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吐血パート2
問診・診断
飯島献一
問診のポイント
経過:発症機転、色調、回数、量、下血の有無
全身症状:腹痛、胸やけ、悪心・嘔吐、発熱、冷汗
既往歴:吐血歴、直前の飲酒、最近の熱傷、頭部外傷、手術歴
基礎疾患の有無(あれば程度、治療内容、服薬状況)
家族歴:家族内での肝疾患・血液疾患患者の有無
常用薬、嗜好品:
非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ホルモン薬、抗凝固薬
飲酒、喫煙の有無、量
(内科診断学 第3版)
身体診察のポイント1
バイタルサイン
:体温、呼吸、血圧、脈拍、意識レベル、尿量(ショックの有無)
全身状態:顔色、皮下出血、浮腫、関節腫脹、黄疸、手掌紅斑、皮膚粘膜
の血管拡張の有無
頭頸部:鼻、口腔内の出血の有無
結膜;貧血、黄疸の有無
表在リンパ節腫脹の有無
胸部:打診、聴診で心肺疾患の有無
腹部:肝脾腫、腹水、腹壁静脈怒張の有無
表在リンパ節腫脹の有無
腫瘤、圧痛、腹膜刺激症状の有無 (内科診断学 第3版)
身体診察のポイント2
身体診察のポイント
検査のポイント
• 血液型:輸血に備えるため必要
• 血球検査:WBC(炎症)、Hb、Ht(出血量)、Plt(出血傾向、肝疾患)
• 血液生化学検査:BUN、Crea(腎機能、出血量;BUN/Crea上昇)、
T-BIL、GOT、GPT、T-CHO、ChE(肝疾患、肝硬変)、CRP(炎症)
• 血液凝固系:PT-INR(抗凝固薬服用者)
• 胸部・腹部Xp:喀血との鑑別、嚥下性肺炎、消化管穿孔
• 血液ガス分析、パルスオキシメーター:ショックの評価
• 上部消化管内視鏡検査:確定診断
★緊急度に応じて優先順位、必要性を決定する
(内科診断学 第3版)
症例1
• 主訴:コーヒー残作様吐物少量嘔吐(⇒嘔吐参照)
• 57歳男性、高血圧で通院加療中、家庭血圧130/70mmHg、脈拍70/分前後で安定、
起床後起き上がった際に上記症状あり通常外来に独歩受診
• 生活歴:幼少時井戸水を飲んでいた 既往歴:18歳、十二指腸潰瘍
• 診察時:座位血圧90/70mmHg、脈拍100/分、結膜貧血なし、胸部異常なし、
臥位血圧110/60mmHg、脈拍90/ 分、心窩部圧痛なし
体位性の低血圧あり、ショック指数1.1(脈拍100/血圧90)
• 採血施行し結果待ちの間に暗赤色の大量吐血、吐血前Hb 12.8g/dl
• 診断:早期胃がん(ヘリコバクターピロリ感染、露出血管)
• パール:体位性の低血圧で出血の程度を予測、吐血では出血の大半は消化管内
に残存することが多く、初期にはHbの低下は認められない
症例2
• 主訴:新鮮血大量吐血
• 70歳男性、食欲不振、全身浮腫の精査にて入院
• 飲酒歴:日本酒2-3合/日、10年以上
• 入院時、意識清明、顔色不良、血圧90/70mmHg、脈拍120/分、結膜貧血、
黄疸なし、胸部異常なし、腹部膨隆、腹水あり、ショック指数1.3(脈拍
120/血圧90)
• 検査:Hb13.2、Plt2万、 T-BIL2.0、GOT34、 GPT50、T-CHO90、ChE96
• 入院当日夜間、新鮮血大量吐血、ショック状態となる(⇒ショック参照)
• 診断:肝硬変、食道静脈瘤破裂
• パール:飲酒歴と症状、検査所見より肝硬変の診断をし、食道静脈瘤を
疑い、プレショックを考慮して大量吐血を予測する
症例3
• 主訴:めまい(⇒めまい参照)
• 20歳女性、朝起床時めまいがして転倒、後頭部打撲にて救急搬送
• 来院時意識清明、顔色不良、体温36度、血圧110/60mmHg、脈拍90/分、
胸腹部異常なし、脳神経異常なし(結膜チェックせずにCT室へ移動)
• 緊急頭部CT:異常なし(外傷性変化なし)
• CTより帰室後、ストレッチャーから起き上がったところで、コーヒー
残渣様吐物嘔吐あり
• CT施行後採血:Hb 8.8 g/dl 、結膜貧血様
• 病歴再聴取:頭痛持ち、市販の鎮痛薬頻回服用、最近便が黒かった
• 診断:NSAIDs潰瘍
• パール:めまいが主訴でも吐血することがある(検査の優先度判断)
パート2
問診・診断まとめ
① 吐血はいつおこるかわからない
② 問診と診察を平行して行い、顔
色を見て、プレショックを見逃
さない
③ 診察時の第一印象を大切にし、
疾患、病態を絞り、診断、治療
に結びつけていく

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吐血 パート2 問診・診断

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  1. 吐血パート2 問診、診断
  2. 問診のポイント 吐血の原因疾患はさまざまですが、原因疾患と出血部位を推定しながら問診していくことが重要です。 まず出血時の状況、吐血がいつごろから始まったか、吐血の性状として、色調、回数、量を確認します。下血があれば、これについても同様に確認します。 色調と出血量からおよその出血部位を推測します。発症までの全身の自覚症状、腹痛、胸やけ、悪心・嘔吐、発熱や冷汗の有無、発症時の意識状態なども確認します。これらにより、出血開始時期、出血量などが推定できます。 次に、既往歴として、吐血歴や直前の飲酒の有無、最近の熱傷、頭部外傷、手術歴、基礎疾患の有無、基礎疾患があればその程度、治療内容、服薬状況などを確認します。 家族歴として家族内での肝疾患・血液疾患患者の有無を確認します。 常用薬、嗜好品では、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ホルモン薬、抗凝固薬服用の有無、飲酒、喫煙の有無、量などを確認します。 抗血小板薬や抗凝固薬を飲んでいる場合には、これらの薬物が出血を増悪させる可能性があり確認が必要です。 飲酒歴により、肝疾患の有無や程度、出血傾向の推測、喫煙歴は喀血との鑑別にもなります。
  3. 身体診察のポイントは、吐血パート1の吐血の診断の進め方のフローチャートで示しましたように、まずはバイタルサインのチェックが重要です。体温、呼吸、血圧、脈拍、意識レベル、尿量などをチェックしてショックの有無を見極めたうえで、ショックでなければ全身状態の診察から始めます。 顔色の観察評価は、重症度の判定にも重要であり、問診と身体診察を平行して行うことが大切です。 皮下出血、浮腫、関節腫脹、黄疸、手掌紅斑、皮膚粘膜の血管拡張の有無をチェックします。 頭頸部では、鼻出血、口腔内の出血の有無をチェックし、結膜を見て貧血がないかどうか観察することが重要で、同時に黄疸の有無も観察します。そして、頸部表在リンパ節腫脹の有無をチェックします。 胸部では、打診、聴診で心肺疾患の有無をチェックします。そして、腋窩リンパ節腫脹の有無をチェックします。 腹部では、肝脾腫、腹水、腹壁静脈怒張の有無をチェックし、鼠径部リンパ節腫脹の有無、腫瘤、圧痛、腹膜刺激症状の有無をチェックします。    
  4. 検査のポイント まず、血液型検査は輸血に備えるために必要です。 血球、血液生化学検査では、WBCとCRPで感染症の可能性をチェックし、、Hb、Htより出血量の推定、血小板減少から出血傾向や肝疾患が推定されます。 BUN、Creaは腎障害や出血量の指標となり、BUN/Crea比の上昇は出血を強く疑います。 T-BIL、GOT、GPTの上昇は肝疾患、血小板減少や総CHO、ChEの低下は肝硬変が疑われます。 血液凝固系検査から出血傾向、肝硬変の有無、抗凝固薬服用者はPT-INRをチェックして凝固系の状態を把握します。 胸部Xpにて吐血と喀血の鑑別、嚥下性肺炎の有無チェックし、腹部Xpにて消化管穿孔に伴うfree airの有無をチェックすることも大切です。 血液ガス分析はショックの可能性があれば実施します。パルスオキシメーターは、嚥下性肺炎やショックの評価にも有用です。 上部消化管内視鏡検査は吐血の原因疾患、出血部位の診断に最も有用です。 緊急度に応じてこれらの検査の優先順位、必要性を決定することが重要です。
  5. 症例を提示します。 症例1 主訴:コーヒー残作様吐物少量嘔吐 57歳男性、高血圧で通院加療中、家庭血圧130/70、脈拍70前後で安定していました。受診当日、朝起床後起き上がった際に吐血あり、通常外来に独歩受診されました。 生活歴として、幼少時井戸水を飲んでいました。 診察時:座位血圧90/70、脈拍100、結膜貧血なく、胸部ありませんでした。 座位血圧やや低値で脈圧狭小化を認めたため、臥位血圧測定したところ、臥位血圧110/60、脈拍90、心窩部に圧痛は認められませんでした。 体位性の低血圧あり、ショック指数1.1でした。 採血施行し結果待ちの間に暗赤色の大量吐血、吐血前Hb 12.8mg/dlで貧血は認められませんでした。 診断はヘリコバクターピロリ感染による早期胃がんで、内視鏡検査にて露出血管からの出血が認められました。 体位性の低血圧で出血の程度を予測し、吐血では出血の大半は消化管内に残存することが多く、初期にはHgbの低下は認められないことも念頭に再吐血に備える必要がありました。
  6. 症例2 主訴:新鮮血大量吐血 70歳男性、食欲不振、全身浮腫の精査目的にて入院となりました。 日本酒毎日2-3合、10年以上の飲酒歴があります。 入院時、意識清明、顔色不良、血圧90/70、脈拍120、結膜貧血、黄疸なく、胸部異常認めませんでしたが、 腹部膨隆し、腹水あり、ショック指数1.3でした。 検査では、Hb13.2で貧血は認められませんでしたが、Plt2万で低下, 軽度の肝障害と、総CHOとChEの低値より肝硬変が疑われました。 入院当日夜間、新鮮血大量吐血、ショック状態となる(⇒ショック参照) 診断は肝硬変、食道静脈瘤破裂 飲酒歴と症状、検査所見より肝硬変の診断をし、食道静脈瘤を疑いプレショックを考慮して、食道静脈瘤破裂による大量吐血を予測し、内視鏡検査を当日に施行しておくべきケースでした。
  7. 症例3 主訴:めまい(⇒めまい参照) 20歳女性、朝起床時めまいがして転倒、後頭部打撲にて救急搬送されました。 来院時意識清明、顔色不良、体温36度、血圧110/60、脈拍90、胸腹部異常なく、脳神経異常認めませんでしたが、結膜チェックせずにストレッチャーでそのままCT室へ移動しました。 緊急頭部CT施行しましたが外傷性変化を含め異常認められませんでした。 CTより帰室後、ストレッチャーから起き上がったところで、コーヒー残渣様吐物嘔吐あり CT施行後採血でHb8.8と貧血を認め、結膜も貧血様でした。 病歴再聴取したところ、頭痛持ちで、市販の鎮痛薬を頻回に服用しており、最近便が黒かったことが分かりました。 内視鏡検査にて、NSAIDs潰瘍を認め、吐血の原因と考えられました。 めまいが主訴でも吐血することがあり、顔色不良から貧血の可能性も考慮して、結膜をチェックすれば、病歴よりNSAIDs潰瘍の診断が可能なケースでした。
  8. パート2、吐血の問診、診断のまとめです。 吐血はいつおこるかわからないので、 問診と診察を平行して行い、顔色を見て、プレショックを見逃さないことが重要です。 診察時の第一印象を大切にし、疾患、病態を絞り、診断、治療に結びつけていくことが大切です。