バレーボールのオーバーハンドパスのプレーにおいては，手指の弾性（やわらかさ）が重要な役割を果たしていると予想される．本研究では手指の筋腱のメカニズムから明らかにしたプレーのポイントをコーチングに生かすために，実施した公開講座について報告する．講座の教材の設計や伝え方に課題があることがわかり，今後に生かしたい．

1. バレーボールのオーバーハンドパスにおける
手指の筋腱複合体の弾性特性に基づく
コーチングへの一考察
○槇田 諭（佐世保高専）
縄田 亮太（愛知教育大学）
本研究はJSPS 科研費JP15K12663 の助成を受けたものです．
また研究成果の普及活動はJSPS ひらめき☆ときめきサイエンスHT28329 の助成を受けて実施しました．
第35回 日本ロボット学会学術講演会
「アウトリーチ」＝「研究成果の社会実装」

2. 研究目的
2017/9/14 日本ロボット学会学術講演会
バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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バレーボールのオーバーハンドパスの動作メカニズムの解明
バイオメカニクスの視点
（基礎研究）
• 筋腱の弾性特性の発現
メカニズム
• 筋骨格モデル
コーチングの視点
（応用研究）
• プレー動作の数値化
• パフォーマンスの定量的
評価

3. 研究背景
エビデンスベーストコーチングの期待
（科学的根拠に基づいたスポーツコーチング）
従前：コーチの主観に基づくコーチング
• 指示が具体的（定量的）でない
• コーチとプレーヤーとの間で
感覚（認知）の不一致が起こる
• トレーニング成果をフィードバックしづらい
2017/9/14 日本ロボット学会学術講演会
バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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4. バレーボールのオーバーハンドパス
• ダイナミックな2つのフェーズから成る高度な技術
• 攻撃の起点となる戦略的に重要なプレー
2017/9/14 日本ロボット学会学術講演会
バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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落下するボールの速度を
手指で緩衝して受け止める
（キャッチ）
手指でボールを押し出して
目的の軌道にはね上げる
（リリース）

5. バレーボールのオーバーハンドパス
• ダイナミックな2つのフェーズから成る高度な技術
• 攻撃の起点となる戦略的に重要なプレー
?
2017/9/14 日本ロボット学会学術講演会
バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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落下するボールの速度を
手指で緩衝して受け止める
（キャッチ）
手指でボールを押し出して
目的の軌道にはね上げる
（リリース）
持ちパス
ボールをほぼ受け止めてから押し出す
突きパス
ボールを弾くように押し出す

6. プレー動作の計測と定量的評価（バイオメカニクス視点）
筋腱複合体の弾性特性に基づくプレーの分析
手指の関節角度と指先発揮力の関係（＝腱のけん引による増大）
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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Flexor
digitorum
Rotation center of joint
dorsiflextion

7. プレー動作の計測と定量的評価（バイオメカニクス視点）
筋腱複合体の弾性特性に
基づくプレーの分析
• 手指の関節角度
• 指先発揮力
↓
同一関節角度であっても
指先発揮力が異なる
2017/9/14 日本ロボット学会学術講演会
バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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ヒステリシスの
存在

8. プレー動作の計測と定量的評価
プレー中の
手指の関節角度（via データグローブ）
指先の接触力（via 圧力センサ）
を計測すれば，プレーの質を評価できるのでは？？
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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手指の筋腱の弾性特性を有効活用しているかどうか

9. （一般の）コーチングへの適用の困難さ
計測機器が簡易かつ安価でない
• データグローブ：約20万円
• 圧力センサ，データロガー：約8,000円／指
• PC：約8万円
筋腱モデルの理解が容易でない
• 指屈筋腱？ヒステリシス？
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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10. （一般の）コーチングへの適用の困難さ
計測機器が簡易かつ安価でない
• データグローブ：約20万円
• 圧力センサ，データロガー：約8,000円／指
• PC：約8万円
筋腱モデルの理解が容易でない
• 指屈筋腱？ヒステリシス？
→身体のバネの使い方，と言い換えれば．．．？
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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11. かみ砕いた言い換え（不正確さを含む）
指を大きく曲げると，力強く正確なボールがトスできる
￥（外力によって指屈筋腱が伸長し，弾性エネルギーが蓄積）
ボールを受けた指をタイミングよく伸ばしてボールを弾く
（伸長された腱が短縮過程に入るとエネルギーを損失）
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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物理現象の正しい理解に基づくコーチング
↓
一つ一つのプレーにおいて身体の動き方を意識する動機付け

12. 研究成果の社会への還元
JSPS「ひらめき☆ときめきサイエンス」の活用
小学生5,6年生～高校生を対象とした，研究成果に触れる講座
「きみはバレーボールがどれくらい上手？？
～センサを作って測ってみよう～」
ねらい
• 身近なスポーツにひそむ科学の意識付け
• センシングと身体モデルの原理の理解
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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13. 講座の概要
曲げセンサを自分で作って，バレーボールの練習に生かす
製作物
• 光ファイバ方式の曲げセンサの作成（マイコン不使用）
• レベルICを用いてLEDの点灯数を制御
参加者
• 小学生17名，中学生6名，ほか保護者
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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14. 講座設計の工夫
はんだ付けをしない
• ケガ防止の観点から
• ブレッドボード，ワンタッチコネクタの活用
簡単な原理の理解
• 光ファイバの原理
• 分圧のしくみ
教材を低価格に抑える
• マイコン，PCを使用しない
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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15. 講座の実際．．．（満足度90%以上とはいえ．．．）
参加者の全員がセンサ製作を達成できない
• ブレッドボード上の配線ミス（見本との照合が困難）
• 手順の不理解（複雑すぎる手順書）
→より簡単な計測キットの設計が必要
センサ情報の可視化とその視認が困難（想定済み）
• プレーの動作時間が約0.2s程度でLEDの点灯を視認できない
• プレーヤーへのセンサの取り付けと調整が困難
→リリースのタイミングを提示するLEDマーカーなど
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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16. 検討：実際のコーチングへの適用
一般プレーヤーに対するわかりやすさ（簡略化）
• リリースのタイミングの提示
• 手指の曲げ量の過不足の提示
プロフェッショナル・コーチングでは
• プレー動作の記録とプロット
• 記録データの定量的評価の提示
• 前提：筋腱メカニズムの理解
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バレーボールのオーバーハンドパスにおける手指の筋腱複合体の弾性特性に基づくコーチングへの一考察（槇田 諭）
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17. 結論
体験することは重要である
• 「難しいこと」を理解する
• 未経験を「経験済み」にする
成功体験はもっと重要である
• サブゴールの設定（段階的達成）
主役はあくまでプレーヤー
• プレーヤーの動機付け，知識の吸収
→コーチへのはたらきかけ
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