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公共図書館
健康・医療情報サービスへの要望:
がん患者のインタビュー調査から
第33回医学情報サービス研究大会
三輪眞木子1) 田村俊作2) 池谷のぞみ2) 須賀千絵2)
八巻知香子3) 高山智子3) 越塚美加4)
1) 放送大学2) 慶應義塾大学3) 国立がん研究センター4) 学習院女子大学
アウトライン
•目的
•方法
•要望
•制約
2
目的
• がん患者・家族の医療情報探索プロセスに
おける公共図書館の利用状況と公共図書館
サービスへの要望を明らかにする。
• 公共図書館の医療情報サービスの今後の展
開に向けた要望を提示する。
目的・方法・要望・制約
3
方法
アンケート調査(2014年10月~11月)
(インタビュー調査協力者を募集)
インタビュー調査(2014年12月~2015年2月)
(対面6名・電話13名)⇒有効18名
内容分析
4
目的・方法・要望・制約
方法:アンケート調査
• 対象:がん対策情報センター患者・市民パネルメン
バー100名
• 目的:インタビュー調査協力者の募集
• 内容
• がん治療プロセスにおける公共図書館利用
• がん治療プロセスで利用した情報源
• インタビュー調査への協力の可否
• 方法:調査票を電子メールに添付
⇒回答者数27名中19名がインタビュー調査に協力
5
目的・方法・要望・制約
方法:インタビュー調査
• 対象:がん患者18名・家族1名
• 目的:がん治療における情報探索プロセス中の
公共書館利用の有無・利用内容・要望を把握
• インタビュー方法:対面6名・電話13名⇒有効回答
18名
• 分析方法:書き起こし・内容分析(絶えざる比較法)
• 要望の導出:プロジェクトメンバーによる協議
6
目的・方法・要望・制約
方法:インタビュー調査項目
• がんと判明した時期と診断を受けるまでの経緯
• がんと診断される前のがん情報に関する知識
• がんと診断されてからの病気に関する情報探索方法
• 情報探索における情報ニーズと利用情報源
• 診断時点とインタビュー時のがん知識の変化
• Web情報の信頼性の判断基準
• 公共図書館健康・医療情報サービスへの要望
• 他の患者への情報探索方法のアドバイス
⇒公共図書館を利用しなかった=7 利用した=11
7
目的・方法・要望・制約
要望1:患者を含む非来館者への広報
公共図書館を利用しなかった回答者の多くは、図書館のPR不足
を指摘⇒患者がよく利用するWebサイトや地域の医療機関を通じ
た図書館の医療情報サービスの広報が望まれている。
医師から話をしてもらうというのは大きいと思います。
・・・冊子みたいなものを作って、それを渡すと。そこに
は 図 書 館 に こ ん な も の が あ る と い う の も 書 いて あ る
し、・・・初診でがん患者に会った先生は必ずそれを渡さ
なければいけないというように(P01m)
患者が集まる場所(病院、相談窓口、インターネット都道
府県がんサイト、テレビ・ラジオなど)で公立図書館にも
がん情報提供サービスがあることを知らせてください。公
立図書館内のがん情報サービスを強化し、インターネット
サイトにもサービスの内容を掲載してください。(P11f)8
目的・方法・要望・制約
要望2:選書基準の明確化
公共図書館は利用者が信頼して来る場所なので、患者を
惑わす根拠の乏しい医療書籍を提供すべきではない⇒選書
基準を明確化して図書の購入・寄贈・リクエストに対応して
ほしい。
図書館って・・・たぶん結構みんな信頼して来ると思
うのです。・・・「がんが治った!!」という話の流
れで、ある医療機関を勧めるような体験記をまとめた
書籍も、通常の闘病記と並べて置いてあるが、如何な
ものかと・・・その基準って図書館はどうやって決め
ているのかなって、ちょっと思いました。 (p04f)
9
目的・方法・要望・制約
要望3:新しい医療書を揃え古い医療書を
除籍
公共図書館の医療書籍が古いため、最新の根拠に基づく医療情
報を得られないことが課題である。
一番古いのは10年ぐらい前の出版で、最近でも2013年・・・がんや
医療の関係というのは、とにかくどんどんどんどん進んでるじゃない
ですか、・・・(P12m)
・・・発行、出版されたのが古くて、今風の情報はないん
ですね。それで、図書館の本はちょっと古いなということ
が分かりました。・・・がん全般に関することとか、がん
治療に関することっていうのはやっぱり、新しい情報を入
れてもらいたいなあと思います。(P16m)
10
目的・方法・要望・制約
要望4:パンフレット類を揃える
公共図書館には最新パンフレット類が整備されていないため、地
域の行政機関とも連携をとり、情報を得て配備し利用者に提供し
てほしい。
医療機関が発行するパンフレット類は、あまり置いていな
いように思います。地方都市の図書館ほど、それらを充実
してほしいと思います。(P07m)
公共図書館というのは、パンフレットはないですよね。
・・・あるってわかっていれば、本屋に行くより先に図書
館に行きますね。そこに行けば置いてあったというのが大
事かなと。(P17f)
11
目的・方法・要望・制約
要望5:希少がん情報へのアクセス提供
希少がん情報は入手しにくい⇒図書館ネットワークを通じて
アクセス可能にしてほしい。
希少がんについての情報がもっとあってよいと思う。どう
しても、罹患する頻度が高ければその病気について多くの
本が揃えられるのは仕方がないが、患者数が少なければこ
そ、図書館で書籍を揃えていただきたい。(P04f)
主要ながんに偏った蔵書になっているきらいがある。「が
ん」について網羅した図書館があればよい。(P10m)
12
目的・方法・要望・制約
要望6:電子版医療書籍の増加
入院患者による公共図書館の書籍利用を可能にし、希少がん等
の入手しにくい情報の検索性を高める⇒電子版医療書籍を増や
してほしい。
やはり検索性の問題です・・・該当するタイトルの本かな
ということであれば、いったん手に取って中をぱっぱっぱ
と見て探していくということになりますので、すごく手間
がかかるわけです。入院中には図書館を訪れることは出来
ないので・・・図書館の蔵書を電子化して、電子書籍とし
て貸し出されるシステムがあれば・・・ (P10m)
13
目的・方法・要望・制約
要望7:利用者が探しやすい排架
公共図書館を使い慣れていない利用者が自分で本を探せるよう
に、排架方法を工夫する。
医療(490番台)にならべられており、「がん」に特化し
て排架していないので、探すのに時間がかかる。・・・予
防に関するものとか、ここをもめば良くなるよとか、老齢
の方たちが多いので、歩けばいいよとか、どっちかという
とそういった本が多いですよね。だからやっぱり本当にが
んというものを見たい、知りたいというときは、どうした
らいいかなというのは感じます。(P08f)
・・・目標的な治療とか、ガイドラインとか、そういうの
を調べようというときは、「どこにあるの?」みたいなも
のは感じます。(P08f) 14
目的・方法・要望・制約
要望8:図書館員が介入しない貸出と返却
図書館員に「がん患者」であることを知られたくない患者は対面を
必要としない貸出・返却サービスの提供を望んでいる。
・・・[一般の]書店では、女性だから乳がんとか子宮がん
とか買いにくい・・・たぶん男性でもやっぱり前立腺がん
とか精巣腫瘍の人とかも借りづらいと思うし、まずがんと
いうので借りづらいのかなというのはすごく感じます。
・・・ネット予約はできるけど、カウンターに取りに行か
なきゃいけないというのがやっぱり結構敷居が高くて。
・・・私がそのカウンターにいたら「あ、この人こういう
本を借りるんだ」って思っちゃうよな、という思いがあっ
て・・・ (P03f)
15
目的・方法・要望・制約
要望9:患者の情報ニーズを予測した
ナビゲーション
告知直後に医療情報を探す患者・家族の気づきを促すナビゲー
ションを提供してほしい。
・・・病気にかかった人の抱える課題(当人だけでなく、
家族、ライフスタイル、未来、子供等)について手に取れ
るような情報を集めてほしい。(P14m)
患者の立場でいえば・・・病気のことしか考えられないの
で、医療のところに・・・高額医療費のこととか、障害年
金だったり、保険だったりという本が・・・置いてあれば、
「自分は治療するにあたって、これから[お金]が必要なん
だ」と、それをどうしようというのを、逆に、図書館で本
を探すときに、気付ける(P15f) 16
目的・方法・要望・制約
要望10:利用者へのヘルスリテラシー教育
最新医療情報を報告する学術論文を含むインターネット上の医
療情報へのアクセス支援⇒公共図書館に医療情報データベー
スを整備するとともに、医療情報の探し方・評価法を教えてほしい。
情報を調べるための情報とか・・・情報にたどり着く前の
情報と、あとはその情報をどういう風に自分が扱ったらい
いかという情報が、意外とないんですよ。・・・リテラ
シーの一つとして、・・・公共的なところからもうちょっ
とこう頑張って発信してもらえると、利用もしやすいし、
利用の仕方もわかるし、・・・上級者の人じゃない人たち
でも、お年寄りも、・・・利用しやすくなるのかなという
のはありますね。(P15f)
17
目的・方法・要望・制約
要望11:地域図書館ネットワーク拡張によ
る小規模図書館利用者のアクセス改善
地域の小規模公共図書館には医療専門書籍が殆どない⇒国立
国会図書館資料へのアクセスを可能にして都道府県レベルの図
書館ネットワークを充実してほしい。
国立図書館にある書籍についても地域の図書館で検索・閲
覧・コピーの取り寄せなどができるようなシステムができ
たら・・と思います。(P02f)
自分の住んでいるところの図書室とかも行ったんですが、
全くそれらしき本もなく。・・・体験記のようなものは置
いているんですが、あとは『家庭の医学』程度なんですよ
ね...[都会の図書館に]借りに行った後、レンタルCD
のように郵送で返せるとかっていうシステムが有ったら、
大変便利かなって、ちょっと思うんですよね。(P17f)
18
目的・方法・要望・制約
要望12:病院図書室等との連携
病院図書室との連携により、公共図書館でパンフレット等の最新
情報を提供してほしい。
病院の図書室とのリンクみたいなのができるといいんじゃ
ないかと思うんですね。病院の図書室には、本というのよ
り、どちらかというとパンフレットなんかも結構おいてい
ますよね。公共図書館というのは、パンフレットはないで
すよね。・・・あるってわかっていれば、本屋に行くより
先に図書館に行きますね。そこに行けば置いてあったとい
うのが大事かなと。患者になったときに、普段行っていた
けど、あったよねというのでもう一回行くみたいなのがあ
りますね。(P17f)
19
目的・方法・要望・制約
制約
• 調査結果は、自分の病気について情報を得たうえで
治療に関して能動的な意思決定を下すことを望む
がん患者の意見に基づくものであり、受動的意思決定
を望む患者には適用できない。
• がん以外の病気の患者には適用できない。
• インタビュー対象は18名と少数で、ランダム化や量的
な比較は行っていないため、調査結果を適用できる範
囲は限られている。
20
目的・方法・要望・制約
謝辞
アンケート調査・インタビュー調査に協力してくださった
国立がん研究センターがん対策情報センターの患者・
市民パネルの皆様に感謝します。
本研究は、以下の研究助成を受けて実施しました。
• 日本学術振興会科学研究費「アクション・リサーチに
よる公共図書館課題解決サービスのデザイン研究班」
代表:田村俊作
• 日本学術振興会科学研究費「市民の健康支援のため
の価値互酬型サービスを支える知識共同体の構築」
代表:池谷のぞみ
21
ご清聴ありがとうございました!

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