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人工知能と
「機械の脳」
関西大学社会学部 杉本舞
2022年7月27日
東京大学次世代知能科学研
究センター連続シンポジウム
第10回
mikemacmarketing / original posted on flickrLiam Huang / clipped and posted
on flickr, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via
Wikimedia Commons
ダートマス会議の前には何があったのか?
• 1956年に「人工知能」(Artificial Intelligence, AI)という言葉
が成立するまでに、どのような研究の経緯があったか?
• コンピュータを脳にたとえるようになったのは何故か?
• 「人工知能」のアジェンダは、どのような歴史的経緯で決定して
きたのか?
「機械の脳」:機械を人間になぞらえる
• 人間がするような自律的な動作・作業・推論を機械にさせるとき、その機械
を人間・脳になぞらえるという事例は20世紀前半からみられる。
• 専門的議論 / 大衆のパブリックイメージ
• 1940年代米国における「サイバネティクス」
• コンピュータ、ロボティクス、義肢研究などを含む
• 「機械頭脳」「電子頭脳」「人工頭脳」というコンピュータのイメージ
• 科学雑誌・ニュース記事 / フィクション作品
A woodblock engraving of Miles playing the tambour while friars Bacon and Bungay sleep and the Brazen Head speaks "Time Is. Time Was. Time Is Past."
From the 1630 edition of Robert Greene's The Honorable Historie of Frier Bacon, and Frier Bongay.
Brazen Head
A scene from R.U.R., showing three robots.
http://www.umich.edu/~engb415/literature/pontee/RUR/RURsmry.html (via
ar: ‫ملف‬
: Capek_play.jpg and en:Image:Capek play.jpg)
This image is from one of the original books in the Oz book series (not sure which) by L.
Frank Baum, all of which have entered the public domain.
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tiktok.png
Robots in R.U.R. &
Tiktok
“BRASS BRAIN Saves U. S. $125,000 Yearly”, Modern Mechanix, November
1928, p.96.
Gunners, Popular Science, August 1940, p.83.
潮候推算機と火器管制装置
"Electric "Brain" weights
Three Tons," Science And
Mechanics,
Aug, 1935,
“ ‘Mechanical Brain’
Works Out Mathematical
Engineering Problems,”
Modern Mechanix
Issue: Jun, 1932
MITの微分解析機
Behind the Giant Brain, Radio & Television News, January 1957, p.57.
“The ARMY BRAIN”, Mechanix Illustrated, June 1946, p.59.
『巨大頭脳:あるいは考える機械』 (1949)
• 電気・電子計算機に関する書籍
では、最初期のもののひとつ
• 論理を扱える「巨大頭脳」「機械
頭脳」としての機械について
• 著者のバークリーはACM創設者
のひとり
1940~50年代のサイバネティクスとAI
• 1943年、数学者ノーバート・ウィーナーは共同研究者らと、行動や現象が類
似しているということを根拠に、機械と動物がフィードバックという同じメカニ
ズムを持つという仮説を提示
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→ サイバネティクス
• 当時サイバネティクス運動に参加した研究者たちには、ミクロレベルの神経
回路に注目しそれを離散的にモデル化したい研究者たちと神経と筋肉・感
覚器官のフィードバックやアナログなデータを扱いたい研究者たちがいた。
• 前者の代表がフォン・ノイマン、コンピュータと脳のアナロジーの源流
• 後者の代表がアシュビーやウォルター、自律的に動き回る小さなロボットを製作
By Mick Ashby, on behalf of the Estate of W. Ross Ashby - Own work, CC BY-SA 4.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=95364081
Allison Marsh, "Meet the Roomba’s Ancestor: The Cybernetic Tortoise," IEEE Spectrum, 28
Feb. 2020.
https://spectrum.ieee.org/meet-roombas-ancestor-cybernetic-tortoise
Claude Shannon, "A Chess-Playing Machine," Scientific
American , Vol. 182, No. 2 (February 1950), pp. 48-51.
https://en.wikipedia.org/wiki/File:2001_A_Space_Odyssey_(1968).png
https://en.wikipedia.org/wiki/File:Neuromancer_(Book).jpg
「機械の脳」:機械を人間になぞらえる
• 人間がするような自律的な動作・作業・推論を機械にさせるとき、その機械
を人間・脳になぞらえるという事例は20世紀前半からみられる。
• 専門的議論 / 大衆のパブリックイメージ
• 1940年代米国における「サイバネティクス」
• コンピュータ、ロボティクス、義肢研究などを含む
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人工知能と「機械の脳」.pptx

Editor's Notes

  1. 関西大学社会学部の杉本舞と申します。本日は人工知能と「機械の脳」ということでお話しさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 今日のこのスライドは、マイクロソフトパワーポイントにデフォルトではいっている、その名も「回路」というテンプレートなのですが、タイトルページを作ると自動的にこの、回路で何か脳みたいなものを描いている絵柄、非常によくある絵柄が入るんですけれども、今日の発表はどうしてこういうイメージがそれこそ「テンプレ」になっているのか、というそういうことにつながるお話しになります。 私の専門は、科学史・技術史、科学や技術の歴史でして、これまでコンピュータやコンピュータサイエンス、人工知能の歴史に関する研究をしてきました↓ Message: 「人間がするような自律的な動作・作業や推論を機械にさせる」とき、その機械を脳になぞらえるということは歴史的に色々な事例があった 高速計算機が登場したとき、「それが推論をするから」「その部品の構造が脳に似ているように思われるから」といったさまざまな理由で、コンピュータを脳になぞらえた。それは専門的レベルでもそうだし、大衆的なパブリックイメージでもそうであった。 コンピュータが「電子頭脳」「機械頭脳」「人工頭脳」と呼ばれてきたことと、大衆レベルでコンピュータがするような仕事をぜんぶ人工知能と呼んだりすることは地続きであるように思われる。 またフィクションや伝説がAIのイメージを牽引し、自己成就予言のように研究の方向性を引っ張っている部分があるように見受けられる。 また、コンピューティング史全般でいえることだが、1940年代から60年代までの情報処理技術はアメリカが先導しており(70年代以降は必ずしもそうとはいえないというのが最近の研究のトレンド)、つまりはちょうど人工知能研究のディシプリンというかアジェンダが定まるころまでは少なくとも完全にアメリカ主導であって、つまりは研究の文化的背景も欧米、とりわけ米国の影響が色濃いと考えられる。
  2. これは、これまでの著作物の一部ですが、左側はアラン・チューリングの論文の翻訳と解説です。私と北海道大学の佐野勝彦先生との共訳共著で、チューリングの、コンピュータと人工知能関係の論説4つの翻訳と解説が入っています。ちなみに翻訳より解説の方が長いです。 そのほか、雑誌の現代思想にのせた論考で、20世紀後半の3度のAIブームについて、そのざっくりした歴史と人工知能分野に流入した資金との関係について書いたものがあります。単著では、人工知能前夜、これは私の博士論文をもとにしたもので、主にArtificial Intelligenceという言葉が出てくるまでに何があったか、ということについて論じたものです。これは↓
  3. 先ほど申し上げたように、そもそもこのpptのテンプレートからしてそうなんですけど、なぜこういうイメージ、回路で脳を作る、コンピュータと脳をなぞらえるようなイメージが当たり前になっているのか? なぜコンピュータと脳は似ていることになっているのか?ということについて、その歴史的経緯を主に理論史的アプローチで書いたものになります。具体的には↓
  4. (読む) ということを調べて、本の中で論じてきました。今日はその内容を部分的に踏まえてお話ししたいと思います。 私は歴史学者なので、基本的に古い話が多いのですけれども、あらかじめ申し上げますと、今日触れたいとは主にこういう内容になります ↓
  5. 「人間がするような自律的な動作・作業や推論を機械にさせる」とき、その機械を脳になぞらえるというのは昨日今日のことではなく、20世紀前半から、歴史的に色々な事例がありました。とりわけ、1930年代から40年代に高速計算機が登場したとき、たとえば「その機械がある種の推論をするから」あとか、「その機械の部品の構造が脳に似ているように思われるから」(ちなみに脳のシナプスやニューロンについても20世紀前半に理解が進み始めたのですが)といったさまざまな理由で、コンピュータを脳になぞらえるということが行われました。それは専門的レベルでもそうだし、大衆的なパブリックイメージでもそうでした。 専門的な議論でいくと、1940年代の米国で盛り上がった「サイバネティクス」という学際研究の推進運動があり、それがコンピュータと脳を結びつける点で重要な役割を果たしました。このサイバネティクスは、当時出始めだった電子コンピュータ関係の研究だけでなく、今でいうところのロボティクスや、義肢の研究なども含んでおり、分野の広がりとしても現在のAI研究の在り方に影響を与えていると考えられます。 また、「電子頭脳」や「機械頭脳」あるいは「人工頭脳」というコンピュータのイメージがかなり強固で、それは科学雑誌やニュース記事、そしてフィクション作品にもみることができます。 いま現在でも大衆レベルではコンピュータがすることを何も考えずにぜんぶ人工知能と呼んだりすることが現象としてあるわけですが、このことと、歴史的にコンピュータが、AIとは関係のないところでも、「電子頭脳」や「機械頭脳」あるいは「人工頭脳」と呼ばれてきたことは地続きであるように思われます。またフィクションがAIのイメージを牽引し、自己成就予言のように研究の方向性を引っ張っている部分もあるように見受けられる。 ひとつ、こういった現象を考えるときに留意せねばならないのは、これはコンピューティング史全般でいえることなのですが、1940年代から60年代までの情報処理技術はアメリカが先導していたということです(70年代以降は必ずしもそうとはいえないというのが最近の研究のトレンド)。つまりは、ちょうど人工知能研究のディシプリンというかアジェンダが定まるころまでは少なくとも完全にアメリカ主導であったということです、すなわち研究の文化的背景も欧米、とりわけ米国の影響が色濃いと考えられます。ただ、日本に関して言えば、日本ではアニメや漫画をはじめとした国内のフィクション作品の文化的インパクトが強く、それがAIイメージにかなり影響を与えていることが考えられます。これは、AIといえば軍事的な含みが伴う米国との大きな差であると思われるのですが、今日は時間的にそこまでは論じられないだろうと思われます。 ということで、ここで先に結論を申し上げましたので、残りの時間で具体的なことをざっと見ていきたいと思います ↓
  6. 質問に答える機械の頭とか、推論をするロボットとか、そういうものは歴史をどんどんさかのぼっていけば確かにいろいろあります。何でもかんでもそういうものに源流を求めるのは、実際の理論的な影響関係を考えてもいかがなものかと私は思うのですが、20世紀に入ってからの、欧米での論考の枕とかによく出てくるモチーフというのは確かにあります。たとえば、このBrazen Headというのは、直訳すると金属の真鍮の頭、という意味ですけれども、これは近世によく語られていた自動機械の伝説でして、魔術にたけた中世の学者、よくいわれるのはロジャー・ベーコンが、どんな質問にも「はい」か「いいえ」で正確な答えを返してくる金属の頭をもっていた、というそういう伝説です。これは結構有名な伝説で、19世紀とか、20世紀になってからもフィクション作品などでよく引き合いに出されたりしました。他には、考える機械のフィクションで有名どころといえば↓ A woodblock engraving of Miles playing the tambour while friars Bacon and Bungay sleep and the Brazen Head speaks "Time Is. Time Was. Time Is Past." From the 1630 edition of Robert Greene's The Honorable Historie of Frier Bacon, and Frier Bongay.
  7. 皆さんご存知の、チャペックのRURのロボットとか、オズの魔法使いに出てくるゼンマイ仕掛けのティックトックなどかと思われます。これらはいずれも20世紀初頭、オズは厳密には19世紀ですけれども、20世紀初頭のフィクションです。人口に膾炙した現代的フィクションでは古いものと言っていいと思います。これらはいずれもコンピュータが登場するまえの、フィクションでのロボット・考える機械ですが、これらには脳と構造が似ているとか、人間の神経系を模して作ったとか、そういう話はとくに出てきません。 さて、現実世界に目を向けますと ↓ A scene from R.U.R., showing three robots. http://www.umich.edu/~engb415/literature/pontee/RUR/RURsmry.html (via ar:ملف:Capek_play.jpg and en:Image:Capek play.jpg) This image is from one of the original books in the Oz book series (not sure which) by L. Frank Baum, all of which have entered the public domain. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tiktok.png
  8. 20世紀前半の、1920年代30年代くらいにまでさかのぼると、当時開発された複雑で新しい機械を科学雑誌で紹介するときに、それをBrainという比喩で呼ぶ、というものがしばしば登場するようになってきます。 たとえば左側は1928年のモダンメカニクスに掲載された記事で、これは19世紀にウィリアム・トムソン(ロード・ケルビン)が発明した潮候推算機、これは歯車と滑車などを組み合わせて、港湾の潮位を予測したグラフを出力するアナログ計算機なのですが、その機械に関する紹介記事です。Brass Brain 真鍮の脳 というのは、2つまえのスライドで紹介したBrazen Head 真鍮の頭 をひいた表現だと考えられます。金属でできた、複雑で、答えを返す機械というわけです。 右側は1940年の記事で、火器管制装置、これはフィードバック機構を用いたものなんですが、それをmechanical brain 機械の脳 と呼んでいる事例です。↓ “BRASS BRAIN Saves U. S. $125,000 Yearly”, Modern Mechanix, November 1928, p.96. Gunners, Popular Science, August 1940, p.83.
  9. 同様にElectric Brain, Mechanical Brain, すなわち電気頭脳とか機械頭脳とよく形容されていた機械に、MITの微分解析機があります。これは、MITのバネバー・ブッシュが開発していたもので、よく新聞や雑誌に複雑で大きな機械が常微分方程式を解く、というような記事で取り上げられていたのですが、そこでこういった表現が用いられていました。 これらはいずれも、デジタル電子コンピュータが登場する前の話です。1940年代後半に、電子部品(当時は真空管ですが)を用いたデジタルコンピュータが登場し、さらにそれが1950年代に商品として商用化され、それらが雑誌や新聞で取り上げられるようになると、その紹介記事でコンピュータが脳といわれるようになります↓
  10. 左が、戦時中に陸軍とペンシルヴァニア大学が開発していたENIACを戦後に紹介した記事です。脳のイラストが描かれていて、タイトルがThe Army Brain、記事の冒頭が A Giant “thinking machine“ able to apply electronic speeds for the first time to mathematical tasks too difficult for previous solution, is now in use by the US Army となっています。 真ん中はRamo-Wooldridgeの広告で、Giant Brains for business and industry? と書かれていて、人間の脳のところにメインフレームがおいてあります。 右側は1957年のRadio & Television Newsの記事で、Behind the Giant Brainsというタイトルで、IBMのメインフレームを紹介しています。 この、よく出てくるGiant Brainsという表現ですが、これは当時かなり売れた本がありまして、それが↓ Behind the Giant Brain, Radio & Television News, January 1957, p.57. “The ARMY BRAIN”, Mechanix Illustrated, June 1946, p.59.
  11. Giant Brains, or Machines That Thinkという、エドモンド・バークリーによる本です。著者のバークリーは、チューリング賞を出しているACMを作った人の一人で、本人は保険会社に勤めていてエンジニアではない、というかなり変わった人なのですが、この本は電気電子計算機に関する書籍では最初期のもののひとつで、当時の高速計算機(それは、電気機械式も電子式も含めてですが)について、かなり詳しくわかりやすく書かれている啓蒙書です。彼はコンピュータを Giant Brainだと呼ぶのですが、彼の場合それには明白な理由があります。それは、コンピュータはlogic, とりわけsymbolic logicを扱えるから、reasoning、推論ができるから、というんですね。彼がそのように考えるようになった理由については、それだけで1時間くらい喋れるのでここでは割愛しますが、1949年から10年のあいだに15000部以上も売れたこの本が、Giant Brainとしてのコンピュータというイメージ形成に一定の役割を果たしただろうことは想像できます。 とはいえ、バークリーは、脳のシナプスとかニューロンのふるまいが、コンピュータに似てるとか、そういうことはあまり言わないんですね。そういうことを言い出したのは、さきにのべたサイバネティクスが端緒となろうかと思います ↓ “Computers” described in the book: Simon, IBM Punch-card Machine, Differential Analyzer at MIT, Harvard Mark I, ENIAC, Complex Number Calculator, Kalin-Burkhart Logical-Truth Calculator 1949年から1958年の間に15,000部以上、1960年以降ペーパーバック版が6,800部以上売れた
  12. これもここではざっくりとした紹介になりますが サイバネティクスというのは、1943年に数学者ノーバート・ウィーナーが、共同研究者といっしょに、機械と動物がある条件下でおなじような行動や現象を起こすということを根拠に、ある種の機械と動物は「フィードバック」という同じメカニズムを持っているのではないかという仮説を提示したことがきっかけで始まった、学際研究運動です。ようは、フィードバックをもつ機械と、フィードバックメカニズムのある動物に注目しながら、工学と生物学両方にまたがる学際研究をすれば色々なことがわかるのではないかと考えて、こういったテーマに関心のある研究者たちを集めて、研究会のシリーズを開催して、研究領域を打ち立てようとしたんですね。それをウィーナーがサイバネティクスと名付けたということです。 当時サイバネティクス運動に参加した研究者たちには、ミクロレベルの神経回路に注目しそれを離散的にモデル化して、機械(具体的にはコンピュータの回路)とのアナロジーを考えて研究していきたい研究者たちと、神経と筋肉・感覚器官のフィードバックやアナログなデータを扱って、それを模した機械(これは自動でうごくロボットみたいんものになりますが)それを作ってアナロジーを考えて研究していきたい研究者たちの両方がいました。 前者の代表がフォン・ノイマンで、彼の研究はコンピュータと脳のアナロジーの源流となっています。 後者の代表がアシュビーやウォルターで、彼らは自律的に動き回る小さなロボットを製作しています ↓ 1945年 ウィーナー、フォン・ノイマン、エイケン主催 目的論学会  高速計算器開発に従事していた研究者の参加 「通信工学, 計算機工学, 制御工学, 統計学における時系列の数学, 神経系における通信と制御の側面」 「我々の興味の大部分は, 一方で目的が人間と動物の行為においてどのように実現されるのか, 他方で目的が機械的そして電気的手段によってどのように模倣されるのかを研究することに割かれる」
  13. 左がアシュビーのホメオスタット これは脳の働きのなかでも、刺激に反応して恒常性の保持をするという振舞いを模した装置を作ったというもの 右がウォルターのトータス(亀)で、障害物とか光とかに反応して動き、電圧が低くなってくると光センサーに導かれて充電装置のところに戻るという、ルンバの先祖みたいなやつ サイバネティクス関係の研究者たちは、こういう研究をしていたんです。その他にも、少し関連するところでいうと↓ Allison Marsh, "Meet the Roomba’s Ancestor: The Cybernetic Tortoise," IEEE Spectrum, 28 Feb. 2020. https://spectrum.ieee.org/meet-roombas-ancestor-cybernetic-tortoise
  14. 情報理論で有名なクロード・シャノンはチェスが好きで、機械にチェスをやらせるという研究を(たぶん楽しみで)していて、論考も書いています。マッカーシーやミンスキーのの世代は、このシャノンとかフォン・ノイマンとかからの直接の影響を受けていますので、AIのアジェンダの成立に、こういった前世代の研究者たちの在り方というのが関わっていると考えられます。 この辺は、研究者コミュニティ内部の、インサイダーな歴史ということになるわけですが、コンピュータと頭脳のイメージはその後もずっと強固で、当時のコンピュータの能力からしてそこまで目立った成果がのぞめないなか、フィクション作品のなかで継続的に描写がされ続けて、それが大衆のコンピュータやAIイメージを作っていくことになるのは、ご承知のとおりです。↓
  15. たとえばこの辺の作品たちなんかが代表例ですが:欧米では 2001年宇宙の旅 1968 コロッサス:ザ・フォービン・プロジェクト 1970 ニューロマンサー 1984 とか。時間が来ているのでここで切り上げますが↓ https://en.wikipedia.org/wiki/File:2001_A_Space_Odyssey_(1968).png https://en.wikipedia.org/wiki/File:Neuromancer_(Book).jpg
  16. ともあれ、AIと脳、コンピュータと脳の関係とそのイメージというのは、1956年のAIのアジェンダ成立以降の話では必ずしもないということです。それより前から、考える機械、推論する機械というイメージがあり、さらには理論的な発展を見ても人工知能という言葉ができる前から、機械と脳は似ているのではないか仮説というのがあって、その仮説にたった研究がなされていていた、1950年代のAI研究の始まりは、そういうルートの上にあったということになろうかと思います。 ここから話の広がりはいろいろあると思いますが、まずはここで終えたいと思います。ありがとうございました。(終) Message: 「人間がするような自律的な動作・作業や推論を機械にさせる」とき、その機械を脳になぞらえるということは歴史的に色々な事例があった 高速計算機が登場したとき、「それが推論をするから」「その部品の構造が脳に似ているように思われるから」といったさまざまな理由で、コンピュータを脳になぞらえた。それは専門的レベルでもそうだし、大衆的なパブリックイメージでもそうであった。 コンピュータが「電子頭脳」「機械頭脳」「人工頭脳」と呼ばれてきたことと、大衆レベルでコンピュータがするような仕事をぜんぶ人工知能と呼んだりすることは地続きであるように思われる。 またフィクションや伝説がAIのイメージを牽引し、自己成就予言のように研究の方向性を引っ張っている部分があるように見受けられる。 また、コンピューティング史全般でいえることだが、1940年代から60年代までの情報処理技術はアメリカが先導しており(70年代以降は必ずしもそうとはいえないというのが最近の研究のトレンド)、つまりはちょうど人工知能研究のディシプリンというかアジェンダが定まるころまでは少なくとも完全にアメリカ主導であって、つまりは研究の文化的背景も欧米、とりわけ米国の影響が色濃いと考えられる。