内受容感覚の観点から
感情を考える
小林亮太
広島大学教育学研究科 認知心理学研究室 D1
rkoba1993 [@] gmail.com
第26回感情心理学会プレカンファレンス (2018.11.9)
自己紹介 2
◆ 小林亮太 (こばやし りょうた)
- 広島大学 教育学研究科 認知研 D1
- HP (http://rkoba1993.wp.xdomain.jp/)
- 後日,HPに資料をアップロードします
◆ 専門
- 感情制御
- 内受容感覚
- 心のゆとり
◆ 最近の趣味
- 春菊 育て始めました
- (日本酒の仕込み用の) 地下水を巡ること
注意点 3
◆ 発表内容について
- 心理学専攻ですが,今回発表する感情そのものに関する考えは,
どちらかというと哲学の立場から書かれた書籍に基づいています
(戸田山, 2016; 鈴木, 2015; Prinz, 2004; 信原, 2017; 西村, 2018 ※左から影響の大きい順)
- Barret (2017) を引用していますが,半分以上未読の状態で資料を
作っています
- Seth (2013) のinteroceptive inferenceも引用していますが,
理解できているとはいえない状況です
- 小林が勝手に解釈して書いているところもありますので,
原著者の考えとズレていることもあると思います
- また,今回の発表内容はかなり暫定的なもので,
今後,勉強や研究を重ねて,改めていきたいと考えています
(ひとまずとしての) 用語の使い方 4
感情
感じ or 情感 (feeling)
内受容感覚 (生理変化)
思考・信念
評価
(cf., Rosenberg, 1998 Fig2; 神谷, 2005 p507 )
感情体験 (subjective emotional experience,
emotional awareness)
行動・表出
脳活動
・質問紙などで測定
(いわゆる基本感情はここ)
・活気のある
【1】当てはまらない ―
【6】によく当てはまる
発表内容 5
◆ 1. 内受容感覚と感情体験に関する研究
- 1-1. 内受容感覚とは
- 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連
◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か?
- 2-1. 内受容感覚から感情を捉える
:身体感じ説 (James-Lange説)
- 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張
- 2-3. 感情とは何か?
発表内容 6
◆ 1. 内受容感覚と感情体験に関する研究
- 1-1. 内受容感覚とは
- 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連
◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か?
- 2-1. 内受容感覚から感情を捉える
:身体感じ説 (James-Lange説)
- 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張
- 2-3. 感情とは何か?
内受容感覚とは 7
◆ 内受容感覚
- 心拍の鼓動
- 胃の収縮
- 空腹感
- etc.
➡ 身体内部感覚のこと
内受容感覚と感情 8
◆ 内受容感覚と感情の結びつき
- James-Langeの身体感じ説
: 悲しいから泣くのではない,泣くから悲しい
- Schachter-Singerの2要因理論
: 吊り橋実験
- Nummenmaa et al. (2014)
感情の「結果 (副産物)」としての内受容感覚 9
◆ (一般的な) 感情喚起 + 生理測定 実験
- 感情喚起刺激により感情が生じる
- 感情が生起した後に,内受容感覚も変化する
- 感情の結果 (副産物) としての内受容感覚
感情
感情喚起刺激
感情の「結果 (副産物)」としての内受容感覚 10
◆ 「感情の結果としての内受容感覚」の難しい点
- この立場では感情という何かを想定する
-「感情」とは何か? という問いに答えにくい
本発表では,(ひとまず) 別の立場から内受容感覚を捉える
(※この立場を否定しているわけではないです)
感情評価
発表内容 11
◆ 1. 内受容感覚と感情体験に関する研究
- 1-1. 内受容感覚とは
- 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連
◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か?
- 2-1. 内受容感覚から感情を捉える
:身体感じ説 (James-Lange説)
- 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張
- 2-3. 感情とは何か?
◆内受容感覚の個人差 12
◆ 内受容感覚の個人差指標の3区分 (cf., Garfinkel et al., 2015)
- 内受容感覚の鋭敏さ (interoceptive accuracy)
- 内受容感覚をどれくらい鋭敏に感じられるか
- 内受容感覚の意識傾向 (interoceptive sensibility)
- interoceptive awareness
- interoceptive trait prediction error
(ITPE, Garfinkel et al., 2016)
内受容感覚の鋭敏さの測定 13
◆ 心拍カウント課題 (tracking task)
: 内受容感覚の鋭敏さを測定する課題
(Ehlers & Breuer, 1992; Schandry, 1981; Terasawa, 2014)
開始 カウント終了準備
心拍を数える
測定された実際の心拍数
回答された心拍数と
測定された心拍数を比較
一致しているほど,
鋭敏さが高い
内受容感覚の鋭敏さの測定 14
◆ 心拍カウント課題 (tracking task)
: 内受容感覚の鋭敏さを測定する課題
(Ehlers & Breuer, 1992; Schandry, 1981; Terasawa, 2014)
0
1
2
3
4
5
6
7
0.48 0.53 0.57 0.61 0.65 0.70 0.74 0.78 0.83 0.87 0.91 0.95
度
数
内受容感覚の鋭敏さ
内受容感覚が
鋭敏な人たち
鋭敏さと感情体験 15
◆内受容感覚の鋭敏さと不安
- N = 40 (大学生)
- 特性不安をSTAIで測定
- 内受容感覚が鋭敏な者ほど,不安を感じやすい
0
1
2
3
4
0 0.5 1
不
安
鋭敏さ
0
1
2
3
4
0 0.5 1
不
安
鋭敏さ
↑ただし,結果が一貫しないという
報告もあるので注意
内受容感覚と外受容感覚 16
◆内受容感覚の鋭敏さと外受容感覚の鋭敏さ
- N = 50 (大学生)
- 外受容感覚の鋭敏さ: HSPS-J19 (高橋, 2016 補足1)
- 負の相関 (r = -.35)
- 内受容感覚の鋭敏さと外受容感覚的な鋭敏さは
同一のものではない
0
1
2
3
4
5
6
7
0 0.5 1
外
受
容
感
覚
の
鋭
敏
さ
内受容感覚の鋭敏さ
発表内容 17
◆ 1. 内受容感覚と感情体験に関する研究
- 1-1. 内受容感覚とは
- 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連
◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か?
- 2-1. 内受容感覚から感情を捉える
:身体感じ説 (James-Lange説)
- 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張
- 2-3. 感情とは何か?
身体感じ説 (James-Lange説) 18
◆James (1884)
- 悲しいから泣くのではなく,泣くから悲しい
- 感情体験に,生理的変化が先行する
● ● ● ● ●
- と教科書では説明される
悲しみ
身体感じ説 (James-Lange説) 19
◆James (1884, p189; 日本語版: 宇津木, 2007) ※補足1
Our natural way of thinking about these standard emotions is that the
mental perception of some fact excites the mental affection called the
emotion, and that this latter state of mind gives rise to the bodily
expression.
My thesis on the contrary is that the bodily changes follow
directly the PERCEPTION of the exciting fact, and that
our feeling of the same changes as they occur is
the emotion.
感情の感じ (feeling) = 内受容感覚 (の変化) の感じ
感じ (feeling) とは 20
恐怖を感じている
ぞっとする感じ
ぞくぞく
緊張している
どきどき感
面接
高所
何を「感じ」ているか 21
◆視覚の場合
- りんごを見たときの「赤い感じ」は,
りんごにある赤さを感じている
知覚
赤い感じ
何を「感じ」ているか 22
◆感情の場合
- 高い所にいるときの「ぞくぞくする感じ」は,
内受容感覚 (の変化) を感じている ※1
高所
知覚
ぞくぞく感
※1 視覚と異なり,感情の場合は, 複数の内受容感覚の感じが混ざり合っているという点で
異なっていることに留意 (戸田山, 2016 p48)。
身体感じ説 (James-Lange説) 23
◆身体感じ説
:感情の感じは,内受容感覚の感じ
知覚
赤い感じ
高所
知覚
ぞくぞく感
評価
※ こうした五感的な感じと感情の感じを同一の知覚過程ととらえる試みについては,
鈴木 (2015) に基づいています。
発表内容 24
◆ 1. 内受容感覚と感情体験に関する研究
- 1-1. 内受容感覚とは
- 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連
◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か?
- 2-1. 内受容感覚から感情を捉える
:身体感じ説 (James-Lange説)
- 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張
- 2-3. 感情とは何か?
身体感じ説の問題点 25
◆身体感じ説の問題点 (戸田山, 2016 p79)
1) 基本感情に対応した内受容感覚の変化 (身体変化)
が存在しない
2) 内受容感覚の変化 (身体変化) の遅さ
- 感情の感じはかなり素早く生じる
3) 神経活動の観点からの説明がなされていない
-内受容感覚を感じているといっても,
結局は神経活動だよね?
身体感じ説の問題点への回答 a 26
◆身体感じ説の問題点 (戸田山, 2016 p79)
1) 基本感情に対応した内受容感覚の変化 (身体変化)
が存在しない
- 感情に対応した内受容感覚の変化がある,
という想定が間違っている可能性
- 各感情に特有の身体変化,脳部位はない
(Barret, 2017)
- 感じに対するラベリングをしている?
- Schachter & Singer の情動2要因理論
- False physiological feedback 研究
False physiological feedback 27
◆False physiological feedback
:実際と異なる心拍を音によりFBする手法 (Gray et al., 2007)
- N = 20 (大学生)
- 心拍 (実際と同じ Synchro / 10%遅い Slow10) をFBされながら,
提示画像 (中性 or ネガ) により生じた感情を回答
実際より10%遅いフィードバック
(Slow10)
False physiological feedback 28
実際の心拍のフィードバック
(Synchro)
実際より10%遅いフィードバック
(Slow10)
FB条件
提示画像
ネガティブ画像 中性画像
False physiological feedback 29
実際の心拍のフィードバック
(Synchro)
実際より10%遅いフィードバック
(Slow10)
心拍数
60
計算
純音提示 純音提示
心拍
情報
純音提示
心拍数
54
心拍
情報
False physiological feedback条件
False physiological feedback 30
◆False physiological feedback
:実際と異なる心拍を音によりFBする手法 (Gray et al., 2007)
- 心拍の減速を (無理矢理に) 解釈するために,(画像により)
生起した感情に,より覚醒度の低い感情だと
ラベリングをしたため (e.g., 恐怖→憂鬱)
感情体験=感じ + ラベリング 31
◆ 感じに対するラベリングをしている?
- 各感情体験 (e.g., 恐怖,喜び) と対応した内受容感覚変化
は存在しない (Barret, 2017)
- 感情の感じ (i.e., 内受容感覚の変化の感じ) に
ラベリングをすることで感情体験となる
高所
知覚評価
ぞくぞく感
恐怖
ラ
ベ
リ
ン
グ
感情体験=感じ + ラベリング 32
◆ 感じに対するラベリングをしている?
- 感情の感じ (i.e., 内受容感覚の変化の感じ) に
ラベリングをすることで感情体験となる
感じ
(feeling)
感情体験
ぞくぞく感
恐怖
ラ
ベ
リ
ン
グ
身体感じ説の問題点への回答 b 33
◆身体感じ説の問題点 (戸田山, 2016 p79)
2) 内受容感覚の変化 (身体変化) の遅さ
3) 神経活動の観点からの説明がなされていない
- 実際の内受容感覚の変化ではなく,脳における
内受容感覚の「予測」を感じている?
- Interoceptive inference (Seth, 2013; 乾, 2018)
- Theory of constructed emotion (Barret, 2017)
内受容感覚の予測 34
◆ Predictive coding
- 脳はトップダウン的な予測をしており,
ボトムアップ的な感覚入力のズレ (i.e., 予測誤差)
を最小化するように機能している
◆ Interoceptive inference (Seth, 2013; 乾, 2018)
- Predictive codingの考えを内受容感覚に応用
- 内受容感覚についても常に予測がなされている
- 感情喚起刺激 (e.g., 高い所) が知覚されたとき,
実際の内受容感覚変化が生じる前に,
内受容感覚の予測が伝達されている
内受容感覚の予測 35
◆ Interoceptive inference (Seth, 2013; 乾, 2018)
- 感情喚起刺激 (e.g., 高い所) が知覚されたとき,
実際の内受容感覚変化が生じる前に,
内受容感覚の予測が伝達されている
高所
内受容感覚
の予測
実際の
内受容感覚
予
測
誤
差
内受容感覚から見る感情のモデル 36
内受容感覚 (の予測) の感じ
= 感情の感じ
高所
恐怖
評価
内受容感覚の予測
実際の内受容感覚
ぞくぞく感
感じ feeling 感情体験
ラベリング
予測誤差
感情の感じ + ラベリング
= 感情体験
発表内容 37
◆ 1. 内受容感覚と感情体験に関する研究
- 1-1. 内受容感覚とは
- 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連
◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か?
- 2-1. 内受容感覚から感情を捉える
:身体感じ説 (James-Lange説)
- 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張
- 2-3. 感情とは何か?
感情とは 38
◆感情とは……
- 外的,内的刺激への評価から始まる一連のプロセス
◆感情の感じとは……
刺激の 評価 を反映した内受容感覚
変化 (の予測) を感じとったもの
高所
恐怖
評価
内受容感覚の予測
ぞくぞく感
感じ feeling 感情体験
ラベリング
内受容感覚から感情を見ることの「限界」 39
1,内受容感覚の感じ をどのように研究するか
- 内受容感覚の感じ を測定することは困難
- 研究のためのパラダイムが未整備
- 内受容感覚の個人差研究も発展途上
2,そもそも身体感じ説は正しいのか
- 思考実験や間接的な証拠はある
- しかし,決定的な知見も存在しない
ご覧いただきありがとうございます。
まだまだ未完成な考えを,
とりとめもなくまとめております。
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- Handbook of emotion regulation (2nd Ed.)
- 広島大学で不定期開催
- http://rkoba1993.wp.xdomain.jp/research/documents/hoer/
- 次回以降はWeb開催も視野にいれています
- 興味がありましたら,ご連絡ください。
引用文献 42
◆Barrett, L. F. (2017). How emotions are made: The secret life of the brain. Houghton Mifflin Harcourt.
◆Garfinkel, S. N., Seth, A. K., Barrett, A. B., Suzuki, K., & Critchley, H. D. (2015). Knowing your own heart:
distinguishing interoceptive accuracy from interoceptive awareness. Biological psychology, 104, 65-74.
◆Garfinkel, S. N., Tiley, C., O'Keeffe, S., Harrison, N. A., Seth, A. K., & Critchley, H. D. (2016). Discrepancies between
dimensions of interoception in autism: Implications for emotion and anxiety. Biological psychology, 114, 117-126.
◆Gray, M. A., Harrison, N. A., Wiens, S., & Critchley, H. D. (2007). Modulation of emotional appraisal by false
physiological feedback during fMRI. PLoS one, 2(6), e546.
◆乾敏郎 (2018). 感情とはそもそも何なのか 現代科学で読み解く感情の仕組みと障害 ミネルヴァ書房
◆James, W. (1884). What is an emotion?. Mind, 9, 188-205. (宇津木 (2007) (訳) ウィリアム・J著 情動とは何か?)
◆神谷俊次 (2005) 第11章 感情 ヒルガードの心理学 第14版
◆西村清和 (2018). 感情の哲学 分析哲学と現象学 勁草書房
◆Nummenmaa, L., Glerean, E., Hari, R., & Hietanen, J. K. (2014). Bodily maps of emotions. Proceedings of the
National Academy of Sciences, 111, 646-651.
◆Prinz, J. J. (2004). Gut reactions: A perceptual theory of emotion. Oxford University Press. (源河亨 (2016) (訳) はら
わたが煮えくりかえる)
◆Rosenberg, E. L. (1998). Levels of analysis and the organization of affect (Vol. 2, No. 3, p. 247). Educational
Publishing Foundation.
◆Seth, A. K. (2013). Interoceptive inference, emotion, and the embodied self. Trends in cognitive sciences, 17(11),
565-573.
◆信原幸弘 (2017). 情動の哲学入門 勁草書房
◆鈴木貴之 (2015). ぼくらが原子の集まりなら,なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう 勁草書房
◆髙橋亜希 (2016). Highly Sensitive Person Scale 日本版 (HSPS-J19) の作成 感情心理学研究, 23, 68-77.
◆戸田山和久 (2016). 恐怖の哲学 ホラーで人間を読む NHK出版新書
◆アイコン・イラスト http://icooon-mono.com/
補足1:HSPSの項目 43
低感覚閾
易興奮性
美的感受性
髙橋 (2016)
補足2:身体感じ説の根拠 44
◆James-Lange説における思考実験
- James-Lange説の根拠 (宇津木, 2007 p40; 戸田山, 2016 p76)
- たとえば,恐怖について考えてみる
- この恐怖から心臓のどきどきがなくなり,
首筋が冷える感覚もなくなったとする
- このような内受容感覚の「感じ」がないときに,
恐怖の感じがあるといえるのか?
- 冷たく中性的な知覚,認知が残っているだけ…

内受容感覚の観点から感情を考える (感情心理学会 プレカンファレンス, 2018)

  • 1.
  • 2.
    自己紹介 2 ◆ 小林亮太(こばやし りょうた) - 広島大学 教育学研究科 認知研 D1 - HP (http://rkoba1993.wp.xdomain.jp/) - 後日,HPに資料をアップロードします ◆ 専門 - 感情制御 - 内受容感覚 - 心のゆとり ◆ 最近の趣味 - 春菊 育て始めました - (日本酒の仕込み用の) 地下水を巡ること
  • 3.
    注意点 3 ◆ 発表内容について -心理学専攻ですが,今回発表する感情そのものに関する考えは, どちらかというと哲学の立場から書かれた書籍に基づいています (戸田山, 2016; 鈴木, 2015; Prinz, 2004; 信原, 2017; 西村, 2018 ※左から影響の大きい順) - Barret (2017) を引用していますが,半分以上未読の状態で資料を 作っています - Seth (2013) のinteroceptive inferenceも引用していますが, 理解できているとはいえない状況です - 小林が勝手に解釈して書いているところもありますので, 原著者の考えとズレていることもあると思います - また,今回の発表内容はかなり暫定的なもので, 今後,勉強や研究を重ねて,改めていきたいと考えています
  • 4.
    (ひとまずとしての) 用語の使い方 4 感情 感じor 情感 (feeling) 内受容感覚 (生理変化) 思考・信念 評価 (cf., Rosenberg, 1998 Fig2; 神谷, 2005 p507 ) 感情体験 (subjective emotional experience, emotional awareness) 行動・表出 脳活動 ・質問紙などで測定 (いわゆる基本感情はここ) ・活気のある 【1】当てはまらない ― 【6】によく当てはまる
  • 5.
    発表内容 5 ◆ 1.内受容感覚と感情体験に関する研究 - 1-1. 内受容感覚とは - 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連 ◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か? - 2-1. 内受容感覚から感情を捉える :身体感じ説 (James-Lange説) - 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張 - 2-3. 感情とは何か?
  • 6.
    発表内容 6 ◆ 1.内受容感覚と感情体験に関する研究 - 1-1. 内受容感覚とは - 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連 ◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か? - 2-1. 内受容感覚から感情を捉える :身体感じ説 (James-Lange説) - 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張 - 2-3. 感情とは何か?
  • 7.
    内受容感覚とは 7 ◆ 内受容感覚 -心拍の鼓動 - 胃の収縮 - 空腹感 - etc. ➡ 身体内部感覚のこと
  • 8.
    内受容感覚と感情 8 ◆ 内受容感覚と感情の結びつき -James-Langeの身体感じ説 : 悲しいから泣くのではない,泣くから悲しい - Schachter-Singerの2要因理論 : 吊り橋実験 - Nummenmaa et al. (2014)
  • 9.
    感情の「結果 (副産物)」としての内受容感覚 9 ◆(一般的な) 感情喚起 + 生理測定 実験 - 感情喚起刺激により感情が生じる - 感情が生起した後に,内受容感覚も変化する - 感情の結果 (副産物) としての内受容感覚 感情 感情喚起刺激
  • 10.
    感情の「結果 (副産物)」としての内受容感覚 10 ◆「感情の結果としての内受容感覚」の難しい点 - この立場では感情という何かを想定する -「感情」とは何か? という問いに答えにくい 本発表では,(ひとまず) 別の立場から内受容感覚を捉える (※この立場を否定しているわけではないです) 感情評価
  • 11.
    発表内容 11 ◆ 1.内受容感覚と感情体験に関する研究 - 1-1. 内受容感覚とは - 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連 ◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か? - 2-1. 内受容感覚から感情を捉える :身体感じ説 (James-Lange説) - 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張 - 2-3. 感情とは何か?
  • 12.
    ◆内受容感覚の個人差 12 ◆ 内受容感覚の個人差指標の3区分(cf., Garfinkel et al., 2015) - 内受容感覚の鋭敏さ (interoceptive accuracy) - 内受容感覚をどれくらい鋭敏に感じられるか - 内受容感覚の意識傾向 (interoceptive sensibility) - interoceptive awareness - interoceptive trait prediction error (ITPE, Garfinkel et al., 2016)
  • 13.
    内受容感覚の鋭敏さの測定 13 ◆ 心拍カウント課題(tracking task) : 内受容感覚の鋭敏さを測定する課題 (Ehlers & Breuer, 1992; Schandry, 1981; Terasawa, 2014) 開始 カウント終了準備 心拍を数える 測定された実際の心拍数 回答された心拍数と 測定された心拍数を比較 一致しているほど, 鋭敏さが高い
  • 14.
    内受容感覚の鋭敏さの測定 14 ◆ 心拍カウント課題(tracking task) : 内受容感覚の鋭敏さを測定する課題 (Ehlers & Breuer, 1992; Schandry, 1981; Terasawa, 2014) 0 1 2 3 4 5 6 7 0.48 0.53 0.57 0.61 0.65 0.70 0.74 0.78 0.83 0.87 0.91 0.95 度 数 内受容感覚の鋭敏さ 内受容感覚が 鋭敏な人たち
  • 15.
    鋭敏さと感情体験 15 ◆内受容感覚の鋭敏さと不安 - N= 40 (大学生) - 特性不安をSTAIで測定 - 内受容感覚が鋭敏な者ほど,不安を感じやすい 0 1 2 3 4 0 0.5 1 不 安 鋭敏さ 0 1 2 3 4 0 0.5 1 不 安 鋭敏さ ↑ただし,結果が一貫しないという 報告もあるので注意
  • 16.
    内受容感覚と外受容感覚 16 ◆内受容感覚の鋭敏さと外受容感覚の鋭敏さ - N= 50 (大学生) - 外受容感覚の鋭敏さ: HSPS-J19 (高橋, 2016 補足1) - 負の相関 (r = -.35) - 内受容感覚の鋭敏さと外受容感覚的な鋭敏さは 同一のものではない 0 1 2 3 4 5 6 7 0 0.5 1 外 受 容 感 覚 の 鋭 敏 さ 内受容感覚の鋭敏さ
  • 17.
    発表内容 17 ◆ 1.内受容感覚と感情体験に関する研究 - 1-1. 内受容感覚とは - 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連 ◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か? - 2-1. 内受容感覚から感情を捉える :身体感じ説 (James-Lange説) - 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張 - 2-3. 感情とは何か?
  • 18.
    身体感じ説 (James-Lange説) 18 ◆James(1884) - 悲しいから泣くのではなく,泣くから悲しい - 感情体験に,生理的変化が先行する ● ● ● ● ● - と教科書では説明される 悲しみ
  • 19.
    身体感じ説 (James-Lange説) 19 ◆James(1884, p189; 日本語版: 宇津木, 2007) ※補足1 Our natural way of thinking about these standard emotions is that the mental perception of some fact excites the mental affection called the emotion, and that this latter state of mind gives rise to the bodily expression. My thesis on the contrary is that the bodily changes follow directly the PERCEPTION of the exciting fact, and that our feeling of the same changes as they occur is the emotion. 感情の感じ (feeling) = 内受容感覚 (の変化) の感じ
  • 20.
    感じ (feeling) とは20 恐怖を感じている ぞっとする感じ ぞくぞく 緊張している どきどき感 面接 高所
  • 21.
  • 22.
    何を「感じ」ているか 22 ◆感情の場合 - 高い所にいるときの「ぞくぞくする感じ」は, 内受容感覚(の変化) を感じている ※1 高所 知覚 ぞくぞく感 ※1 視覚と異なり,感情の場合は, 複数の内受容感覚の感じが混ざり合っているという点で 異なっていることに留意 (戸田山, 2016 p48)。
  • 23.
    身体感じ説 (James-Lange説) 23 ◆身体感じ説 :感情の感じは,内受容感覚の感じ 知覚 赤い感じ 高所 知覚 ぞくぞく感 評価 ※こうした五感的な感じと感情の感じを同一の知覚過程ととらえる試みについては, 鈴木 (2015) に基づいています。
  • 24.
    発表内容 24 ◆ 1.内受容感覚と感情体験に関する研究 - 1-1. 内受容感覚とは - 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連 ◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か? - 2-1. 内受容感覚から感情を捉える :身体感じ説 (James-Lange説) - 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張 - 2-3. 感情とは何か?
  • 25.
    身体感じ説の問題点 25 ◆身体感じ説の問題点 (戸田山,2016 p79) 1) 基本感情に対応した内受容感覚の変化 (身体変化) が存在しない 2) 内受容感覚の変化 (身体変化) の遅さ - 感情の感じはかなり素早く生じる 3) 神経活動の観点からの説明がなされていない -内受容感覚を感じているといっても, 結局は神経活動だよね?
  • 26.
    身体感じ説の問題点への回答 a 26 ◆身体感じ説の問題点(戸田山, 2016 p79) 1) 基本感情に対応した内受容感覚の変化 (身体変化) が存在しない - 感情に対応した内受容感覚の変化がある, という想定が間違っている可能性 - 各感情に特有の身体変化,脳部位はない (Barret, 2017) - 感じに対するラベリングをしている? - Schachter & Singer の情動2要因理論 - False physiological feedback 研究
  • 27.
    False physiological feedback27 ◆False physiological feedback :実際と異なる心拍を音によりFBする手法 (Gray et al., 2007) - N = 20 (大学生) - 心拍 (実際と同じ Synchro / 10%遅い Slow10) をFBされながら, 提示画像 (中性 or ネガ) により生じた感情を回答 実際より10%遅いフィードバック (Slow10)
  • 28.
    False physiological feedback28 実際の心拍のフィードバック (Synchro) 実際より10%遅いフィードバック (Slow10) FB条件 提示画像 ネガティブ画像 中性画像
  • 29.
    False physiological feedback29 実際の心拍のフィードバック (Synchro) 実際より10%遅いフィードバック (Slow10) 心拍数 60 計算 純音提示 純音提示 心拍 情報 純音提示 心拍数 54 心拍 情報 False physiological feedback条件
  • 30.
    False physiological feedback30 ◆False physiological feedback :実際と異なる心拍を音によりFBする手法 (Gray et al., 2007) - 心拍の減速を (無理矢理に) 解釈するために,(画像により) 生起した感情に,より覚醒度の低い感情だと ラベリングをしたため (e.g., 恐怖→憂鬱)
  • 31.
    感情体験=感じ + ラベリング31 ◆ 感じに対するラベリングをしている? - 各感情体験 (e.g., 恐怖,喜び) と対応した内受容感覚変化 は存在しない (Barret, 2017) - 感情の感じ (i.e., 内受容感覚の変化の感じ) に ラベリングをすることで感情体験となる 高所 知覚評価 ぞくぞく感 恐怖 ラ ベ リ ン グ
  • 32.
    感情体験=感じ + ラベリング32 ◆ 感じに対するラベリングをしている? - 感情の感じ (i.e., 内受容感覚の変化の感じ) に ラベリングをすることで感情体験となる 感じ (feeling) 感情体験 ぞくぞく感 恐怖 ラ ベ リ ン グ
  • 33.
    身体感じ説の問題点への回答 b 33 ◆身体感じ説の問題点(戸田山, 2016 p79) 2) 内受容感覚の変化 (身体変化) の遅さ 3) 神経活動の観点からの説明がなされていない - 実際の内受容感覚の変化ではなく,脳における 内受容感覚の「予測」を感じている? - Interoceptive inference (Seth, 2013; 乾, 2018) - Theory of constructed emotion (Barret, 2017)
  • 34.
    内受容感覚の予測 34 ◆ Predictivecoding - 脳はトップダウン的な予測をしており, ボトムアップ的な感覚入力のズレ (i.e., 予測誤差) を最小化するように機能している ◆ Interoceptive inference (Seth, 2013; 乾, 2018) - Predictive codingの考えを内受容感覚に応用 - 内受容感覚についても常に予測がなされている - 感情喚起刺激 (e.g., 高い所) が知覚されたとき, 実際の内受容感覚変化が生じる前に, 内受容感覚の予測が伝達されている
  • 35.
    内受容感覚の予測 35 ◆ Interoceptiveinference (Seth, 2013; 乾, 2018) - 感情喚起刺激 (e.g., 高い所) が知覚されたとき, 実際の内受容感覚変化が生じる前に, 内受容感覚の予測が伝達されている 高所 内受容感覚 の予測 実際の 内受容感覚 予 測 誤 差
  • 36.
    内受容感覚から見る感情のモデル 36 内受容感覚 (の予測)の感じ = 感情の感じ 高所 恐怖 評価 内受容感覚の予測 実際の内受容感覚 ぞくぞく感 感じ feeling 感情体験 ラベリング 予測誤差 感情の感じ + ラベリング = 感情体験
  • 37.
    発表内容 37 ◆ 1.内受容感覚と感情体験に関する研究 - 1-1. 内受容感覚とは - 1-2. 内受容感覚の個人差と感情体験の関連 ◆ 2. 内受容感覚から見る感情とは何か? - 2-1. 内受容感覚から感情を捉える :身体感じ説 (James-Lange説) - 2-2. 身体感じ説の問題点と拡張 - 2-3. 感情とは何か?
  • 38.
    感情とは 38 ◆感情とは…… - 外的,内的刺激への評価から始まる一連のプロセス ◆感情の感じとは…… 刺激の評価 を反映した内受容感覚 変化 (の予測) を感じとったもの 高所 恐怖 評価 内受容感覚の予測 ぞくぞく感 感じ feeling 感情体験 ラベリング
  • 39.
    内受容感覚から感情を見ることの「限界」 39 1,内受容感覚の感じ をどのように研究するか -内受容感覚の感じ を測定することは困難 - 研究のためのパラダイムが未整備 - 内受容感覚の個人差研究も発展途上 2,そもそも身体感じ説は正しいのか - 思考実験や間接的な証拠はある - しかし,決定的な知見も存在しない
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  • 41.
    ちょっとした宣伝 41 ◆感情制御勉強会 - Handbookof emotion regulation (2nd Ed.) - 広島大学で不定期開催 - http://rkoba1993.wp.xdomain.jp/research/documents/hoer/ - 次回以降はWeb開催も視野にいれています - 興味がありましたら,ご連絡ください。
  • 42.
    引用文献 42 ◆Barrett, L.F. (2017). How emotions are made: The secret life of the brain. Houghton Mifflin Harcourt. ◆Garfinkel, S. N., Seth, A. K., Barrett, A. B., Suzuki, K., & Critchley, H. D. (2015). Knowing your own heart: distinguishing interoceptive accuracy from interoceptive awareness. Biological psychology, 104, 65-74. ◆Garfinkel, S. N., Tiley, C., O'Keeffe, S., Harrison, N. A., Seth, A. K., & Critchley, H. D. (2016). Discrepancies between dimensions of interoception in autism: Implications for emotion and anxiety. Biological psychology, 114, 117-126. ◆Gray, M. A., Harrison, N. A., Wiens, S., & Critchley, H. D. (2007). Modulation of emotional appraisal by false physiological feedback during fMRI. PLoS one, 2(6), e546. ◆乾敏郎 (2018). 感情とはそもそも何なのか 現代科学で読み解く感情の仕組みと障害 ミネルヴァ書房 ◆James, W. (1884). What is an emotion?. Mind, 9, 188-205. (宇津木 (2007) (訳) ウィリアム・J著 情動とは何か?) ◆神谷俊次 (2005) 第11章 感情 ヒルガードの心理学 第14版 ◆西村清和 (2018). 感情の哲学 分析哲学と現象学 勁草書房 ◆Nummenmaa, L., Glerean, E., Hari, R., & Hietanen, J. K. (2014). Bodily maps of emotions. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111, 646-651. ◆Prinz, J. J. (2004). Gut reactions: A perceptual theory of emotion. Oxford University Press. (源河亨 (2016) (訳) はら わたが煮えくりかえる) ◆Rosenberg, E. L. (1998). Levels of analysis and the organization of affect (Vol. 2, No. 3, p. 247). Educational Publishing Foundation. ◆Seth, A. K. (2013). Interoceptive inference, emotion, and the embodied self. Trends in cognitive sciences, 17(11), 565-573. ◆信原幸弘 (2017). 情動の哲学入門 勁草書房 ◆鈴木貴之 (2015). ぼくらが原子の集まりなら,なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう 勁草書房 ◆髙橋亜希 (2016). Highly Sensitive Person Scale 日本版 (HSPS-J19) の作成 感情心理学研究, 23, 68-77. ◆戸田山和久 (2016). 恐怖の哲学 ホラーで人間を読む NHK出版新書 ◆アイコン・イラスト http://icooon-mono.com/
  • 43.
  • 44.
    補足2:身体感じ説の根拠 44 ◆James-Lange説における思考実験 - James-Lange説の根拠(宇津木, 2007 p40; 戸田山, 2016 p76) - たとえば,恐怖について考えてみる - この恐怖から心臓のどきどきがなくなり, 首筋が冷える感覚もなくなったとする - このような内受容感覚の「感じ」がないときに, 恐怖の感じがあるといえるのか? - 冷たく中性的な知覚,認知が残っているだけ…