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What's Cooking In Ruby 2.7
1.
What's Cooking In Ruby
2.7 2019-02-27 武者 晶紀 (@knu)
2.
自己紹介 • 武者 晶紀
/ Akinori Musha • Twitter: https://twitter.com/knu • GitHub: https://github.com/knu • 株式会社マチマチ • Rubyコミッター • FreeBSDコミッター • Team Nokogiri • Huginn共同開発者
3.
自己紹介 • 仕事(抜粋) • シーサーブログおよびOEMサービス •
イープラス公式アプリのバックエンド • 相席屋公式アプリのバックエンド • ご近所SNSマチマチ 🆕
4.
マチマチ • 株式会社マチマチ • 目黒区、学芸大学駅から徒歩2分 •
会社紹介🏢 http://bit.ly/machimachi-intro • 「ひらかれた、つながりのある地域社会をつくる」 • ご近所SNS & 地域情報メディア👉 https://machimachi.com/ • エンジニア採用中! https://www.wantedly.com/companies/machimachi-inc/projects • マチマチを支える技術$ https://t.co/OMeh3yL8YE (Rails, React, PostgreSQL, …) • 技術ブログ📝 https://tech.machimachi.com/
5.
Rubyでの開発活動 • レポジトリ管理者 • 開発インフラ整備 •
標準ライブラリの充実 • Digestの拡張、ハッシュアルゴリズム追加 • Setの実装 • bigdecimal, syslog, ipaddr, zlibなどのインポート支援や保守 • Shellwordsに shellescape, shelljoinを実装 • Ruby 1.8.7のリリース
6.
Rubyでの開発活動 • 組込クラスの拡張 • Array#slice! •
Enumeratorの導入, Enumerableの拡張 • each_cons, each_slice • each_with_object
7.
Rubyでの開発活動 • 最近は、月次のRuby開発者会議に出席して、主にRails/ Web開発者の観点からインプットしたり、自分が担当す るライブラリをいじる活動がメインです。
8.
Ruby 2.7に向けて • まだ2.6が出てから2ヶ月しか経っていませんが、2.7や3.0に向けた機能開発や議 論はいろいろ進行しています。その一端でも、楽しくご紹介できたらと思います。 •
ここでご紹介するのはあくまで恣意的に選んだ例に過ぎず、網羅性はありません。 • 興味のある方はNEWSファイル、Ruby開発者会議の議事録、Redmineでのチ ケットベースの議論を追いかけましょう。 • 開発者同士の議論は非常に多相的で高文脈ですが、「いろんなことがあるんだな あ」程度の受け取りで構いません。 • 開発陣へのフィードバックは、いろんなチャンネルを通じて気軽にどうぞ! Twitterでつぶやくだけでも目に入るかも👀
9.
おしながき • 入ったもの • 新文法:
obj.:meth • 無ブロックprocの段階的廃止 • Enumerable#tally • 却下されたもの • 開発中・検討中の機能 • 今後のRubyの予定
10.
obj.:meth • obj.method(:meth) の短縮文法 •
メソッドオブジェクトを取り出す • 従来のObject#methodはメソッド呼び出しだった • メソッドを取るためにメソッドを呼ぶ必要がある… いかにもRubyらしいけど… • オーバーライドされているかもしれない (例: Request オブジェクト = HTTPメソッドを返す) • ObjectでなくBasicObjectを継承したオブジェクトにはmethodメソッ ドがない
11.
obj.:meth • 任意のオブジェクトに対してメソッドを取り出したいときは、クラス からメソッドを取り出してbind &
callするという 遠な手段を取る 必要があった😝 •Object.instance_method(:method) .bind(obj) .call •オブジェクトの素性を問わず、メソッドを取り出す短い記法がほしい •いくつか案があったが、既存文法との衝突がなく、シンボル記法 からメソッドを連想しやすい「obj.:meth」に決定
12.
obj.:meth • たとえば、こういうコードが短く書けるように • lines.map
{ |line| JSON.parse(line) } ↓ lines.map(&JSON.:parse) • ただし、selfは省略できないこととした • lines.each { |line| puts line } ↓ lines.each(&self.:puts) • obj.each(&.:meth)を許してしまうと、obj.each(&:meth)と見た目が 瓜二つなのに全然違う意味になるので目に優しくない、というMatzの指摘に よる
13.
無ブロックprocの段階的廃止 • メソッド定義中でブロックなしのprocによってメソッドに渡ってきたブロックを 取得することができる • def
each_key keys.each(&proc) end • procはProc.newと書いても同じ、他にlambdaもある • block_given?でブロックが渡されたかどうかを判定でき、yieldで呼び出せ るのと合わせて、明示的に引数を書かなくても渡されたブロックを利用できた • この機能を廃止しようという方向になった • 無ブロックprocとProc.newは2.7から警告、無ブロックlambdaは廃止
14.
無ブロックprocの段階的廃止 • 背景としては、最適化や誤り検出のため、あるメソッドが ブロックを取るのかどうかを静的に判定したい、理想的に は引数リストで明示させたい、という動機がある • ブロックを取らないメソッドにブロックを渡しても、メ ソッド側でチェックしない限りエラーや警告にはなら ない •
使われると思ってブロックを渡したが実は使われず無 意味という誤りに気づけない、という問題
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無ブロックprocの段階的廃止 • ただ、CRubyには長い間、def method(&block)とブロックを引数で 受け取るのは遅いという問題があり、熟練工は書いてくれなかった😑 •
yieldは、渡されたブロックを直接呼ぶ命令にコンパイルされる🏎 • 一方、仮引数リストに&blockと書くと、ブロックからProcオブジェク トを生成した上で、ローカル変数に代入される🚜 • さらにblock.callとするとローカル変数を参照し、Procオブジェク トに対してメソッドが呼び出される🏗 • 何ステップも多い…😵
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無ブロックprocの段階的廃止 • Ruby 2.5で、仮引数リストに&blockと書いても、実際にblockを使う までProcオブジェクトの生成を遅延するようになった😪 •
中でblock_given?とyieldを使ったまま、ブロックを取ることを仮 引数リストで表現しても性能上のペナルティがなくなった😇 • Ruby 2.6で、block.callはyieldと同等の性能になった🚀 • ただ、callのオーバーライド有無を確認するなど面倒な実装の賜物😣 • これで、明示的に&blockとblock.callを使うスタイルを推奨できるよ うになった😄
17.
無ブロックprocの段階的廃止 • 逆に、「ブロックを取らないこと」を明示できるようにすべきか、とい う議論も進んでいる • 当初は、def
foo(&nil)と書くことにすればいいのでは、とまと まりかけた💡 • しかし、そうすると「ブロックを取らないメソッドすべてに&nilを 入れよう」という大量のPR👮が一気に押し寄せる危惧があるので取 りやめに💣 • 現在は、コンパイル時の静的解析でできないか、という取り組みが試さ れている🔬
18.
無ブロックprocの段階的廃止 • ただ、superという壁が発見される • superあるいはsuper()と書くと、何も指定していないが、 渡ってきたブロックをスーパーメソッドに渡すようになっている •
superの方は分かるが、super()の方は一体なぜ…🗿 • そのため、スーパーメソッドも って見ないとブロック引数を 使っているのかはわからない • 現在も既存のユーザコードを含め調査・研究が進行中$
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Enumerable#tally • 要素を値別に数えるメソッド🗳 •["a", "b",
"b", "c", "a", "a"].tally # => { "a" => 3, "b" => 2, "c" => 1 } •SQLのGROUP BY+COUNT()のようなもの •今まではgroup_byを使ってこんな風にせざるを得なかった処理 •["a", "b", "b", "c", "a", "a"] .group_by(&:itself) .transform_values(&:size)
20.
Enumerable#tally • 当初はcount_byという名前で、ブロックを取る形で提案されていた(ブロックを適 用した値で集計する) • しかし、いくつかの難点で賛同を得られず •
名前がいまいち: countとの対称性がない(sort_by/sort, max_by/maxな どからの類推が効かない) • 機能が多い: ブロックを取るのはオプショナルでは?必要ならmapしてから渡 せばいい • シュワルツ変換したいこともあるかもしれないが、代表値をどうするか仕 様を決め難い • tallyという名前を得て、ブロックを取らないシンプルな形で採用🎉
21.
Enumerable#tally • tallyとは数を数えて記録することで、紙や黒板に一本ずつ線を書 きながらカウントするための記号の呼称でもある(日本での 「正」にあたる記号、「卌」のような形) • ちなみにUnicode
11で「正」とともに入りました https://twitter.com/ken_lunde/status/ 1006532079402663936
22.
却下されたもの • autoloadの廃止⚡ • Matzはスレッドセーフティの観点から本質的に危ないのでずっと消した い派 •
Railsがconst_missingでの自動ロード機構をやめてautoloadを使う Zeitwerkを6.0で採用、というこのタイミングではしごを外すのか⁉と 私の中で騒然😰 • しかしRailsアプリの開発ではeager-loadingだとプロセス起動・再起動 が重すぎるのでこういう機構は必須と説得☝ • 少なくともRuby 3.xの間は残す、というMatzの言質を得た😌
23.
却下されたもの • autoloadの廃止 • その後、autoloadをより安全にするための研究と改修が進んで いる •
http://www.a-k-r.org/d/2019-02.html#a2019_02_10 • http://www.a-k-r.org/d/2019-02.html#a2019_02_10_2 • https://bugs.ruby-lang.org/issues/15598 • https://bugs.ruby-lang.org/issues/15599
24.
却下されたもの • ArrayやHashも、Stringのようにデフォルトでフリーズするモードがほし い、あるいは単項 +/-
でdup/freezeしたい • https://bugs.ruby-lang.org/issues/14680 • 「そんなにほしい?」まだ懐疑的🤔 • でもRubocop利用者からすると、定数配列・ハッシュに.freezeを付 けて回られる経験は苦々しい… • いずれまたチャンスあるかも💭
25.
開発中・検討中の機能 • Begin-less (Start-less)
Ranges • https://bugs.ruby-lang.org/issues/14799 • Endless Ranges (@ary[1..])が入ったので、今度は左端側を省略したものも 入れたい • ActiveRecordなどのDSLで便利: Product.where(price: ..1000) • Endless Rangesも導入後にいくつか問題が発見・対処されたので、それらの 手当てが終わって落ち着いてから • Enumerator::Yielder#to_proc • https://bugs.ruby-lang.org/issues/15618
26.
開発中・検討中の機能 • デフォルトブロック引数: @1,
@2, … • https://bugs.ruby-lang.org/issues/4475 • ずっと望まれている機能: numbers.map { "%02x" % @1 } • 既存文法と衝突のない奇跡の案(@1, @2,…)に期待💫 • パターンマッチ機能(case-in構文)😍 • https://bugs.ruby-lang.org/issues/14912 • 強く待ち望まれてきた機能 • スクリプト言語の中では強力でRubyの強みと言われてきたが、関数型言語がメジャー になってきた今ではちょっと見劣りする
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開発中・検討中の機能 • ES6スタイルのハッシュ簡便記法(field punning) •
https://bugs.ruby-lang.org/issues/15236 • { name: name, type: type, created_at: created_at } ↓ { name, type, created_at } などと書きたいな、という例のやつ • MJITによるさらなる高速化
28.
今後のRubyの予定 • 2019年3月 • 11日に開発者会議:
https://bugs.ruby-lang.org/issues/15614 • Unicode 12が出たら、Ruby 2.6.xをリリース • 2019年4月 • RubyKaigi 2019: 会期前日に開発者会議 • 新元号が発表されたらUnicode 12.1が出る • それを待ってRuby 2.6.yをリリース • 🗓 毎月開発者会議 • チャンスは毎月🎯 https://bugs.ruby-lang.org/issues/14770 • 2019年12月 • 25日 Ruby 2.7.0リリース
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