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人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム

             Theme 2 社員区分制度と社員格付け制度

【構成】
1.社員の多様化は何を意味するのか
2.社員区分制度-人事管理の基盤となるシステム①
3.社員格付け制度-人事管理の基盤となるシステム②
4.国際比較-何が日本の特徴か


1.社員の多様化は何を意味するのか
変わりつつある人事管理の基盤
2つの構造変化

 1 企業で働く労働者構成(=従業員区分)の多様化
  正社員と非正社員-非正規従業員の増大に止まらない内部構成の変化


    正 社 員:管理職 ⇔ 専門職・専任職 
          総合職 ⇔ 一般職
          全国社員 ⇔ 地域限定社員

    非正社員:パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣労働者
                     
 ② 変わりつつある「偉さ」の秩序


   これまでの基盤:「長く務めること」=「勤続年数」で「偉さ」を評価
     ↓
   これからの基盤:「仕事ができるかどうか」=「能力」で「偉さ」を評価

    
          これまでの人事管理の基本構造
                ∥

  「長期にわたる人材の育成、その確保と育成」に変化


2.社員区分制度-人事管理の基盤となるシステム①




                              -1-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム




                           正
                           社
                           員
           総合職
            総合職


           一般職


   パートタイマー、アルバイトなど      非正社員

   派遣労働者
   請負労働者

   外注、委託、アウトソーシング



    内生分野:企業が自社の事業活動内部で行う業務
    外生分野:企業が他社に任せた業務

    正 社 員:雇用契約期間の限定のない社員


    非正社員:雇用契約期間、仕事場所・内容・時間が限定される社員



2-1 社員区分制度の設計に求められる2つの課題

  a)区分の程度 =「どこまで細かく区分するのか」

  b)区分の基準 =「どのように区分するのか」
   ↓
〔評価・賃金・配置・教育訓練〕=〔人事管理〕が適用される従業員の範囲が決定
               = 内部労働市場の構造を決定

 a)どの程度の区分が最適か
   理 想
   従業員の多様性 → 区分の細分化
               = 多様性への適合
               = 仕事特性に合った人事管理
                  例)営業職:短期的な成果(売上高)を重視する人事管理
                    技術職:高度な専門能力の有無を問う人事管理
   問題点
   区分の細分化 = 多数の人事管理体系がひとつの企業に同居
          = 異なる人事管理体系が適用される従業員間のバランス調整が困難
               
              例)営業職社員の給与 と 技術職社員の給与 の均衡とは?
          
          
           ① 均衡の取り違え → 社員群間の公平性への不満(↑)

                               -2-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム

                     → 労働意欲(↓)
          
           ② 従業員の企業内流動性の阻害+意思疎通・協調性の阻害
            → 組織全体の生産性(↓)

   現 実
   想定される解決策=社員区分の単一化か?
             ↓
            不満「仕事の違う社員と同じ評価がなされて賃金が決まるのか?」
             ↓


  現在の社内状況から〝単一化と細分化〟どちらが効果的を手探りで決定

 b)何が望ましい区分の基準か
   従業員の多様性に基づく4つのタイプ

   ① 仕事内容の違い

    職種による区分
    例)ブルーカラー(技能職)とホワイトカラー(事務職・技術職)


   ② 将来のキャリア形成に対する企業の期待の違い
    
     民間企業  総合職=幹部層に育ってゆくことを期待される
          一般職=補助的な業務を担当することを期待される
     国家公務員 「キャリア」と「ノンキャリア」 ☜ 採用試験が違う

   ③ 従業員のキャリアの段階の違い
                                    評価の重点

    新 人 期-能力養成期:業務に必要な能力を基礎から勉強             →    能力向上
    一人前期-能力拡充期:成長し、さらに高度な能力を養成               →   能力向上+成果
    管理職期-能力発揮期:蓄積した能力を発揮し成果をあげる →                成果


   ④ 企業が期待する働き方の違い

    パートタイマー:短い労働時間での就労を前提
    正社員-全 国 社 員:全国・世界のどこでも勤務することを前提
        地域限定社員:特定の地域内での勤務を前提

 まとめ
 a)+b)=社員区分の決定
        ↓
       現実には、異なる社員区分を、異なる社員群に対して、
       どの程度異なる人事管理を適用するか、が問題となる。
      
      例えば、2つの社員群に対し、
       まったく異なる人事管理を適用するのか、

                              -3-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム

        特定の分野に限って異なる人事管理を適用するのか、など。


2-2 変わる正社員の区分




                                       3.社員格付け制度-人事管理の基盤と
                                       なるシステム②
                                       3-1 社員格付け制度の類型




    長期の
    労働意欲             発揮された          仕事               成果
                     能力

        潜在能力




  年 功    職能          受動型            職務分類制度         成果主義
  制度     資格制度        職能分類制度                        制度




① 年功制度:年齢・勤続年数を代理変数として測定した、
        労働意欲の程度に従って従業員をランキングする制度

② 職能資格制度:潜在能力によって
              従業員をランキングしてゆく制度


                              -4-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム

③ 職務分類制度:配置されている仕事の重要度に応じて
              従業員をランキングする制度

④ 変動型職能分類制度:発揮された能力によって
              従業員をランキングしてゆく制度

⑤ 成果主義制度:成果によってランキングしてゆく社員格付け制度

             成果が短期的に変動するため、


                 長期的な観点からの「偉さ」は決め難い




                              -5-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム


3-2 大企業の「偉さ」の基準=「職能資格制度」とは何か?




 ⑴ 二重のランキング・システム
 日本企業の社員格付け制度の特徴

 2つの「偉さ」の尺度で 従業員をランキングする
  
   ①「役職」ランクによる職階制度    例)部長-課長-係長-一般社員

  ②「職務遂行能力」による職能資格制度 例)参与-参事-主事-社員1級・2級



 職能資格制度と職階制度の関係
  ・「偉さ」の段階のきめ細か さ

     職能資格制度     >    職階制度
    複数の職能資格 ←〔対応〕→ ひとつの役職
      ↓
    職能資格制度は社員序列をより広く統制する
  ・管理職の選抜
    職能資格制度により「能力」が認定された従業員 → 管理職に昇進
  ・賃金の決定


    職能資格 > 役職ランク

                   ↓
              社員格付け制度の基本= 職能資格制度

 ⑵ 職能資格制度の仕掛けと仕組み

 根本にある考え方

   「成長に力点を置く人間基準」⇔ 欧米型「職務に力点を置く職務基準」
     ⇓
   能力開発主義へ
              
 3つの仕掛け
  ① 評価の基準
   従業員の「職務遂行能力」の評価
     「何をもって能力と考えるのか」
                              -6-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム

    「その能力をいかに表現するか」
      ↓ 

        ↓


      「職能資格等級基準」=絶対基準
        絶対基準に基づく、絶対能力の評価
        絶対基準となる能力要件の提示
        ↓
    
      ・仕事内容の異なる従業員の共通評価・共通格付けができる


      ・従業員間の公平性の確保


  ② 役職と資格の分離
   評価基準=絶対能力=役職から離れた個人の持つ「職務遂行能力」での評価
      ↓

      ・従業員の「職務遂行能力」に見合った資格の付与
  


  ③ 資格に対応して決定される処遇(特に給与)
   ⑵「役職と資格の分離」ルールと組み合わせての運用
      ↓

    ・役職と給与の分離が可能となる
    ・同じ仕事をしていても、能力を高めれば資格と給与が上がる
    ・違う仕事についても、資格と給与は変わらない


 3つの利点

  ① 従業員同士が協力しあうようになる
     働き方の異なる従業員を共通の基準で評価・格付けする
      → 人事管理の公平性 → 集団主義の利益

  ② 組織の柔軟性を確保できる
    「仕事と処遇を分離する」ルール
      → 給与は仕事ではなく資格等級で安定的に決められている
      → 仕事の変化に対し、機動的に人材を配置することができる

  ③ 能力を上げれば給料が上がる
     個人の能力開発努力 ≒ 給料 → 人材の能力向上の促進 ≒ 企業成長への貢献


 3つの問題点

  ① 運用が年功的になる

                              -7-
人的資源管理論                                         Theme 2 社員の多様化と基本システム


  ② 賃金と貢献度のアンバランス

  ③ 社外の人材に魅力がない労働条件



4.国際比較-何が日本の特徴か


                   日  本                   欧  米
社員区分制度       単一タイプ                  分離タイプ
              評価制度:同一または類似           評価制度
                                      ○ ホワイトカラー(WC)
               賃金制度:同一または類似           × ブルーカラー(BC)
                                     賃金制度
               賃金形態:月給制               WC:職務給+成果給
                                      BC:職務給
社員格付け制度      人間性重視(潜在能力など)          仕事系重視

     〔規 定〕 
人事管理のあり方 a)単一化された社員区分制度             a)分離された社員区分制度
          b)人間系重視の社員格付け制度           b)仕事系重視の社員格付け制度
組織のあり方    ○社員間の協調性の強化               ○賃金を仕事とリンクさせて
          ○仕事の配分と人の配置の               決めることができる
                                      ↓
               柔軟性を高める
                                     企業への貢献の程度で
             ×a)                     報酬を決めやすい
               企業にとって
               重要な人材・部門・職種を         ×a)
               優遇することが難しい            従業員間の協調性が少ない

             ×b)                    ×b)
               過度な潜在能力の重視            2つの問題
                ↓                     仕事の柔軟な配分
               昇進と賃金が仕事から乖離            従業員の能力開発の促進




                              -8-

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  • 2. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム 正 社 員 総合職 総合職 一般職 パートタイマー、アルバイトなど 非正社員 派遣労働者 請負労働者 外注、委託、アウトソーシング 内生分野:企業が自社の事業活動内部で行う業務 外生分野:企業が他社に任せた業務 正 社 員:雇用契約期間の限定のない社員 非正社員:雇用契約期間、仕事場所・内容・時間が限定される社員 2-1 社員区分制度の設計に求められる2つの課題 a)区分の程度 =「どこまで細かく区分するのか」 b)区分の基準 =「どのように区分するのか」  ↓ 〔評価・賃金・配置・教育訓練〕=〔人事管理〕が適用される従業員の範囲が決定                = 内部労働市場の構造を決定 a)どの程度の区分が最適か 理 想 従業員の多様性 → 区分の細分化  = 多様性への適合 = 仕事特性に合った人事管理 例)営業職:短期的な成果(売上高)を重視する人事管理 技術職:高度な専門能力の有無を問う人事管理 問題点 区分の細分化 = 多数の人事管理体系がひとつの企業に同居        = 異なる人事管理体系が適用される従業員間のバランス調整が困難                           例)営業職社員の給与 と 技術職社員の給与 の均衡とは?                   ① 均衡の取り違え → 社員群間の公平性への不満(↑) -2-
  • 3. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム                    → 労働意欲(↓)          ② 従業員の企業内流動性の阻害+意思疎通・協調性の阻害           → 組織全体の生産性(↓) 現 実 想定される解決策=社員区分の単一化か?            ↓          不満「仕事の違う社員と同じ評価がなされて賃金が決まるのか?」             ↓   現在の社内状況から〝単一化と細分化〟どちらが効果的を手探りで決定 b)何が望ましい区分の基準か 従業員の多様性に基づく4つのタイプ ① 仕事内容の違い 職種による区分 例)ブルーカラー(技能職)とホワイトカラー(事務職・技術職) ② 将来のキャリア形成に対する企業の期待の違い    民間企業  総合職=幹部層に育ってゆくことを期待される         一般職=補助的な業務を担当することを期待される 国家公務員 「キャリア」と「ノンキャリア」 ☜ 採用試験が違う ③ 従業員のキャリアの段階の違い                                   評価の重点   新 人 期-能力養成期:業務に必要な能力を基礎から勉強 → 能力向上   一人前期-能力拡充期:成長し、さらに高度な能力を養成 → 能力向上+成果   管理職期-能力発揮期:蓄積した能力を発揮し成果をあげる → 成果 ④ 企業が期待する働き方の違い   パートタイマー:短い労働時間での就労を前提   正社員-全 国 社 員:全国・世界のどこでも勤務することを前提       地域限定社員:特定の地域内での勤務を前提 まとめ a)+b)=社員区分の決定        ↓ 現実には、異なる社員区分を、異なる社員群に対して、 どの程度異なる人事管理を適用するか、が問題となる。            例えば、2つの社員群に対し、 まったく異なる人事管理を適用するのか、 -3-
  • 4. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム 特定の分野に限って異なる人事管理を適用するのか、など。 2-2 変わる正社員の区分 3.社員格付け制度-人事管理の基盤と なるシステム② 3-1 社員格付け制度の類型 長期の 労働意欲 発揮された 仕事 成果 能力 潜在能力 年 功 職能 受動型 職務分類制度 成果主義 制度 資格制度 職能分類制度 制度 ① 年功制度:年齢・勤続年数を代理変数として測定した、 労働意欲の程度に従って従業員をランキングする制度 ② 職能資格制度:潜在能力によって 従業員をランキングしてゆく制度 -4-
  • 5. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム ③ 職務分類制度:配置されている仕事の重要度に応じて 従業員をランキングする制度 ④ 変動型職能分類制度:発揮された能力によって 従業員をランキングしてゆく制度 ⑤ 成果主義制度:成果によってランキングしてゆく社員格付け制度             成果が短期的に変動するため、 長期的な観点からの「偉さ」は決め難い -5-
  • 6. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム 3-2 大企業の「偉さ」の基準=「職能資格制度」とは何か? ⑴ 二重のランキング・システム  日本企業の社員格付け制度の特徴 2つの「偉さ」の尺度で 従業員をランキングする   ①「役職」ランクによる職階制度    例)部長-課長-係長-一般社員 ②「職務遂行能力」による職能資格制度 例)参与-参事-主事-社員1級・2級  職能資格制度と職階制度の関係 ・「偉さ」の段階のきめ細か さ 職能資格制度     >    職階制度 複数の職能資格 ←〔対応〕→ ひとつの役職   ↓ 職能資格制度は社員序列をより広く統制する ・管理職の選抜   職能資格制度により「能力」が認定された従業員 → 管理職に昇進 ・賃金の決定   職能資格 > 役職ランク                    ↓ 社員格付け制度の基本= 職能資格制度 ⑵ 職能資格制度の仕掛けと仕組み 根本にある考え方 「成長に力点を置く人間基準」⇔ 欧米型「職務に力点を置く職務基準」   ⇓ 能力開発主義へ   3つの仕掛け ① 評価の基準  従業員の「職務遂行能力」の評価 「何をもって能力と考えるのか」 -6-
  • 7. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム 「その能力をいかに表現するか」      ↓    ↓ 「職能資格等級基準」=絶対基準 絶対基準に基づく、絶対能力の評価 絶対基準となる能力要件の提示 ↓      ・仕事内容の異なる従業員の共通評価・共通格付けができる ・従業員間の公平性の確保 ② 役職と資格の分離  評価基準=絶対能力=役職から離れた個人の持つ「職務遂行能力」での評価     ↓  ・従業員の「職務遂行能力」に見合った資格の付与   ③ 資格に対応して決定される処遇(特に給与)  ⑵「役職と資格の分離」ルールと組み合わせての運用     ↓   ・役職と給与の分離が可能となる   ・同じ仕事をしていても、能力を高めれば資格と給与が上がる   ・違う仕事についても、資格と給与は変わらない 3つの利点 ① 従業員同士が協力しあうようになる 働き方の異なる従業員を共通の基準で評価・格付けする → 人事管理の公平性 → 集団主義の利益 ② 組織の柔軟性を確保できる 「仕事と処遇を分離する」ルール → 給与は仕事ではなく資格等級で安定的に決められている → 仕事の変化に対し、機動的に人材を配置することができる ③ 能力を上げれば給料が上がる 個人の能力開発努力 ≒ 給料 → 人材の能力向上の促進 ≒ 企業成長への貢献 3つの問題点 ① 運用が年功的になる -7-
  • 8. 人的資源管理論                                       Theme 2 社員の多様化と基本システム ② 賃金と貢献度のアンバランス ③ 社外の人材に魅力がない労働条件 4.国際比較-何が日本の特徴か 日  本 欧  米 社員区分制度 単一タイプ 分離タイプ 評価制度:同一または類似 評価制度   ○ ホワイトカラー(WC) 賃金制度:同一または類似   × ブルーカラー(BC) 賃金制度 賃金形態:月給制 WC:職務給+成果給   BC:職務給 社員格付け制度 人間性重視(潜在能力など) 仕事系重視 〔規 定〕  人事管理のあり方 a)単一化された社員区分制度 a)分離された社員区分制度 b)人間系重視の社員格付け制度 b)仕事系重視の社員格付け制度 組織のあり方 ○社員間の協調性の強化 ○賃金を仕事とリンクさせて ○仕事の配分と人の配置の  決めることができる   ↓ 柔軟性を高める  企業への貢献の程度で ×a)  報酬を決めやすい 企業にとって 重要な人材・部門・職種を ×a) 優遇することが難しい  従業員間の協調性が少ない ×b) ×b) 過度な潜在能力の重視  2つの問題  ↓   仕事の柔軟な配分 昇進と賃金が仕事から乖離 従業員の能力開発の促進 -8-