2018/06のブロックチェーンと国際開発に関するセミナー資料です。ICT4D.JP講演。

1. BLOCKCHAIN FOR DEVELOPMENT
狩野 剛
JICA, UNIVERSITY OF MICHIGAN

2. 自己紹介
狩野 剛（かのう つよし）
JICA（国際協力機構） 情報システム室 主任調査役
PhD Candidate, School of Information, University of Michigan
民間ITコンサル➡JICA本部（青年海外協力隊事務局、経済基盤開発
部）➡JICAバングラデシュ事務所➡アメリカ留学（ITと国際開発）
JICA情報システム室
専門・研究分野：IT＆国際開発（ICT4D (ICT for Development)）

3. http://ict4d.jp

4. 多分皆さんが今感じてること
ブロックチェーンって面白いな。いろんなことが
できるんだな。
で、国際開発でそれがどう役に立つの？？

5. ブロックチェーンは社会を変える？
ブロックチェーンはトランザクションコストを切り落とし、
経済の形を作り変える。（Harvard Business Review, 2017）
ブロックチェーンという新技術は経済モデルを根底から覆す
可能性を秘めており、かつて存在しなかった、または利益に
ならなかった市場と製品を創り出すことを可能とする。
(IFC, 2017)
今後10年のうちに、世界のGDPの1割がブロックチェーン状
に保管されるだろう。（世界経済フォーラム, 2015）

6. ほんとか？？
本当にそんなすごいのか？

7. ブロックチェーン
仮想通貨
（ビットコイン）＝

8. ブロックチェーン
仮想通貨
（ビットコイン）
国民ID
データ保管 etc.

9. • 分散性
（みんなで管理する）
• 可用性
（いつでも使える）
• 透明性
（誰でも情報がみれる）
• 完全性
（データの不整合がない）
• ブロックチェーンは、人や組織がお互いの情報を、
前例のないレベルの信頼と透明性を持って共有する
安全なプラットフォームである。（DFID, 2017）

10. ブロックチェーン技術の
国際開発での活用パターン
出資者
株主、政府、市民
実施団体
国際機関、NGO
民間企業、政府機関
裨益者
途上国の人々
1. 国際開発の資金集め
として活用
3. 現場での活用
2. 資金の流れ透明化
するのに活用
{

11. 1. 資金集めのための
ブロックチェーン

12. Unicef
ブロックチェーン技術を使う新興企業への投資
「世界中の子供達を助ける」というミッションの元、Unicef
Innovation Fundとして、$50,000-$90,000の寄付型の出資。
ICO (Initial Coin Offering) で独自トークンを発行
投資の原資として、独自トークンを発行し、投資者が見える
形で新興企業への投資を行うアイディア。近い将来のロード
マップとなることをUnicefは期待している。
マイニングへの協力を通じた事業資金のサポート
Source:UNICEF

13. Game Changer
人々が各自PCのパワーを少しずつ提供する。
そのパワーでイーサリアムのマイニング（採掘）を行う。
そのマイニングで出た利益をシリアの子供達に。
Source:UNICEF

14. ６６０万円相当
Source:UNICEF

15. ブロックチェーン技術の
国際開発での活用パターン
出資者
株主、政府、市民
実施団体
国際機関、NGO
民間企業、政府機関
裨益者
途上国の人々
1. 国際開発の資金集め
として活用
3. 現場での活用
2. 資金の流れ透明化
するのに活用
{

16. ２. お金の流れを
見える化、透明化

17. WFP “Building Blocks”
Source:WFP

18. WFP “Building Blocks”
虹彩認証により、店頭でのキャッシュ、カードで
の支払いから解放。不正を減らす。
国連機関から食品業者への物流が記録され、被支
援者の受け取り確認後、支払いがされる。間接費
を3.5%から1%未満にすることを目指す。
Source : WFP

19. Usizo (南アフリカ)
コミュニティスクールの電気代をクラウドファンディ
ングで寄付。
オンラインで使用電気量をチェックできるように
し、自分の寄付がどのように使われたかをモニタ
リング
Source:Usizo

20. ブロックチェーン技術の
国際開発での活用パターン
出資者
株主、政府、市民
実施団体
国際機関、NGO
民間企業、政府機関
裨益者
途上国の人々
1. 国際開発の資金集め
として活用
3. 現場での活用
2. 資金の流れ透明化
するのに活用
{

21. ３. 現場での活用

22. BenBen
(Ghana)
ガーナでの土地登記にブロックチェーンを活用。
（ナイジェリア、モザンビーク、コロンビアにて展
開計画あり）
土地情報を検索、管理、そして検証するインタ
フェース。改竄できない、信頼できる情報が求め
られている。
政府機関とも連携した土地情報の管理
Source:BenBen

23. 国際送金 ABRA
ブロックチェーン を使った国際送金ネットワーク
世界で初めてP2Pのビットコイン送金をモバイル
サービスとして提供した企業
７日＆７％かかっていたのが、数分＆２％に
（参考）途上国への年間送金額（$429 billion）
は、DACのODA総額（$144 billion）の約３倍
Source:ABRA

24. 国際送金 ABRA
A国 B国
Source:ABRA

25. ブロックチェーン技術の
国際開発での活用パターン
出資者
株主、政府、市民
実施団体
国際機関、NGO
民間企業、政府機関
裨益者
途上国の人々
1. 国際開発の資金集め
として活用
3. 現場での活用
2. 資金の流れ透明化
するのに活用
{4. カテゴリ不可

26. COMMONS OS
地域通貨で独自の税金をとって、それを地域内で
民主的に使い方を決められる
南富良野で実証実験。みんな使いたがる
日本発のコミュニティ形成プラットフォーム
Source:Commons OS

27. COMMONS OS
地域通貨で独自の税金をとって、それを地域内で
民主的に使い方を決められる
南富良野で実証実験。みんな使いたがる
Source:Commons OS

28. COMMONS OS
ブロックチェーンを用いた新しい経済圏と社会シ
ステム。現代社会はOSが古い。
COMMONS OSで仮想通貨や独自の経済圏を構築
する。
北海道富良野で実証実験（with 孫泰蔵）。
みんな独自通貨を「使いたがる」。日本円よりも
共感経済で成立しているお金のほうが使いたくな
るだろう。 Source:Commons OS

29. では、ブロックチェーンさえ入れ
れば、多くの社会的課題が解決す
る？？？

30. ５. ブロック
チェーンの課題

31. 課題
インフラ、デバイス、そして多少のリテラシーが必要。
ブロックチェーンにより「仲介者が不要になる」という
ストーリーは夢物語である。
国際開発の未来を形成する新技術の中で、ブロックチェー
ンほど注目されているものはない。しかし、多くのMNO
や国際開発パートナーにとって、この多大な仮説が正し
いかどうか判断するのは難しい。（DFID, 2017）
ブロックチェーン自体が、技術的・政治的・組織的・社
会的な問題を解決するわけではない。(Harvard Business
Review, 2015)

32. ケーススタディ：
ITやブロックチェーンによる資金の
流れの透明化で汚職は解決できるの
か？

33. B国 交通ICカード導入プロジェクト
売上71%増加
利用者は増えて
いないのに、なぜ？

34. B国 交通ICカード導入プロジェクト
ブロックチェーンやITシステムだけ導入しても解決しない！！
社会システムの抜本的な改革が必要不可欠

35. ブロックチェーンの効果的な使い方は？？
まずはプロセスのうちの一つに導入することから始めるべ
き。それにより第三者との調整リスクが最小化される。
(Harvard Businss Review, 2015)
テクノロジーは組織力や人材能力不足の代替にはならない。
テクノロジーを活用したプロジェクトは、既になされた開
発努力や前向きな意思をテクノロジーを用いて拡幅する場
合に成功する可能性が高くなる。（外山健太郎, 2011）
インターネットがdecentralization（脱中心化）に向かっ
たように、通貨や経済も脱中心化へと歩み始めた。
（伊藤穰一, 2018）

36. まとめ
分散性（みんなで管理する）、可用性（いつでも使える）、
透明性（誰でも情報がみれる）、完全性（データの不整合がない）
という４つの強みがある。
①資金調達、②資金の流れの透明化、③現場での活用、のために、
多くのドナー・団体が試行を始めている。（リスクを取っている）
社会課題の解決に強力なツールになりうる。しかし、その環境を阻
害する技術的（通信インフラ、デバイス）、社会的、組織的、政治
的な環境がないことが重要。
全く新しいタイプの（Disruptiveな）エコシステムが構築されるポ
テンシャルを秘めている。
Special Thanks: いらすとや