの研究グループは、アバタセ 
プトが破骨細胞の分化誘導に影響するとい 
う結果を報告しています(Bozec A, et al. S°i 
TransI Med 2014; 235: 235ra60.)0 Bozec 
らの報告によれば、 CD80/86遺伝子を欠 
損させたマウスでは野生型マウスに比べて 
骨量が低下しており、破骨細胞数が増加 
しています。そこで彼らはCD80/86を抑 
制するCTLA4-1gが、破骨細胞の誘導に 
どのような影響を与えるかを検討しました。 
野生型マウスではCTLA4-1gを投与する 
と破骨細胞数が減少しますが、 CD80/86 
欠損マウスでは破骨細胞数の減少はみら 
れず、 CTLA4-1gがCD80/86を介して破 
骨細胞の誘導を抑制している可能性が示 
されたのです。 Bozecらはさらに詳細な 
機序を検討しており、野生型マウス由来の 
破骨細胞前駆細胞をCTLA4-1gで刺激 
すると、 indoleamine 2,3-deoxygenase 
(IDO)のmRNAの発現が克進すること 
を見出しました(図6)0 IDOはトリプトファ 
ンの代謝に関与する酵素であり、炎症に対 
して抑制的に作用することが知られていま 
す。 IDOはアポトーシスにも関与しており、 
CTLA4-1gによって破骨細胞前駆細胞の 
アポトーシスが誘導されることも示されま 
した。さらに様々な検討を経て、 CTLA4- 
1gによる破骨細胞の抑制がIDOを介して 
・・∴i∴・・ 
∵,, '叩 
A..∴
いることを示しました。 Bozecらは臨床薬 
理学的な検討も行っており、アバタセプト 
の投与を受けていた患者では、破骨細胞 
前駆細胞が減少することや、アバタセプト 
投与患者の末梢血単核球を培養したとこ 
ろ、破骨細胞への分化が抑制されたことも 
示しています(図7)。このように、アバタセ 
プトは破骨細胞の分化誘導に影響を与え 
ることで、骨破壊を抑制している可能性が 
示唆されています。 
佐藤 いわゆるosteoimmunology (骨免 
疫学)の観点からの研究であり、非常に興 
味深いと思います。平野先生はどのように 
お考えですか。 
平野 TNF阻害薬については、臨床的有 
効性と関節破壊抑制効果との間に亮離が 
みられること、すなわち疾患活動性が低下 
しない症例でも骨破壊の進行が抑制され 
ることが知られています。 
深谷 アバクセプトのMTX効果不十分 
例への有用性を検討したAIM試験のサブ 
解析でも同様の結果がみられており、炎症 
の抑制とは別の機序が存在することを示し 
たものと考えられます。 
(ァ-トの-の期待) 
佐藤 アバタセプトについてはSC製剤も 
使用可能になり、今後様々な症例に使用さ 
れることになると思います。先生方には最 
後に、アバタセプトのベストユースという観 
点からコメントをいただければと思います。 
平野 冒頭に紹介した内容とも関連しま 
すが、今後ますます高齢者が増加し、 RA 
患者も高齢化が進むと考えられます。例え 
ば80歳代でも疾患活動性が高い方もおら 
れ、安全性の高い治療が求められていま 
す。アバタセプトについては、比較的安全 
性が高い薬剤であるとは考えられますが、 
今後は高齢者を含め、さらに安全性に関す 
る検証を行っていくことが望まれます。 
藤林 平野先生がご指摘になられたよう 
に、高齢者では基礎疾患や問質性肺炎な 
どの合併も多く、 MTXの使用も慎重に行 
う必要があります。アバタセプトは高齢者 
でも有用である可能性が高く、今後もさら 
に検討を行っていきたいと思います。また、 
SC製剤により病診連携も可能となり幅広 
い症例に使用が可能になると考えます。 
若林 どの生物学的製剤もnaⅣe症例で 
は有効性は高いと思いますが、有効性が 
同程度であるとするならば、合併症のある 
症例に対して使用する場合には、より安全 
性の高い薬剤が選択されることになりま 
す。その意味では、アバタセプトは有力な 
選択肢となる可能性があると思います。ま 
た、生物学的製剤の選択肢は拡がってい 
ますが、ある薬剤をできるだけ長く継続で 
きることが重要です。これはswitchの場 
合も同様であり、 2剤目の薬剤を選択する 
場合にもアバタセプトが選択肢として挙げ 
られると思います。 
深谷 藤林先生も触れられたように、日本 
人では特に肺合併症を有するRAが多いと 
思います。問質性肺炎あるいは肺線維症 
だけでなく、細気管支炎などの症例も少な 
くありません。アバタセプトは全例調査で 
呼吸器病変の既往歴または合併症のある 
患者では感染症および重篤感染症の頻度 
が有意に高いことが示されており、肺合併 
症のある症例については、安全性に十分配 
慮しつつ、慎重に使用していきたいと思い 
ます。 
佐鯨 今回、各先生方から貴重なお話を 
うかがうことができました。今回の討議に 
あったように、高齢者への使用を含めた安 
全性や併用薬の組み合わせ、また有効性 
に基づく臨床的位置付けを確立していくこ 
とが望まれると思います。先生方、本日は 
ありがとうございました。 
7
2014年10月作成 
OR/1 4-09/0521 /1 6-08 
0RC-ZO45

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  • 1. 虚アバタセプトの 本邦における位置付け 璽些〒 でノ 襲撃聖撃墜 ・昏醐 喪主禦慧酔. 樹.'jSiiJ遊 撃準撃琴轡~幽 醤替蔭甜義蓮 如細章淫喜翫喜措蝕t窟組 箇抄磁r潜 l・. -- - .'・ .L      も こ1... 太冊子に掲汚点の真剤のこ使用にあたっては 顧鉢奉還 免監     蓉縫熟瀞 先生
  • 2. 高齢者RAの治療 佐鯨 アバタセプトは点滴静注製剤(IV) 発売から既に4年近くを経過し、全例調査 も終了したことで日本の日常診療下におけ る有効性および安全性が明らかになって きました。また、皮下注製剤(SC)も発売 されてもうすぐ1年となります。そこで今回 は、アバタセプトの本邦での位置付けにつ いて、ご施設での経験も含めて討議してい きます。近年、関節リウマチ(RA)でも患 者の高齢化が進んでおり、安全性にも一層 の配慮が必要となってきていますが、平野 先生には高齢発症のRAに関しての検討 結果を紹介いただきたいと思います。 平野 当科ではRAの診療レベル向上を 目的として、私が赴任した2009年4月から RA患者の臨床データを記録しています。 我々はこのデータベースを基に、 60歳以上 で発症した高齢発症RA (Elderly-onset RA: EORA)、 16-59歳で発症した成人 発症RA (Adult-onset RA: AORA)とで 層別解析を行い、 EORAの特徴について 検討しました。 2012年度に当科に通院 していた818例のうち、 282例(34.5%)が EORAでした。 AORAとの患者背景の比 較では、 EORAは男性の比率が高くなって いました(女性比率: 82.3% vs. 66.7%)0 AORAのほうが雁病期間が長い(16.0 年vs. 7.6年)ことを反映し、病期につい てはAORAのほうがStageⅢおよびⅣの 比率が高いのですが(75.2% vs. 52.5%) 、 機能障害度は年齢を反映してかEORA のほうがClass 3および4の比率が高い (28.0% vs. 43.4%)という結果となってい ました。また、EORAは抗CCP抗体陰 性の割合がAORAよりも高く(23.7% vs. 14.5%、 p-0.0016) 、 RFも含めた血清反応 陰性の割合も高くなっていました(19.3% vs. ll.4%、 p-0.0016)。合併症について は、呼吸器合併症や糖尿病はEORAで 多く、これらを反映してか、メトトレキサー ト(MTX)の投与率や投与例での平均投 与量はEORAで低いという結果でした。 EORAではMTXの代わりにサラゾスル フアピリジンが使用され⊂いる患者の割合 が高く、ステロイド投与例の割合と投与量 も高くなっていました。生物学的製剤の 投与歴のある患者の割合は、 AORAでは 33.2%、 EORAでは24.4%でした。疾患 活動性については、 DAS28-ESRの寛解 率はEORAよりもAORAのほうが高いも のの(28.8% vs. 39.2%、 p-0.0042)、低疾 患活動性以下の割合に差はありませんで した(25.4%+28.8% vs. 39.2%+19.7%、 p-0.2038) 0 さて、 EORAを含め、増加する高齢者の RAの治療ではどのような病態があり、ど のような治療が必要とされるのでしょうか。 オランダのBootsらは、最近の総説の中で これらの点について解説しています(Boots AMH, et al. Nat Rev Rheumato1 2013; 9: 604-613.) 。まず、加齢が免疫系に与える影 響については、 immunosenescence (免疫 老化)と呼ばnる現象が生じることを紹介 しています。例えば獲得免疫ではNaive T細胞が徐々に減少する一方でMemory T細胞が増加し、 T細胞受容体の多様性 が減少していくことなどが知られています。 このような免疫機能の変化は炎症性疾患 や自己免疫疾患、感染症や悪性腫癌のリ スクを上げるものと考えらjtていますが、 Bootsらは、高齢者では、合併症や身体の 虚弱性ないし脆弱性(frailty)などのリスク ∴  ~. / L:.I.(,-_∴・十l_- ・ El=.- 佐藤正夫 先生 国子の状況に応じて治療強度を層別化す る必要性を指摘しています。これは`go'、 go-slow'. `n0-go'の3つに層別化するも ので、例えば80歳のRA患者で、 RA以外 の合併症がなく、生活も独立しており、社 会活動にも参加している患者であればgo approachとして若年者と同様の治療を行 います。しかし、同じ80歳のRA患者で あっても、 unsuccessful agingとされるよ うな合併症や脆弱性を有しており、社会活 動への参加も最小限の場合には、 go-slow approachとして、 DMARDsや生物学的製 剤の安全性を考慮すること、さらに合併症 の強い場合には、 DMARDsや生物学的 製剤による治療は行わず、痔痛軽減を中心 とした治療を行うn0-go approachにする というものです。 さて、アバタセプトについては、全例調査 の結果から、重篤な副作用のリスク因子、 腎障害(ありvs.なし) 肝韓書(ありvs.なし) 呼吸器合併症既往歴(ありvs.なし) オッズ比l 95%Cl ■ p億 2.055  1.0294103   0.041 1.988 1.115-3.545 l o.020 1.790 17142_表示 To111 投与前リンJ昭数(<1,000/mm3vs・≧1,000/mm3)  1 1・759 聖_212・竺LI O・01 副腎皮質ステロイ憎の併R]・(>5mg′日vs・0または≦5mg/日) 1・627 l 11009-2・623 1 01046 c一ass(3&4vs. 1&2)             1 1・626 1・038-2・547 ; 0・034 ・アハタセプト投与中に1回でも副腎皮質ステロイド薬を授与された症例の投与量をプレにゾロン(PSL)換貸して1日土を32出o アバタセプト全例調査適正使用情報Vol 5 _∴二  : .~ __ ミ・∴_≡- .:I:庁 体重(<40kg vs. ≧40kg) 呼吸器合併症既往歴(ありvs.なし) オッズ比   95%Cl l p値 3.081 1.309-7.255 : 0・010 2.443 115to-_4.52111~~ 0.004 副腎皮貿ステロイド藁の俳が(>5mg/日vs・0または≦5mg/日) 2・169 ≡ 1・1494・095  0・017 ・7,ハタセプト投与中に1回でも副腎皮質ステロイド菜を授与された症例の投与tをプレドニソロン(PSL)換32して1日量を許出o アバクセプト全例調査適正使用情幸三Vo1 5 -,ー≡ こ【JIL=SF巧ぎょ二∫」,r_;こ三の「)"の「」別L「,I-I 堅甲甲______ 感染症 重篤副作用 重篤感染症 65歳未満 (∩=2,1 70) 314 (14.5%) 105 (4.8%) 40 (1.8%) 18 (0.8%) 65歳以上 (n=1,712) 294 (17.2%) 123 (7.2%) 58 (3.4%) 22 (1.3%) p値 l (XZ検定) 0.021 0. 002 0.∝〉2 N.S. アパタセプト全i;」i萄査道三.三軍′書き≡Vo1 5 2
  • 3. 重篤な感染症のリスク因子として、表1お よび表2に示すものが挙げられています。 なお、他の生物学的製剤では、重篤な感 染症のリスク因子として65歳以上もしくは 高齢が抽出されていますo アバタセプトに ついては、 65歳以上の高齢者では副作用、 感染症、重篤な副作用の頻度が有意に 高いという結果でしたが、重篤な感染症 については有意な差はみられませんでし た(表3)。このような結果からは、アバタ セプトは高齢者においても比較的安全に 使用しうる薬剤である可能性が示唆されて いると思います。 佐症 アバタセプトは高齢者においても 比較的安全に使用しうる可能性があると いうことですが、先生方はどのような印象 ロi I:」、 ::-_/:∴I二、:二日二・∴tL. L.・・_日.I.り.:.'lL~ をお持ちですか。 症/:,ここ 最近では高齢者の割合が増えてい ますが、高齢者では呼吸器疾患や糖尿病 などの基礎疾患を合併していることが多 く、また、腎機能障害などがあって思うよう にMTXが使用できないことが少なくあり ません。そうしたこともあり、生物学的製 剤としては比較的安全性の高いアバタセプ トを使用する機会が徐々に増えてきている のではないかと思います。 渋谷 私の場合は、MTXを使用しにくい 症例にアバタセプトを単剤で使用すること が多いと思います。最近では、 MTXを含 めいずれのDMARDsも使用できない症 例にアバタセプトを単剤で使用した経験が あります。 同望 生iL二ヨ学的Ll刑卜はlVeに三割するMT:luH-招じ別DAS28-CRPの方1E亨 アバクセプト全例調査 /つ J 平野裕司 先生 志諒 私もアバタセプトは合併症の多い 症例や高齢者に使用する場合があります。 初回からアバタセプト単剤による治療を行 うという方法もありますが、 MTXはできれ ば併用したいと考えています。高齢者で あってもまずMTXを使用し、その後アバ クセプトを併用することが多いのですが、 何らかの原因で途中からMTXを使用で きなくなり、アバタセプト単剤による治療と なった場合でも、疾患活動性をコントロー ルできている症例も経験しています。 ( メトトレキサート(MTX) 併用の必要性の有無 佐転 ではここで、 MTX併用の必要性に ついて、藤林先生にお話をいただきたいと 思います。 E上品′:tこ アバタセプトの全例調査では、MTX の併用の有無および生物学的製剤の治療 歴の有無(Switch、 Na.1-ve)による層別解 析が行われています。重篤な副作用の頻 度については、 NaⅣeでMTX非併用の群 とSwitchでMTX非併用の群との間に有 意な差がみられましたが(1.2% vs. 3.3%、 p-0.049、 X2検定)、それ以外には有意な 差はみられませんでした。次に、 DAS28- CRPの変化量についてみると、 Naive群は Switch群に比べ改善の幅が大きいのです が、 Na'1've群ではMTXの併用の有無によ る差はみられませんでした(図1)。さらに、 NaⅣe群についてMTXの併用量別に解析 した結果をみると、 24週の時点ではいずれ の群も同様の分布であり、 MTXの併用量 によるアバタセプトの有効性への影響は小 さいものと考えられました(図2)。ところで、 アバタセプトの安全性・有効性と併用薬 の関連について、我々は名古屋大学整形
  • 4. 深谷直樹 先生 外科関連施設での患者レジストリ(TBC) を用いて、タクロリムス併用(n-16)、 MTX 併用(n-84)、アバタセプト単剤またはその 他のDMARDs併用(n-48)の3群による 層別解析を行いました。その結果、タクロ リムス併用群およびアバタセプト単剤また はその他のDMARDs併用群では有害事 象による中止はみられず、 MTX併用群で は骨折、問質性肺炎、丘疹性紫斑、リンパ 増殖性疾患、虫垂炎がみられました。継 続率については群間の差は認められません でした。有効性については、 DAS28-CRP およびDAS28-ESRでは群間に差はみら れませんでしたが、 SDAIやCDAIでの評 価ではタクロリムス併用群での改善の幅が 大きいという結果でした。アバタセプトは 抗原提示細胞(APC)からT細胞への共 刺激経路を阻害してT細胞の活性化を抑 制すると考えられており、一方でタクロリム スはカルシニューリンを阻害することでT 細胞の活性化を抑制します。これはあくま で仮説ですが、 RAの病態の上流にあるT 細胞の活性化を細胞外と細胞内の双方か ら抑制することで、 RAに対し高い有効性 を示している可能性があるのではないかと 考えています。 住,ifT1号 藤林先生のお話では、 MTXの併用 の有無にかかわらずアバタセプトには一定 の有効性が期待できることと、タクロリムス との併用での有効性が高い可能性が示さ れたということですが、これらの点について 先生方はどのようにお考えですか。 平野 2014年のEULARでは、発症早 期のRAに対しアバタセプト+MTX、ア バタセプト単剤、MTXの3群を投与し、 寛解に達した場合に治療を中止するとい うAVERT試験の成績が報告されました (Emery P, et al. EULAR 2014; OPOO26.)0 その結果、投与開始後12カ月の時点でアバ タセプト+MTX群では61.3%、アバクセプ ト単剤群では45.7%、 MTX群では43.1% が寛解(DAS28-CRP2.6未満)を達成して いました。このような報告からは、MTXを 併用したほうが成績がよいとみることがで き、アバタセプトによる治療におけるMTX 併用の意義についてはまだわからない部 分があると思います。臨床成績については ベースラインの患者背景の影響が大きく、 本来であれば患者背景を揃えた患者集団 において比較試験を行う必要があります が、実臨床での印象では、たしかに単剤で も有効な例を経験することはあります。 佐信 私も実際にMTX非併用でも有効 であった症例を経験しているので、 MTX を併用しない場合でも有効である可能性 はあると思います。ただ、 MTXが服用可 能な症例ではMTXを中止する必要はない のではないかと思います。ところで、 TNF 阻害薬の中にはMTXの用量で有効性が 異なるという報告もありますが、この点はい かがでしょうか。 I;読;こ たしかに、TNF阻害薬の中には十 分量のMTXの併用が望ましいとされて いるものがあります。しかし、日本人では long/週以上の高用量のMTXの使用が ためらわれるような症例も少なくありませ ん。そのような場合には、アバタセプトが 選択肢として挙げられるのではないかと思 います。 堤,T;~Ⅰ言 タクロリムスとの併用について、アバ タセプトの添付文書に「タクロリムス等の カルシニューリン阻害薬との併用について、 仁-.二 ∴;二:/I. ニ:I.I,.:-「- -.二二.I:: L_二二._・丁・∴. 藤林孝義 先生 安全性は確立していない」との記載があり ますが、この点はいかがでしょうか。 綜沫 これまでの時点では重篤な有害事 象は認められていませんが、まだ症例数が 少ないこともあり、安全性については今後 の検討課題だと思います。 TNF阻害薬と アバタセプトの比較試験 佐転 アバタセプトについては、新しい作 用機序の薬剤であり、 TNF阻害薬と比較 して有効性や関節破壊抑制効果はどのよ うに異なるのかという点が注目されていま した。この点に関して、最近新たな報告が なされていますので、若林先生に紹介して いただきたいと思います。 二品:メ:二 既に知られているように、 AMPLE 試験はMTX効果不十分なRAに対し、 MTX併用下でアバクセプトSCまたはア ダリムマブを使用した試験で、 2年目まで の成績が公表されています(SchiffM, et lTT集団 4 SchlffM,etal Ann Rheum DIS2014. 73 86-94
  • 5. aI. Ann Rheum Dis 2014; 73: 86-94.)。生物 学的製剤同士を直接比較した試験として は、アダリムマブとトシリズマブを比較した ADACTA試験(Gabay C, et al. Lancet. 2013; 381: 1541-1550.)の成績が報告されて いますが、これはMTXを併用しない試験 でした。 AMPLE試験では、 MTXの平均 投与量が17mg/週を超えており、アダリム マブの治療効果が十分に発揮できる条件 での比較検討だと思います。 AMPLE諌 験については、 2年目までのACR改善率の 推移(図3)や、関節破壊抑制効果(図4) において両群に差がみられなかったことが 報告されています。 2014年のEULARでは、 AMPLE試験 の雁病期間による層別解析の結果が報告 若林弘樹 先生 されていました(schiffM, et al. EULAR2014; FRIOO19.)。これはベースラインの雁病期 間が6カ月以下と6カ月超とでACR改善率 の推移やHAQ-DI改善例の割合の推移に ついて解析したもので、雁病期間6カ月以 内では、アバタセプトSC群は2年時点での ACR改善率が高い傾向にあり(ACR20 ; 田∠ヨ AFv'dPLE試「,32年f==H=:別:3冶rnTSS u;icLnllLIla的場PrObabI=ty PIoL 5 アグリムマブ群52.9%、アバクセプトSC群 56.3%、 ACR50 ;それぞれ37.1%、 42.3%、 ACR70 ;それぞれ21.4%、 28.2%)、 HAQ-DI の改善例の割合が高い傾向がみられま した(それぞれ41.40/.、 52.10/.) 0 AMPLE試験はbio-naⅣeの症例が対 象ですが、実臨床ではアバタセプトが他の TNF阻害薬からのswitchで使用されるこ とも多いと思います。当科および共同研究 施設においてアバクセプトを投与された症 例のうち、naIve(n-13)とswitch(n-ll) とを比較したところ、 na'1've群はSwitch群 よりも有意にDAS28-CRPおよびESRの 改善の幅が大きいという結果でした。また、 3剤あるいは4剤の生物学的製剤による治 療歴を有するswitch例3例については低 疾患活動性となった症例はみられませんで した。アバタセプトの全例調査では、生物 学的製剤の治療歴による層別解析が行わ れていますが、我々の検討と同様、 na-l'veあ るいは2剤目の生物学的製剤として使用さ れた場合には、 3割日あるいは4割目として 使用した場合よりも有効性が高いことが示 されており(図5)、アバタセプトをswitchで 使用する場合には、 2剤日で使用したほう がいいのではないかと考えられます。 tjlEJ-kl; AMPLE試験では、 MTX併用下 で臨床的有効性や関節破壊抑制効果に おいてアグリムマブに対し非劣性であるこ とが示されたという結果ですが、深谷先 生、この点についてはどのように解釈すれ ばいいのでしょうか。また、switchでは2 割目のほうが3剤目あるいは4剤日よりも 有効性が高いという点についてはいかがで すか。 渋谷 2013年に改訂されたEULARの リコメンデーション(Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis 2014; 73: 492-509.)では、 MTX などで治療目標を達成できなかった場合 に最初に使用する生物学的製剤として、 TNF阻害薬とアバタセプトは同じ位置付 けとなっています。この記述にはAMPLE 試験の成績が反映されており、どの薬剤を 最初の生物学的製剤として使用してもよい ということになるのだと思います。他の生 物学的製剤からのswitchについては、お そらく多剤抵抗性の症例はどの生物学的 製剤を使用してもあまり高い有効性は期待
  • 6. B]6 CTLA4-dgによる旧0(indolearrilne 2.3-deoxygenase)の発現克起 図7 RA,LTi者由荒天ミ/:tn'血望枝球からの孤田畑椎への分化にRJ・-jするアハタ七フトの.FT3', : K「uskal-WaHs Test p<0.0001 ::;: A:A:::A:A * Con廿ol s   未治療 できないのではないかと思います。ただ、 TNF阻害薬無効例については、抗体製剤 が一次無効の場合には受容体蛋白の融合 製剤に変更するとか、二次無効であれば別 の抗体製剤を使用するという形で選択肢 を確保しておき、長期にわたって治療して いくという方法もあると思います。 佐藤 以前はTNF阻害薬がMTXで効 果が不十分な症例に対するファーストライ ンとされていたわけですが、アバタセプト についても同じ位置付けとなってきている わけですね。 switchについては、トシリズ マブやアバタセプトなど、他の作用機序の 薬剤に変更するという方法も考えられます が、平野先生はどのようにお考えですか。 平野 私はアバタセプトについてはnaTve の症例に使用することが多いのですが、 TNF阻害薬を有害事象により中止した場 6 MTX   抗T N F製剤  アバタセプト Bozec A. et al ScI TrarTS事Med 2014, 6(235) 235ra60 合には、安全性を重視し、治療を再開する 際にアバタセプトを選択するという方法も あるのではないかと思います。 アバタセプトの作用機序に 関する新たな知見 一破骨細胞に対する作用- 佐醸 AMPLE試験ではアバタセプトSC の関節破壊抑制作用はアダリムマブと同 等であったとの結果が示されましたが、で はアバタセプトはどのような機序で関節破 壊を抑制するのかという疑問が出てきま す。この点に関し、最近新たな知見が報告 さjTでいますので、深谷先生に解説してい ただきたいと思います。 深告 アバタセプトの主な作用機序は、 Bozec A. et al SDI TraTISI Med 2014. 6(235) 235ra60 APC上のCD80/86に対しT細胞上のCD28 が結合するのを阻害することでT細胞の活 性化を抑制するというもので、 T細胞の活性 化が抑制される結果、破骨細胞の活性化 が抑制されると考えられていました。この点 について、ドイツの研究グループは、アバタセ プトが破骨細胞の分化誘導に影響するとい う結果を報告しています(Bozec A, et al. S°i TransI Med 2014; 235: 235ra60.)0 Bozec らの報告によれば、 CD80/86遺伝子を欠 損させたマウスでは野生型マウスに比べて 骨量が低下しており、破骨細胞数が増加 しています。そこで彼らはCD80/86を抑 制するCTLA4-1gが、破骨細胞の誘導に どのような影響を与えるかを検討しました。 野生型マウスではCTLA4-1gを投与する と破骨細胞数が減少しますが、 CD80/86 欠損マウスでは破骨細胞数の減少はみら れず、 CTLA4-1gがCD80/86を介して破 骨細胞の誘導を抑制している可能性が示 されたのです。 Bozecらはさらに詳細な 機序を検討しており、野生型マウス由来の 破骨細胞前駆細胞をCTLA4-1gで刺激 すると、 indoleamine 2,3-deoxygenase (IDO)のmRNAの発現が克進すること を見出しました(図6)0 IDOはトリプトファ ンの代謝に関与する酵素であり、炎症に対 して抑制的に作用することが知られていま す。 IDOはアポトーシスにも関与しており、 CTLA4-1gによって破骨細胞前駆細胞の アポトーシスが誘導されることも示されま した。さらに様々な検討を経て、 CTLA4- 1gによる破骨細胞の抑制がIDOを介して ・・∴i∴・・ ∵,, '叩 A..∴
  • 7. いることを示しました。 Bozecらは臨床薬 理学的な検討も行っており、アバタセプト の投与を受けていた患者では、破骨細胞 前駆細胞が減少することや、アバタセプト 投与患者の末梢血単核球を培養したとこ ろ、破骨細胞への分化が抑制されたことも 示しています(図7)。このように、アバタセ プトは破骨細胞の分化誘導に影響を与え ることで、骨破壊を抑制している可能性が 示唆されています。 佐藤 いわゆるosteoimmunology (骨免 疫学)の観点からの研究であり、非常に興 味深いと思います。平野先生はどのように お考えですか。 平野 TNF阻害薬については、臨床的有 効性と関節破壊抑制効果との間に亮離が みられること、すなわち疾患活動性が低下 しない症例でも骨破壊の進行が抑制され ることが知られています。 深谷 アバクセプトのMTX効果不十分 例への有用性を検討したAIM試験のサブ 解析でも同様の結果がみられており、炎症 の抑制とは別の機序が存在することを示し たものと考えられます。 (ァ-トの-の期待) 佐藤 アバタセプトについてはSC製剤も 使用可能になり、今後様々な症例に使用さ れることになると思います。先生方には最 後に、アバタセプトのベストユースという観 点からコメントをいただければと思います。 平野 冒頭に紹介した内容とも関連しま すが、今後ますます高齢者が増加し、 RA 患者も高齢化が進むと考えられます。例え ば80歳代でも疾患活動性が高い方もおら れ、安全性の高い治療が求められていま す。アバタセプトについては、比較的安全 性が高い薬剤であるとは考えられますが、 今後は高齢者を含め、さらに安全性に関す る検証を行っていくことが望まれます。 藤林 平野先生がご指摘になられたよう に、高齢者では基礎疾患や問質性肺炎な どの合併も多く、 MTXの使用も慎重に行 う必要があります。アバタセプトは高齢者 でも有用である可能性が高く、今後もさら に検討を行っていきたいと思います。また、 SC製剤により病診連携も可能となり幅広 い症例に使用が可能になると考えます。 若林 どの生物学的製剤もnaⅣe症例で は有効性は高いと思いますが、有効性が 同程度であるとするならば、合併症のある 症例に対して使用する場合には、より安全 性の高い薬剤が選択されることになりま す。その意味では、アバタセプトは有力な 選択肢となる可能性があると思います。ま た、生物学的製剤の選択肢は拡がってい ますが、ある薬剤をできるだけ長く継続で きることが重要です。これはswitchの場 合も同様であり、 2剤目の薬剤を選択する 場合にもアバタセプトが選択肢として挙げ られると思います。 深谷 藤林先生も触れられたように、日本 人では特に肺合併症を有するRAが多いと 思います。問質性肺炎あるいは肺線維症 だけでなく、細気管支炎などの症例も少な くありません。アバタセプトは全例調査で 呼吸器病変の既往歴または合併症のある 患者では感染症および重篤感染症の頻度 が有意に高いことが示されており、肺合併 症のある症例については、安全性に十分配 慮しつつ、慎重に使用していきたいと思い ます。 佐鯨 今回、各先生方から貴重なお話を うかがうことができました。今回の討議に あったように、高齢者への使用を含めた安 全性や併用薬の組み合わせ、また有効性 に基づく臨床的位置付けを確立していくこ とが望まれると思います。先生方、本日は ありがとうございました。 7