日本生体医工学会中国四国支部2018で発表した研究です.
題目「ゆらぐ脳波データからどのように集中度合いを可視化するか」
Created by 上原賢祐
詳細はこちら: https://kenyu-life.com/2018/10/30/eeg_constress_value/
◯アブストラクト◯
ヒト脳波は心理・生理状態によって大きく影響される生体信号であるがゆえに,集中度合い等をはじめとしたヒトの状態推定を可能とする.脳波信号の一般的な理解では,ヒトが一旦集中状態に入ると周波数パワーが高くなる傾向にあるため,周波数解析により脳波に含まれる特定の周波数帯域の含有量を見ることは1つの有効な状態推定の手立てである.しかし,ヒト脳波はゆらぎと言われる非線形な性質を持つため,周波数解析などの線形的な信号処理では,ヒト脳波が有する真の情報を取り出すことができないと考えられる.すなわち,ヒトの集中状態を可視化するにあたっては,脳波信号の「ゆらぎ」を考慮し,波形の細かい変化の仕方自体にも眼を向ける必要があると考えられる.
そこで本研究では,非線形な解析手法を用いた脳波信号の解析を行い,ヒトの集中度合いの可視化を目的とする.脳波信号の振る舞いを一自由度の非線形振動子によってモデル化し,波形の細かい変化に対応させるため,モデル中の各係数パラメータを実験的に同定した.その結果,脳波の定量化をすることが可能であることを確認し,各モデルパラメータの相関値によって集中度合いを可視化できることが分かった.
12. 3.解析結果・・・
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
線形項 非線形項 外部入力項
<エラー値の確認>
Error(A, B, C, P1, P2, ω) =
1
N
N
∑
i=1
(xexp
i
− xsim
i )2
平均誤差
2.02平均誤差
0.582
同定したパラメータを
用いたシミュレーションが
実験結果と一致しているか
・平均値付近の誤差での
一致が確認される
・同定されたパラメータが
脳波の特性を含むものであると
考えることができる
13. 3.解析結果・・・
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
線形項 非線形項 外部入力項
安静時のパラメータ 集中時のパラメータ
A
B
C
P1
P2
ω
A
B
C
P1
P2
ω
A B C P1 P2 ω A B C P1 P2 ω
パラメータ頻度分布(正規分布)・・・中央値から広がりを持って分布
各パラメータの総当たりの相関も計算
14. 3.解析結果・・・
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
線形項 非線形項 外部入力項
パラメータ頻度分布(正規分布)・・・中央値から広がりを持って分布
各パラメータの総当たりの相関も計算
リラックス時とストレス時の違いを数値的にみる
・非線形パラメータ C が極端に低下 (30.2倍)
・線形パラメータのバネ定数 B は増加(1.37倍)
・線形パラメータのダンピング定数 A は微増(1.1倍)
• •
集中状態になると
集中状態になると,これまでカオス的に
活動していた脳活動が線形的になる.
集中すると,ゆらぎがなくなる.
集中状態を詳しく調べるための指標になりえる
15. 3.解析結果・・・
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
線形項 非線形項 外部入力項
安静時のパラメータ 集中時のパラメータ
A
B
C
P1
P2
ω
A
B
C
P1
P2
ω
A B C P1 P2 ω A B C P1 P2 ω
パラメータ頻度分布(正規分布)・・・中央値から広がりを持って分布
各パラメータの総当たりの相関も計算
脳波信号の発生に関わる内部的なもの
発生した脳波に対して周辺脳波から影響されるもの
内部的なもの 内部的なもの
外部的なもの 外部的なもの
16. 3.解析結果・・・
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
線形項 非線形項 外部入力項
安静時のパラメータ 集中時のパラメータ
A
B
C
P1
P2
ω
A
B
C
P1
P2
ω
A B C P1 P2 ω A B C P1 P2 ω
パラメータ頻度分布(正規分布)・・・中央値から広がりを持って分布
各パラメータの総当たりの相関も計算
内部的なもの 内部的なもの
相関大
・B-Cにおいて,-0.881と非常に大きな負の相関が見られた
集中状態における各パラメータの相関
こういった実験的に定めたパラメータマップが,集中度合いを可視化する方法として有効なツールになり
得る結果である.今後多種多様な脳波データに適用して,物理的意味合いを探していく価値があると考えら
れる