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ソーシャルネットワークにおけるユーザー行動の社会生態学的考察 発表者:トムソン ロバート 北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院修士課程 第8回情報文化学会北海道支部総会・研究発表会 2011年5月28日(土) 北海道大学
まずは実験
フェイスブックを利用する日本人のパラドックス Aさん ミクシィでは顔写真なし フェイスブックでは顔写真あり この行動の矛盾はどこから生まれるのか
研究の目的 その問いの答えを探り、その過程で、「現在のミクシィとフェイスブックは既存の社会生態の属性を反映している」ことを検証したい
日本人とSNS:先行研究の例
社会生態と行動 文化、社会生態、心理(Oishiand Graham,2010) 矢印は影響の方向を示す ある環境の中で自己利益をもたらすために個人はその環境に合った行動を戦略的に選択する (山岸 1998) 社会生態 人間の意識と行動 対人関係的環境 物理的環境 社会的環境 本研究の鍵概念 関係流動性 (Schug et. al., 2010) 文化 表象、意味、儀式など
オンラインネットワークはオフラインネットワークを反映する(Ofcom, 2008) 対人関係的環境 人間の意識と行動 関係流動性とは、「ある社会、または社会状況に存在する、必要に応じて新しい対人関係を形成できる機会の多さ」である(Yuki et. al., 2007)。 日本=低流動性社会 米国=高流動性社会 (Yuki et. al., 2007) ひいては ミクシィ=低流動性環境 フェイスブック=高流動性環境 関係流動性
関係流動性と自己開示 (Schuget. al., 2010) 人間の意識と行動 日本= 低流動性社会 = 自己開示度が低い 米国= 高流動性社会= 自己開示度が高い 個人の周りの環境の関係流動性の高さと、 その個人の自己開示度を、日米比較で調べた。 HYPOTHESIS 1 ミクシィとフェイスブックを両方とも利用する日本人は、日本人が主に利用するミクシィでの自己開示度が低いことに対して、西洋人が主な利用者であるフェイスブックの方が自己開示度が高い。
関係流動性とコミットメント (山岸, 1998) 人間の意識と行動 日本= 「内集団ひいき」(集団主義) ※ 低流動性社会であるため、社会において新しい関係を形成する機会が少なく、内集団と取引するほうが利益をもたらす。 米国= 「内集団ひいき」ではない(普遍主義) ※ 高流動性社会であるため、新しい関係を形成することが比較的に容易で、内集団を超えて取引することが比較的に利益をもたらす可能性が存在する 関連概念 集団主義社会では個人は比較的に限った数の内集団に属する (Gudykunst, 2003) HYPOTHESIS2 ミクシィはフェイスブックと比べれば比較的にコミットメント度が濃く、内集団とのかかわりがより要求されている。また、ミクシィでのリンク数が比較的に少なく、リンクの人間関係のカテゴリーも少ない(ユーザーが属している内集団の数が少ない)。
仮説の まとめ Aさん 自己開示度が低い コミットメント性を高く感じ、リンク数やリンクの人間関係の種類が少ない 自己開示度が高い コミットメント性が低く、リンク数やリンクの人間関係の種類が多い
方法 方法 対象者 調査期間 募集方法 オンライン質問調査 2011年1月26日~2月13日(18日間) アンケートの質問項目数 本研究以外にも利用する項目数を含んだ総数の質問項目は44問で、20分ほどの回答時間を要する。 Self-selection|招待文とアンケートへのリンクを発表者のフェイスブックやツイッターのフィード、ミクシィ上のフェイスブックやツイッター関係のコミュニティーに投稿など ミクシィと同時に、フェイスブックあるいはツイッターを利用している日本人
参加者 アクセス数 参加者の属性の概要 アンケート開始者数 アンケート終了者数 770人がアンケートへのリンクにクリックした 131人がアンケートを最後までやってくれた。そのうちの78人はミクシィ・フェイスブックの同時並行利用者、53人はミクシィ・ツイッターの同時並行的利用者(合計131人) 性別:男(44%)、女(56%)|年齢:20代~30代(77%)|職業:学生(35%)|在住地:関東・東海地方(56%) 192人がアンケートを開始した
分析 Aさん達 + Bさん達 比較 53人 たまにBさんも分析に登場する。Bさんはミクシィ・ツイッターの同時並行的利用者で、行動の違いの参考として役に立つ。 78人 +
結果 SNSごとの自己開示度 発表者作の尺度による 仮説1を支持 M=1.87 SD=1.14 M=3.49 SD=0.68 N=78 p< .001 1 2 3 4 cat_lover234 鈴木 博 鈴木 博 cat_lover234 Q: あなたはどの程度自分について一般公開していますか。
素直な疑問 そもそも「フェイス」ブックだし、プラットフォーム自体が顔写真の貼り付けを誘導しているのではないか その可能性が拒否できないが、本調査のツイッター利用者の参加者を見てみよう
SNSごとの自己開示度 発表者作の尺度による プロフィールでの開示度 フェイスブック利用者の国際度は? R2 = 0.164, F (1, 51) = 11.21, p = .002 M=2.02 SD=1.22 M=1.87 SD=1.14 M=3.49 SD=0.68 b = 0.425, t (51) = 2.44, p = .002 N=53 1 2 3 4 cat_lover234 cat_lover234 鈴木 博 鈴木 博 Q: あなたはどの程度自分について一般公開していますか。 そう思う そう思わない ややそう思う あまりそう思わない 国際的な意識と自己開示 私は国際人である
すべての差はp<.05レベルで有意 そもそも高い 発表者による尺度 ツイッターとフェイスブック 日本人ユーザーの国際度比較 そう思う ややそう思う ツイッター利用者 N=53 あまり そう思わない フェイスブック利用者 N=78 そう思わない 日本人フェイスブック利用者の国際度
結果 SNSごとのリンクの属性とコミットメント度 仮説2を支持・・・ p < .05 N=78 p < .05 N=78 カテゴリー数 人数
すべての差はp<.05レベルで有意 仮説2支持 の続き SNSごとの コミットメント度 「はい」と答えた人(%) 人間関係に拘束感を感じる 人間関係が厄介になる 発信内容にコメントされたら、コメント返しをしなければと思う
日本的な社会生態に適応した行動や意識を示している 結果の まとめ Aさん達 コミットメント性を高く感じ、リンク数やリンクの人間関係の種類が少ない コミットメント性が低く、リンク数やリンクの人間関係の種類が多い 自己開示度が低い 自己開示度が高い 西洋的な社会生態対応した行動や意識を示している
社会生態と行動に戻る 実は-> 文化、社会生態、心理(Oishiand Graham,2010) 社会生態 人間の意識と行動 対人関係的環境 物理的環境 社会的環境 高・低関係流動性環境が違った行動を誘導する 文化 表象、意味、儀式など
近年の日本人フェイスブック利用者は面識のある外国人友人とリンクしなくなっているし、初期からの利用者よりも国際度が低い・・・ それとも、フェイスブックは海外の知合いを増やし、国際度を上げる効果があるのか・・・ 今後の課題 フェイスブックの日本人ネットワークが少しずつ「ミクシィぽく」なっていくのか
ご清聴ありがとうございます スライドのダウンロード: www.zaihoujin.com ご協力のお礼 東京経済大学コミュニケーション学部 川浦康至先生名古屋大学国際言語文化研究科 金相美先生
Barker, V., & Ota, H. (2011). Mixi Diary versus Facebook Photos: Social Networking Site use among Japanese and Caucasian American Females. Journal of Intercultural Communication Research, 40(1), 39. Fogg, B. J., & Iizawa, D. (2008). Online Persuasion in Facebook and Mixo: A Cross-Cultural Comparison, 5033. 読み込み からhttp://www.springerlink.com/content/7ln3778rmq22441j/ Gudykunst, W. (2003). Cross-cultural and intercultural communication. Thousand Oaks  Calif.: Sage Publications. Oishi, S. (2010). Social ecology: Lost and found in psychological science. Perspectives on Psychological Science, 5(4), 356-377. Rew, L. (2003). Measuring Cultural Awareness in Nursing Students. Journal of Nursing Education, 42(6), 249-57. Schug, J. (2010). Relational mobility explains between- and within-culture differences in self-disclosure to close friends. Psychological science : a journal of the American Psychological Society   APS, 21(10), 1471-8. Takahashi, T. (2010). MySpace or Mixi? Japanese engagement with SNS (social networking sites) in the global age. New Media & Society, 12(3), 453-475. 俊男山岸. (1998). 信頼の構造―こころと社会の進化ゲーム. 東京大学出版会. 潤沼田. (2010). 日本人大学生の異文化理解に関する質問紙調査 : 異文化理解の意識に関わる諸要因の基礎研究. 評論・社会科学, 91, 169-186. 参考文献 FONT CREDITS: MigMix by itouhiro (link) IMAGE CREDITS: Asian man and woman images by dglider

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ソーシャルネットワークにおけるユーザー行動の社会生態学的考察

Editor's Notes

  1. タイトル|国際広報メディア観光学院、国際広報メディア専攻、修士1年のロバート・トムソンと申します。本日はオンラインソーシャルネットワークにおける、人間関係に関する研究の一部である、ミクシィやフェイスブックの同時並行的日本人ユーザーの、比較調査について発表させていただきます。よろしくお願いいたします。事前に言っておきますが、これから発表内容を論文にするときにはきちんとした、学術的な形にしますが、今日の発表はちょっと楽しくやっていきますので、ご了承ください。
  2. まずは実験|さて、本日いらっしゃっている日本人にお聞きしたいです。ミクシィとフェイスブックを両方とも利用している方はいらっしゃいますか。いらっしゃれば手を上げていただけますでしょうか。ミクシィではプロフォール写真を自分の顔にしていない方は、そのまま手を上げてください。フェイスブックでプロフィール写真を自分の顔にしていれば、そのまま手を上げてください。そうでない方は手を下げてください。何人かが残っています。ありがとうございます。
  3. 日本人パラドックス|これが私がいうフェイスブックを利用する日本人のパラドックスです。私はフェイスブックを利用する日本人に同じ質問を聞くときにほとんどの場合は、この傾向があります。つまり、同じ人が、異なった行動を示しています。そこで、どうして、このような行動の矛盾が生じるのか。
  4. 目的|という単純な問いを出発点として、現在のミクシィとフェイスブックは、既存の社会生態の属性を反映していると、いうことを検証することが、本研究の目的になります。
  5. 先行研究|ミクシィの日本人利用と、フェイスブックのアメリカ人利用に関していくつかの研究がなされています。BarkerとOtaは、日本人のミクシィ利用者とアメリカ人のフェイスブック利用者の顔写真と日記を比べ、そこで観察した行動の違いを文化によるコミュニケーションし方の違いに位置づけました。FoggとIizawaは日本人とアメリカ人の行動の違いを、SNSのデザインの影響に位置づけました。また、高橋は、ミクシィとMySpaceの同時並行的日本人ユーザーを対象に、個人のアイデンティティを中心に行動を分析しました。本研究では、ミクシィとフェイスブックの同時並行的日本人ユーザーを対象に、行動や意識を社会生態、具体的には関係流動性という概念に位置づけます。
  6. 社会生態と行動|さて、まずは、社会生態という概念を整理しましょう。極めて幅広い概念ですが、OishiとGrahamがこのような形で整理しています。今回私が焦点を当てるの対人関係的環境と、その影響です。基本的な考えは、ある環境の中で自己利益をもたらすために、個人はその環境に合った行動を戦略的に選択すると、いうことです。そして本研究は、関係流動性という、対人関係的環境の一つの要素と、人間の行動や意識に焦点を当てます。
  7. 関係流動性とは何か|関係流動性とは、ある社会又は社会状況に存在する、必要に応じて新しい対人関係を形成できる機会の多さだと、定義することができます。また、日本は低流動性社会だと検証され、米国は高流動性社会だといえます。SNSが人のオフライン人間関係を反映しているとすれば、主に日本人が利用するミクシィは低流動性環境で、西洋人が主に利用するフェイスブックは高流動性環境として考えても差し換えないように考えられます。さて、関係流動性の、人間の意識と行動への影響を見てみましょう。
  8. 関係流動性と自己開示|関係流動性が影響する一つのことは、自己開示度だというふうに検証されています。Schugらは、日本と米国の関係流動性と、各国における自己開示度を比較しました。結局、低流動性社会である日本では、自己開示度が低いという結果が得られ、米国はその逆の結果が得られました。なので、とりあえず一つ目の仮説を、ミクシィとフェイスブックを両方とも利用する日本人は、ミクシィでの自己開示度が低いことに対して、フェイスブックでの自己開示度が高いと、いうふうにします。
  9. 関係流動性とコミットメント|ミクシィとフェイスブックは既存の社会生態を反映していることを証明するために、もう一つの要素を見てみました。それは関係流動性とコミットメント関係との関係です。低流動性社会である日本は「内集団ひいき」だとみなされ、個人は内集団を超えずに、コミットメント関係を重視し、内集団と取引することを重視する傾向があります。米国はまたその逆です。また、集団主義社会では、人間は比較的に限った数の内集団に属する傾向があります。そこで第二仮説です。ミクシィはフェイスブックよりもリンク数が少なく、リンクの人間関係のカテゴリー、要するにユーザーが属している内集団も少ない。また、ミクシィでのコミットメント度が比較的に高く、内集団とのかかわりがより要求されると、予測します。
  10. 予測のまとめ|Aさんに戻りましょう。仮設として、ミクシィとフェイスブックを両方とも使っている日本人は、ミクシイでは自己開示度が低く、コミットメント性を高く感じ、リンク数やリンクの人間関係の種類が少ない。一方同じ人たちは、フェイスブックを利用するときに、自己開示度が高く、コミットメント性が低く、リンク数とリンクの人間関係の種類が多いと、予測します。
  11. 調査方法|アンケート調査をオンラインで実施しました。対象者はミクシィとフェイスブックを同時並行的日本人ユーザーでした。参加者の募集方法は自己選択法で、招待はミクシィにあるフェイスブックやツイッター関連のコミュニティに投稿したり、自分のツイッターやフェイスブックのフィードに張ったり、#facebookや#mixiのハッシュタッグを使ったツイッター利用者に送信したりしました。期間は今年の2月ごろで、18日間でした。質問項目は本研究以外にも利用する項目を含んで44問でやや長かったです。
  12. 参加者|実施期間中に770人がアンケートへのリンクにクリックし、192人がアンケートを開始し、最終的に131人がアンケートを最後まで答えてくれました。そのうちの78人がミクシィとフェイスブック両方とも使っている日本人で、残りの53人はミクシィとツイッターを両方とも使っている日本人でした。期待していた人数よりもだいぶ少なかったですが、調査予算は自費の5,000円しかありませんでしたので、今回はご勘弁ください。
  13. 分析概要|分析のし方ですが、今回の発表では主にミクシィとフェイスブックを両方とも使う日本人が分析対象となっていました。彼らのミクシィでの行動と、フェイスブックでの行動を比較しました。たまには、ミクシィとツイッターの同時並行的利用者も登場します。ここが重要です。ミクシィ利用者とフェイスブック利用者を比較しているのではありません。ミクシィとフェイスブックを両方とも利用している78人、ここでいうAさん、の、ミクシィの利用と、フェイスブックの利用を比較しています。時々、日本人のツイッターユーザーのツイッターでの利用を対照しながら比較をします。
  14. 結果:SNSごとの自己開示度|まずは、SNSごとの自己開示度を見てみましょう。自己開示を測るために、私は独自の自己開示尺度を設けました。「あなたはどの程度自分について一般公開していますか」と、ご覧の尺度で評価してもらいました。1は顔写真なしで、表示の名前はハンドルネームになっています。2は本当の顔写真で、ハンドルネーム。3は顔写真なし、実名。4は実名で、本当の顔写真もある。データをt-検定にかけたところ、ミクシィでの平均値はこのスケールで1.87でした。それに対してフェイスブックでの自己開示度の平均値は3.49でした。一応仮説1を支持しています。
  15. 素直な疑問|そこで素直な疑問があります。その差はだたフェイスブックのデザインや名前までアフォードされているのではないかという疑問です。その可能性は確かにあります。しかし、関係流動性との関連が示唆されているのは、本調査のツイッター利用者のデータに潜んでいました。
  16. 国際的な意識と自己開示|ご覧のとおり、ミクシィとツイッターを両方とも利用する人は、ツイッターでの自己開示度はミクシィと比べればほとんど一緒でした。低いわけです。しかし、ここが興味深いです。一つの質問項目として、「私は国際人である」というフレーズに対して「そう思わない」から「そう思う」という4件法の尺度で答えてもらいました。結果的に、ツイッターの利用者は「そう思う」ほど、ツイッターのプロフィールでの開示度が上がる傾向がみられました。さて、フェイスブックの利用者はどうでしょう。
  17. フェイスブック利用者の国際度|実は、フェイスブック利用者の国際的意識や関心がそもそも、比較的に高いです。比較的に海外の友人が多いと思ったり、国際イベントによく参加したり、英語がうまい方だと思ったりします。フェイスブック利用者のほうは国際的な意識がそもそも高いのであり、そのため、自己開示度も高いと推測できるのではないかと考えられいます。
  18. SNSごとのリンクの属性|続いてはミクシィとフェイスブックの同時並行的利用者だけの結果に戻ります。仮説2は、ミクシィはフェイスブックよりもリンク数が少なく、リンクの人間関係の種類も少ない。また、ミクシィでのコミットメント度が比較的に高く、内集団とのかかわりがより要求されるということでした。データを見ると、確かにフェイスブックのほうのリンク数が多いです。また、13カテゴリーのリンクの種類から選んでもらったところ、フェイスブックでは比較的に多くの種類の人間関係の人とつながっています。仮設2の最初の部分が支持されています。
  19. SNSごとのコミットメント度|仮説2の後の部分、つまり各SNSでのコミットメント性に続くいます。3つの項目では、ミクシィのほうのコミットメント度が高いように結果が出ました。というのは、ミクシィとフェイスブックの同時並行的利用者の、ミクシィでの経験に関して、4分の一の回答者はミクシィでの人間関係に拘束感を感じると答えた。ほぼ同じ割合はミクシィで「人間関係が厄介になる」というふうに経験したことがあると答えた。また、フェイスブックよりも、ミクシィの方で、自分が投稿した内容に対して他人にコメントされたら、すぐに何かをコメント返ししなきゃと思う傾向があるようです。
  20. 結果のまとめ|このように、ミクシィとフェイスブックを両方とも使う日本人は、各SNSがもつ、対人関係的環境に応じて行動をしていると私が提唱します。ミクシィでは日本的な、関係流動性の低い環境に応じて自己開示を比較的にしていないし、日本社会と同様にミクシィでの仲間とのかかわりはよりコミットメント性があります。フェイスブックにおいてもその対人関係的環境が違った行動を誘導し、人間関係に違う意識を生み出しているようです。
  21. 社会生態と行動に戻る|このように、確かに、現在のミクシィとフェイスブックは、オフラインの社会生態の属性を反映していて、日本人ユーザーがその異なった社会生態にあった行動をしていると論じても問題ないと考えられます。ところで、この小さな矢印に気づきましたか。これは、人間の既存の意識と行動がある環境の対人関係的なあり方に影響を与えるという意味を持っています。実は・・・
  22. 近年の日本人フェイスブックユーザの国際意識の減少|これは発表の最後のスライドとなりますが、実は、私のデータによれば、近年の日本人フェイスブック利用者は、初期の日本人ユーザーよりも国際的な意識が低いようです。フェイスブックの登録年数と、ユーザーの国際意識などの、相関を回帰分析で調べたところ、ほとんどすべての相関はマイナス傾向を示しています。例えば近年のユーザよりも、初期に登録したユーザーの方はリンクには面識のある外国人がいると答えた。また、同じく、自分の異文化理解が低いと思っているのは、近年のユーザーのほうだという傾向があるようです。なので、フェイスブックでは、一般の日本人ユーザーが、国際意識の高い日本人ユーザよりも多くなる状態になれば、フェイスブックにおいてもミクシィのような社会生態、つまりいわゆるフェイスブック内の「低流動性サブカルチャー」が生じてくる可能性があると考えられます。それとも、この結果は単に、フェイスブックの利用は海外の知合いを増やし、国際度を上げる効果があると解釈してもいいかもしれません。それが、今後の課題です。
  23. 感謝|ご清聴ありがとうございます。
  24. 参考文献