若者の政治関心と教育  
 ー学校と家庭における学習効果の比較分析ー  
神戸大学大学院 法学研究科 
博士課程後期課程2年
秦 正樹
2013年度日本公共政策学会関西支部 報告スライド
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背景
p  問題の所在
l  若年投票率の低下に関する問題
l  印象論的な「若者論」は正しいのか?
(cf.)「若者たちがおかれた社会的無力性は彼らの政治的身体が現
れる可能性を規定する。」(中西新太郎 2011)
 → 実証的根拠に基づいた処方箋を考える必要がある
p  若年者の政治関心を向上させるための施策
 例)選挙管理委員会による若年有権者の選挙啓発事業
   義務教育における模擬投票の実施 など…
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本報告のアプローチ
p  政治教育とはなにか
l  政治的な価値観は,意図的で公式的な政治教育と,家族などの非公式な集
団による政治規範の伝達の過程を通じて形成される(ドーソン他 1971)
l  つまり政治(的な)教育とは,家庭と学校の相互関係による政治的人格の形成
l  政治教育としての「模擬投票」(常時啓発事業の在り方等研究会 2011)
p  リサーチ・クエスチョン
l  若者における政治への関心に,政治教育はどのように影響するのか?
٥  家庭と学校における政治的学習の効果は異なるのか。
٥  模擬投票などの「体験型教育」は,ミクロレベルでは功を奏しているのか。
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先行研究の概観(1)
p   政治的社会化
٥  社会化とは,学習・発達・教育による社会的学習のメカニズムであり,
社会の適応と文化化を内面化させる一連の作業(菊池・斉藤 1980)
٥  大統領や民主主義の「偉大さ」は,6歳頃には認識している。政党支持
についても,およそ12歳頃には理解している(Greenstain 1970)
٥  子どもの7割は,親と同じイデオロギーを持つ。そうしたイデオロ
ギーの伝達は,初期では親からの教育など,後期は学校や政党活動内
でのネットワーク資本が重要(Converse et al., 1960, Dennis 1973)
→  政治的自我を獲得する過程では,幼少から青年期における家
庭内の教化と,学校での包括的な政治的価値の伝播の双方が重要
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先行研究の概観(2)
p   政治教育の類型化
l  政治的教育は,そのやり方において政治的見解を伝える学習と政治的
志向性を教化する学習に分類される。(ドーソン・プルウィット
1971)
l  教育は,主に「言語的熟達」と「社会的ネットワーク中心性」を媒介
して,政治的関与の程度を高める(Nie et al., 1996; 安野 2005)
p   若者と政治文化
l  学生(若者)を対象としたサーヴェイから,政治意識形成の規定要因
を分析。とくに,家庭による経験(会話など)は内的有効性感覚に影
響し,学校による経験(公民科目に関する認知)は政治システムへの
信頼と関連していることを指摘。(井田 2003, 2004; 石橋 2010)
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先行研究の概観(3)
p  残された課題
l  とくに教育社会学などでは,「教えること」を前提とする見方に集中。
→ 学校内での教育を「公民学習型」と「体験学習型」に分類する
l  家庭と学校の重要性が指摘されつつも,独立して議論されている。
  → 家庭と学校における社会化変数を統合した実証モデルから分析
l  調査上の(学歴などの)サンプリング・バイアスの問題を過小評価。
  →  無作為抽出法によるサーヴェイ・データの利用
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分析枠組み(1)
p   Heronの動機づけ理論(Heron 1957)
l 内発的動機づけ:ある規範・概念の心理的内面化による自発的喚起
l 外発的動機づけ:外部と関連する経験や報酬による関心の喚起
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分析枠組み(2)
p  政治教育の動機付け効果
l  学校内での政治的教育
٥  民主主義や選挙などの政治概念の心理的定着(内発的)による動機
٥  ディベートや模擬投票など「経験」(外発的)による動機
l  家庭内での政治的教育
٥  親と政治的な会話・選挙同行など社会化による動機(副産物仮説)
p  導出される仮説群
H1:公民教育による政治概念の定着は,政治への関心を喚起させる
H2:学校での選挙に関する擬似経験は,政治への関心を喚起させる
H3:家庭内における政治的なトピックは,政治への関心を喚起させる
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利用するデータについて
l  利用データ: 第三回若い有権者の意識調査
l   実施主体: 明るい選挙推進協会
l   調査対象: 全国の16歳から29歳までの男女
l   実施時期: 2009年1月23日∼2月15日
l   回収票 : 2053票(回収率68.4%)
l   調査方法: 層化二段階無作為抽出法(※)
        郵送配布・郵送返信調査(全数)
(※)地域によって上記の年齢層に偏りがないよう調整した上で(第一層化),全国の若者に対する無作為抽出
を行ったもの。
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分析準備
p  従属変数:政治関心
l  「全然関心がない(1)」から「非常に関心がある(4)」の4件法
p  独立変数:① 公民学習(間接)② 体験学習(直接)③ 親との政治的経験
l 学校内での経験に関する6変数についてカテゴリカル主成分分析を行
い,得られた主成分得点を上記の2変数として投入(別紙参照)
l ③については,親と政治ニュース視聴・政治的会話・親と投票同行,
親の政治参加程度の4変数を投入
p  統制変数
l 性別,年齢,教育程度,職業,既婚ダミー,団体加入,政治的知識
p  分析手法
l 従属変数が離散序列型変数のため,順序ロジットにより推定。
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分析結果
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p  仮説の検証
l  仮説1:⃝
٥  公民教育変数は,正の方向に有
意。
l  仮説2:☓
٥  選挙体験変数は,統計的有意が
確認されず。
l  仮説3:△
٥  親とのニュース視聴・政治的会
話変数は,正の方向に有意。他
方,親の政治参加・投票同行変
数は統計的有意を確認されず。
係数 標準誤差
間接型(公民学習) 0.174** (0.036)
直接型(体験学習) 0.013 (0.047)
親:テレビ視聴 0.315** (0.120)
親:会話 1.078** (0.105)
親:投票参加 0.002 (0.140)
親:投票同行 0.066 (0.102)
閾値1 -0.475 (0.430)
閾値2 2.011** (0.428)
閾値3 5.280** (0.447)
N
対数尤度
擬似決定係数
学校および家庭における政治学習に関する推定結果
※1) **は1%,*は5%, は10%水準で統計的有意を表す。
※2) キー変数のみを表記している。
1676
0.085
-1646.677
事後シミュレーション
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l  確認する変数:公民教育・親との会話
l  男性
l  20歳
l  大学生
l  サークル(団体)に加入
l  未婚
l  政治的知識は中程度
l  それ以外の変数は,全て平均値に固定
  一般的な男子大学生を想定 
事後シミュレーション結果
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p  公民教育の効果に関する予測 p  親との政治的会話に関する予測
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
会話なし 会話有り
関心なし あまり関心なし 少し関心あり 関心あり
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
公民教育(低) 公民教育(中) 公民教育(高)
関心なし あまり関心なし 少し関心あり 関心あり
結論と含意
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p  何が若者を「政治的」にさせるのか
l  分析結果から,「模擬投票」などの直接体験型の施策は,若者の政治
離れを食い止める手段にはなっていない。
l  他方の,公民教育による政治のシステムに関する教化は,政治に対す
る関心喚起を促すのに重要な役割を果たす。
l  家庭(親)による社会化も,学校の効果とほぼ同様の効果。
٥  親と会話をしたり,一緒にテレビを見るなど「政治」に関する概念
の心理的定着に関連するトピックの重要性。
Ø  学校・家庭双方において,「体験的」というよりも「認知的」な役
割こそが,若者の政治離れを食い止めるためには重要。
「公共」の視点から
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p  公共と私的空間:エイジェントとしての学校・家庭
l  民主主義社会における「成員」としての若者
「人々が自ら考えて積極的に関われる社会を目指す民主政治のシステ
ムは,物事が分かる力が人々につけばつくほど,疑いも増し,人々の
離反によるシステムの破綻の兆しが,その目標自体に内在してい
る。」(村山 2009)
l  「若者の政治離れ」について,その原因を若者怠惰論に求めるだけで
はなく,政治的不活性に対応するためのシステムを模索する。
Ø 本研究の知見は,公的システム(学校)が,従来的な私的空間(家
庭)での社会化の役割を代替しうる可能性・重要性を示している
ご清聴ありがとうございました。
神戸大学法学研究科 博士後期課程
108j055j@stu.kobe-u.ac.jp
秦 正樹
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2013公共政策関西支部大会スライド