Portia in Shakespeare’s Merchant of Venice changed her character after she married Bassanio, a noble Venetian merchant who believes in friendship. She works as a capacity of truly faithful helpmate to her husband to play a role of go-between the two different world, Gemainschaft and Gesellschaft.

1. 恋愛から結婚へと主導権
を握る女性:
『ヴェニスの商人』
名古屋大学・国際言語文化研究科
鈴木 繁夫 （教授）

2. トリックスター
• ジェシカによる持ち逃げと浪費
–ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの対立激化の解
消
• ゲゼルシャフトの蓄積（死蔵）をゲマインシャフト
内に流通（活性）させる。

3. 内在的アプローチ：グループ分け
(1)兄弟愛の連帯：ヴェニスにとって中心
名前_____________________
(2)宗教の連帯：ヴェニスにとって内部の外部
名前_____________________
(3)女性の連帯：ヴェニスにとって異邦人
名前_____________________

4. (1)兄弟愛の連帯：ヴェニスにとって中心
アントーニオ,
バッサーニオ,
グラシア-ノ,
ロレソゾ
「もうすこしお相手をし
て、きみの心を浮きたた
せたいのだが、あんな立
派な友達が現れた以上、
その必要もなくなっ
た。」1幕1場

5. (2)宗教の連帯：ヴェニスにとって内部の
外部
シャイロック,
チュバ
「やつさえヴェニス
にいなければ、思い
のままに商売ができ
るのだ… …行け、
テユバル、あとで礼
拝堂で会おう」
3幕1場

6. (3)女性の連帯：ヴェニスにとって異邦人
ポーシャ,
ネリッサ,
＋
ジェシカ

7. 内在的アプローチ：グループ分け
(1)兄弟愛の連帯：ヴェニスにとって中心
アントーニオ, バッサーニオ, グラシア-ノ, ロレソゾ
(2)宗教の連帯：ヴェニスにとって内部の外部
シャイロック,チュバ
(3)女性の連帯：ヴェニスにとって異邦人
ポーシャ, ネリッサ, ジェシカ

8. 内在的アプローチ：エピソード分け
(1)三つ箱の婿選び：
ペアの名前___________と____________
(2)人肉裁判：
ペアの名前___________と____________
(3)駆け落ち：
ペアの名前___________と____________
(4)指輪の揉め事
ペアの名前________と_________ ________と_________

9. 内在的アプローチ：エピソード分け
(1)三つ箱の婿選び：
バッサーニオ,ポーシャ
(2)人肉裁判：
アントーニオ,シャイロック
(3)駆け落ち：
ロレソゾ, ジェシカ
(4)指輪の揉め事
バッサーニオ,ポーシャ グラシア-ノ,ネリッサ

10. グループとエピソード
兄弟
宗教女
エピソードの進行
接触・
交換

11. グループとエピソード
兄弟
宗教女
エピソードの進行
接触・
交換
「だがポーシャ、…ぼ
くは親友から金を借り
ていたのです。しかも、
その金は、ぼくが友だ
ちに頼んでその敵の懐
から借りてもらったも
のなのだ。」（3幕5場）

12. 交換からみた２つの社会体タイプ
• 共同体(ゲマインシャフト)：
– 土地・血・職などの縁による結びつき
– 友人の勤め：自己犠牲があっても仲間同士援助しあう
• 経済体（ゲゼルシャフト）：
– 貨幣を媒介とした商品交換によって成立している貨幣経済
による結びつき
– 商人の仕事：商品交換→共同体とその外部との異邦人と
の間で行われる
マックス・ウェーバー『法社会学』

13. 交換からみた２つの社会体タイプ
• 共同体(ゲマインシャフト)：
– 「慈悲は強いられるべきものではない。恵みの雨のごとく、天
よりこの下界に降りそそぐもの。そこには二重の福がある。与
えるものも受けるものも、共にその福を得る。」
• 経済体（ゲゼルシャフト）：
• 「たしかに証文の期限は切れている。シャイロックがこれを楯に
要求していることは法的に正しい。この商人の心臓すれすれ
に一ポンドの肉を切りとるというわけだ。」4幕1場

14. 連帯は閉じずに接触・交換する
• ゲマインシャフト
–兄弟的連帯を続ける→利潤が必要
• ゲゼルシャフト
–別な社会・異邦人との接触・交換を通じて利潤を
得る
敵対し合いな
がら相互依存

15. 社会体は他の社会体を必要とする
兄弟愛
宗教女
ゲマ
イン
シャ
フト
ゲゼル
シャフ
ト

16. 人肉裁判：社会体への救済
• ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの対立激化
• ゲゼルシャフトの論理を徹底することでゲマイン
シャフトを救う。

17. 人肉裁判：ゲマインシャフトへの救い

18. 社会体対立
兄弟愛
宗教女
ゲマ
イン
シャ
フト
ゲ
ゼ
ル
シ
ャ
フ
ト
「憎い、だ
から殺した
くなる、人
間なら誰し
もそうだろ
うが？」4幕1場

19. 社会体対立の止揚
兄弟愛
宗教女
ゲ
マ
イ
ン
シ
ャ
フ
ト
ゲ
ゼ
ル
シ
ャ
フ
ト
「この男の財
産の一半にた
いする罰金も、
免じてやって
くだされば何
よりとぞんじ
ます。」 4幕1場

20. 駆け落ち
• ジェシカによる持ち逃げと浪費
–ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの対立激化の解消
• ゲゼルシャフトの蓄積（死蔵）をゲマインシャフト内
に流通（活性）させる。
「そのジェノアで、娘さん、なんでも一晩に八十ダ
カット使っていたそうだぜ。」3幕1場

21. 社会体対立の止揚：交流の向上
兄弟愛
宗教女
ゲ
マ
イ
ン
シ
ャ
フ
ト
ゲ
ゼ
ル
シ
ャ
フ
ト

22. 指輪の揉め事：止揚の顕示
• バッサーニオから取り戻した指輪をもう一度バッ
サーニオに贈り直す。
• 妻である自分は止揚しうる存在であること（２つ
の共同体をまたげる存在）であることを示す。

23. 社会体対立の止揚：交流の確認
兄弟愛
宗教女
ゲ
マ
イ
ン
シ
ャ
フ
ト
ゲ
ゼ
ル
シ
ャ
フ
ト

24. 対立の止揚
(1)三つ箱の婿選び：ゲマインシャフトの確認
(2)人肉裁判：ゲマインシャフトを救済
(3)駆け落ち：二シャフトの交流度を向上
(4)指輪の揉め事：二シャフトの交流可能性確認

25. 夫婦という社会体
兄弟
宗教女

26. 夫婦という社会体：家父長の力
兄弟
宗教女
男性の力が
優位

27. 夫婦という社会体：女性家父長の力
兄弟
宗教女
女性の力が
優位

28. ベニスの商人：女性の力の優位
兄弟愛
宗教女

29. 『ベニスの商人』の原作
• セル・ジョヴァンニ『バカデカ羊』(Il Pecorone,
1558)
–女性：未亡人の住む町ベルモントの噂
→ 「有能で美しい婦人で、『到着するものは婦人と寝て、も
しも婦人を楽しませたら、妻として迎え、この湾岸町とそ
の周囲の町々の主となるべし』という法を定めている。」

30. 原作の女性：＜恐るべき女＞
• はげたかのように財産を
食い、死の国に男性を
追いやる。（ノイマン『太母』）
翼を付けたゴルゴン
（ギリシア壺絵）

31. ギュスターヴ＝アドルフ・モッサ
（Gustav-Adolf Mossa）
「彼女」1906年

32. ノイマン『太母』

33. 慈悲深き聖母
バルトロメオ・ヴィヴァリーニ「慈悲深き聖母」
1473年

34. ポーシャにはこの2つ
の性格が備わってい
る。

35. 両義的な妻

36. •これ以降のスライド
は授業とは関係あり
ません

37. ティントレット「慈悲深い聖母」1564年頃

38. 『ベニスの商人』の原作
• セル・ジョヴァンニ『バカデカ羊』(Il Pecorone, 1558)
• フィレンツェ商人ビンドー。レヴァント (Levant)貿易に従事し
成功。
– 遺産を三人の息子のうち三男ジャネットには残さない。
– 「ヴェニスの金貸しで子のいない名付け父アンサンドロの元
に行くように。きちんとしていれば、金持ちになれる」（遺
言）
• ビンドーの妻、ジャネットの母親は不在
• アンサンドロの妻は不在

39. 富と女性は越境の彼方に
• アンサンドロはジャネットに金庫の鍵を渡す
– 富：「現金は自由に使ってよい。家を開放して、町の人を自由に呼び、
有名になりなさい。」
→実際にジャネットは礼節の宮廷人とし有名になる。
– 富：友人とともにレヴァント貿易に乗り出す
→ヴェニス最大の豪華船
– 女性：未亡人の住む町ベルモントの噂
→ 「有能で美しい婦人で、『到着するものは婦人と寝て、もしも
婦人を楽しませたら、妻として迎え、この湾岸町とその周囲の
町々の主となるべし』という法を定めている。」

40. 富と女性は越境の彼方に
• アンサンドロはジャネットに金庫の鍵を渡す
–女性：未亡人の住む町の噂
→ 「『もしも婦人を楽しませられないなら、財産をすべて失
う』という法を定めている。」
–ジャネット上陸：婦人の臣下たちから大歓迎・宮廷
の晩餐会
→ 寝室に行くと、酒を勧められ、酩酊。翌朝に目覚め
財産（船）を没収

41. 富と女性は越境の彼方に
• ジャネットは恥じてアンサンドロ家に戻らない
–嘘：船が難破したと友人に告白
→アンサンドロは憂鬱だったが、無事を知り歓迎
–再出奔：さらに豪華な船
→ジャネットは「婦人のもとに戻ることだけを考える」
– ジャネット再上陸：婦人の臣下たちから大歓迎・宮廷の晩餐会
→ 寝室に行くと、酒を勧められ、酩酊。翌朝に目覚め
財産（船）を没収

42. 富と女性は越境の彼方に
• ジャネットは恥じてアンサンドロ家に戻らない
–無言：友人からの叱責
→「キリスト教商人の中でも最も優れて偉大な人を破産させ
た。破産の恥は、財産を失うことよりも大変なこと」
–他の友人：レヴァント貿易で膨大な利益
→ジャネット「失ったものを取り返すまで満足できない。ここま
ま生きていくことは恥」
→アンサンドロは持ち物を売り払い、ユダヤ人から「肉一ポン
ド」の条件で金を借りる

43. 富と女性は越境の彼方に
–再々出奔と婦人との再会
→「この男性はこの国に膨大な富をもたらした。 」
→「この船も失ったのだから、また別な船で来るんだね。 」
（婦人の独り言）
• 男性の財産を奪い食べる女性
• 婦人の名前は無記載

44. 富と女性は越境の彼方に
• ジャネットは酒を飲んだふりをして、婦人との同衾
に成功
–祝宴：船の積み荷をベルモントの人々に振る舞う
→アンサンドロの負債のことは忘れる
–人肉裁判＋指輪の揉め事
• 女性による、秩序回復

45. 限定的家父長制核家族
（restricted patriarchal nuclear family）
• 結婚相手の選択基準：
– 経済的豊かさと地位の向上、ただし相思相愛が重視さ
れる
• 結婚相手の選択権：
– 両親と親族、ただし結婚する者同士がそれぞれの親
（家父長）に対して異議申し立てができる。
• 居住形態：一世代型
– 夫婦が独立し、両親とは別な自分の家に住む

46. 限定的家父長制核家族：ポーシャ
–ああ、「選ぶ」とは、何て悲しい言葉なの! わたしに
は好きな人を選ぶことも、嫌いな人を拒むこともでき
ない。（1幕2場）
–「アントーニオ様、ようこそ我が家へ」（ 5幕1場）

47. 対極合致(coincidentia oppositorum)
浅田彰
『構造と力』

48. トリックスター：法からの逸脱
「(1)日常生活の真っ只中で、わずかの石や木片
や線を使って、馬鹿騒ぎを演じながら、
(2)大人の押しつける道徳と秩序の世界の軌道か
ら簡単に離脱して、
(3)自分たちが、そこでは混沌の傍らに身を置く」。
（山口昌男『道化の宇宙』）

49. トリックスター：愛との
協賛

50. トリックスター・ポーシャ：愛による法の強化
「(1)日常生活の真っ只中で、わずかの石や木片
や線［変装］を使って、馬鹿騒ぎ［裁判］を演
じながら、
(2)大人［ユダヤ人］の押しつける道徳と秩序の
世界の軌道から簡単に離脱して、
(3)自分たちが、そこでは混沌の傍ら［活性化さ
れた愛の世界］に身を置く」。

51. 人肉裁判：トリックスター
• ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの対立激化
–「トリックスターは媒介者である。それは、その媒介者
的な機能によってふたつの極のあいだの中間に位置
を占めることになるので、ある種の二元性のようなも
の――すなわち両義的であいまいさに満ちた性格を
保持しなければならない。」
– （レヴィ＝ストロース『構造人類学』）

52. 連帯は閉じずに接触・交換、止揚する
• ゲマインシャフト
–兄弟的連帯を続ける→利潤が必要
• ゲゼルシャフト
–別な社会・異邦人との接触・
交換を通じて利潤を得る
敵対し合いな
がら相互依存
対立の止揚
トリックスター

53. ベニスの商人は誰か？
アントニオ シャイロック
宗教 キリスト教 ユダヤ教 相互に深い対立
道徳 愛caritas 儀礼・律法 倫理観・価値観の相違
利潤 投機 利子 異邦人からは利子を