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ロ
ボ
ット手術における医療者-患者間の
情報伝達ツールの
デ
ザ
イン(2)
患者視点から見た医療情報の視覚化とサー
ビ
ス提供方法の研究
2016.7.3
  多摩美術大学情報デザイン学科 吉橋昭夫
  順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 磯谷周治


  フロムノーツ 吉田光治
  順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 堀江重郎
スライド中の作品の権利は、多摩美術大
学、順天堂大学、ならびに制作した学生が
保有しています。
引用する場合は、出典を明記願います。
商用利用の際は事前にご相談ください。
2016 多摩美術大学
●研究テーマ:
 「医療におけるサービスデザインの研究」
●期間:
  2015年9月1日∼2016年3月31日
●多摩美メンバー:
 吉橋昭夫(研究主査)
 石山奈美・大石桃子・川端美嶺・松浦翔太(3年生)
研究プロジェクトの概要
3
2016 多摩美術大学
1. 相互理解 ∼ 病院内のフィールドワーク
2. 課題設定


 「医療者と患者間の情報伝達を円滑にする」
3. 協働
  アイデア展開, 試作, レビュー, 詳細デザイン
4. デザイン提案(プロトタイプ)
  情報伝達ツールのデザイン
共同研究のプロセス
4
2016 多摩美術大学
・相互理解の期間として約1ヶ月を要した。
・多摩美と順天堂医院を相互に訪問し知識や経験を共有した。
[順天堂医院内のフィールドワーク]
 ・現状の把握と問題点についての意見交換が目的。
 ・医師や看護師ほか専門スタッフの職場の様子や仕事内容、
  病棟の様子な
ど
を観察。
[医療知識や関連情報の収集]
 ・病気や治療、ロ
ボ
ット手術な
ど
に関する講義を受ける。
 ・患者視点
で
考えるため、手術体験者のインタ
ビ
ュー資料や
  海外の事例を参照した。
1. 相互理解
5
2016 多摩美術大学
課題:[医療者と患者間の情報伝達を円滑にする]
 ・医師が患者や家族に説明する手術の説明書や同意書。
 ・説明のための既存ツール(手術動画、臓器の3D模型など)
 ・難解な医学用語を理解することは容易
で
はない。
 ・医師の問題意識「本当に患者のためになっているのか?」
 ・医療者-患者間のコミュニケーションの円滑化を課題とする
 ・何らかの患者向けのツールを作成することを
ゴ
ールとする
2.課題設定
6
2016 多摩美術大学
前提:
 ・「
デ
ザ
イン開発」を共同
で
行うための共通言語や共有
で
き
  る経験
が
、ほぼ無い状態からスタート。
 ・
デ
ザ
インの仕様を記述して、事前に合意することは困難。
方法:
 ・
デ
ザ
イナー
が
理解
で
きた範囲
で
解決案を示し、それを医師
  が見て医療の視点から問題点や改善提案をコメントする。


 ・試作を繰り返し、議論をしな
が
ら、解決に近づいていく。
 ・本来は患者も参加すべきだが、今回は条件整備
が
適わず。
 ・患者視点を可能な限り取り入れるよう配慮。
3. 協働
7
2016 多摩美術大学
「医療者と患者間の情報伝達を円滑にすすめる
 サービスツール」
 1. 電子書籍版・ロボット手術の説明書 
 2. ロボット手術 説明模型
 3. 体験者の声ー手術体験インタビュー
4.デザイン提案(プロトタイプ)
8
2016 多摩美術大学
1. 電子書籍版・ロボット手術の説明書
9
iPadで閲覧する電子書籍版の手術説明資料
2016 多摩美術大学
2. ロボット手術説明模型
10
手術の説明の際に使用する立体模型
2016 多摩美術大学
3. 体験者の声ー手術体験インタビュー
11
動画の体験談を、文字でまとめたパンフレット(A4版)
2016 多摩美術大学
12
[ロボット手術 説明模型]
・鉗子(形状の違う2種類)
・臓器(ピンクの半球)
・腫瘍(白色の部品)
・身体(透明な箱・穴の直径12mm)
2016 多摩美術大学
13
試作1
紙粘土の模型
手前左から
・腹腔鏡手術
・開腹手術
奥は手術前の状態
初期スケッチ
・立体模型の
 アイデア
試作2
透明な箱
・穴がひとつ
・直径10mmくらい
2016 多摩美術大学
14
インタビュー映像(順天堂医院泌尿器科のサイト
で公開されているもの)
[体験者の声 手術体験インタビュー]
・体験談を伝えるパンフレット


・要点をまとめて掲載
・QRコード:サイトへのリンク
2016 多摩美術大学
・医療と
デ
ザ
インの専門家
が
連携し、課題設定
 から
デ
ザ
イン提案ま
で
の
プ
ロセスを協働して
 プロジェクトを実施した。
・初めての取組みのため、ま
だ
手つか
ず
の課題
 や未解決の問題は山積している。
・医療と
デ
ザ
インが連携する価値と協働の可能
 性を強く感じることができた。
15
まとめ
2016 多摩美術大学
・ 患者や家族を対象にしたユーザーテスト、
  評価アンケートの実施
・ 結果を反映してさらにデザインを改善する
・ 医療現場でのツールの使用と評価
そして、クリアすべき壁(課題):
 ・どのようにして倫理委員会の審査を通すか?
 ・「エビデンス」を得るための評価手法の確立
 ・デザインの価値を医療者に伝える継続的な活動
 ・協働のプロセスの整理、環境整備
16
今後の課題

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