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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
教育を変革するアカデミック・コーチング draft v.2 
- 21世紀の教育OSへの挑戦 - 
菅原 秀幸 
(北海学園大学教授、国際経営学者、アカデミック・コーチ) 
【Executive Summary】 
ティーチング主体型の教育は、時代の変化に適応できず限界に達している。ティーチング(教え込む) 一辺倒ではなく、コーチング(引き出す)とティーチングの融合型教育が、21世紀の主流になる。そこ で、20世紀の古い教育OSを21世紀の新しい教育OSに入れ替える必要がある。その理論的支柱がア カデミック・コーチングだ。しかし現状のコーチングには、理論も体系もない。そこで、理論化、体系 化、標準化された「アカデミック・コーチング学」の確立が求められている。これによって、教育のカ ギを握る教師の心構え(mindset)に変革を起こし、学生、教師、社会の3者がハッピーになれる新しい 教育実現への一歩を踏み出す。 
【Content】 
1.絶滅する今の教室 
2.教育OSの入れ替え 
3.コーチングとティーチングの融合が21世紀の教育OS 
4.コーチング界の現状は胡散臭い 
5.胡散臭いコーチング教からアカデミックなコーチング学へ 
6.アカデミック・コーチは未来創りの伴走者 
【Key Words】 
21世紀の教育OS、アカデミック・コーチング、心構え(mindset)の変革 
理論化・体系化・標準化、 
1.絶滅する今の教室 
10年後の教室の光景をイメージしてみましょう。いまと変わらず、一人の先生が壇上から、時間いっぱ いしゃべりまくって、学生はひたすら我慢。時に睡魔と闘いながら耐える。このような光景が、今と変わ らず続いているのでしょうか? 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
学生から厳しい声が、大学の授業に向けられています。これらの声は、教師の耳にはなかなか直接、届く ことはないかもしれません。なぜなら、学生たちは割り切ってしまっているからです。忍耐と引き換えに 単位を手に入れるのだと。 
経営学には、「顧客の声に耳をかたむけない企業は滅びる」という原則があります。同じことが、大学に も言えるのではないしょうか。「学生の声に耳をかたむけない大学は滅びる」と。自然界の大法則は厳然 としています。「環境変化に適応できない種は絶滅する」 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
文部科学省はすでに気づいており、中央教育審議会は「大学教育の質的転換はまったなし」「具体的な行 動を直ちに」と迫ります。しかし、「具体的な行動」の向かう先を明確に示してはいません。こちろん、 どの大学も生き残りをかけて必死の努力を重ねています。アクティブ・ラーニングが多彩に試みられて います。それらの優れた取り組みが、一冊の本となって、まとめられてもいます。 
これらの試みは、いずれも素晴らしく、多くの示唆に富んでいます。しかし、何かが欠けているように感 じられます。なんでしょうか? 一つ一つのプロジェクト、プログラムは完成度が高い。しかし汎用性が ないために、他大学への横の展開がむずかしいのです。つまり、やる気のある教職員がいたり、予算がつ いたりと、ある特定の条件がそろった時にのみ実現できるものなのです。これら個々の取り組みは、例え て言うならば、アプリ開発のようなものです。かつては高性能であっても今では古ぼけているOS上で動 くアプリです。私たちは、そのアプリ開発が目標ではありません。アプリの基盤となっているOSの新規 開発にあります。 
2.教育OSの入れ替え 
20世紀の古い教育OSの柱は、「teaching=教え込む」です。この20世紀のOS上で動くアプリ開発で は限界があります。21世紀の新しい教育OSの中核は、「coaching=引き出す」です。この新しい教育OS 上で動く、新しいアプリ開発が求められているのです。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
アプリ開発ではなく、新しい教育OSの開発。これが、アカデミック・コーチングの挑戦です。新しい教 育OSに入れ替わった世界を想像してみましょう。「画一化、教え込む、答えは一つ」という20世紀の 教育OSから、「多様化、引き出す、答えは多様」という21世紀の教育OSへのシフトによって、若者が 輝きを放ちます。 
現在の画一的な教育についていけない子供たちは、「おちこぼれ」や「ひきこもり」のレッテルを貼られ て、おいていかれます。これは、その子たちに問題があるのでなく、その子たちの可能性を引き出すこと の出来ない教育にこそ、問題があるのではないでしょうか。新しい教育OSは、このような課題に挑戦 し、輝く子供を育みます。画一的な教育からはみ出す子供たちこそ、イノベーションの宝庫です。 
では、コーチングを主体とする新しい教育OSとは、どのようなものでしょうか?アカデミック・コーチ ングの定義をご紹介いたしましょう。「人が本来もっている能力を引き出し、可能性を最大限に開花させ ることを目的とする、標準化された理論的なコミュニケーションの体系」です。研究者(大学の教授陣) と実践者(プロコーチ陣)がタッグを組んで創り出しました。狭義には、大学を中心に教育の現場で活用 されるコーチングであり、広義では、だれもが日常的に活用することのできる理論的、体系的、標準的で、 特別なトレーニングを必要としないコーチングです。コーチングは、プロ・コーチにしか出来ないもので はないのです。 
理論化、体系化、標準化されたコーチング。それが21世紀の教育OS、アカデミック・コーチングです。 20世紀の古い教育OS(教え込む)から、21世紀の新しい教育OS(引き出す)への転換で、大学教 育に変革をおこし、イノベーティブな若者をグローバル世界に送り出します。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
では具体的に、大学ではどのようにアカデミック・コーチングが活用されるのでしょうか?3つのシー ンが想定されます。教師が学生に使う、職員が学生に使う、学生同士がお互いに使う、という3つです。 
まず教師の活用方法ついて考えてみましょう。教師がアカデミック・コーチングを活用するシーンは2 つです。①授業で使う、②学生との個別のコミュニケーションで使う、です。授業で使うと、多方向のコ ミュニケーションが生まれ、教室が切磋琢磨の場に変わります。白熱教室で有名になったハーバード大 学の先生も、教室で双方向を実現しているに過ぎず、多方向には至っていないのです。 
アカデミック・コーチングは、個別の対応でも力を発揮します。どの教師も親身になって学生と向き合 っているはずです。しかし、それはきわめて属人的であって、教師間で共有されることもなく、伝承さ れることもありません。授業の仕方においても、学生への個別対応においても、教師個人の試行錯誤に よる経験則の域をでなかったのです。教師個人の資質とセンスに大きく依存し、教師間でのばらつきは 大きいでしょう。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
アカデミック・コーチングという共通の教育OSを利用することで、経験則の域を超えて、自分流の枠組 みを超えて、共有と蓄積が可能になります。学生はもちろんのこと、教師も学ぶことが多くなります。私 自身、アカデミック・コーチングを授業で活用することで、自分の研究への新しい着想も得られていま す。学生も教師も共に成長できるのが、アカデミック・コーチングです。 
インターネットの普及によって、教師はもはや「壇上の賢人」ではなくなりました。教師のもっている情 報・知識以上を、ネットから手に入れられるのです。人工知能の発達によって、あと数年で東大の入試問 題も突破されるそうです。こうなると、これまでとは異なる「脳力」が求められるようになります。デジ タル化できるものは、すべて人間の手から離れ、コンピューターに任されるようになるでしょう。これ は、良い悪いではなく必然の流れだということです。代表的な例が、MOOC(インターネットを通じた 大規模公開オンライン講義)です。ティーチングは、ますますデジタルに取って代わられるのです。 
3.コーチングとティーチングの融合が21世紀の教育OS 
では、大学教育に求められるものは何か? 教師の役割は何でしょう? デジタル化できることを教え ることではありません。「答えのある問題を解く能力」を鍛えることではなく、「答えのない問題を解く能 力」を鍛えることでしょう。これが、まさに今、グローバル社会のから求められている需要です。大学が これまで提供してきた供給とのミスマッチが生じています。このミスマッチな状態がはたしていつまで 続くのでしょうか?私は、こんなミスマッチを続ける大学で、自分の子供を学ばせたくはありません。私 の愛する学生についても同じです。ご両親が高い授業料を工面して、どれほどの期待をかけて自分の子 供を大学に行かせているのか?その思いを知るとき、大学人として申し訳ない思いで一杯です。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
ビジネスの世界では、お客様が買った商品に満足がいかなければ、100%返金です。大学も、そうある べきだと私は思います。自分の子供がそういう状況ならば、私は大学に返金を求めたいと思うのです。ビ ジネスの世界で当然のこと、つまり常識が、大学では非常識なのです。世間の常識が通じる大学にしたい と思います。 
こんなミスマッチを、いつまで続けるのでしょうか? いまの小学生が、現在存在しない職業につく比 率は6割を超えるとの予測もあります。このような中で、いまある知識、教師がもっている知識のみを 教え続ける現在の教育を、いつまで続けるのでしょうか? 教育は未来です。このミスマッチが続くと、 もともと素晴らしい資質をもって生まれてきている日本人の若者は、グローバル社会で10年後、20年 後どうなっているでしょう?いま新しい教育OSに入れ替えをしなければ、どんな未来が想像できるで しょう? 
もう少しアカデミック・コーチングを具体的に考えてみましょう。もちろんコーチングは万能ではあり ません。ティーチングは不可欠です。カギは、コーチングとティーチングの融合にあります。ティーチン グ一辺倒には限界があります。コーチングとティーチングの両方が必要なのです。これが21世紀の教育 基盤、すなわち教育OSです。 
現実に目を向けると、小学校一年生から大学生四年生に至るまで、ティーチング100%の授業が多くを占 めています。学年にあわせた、あるいは科目、内容にそった、コーチングとティーチングの比率があるの です。私自身、今日の授業はコーチング何%、ティーチング何%でいこうと意識して、その日の授業展開 を組み立てています。人は「教えられたことは忘れる。自ら学んだことは覚える」のです。自ら学ばせる のが、コーチングです。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
就職活動に本格的に入る前の3年生との個別面談が、毎年、秋にあります。従来は自分の経験則だけで、 おこなってきました。アカデミック・コーチングの基本体系を意識して面談することで、学生が「すっき りしました」といって帰ってくれるようになりました。それ以外にも、自分探しをしている学生が、一年 を通して訪ねてきます。この場合にも、アカデミック・コーチングの基本体系を頭にいれておくと、とて も役立ちます。アカデミック・コーチングでは、教師と学生が、お互いに学びあい成長することが出来ま す。 
4.コーチング界の現状は胡散臭い 
ここから少し、日本のコーチング界の現状について、お話しましょう。簡潔に表現しますと、「玉石混交、 百家争鳴、群雄割拠」というのが日本のコーチング界です。20以上のコーチ養成機関があり、それぞれ が認定コーチを出しています。お互いに競争相手ですから、差別化するために、オリジナリティを競い合 い切磋琢磨すること自体は良いことです。そこから新しい手法が生み出され、日本のコーチングのレベ ルも上がっています。一方で、弊害もあります。差別化のために新しい言葉が作り出され、それが次々と 商標登録されてきました。その商標登録を避けるために、また新しい言葉が作り出され、次々と新語が生 み出されるのです。こうしてコーチング界の外にいる素人には、簡単には理解できない状況になってい ます。こんな現状に対して、素朴な疑問が次々とわきあがります。一般人からみると、コーチングは自己 啓発の一種であり胡散臭いというイメージをもってしまうのです。 
これらの多くの疑問に対して、答えを見つけ出そうと始めたのが、私の第一歩です。そして、それらの疑 問すべてに応えることのできるコーチングを、「アカデミック・コーチング」として確立しようと考えた のです。 8
菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
国際経営学者の私は、2005年頃に米国企業の経営者を調べていました。すると驚いたことに、ほとんど のCEO、経営陣にコーチがついていたのです。もっともコスト・パフォーマンスにシビアな、これらの 人たちが、高額な報酬を支払ってコーチをつけている。この事実は、コーチングの効果を客観的に示すも のではないでしょうか。そこで、それほど効果のあるコーチングなら、当然、すでに大学にも導入されて 活用されているだろうと考えました。ところが、かなり調べても、大学での活用事例を見つけることは出 来なかったのです。 
なぜだろう?まだまだ調べたりないから、見つけられないのだと思うのは当然です。ネットで調べて、か たっぱしからプロコーチに電話をかけました。それでも、大学でのコーチング活用事例を見つけられま せんでした。行き着いた理由は、「コーチングは胡散臭い」という大学人の声でした。 
ビジネスの最前線で、これほど浸透しているコーチングが、なぜ大学界では、「胡散臭い」のレッテルを 貼られ、見向きもされないのか。私がたどり着いた結論は、「コーチングは学問ではないから。コーチン グはサイエンスではないから」です。どのプロコーチに質問しても、「コーチングに理論はない」との返 答。しかし大学で活用するためには、理論と体系が不可欠であり、効果が実証されていなかればなりませ ん。例えていうならば、民間療法と、大学病院で提供される医療との違いです。ここを克服するのが、ア カデミック・コーチング論の挑戦です。理論と体系がなければ作ればいい。効果が分からなければ測定す ればいい。こうしてアカデミック・コーチング研究会は、2013年に原口佳典プロコーチと松島桂樹武蔵 大学教授と3人で、ほそぼそとスタートしました。 9
菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
5.胡散臭いコーチング教からアカデミックなコーチング学へ 
現時点では、「心理学×経営学×システム・デザイン思考×脳科学=アカデミック・コーチング論」とし て確立できるとの仮説をもつに至りました。第2ステージでは、この仮説を実証します。応用科学として のアカデミック・コーチング論が確固たる学問的地位を得るために、アカデミック・コーチング学会を創 設します。コーチングは、コミットメント、言ったもの勝ち、とプロコーチから教わりました。2015年 から、アカデミック・コーチング学会の創設に向かいます。いまのアカデミック・コーチング研究会が、 発展的に解消してアカデミック・コーチング学会へと進化していくのです。 
さらに第3ステージでは、研究の促進と、その研究成果の普及を目的として、アカデミック・コーチング 財団を設立します。これによって研究と普及という両輪がそろい、21世紀の教育OSとして世界に発信 して行く基盤が整います。 10
菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
21世紀の教育OSとして求められるものは3つ。理論化、体系化、標準化です。これが出来るのは、プ ロコーチの協力を得た大学教師しかいません。アカデミック・コーチング論は、未踏の新地平。「言った もん勝ち、やったもん勝ち」です。コーチングでいう「コミットメント」です。 
そこで、私がまず勝手につくってしまった、アカデミック・コーチングの「基本体系3・4・5」を世界 初公開で、ご紹介いたしましょう。シンプルであることが何よりも大切です。伝言ゲームであきらかなよ うに、複雑な表現は3人目には異なって伝わっています。シンプルであること、ポータビリティがある こと、つまり「だれにでも正確に伝わり活用してもらえる」ということが不可欠であり、それが教育OS の必須条件です。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
現在のコーチングの限界をすべて乗り越えるのが、アカデミック・コーチングです。コーチングを分かり にくくしている大きな一つの理由は、カタカナの多様。それと、もう一つは、同じことを述べているにも かかわらず、差別化をねらって異なる表現を使っているということです。そこで、アカデミック・コーチ ングでは、カタカナは使いません、一つの概念には一つの表現を使います。 
コーチングにはざっくりいうと。2大流派があります。その違いを簡潔に言うと、手法(skill)に重きをお くか、心構え(mindset)に重きをおくか、です。どちらかが優れているということではなく、その時の状 況に適したコーチングがあります。 
自分探しをしている学生には、心構え(mindset)重視のコーチング。短期の目標達成には、手法(skill)重視 のコーチングです。コーチにも手法(skill)重視のコーチと、心構え(mindset)重視のコーチがいます。「手 法(skill)に習熟することで、心構え(mindset)はあとからついてくる」という考え方と、「心構え(mindset) が定まれば、手法(skill)はあとからついてくる」という考え方があります。そのどちらかが優れていると いうことではありません。どちらも目指すところは同じ。「人が本来もっている能力を引き出し、可能性 を最大限に開花させること」です。 
アカデミック・コーチングの「基本体系3・4・5」すべてを、今日はご紹介する時間はありません。さ わりだけをお話させていただきます。手法でもっとも基本となるのは、「聴く」です。コーチング用語で は「傾聴」と一般的に言われています。もともとは、カウンセリングの用語です。「聴く」と「聞く」は まったく違います。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
大学の教師は、学生の声を「聴いている」でしょうか、「聞いている」でしょうか?はたして皆様は、ど うでしょう? 以前の自分は、「聞いている」でした。自分が聞きたい声だけを聞き、聞きたくない声は、 はね飛ばしていました。耳と目と心で「聴いて」はいませんでした。なぜか? 一般的に教師の心のあり 方(mindset)には、3つの特徴があるからではないでしょうか? 実際の姿は「実れる賢者」とは正反対 です。しかし、ご本人は自分自身を「実れる賢者」と錯覚してしまっているのです。 
つまり、教師自身が心構え(mindset)を変革しない限り、いくら手法(skill)の開発や習得に努めても、それ ほど大きな成果は望めないのです。これまでと同じ心構えを変えることなく、いくらアクティブ・ラーニ ングを試みても限界があるのです。しかし、教師ほど心構えを変えることが難しい人たちはいないはず です。自分がそうですから。しかし、変えることは出来るのです。 
6.アカデミック・コーチは未来創りの伴走者 
教師がアカデミック・コーチングの心構え(mindset)をもつことで、教師自身も学生も共にハッピーにな れます。アカデミック・コーチングの心構え(mindset)には、4つあります。ここでは、その一つをご紹 介します。「主役は学生。教師は伴走者」とうことです。上から目線の指導者では、決してないのです。 13
菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
吉田松陰が主宰した松下村塾の教育方針の一つは、塾長の松陰と門下生は共に学びあう仲間であり、松 下村塾は切磋琢磨の場である、ということです。これこそが、アカデミック・コーチングの本質であり、 学びの原点ともいえるものです。日本には、もともとコーチングの源流があったのです。それが、いつ、 どこで、なぜ消滅してしまい、上から目線の教育(教えて、育てる)が主流になったのかは分かりません。 
今日の大学教育は、どうでしょう? やはり、学生を「教えて、育てる=教育」という心構えが主流です。 主体性と能動的学修姿勢の大切さが声高に叫ばれてはいるものの、教師の心構えが、「教えて、育てる」 である限り、学生は受動的学修姿勢を持ち続けるのは当然でしょう。教師の心構えが「引き出して、伸ば す」に変わらない限り、教育の改革は不可能です。 
つまり日本の教育改革のエッセンスは、大学教師の心構え(mindset)の改革です。主体性・能動性のある 学生に変えようとする以前に、教師が変わらなければならないのではないでしょうか? 自分たちが変 わらずに、学生を変えようというのは、理にかなっていません。まずは、自分が変わることです。 
「教えて、育てる」から「引き出して、伸ばす」への変革です。20世紀の古い教育OS(教え込む)から、 21世紀の新しい教育OS(引き出す)に入れ替えると、新しいOS上で動く新しいアプリが活きてきま す。アプリ開発にどれほど傾注しても、OSが古ければ、その努力は実らないのです。患者の体質を変え なければ、同じ症状が続きます。対処療法ではなく、根本療法が必要です。日本の教育も同じではないで しょうか?現在のアプリ開発は対症療法であり、OSを入れ替えるという根本療法を行わなければ、同じ 症状はこれからも続くでしょう。 
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菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 
SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 
教師は、横にならんで一緒に走る。若者の先導者ではありません。若者の未来創りの伴走者。これがアカ デミック・コーチングのエッセンス。アカデミック・コーチングは、日本の教育を変革します。学生も、 教師も、親もハッピーになれます。そして輝かしい未来が拓けます。 
【謝 辞】 
多くの方々からのご協力をえました。ここに記して感謝申し上げます(敬称略、レディーファースト、順 不同)。 
西垣悦代(関西医科大学教授)、、、、、、、作成中 
菅原秀幸 
北海学園大学 経営学部 
〒062-8605 札幌市豊平区旭町4丁目1番40号 
TEL: 011-841-1161 hideyuki@ba.hokkai-s-u.ac.jp 
http://www.SugawaraOnline.com 
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教育を変革するアカデミック・コーチングー21世紀の教育osの開発

  • 1. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 教育を変革するアカデミック・コーチング draft v.2 - 21世紀の教育OSへの挑戦 - 菅原 秀幸 (北海学園大学教授、国際経営学者、アカデミック・コーチ) 【Executive Summary】 ティーチング主体型の教育は、時代の変化に適応できず限界に達している。ティーチング(教え込む) 一辺倒ではなく、コーチング(引き出す)とティーチングの融合型教育が、21世紀の主流になる。そこ で、20世紀の古い教育OSを21世紀の新しい教育OSに入れ替える必要がある。その理論的支柱がア カデミック・コーチングだ。しかし現状のコーチングには、理論も体系もない。そこで、理論化、体系 化、標準化された「アカデミック・コーチング学」の確立が求められている。これによって、教育のカ ギを握る教師の心構え(mindset)に変革を起こし、学生、教師、社会の3者がハッピーになれる新しい 教育実現への一歩を踏み出す。 【Content】 1.絶滅する今の教室 2.教育OSの入れ替え 3.コーチングとティーチングの融合が21世紀の教育OS 4.コーチング界の現状は胡散臭い 5.胡散臭いコーチング教からアカデミックなコーチング学へ 6.アカデミック・コーチは未来創りの伴走者 【Key Words】 21世紀の教育OS、アカデミック・コーチング、心構え(mindset)の変革 理論化・体系化・標準化、 1.絶滅する今の教室 10年後の教室の光景をイメージしてみましょう。いまと変わらず、一人の先生が壇上から、時間いっぱ いしゃべりまくって、学生はひたすら我慢。時に睡魔と闘いながら耐える。このような光景が、今と変わ らず続いているのでしょうか? 1
  • 2. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 学生から厳しい声が、大学の授業に向けられています。これらの声は、教師の耳にはなかなか直接、届く ことはないかもしれません。なぜなら、学生たちは割り切ってしまっているからです。忍耐と引き換えに 単位を手に入れるのだと。 経営学には、「顧客の声に耳をかたむけない企業は滅びる」という原則があります。同じことが、大学に も言えるのではないしょうか。「学生の声に耳をかたむけない大学は滅びる」と。自然界の大法則は厳然 としています。「環境変化に適応できない種は絶滅する」 2
  • 3. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 文部科学省はすでに気づいており、中央教育審議会は「大学教育の質的転換はまったなし」「具体的な行 動を直ちに」と迫ります。しかし、「具体的な行動」の向かう先を明確に示してはいません。こちろん、 どの大学も生き残りをかけて必死の努力を重ねています。アクティブ・ラーニングが多彩に試みられて います。それらの優れた取り組みが、一冊の本となって、まとめられてもいます。 これらの試みは、いずれも素晴らしく、多くの示唆に富んでいます。しかし、何かが欠けているように感 じられます。なんでしょうか? 一つ一つのプロジェクト、プログラムは完成度が高い。しかし汎用性が ないために、他大学への横の展開がむずかしいのです。つまり、やる気のある教職員がいたり、予算がつ いたりと、ある特定の条件がそろった時にのみ実現できるものなのです。これら個々の取り組みは、例え て言うならば、アプリ開発のようなものです。かつては高性能であっても今では古ぼけているOS上で動 くアプリです。私たちは、そのアプリ開発が目標ではありません。アプリの基盤となっているOSの新規 開発にあります。 2.教育OSの入れ替え 20世紀の古い教育OSの柱は、「teaching=教え込む」です。この20世紀のOS上で動くアプリ開発で は限界があります。21世紀の新しい教育OSの中核は、「coaching=引き出す」です。この新しい教育OS 上で動く、新しいアプリ開発が求められているのです。 3
  • 4. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 アプリ開発ではなく、新しい教育OSの開発。これが、アカデミック・コーチングの挑戦です。新しい教 育OSに入れ替わった世界を想像してみましょう。「画一化、教え込む、答えは一つ」という20世紀の 教育OSから、「多様化、引き出す、答えは多様」という21世紀の教育OSへのシフトによって、若者が 輝きを放ちます。 現在の画一的な教育についていけない子供たちは、「おちこぼれ」や「ひきこもり」のレッテルを貼られ て、おいていかれます。これは、その子たちに問題があるのでなく、その子たちの可能性を引き出すこと の出来ない教育にこそ、問題があるのではないでしょうか。新しい教育OSは、このような課題に挑戦 し、輝く子供を育みます。画一的な教育からはみ出す子供たちこそ、イノベーションの宝庫です。 では、コーチングを主体とする新しい教育OSとは、どのようなものでしょうか?アカデミック・コーチ ングの定義をご紹介いたしましょう。「人が本来もっている能力を引き出し、可能性を最大限に開花させ ることを目的とする、標準化された理論的なコミュニケーションの体系」です。研究者(大学の教授陣) と実践者(プロコーチ陣)がタッグを組んで創り出しました。狭義には、大学を中心に教育の現場で活用 されるコーチングであり、広義では、だれもが日常的に活用することのできる理論的、体系的、標準的で、 特別なトレーニングを必要としないコーチングです。コーチングは、プロ・コーチにしか出来ないもので はないのです。 理論化、体系化、標準化されたコーチング。それが21世紀の教育OS、アカデミック・コーチングです。 20世紀の古い教育OS(教え込む)から、21世紀の新しい教育OS(引き出す)への転換で、大学教 育に変革をおこし、イノベーティブな若者をグローバル世界に送り出します。 4
  • 5. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 では具体的に、大学ではどのようにアカデミック・コーチングが活用されるのでしょうか?3つのシー ンが想定されます。教師が学生に使う、職員が学生に使う、学生同士がお互いに使う、という3つです。 まず教師の活用方法ついて考えてみましょう。教師がアカデミック・コーチングを活用するシーンは2 つです。①授業で使う、②学生との個別のコミュニケーションで使う、です。授業で使うと、多方向のコ ミュニケーションが生まれ、教室が切磋琢磨の場に変わります。白熱教室で有名になったハーバード大 学の先生も、教室で双方向を実現しているに過ぎず、多方向には至っていないのです。 アカデミック・コーチングは、個別の対応でも力を発揮します。どの教師も親身になって学生と向き合 っているはずです。しかし、それはきわめて属人的であって、教師間で共有されることもなく、伝承さ れることもありません。授業の仕方においても、学生への個別対応においても、教師個人の試行錯誤に よる経験則の域をでなかったのです。教師個人の資質とセンスに大きく依存し、教師間でのばらつきは 大きいでしょう。 5
  • 6. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 アカデミック・コーチングという共通の教育OSを利用することで、経験則の域を超えて、自分流の枠組 みを超えて、共有と蓄積が可能になります。学生はもちろんのこと、教師も学ぶことが多くなります。私 自身、アカデミック・コーチングを授業で活用することで、自分の研究への新しい着想も得られていま す。学生も教師も共に成長できるのが、アカデミック・コーチングです。 インターネットの普及によって、教師はもはや「壇上の賢人」ではなくなりました。教師のもっている情 報・知識以上を、ネットから手に入れられるのです。人工知能の発達によって、あと数年で東大の入試問 題も突破されるそうです。こうなると、これまでとは異なる「脳力」が求められるようになります。デジ タル化できるものは、すべて人間の手から離れ、コンピューターに任されるようになるでしょう。これ は、良い悪いではなく必然の流れだということです。代表的な例が、MOOC(インターネットを通じた 大規模公開オンライン講義)です。ティーチングは、ますますデジタルに取って代わられるのです。 3.コーチングとティーチングの融合が21世紀の教育OS では、大学教育に求められるものは何か? 教師の役割は何でしょう? デジタル化できることを教え ることではありません。「答えのある問題を解く能力」を鍛えることではなく、「答えのない問題を解く能 力」を鍛えることでしょう。これが、まさに今、グローバル社会のから求められている需要です。大学が これまで提供してきた供給とのミスマッチが生じています。このミスマッチな状態がはたしていつまで 続くのでしょうか?私は、こんなミスマッチを続ける大学で、自分の子供を学ばせたくはありません。私 の愛する学生についても同じです。ご両親が高い授業料を工面して、どれほどの期待をかけて自分の子 供を大学に行かせているのか?その思いを知るとき、大学人として申し訳ない思いで一杯です。 6
  • 7. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 ビジネスの世界では、お客様が買った商品に満足がいかなければ、100%返金です。大学も、そうある べきだと私は思います。自分の子供がそういう状況ならば、私は大学に返金を求めたいと思うのです。ビ ジネスの世界で当然のこと、つまり常識が、大学では非常識なのです。世間の常識が通じる大学にしたい と思います。 こんなミスマッチを、いつまで続けるのでしょうか? いまの小学生が、現在存在しない職業につく比 率は6割を超えるとの予測もあります。このような中で、いまある知識、教師がもっている知識のみを 教え続ける現在の教育を、いつまで続けるのでしょうか? 教育は未来です。このミスマッチが続くと、 もともと素晴らしい資質をもって生まれてきている日本人の若者は、グローバル社会で10年後、20年 後どうなっているでしょう?いま新しい教育OSに入れ替えをしなければ、どんな未来が想像できるで しょう? もう少しアカデミック・コーチングを具体的に考えてみましょう。もちろんコーチングは万能ではあり ません。ティーチングは不可欠です。カギは、コーチングとティーチングの融合にあります。ティーチン グ一辺倒には限界があります。コーチングとティーチングの両方が必要なのです。これが21世紀の教育 基盤、すなわち教育OSです。 現実に目を向けると、小学校一年生から大学生四年生に至るまで、ティーチング100%の授業が多くを占 めています。学年にあわせた、あるいは科目、内容にそった、コーチングとティーチングの比率があるの です。私自身、今日の授業はコーチング何%、ティーチング何%でいこうと意識して、その日の授業展開 を組み立てています。人は「教えられたことは忘れる。自ら学んだことは覚える」のです。自ら学ばせる のが、コーチングです。 7
  • 8. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 就職活動に本格的に入る前の3年生との個別面談が、毎年、秋にあります。従来は自分の経験則だけで、 おこなってきました。アカデミック・コーチングの基本体系を意識して面談することで、学生が「すっき りしました」といって帰ってくれるようになりました。それ以外にも、自分探しをしている学生が、一年 を通して訪ねてきます。この場合にも、アカデミック・コーチングの基本体系を頭にいれておくと、とて も役立ちます。アカデミック・コーチングでは、教師と学生が、お互いに学びあい成長することが出来ま す。 4.コーチング界の現状は胡散臭い ここから少し、日本のコーチング界の現状について、お話しましょう。簡潔に表現しますと、「玉石混交、 百家争鳴、群雄割拠」というのが日本のコーチング界です。20以上のコーチ養成機関があり、それぞれ が認定コーチを出しています。お互いに競争相手ですから、差別化するために、オリジナリティを競い合 い切磋琢磨すること自体は良いことです。そこから新しい手法が生み出され、日本のコーチングのレベ ルも上がっています。一方で、弊害もあります。差別化のために新しい言葉が作り出され、それが次々と 商標登録されてきました。その商標登録を避けるために、また新しい言葉が作り出され、次々と新語が生 み出されるのです。こうしてコーチング界の外にいる素人には、簡単には理解できない状況になってい ます。こんな現状に対して、素朴な疑問が次々とわきあがります。一般人からみると、コーチングは自己 啓発の一種であり胡散臭いというイメージをもってしまうのです。 これらの多くの疑問に対して、答えを見つけ出そうと始めたのが、私の第一歩です。そして、それらの疑 問すべてに応えることのできるコーチングを、「アカデミック・コーチング」として確立しようと考えた のです。 8
  • 9. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 国際経営学者の私は、2005年頃に米国企業の経営者を調べていました。すると驚いたことに、ほとんど のCEO、経営陣にコーチがついていたのです。もっともコスト・パフォーマンスにシビアな、これらの 人たちが、高額な報酬を支払ってコーチをつけている。この事実は、コーチングの効果を客観的に示すも のではないでしょうか。そこで、それほど効果のあるコーチングなら、当然、すでに大学にも導入されて 活用されているだろうと考えました。ところが、かなり調べても、大学での活用事例を見つけることは出 来なかったのです。 なぜだろう?まだまだ調べたりないから、見つけられないのだと思うのは当然です。ネットで調べて、か たっぱしからプロコーチに電話をかけました。それでも、大学でのコーチング活用事例を見つけられま せんでした。行き着いた理由は、「コーチングは胡散臭い」という大学人の声でした。 ビジネスの最前線で、これほど浸透しているコーチングが、なぜ大学界では、「胡散臭い」のレッテルを 貼られ、見向きもされないのか。私がたどり着いた結論は、「コーチングは学問ではないから。コーチン グはサイエンスではないから」です。どのプロコーチに質問しても、「コーチングに理論はない」との返 答。しかし大学で活用するためには、理論と体系が不可欠であり、効果が実証されていなかればなりませ ん。例えていうならば、民間療法と、大学病院で提供される医療との違いです。ここを克服するのが、ア カデミック・コーチング論の挑戦です。理論と体系がなければ作ればいい。効果が分からなければ測定す ればいい。こうしてアカデミック・コーチング研究会は、2013年に原口佳典プロコーチと松島桂樹武蔵 大学教授と3人で、ほそぼそとスタートしました。 9
  • 10. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 5.胡散臭いコーチング教からアカデミックなコーチング学へ 現時点では、「心理学×経営学×システム・デザイン思考×脳科学=アカデミック・コーチング論」とし て確立できるとの仮説をもつに至りました。第2ステージでは、この仮説を実証します。応用科学として のアカデミック・コーチング論が確固たる学問的地位を得るために、アカデミック・コーチング学会を創 設します。コーチングは、コミットメント、言ったもの勝ち、とプロコーチから教わりました。2015年 から、アカデミック・コーチング学会の創設に向かいます。いまのアカデミック・コーチング研究会が、 発展的に解消してアカデミック・コーチング学会へと進化していくのです。 さらに第3ステージでは、研究の促進と、その研究成果の普及を目的として、アカデミック・コーチング 財団を設立します。これによって研究と普及という両輪がそろい、21世紀の教育OSとして世界に発信 して行く基盤が整います。 10
  • 11. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 21世紀の教育OSとして求められるものは3つ。理論化、体系化、標準化です。これが出来るのは、プ ロコーチの協力を得た大学教師しかいません。アカデミック・コーチング論は、未踏の新地平。「言った もん勝ち、やったもん勝ち」です。コーチングでいう「コミットメント」です。 そこで、私がまず勝手につくってしまった、アカデミック・コーチングの「基本体系3・4・5」を世界 初公開で、ご紹介いたしましょう。シンプルであることが何よりも大切です。伝言ゲームであきらかなよ うに、複雑な表現は3人目には異なって伝わっています。シンプルであること、ポータビリティがある こと、つまり「だれにでも正確に伝わり活用してもらえる」ということが不可欠であり、それが教育OS の必須条件です。 11
  • 12. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 現在のコーチングの限界をすべて乗り越えるのが、アカデミック・コーチングです。コーチングを分かり にくくしている大きな一つの理由は、カタカナの多様。それと、もう一つは、同じことを述べているにも かかわらず、差別化をねらって異なる表現を使っているということです。そこで、アカデミック・コーチ ングでは、カタカナは使いません、一つの概念には一つの表現を使います。 コーチングにはざっくりいうと。2大流派があります。その違いを簡潔に言うと、手法(skill)に重きをお くか、心構え(mindset)に重きをおくか、です。どちらかが優れているということではなく、その時の状 況に適したコーチングがあります。 自分探しをしている学生には、心構え(mindset)重視のコーチング。短期の目標達成には、手法(skill)重視 のコーチングです。コーチにも手法(skill)重視のコーチと、心構え(mindset)重視のコーチがいます。「手 法(skill)に習熟することで、心構え(mindset)はあとからついてくる」という考え方と、「心構え(mindset) が定まれば、手法(skill)はあとからついてくる」という考え方があります。そのどちらかが優れていると いうことではありません。どちらも目指すところは同じ。「人が本来もっている能力を引き出し、可能性 を最大限に開花させること」です。 アカデミック・コーチングの「基本体系3・4・5」すべてを、今日はご紹介する時間はありません。さ わりだけをお話させていただきます。手法でもっとも基本となるのは、「聴く」です。コーチング用語で は「傾聴」と一般的に言われています。もともとは、カウンセリングの用語です。「聴く」と「聞く」は まったく違います。 12
  • 13. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 大学の教師は、学生の声を「聴いている」でしょうか、「聞いている」でしょうか?はたして皆様は、ど うでしょう? 以前の自分は、「聞いている」でした。自分が聞きたい声だけを聞き、聞きたくない声は、 はね飛ばしていました。耳と目と心で「聴いて」はいませんでした。なぜか? 一般的に教師の心のあり 方(mindset)には、3つの特徴があるからではないでしょうか? 実際の姿は「実れる賢者」とは正反対 です。しかし、ご本人は自分自身を「実れる賢者」と錯覚してしまっているのです。 つまり、教師自身が心構え(mindset)を変革しない限り、いくら手法(skill)の開発や習得に努めても、それ ほど大きな成果は望めないのです。これまでと同じ心構えを変えることなく、いくらアクティブ・ラーニ ングを試みても限界があるのです。しかし、教師ほど心構えを変えることが難しい人たちはいないはず です。自分がそうですから。しかし、変えることは出来るのです。 6.アカデミック・コーチは未来創りの伴走者 教師がアカデミック・コーチングの心構え(mindset)をもつことで、教師自身も学生も共にハッピーにな れます。アカデミック・コーチングの心構え(mindset)には、4つあります。ここでは、その一つをご紹 介します。「主役は学生。教師は伴走者」とうことです。上から目線の指導者では、決してないのです。 13
  • 14. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 吉田松陰が主宰した松下村塾の教育方針の一つは、塾長の松陰と門下生は共に学びあう仲間であり、松 下村塾は切磋琢磨の場である、ということです。これこそが、アカデミック・コーチングの本質であり、 学びの原点ともいえるものです。日本には、もともとコーチングの源流があったのです。それが、いつ、 どこで、なぜ消滅してしまい、上から目線の教育(教えて、育てる)が主流になったのかは分かりません。 今日の大学教育は、どうでしょう? やはり、学生を「教えて、育てる=教育」という心構えが主流です。 主体性と能動的学修姿勢の大切さが声高に叫ばれてはいるものの、教師の心構えが、「教えて、育てる」 である限り、学生は受動的学修姿勢を持ち続けるのは当然でしょう。教師の心構えが「引き出して、伸ば す」に変わらない限り、教育の改革は不可能です。 つまり日本の教育改革のエッセンスは、大学教師の心構え(mindset)の改革です。主体性・能動性のある 学生に変えようとする以前に、教師が変わらなければならないのではないでしょうか? 自分たちが変 わらずに、学生を変えようというのは、理にかなっていません。まずは、自分が変わることです。 「教えて、育てる」から「引き出して、伸ばす」への変革です。20世紀の古い教育OS(教え込む)から、 21世紀の新しい教育OS(引き出す)に入れ替えると、新しいOS上で動く新しいアプリが活きてきま す。アプリ開発にどれほど傾注しても、OSが古ければ、その努力は実らないのです。患者の体質を変え なければ、同じ症状が続きます。対処療法ではなく、根本療法が必要です。日本の教育も同じではないで しょうか?現在のアプリ開発は対症療法であり、OSを入れ替えるという根本療法を行わなければ、同じ 症状はこれからも続くでしょう。 14
  • 15. 菅原 秀幸 第 4 回アカデミック・コーチング研究会 SugawaraOnline.com 2014 年 11 月 26 日 於:北海学園大学 教師は、横にならんで一緒に走る。若者の先導者ではありません。若者の未来創りの伴走者。これがアカ デミック・コーチングのエッセンス。アカデミック・コーチングは、日本の教育を変革します。学生も、 教師も、親もハッピーになれます。そして輝かしい未来が拓けます。 【謝 辞】 多くの方々からのご協力をえました。ここに記して感謝申し上げます(敬称略、レディーファースト、順 不同)。 西垣悦代(関西医科大学教授)、、、、、、、作成中 菅原秀幸 北海学園大学 経営学部 〒062-8605 札幌市豊平区旭町4丁目1番40号 TEL: 011-841-1161 hideyuki@ba.hokkai-s-u.ac.jp http://www.SugawaraOnline.com https://www.facebook.com/SugawaraGoGlobal 15