学術情報XML推進協議会　第6回総会・講演会

1. EPUB最新動向とW3Cによ
るWebアノテーション勧告
村田 真
国際大学GLOCOMフェロー, ISO/IEC JTC1/SC34/WG4（OOXML）議長

2. 発表の構成
 EPUB3を振り返る
 W3Cとの統合による将来展望
 Webアノテーション

3. EPUB3を振り返る

4. EPUB概要
 電子本のためのフォーマットである。
 世界的に普及しており、日本でも大成功している。
 International Digital Publishing Forumが仕様を制定していた。
 縦書き、横書き、中東の言語（双方向テキスト）に対応
 リフロー（文芸書）と固定レイアウト（マンガ）の両方に対応
2011/3/22EPUB3を通じて国際標準を考える 4

5. ImageVideo
SVGCSSHTML
Javascript
Text2Speech
SMIL
(Media Overlay)表紙
背表紙
目次
(Navigation )
EPUB解剖
2011/3/22EPUB3を通じて国際標準を考える 5
ZIP

6. EPUBの妙な位置づけ
 Web技術を使っているけれど、それだけではない
 パッケージ化され、背表紙、表紙、目次、メタデータ、DRMがついている
 制定したのはW3Cではない
 DRMは、 IDPFも制定しておらず、各書店が独自に制定している
 WMLもBMLも失敗したのに
EPUBは成功した

7. なぜEPUBは成功したか？
 Webページを書ける人なら書けた
 Web用のソフトウェア（とくにブラウザ）を流用できた
 ZIPファイルにDRMをつけて売れ、顧客はお金を払ってくれた
 Webそのままでは満たせなかった電子本のニーズを満たした
「紙書籍の出来の悪いコピー」（出版デジタル機構 新名社長）

8. W3Cとの統合による将来展望

9. HTMLとCSSのIDPFによる独自拡張
 W3CのHTML, CSSでは電子書籍には不十分
 IDPFが独自に拡張
 W3Cで制定途中のものを先取りして採用

10. 例(1)
 CSSのoeb-page-headとoeb-page-footプロパティ
 柱・ノンブル（普及は不十分） 、3.0.1で撤廃
 epub:type属性
 意味情報（アクセシビリティなど、普及は不十分）
 epub:trigger要素
 スクリプトなしのマルチメディアと制御ボタン（普及は不十分）、3.1で撤廃
 SSML (ssml:ph, ssml:alphabet)属性
 テキスト読み上げ（普及は不十分）
 epub:switch要素
 表示できないものの代替表現（普及は不十分) 、3.1で撤廃

11. 例(2)
 refines属性
 読み情報など、RDFaを待たなかった
 CSS Speechの先取り（普及は不十分) 、3.1で撤廃
 中扉 (EPUB 3.0.1 、普及は不十分)

12. (belgianchocolate, CC by NC 4.0)
IDPFの手詰まり感

13. うまく行ったのは縦書きだけ
2008
2007
2010-
2002
1999
EPUB(OeBPS)
1.2
EPUB 1.0
EPUB
OPF/OPS 2.0
XHTML1.1
CSS2
DTBook
SVG
HTML5
CSS3
JLreq
EPUBJreq
JEPA EPUB
日本語拡張案
2010.04
日本語組版
処理の要件
2007-
EPUB 3
2011.10-
総務省:日本語拡張仕様策定
(C) 2012-16 EAST Co.,Ltd. K.Shimokawa 13
両面作戦

14. W3CとIDPFの統合

15. 統合の利点
 連絡の容易さ
 HTMLやCSSに、EPUBからの要求を提出し、回答してもらうことができる
 過去の失敗を乗り越えられる？
 EPUBとWeb技術の関係を見直す
 EPUBからWeb技術でないものを切る
 Web技術にEPUBで必要なものを取り入れる
 そもそもEPUBはWeb技術のなかでどんな位置を占めるべきか？
 「紙書籍の出来の悪いコピー」（出版デジタル機構 新名社長）をどうすれば脱却で
きるか？

16. EPUBの今後の姿:保守的シナリオ
 電子書籍専用の技術はこれ以上必要なく、EPUB3はこのままの形で止まる。
 発展的コンテンツはEPUBではなくWebページによって表現すればよい。

17. いまのWeb
 検索エンジンから入り口を見つけて手当たり次第に読む
 読む順番は決まっていない
 いつリンク切れになるか分からない（長寿命性がない）し、いつ書き換えられ
ているか分からない
 複数のHTMLページをまとめた論理的な単位が存在しない
 「 ❝本❞を❝本❞たらしめている基本的な機能は，ある要素文書を特定の意図で
選択し，一定の順序に排列することにより，ひとまとまりのメッセージを表明
することにある。」（ 小林2012 ）としたら、モバイルとアプリ中心のWebは
決して❝本❞を表現できないのでは？

18. EPUBの今後の姿:革新的シナリオ
 電子書籍とWebは融合し別のものに進化する。
 Portable Web Publications (PWP)

19. Portable Web Publications for the
Open Web Platform
オフラインオンライン
相互参照、ユーザによる注釈は、どちらの形態
でも機能する。

20. 期待
 単なるWebページの集まりでしかなかったWebに, Webページを束ねた出版物
という概念が入る。
 Webの世界（混沌）と本の世界の融合・補完
 長寿命性を保証できる
 ゲームやWebサイトがユーザについての情報によってカスタマイズされるよう
に、電子本もそうなる。
 大人向けの本を、子供に読ませるために大人向けすぎる描写を書き換える。
 難しすぎる語彙は、読者のレベルに合わせて書き換える。
 主人公の名前を変える。

21. Web PublicationとPortable Web
Publicationについての参考資料
 Portable Web Publications for the Open Web Platform
 Web Publications Use Cases and Requirements
 PUBLISHING@W3C
 小林2012, Web文書と電子書籍 製本機能としてのspine情報、情報管理
Vol. 55 (2012) No. 11 P 802-809

22. WEBアノテーション
 Jlreqへの注釈のデモ(Hypothes.is)
 白馬岳のデモ(Viliostyle + Hypothes.is)

23. 期待される用途
 すぐ実現しそうなもの
 ゲラへの赤入れ
 論文査読者のコメント
 公開された論文についての議論

24. 過去にもあったWeb注釈(Wikipediaより)
 CritLink (1997)
 Annotea
 ThirdVoice
 Wikalong
 Fleck*
 stet
 Crocodoc
 ShiftSpace
 Blerp
 Google Sidewiki (2009)
 Dispute Finder
 SharedCopy

25. 失敗の理由？
 注釈を付けられたくない書き手
 注釈が囲い込まれることへの抵抗
 Google Sidewiki: the idea that won't die, but never lives

26. 標準化とオープンソース実装
 Web Annotation Data Model (W3C勧告 2017年2月23日）
 Web Annotation Protocol (W3C勧告 2017年2月23日）
 Web Annotation Vocabulary (W3C勧告 2017年2月23日）
 Hypothes.isのソースコード
 Apache annotator

27. 参考文献
 デジタル時代の明治20年問題 橋口氏