2009.11.29


第 28 回庄内医師集談会




頭痛の外来診療
    特に薬物乱用頭痛について

                黒木  亮

                くろき脳神経クリニック
                酒田市富士見町3丁目

                              1
まとめ
• 「薬物乱用頭痛」 16 例(含む疑診)のうち、 14 例が
  元々は片頭痛患者であった。
• 治療は簡単ではないが、鎮痛剤の減量と予防薬の投与
  により、確診 10 例中 6 例で薬物乱用から離脱出来た。
• 頭痛予防薬として抗てんかん薬(デパケン)が有効だ
  った。
• 確実な診断(頭痛の性状、薬物使用状況確認、二次性
  頭痛の除外)と患者教育( MOH 、鎮痛剤の知識、頭
  痛ダイアリー)が重要。
薬物乱用頭痛発生の理論
• 痛み調整系がコントロールを失い、痛み閾値が低下
  したもの
• 慢性頭痛患者はセロトニン性中枢性痛覚抑制系に障
  害がある
• 鎮痛剤連用によりさらに障害される( down
  regulation )=痛覚閾値が低下する
• エルゴタミン連用者は辺縁系、視床下部・下垂体・
  副腎系、青斑核のレセプターに変化があるという
結語
• 「薬物乱用頭痛」 (MOH) は正しい診断と適切な治
  療で改善する。
• MOH 患者は、指導教育しても脱落しやすい傾向が
  ある。
• 片頭痛患者は病院よりも診療所を受診する可能性
  が高く、「医源性」の症例も少なくない。
• 頭痛治療に関わっている診療所医師が「薬物乱用
  頭痛」について正しい知識と経験を持つ事も必要
  (安易な鎮痛剤処方を慎むべき)。
2010.11.28

第 29 回庄内医師集談会(鶴岡)




             薬物乱用頭痛、その後

                    黒木  亮
                    くろき脳神経クリニック
                    酒田市富士見町3丁目
薬物乱用頭痛とは(1)
  国際頭痛分類第 2 版
「 8. 物質またはその離脱による頭痛」
• 8.1 急性の物質使用または曝露による頭痛
• 8.2 薬物乱用頭痛 (MOH)
• 8.3 慢性薬物使用による有害事象としての頭痛
• 8.4 物質離脱による頭痛
薬物乱用頭痛とは(2)
MOH (Medication Overuse Headache)
• 8.2.1 エルゴタミン乱用頭痛
• 8.2.2 トリプタン乱用頭痛
• 8.2.3 鎮痛薬乱用頭痛
• 8.2.4 オピオイド乱用頭痛
• 8.2.5 複合薬物乱用頭痛
• 8.2.6 その他の薬物乱用頭痛
• 8.2.7 薬物乱用頭痛の疑い
薬物乱用頭痛患者の見分け方

1 . 頭痛が頻回に起こる
2. 痛み止めが効きにくい / 効かない
3. 2 日に1回以上のペースで数ヶ月に渡っ
   て鎮痛剤を服用している
4. 片頭痛の要素を持っている事が多い
痛み止めをどれくらい
服用しているか?

NSAIDs やトリプタン製剤な
どの

•種類
•量 / 回数
•期間
•効果

を詳細に聴取する
全頭痛患者: 1356 例( H20.3.3 〜 H22.11.27)
★ ( 二次性または分類不能を除く)




  • MCH :                684
    例 (50. 4%)
  • 片頭痛:             425 例
    (31.3%)
  • 混合性頭痛:     133 例  
    ( 9.8% )
  • 群発頭痛:                  7
    例   (0.5%)
症例1
32 才、女性
病歴: 25 才頃から頭痛が多くなった。
  片頭痛タイプ。市販薬飲んでいた。
  27 才妊娠出産。この時期は頭痛は軽かった。
  それ以降、また頭痛持ちになった。
  2年程前からAクリニック受診。片頭痛の診断でレルパックスとロ
  キソニン処方。頭痛があるとすぐに飲む。
  H21 年3月〜毎日ロキソニン内服(日に2、3回)。
  レルパックスもほぼ毎日服用(言えばくれる)。
現症:神経脱落症状なし
    脳 MRI で器質的疾患を否定。
症例1
治療:
1)薬物乱用頭痛であることの説明・教育。
2)極力鎮痛剤を控える必要がある。
3)デパケン R(200) 2錠分2から開始。
  テルネリン (1) 3錠分3、デパス (0.5) 1錠就寝前も追加。
4)鎮痛剤は SG 顆粒に変更。徐々に使用を控えるように
  指導。片頭痛タイプにはゾーミッグを処方。
5)経過をみながらデパケン R(200) 3錠 / 日に増量。トリプ
 タノール (10) 1錠分2、ミグシス (5) 2錠分2も追加。
症例1
経過:
  1ヶ月程で、1日中まったく頭痛のない日が出現するよう
 になる。鎮痛剤の使用頻度が減少する。典型的な片頭痛が主
 体となってくる。トリプタン製剤の使用頻度が増えると、教
 育指導および「予防薬」増量。




                          13
症例1

N:
16
T:6




N:2
T:1
症例2
51 才、女性
病歴:頭痛は小学校高学年からある。妊娠出産後、 35
 才頃から生理の前に頭痛が多くなった。片頭痛タイプ。
 加えて頸椎椎間板ヘルニアや転倒による肩骨折のため
 整形外科より鎮痛剤処方され毎日服用していた。受診
 少し前から頭痛が酷く、ボナフェック座薬効かず家族
 が服用していた片頭痛頓挫薬で少し楽になった。
現症:神経脱落症状なし
  脳 MRI で器質的疾患を否定。
まとめ1
• 開院以来2年 9 ヶ月の間に、分類可能な一次性
  頭痛 1356 例を診察した。
• 最も多いのは筋収縮性頭痛 684 例 (50. 4%) 。
• 続いて片頭痛 425 例 (31.3%) 。
• 安易な鎮痛剤服用による「薬物乱用頭痛」を
  27 例 (2.0%) 経験した。
まとめ2
• 初診時だけでなく再診時にも繰り返して、鎮痛
  剤乱用の弊害を説明指導した。
• 鎮痛剤の処方を徐々に減らし、頭痛の性状に合
  致する対症薬、予防薬を投与した。
• 患者の自覚を促し、使用薬剤量を減らす上でも
  「頭痛ダイアリー」は有用であった。
• 薬物離脱の継続には定期的受診を勧める。
症例2
治療:
1)薬物乱用頭痛であることの説明・教育。
2)極力鎮痛剤を控える必要がある。
3)デパケン R(200) 2錠分2から開始。
 すぐに薬疹出現し中止。ミグシス (5) 2錠分2処方。
4)鎮痛剤はロキソニン処方。極力使用を控えるように指導。
 片頭痛タイプにはゾーミッグを処方。
5)経過をみながらミオナール (50) 2錠分2も追加。
症例2
経過:
   NSAIDs はほとんど服用しなくなり、ゾーミッグで対処。

  生理時期には頭痛が起こりやすいが、まったく頭痛のない
  日が次第に増えて、2週間以上トリプタン製剤も NSAIDs
  も服用しない事もある。




                               19
症例 2

N:0
T:7




N:1
T:1
症例3

N:2
T:7




N:3
T:3
薬物乱用頭痛とは(3)
  薬物乱用頭痛( MOH )診断基準( 2005 )
A. 頭痛は1ヵ月に 15 日以上存在し、 C および D を満た
   す
B. 頭痛の急性治療および対症療法(あるいはその両方)
   のために使用された1つ以上の薬物を3ヵ月を超えて
   定期的に乱用している
C. 頭痛は薬物乱用のある間に出現もしくは著明に悪化す
   る
D. 乱用薬物の使用中止後、 2 ヵ月に以内に頭痛が消失、
   または以前のパターンにもどる
薬物乱用頭痛とは(4)
慢性片頭痛と薬物乱用頭痛の付録診断基準の追加について (2006)
A8.2 薬物乱用頭痛の診断基準 ( Appendix 8.2 )
• A  頭痛は1ヵ月に 15 日以上存在する.
• B  8.2 のサブフォームで規定される 1 種類以上の急性期・対
  症的治療薬を 3 ヵ月を超えて定期的に乱用している     
               1.   3 ヵ月以上の期間、定期的に1ヵ月に
 10 日以上エルゴタミン、  トリプタン、オピオイド、または複合鎮痛薬
 を使用している                           
             2.  単一成分の鎮痛薬、あるいは、単一では乱用
 には該当しないエルゴタミン、トリプタン、オピオイドのいずれかの組み合
 わせで合計月に 15 日以上の頻度で 3 ヵ月を超えて使用している.
• C  頭痛は薬物乱用により発現したか、著明に悪化している.
MOH 患者の治療成績
• 16 例(男3、女 13) 中、 1 回または2回しか来院せず中断
  が6例(よって、確実な診断例は 10 例)
• 10例中6例で MOH 離脱し、現在も通院中。
• 離脱出来なかった4例中2例は他院での鎮痛剤服用を中止
  出来ず、治療から脱落。
• 再来しなくなった、離脱出来なかった計 10 例は市販薬を購
  入したり、他院に移って処方を受けている可能性がある。
• MOH の離脱に成功しても、再発率は高いので継続して患者
  教育と綿密な治療計画が大切。

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