More Related Content
More from Toshiya Jitsuzumi
More from Toshiya Jitsuzumi (20)
仮想通貨エコシステム試論(2014/4/16)
- 4. 安価な決済コスト?
• ビットコインの決済はblockchainの相互監視を通じて保証される。
• 相互監視はマイナー集団によって実行され、その報酬の大部分はシニョレッジ (貨幣
発行益)として付与される。
• 円やドルなどの現金が動かないために無料に見えるが、実際には、希薄化コスト(インフ
レコスト)としてビットコイン利用者全体で広く分担
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0
4,000,000
8,000,000
12,000,000
16,000,000
20,000,000
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
累積発行枚数 希薄化度
• 将来的に決済手数料で相互監視
費用が賄われるようになって初
めてコストがビットコイン利用
者に具体的に認識されるように
なる。
• クレジットカードや銀行送金、
他の仮想通貨の決済コストとの
相互競争を通じ均衡水準に収束
• 加えて、10分間程度の時間コス
トおよび決済終了までの価値変
動によるコストが発生
4
- 6. ビットコインシステムのリスク・コスト
• サイバー攻撃への脆弱性
• システム管理主体、市場の番人が明確でないというリスク
• システム改善と整備は世界中に散らばる匿名の技術者
• アルゴリズムに欠陥がみつかった場合に対処可能か?
• 付随システムである取引所運営の不透明性
• 取引機能と保管機能、金融機能の混在
• 不正取引に利用される可能性⇒コイン全体の評価ダウン
• バブルの可能性
• ビットコインの規模の小ささに由来する高いvolatility
• 公式の価値安定化メカニズムの不在
• 法定通貨でないビットコインの保有理由は投機的需要が大半
6
山口浩のSYNODOS論文
(http://synodos.jp/society/75
64)およびMurray Hill Journal
(http://wholekernel.blogspot.j
p/2014/01/blog-post_25.html、
http://wholekernel.blogspot.jp/
2014/02/blog-post_18.html)
を参考に作成
- 7. 需要面から見たビットコインのsustainability
• 小川英治教授(一橋大学商学研究科)の見解(プレジデント 2014/3/17)
• 持続可能性は、交換機能(=決済機能)を十分提供できるか否かに依存。
• 交換機能発揮の前提となるのが、貨幣の一般受容性を人々が認識しているか否か。
• 一般受容性は、取引相手となる他の経済主体がその貨幣を貨幣としてどれほど受け取るか
どうかに依存する。すなわち、言語と同様にネットワーク外部性が作用するために、実際
にその貨幣が交換手段として流通している量に依存して、交換手段としての機能の多寡が
決まる。
• また、異時点間に貨幣の価値が減尐していくことになれば、このような貨幣的交換は行う
ことが困難となる。そのために、貨幣の価値貯蔵手段としての機能も交換手段としての機
能に関連して重視される。
金本位制時代とその後の変遷をみる限り、金兌換というような即物的な仕掛けがなくても、「貨幣
価値を支えるという約束」さえあれば銀行券の価値は揺るいでいないようです。これは、金本位制
と現代の貨幣制度とが「約束」に支えられる制度だという点で、ある種の共通点を持っていること
を示唆するものでもあります。(『貨幣の経済学』岩村充、集英社、p.35)
7
- 8. ネットワーク効果発揮の条件
• 十分なインストールベースの獲得
• 既に確立している他のネットワークとの接続
• 現金ネットワークとの接続を保証する安定的な取
引所の存在が肝(⇒携帯電話の成功戦略)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
1911
1914
1917
1920
1923
1926
1929
1932
1935
1938
1941
1944
1947
1950
1953
1956
1959
1962
1965
1968
1971
1974
1977
1980
1983
1986
人
口
1
0
0
人
当
た
り
電
話
機
数
アメリカ
スウェーデン
スイス
フランス
ドイツ
日本
クリティカルマスを
超えてしまえば、自
律的に発展
取引所の安全性・透明
性に関する規制の導入
は必須
利用可能局面を増やす
ことでクリティカルマ
スを引き下げる努力が
必要
強制通用力があれば一気
にクリア
8
1990年以降尐なくとも6つのバーチャ
ル通貨が破綻しており、ビットコイン
が失敗したとしても目新しいことでは
ない。(ファンド情報 2014/2/10)
- 9. 仮想通貨のエコシステム
• 仮想通貨は各種
生産資源の投入
効率を実物市場
と争い、また、
決済手段として
の利便性を他の
決済手段と争う
• 長期的には合理
的裁定が働くこ
とが期待できる
Source: Wikibrains
(http://wikibrains.com/map/532add45e4
b0dbbf379c4fef#.Uy5mzfl_t8E)
http:/ / www.lbl.gov/ Science-
Articles/ Archive/ assets/ images/ 2005/ Feb-
02/ chp_electric_power_lines_1.jpg
http:/ / www.datacenterknowledge.com/ wp-
content/ uploads/ 2014/ 01/ bitcoin-allied-asicminer.jpg
電力
資本投入
http:/ / blog.prolecto.com/ wp-
content/ uploads/ 2013/ 05/ fo
rex-samples.jpeg
http://www.commerce.wa.gov
.au/consumerprotection/Imag
es/Business/goods-and-
services.jpg
http:/ / siliconangle.
com/ files/ 2013/ 0
7/ 05915708-
photo-bitcoin.gif
http:/ / btcmag.9wizards.netdna-cdn.com/ wp-content/ uploads/ 2013/ 12/ gloryshot_11.png
取引所
9
- 10. ビットコインが既に果たした意義
• 既存システムの規律向上
• 財政・金融当局への規律付け
• 野放図な財政金融政策に対する一時的な資金退避先
• 金融業界への競争圧力
• 金融決済サービスに対する代替手段
• 安価な決済手段によるフロンティア拡大
• 為替や決済費用がハードルとなってきた事業を採
算に乗せ、育てていくインフラになる
• 決済制度が未整備な新興国では大きな存在意義
• 犯罪組織にとっても大きな価値あり
• 類似技術の発達(ethereumなど)
• 既存システムと逆相関を持つリスク資産の提供
• 機関投資家向けのリスク回避手段
10
- 13. 仮想通貨の将来
• 擬似世界通貨シナリオ
• 取引所への規制を前提に、金融インフラが不十分である国に対して、代替的決済手
段を提供するという可能性
• ニッチシナリオ
• 低廉な決済コストという特質を活かして、(国際)送金市場において生き残る。
• 超ニッチシナリオ
• 「政府の関与を受けないことを最重要視する人々にとって、ビットコインが魅力的
なものであり続けるために必要なのは、むやみにユーザー数を拡大することなく、
国家経済や国際経済に影響を与えないごく小規模の存在として目立たない状態を保
つことであったろう。…ギークのような人々であれば、そうした新しい暗号通貨を
次々と乗り換えつつ、政府の目をかいくぐって自由な資金移動の手段を保ち続ける
というのが現実的な対応なのではなかろうか。」(山口浩)
• Old soldiers never die; they just fade away.
13