11/20/2018 自民党AI本部
PFN Fellow 丸山宏
Twitter: @maruyama
「人工知能」を
どのように読み解くか
「人工知能(AI)」とは学問領域
学問領域 派生した技術 応用製品
物理学
人工知能
(AI)
内燃機関
半導体
自動車
コンピュータ
探索アルゴリズム
音声認識
画像認識
乗換案内
AIスピーカー
自動運転
これを物理と
は呼ばない
「AI」と呼ば
れることも…
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現在急速に進化している2つの技術
• 統計的機械学習
– 過去データの統計的パターンを用いて将来を予測する技術
• 例1.Google: 大量の猫画像で訓練し、「これは猫か」を判別させる
• 例2.Amazon:「これを買った人はあれも買っています」
– 基本的に統計
• 未来が過去の繰り返しでないと無力
• 異常事態には対応できない、臨機応変な対応はできない
• 数理最適化
– 所与のルールの下で、所与の目的関数を最大化する打ち手を探索する技術
• 例1.カーナビ: 「最短時間で目的地に着く」
• 例2.AlphaGo Zero :「ゲームに勝つ」
– ルール・目的関数が不完全だと、不適切な解が見つかることもある
• 人:「コーヒーをとってきて」
• ロボット: スタバへ行き、列に並んでいる他の客を殺してコーヒーをとってくる
– 目的達成の意味では正しいが… 「やって欲しくないこと」を全部書き下すのは不可能
(フレーム問題=人工知能の未解決問題)
社会がデジタル技術に急激に依存することの危険
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• 現代社会の根底にある(西欧的な)仮定:「啓蒙思想」
– 「あらゆる人間が共通の理性をもっていると措定し、世界に何らかの根本法
則があり、それは理性によって認知可能であるとする考え方」(Wikipedia)
– 理性に基づく「自由意思を持った個人」が民主主義、科学、資本主義の前提
• 一方で、人間の「自由意思」の限界に対する認識が高まってきている
“物理学の進歩が全能の神の存在を
否定したように、生命科学と情報技
術の進歩が人間中心主義の神、すな
わち「自由意志を持った個人」の存
在を否定しつつある “
ISBN-13: 978-1784703936
「デジタル主権(Digital Sovereignty)」の2面性
• 元々、インターネットは国境や国家主権のない世界
– オープン、ボトムアップな仕様策定(IETF, W3C, …)
• データと情報の流れを握れば人々の行動を誘導できることがわかってきた
– 消費行動の誘導: A/Bテスト、リコメンデーション、…
– 政治指向の誘導: Fake News、エコーチャンバー効果、デジタルゲリマンダー、…
• GAFAの脅威
– データを少数の巨大企業に握られることへの不安
– GDPR:EUの「デジタル主権」コンセプト
• 中国・ロシアの国家体制モデル
– 「デジタル主権」を体制安定のツールとして用いる
– 自由主義・民主主義に代わる政治体制としての位置付け?
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➔デジタル主権は両刃の剣
なぜ人材が不足しているように見えるのか – 「IT」の2極化
伝統的な日本企業にとってのIT スタートアップにとってのIT (サイバー
エージェント、メルカリ、…)
企業におけるITの位置付け ITはコスト ITはコア
開発部隊 多重請負契約による委託開発 インハウス開発
開発プロセス 「ものづくり」パラダイム
(ウォーターフォール開発)
「サービス」パラダイム
(アジャイル開発・DevOps)
品質 文書化、網羅的テスト、契約、ガ
バナンス
動くソフト、Continuous Integration、個人
との対話
コミュニティ・メディア 経団連、JEITA、日本経済新聞、
…
オープンソース、github、Kaggle、Qiita、
Connpass、…
人材育成 教育(育てる):大学・企業にお
ける教育カリキュラム
学習(育つ):PBL、競技プログラミング、
IPA未踏、
エンジニアへの報酬 年功序列 能力給 (e.g. サイバーエージェント初任給
>720万)
優秀な人材はこちらに!
(ただし、税制や調達基準が足かせに)
政府に見えている「IT産業」
人材育成に関するPFNコメント
• 育成よりも開発方法論
– 「AI人材不足を抜本的に解消する」ために、やみくもに育成すればよいというものではない。1960年
代に同様なソフトウェア技術者不足の議論があり「ソフトウェア危機」と呼ばれたが、そこで現れたの
が「ソフトウェア工学」というソフトウェア開発方法論の知識体系であり、これによって人材不足が解
消された。同様に「機械学習工学」とも呼ぶべき方法論の研究開発を推進すべきである。
• 海外人材獲得のチャンス
– 海外からの人材獲得については、米トランプ政権が閉鎖的であるのは千載一遇のチャンスである。現在、
PFNへの応募者の過半数が海外からの応募者であり、このことを強く実感している。東京はシリコンバ
レーに比べて圧倒的に生活費が安く、治安も良い。加えて、日本には著作権法の47条7項があり、日本国
内で機械学習及びそれに必要な行為を行うことには原則として著作権の縛りがない。これらの論点を国
として大きくアピールし、海外からの人材を呼び込むべきである。
• 人材流動性
– 特に深層学習においては、データを持っている産業界での技術革新が速いので、優秀な人材をアカデミ
アだけでなく、産業界での経験を積ませるような施策があるとよい。
総合科学技術・イノベーション会議 政策討議 2/1 http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20180201/siryo4.pdf より、一部修正。
「日本は既に負けている」というメッセージを政府が出してよいのか?
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ロボット自動制御国際会議ICRA2018でHuman-Robot
Interaction部門 最優秀論文賞受賞 (5/24)
世界に伍して競争している日本の研究開発者がいることを認識してほしい
内閣府「政策討議(AI戦略)論点」http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/juyoukadai/13kai/siryo4-1.pdf
Google AI Open Image Challenge で世界2位の精度達成
(8/31)
SONYが産総研ABCI上で分散学習の世界最高速を達成
(11/13)
加えて、日本企業の持つデータは、世界で戦えるレベルの潜在的な研究開発力を持つことにも留意
• 産業用ロボット、メディカル、自動車、素材、カメラ、ゲームなど
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統合イノベーション戦略推進会議の「AI戦略」を
全力でご支援くださるようお願いします
Thank You

20181120 ldp ai