1. 平成23年度普及指導員試験
問1～
4月1日 中嶋

2. 問１
世界の食料事情に関する次の記述のうち、最も適切なものを選びなさい。
ア 世界の食料需給をめぐる中長期的な事情として、人口増加が挙げられ、今後の
世界の人口は平成62年(2050年)には150億人になると推計されている。
イ 農産物は基本的にまず生産国内の消費に仕向けられ、その余剰が貿易に回さ
れることなどから、生産量に占める貿易量の割合が低いという特徴がある。
ウ FAOは、世界の食料価格は現在は上昇基調にあるが、今後は世界各国での農
産物の増産により低下すると予測している。
エ 穀物生産の増加を支えてきた単収増加のペースは、需要増加のペースに比べ
て、相対的に高くなることが予想されている。
オ 我が国の農産物貿易の状況をみると、農産物純輸入額（平成20年（2008年）
）は539億ドルであったが、中国に追い越され世界第２位となった。

3. 解1
正解「イ」
H22白書P73～食料需給をめぐる中長期的な事情
ア ✕ 世界の人口は（中略）平成 62（2050）年には 1.3 倍の 91 億人になると推計（p.93）
イ ○
ウ ✕ 「バイオ燃料原料用の農産物の需要の継続的な増加も要因となり、今後とも穀物等の
需要が供給をやや上回る状態が継続する」、「食料価格は平成 19（2007）年以前に比べ高い
水準で、かつ、上昇傾向で推移する」見通し（p.80）
エ ✕ 穀物の生産量の増加を支えてきた単収増のペースが、今後、中国やインド等での人口
増や所得増に伴う需要増のペースに比べて、相対的に低くなることも考えられます（p.77）
オ ✕ 輸入額から輸出額を差し引いた農産物純輸入額は 539 億ドルとなり、引き続き世界一
の食料純輸入国。ただし、中国の食料輸入も年々増加している（p.87）。

4. 問2
我が国の食料自給率に関する次の記述のうち、最も適切なものを選びなさい。
ア 食料全体を対象とする総合食料自給率の中で高い値になるのは、生産額ベー
スで計算される自給率である。
イ 食料自給率の低下要因は、米の消費減少や畜産物・油脂の消費増加などの消
費面によるものであり、生産面の要因は関係していない。
ウ 我が国の食料自給率は重量ベースでみると、他の先進諸国と比べて最低水準
にあるが、穀物自給率ではイタリアやノルウェーより高い水準にある。
エ 食料自給率に関する内閣府の世論調査によると、食料自給率を高めるべきと
思う者の割合は「どちらかというと高めるべき」を含め６割となっている。
オ 東京都は、食料消費量が多いものの、生産額ベースで見る食料自給率は30％
水準を維持している。

5. 解2
正解「ア」
H22白書P89～食料自給率の動向と国民の意識
ア ○ （p.89）
イ ✕ 近年横ばいで推移しているものの、長期的にみると生産・消費両面の要因から低下し
てきました。（中略）農業就業者の減少・高齢化、耕地面積の減少等により国内供給力が弱
まったこと、さらに消費面の変化に対応した生産が確保できなかった結果、国内生産が縮小し
ています（p.92）
ウ ✕ 下図参照（p.91）
エ ✕ 高めるべき（「高めるべき」、「どちらかというと高めるべき」）と思う者は 9 割以上（p.93）
オ ✕ 東京 1％、大阪 2％、神奈川 3％（calベース）（p.89）。人口の多い県は低い傾向。

6. 問3
次の文章は、我が国のWTO農業交渉における姿勢について述べたものである。
（）内に当てはまる最も適切な語句の組合せを選びなさい。
我が国は、WTO農業交渉においては、「多様な農業の共存」を基本理念として、
各国の農業が発展できるような（ i ）に配慮した貿易ルールの確立のために、重要
品目の十分な数とその柔軟な取扱いの確保、（ ii ）の不適用、（ iii ）の新設を最重
要項目として交渉に臨んでいる。
i ii iii
ア センシティビティ 上限関税 輸出補助金
イ センシティビティ 上限関税 関税割当て
ウ センシティビティ アンチダンピング 輸出補助金
エ モダリティ アンチダンピング 輸出補助金
オ モダリティ アンチダンピング 関税割当て

7. 解3
正解「イ」
H22白書P120～新しい農産物貿易ルールの確立に向けて
我が国としては、農業交渉においては、「多様な農業の共存」を基本理念として、各国
の農業が発展できるようなセンシティビティに配慮した貿易ルールの確立を目
指しています。具体的には、重要品目の十分な数とその柔軟な取扱いの確
保、上限関税の不適用、関税割当ての新設を最重要項目として交渉に臨んで
います。今後とも、交渉妥結に向けてG10諸国等と連携しつつ、食料輸入国と
しての主張が反映されるよう最大限の努力を行うこととしています（p.120）。
ドーハ開発ラウンド
貿易障壁をとり除くことを目的として世界貿易機関（WTO）が主催する多角的貿易交渉である。

8. （WTO 農業交渉の状況）
自由貿易推進組
（ケアンズ諸国やアメリカ）
補
減 助
削
金
税
の
交渉難航中
関
撤
廃
国内保護重視組 特別な保護を要求組
（助成金を多用するEUや日本） （発展途上国）
WTO 農業交渉において、我が国は、今後も「多様な農業の共存」を基本
理念として、ドーハ・ラウンド交渉の前進と、WTO 体制の強化に向け、
加盟国と積極的に議論していくこととしています。

9. 問4
我が国の販売農家数、販売農家の経営耕地総面積、販売農家１戸当たり経営耕
地面積の過去５年の動向に関する組合せのうち、最も適切なものを選びなさい。
販売農家数 販売農家の 販売農家一戸当たり
経営耕地総面積 経営耕地面積
ア 増加 増加 増加
イ 増加 減少 減少
ウ 減少 増加 増加
エ 減少 減少 増加
オ 減少 減少 減少

10. 解4
正解「エ」
H22白書P207～農業経営体と農業就業者の動向
農業経営体の数は、一貫して減少。（中略）販売農家の数は、2005年に自給的農家
や土地持ち非農家を合わせた数を下回る状況になっていた。このように、自給的農家
や土地持ち非農家数が増加する一方、販売農家数が大きく減少した理由としては、
高齢化、後継者不足による離農や、小規模農家の集落営農への参加、大規模経営
体への農地の権利移転等により、販売農家の定義を満たさない農家が増加したこと
等が考えられます。
販売農家１戸当たり経営耕地面積は、2010年には 2005 年と比べて増加。総面積は
減少。

11. 問5
平成23年度（2011年度）から全国の農地において、地球温暖化防止や生物多様
性保全に効果の高い営農活動に取り組む農業者等に対して直接支援を実施する
環境保全型農業直接支払が行われることとなった。次の文章は、本制度で期待さ
れる活動とはどのようなものかを述べたものである。
（ ）内に当てはまる最も適切な語句の組合せを選びなさい。
環境保全型農業直接支払を通じて、化学肥料・化学合成農薬の使用低減のみな
らず、農地での（ i ）の増加につながる（ ii ）利用等の土壌管理、水田生態系の質
的向上につながる冬期の（ iii ）等、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の
高い営農活動が広がることが期待される。
i ii iii
ア 炭素貯留量 カバークロップ 湛水管理
イ 水分量 カバークロップ 排水管理
ウ 水分量 クリーニングクロップ 排水管理
エ 炭素貯留量 クリーニングクロップ 湛水管理
オ 水分量 クリーニングクロップ 湛水管理

12. 解5
正解「ア」
H22白書P43～環境保全に向けた農業分野での取組
（環境保全型農業直接支払が開始）
平成 19（2007）年度に導入された「農地・水・環境保全向上対策」のうちの営農活動
支援は、農地や農業用水等の資源を保全する共同活動と一体的に、化学肥料・化学
合成農薬の使用を大幅に低減するなど、地域でまとまって環境負荷を低減する先進
的な営農活動を支援するものであり、平成 21（2009）年度には、全国で 2,858 の活動
組織が約 7 万 5 千 ha の農地で取り組みました。
（中略）
このような状況のなか、平成 23（2011）年度からは、戸別所得補償制度の本格実施に
あわせて、共同活動を実施している地域であるかどうかにかかわらず、全国の農地に
おいて、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に取り組む農業
者等に対して直接支援を実施する環境保全型農業直接支払が行われることとなって
います。
この環境保全型農業直接支払を通じて、化学肥料・化学合成農薬の使用低減のみな
らず、農地での炭素貯留量の増加につながるカバークロップ等の土壌管理、水田生
態系の質的向上につながる冬期湛水管理等、地球温暖化防止や生物多様性保全に
効果の高い営農活動が拡がっていくことが期待されます。
カバークロップ
土壌浸食防止、景観の向上、雑草抑制などを目的として、農作物を栽培していない時期に露出する地表
面を覆うために栽培される作物のことです。ライグラスなどの牧草類、大麦などの麦類、れんげなどのマメ
科植物が、それぞれの生育、栽培特性に応じて、様々な場面で活用されています。

13. 問6
平成22年（2010年）は国連の定める生物多様性年であり、また、夏期の異常高温
が続き、国民の環境意識も大きく高まったと言われている。最近の食と農の分野に
おける環境・資源・エネルギーに関する次の記述のうち、最も適切なものを選びな
さい。
ア カーボンフットプリントとは、製品成分における炭素の割合を商品に表示するこ
とである。
イ フード・マイレージは、生産地から食卓までの距離が短い食材を利活用するレス
トランに与えられるグレード・ポイントである。
ウ SATOYAMAイニシアティブとは、世界の様々な地域において、伝統的な方法を
学びながら、土地と自然資源の適切な利用や管理の方法で自然の保全を目指す
ことである。
エ 水力エネルギーの活用を促進するため、土地改良区等の農業用水利施設等
により発電された電力を民間企業が利用する際に、施設等の管理費用を国が補
てんする制度がある。
オ ドギーバッグとは、ペットの餌と排せつ物を同時に持ち運べるように開発された
バッグで、環境美化の効果が期待されている。

14. 解6
正解「ウ」
H22白書P30～環境保全に向けた食料、農業、農村分野での取組～
ア ✕ ある製品の原材料調達から生産、流通、使用・維持管理、廃棄・リサイクルの全段階で
排出された温室効果ガスの排出量を合計し、それを CO２排出量に換算して商品に表示し、農
業者や消費者の排出削減意識を高めようとするもの（p.31）
イ ✕ 食料の輸送量に輸送距離を乗じた指標。「生産地から食卓までの距離が短い食料を食
べた方が輸送に伴う環境への負荷が少ないであろう」という仮説を前提として考え出された
（p.31）。
ウ ○ （p.27）
エ ✕ 「再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、再生可能エネルギーの固定価格買
取制度の導入、施設整備に対する支援や技術開発、実証研究の実施等の取組を進めていく
必要があります」という記述はあるが（p.60）、管理費用の補填などの記述は見当たらず。
オ ✕ 外食での食品ロスを減らすために用いられる持ち帰り用の容器のこと（p.37）。