クロスボーダーのビジネスをする際に問題になるのが税務問題。特に非居住者と居住者との間に税務格差を利用する場合、その非居住者性を如何に確保するかが問題になります。それをPE - permanent establishment / 恒久的施設 - 問題と呼び、ストラクチャーを検討することになります。 このプレゼンテーションでは2018年3月に施行された税法に基づくストラクチャリングの考え方について、その一般論を整理して説明するものです。

1. PE問題ってどう考えるの？

2. • PEという言葉は Permanent Establishment、恒
久的施設、という意味の略語。
• ここでのPE問題とは、もし日本から見た外国
籍のファンドのような国内非居住者が日本国
内に恒久的施設 – 常時活動する拠点 - を有
する、と判断されて国内居住者と同じように
日本における課税、特に資産の売却時の源
泉徴収課税を受けるか、という問題を考える
。
PE問題というかPEって？

3. • 一番わかりやすいところで、日本の非居住者による株
式の譲渡は海外で発生するのでそのキャピタルゲイ
ン課税はその海外の国や地域のルールに従い、多く
は0%。でも、日本の居住者による、例えば上場株式
譲渡については20%の源泉徴収課税が発生する。
• ということは、もし外国籍のファンドや海外投資家が日
本の居住者と見なされる、言い換えると恒久的施設を
持っていると見なされると源泉徴収が発生するので、
本来掛からないはずのものが掛かることで投資効率
が下がるので問題。
PE問題ってどう問題になるの？

4. 日本に対して投資する海外投資家や海外ファンドなどの
日本の非居住者にとって
1. 自分自身が、もしくは
2. その国内のパートナー（運用会社など）が
国内の恒久的施設と見做された時、居住者扱いされて
しまいます。
じゃあ、それってどういう時？
PE問題っていつ発生するの？

5. 大きく分けると次の二つのどちらか
1. １号 PE として認定されること（海外投資家や
ファンド自身がPE認定されてしまうケース）
2. 国内のパートナーが独立代理人と認定できな
いこと（海外投資家やファンドの国内のパート
ナーがそのPE認定されてしまうケース）
恒久的施設の条件

6. 恒久的施設の定義には大きく分けると次の三
つがある。
• 1号PE: 支店、工場など
• 2号PE: 建設などの作業等
• 3号PE: 自らの事業活動を担う代理人
投資の場合、不動産の開発案件を除けば、1号
PEと3号PEがもろに被る可能性がある。
そもそも1号PEって？

7. • ファンドのケースでなければ、オンラインショッ
ピングの受注を海外で行うけど、在庫管理や
発注を国内の子会社にさせちゃう場合。こ
れって売り上げを海外で立てるけど、費用ば
かり国内子会社に押し付けてるからこの海外
の売り上げは国内で発生したとして課税する、
というのが例。
海外受注
会社
国内発送
会社
国内顧客
発注・支払い
商品発送発送指示
1号PEと見なされるケース

8. • 一般的な企業の直接投資のケースだと、例えば
国内企業がその海外の100%子会社から、そこ
からあたかも外国人の顔をして国内企業への投
資する場合、この子会社が得る株式売却益には
この国内企業が直接投資した時と同じように源
泉所得税がかかる。
• でも、一般に海外ファンドは運用会社の子会社
ではないから、これに抵触するケースは少ない、
はず。
海外子会
社
国内企業
国内株式
購入・売却
資本関係
+投資指示
1号PEと見なされるケース

9. • ファンドのケースだと、海外にファンドを立て
て国内外から資金を募り、そこからあたかも
外国人の顔をして国内企業への投資する時
に問題にされる。
• １号PEは支店や子会社のような資本関係や
支配関係があると引っかかる。ということはこ
のテストをクリアしさえすればいいの？
海外ファ
ンド
国内運用
会社
国内株式
購入・売却
投資指示
一般的なファンドのケース

10. • ユニットトラストの場合、ファンドの支配権を持つ
のはトラスティ。トラスティと資本関係があると厄
介そうだけど、一般的にトラスティとそういう関係
にはないので、どうやら1号PE問題は回避できそ
う。
• なので、投資信託とかをやっている人はあまりこ
のPE問題は気にしなくても生きていける。という
か、気にした人を見たことがない。
海外ファ
ンド
国内運用
会社
国内株式
購入・売却
投資指示
ユニットトラストのケース

11. • 会社型ファンドの場合、ファンドの支配権 = 議決
権付きの株式を持つのは投資家。となると、国
内の投資家さんがただ一人の投資家だと当たっ
てしまう。
• けど、それだと企業投資家にとっては連結対象
になるから、ということであまり一般的に会社型
ファンドを使われることがないし、大抵の場合ユ
ニットトラストを採用して回避してしまう。
海外ファ
ンド
国内運用
会社
国内株式
購入・売却
投資指示
会社型ファンドのケース

12. • LPSの場合、ファンドの支配権はGP = 業務執行組合員が持ってい
るので、その株式を持つのが誰か、という問題になる。
• GPの株式を国内の運用会社が100%持ってしまうと運用会社の子
会社という位置付けになるので先ほどの外国人の振りをする海外
子会社のケースと一緒になってしまう。
• ということで、このGP会社の議決権付き株式の取り扱いが問題に
なってくる。
• また、人的支配という観点でも見られることから、取締役会も非居
住者が（最低過半数は）運営する形にせねばならないし、その開
催も出来れば海外で行なった形跡を残す必要がある。
海外ファ
ンド
国内運用
会社
国内株式
購入・売却
投資指示
LPS – 有限責任組合ファンドのケース

13. • ３号PE – 代理人PEを考えるとき、海外投資家
やファンドの国内代理人がどのような形であ
れ3号PE認定されてしまうと、例えば投資一任
業者のような不特定多数に対する役務提供
までが税務的に不利になってしまうので、こ
のような不特定多数に対して事業として行い、
正当な対価のためにサービス提供する場合
を除こう、というのが、独立代理人という除外
規定の考え方。
独立代理人って？

14. • 代理人PEって？
– 非居住者のために日本国内で行動する者（代理人）が、その事業の
ために契約を締結する権限を有し、かつこれを継続的・反復的に行
使した場合
– 国内において非居住者に代わって、その事業に関し、反復して以下
のような契約を締結し、またはその非居住者によって重要な修正が
行われることなく日常的に締結されるこれらの契約の締結のために
反復して主要な役割を果たす場合
• 非居住者の名において締結される契約
• 非居住者が所有している財産等について所有権を移転する等の契約
• 非居住者による役務の提供のための契約
この結果、海外のために働く代理人業の人の大半が当たってしまう。
それはまずい、ということで。。。
代理人PEの定義とか

15. • 独立代理人って？
– 代理人業を通常の業務として行うもの。ただし、次のよう
な独立性を有することが必要：
• 法的独立性： 代理人が十分な裁量権を有している（通常業務を
行う上で、非居住者等から詳細な指示や包括的な支配を受けな
い）
• 経済的独立性： 代理人が事業活動に係るリスク（事業リスク）を
自ら負担している
• 通常業務性： 非居住者等の業務に係る代理人の業務が、その
代理人が通常行う業務の方法により行われている
• 資本関係性： 専ら又は主として一又は二以上の自己と特殊の関
係にある者（代理人の資本の50%を超えて保有するもの）に代
わって行動しない
独立代理人の定義とか

16. • 独立代理人の要件をすべて満たせば良い：
• 法的独立性： 代理人が十分な裁量権を有している、すなわち銘
柄や購入サイズなどの取引の詳細について代理人が決められる
ことが大事。
• 経済的独立性： 代理人への報酬がその業務の対価に見合う形
になっていること。
• 通常業務性： 代理人の業務が複数の顧客に提供されていてそ
れぞれが同じように行われていること。
• 資本関係性： 代理人の資本の50%を上限に代理人を任命する
海外の投資家等が保有する。もちろん0ならそれに越したことは
ない。
要は代理人業務が資本関係の(50%を上限とはいえ)濃い相手以外
にもそうでない人にも同じく提供されていて、報酬体系も会社を積極
的に維持するような特殊なものになっていないこと、と言える。
独立代理人を目指すには？

17. • 事実上組合形式の案件で考えるのがほとん
ど
• 海外籍組合のGP/業務執行組合員の資本関
係と取締役会の構成における日本の居住者
比率に注意する。
• 運用会社の独立代理人の条件が整っている
かに注意する。
まとめ
– PE認定されないようにするには

18. • この問題は組合スキームを組成して、海外に売ること
が前提であるものの、他のスキームでも考える癖をつ
けておいたほうがオススメです。
• 本文書を作成した2019年4月の税法等を参考に出来
るだけ一般的なことを書いています。しかしながら、税
務については税務署の独自の解釈など常に変更等
が起こり得ますので、本件に取り組む際には税理士
等の税務関連のエキスパートに個別案件ベースで相
談するようにしてください。
• 本文書に起因する効果や損害等の保証はしませんの
で自己責任でどうぞ。
最後に

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