今後の「マルチメディアデイジー教科書」
普及促進について
文科省「音声教材の需要数調査」結果からの検討
井上 芳郎
埼玉県立坂戸西高等学校
日本デジタル教科書学会大会@青山学院大学
2017/08/19
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通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的
支援を必要とする児童生徒に関する調査(文科省2012年)
• 2012年2月から3月にかけて実施(2002年にもほぼ同趣旨の先行調査あり)。
• 全国(岩手,宮城,福島3県除く)の公立小・中学校の通常の学級に在籍する児童生徒
を母集団とし、小学生約3.4万名、中学生約1.8万名を無作為抽出。回収率97%。
• 「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児
童生徒の困難の状況について、統一様式の質問紙に担任教員が記入し、特別支援
教育コーディネーターまたは教頭(副校長)による確認を経て提出。
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文科大臣宛「マルチメディアイジー教科書提
供についての要望書」 (マルチメディアイジー教科
書製作ネットワーク参加団体一同提出 2016年1月26日)
1. 通常の紙の教科書での学習が困難なすべての児童生徒が、必要とするフォー
マット(形式)で、他の生徒と同時に追加的費用負担なく、確実に入手し使用で
きるための施策を財源措置を含めて講ずること。
2. 発達障害などの読むことに困難を持つ児童生徒のニーズにも対応が可能な、
デイジー教科書(EPUB3版含む)や教材の確保について、各教科書出版社に
対しあらゆる機会をとらえて指導・助言や奨励をすること。
3. 「デジタル版教科書」のアクセシビリティ確保に関する、あらゆる情報提供等に
関して、各教科書出版社と製作ネットワーク参加団体とが協議できる機会を設
けること。
※ 要望書より要望事項の要旨を抜粋した。
3
参議院予算委員会・馳文科大臣の答弁(1)
(2016年3月4日)
• DAISY教材等の音声教材については、障害のある児童及び生
徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律
に基づき教科用特定図書等として年々活用が進んでおります
が、一、まだ教育委員会や学校における理解が十分とは言え
ず、その普及促進が必要であること、二、現在、音声教材は民
間団体等においてボランティアの方々の協力を得るなどして製
作されておりますが、ニーズの高まりとともに製作する教科書
の種類が増える中で民間団体等の負担が増加していること、こ
ういう課題があると考えております。
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参議院予算委員会・馳文科大臣の答弁(2)
(2016年3月4日)
• 音声教材を必要とする児童生徒の利用が更に進むように、一、
民間団体のみならず教科書発行者においても教材の開発が行
われるような環境づくり、二、音声教材を製作する民間団体等
の経済的な負担軽減を図るための支援の充実、三、教育委員
会や学校にDAISY教材等の音声教材の有効性や活用方法等
の周知徹底、こういった観点で積極的に検討してまいりたいと
思います。
• 文部科学省としては、来年度以降、教育委員会を通じてDAISY
教材等の音声教材を必要とする児童生徒数を把握する仕組み
を前向きに検討してまいります。
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文科省「音声教材の需要数調査」(任意調査)
(2016年7月~10月末)
1.調査内容
国立、公立及び私立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程
及び特別支援学校において、平成29年度に使用される検定教科書に対応した音声
教材について、障害によりこれを必要とする児童生徒の数及び音声教材の需要数。
2.対象となる音声教材について
文部科学省の委託事業である「音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研
究」において、以下の受託団体が製作・提供している音声教材。
①「マルチメディアデイジー教科書」公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会
②「Access Reading」東京大学先端科学技術研究センター
③「音声教材BEAM」特定非営利活動法人エッジ
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各団体の製作する音声教材の概要(文科省作成参考資料)
7
音
声
教
材
の
概
要
(文
科
省
作
成
参
考
資
料
)
8
音声教材需要数・教科種目別調査結果(文科省)
(小学校:24,174冊 中学校:7,275冊) 2016年10月末現在
9
音声教材需要数・使用学年別調査結果(文科省)
(小学校:24,174冊 中学校:7,275冊) 2016年10月末現在
※ 複数学年にまたがって使用するものについては、各々按分をして合算してある。
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県名 小学校 中学校 合計 県名 小学校 中学校 合計
北海道 271 53 324 滋賀県 29 19 48
青森県 16 7 23 京都府 70 50 120
岩手県 0 0 0 大阪府 76 8 84
宮城県 36 4 40 兵庫県 181 22 203
秋田県 1 1 2 奈良県 97 33 130
山形県 34 3 37 和歌山県 0 0 0
福島県 0 0 0 鳥取県 56 7 63
茨城県 134 21 155 島根県 74 16 90
栃木県 273 20 293 岡山県 19 0 19
群馬県 27 5 32 広島県 61 9 70
埼玉県 73 3 76 山口県 60 6 66
千葉県 81 2 83 徳島県 15 0 15
東京都 102 49 151 香川県 43 30 73
神奈川県 146 12 158 愛媛県 24 2 26
新潟県 373 34 407 高知県 272 47 319
富山県 38 3 41 福岡県 290 30 320
石川県 12 2 14 佐賀県 20 9 29
福井県 1,538 465 2,003 長崎県 25 0 25
山梨県 20 9 29 熊本県 98 18 116
長野県 174 26 200 大分県 9 1 10
岐阜県 25 10 35 宮崎県 49 25 74
静岡県 64 12 76 鹿児島県 0 0 0
愛知県 130 8 138 沖縄県 89 9 98
三重県 25 4 29 計 5,250 1,094 6,344
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まとめ
• 「読む」又は「書く」に著しい困難(ディスレクシア)をもつ児童生徒の出現
率は2.4%であり、義務教育段階で少なくとも20万人規模以上で存在。
• 合理的配慮の一方策として、デイジー教科書などの効果が確認されて
いるが、製作や提供に関する公的制度や支援体制は未整備状態。
• 2016年にデイジー教科書製作ボラ団体等の要望を受け、文科省により
「音声教材の需要調査」を全国規模で実施。
• 画期的な取り組みだったが、任意調査や趣旨の
不徹底などにより、実態を充分に反映出来てい
ない。今後の継続的な調査に期待したいところ。
• あらゆる機会を捉えて、さらに「啓発」が必要。
• 教科書バリアフリー法などの見直し。 各音声教材利用者
の内訳(2015年度)
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今後の「マルチメディアデイジー教科書」普及促進について -文科省「音声教材の需要数調査」結果からの検討-