関羽、単身呉の宴に臨む
- 2. 第 53 集 単刀赴会(関羽、単身で呉の宴に赴く)2009.08.12 更新
―「3 時間で~」第 55 話参照
チャプター① 成都城内。劉備と孔明の前に居並ぶ、元劉璋配下の諸官たち~
チャプター② 荊州返還を要求する孫権の手紙を持ってきた諸葛謹(孔明の兄)に対し、怒ったふりをする
劉備~
チャプター③ 荊州を取りもどせずに呉に戻ってきた諸葛謹に怒る孫権~
チャプター④ 酒宴にやって来た関羽を襲うべく、草むらに潜む呉の兵士たち~
チャプター⑤ あっ気にとられる魯粛を岸に残し、悠然と船に乗って去る関羽~
~船上。後ろをふり返り、ヒゲをしごきながら大笑いする関羽。
この第 53 集は二つのやま場があり、一つは孔明の兄・諸葛謹(ここでは字の子瑜を使う)が、荊州を呉に返
還するよう孔明と劉備に働きかけ、孔明は兄の前では兄の肩をもつよう装い、兄を荊州に行かせ、関羽に
断わらせる戦法をとったこと。
二つ目は、子瑜が荊州を取り戻せなかったため、今度は魯粛が関羽を宴におびき寄せ、殺そうとしたが、
関羽はまんまとその場から抜け出したこと(この第 53 集のタイトルの内容/表紙の画像)である。
実は重要度から言えば、二つ目の方が高いのだが、一つ目の「孔明が兄を騙す演技」の方がずっと見応え
があったため、今回はこちらをとりあげる:
―成都城内―
兵士「申し上げます。呉より諸葛子瑜様がおこしです」
劉備「え、何だって?(耳を疑う) もう一度言ってみろ」(兵士、繰り返す)
劉備「(孔明に向って)兄上が来られたのは何のためだ?」
孔明「(憮然とした様子で)荊州を取り戻すためです」
劉備「えっ、荊州を?(考え込んで)他の者ならともかく、兄上には何と答えたらよいだろう?」
孔明「(やや気を取り直して)劉備殿、先ず私が兄に会って腹を探ってみましょう。それから…(劉備の方
に身をかがめ、扇の陰で何やらささやく。それに対して劉備、ウンウンと頷く)」
―子瑜が泊まっている宿舎―
孔明「(親しげに)兄さん!私の挨拶をお受け下さい(と言いながら拝礼する)」(子瑜、孔明座る)
孔明「(兄の急須を奪い取り、自分で注いであげながら)兄さん、姉さんや甥っ子はお元気ですか?」
子瑜「ウ、ウ、ウ…今にも殺されそうなんだ…ウ、ウ、ウ…(泣く)」
- 3. 嘘泣きをして、弟・孔明を騙そうとする孫
権の名代・子喩
孔明「(少し考え込む。やがてポツリと)兄さん、ここに来られたのは荊州を取り戻すためですね」
子瑜(泣きながら頷く)
孔明「兄上の家族が孫権に監禁されたのなら、私も心配です。でも兄さん、どうかご安心下さい。私が荊
州を返させてみせます」
子瑜「(急に身を乗り出して)本当か?」
孔明「以前から私のために兄上が迷惑されておられましたが…(ちょっと沈んだ調子で)今度は姉上まで苦
しめてしまいましたから…」(喜んで孔明に頭を下げる子瑜。孔明、子瑜の手を握り返す)
―再び、成都城内―
劉備 (子瑜が持ってきた孫権の荊州返還要求の手紙を見て)
「 フン、孫権は自分の妹をわしに嫁がせながら、
わしの留守に連れ帰りよった。この恨みを晴らすため、今直ぐにでも呉を攻めようと考えていたの
に、荊州を返せだと!」
子喩が携えた孫権からの書状を見て、
怒ったフリをする劉備
- 4. 孔明「劉備殿、孫権は兄の家族を人質にとっております。もし荊州をお返しにならなければ、兄の一家が
殺されます(と言いながら泣き崩れる。再び顔を上げ)兄が死ねば私も生きてはおれません。何とぞ
私の顔に免じて荊州をお返し下さい!」(と劉備の前に身を縮めて拝礼する)
劉備の怒ったフリを受け、 兄(子喩)と
「
その家族を救うため、どうか荊州をお返
し下さい」と土下座する孔明
劉備の前で身を縮め、地べたに這いつく
ばっている様子など、なかなかの演技!
劉備「(しばらく考え込んだ後)ウ~ム、
仕方がない。孔明の顔に免じて荊州の半分の三郡を孫権に返すことにしよう」
(喜ぶ子瑜、一歩前に
出て劉備にお礼を言おうとする)
孔明「(お礼を言おうとする兄を制して)劉備殿、それでは早速荊州におられる関羽殿に手紙を書き、三郡
を返すようお申しつけ下さい」(と言い終わると兄に目くばせ)
孔明・子瑜「有難うございます、劉備殿!」
劉備「子瑜殿、荊州に行かれたら関羽には注意されよ。奴は気性が荒く、私も手を焼いている。奴の機嫌
を損ねぬように」 孔明の計略がうまく進行しているが、
( さすがに兄を騙すのに気が咎めたか、孔明、
少し具合悪そうに兄から遠ざかる)
劉備と自分のお芝居に完全に騙されてし
まった兄・子喩(右端)を見て、さすがに
気がとがめ、複雑な表情を浮かべる孔明
(左端)