宇宙科学プロジェクトの
実行改善について
2014年10月16日
宇宙科学研究所長
常田 佐久
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宇宙科学研究所の
プロジェクトの強化
宇宙科学プロジェクト
の確実な推進
今後20年の宇宙科学
ミッションの明確化
制度と文化に係る
きめ細かな改善
経営課題に取り組むための3つの柱
宇宙研衛星・探査機の論文創出数
衛星名 目的 打上げ/
運用開始
運用終了 論文集計
期間
論文数
※
あかつき 金星大気観測 2010 運用中 2011-2012 8
かぐや 月探査 2007 2009 2008-2012 190
ひので 太陽観測 2006 運用中 2007-2012 844
あかり 赤外線天文観測 2006 2011 2007-2012 222
すざく X線天文観測 2005 運用中 2006-2012 681
はやぶさ 小惑星サンプルリターン 2003 2010 2004-2012 129
のぞみ 火星総合科学観測 1998 2003 1999-2012 26
はるか スペースVLBI 1997 2005 1998-2012 44
あすか X線天文観測 1993 2002 1994-2012 2287
GEOTAIL 地球磁気圏観測 1992 運用中 1993-2012 1236
ようこう 太陽観測 1991 2000 1992-2012 1089
(参考)
すばる 地上光赤外天文台 1999 運用中 2000-2012 1031
1991年以降に打上げた科学衛星・探査機に係る、査読付き学術誌への論文掲載数
※論文数について:トムソン・ロイター社による”Web of Science”データベースを基に、ISASで集計したもの(調査日:平成25年6月28日)。
検索条件として、トピックを衛星英名、同名テーマによる宇宙科学と無関係の研究を除外し、査読付論文(ARTICLE)のみとした。
なお、より厳密に行うためには論文の内容を読んで研究者の手で判定を行う必要があるため、実数としてはやや修正があり得る。
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宇宙科学研究所の光と影
• 開発中止に追い込まれたミッション
–ルナーA、ASTRO-G(電波天文)
• 軌道上で大きな不具合
–のぞみ(火星)、あかつき(金星)
• 最近のミッションの特徴
–大幅なコスト増大、納期遅延
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1.TF提言の実行方策見直しの背景
ERG資金・スケジュール超過問題の要因分析で、TF提言を受けてFY24に宇宙研
が設定した「アクションプラン」の内容が不十分と判断した。このため、宇宙研・全職
員が科学コミュニティと協力して取り組むべき抜本的な対応とするべく再検討、再
設定を行った。
2.検討の概要
(1)宇宙研久保田プログラムディレクタを長とした検討チームを中心に、宇宙研全
体で議論を行う場を設けて課題を共有・討議し、対応策を取りまとめた。
(2)目指す姿としての「宇宙研のプロジェクトの在り方」をまず検討・設定し、その上
で、「TF提言」の実行方策の具体化を検討した。
これを受け、今後、宇宙研・全職員が科学コミュニティと協力して取り組むべき抜本
的な対応とするべく再検討、再設定を行った。
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A-1. 技術的成立性と開発に必要なリソースの見積り精度の向上
A-2. 適切なベースラインの設定・維持
A-3. メーカの活用・コミュニケーションの改善
A-4. 審査・評価の充実
A-5. プロジェクト実行体制の強化と人材育成
A-6. バス系サブシステム技術の戦略的な開発
【 TF提言の項目】
宇宙科学プログラム実行上の改善に関する
タスクフォース提言(2012年12月、チーム長 :富岡健治)
今後の宇宙研のプロジェクトの在り方~「基本的な考え方」
a)宇宙科学プロジェクトのあるべき姿
・科学成果を最大化するため、対外的に約束した基準(=サクセスクライテ
リア)を最低限達成するとともに、最終的に科学コミュニティとしてどのような
科学成果があったかを最終的な評価基準とし、成果最大化。
b)プロジェクトの進め方の原則
・JAXAの他のプロジェクト同様、限られたリソースで成果を着実に創出す
るため、基本に立ち返り、最低限行うべきベースライン管理を徹底して行う。
・創造性を生かし、技術的にチャレンジする部分の「柔らかな」要求・仕様に
ついては、段階的なベースライン化を行い、「確からしさ」、「固さ」、「挑戦リ
スクの最小化」を重視したプロジェクト遂行を行う。
c)プロジェクト体制のあるべき姿
・プロジェクト目標を確立し、達成する責任を負うプロマネがプロジェクトマネ
ジメントを取りまとめる。プロマネを含むマネジメントチームとして協力してプ
ロジェクトを取りまとめる。優れた科学を実現するために、マネジメントチー
ムの一部に科学的に極めて優れた人材を充ててコミュニティを先導。
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提言 A-5. プロジェクト実行体制の強化と人材育成
これまで
• 科学コミュニティの牽引、優れたマネジメントの両方が必要
• 1人の科学者(プロマネ)に過度の責任
• 結果として十分なマネジメントが出来ていない
今後
• チームでプロマネ機能を実現:マネジメントチーム(最終決定
権を持つプロマネ、サブマネ、システムマネージャ、ミッション
マネージャ、プロジェクトサイエンティスト等)で分担、協力
• プロマネには、マネジメント能力が十分高い人材(科学者に拘
らない)
• 優れたプロマネの育成のため、若手実践機会の確保、キャリ
アパスの明確化
• プロジェクトでエフォート率が高い教育職が正当な評価を受け
られるよう、教育職の評価軸についても明確化を図る。
最終決断のできるマネージャ
(最終権限を持つ)
プロジェクトマネージャ
サブマネージャ
システムマネージャ 各サブシステム等担当
専門技術等担当・DE
ミッションマネージャ 各ミッション機器担当
「マネジメントチーム」体制=チームとしてのプロマネ機能を実現
今後の宇宙科学プロジェクトの実行体制について(一例)
チームとして必要な能力
1)プロジェクトマネジメントにおいて極めて優れた能力
(ミッション、人、金、スケジュール、技術等)
2)科学コミュニティをリードできる能力
3)科学者を含む専門家との対話能力
プロジェクトサイエンティスト
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・他本部のプロジェク
ト体制と大きく違うわ
けではない。
・宇宙科学コミュニ
ティの先導は、宇宙
科学プロジェクトの特
徴
・プロジェクトコア体制
は専任体制が必須
1)プロジェクト目標を確立し、達成する責任を負う。プロジェク
トの実行においてミッション、人、金、スケジュール、技術等を
マネージする。
2)プロジェクトのコアとなるマネジメントチームとして、分担/連
携し質の高いプロジェクトマネジメントを実現
3)技術開発におけるシステム、ミッション機器、地上システム、
運用プラン等の取りまとめ
必須な能力
1)プロジェクトマネジメントにおいて極めて優れた能力
(すべてにおいて最終決断を行える)
2)科学者を含む専門家との優れた対話能力
他機関ミッション機器担当
学術
コミュニティ
有識者
アドバイス
TF提言 A5関連
プロジェクト立上げフェーズでの主な具体策(概要)
フロントローディング活動
(WGのプリプロに向けての最終準備
として企業と共同での詰めの検討)
ISASプロジェクト準備審査(新設)
研究/WG活動
【A-1①】【A-3①】企業への検討発注の充実に
よる見積もり精度、コミュニケーション強化
【A-1②】宇宙科学SE室による検討支援の充実
理工学委員会でのプロジェクト候補選定
【A-4①】プリプロに先んじた評価の充実
(プロジェクト候補WGへの評価、アドバイス等)
(プロジェクト準備審査(JAXAレベル))
プリプロジェクト
ISASプロジェクト移行審査(新設)
(プロジェクト移行審査(JAXAレベル))
プロジェクト
【A-2①】宇宙科学として挑戦を行う部分(「柔らか
い」仕様の部分)の範囲及び段階的な開発計画の
設定 (所として、プロジェクト計画の具体化を支援)
【A-5①】プロジェクト体制の充実
・プロジェクト体制として、マネジメント、コミュニティ
牽引力の両面で優れた体制を確保
・コミュニティも含めたマネジメント体制の確定
研究所会議(プロジェクト候補を確定)
※運営協議会で最終決定
【A-5③】プリプロ、プロジェクトを通じて「マネジメ
ント能力」のある人材の育成
【A-5④】マネジメント能力、コミュニティ牽引力に
優れた人材の採用
【A-4②】ISASレベルでのプロジェクト準備審査の
導入
【A-4③】ISASレベルでのプロジェクト移行審査の
導入
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プロジェクト実行フェーズでの主な具体策(概要)
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各プロジェクト体制
プロジェクト
経営
プログラム/プロジェクト体制
個別契約
(資金執行)
資金計画
(=発議計画)
ハードウェア
開発仕様
プロジェクト計画
宇宙科学
SE室
PO室
PD
所長
科学推進部
(管理すべきベースライン文書)
【A-2②】資金管
理執行の強化
【A-4⑤】効果的なPDR、CDR支援
【A-4⑥】審査会でのプロジェクトフォ
ローアップ体制充実
【A-4①~④】宇宙研レ
ベルの審査会の実施
【A-2③】開発状
況確認会議での課
題フォローの充実
【A-2①】ベースライン管理の徹底
【A-5①、②】プロジェクト実行体制の充
実(プロマネの役割、専任体制の充実)
【A-5②】S&MA支援の充実
S&MA
担当
S&MA
マネージャ
プロジェクト
S&MA
担当
ERG
ASTRO-H
宇宙への多様な道
HII-Aとイプシロンを目的に応じて使分ける
中型計画(300億程度):世
界第一級の成果創出を目
指し日本がリーダとして実
施。多様な形態の国際協力
を前提。
公募型小型計画(100-150
億規模):高頻度な成果創出
を目指し実施。地球周回/深
宇宙ミッションを機動的に実
施。
多様な小規模プロジェクト群
(10億/年程度):海外ミッショ
ンへのジュニアパートナとして
の参加、多様な機会を最大に
活用し成果創出を最大化する。
SPICA
JUICE
3号機
選考
中
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NASAとESAの科学目的
ESA Cosmic Vision
「4つのキーテーマ」
•惑星形成及び生命誕生
のための条件は何か?
•太陽系はどのように機能
しているのか?
•宇宙の基本的法則とはど
のようなものか?
•いかに宇宙は創造され、
宇宙は何でできている
か?
NASA Cosmic Origins
• 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたのか、
またその恒星が周囲の環境にどう影響した
のかを解明したい。
• (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダー
クマターが、どのように宇宙初期に集まり、
その高密度でガスを取り込み、やがて銀河
となったか?
• 銀河が初期の系から、我々が住む天の川
のような現在観測している系にどうやって進
化したのか。
• 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の
質量の大半を占めており、初期宇宙で超大
質量ブラックホールが最初に形成されたの
はいつか、また、それを含む銀河の一生に
どのように影響したのかを解明したい。
• 恒星そのもの、さらに惑星系が形成されるメ
カニズムを理解したい。JAXAの取り組みは?
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今後20年の宇宙科学
ミッションの明確化
• 宇宙科学・探査ロードマップの具体化について、所長
から宇宙理工学委員会に諮問。これを受け、宇宙科
学・探査に関わる分野の代表者や関連分野の研究者
が集まるタウンミーテングを2回実施
• 宇宙科学ミッションに長期的計画を導入し、かつボト
ムアップの競争的過程と整合させる
• 太陽系探査(無人)については,工学と理学の密接な
協力が必要なため、向こう15~20年程度の中長期
的な目標を定めて、理工連携で戦略的に進めていく
「プログラム化」というコンセプトを導入
• 宇宙探査イノベーションハブ構想とも連携
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工学者がドライブし
宇宙科学のミッション
を先導する
理学者が要望する
新しい工学技術の開発
ISASの特徴:惑星探査では必須の
宇宙理学と宇宙工学のユニークな連携
宇宙理学部門
宇宙物理学研究系
太陽系科学研究系
学際科学研究系
宇宙工学部門
宇宙飛翔工学研究系
宇宙機応用工学研究系
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制度と文化に係る
きめ細かな改善(1)
• プロジェクトや関連役職への専念義務の明確化
– プロマネを始めとする主要役職の兼職を避ける
– 若い世代の登用により後継者育成、若返りを図る
• 意思決定メカニズムの明確化と簡素化
– 研究所会議で意思決定を一元化
– 所内委員会の削減と科学推進部の調整機能強化
• 学術研究の活性化
– 研究所の学術評価の定量化とベンチマークとの比較によ
り改善事項を把握:評価対応特命担当
– 昇格人事による転出による人事交流の促進
– 女性教員・外国人教員の登用の検討
– 研究職員の評価の厳正化
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制度と文化に係る
きめ細かな改善(2)
• 基盤的経費の削減検討
– 外部資金の獲得増大:外部研究費採択率促進特命担当
– 運用可能な衛星も科学成果創出効果を評価し、運用の
継続を厳しく判定
– 衛星運用経費の効率化による削減
– 研究系の間接経費(事務支援経費)削減
• 大学連携拠点の構築(宇宙研、文科省)
• 成果を中心とした広報活動の強化
– 科学担当記者向けのレクチャー「宇宙科学の夕べ」を定
期開催
– 宇宙研での広報体制の強化:科学の成果を広報。
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今後の課題
• プロジェクト実施における工学系教員の役割
• 宇宙研における技術系職員の役割
– PO・SEの強化、実験現場を支える技術系職員の
維持、及びDE組織の再定義
• 専門技術組織(DE)と技術者教育における全
JAXAレベルの貢献
– JAXA新人育成場所の一つとして、DEのフレーム
ワークを活用した、学術研究と密接に連携した実
験現場を提供すること等を含め検討を開始
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