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新英語教育研究会 第 49 回全国大会 広島大会
~すべての子供たちに外国語を学ぶ喜びと平和な未来をひらく力を~
第 8 分科会 表現力、特に自己表現の力をどう広げ、どう高めるか
英語を通して命の尊さを考え、自己表現活動につなげる 
山口県立岩国総合高等学校 赤松敦子
発表内容の概要
Ⅰ 実践の動機・きっかけ 
A 地域社会・生徒の状況:自分の街が東アジア最大の軍事基地にされそうになっても、社会問題に無関心な若者たち
B 実践のねらい:
1 社会問題や自国・外国の文化について、自分の意見を発表できるようになること。
2 またその意見について外国の生徒と交流することで、様々な国の人々との共通点や多様性について学び、異文化圏の
人々の異なる生活習慣や考え方に対する関心を深め、多様性を尊ぶ精神を養う。
Ⅱ 実践のあらまし  
A 普段の授業との関連(教科書の扱い方):
1 できるだけ教科書に出てきた内容・文法項目と関連付ける。(資料1)
2 教科書との関連がはっきりしているときは活動時間を授業時間内で多く取る。
3 送った作文の返事や、自分の意見を考えるための資料紹介は授業の前か後に短くすませる。
4 教科書の中で取り扱う内容を精選する。
5 長い作文は家での課題とする。
B 自己表現活動と交流の流れ
   1 その年の教科書や、交流相手からの提案、交流団体で募集しているプロジェクトなどを考慮して、その年度に扱う主  
    な自己表現活動の作品のテーマを決める
   2 学校間の国際交流団体のホームページに交流申し込みの profile を掲載してもらう。交流の目的・交流期間・生徒数・学
年・話題・作品送付方法・生徒同士 1 対 1 の交流か、団体としてのまとめた作品のやりとりかなどについて書いてお
くとよい。掲載しただけではそう申し込みの連絡はこないので、話題にしたいことのキーワードなどで、国際交流団体
のサイト内検索をして、こちらからも交流申し込みのメールを送る。(a)交流直ぐに開始可能、(b)( )月から希望、(c)
断りなどに返事を分類して、生徒作品ができた時にそれを送るべきメールアドレスや住所をまとめておく。(p.10 ll.6
~36 参照)
   3 生徒に世界地図のプリントを配って、交流希望相手国を聞いたり、前年度に送られてきた作品があればそれらを紹介し
て、交流への関心を高める。(p.20 ll.30~36 参照)
   4 教科書の関連項目に入る前に、その話題で作文を書いて外国の生徒に読んでもらうことを知らせておく。
   5 教科書以外に資料が必要であれば、本やインターネット上の資料などを紹介し、更にそのテーマの内容に関心を持ち、関
連知識が増えるようにする。(p.20 ll.37~41)(p.21 ll.14~19)(p.6 l.19~p.7 l.4)(p.22 ll.25~32)
   6 長い文章を書く場合、まず日本語で作文を提出させて、英語に直しやすい日本語になるように添削する。難しい語彙など
はヒントを書いておく。
   7 英文を添削し、ALTにチェックしてもらう。
   8 全員の作品をまとめて、関連する写真や生徒の描いたイラストなども加えて交流相手校に送る。(資料2) (展示作品)
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   9 返ってきた返事を紹介する。返事に対するお礼や感想も短くてもよいのでできるだけ送るようにする。(展示作品)
10 交流の作品を、文化祭や外部の展覧会、生徒の意見を発表できるホームページなど様々な所に出して、生徒が「自分たちの
意見が、教室の中だけでなく、様々なところで読まれている」という意識を持てるようにする。(p.20 ll.30~34)
  11 交流相手校からの交流作品のリクエストにも授業の予定に差し支えない範囲でできるだけ応える。授業では時間を取れ
ない時は、課題にしたり、ボランティアの生徒だけの参加という形もある。(p.23 ll.2~3) (p.25 ll.5~ 6)
C 生徒はどう変わったか:(pp.18~20)(資料3)
1 英語は本当に外国の人と意見を交わすのに使えるのだと実感し、英語にも外国の人々や文化に関心を持った生徒が多く
いた。
2 社会問題についてもっと関心を持って、改善のためにできることから始めたいと感想に各生徒も多かった。
3 実際に問題解決に取り組んでみた生徒もいた。
4 平和や環境の問題について深く考えることで命の尊さを改めて認識した生徒もいた。
Ⅲ 実践の成果と課題 
A 実践の意義:
1 長い英文を書くことに慣れた。
2 学習意欲が高まった。
3 異文化の人々の生活様式や考え方について関心が高まった。
4 学んだことを行動につなげることができた。
B 課題:
1 交流の継続。
2 学年のスケジュールのずれを考慮した作品の送付時期、返事を返す時期の調整。
   3 学習以前の問題を抱えている生徒への対応。
Ⅳ 生徒作品の紹介 (資料4)(展示作品)
はじめに
広島大学で行われた平和教育についての教員免許更新講習で、『アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか』(ロナルド・タカキ
著)という本が紹介された。原爆が投下された理由は複数あるが、側近・軍・科学者達から反対意見が出されても、その投下の最終
決定を下したハリー・トルーマンが人種差別主義者で、学歴コンプレックスなどから「強いアメリカの強い大統領」になることにこ
だわりがあったこともその一因の可能性があるとして記述されていた。自分で教えているクラスの中に、または自分の生徒と交流す
る外国の生徒の中に、将来トルーマンのような決断を下す生徒がいる可能性もある。生徒達が、人権教育や平和教育を充分に受けて、
学歴が人間の価値であるかのような思いこみに囚われない大人に育つよう手助けすることは、戦争・犯罪者・自殺者のいない平和
な社会を創るために大変重要なことだと改めて認識した。
人権や平和や環境等、世界的に重要な問題を、ALTと一緒に何かの活動をしたり、インターネットや郵便を利用して外国の生徒
たちと交流したりといった「体験」から学ぶ機会を増やすと、より強く学んだことが心に残り、視野が広がるという教育的効果がある
のではないかと思われる。それが英語学習の重要な動機づけとなることを実際に度々見てきた。また、そうした「体験」を共有するこ
とで、ALTや外国の生徒たち、その生徒たちを教えている先生方の、日本人に対する固定観念や偏見を少しでも変えることができ
るかもしれないという草の根の国際交流の価値も測り知れない。
生徒達と授業以外の時間に図書室でいろいろ雑談をしていると、自分の人生に対しても、社会のあり方に対しても悲観的な発言を
する生徒が時々いる。自分の人生も、今の問題が山積みの社会も、自分一人の力ではどうしようもないから変えようという努力は無
駄だという考えで、努力している人をあざ笑ったりもする。自分に欠点があっても、ありのままの自分を愛するという自己肯定感が
足りないために、本当の意味で他を愛するということもできないことからそういう無力感が生じるとカウンセリングのセミナーで
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聞いたことがある。そういう基本的な心の問題も考えながら、英語を通しての交流で、前向きな考えを生徒が自分の中から引き出せ
るような機会を作れないものだろうか。できるだけいろいろな場面で長所を褒めるということがまず基本かもしれない。それはただ
教科書や問題集の問題が解けたとか、その例文を正確に覚えることができたということで褒めるより、日本語では言いたいことが伝
わらない世界に住んでいる人たちに、自分で考えて字や絵なども使って個性豊かに表現したことを褒めるほうが、本人の達成感や自
尊感情を高めるのではないだろうか。日本人の生徒達のそうした感情や学業に対する興味が他国に比べて大変低いことは学力低下
の問題よりももっと重大な問題であると OECD の調査結果等で指摘されている。
また、岩国市で空母艦載機移転拒否を理由に 35 億円もの補助金がカットされた後に、空母艦載機移転を拒否する集会が市内で何
度か開かれたが、参加者は年配の方が多く、高校生・大学生ぐらいの年頃の人は大変少なかった。自分の街が極東最大の軍事基地に
されようというのに、若者は知っていてそんなものは大人の考える問題と思い参加する気がないのか、単に事実を知らされていない
のかどちらだろうか。受験勉強の籠の鳥になっているうちに、社会の動きに疎くなっているのだろうかと考えると、センター対策の
問題集にずいぶん時間を割いている自分の授業が恐ろしくなった。
前置きが長くなったが、以上のような理由で、2008 年から、「平和」のテーマを中心にして生徒が自己表現する機会を作り、作品で
国際交流をする活動を英語の授業に取り入れた。平和メッセージという自己表現の試みが生徒の学びを深めるという報告が英語教
育雑誌などにこれまでも掲載されてきたし、自分でも英会話部の活動として以前取り組んだことがあったので、改めて授業の中で規
模を広げて取り組もうと考えた。
<前半>山口県立高森高等学校での実践
前任校である山口県立高森高等学校で、3 年生のWriting・時事英語・国際コミュニケーション、そして 2 年生の国際コミュ
ニケーションを担当した。高森高校はクラス数は 9 で、生徒数は約 350 人の普通高校である。併設の中学校から進学する生徒と高校
から入学する生徒の間での学力差が大きい。この時は図書館運営も担当していて、読書を通じて考え行動する生徒を育てる必要性を
常に感じていたので、図書館を利用した調べ学習も活用する計画を立てた。以下にその概要を述べる。
Ⅰ 平和についての関心を喚起する教材提示
 A Writing
1 オードリー・ヘップバーンのインタビューのビデオ視聴
    Writing の教科書に紹介の文章が載っていたので、関連資料としてインタビューのビデオを視聴。その中に出て
くるアフリカの飢餓の状況と、飢餓に苦しむ子ども達を助ける理由は「愛」というヘップバーンの言葉を紹介。
2 ジョン・レノンの歌を元にして大勢の歌手が平和を訴えるビデオクリップ視聴
    Writing の教科書にジョン・レノンの紹介の文章が載っていたので、関連資料としてジョン・レノンの ”Give
Peace a Chance”の曲を元にして特に湾岸戦争に反対するメッセージを大勢の歌手が共同で録音したビデオ(販
売元 Wienerworld)を視聴。湾岸戦争の映像について説明を補足する。歌詞とジョン・レノンに対するアメリ
カ政府の対応の資料を配布。
 B 時事英語
  1 チベット問題についての資料紹介
    時事英語で、『週刊 ST』という英字新聞の 2009 年 3 月 20 日号の”Dalai Lama blasts ‘brutal crackdown’”の記
事を読み、チベット問題について山際素男氏の『チベット問題』など図書室にあるチベットに関する本を紹介。チ
ベット人が拷問を受ける場面の記述だけを読んで中国人全体に対して「怖い」という偏見を持たないように解説。
アブグレイブなどの強制収容所での虐待や戦時中の日本人によるアジアの様々な国の人々に対する虐待、様々な国
での先住民虐待など、巨大な権力によって殺人が正当化される異常な環境の中では様々な人が同じような行動を取
る可能性があることを考えてみるように指導。
2 イラク戦争の実情についての DVD 視聴(2009 年度)
    時事英語で、『週刊 ST』の 2009 年 5 月 1 日号の”Release of ‘torture memos’ sparks fury”
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(ブッシュ政権時代に使用された CIA による拷問に関する覚え書きをオバマ大統領が公表したニュース) と 5 月 22 日号
の”U.S soldier kills five comrades in Iraq”(イラクで長期に軍務についた兵士が同僚を射殺し、米軍事司令部が兵士の心の
健康について調査を開始したことと、アフガニスタンの兵力増強を求めてきた現地司令官が解任されたニュース)の記事を
読んだので、その参考資料として「イラクの子どもを救う会」の西谷文和氏がイラクの現状をレポートしたDVD『イラ
ク・・・戦場からの告発』と『ジャーハダ イラク民衆の闘い』の一部を視聴。
    記事を読み、DVD を視聴した生徒の感想:
「数字の上に数倍の被害がある」という言葉がとても心の中に響いた。新聞やニュースで見る「死者何人」という言葉だけでは伝わ
らない現場の状況や人の苦しみというものを見た気がした。何の罪もない人々が、ただ戦争を起こした国に住んでいたということだ
けで傷つけられないといけないということは全くおかしなことである。遊んでいたら不発弾に触れてしまって友人や体の一部を失
ってしまった子供や、通学中に突然発砲され夢を失ってしまった子どもたちにどう言葉をかければいいのか分からない。平和に暮ら
している私達にとって、毎日生死の境に立たされている彼らの気持ちはとうてい分かり得ないだろうと思う。しかし、彼らを助ける
ために何かできることが必ずあるはずだ。私達は言葉を武器に戦争と闘うことができると思う。今回の DVD では、アメリカ合衆国が
一方的に悪く流れていたように思うが、それは違うと思う。戦争を起こす世界が悪いのだ。どうして殺人をすると罰せられるのに戦
争で人を殺しても良いとされるのだろうか。どうして地雷を埋めた人や作った人達は罪を感じずに生きていけるのだろうか。一国だ
けが悪いわけではないと思う。戦争を良しとするこの麻痺しきった世界全体の責任だろう。私達がここで戦争反対の声を上げ、何か
行動に移すことができれば理不尽な傷を負う人々は少しずつ減っていくと思う。世界の現実を突きつけられるこの映像はショッキ
ングなものではあるが、現状を把握し、私達にできることを考えて行く時間も必要だと思った。
    生徒の感想のいくつかを紹介し、加害の事実を学ぶときに注意すべきこととして、加害者もそのような行動を取
るように精神的に追い詰められるような原因があることを考えると被害者としての側面もあること、一部の人のマ
イナスイメージの行動を見聞きしたときに、その国民全員がそういう特徴があるかのように思いこんで偏見を持た
ないように気をつけるべきことなどを説明した。裁判員制度も始まったので、自分が人を裁くという立場になった
時には特にこのような視点から総合的に状況を捉える必要があることについて付け加えた。
 C 国際コミュニケーション
  1 「日本は平和」かどうか考えるための資料
    生徒の平和メッセージに「日本は平和」という言葉が大変多くあったので、本当に平和かどうか考えてみる資料として紹介
した資料:『横浜市歴史教科書採択問題』(日本平和大会平和教育分科会発表資料)・『今の日本は米兵犯罪を裁けない?!
~この日米密約を許せますか』・『米軍ジェット機事故で失った娘と孫よ』(神奈川県米軍機墜落事件被害者遺族の書いた実
話)・『ネルソンさんあなたは人を殺しましたか』(沖縄で訓練しベトナムで市民を大勢惨殺した米兵の体験記)・『祈・恒
久平和 郷土の戦争体験記』(印刷:(株)ぎょうせい中国支社 地元の戦争体験を語り継ぐ有志の方が 20 名集まって出版
されたこの本を読んで、自分達の住む町にあった戦争の実態を学び、これまでなぜそれを知らずにすんできたかを考える予定
だったが、時間が足りず実施できなかった)
  2 ALT(アメリカ合衆国出身)の故郷の話と関連して平和について考えるための資料
    経済的に大学に進学するのが難しい高校生が、奨学金などがあるので軍隊に志願するよう勧められ、入る時には、自分が実
際に戦場でどんな目に遭わされるか、自分がどのような行動を取るよう強いられるかよくわからずに入ってしまう。しかし、
戦場に実際に送られて、精神的にも身体的にも大きな傷を負って帰ってきたり、帰ってこない人もいる。そういった、ALTの
故郷の町の話と関連して、『貧困大国アメリカ』に描かれている、社会的弱者を戦場に送り込む差別的金儲けシステムとしての
戦争について紹介した。
  3 教育と平和の関連を考える資料
    APEC ジュニア会議が広島で開かれた折に、海外からの参加者に生徒の平和メッセージや日本紹介のエッセイを配布した。
その会議のワークショップで、平和を創るための教育の重要性が話し合われていたので、特に台湾から来た生徒の提案「東ア
ジアに多い、講義を聴いて暗記中心の受験勉強を、発表や討論などコミュニケーション能力を育て創造性を生かす教育に変え
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るべきでは」を授業で紹介し、フィンランドの「自分で資料を読んで、考えて、話し合える能力を育てる競争しない教育」につい
ての資料『フィンランドに学ぶべきは「学力」なのか!』を参考図書として紹介した。岩波書店の『ピース・メーカー』にも平和
と教育の関連の重要性が外国の様々な具体的な取り組みの例とともに記述されている。
4 講演会講師の著書紹介
山口県教育研究集会全体会講師 伊藤千尋氏著『一人の声が世界を変えた!』『反米大陸』『世界一周元気な市民力』
山口県ハイスクール・フォーラム全体会講師 西谷文一氏著『戦場からの告発 アメリカがイラクにこだわる5つの理由』
『報道されなかったイラク戦争 これはヒロシマ・ナガサキだ!』『オバマの戦争』 
高森高校 読書についての講演会講師 町田宗鳳教授著書(後述)
Ⅱ 平和関連の作品を生徒に取り組ませる際の課題設定 ~教科書と平行して取り組めるようにする工夫~
 A 時間配分
  図書室での課題提示、情報処理室でのメッセージのコンピュータ入力、インターネットでメッセージを送ってくれた学校のホー
ムページを紹介し、国際協力 NGO のサイト閲覧をした時などまとまった時間が必要な時以外は、教科書での通常の学習の前の
導入の約 10 分か、考査範囲まで進んだ後の余った時間などでメッセージの紹介をするようにした。その他のメッセージの英訳な
どの活動は教科書学習の時間確保のため、主に家庭での課題学習とした。
 B Essays や messages を書くための構成や語彙レベルなどについての指導  
  文章構成の説明や、語彙の speech level についての指導、生徒の作文を添削してよく見られる間違いについてAL
Tからの解説などを実施した。 
 C 自分の意見を英語で書くことに慣れる機会を提供する
   Writing や国際コミュニケーションの授業では各レッスンの内容に関連して、様々な話題について自分の意見を書く英作文
の課題を設定した。参考として、よく書けている作品は本人の許可を取ってから匿名で全員に紹介。ALTに同じ話題について
意見を書いてもらって紹介したこともある。平和の話題だけをずっと扱っていると、教員の好みでこの話題だけを延々と繰り返
していると感じ、飽きる生徒も出るので、他の国際的なコミュニケーションの場面でよく出る重要な話題の一つとして扱う方が
そうした抵抗感が減るように思われる。
 課題の例:就職または進学の面接で聞かれると予測される質問とそれに対する答え・スポーツとお金の関係につ
いて・公共交通機関の安全性を確保するにはどのような対策が必要か・代替医療について・税金の使い道について
改善すべきこと・幼い頃から今までに自分がどのように精神的に成長したか(used to を使う課題)・将来の夢
D 平和・戦争・飢餓についての図書の準備
山口県立図書館のレファレンスサービスでこの話題についての本の紹介をお願いしたところ、戦争と平和につ
いての本のリストをご紹介いただいた。それを参考に、岩国市立図書館の団体貸出制度を利用し、各クラス全員が借りられるだ
けの本を準備。授業の前に図書室のテーブルに表紙が見えるように並べておき、生徒が各自で選べるように準備。学校図書館に
ある関連図書も一緒に並べる。学校図書館の運営担当もしているので、図書便りにもこのテーマの本の展示をしていることを
載せて全校生徒に読んでみることを呼びかけた。課題を出したクラス以外の生徒にも読書ノートに、展示されていた本の感想
を書いている生徒がいた。以下はその図書便りの一部抜粋。
みなさん、毎日爆弾が落ちてくる心配もなく、飢えることもなく、学校で勉強できる子供は世界にどのくらいい
るか知っていますか? 外国の人と話す時に、過去の戦争についてよく知らなくて、相手に悲しい顔をされたこ
とはありませんか? 
毎日、勉強とクラブだけ一生懸命に取り組んでいるうちに、今社会でどんなことが起きているかに、
無知無関心になっていませんか?読書はフィクションの楽しみの世界に浸るだけではなく、報道や学校があまり教えてくれない
様々な事実を自分で学ぶ重要な機会を提供してくれます。
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  図書室の机に戦争・飢餓・平和について考える本を展示しています。薄いブックレットや、マンガでわかりやすく状況を描いた
ものなどいろいろあります。ぜひ何か読んで、自分たちの作る未来の社会をどのようなものに変えていきたいかを考えてみて下さ
い。
 E この課題に取り組む意義についての説明
   夏休み前に図書室で各クラス 1 時間取り、課題の説明をした。
   1 学んできた英語を使って実際に国際交流を体験することで視野を広げる
   2 世界共通の問題である「平和」について取り上げる重要性
   3 海外の高校生・大学生の歴史認識について紹介
     例:「原爆は必要なかった」と言って涙を流したドイツの高校生や、韓国からホームステイに来る高校生・
大学生が現代史についてよく学んでいることなど
   4 海外の、社会問題解決のために行動する子供達を紹介 
     例:韓国の牛肉輸入自由化に反対した高校生達
    社会を動かすのは大人で子供は無力と思わなくてよいこと、小さなことでも大勢が変化のための努力を積み重ね
ると時間はかかっても実現していくことなどを説明。(他にも「チルドレンズ・エクスプレス」
http://www.cenews-japan.org/ や英語教科書にもよく採り上げられているセヴァン・カリス=スズキ、児童労
働問題に取り組むクレイグ・キールバーガーなども紹介するとよいと思われる。)
  F 本の紹介
    図書室の机に展示してある本を紹介する。日本の関わった戦争についての本だけでなく、外国の先住民虐殺や、民族間の紛
争など様々な戦争についての本があり、平和を創るための様々な活動を紹介する本もあることを説明。また、今も一日 2 万人
以上の人々が餓死しており、飢餓が放置されている社会は戦争がなくても平和とは言えないことを説明し、飢餓問題について
の本も紹介。
自分が今までに知らなかった分野で関心が持てる本を選び、配布した用紙に組・番号・氏名・選んだ本の書
名を記入して提出させる。(市立図書館の本か本校図書館の本かの区別も記入させると後の整理が楽でよかった。)自分で市
立図書館や書店に行って探したり、自宅にある本を読む人は学校で借りなくてもよいことを説明。夏休み明けに返却するよう
に指示。
 約 150 冊用意した中で、生徒が学校で自分で選んで借りた本は以下のような本だった。
 『知られざる戦争犯罪~日本軍はオーストラリア人に何をしたか~』『日の丸は紅い泪に』『全面核戦争と広島・長崎』『東京
空襲』『ソマリアで何が?』『なぜアメリカに No と言えないのか』『戦後世代の戦争責任論』『殺す側の論理』『原爆の絵』『原爆被
爆者の半世紀』『広島・長崎で何が起こったのか―原爆の人体への影響』『未来をひらく歴史』『女たちの風船爆弾―戦争はなぜ起
こるか』『特攻隊と戦後の僕ら』『沖縄平和の礎』『私は「蟻の兵隊」だった』『従軍日誌』『少年は戦場へ旅立った』『ゼルマの詩集』
『あー回天特攻隊』『殺される側の論理』『従軍慰安婦にされた少女たち』『地雷なくそう「悪魔の兵器」を』『戦争を知らない子ど
もたちへ』『南京事件』『世界を見る目が変わる50の事実』『朝鮮植民地支配と戦後保障』『ユーゴスラヴィアで何が起きている
のか』『地球を救う仕事』『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』『恐怖のアウシュヴィッツ―生き証人は語る』『ノーモア・ヒ
ロシマ・ナガサキ』『調べ学習日本の歴史⑧アジア太平洋戦争』『なぜ今、日米安保か』『ゴンダールのやさしい光』『太平洋戦争』
『夜と霧』『パレスチナ大虐殺』『続・地雷ではなく花をください』『子ども兵の戦争』『戦争の論理』『ひめゆりの塔』『アメリカは
なぜ日本に原爆を投下したのか』『もう「お国のため」にはガラスのうさぎをとかさないで』『大東亜戦争を知っていますか』『沖
縄戦 ある母の記録』『原爆の記』『癒しの島沖縄の真実』『原爆投下 10 秒の衝撃 NHK 広島「核・平和」プロジェクト』『アン
” ”ネの日記』『沖縄・チビチリガマの 集団自決 』『原爆は本当に 8 時 15 分に落ちたのか』『ガラスのうさぎ』『1 冊で人類 100 年戦
争の歴史を見る』『戦争をしなくてすむ世界を作る30の方法』『新版 1945 年 8 月 6 日ヒロシマは語り続ける』『南京大虐殺』
『基地沖縄』『憲法が変わっても大丈夫と思っている人のための本』『中国人戦争被害者と戦後保障』『夕凪の街 桜の国』『伊藤
博文はなぜ殺されたのか』『被爆者たちの戦後 50 年』『ここが家だ ベン・シャーンの第 5 福竜丸』『日本の侵略と日本人の戦
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争感』『戦争』『家も学校も焼けてしまった』『戦争と占領』『絵で読む広島の原爆』『非常事態のイラクを行く』『ひめゆりの沖縄
戦』
  G Peace Message の書き方の説明
    選んだ本を読んで、単にその感想だけでなく、「平和を創るために何をするべきか」を提案するメッセージを書くという主題
を説明する。最初に簡単に自己紹介を入れることとした。
    B4縦の横書き罫線の入った作文用紙を配布。半分以上(200語程度)は書くように指示。
 H Peace Message の送り先紹介
    インターネットの英語教育についてのホームページや、帰国した ALT、現職 ALT の友人、日本にホームステイに来たことが
ある人などを通じて海外の多くの学校に実際に送ることを説明。本校内で参考作品として紹介したり、他校に送ったり、イン
ターネットのホームページに作品を公表するかどうかは後日アンケートを実施。
  I その他の課題設定例
1 加害の歴史を中心に・・・前年度の反省から
前年度(2008 年)、資料として世界中の様々な戦争や平和や飢餓についての書籍を紹介したが、多くの生徒が日本人が
犠牲になったこと(特に原爆の被害)、地雷の問題などを採り上げており、日本の加害の側面について言及した生徒が少な
かった。戦争という異常な状況の中では様々な人が残虐になるのであり、日本人だけが異常に残酷な国民であるかのような
印象を与えることはよくないと思われる。しかし、親族や友人知人から聞いた日本軍の戦時中の行動について強い印象を持
っている外国の人と話す機会が多々あり、加害の歴史を日本人の若者がきちんと学んで、同じことは繰り返さない社会を自
分達が作るという意識を持つことは、英語かまたはその他の外国語を通して外国の人と親睦を深めるにあたって、基本的に
重要なことの一つではないかと思った。
     そこで 2009 年度は国際コミュニケーションと時事英語の授業で、加害の歴史の一部として従軍慰安婦の問題を平和メッ
セージを書く前の資料として紹介した。アムネスティー・インターナショナル日本支部の出した従軍慰安婦問題に対する
声明文と岩波ジュニア新書の『「従軍慰安婦」にされた少女たち』(石川逸子著)の抜粋を紹介し、図書室カウンター横に展
示してあるその他の加害の歴史についての本も紹介した。
     加害の歴史についてほとんど知らなかった生徒や、歴史上には様々な国による加害の事実があったのに日本人だけがい
つまでも第二次世界大戦中の加害を責められるのはおかしいと主張する生徒もいた。英語の授業の中だけで様々な国の起
こした加害の事実をすべて教えるということは難しいが、他教科の教員と相談・協力しなから、図書室の資料の幅広い紹介
も含めて生徒の認識が広く深くなるように援助していく必要があると思われる。
     また、外国から送ってもらった平和メッセージの中に、自国の他国への攻撃を正当化するだけで、被害者の痛みに対する
思いやりが感じられないメッセージもあった。そうしたメッセージを書いた生徒がいる学校に、自国の加害によりどのよう
な被害があったのか学ぶことから考えた平和メッセージを送ることにより、被害者の視点から戦争について学ぶことの重
要さを理解し、自分の国の加害により何の罪も犯していない人々まで残酷な目に遭っていることを学び、どうするべきかを
考えるきっかけにしてもらえないかと考えている。常にすべての人・環境の被害を避け、新たな憎しみを生み出さないため
には、どのような武力攻撃よりも、多くの人々の協力で平和的解決方法を模索し、行動していく方がよいということに気づ
いてもらえることを希望している。
  2 詩と絵の取り組み
    冬休みの課題として、自分で英語の詩で平和な世界を表現するか、外国から送られてきた平和メッセージや詩の内容を表す
絵を描くかを選択して提出することを課した。英語のテストで高得点を取ることは苦手でも、このような課題では、素晴らし
く深い美しい作品を創る生徒が多い。
3 日本の美しさ伝統の良さを紹介
    日本の過去の戦争犯罪を読むと日本に嫌悪感を持ってしまう生徒もいる。しかし、日本の伝統の素晴らしさを意識するこ
とも大事なので、教科書の課題に旅行の勧めの手紙を書く課題があったのに合わせて、自分の住む町や日本の他の街を紹介す
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る文章を書く課題を出した。交流のある学校に送ったところ、大変好評だった。日本文化を研究しているクラスに紹介する予
定と返事を下さった方もあった。
4 日本での環境に良い取り組みを紹介
    本当に世界平和に貢献するには、軍事力での脅迫よりも市民の生活を改善する環境保全・改善の取り組みの援助の方が効
果的ではないだろうか。伝統の紹介と共に、現在環境のための取り組みで世界に広めるとよいものを紹介することで日本の良
いところに誇りを持てるのではないかと考えた。『がんばっている日本を世界はまだ知らない』(枝廣淳子+ジャパン・フォ
ー・サステナビリティー著)の目次を拡大コピーして、生徒に興味の持てる分野を選ばせて、個別にその分野の資料を日英両
方で紹介した。生徒はまず日本語で、英語が外国語である国の生徒にも分かりやすいように、要点をまとめて英語に訳す。また
合成洗剤の有害性とせっけんの正しい使用方法、微生物を利用し汚泥を全く生じさせない画期的下水処理法、江戸時代の知恵
有機栽培綿を使用するフェアトレード商品、屋上や壁面緑化等についての資料も紹介した。
Ⅲ 生徒作品紹介
  早く書いて提出した生徒のメッセージは韓国で ALT をしている高森高校の ALT の友人に送ってもらい、韓国の学校
で紹介してもらい、生徒達の意見とご自分の意見をまとめた返事を比較的早くいただいた。以下はそれぞれ一部抜粋。
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        本で、亡くなった方々が「なぜこの戦争が引き起こされたのか」と考えておられたということを読みました。憎しみでとても苦しくて、
戦争が終わっても、悲しみだけが続くのです。何のために戦うのですか。戦争をするという考えを思いつくその目的は何ですか、何
に対して戦うのですか。私にはわかりません。苦しみが好きな人間はいません。戦争になると人間は平気で人を傷つけたり、命を奪
ったりするのですよ。私は原爆が落とされなくても、戦争は終わらせることができただろうということを聞いたことがあります。原爆投
下はアメリカの実験でした。アメリカ合衆国は人々の命をもてあそんだのです。人々が苦しみにもだえている状況は安全な飛行機の
中から観察されていたのです。私達はこのような戦争をもう起こしてはいけません。戦争についての知識を代々未来の子供達に伝
えていかなくてはなりません。高潔な貴重な命と人々の笑顔が戦争で奪われていくのです。後に残るのは憎しみと涙です。私は未
来の子供達に教えたいと思います。「人を、命を、そして世界を守れる大人になってね」と。私は世界中に平和が訪れることを望んで
います。
      韓国のALTからの返事:アメリカ合衆国が人々の命をもてあそんだということに私も同意します。原爆は当時は新兵器で誰も人間に
使われたらどうなるか本当に分かっている人はいませんでした。アメリカ合衆国は日本を実験のために利用したのです。それまでに
なかった最も恐ろしい効果をみるために。原爆がなくても戦争は終わったでしょう。でもアメリカはより速く戦争を終わらせたかったの
です。だから私達は刀や槍よりも銃を使うのです。銃の方が速く人を殺せます。人間はガンジーのようにとても親切で思いやりがあ
る人にもなれるし、ヒットラーのように残酷で冷酷になることもできます。戦争を始める人達は自分が戦争のまっただ中に出て行って
戦いたいとは思っていません。むしろかれらは他の人を戦争に送り込んで死に追いやり、自分たちがとった行動が引き起こした結果
に直面したくないと思っています。人々はいろいろなことで戦います。金・権力・資源・宗教・信仰・そして楽しみのためにさえ。学校や
テレビゲームで戦いはかっこいいとみなされていて、幼い子供達は互いに戦います。しかし死や大虐殺が現実になったら、その時に
彼らは何がかっこよくて何が恐ろしいことか考え直すことになるのです。子供達に戦争は娯楽ではないということ、死ぬことは遊び事
ではないことを教えて下さい。知識がその最も良い答えです。子供達は学校で学ぶべきです。何も学ばないと人生は生きる価値を持
たなくなってしまうでしょう。
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    私は、カンボジアの戦争と地雷についての本を読んだ。カンボジアの地中にはたくさんの危険な地雷がある。多くの人が地雷によ
   って亡くなった。生きのびることができたとしても、足や手を失ってしまった人達もいる。たくさんの子ども達が、親が戦争や地雷によ
って亡くなってしまったために、難民キャンプで生活をしている。彼らは悲しく思ったにちがいない。しかし、彼らの笑顔は輝いている。
私はたくさんの子ども達の話に感動した。
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       ある16歳の男の子は、地雷で足に大けがをしたのに、毎日学校に通っている。彼の学校は、家から6km先にある。学校に行くの
はとてもたいへんなことだ。しかし、彼には学校に行かなくてはならない事情がある。もし彼が学校を辞めてしまっていたら、彼は反政
府地域に住んでいるので、兵士になっているだろう。男の子は、15歳になると兵士にならなければならないのだ。しかし、彼は学生な
ので、兵士になることを逃れている。彼は勉強が大好きで、将来は医者になりたいと思っている。夜はろうそくのあかりで本を読んで
いる。カンボジアの学生の多くが、大きな夢を持っている。しかし、彼らには夢を叶えるための十分な情報やお金、機会がない。私達
には、夢を叶えるための十分な情報や手段がある。
しかし、夢を持っていない人や、夢を諦めてしまう人がいる。もし、カンボジアの学生が私達の立場だったら、彼らは夢を叶えること
に全力を尽くすだろう。私は、この本から夢を持つことの大切さを学んだ。彼らは今、快適に暮らすことができない。しかし、夢とともに
明るく生きている。そのため、彼らは私達よりも幸せそうに見える。
問題は、世界には危険な地雷がたくさんあることだ。私は、世界が平和になる日は地雷があっては来ないと思う。私達は、地雷の
数を減らすためにできるだけの努力をしなければならない。これを実現させるために最も重要なことは、これ以上地雷をつくらないこ
とだ。私は、世界中の人が戦争や地雷の恐怖なしに、快適に暮らせることを切実に願っている。
 韓国のALTからの返事:闘うことで多くの何の罪もない子ども達が殺され、傷ついていく。それでも多くの子ども達はまだ希望を持って
いて、良い教育を受けて、偉大な人になることを夢見ている。問題は彼らが自分たちを支えてくれるのではなく兵士として利用しよう
とする環境の中に育っているということだ。ほとんどの人々が貧しくてただ明日まで生き延びることに必死なので、幼い子ども達に与
えられる情報は少ししかない。そう、すべての地雷を取り除くよう努力すべきだ。地雷は何も間違ったことはしていない何の罪もない
人々を傷つけるのだから。しかし人々が地雷を使わなくなっても、まだ他の爆弾や銃を使うだろう。人々は他の人達に対して狭量で、
人の話を聞こうとしない。彼らは 自分たちが正しく、みんなが間違っていると思っている。それで闘いたがるのだ。最も良い解決方
は人々を教育することだ。人々がより多くを知れば、よりよい決定を下すことができるようになるだろう。
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 私は戦争に関する本を読んだ。その本のタイトルは「なぜ戦争は起こるのだろうか?」というものだった。沢山の人々が世界中には
住んでいる。彼らには彼らの生活があり、そして家族がいて友達もいる。それら全ては、人々を幸せな気持ちにする、しかし戦争はそ
んな全てを壊していく。戦争は人々から全てを奪う。私はなぜ「戦争は起こるのだろうか」と思う。私が読んだ本には戦争に関する沢
山のことが記録してあった。最初、ある国がもっと土地や食べ物やお金が欲しいと思う、そして彼らは他の国から奪おうとする。しか
し、その前者にとって彼らが欲しい物を得ることは難しい。結果的に、彼らはいくつかの恐ろしい武器を使うようになる。私はその前
者はとても欲深く、後者は惨めだと思う。後者の人々は前者の人々によって殺されたのだった。
 その時私は「止めて!」と叫びたかった、そして私は「なぜ?なぜ?なぜ?」と思った。私は後者の国に、なぜ他の国から奪おうとす
…るのか尋ねてみたい。人はみんな平等であるのに 。あなたは生活の質という意味を知っていますか?もしあなたがこの意味を知ら
ないのであったならば、あなたは辞書で調べてみるべきである。
 戦争はたくさんの人を殺す、例えば、子ども、母親、父親、祖母、祖父などといった人を。失ってしまった命は決して元には戻らない、
だからこそ戦争には参加すべきではない。命を保護するためにも戦争を止めるべきである。
 わたしは将来看護婦になり、そして「国境なき医師団」に参加してみたいと思う。私は、世界中が平和になり、それが保たれることを
…願っている、いつまでも 。
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  私は高森高校の生徒です。私は、大学に入り、戦争や殺人における心理を学び、それを平和のために応用したいと思っています。
 私は戦争、平和、紛争に関する本を多く読みました。その度に平和について考えます。そもそも、幼少時代に二年間、広島に住んでい
たことが、私の、平和に対する興味を起こしたきっかけとなりました。その頃、学校行事で広島平和記念公園によく行っており、残酷
な事実を見ました。その頃から、原子爆弾に関するたくさんの本を読むようになりました。特に、『はだしのゲン』に感動しました。漫
画ですが、戦争の悲惨さや悲しみを描いています。
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 なぜ、人は人を殺すのか? 他人を殺してはいけないことは当たり前のことです。昨年、私は滋賀県に、全国高校生交流集会に参
加しに行きました。そこで、戦争が始まった後も、イラクに行っている最後の人である西谷文和さんによる講演を聴きました。そこで、
今まで知らなかった多くの事実を知ったのです。
 政府やマスメディアがそれらの事実を意図的に隠蔽しています。私達、日本人もまた、税金を払うことにより、戦争に荷担してい
る、殺人者でもあるのです。しかし、すぐには、私達にはそのような状況を変えることができません。
 私達には何ができるだろう。私達は自発的に、ただ真実を知るべきなのです。私達は、簡単に、メディアからの情報を信用しては
いけないのです。そして、自分自身の意見を持つことが大事なのです。私達はプロパガンダに騙されてはいけないのです。
Ⅳ 交流相手の見つけ方
A 学校間の国際交流促進のためのホームページの利用
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 約140の学校に ePALs http://www.epals.com/ というホームページを通じて生徒たちの平和メッセージを韓国から届
いたメッセージと一緒に送った。他の類似のホームページの掲示板でも呼びかけたが、このサイトが一番反応がよかった。ま
ず peace という言葉を担当者の自己紹介や プロジェクト説明の中に入れている学校を検索してそこへ送った。次に地域別
検索で、現在戦争や紛争が実際にある地域の学校に送った。
     数多くの返事をいただいたが、特にインドの St. Marks Senior Secondary Public School とイスラエルの Ein Ganim
School、イタリアの San Filippo School からは多くのメッセージに加えて絵や写真・ポスターなども送られてきた。Ein
Ganim School で長年平和教育に貢献してこられた Marsha Goren さんは自分で運営している平和教育のホームページに
生徒の作品を載せてくださり、これまでに平和関連プロジェクトで協力してきた多くの学校に本校の生徒の平和メッセージ
を紹介してくださった。そのホームページ http://www.globaldreamers.org/09peace/ に21の学校からの大勢の生徒のメ
ッセージが紹介されている。
  2 NAISの国際交流プロジェクト参加
     アメリカの学校間交流を促進している全米私立学校協会NAISの Newsletter に、Andrea Mennella さんの紹介で広
島平和記念公園で配布した平和メッセージ紹介の手紙が掲載された。その手紙を読まれたNAISの国際交流プロジェク
トオーガナイザーの方から、NAISの国際交流プロジェクト”Challenge 20/20” に応募したらパートナースクールを紹介
できるので是非応募するようにとのメールをいただいた。NAIS の URL は http://www.nais.org/ 。アメリカの高校を 3 校紹
介していただいた。
 B 交流相手からの紹介
   また、交流相手から更に紹介されて交流が始まった学校もあった。イタリアの San Filippo School の Andrea Menella さんか
らは、アメリカのオハイオ州の国際交流に熱心な Hathaway Brown School やオーストラリアのいくつかの学校を紹介いただ
いた。Hathaway Brown School からは平和をテーマにした1.5m×3mくらいの大きな共同制作の絵(16 人の生徒が参加)
とその絵の説明のビデオメッセージが届いた。ビデオメッセージにはこちらから送った生徒作品に対するコメントもあり、生徒
の印象に残ったようだった。
   こちらからもインドの St. Mark’s Senior Secondary Public School の Lakshmi Srinivas さんをイスラエルの Ein Ganim
School の Marsha さんに紹介したところ、Lakshmi さんは、その Marsha さんの紹介で知り合ったアメリカの2つの学校と自
分 の 学 校 の 生 徒 と の 共 同 制 作 で ” Save Earth” と い う 環 境 と 平 和 学 習 の ホ ー ム ペ ー ジ を 開 設 し
(http://gvc0901.gvc09.virtualclassroom.org/main.html)、その取り組みで最近 Global Virtual Classroom Award を受賞さ
れた。(http://www.virtualclassroom.org/win09.html#E_CAT) 互いにいろいろな人を紹介しあうと、交流の輪が広がっていっ
て、生徒は多種多様な文化背景を持つ人々と交流し、協働する機会が増える。
 C 講演会・シンポジウム等で講師やパネリストの方に協力を依頼する
   昨年 12 月に神奈川で行われた日本平和大会の国際シンポジウムに、ドイツ平和評議会のメンバーで、ボン市議会議員のハネ
ロア・トゥルケさんが参加されておられ、シンポジウム後に生徒達のメッセージを紹介させていただく機会があった。ボン市長
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が平和市長会議に参加しており、元教員ということで平和教育の大事さも認識しておられるだろうから、お返事がいただけるか
もしれないので、メッセージを紹介しましょうと申し出て下さった。
   また、昨年度末に山口県ハイスクールフォーラム(高校生交流集会)の全体会講師で来られた「イラクの子供を救う会」代表
のジャーナリスト西谷文和さんと講演後お話させていただく機会があり、アフガニスタンの子供達との交流を仲介していただ
けないかお願いしたところ、6 月にアフガニスタンの孤児院を訪問する予定で、高森高校の生徒が作成した平和のメッセージの
入った絵を持っていってくださり、アフガニスタンの子供達の絵を持って帰ってくださるとのことだった。絵は現在の勤務校で
生徒に紹介し、後述のジュニア平和美術展に展示していただく予定。
Ⅴ 送られてきた作品紹介
 A 外国の生徒からの作品
   送られてきた平和メッセージの全部を授業で紹介することはできなかったので、本校教室棟の掲示板 2 枚に掲示
し、図書室カウンターに印刷して綴じた冊子を展示して紹介した。
   『はだしのゲン』の英語版と『原爆の絵』と広島平和文化センター所長のスティーブン・リーパー氏の著書Hiroshima 
Revolution  / 『広島維新』(原爆資料館3F売店で入手可能)を平和メッセージを送ってくださった生徒の皆さん
の学校図書館に寄贈を始めた。すでに『はだしのゲン』の英語の短縮版を送ったいくつかの学校からは感謝のメッセ
ージが届いている。本の代金も送料もかなりかかるので少しずつしか送れないが時間はかかっても続けていこうと考
えている。もっとたくさんの学校に早く送るために、広島ピースグラントに補助金を出していただけないか申し込ん
でみたいと考えている。
1 インドの高校生のメッセージ
送られてきた沢山の平和メッセージの中でインドの St. Mark’s Senior Secondary Public School の生徒のメッセージは特
に深く、一人一人の人生を平和に生きることがまず基本だということを考えさせてくれた。
生きるということに熟練すること
こんにちは。私は 16 歳の女の子です。ある興味深い話をさせてください。
ある男の人が 40 階建ての建物の屋上を歩いていました。その人は事故で屋上から落ちてしまいました。17 階を通り過ぎるとき、
建物の中の人が彼に大声で問いかけました。「調子はどうだい?」その男の人は答えました。「今のところ、とってもいいよ!」私達が
この話を面白いと思うのは、この後何が来るかわかっているからかもしれませんね。この後には地面が待っていると。一瞬の間、彼は
生きているでしょうけれど、次の瞬間には彼は死んでいるでしょう。
私がこの話をしたのは、私達もみんな落ちていくところだからです。地面が私達みんなに近づいてきています。一瞬の間、私達は生
きていますが、次の瞬間には死んでいるでしょう。これは恐らく意識的な存在のもっとも反省させる(酔っていない状態に戻すよう
な)事実です。(=一時の繁栄に酔って地球の将来を考えていない人も、自分たちの存在のありようについての事実をしっかりと意
識するようになると酔いが醒めて反省するようになるでしょう。)私達の生活における幸福への鍵は、その旅をいかに楽しむべきか
を学ぶことです。このために私達は「生きるということに熟練すること」を学んだ方がよいでしょう。それはつまり、その瞬間にいる
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ことです。
私はインターネットのいろいろなホームページを見て探検するのが大好きです。以前、偶然、スリ・ラヴィ・シャンカールの言葉
を見つけました。それは「生の熟練」というものでした。
「現在の瞬間にいよう。あなたが今、精一杯生きていたら、明日のことは明日が責任を持って引き受けてくれる。あなたが 今、
幸せなら、過去があなたを苦しめることはない。それが生きることに熟練する方法だ。」
なんと真実を突いていることでしょう。過去のことで何を覚えているべきか、現在何を楽しむべきか、未来のために何を計画すべ
きかわかっている人は幸せです。私の友達の一人がある時このようなメッセージを送ってくれました。「どこかへ行くのにそんなに
速く走っていたら、そこへ行く楽しみを見失ってしまうよ。人生は競走じゃないから、ゆっくり行こうよ。歌が終わる前に、その音楽
を聴こうよ。」
「生の熟練」のために大事な鍵となる言葉が5つあるのではないかと私は感じています。
一つめは、人は心の平和を身につける必要があるということです。みんな平和と調和を探し求めています。なぜならこれが私達の
生活に欠けているものだからです。時折、私達はみんな、人の心を扇動するような情報に出会ったり、イライラしたり、不調和を経験
したりすることがあります。哀れな状態の人の周りの雰囲気には不幸が染み渡っています。そしてそういう人に関わる人達もそれに
影響を受けるのです。確かにこれは生に熟達する方法とは言えないでしょう。私達は自分自身に対して、そして他の人に対して、平和
に生きるべきなのです。自己観察の技法、いわゆるヴィパッサーナ瞑想といわれるものは、心の平和を達成するのに役立ちます。イン
ドの言語では仏陀の時代には「パッサーナ」とは目を開けて普通に物を見るということを意味しました。しかし「ヴィパッサーナ」は、
ただ表面上どう見えるかということではなく、物事の実相を観察するということです。私達は苦悩から解放され、本当の幸せを経験
するのです。
二つめに、人はいつも幸せでいることができるようにならなければなりません。私達は誰かが自分の気にいらない振る舞いをした
り、何かが自分の思うとおりにならない時に不幸になります。嫌なことが起こると自分で自分の中に緊張を創り出すのです。さて、こ
の問題を解決する一つの方法は、このようなことを理解することでしょう。もし人生の中でプレッシャーがあなたを押し潰そうとし
ているなら、潰された葡萄は最も良いワインを作り出すということを考えてみることです。人生のプレッシャーがあなたの中に最善
のものをもたらすようにさせましょう。
三つ目に、人は許すことを学び、あきらめずにずっと続けることができるようにならなければなりません。私達は沢山間違いを犯
しても、自分自身を愛しています。では他の人が一つ間違いを犯したからといってどうしてその人を憎むことができるのでしょうか。
変なようですが、本当のことです。誰かを嫌いになる前に考えてみてください・・・親切な一言や、聞く耳をもつこと、心からの褒め
言葉、ちょっとした気遣いの行動といったことが、ある人の人生の方向を変える可能性を持っているのです。次に、あきらめないで続
けることです。何かがうまくいかない時、まあそんなことは時々あることですが、上り坂のきつい道をとぼとぼと歩いているような
時、ストレスでちょっと気が滅入っている時、そんな時は必要なら休んでください。でも決して途中で止めないで。誰でもあきらめる
ことはできます。それが一番簡単なことです。でも他の人がみんなあなたの心がバラバラに砕け散ってしまっても無理はないと思う
ような時にも、自分の心を引き締めて気をしっかりと持つことです。それが本当の強さです。
四つ目に、人はいつも人生に対して前向きな展望を持ち続けなければなりません。人生は自分の目を通して見る映画です。そこで
何が起こっているかは重要ではありません。あなたがそれをどう取るかが大事なのです。あなたの映画が大ヒットの超大作でありま
すように。人は決して忘れるべきではありません・・・「冬来たりなば春遠からじ」ということを。覚えておいてください。平坦な真
っ直ぐな道では人はよい運転手にはなれません。問題が起こらない人生では人は強くなれないのです。ですから、人生に「なぜ私なん
だ?」と聞かないでください。代わりに人生に挑戦して「私を試してごらん」と言ってください。信念はすべてのことを可能にします。
希望はすべてのことをうまくいくようにし、愛はすべてを美しくします。もしあなたが自分にはできると信じれば、できるようにな
るのです。できないと信じればできないのです。信じることがあなたをロケット発射台から離陸させる発火装置なのです。自分自身
を信じてください。
最後になりましたが、大事なことをもう一つ話させてください。目標を決めてそれを達成するために一生懸命努力してください。
目標を設定し、計画をたてるために、私達の未来について私達の思考を使いましょう。それから現在に戻って私達の計画を実行して
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いきましょう。目標は庭のようなものにはしないで。人が上を踏んで歩くでしょうから。そうではなく、目標は空のようなものにして
ください。みんなが手を伸ばして触りたいと願うようなものに。
「生きることに熟練すること」を学んで、今日あなたが分担できることをしてください!
2 イスラエルの小学生からのメッセージ
    イスラエルの小学生からの平和メッセージに次のようなものがあった。
1 8 年間ガザはイスラエルを爆撃
していた。8 年間の沈黙。
2 軍事行動の前の週に 1 日に80
のロケット弾がイスラエルに対
して撃たれた。
3 スデロットとイスラエル南部は
爆撃された。全ての人が防空壕
にいた。
4 政府は何かがなされなければな
らないと理解していた。
5 その何かとは Oferet Yetzuka 作戦
だった。⑥ある天気のよい土曜
の朝にイスラエルはガザを空か
ら爆撃した。⑦それからイスラ
エルの地上軍がガザに入った。
⑧その戦争は終わった。今は私
達は、平和になってガザとイスラエルが敵ではなくなることを望んでいる。
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返事のメッセージを紹介するにあたっては、紛争の当事者になっている地域の子供は、報道規制などもあり、身近な大人の話
を鵜呑みにしていることもあるせいか、自国の攻撃を正当化する意見を書くこともあるので、生徒に紹介する時に注意が必要で
ある。
全国高校生交流集会と山口県ハイスクールフォーラムでこのメッセージを生徒が分科会で紹介した時は、「大人の話や報道を
鵜呑みにしているのだろう」「相手の被害の状況をわかっているのだろうか」「最後に敵でなくなることを望んでいると言ってい
るのだからこのメッセージに悲観的になるよりも、平和を望む気持ちはやはりあるということに希望を持つ方がよいのではな
いか」といった意見が出た。また、分科会助言者から、イスラエル軍の中にもイスラエルの市民団体の中にも、軍事力による市民
の虐殺・虐待や農作物などの資産の破壊に反対する行動を起こしている人達がいることも知っておくべきという助言があった。
立場を超えて、被害者の苦しみを理解し、何の罪もない人々を巻き込む攻撃はどんな理由も正当防衛にはならないという視点
で見ないと、罪のない人々を殺された憎しみがまた新たな攻撃を生むばかりで、憎しみの悪循環に陥ってしまうのではないだろ
うか。甘い考えと思う人もあるかもしれないが、核兵器に限らず、国内に貧困に苦しむ人がいても大金をかけて作った無差別大
量殺戮の兵器による恐怖感で互いを脅しあっている不信感に基づく戦争回避状態は、本当に平和な状態とは言えないのではな
いか。脅迫よりも、もっと医療や農業、環境保護など庶民の暮らしを良くするために国際協力を進めることに人材とお金を回す
ほうが、本当に一人一人が感謝の気持ちで幸せに暮らせる世界を創ることになるのではないか。将来そうした地道な国際協力の
仕事をしたいと平和メッセージに書いている生徒がいることは大変心強いことである。
B 大人の方々からの返事
  生徒同士のメッセージ交換だけでなく、様々な体験を積んでこられた大人の方々からも今の子供達へのメッセージをいただい
た。子供同士だけでなく、実際に平和のための活動に取り組んでおられる方々からのメッセージを共有することで更に平和を創る
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意識と行動の重要さが認識できるとよいと思う。メッセージを書く時に日本語の段階で、どんなことを書いていいか思いつかない
という生徒には特に、このような参考になる文章を紹介すると刺激になってよい。
  1 オーストラリアの元学校司書 ルース・カルジー氏
    女性のためのホームステイを通じて国際交流促進を図る団体である Women Welcome Women Worldwide のメンバー。
(この団体はイギリスに本部を置いているが世界中に多くのメンバーを抱えており、世界各地で様々な会員交流のイベント
を開いている。)またカルジー氏は児童虐待防止のNPOでも長年活動しておられた。
    オーストラリアに移民してきたばかりの頃、学校の先生が第 1 次世界大戦での体験談を聞かせてくださり、もうあのような
戦争はしてはいけないと戦争の愚かさを説いてくださったが、また第 2 次世界大戦が始まって、メディアに焚き付けられ特定
の国の人間はみんな鬼と思い込み大量殺戮も躊躇しなくなるという歴史を目の当たりにしてきたという体験談を手紙で語っ
てくださった。若者が本当に歴史から学び行動することで、今度こそ平和な世の中を創ってくれると期待しているというメッ
セージを送ってくださった。
  2 The Hunger Project の Japan Country Director 古谷球子氏
    地元の人々の自立を助けることで飢餓を世界からなくす活動を世界的に展開しているハンガープロジェクトという団体の
日本代表をしておられるという立場から、以下のようなメッセージを送って下さった。以前ボランティア活動で、この団体の
世界大会報告書の和訳をしたご縁で依頼に応えてくださった。
ハンガープロジェクトは、地球上から飢餓をなくすという目的を持ち、アフリカ・南アジア・ラテンアメリカ等の途上国において、
人々の自立を支援する活動を推進しています。
私は、8年前にアメリカ・ヨーロッパのメンバー約20名と、アフリカ大陸のウガンダを訪れ、ハンガープロジェクトの活動に参
加している人々(パートナー)と交流しました。
空港に到着すると、多くのパートナーたちが私たちの訪問を歓迎し、アフリカ独特の演奏とダンスを披露してくれました。はじけ
るような人々の活気と笑顔!にびっくりです。
途上国においては、極端な貧困のため一日一回の食事をとることさえ難しく、食べない日もあるのです。
女性たちは地位や権利が守られていません。出産で死ぬことも多く、水汲みやマキ拾いのため毎日20 Km も歩かなければなりま
せん。家事・育児・畑仕事と休む間もなく働きます。
このような生活が半永久的に続くとあきらめていた時、ハンガープロジェクトの活動がスタートしました。
ハンガープロジェクトのワークショップに参加し、自分たちの手で飢餓をなくすことができる!ということを学び、自分たちの意識
を変える努力をし、行動に移していきます。
私たちは、小口のローン(3,000~5,000円)を借りた女性の畑に行きました。彼女は「私はローンで、この畑を借り、種
を買い、一生懸命に農作業をし、作物を収穫することができました。おかげで家族も食べられるようになり、市場で販売できたのでお
金が入り、ローンを返済することができました。こんなことができるなんて信じられません。」と目を輝かせて語ってくれました。
ハンガープロジェクトの飢餓をなくすということは、ただ食べるということだけではなく、人間としての尊厳があり、目標と希望
を持ち、生き生きと生きることです。飢餓をなくすその一歩は、ひとりひとりの人間の意識の変革から始まり、その実現のための行動
を起こすことです。
“ ” ”私に何ができるのか  “今、何ができるのか を探求しつつ
ハンガープロジェクト協会 古谷 球子
  3 広島大学環境平和センター所長 町田宗鳳教授
    『愚者の知恵』という『イワンの馬鹿』などのトルストイの民話をいろいろ採り上げて本当に平和的に生きると
はどういうことかについて書かれた著書や、『なぜ宗教は平和を妨げるのか「正義」「大義」の名の下に』などを書かれておられ
る町田氏に平和メッセージ交換のことをご説明し、『教育は壮大な実験である~<いのち>と向き合う』という御著書の前書
きの部分を平和メッセージを送ってくれた学校に送ってもよいというご承諾をいただいた。町田氏の公式ホームページにそ
のメッセージ「<いのち>麗わし」が掲載されている。また、以前広島を訪問された、イスラエルにあるパレスチナ人とイスラ
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エル人の共存を目指して両民族が通っている学校をご紹介いただいた。
  4 『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』などの作者 こうの史代氏
   高森高校勤務の教諭のご親戚というご縁で、生徒の平和メッセージを送って読んでいただき、お返事をいただいた。メッセ
ージと一緒に『この世界の片隅に』の最終回原稿のカラーコピーを送ってくださった。この作品は第二次世界大戦末期に庶民
の生活が悲惨になっていく様子とその中でも愛情をもって助け合って生きていく人々のやさしさを描いている。メッセージ
の一部抜粋。図書室に作品の英訳とともに掲示し、図書便りで紹介した。
  お手紙をありがとうございます!平和や戦争に対する考えは時代や地域によって大きく変わります。現代の日本においては直
接人生観にはつながりにくいですよね。だから、そこをテーマにした海外の同世代の方々とのメッセージ交換は皆さんにとって厳し
くも大変貴重な体験となると思います。赤松先生と皆さんのご活動に敬意を抱きます。
  こちらは呉の戦災を描いた新作「この世界の片隅に」のコピー(最終回)です。「戦争」と「人の営み」のつながり
について、また「死人の数」ばかりで語らない戦争文学について私なりに考え、導きだした答えのひとつです。
                                     こうの史代
 5 『はだしのゲン』の作者 中沢啓治氏
    『はだしのゲン』の英語版完成祝賀会が広島市で行われるということで、一般参加者募集のお知らせが中国新聞にでていた
ので、地雷についての平和メッセージを書いた生徒と一緒に出席させていただき、生徒達の平和メッセージをお渡しして、返
事を下さった外国の学校の図書館に『はだしのゲン』を寄贈する時に、一緒に送る子ども達へのメッセージをいただけないか
お願いした。
   「平和は人類の宝です。」と力強い大きな声でお返事をいただいた。
  6 広島平和文化センター所長のスティーブン・リーパー氏
    『はだしのゲン』英語版完成祝賀会でお話しさせていただく機会があり、『はだしのゲン』をオバマ大統領に送る企画で一緒
に生徒たちの平和メッセージを送っていただけないか依頼。快く引き受けてくださり、御著書の『広島維新』の一部を平和メッ
セージとして生徒たちに紹介してよいという許可をくださった。
自分自身と民衆を教育する 
 ピースメーカーは、戦争の文化を学び、それがもたらす問題を明らかにする方法を模索しなければなりません。欧米人や日本人が、
世界で容赦なく貧困に追い込まれた人々の上に冨を築いている構図について知り、各国の金持ちが貧困に依存し、低賃金で酷使し、
大量に刑務所に送り込む仕組みを知らせなければなりません。多くのウォーメーカーたちは、この仕組みがいかに成立しているか、
自分たちの行為がいかに過酷な状況を作り出しているかについて無邪気にも知らないのであり、これを学ぶことで転換する人もい
ないとは限らないからです。
                        若者に伝える
   ピースメーカーは若いピースメーカーを育成するために学校や、その周辺で活動する必要があります。子ども達は、普通、大人に比
べてかなり進化していて、自然にわれわれの仲間になる素質があるのです。ですから、多くの若者を人生の暗黒へと誘い込む悪魔に
魂を売るようなことになる前に正しく教える必要があるのです。
  7 広島県に滞在し兵役拒否にともなう代替社会福祉活動をしていたドイツ人のクリスチャン・シーベルトさん
    本校の生徒の平和メッセージに外国からお返事をいただいたことを中国新聞で記事にしていただいたご縁で、近い時期に
同じ新聞に記事に紹介されていたシーベルトさんを紹介していただいた。メッセージを書くにあたって調べたいことがある
ので帰国してからメッセージを送りますとのメールをいただいた。
8 「ヒロシマは核兵器廃絶を目指す」国際シンポジウムパネリスト アーサー・ビナード氏
2009 年 12 月 5 日に広島市で行われた国際シンポジウムで 2010 年 NPT 再検討会議を前にして様々な動きと問題点、行動す
べきことなどが紹介された。休憩時間とシンポジウム後にそのパネリストで詩人のアーサー・ビナードさんとお話させてい
ただく機会があり、平和メッセージ交換のプロジェクトを紹介して、ビナードさんの平和メッセージをお伺いした。その時の
メッセージを、ご著書の第五福竜丸について書かれた『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』などと共に図書室で生徒
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に紹介し、図書便りにも掲載した。
 「道徳的に何が正しいかということも大切だけど、戦争で金儲けしている人達がいるという事実をよく知ることが大事
です。戦争で金儲けするよりも、平和の方が儲かるというように経済の仕組みを変えていくことが必要ではないでし
ょうか。」
  9 アメリカの平和運動団体である Fellowship of Reconciliation USA の John Lindsay-Poland 氏
日本平和大会国際シンポジウムのパネリストとして来日された折に、歓迎会で生徒の書いたメッセージをお渡しして、お返
事をお願いした。子ども達のための平和メッセージを書いておくりましょうと申し出てくださった。また、世界中の外国軍事
基地撤去に関する市民運動の成果を特集した所属団体の発行する雑誌をプレゼントしてくださった。内容を外国の学校に伝
えて良いか伺ったところ、電子メールに添付して送りやすいようにその雑誌のデジタルデータをメールで送って下さった。
10 フィリピンの平和運動家 Corazon Valdez Fabros 氏
日本平和大会シンポジウムのパネリストで何度も来日しておられる Fabros 氏にも生徒のメッセージを紹介した。フィリピン
では国民の意思で米軍基地を撤去させ、基地がなくなった後も跡地に民間企業を誘致し、基地があったときの1.5倍の雇用
を生み出したという事実を紹介して下さった。「基地の後にも生活はあります」という言葉が印象的だった。「フィリピンに来
られる機会があれば米軍基地跡地がどうなっているか案内しますよ」と申し出てくださった。
Ⅵ 生徒作品を校外のより多くの人に紹介する方法
 A ホームページへの掲載
前述のイスラエルの学校の平和教育のページ http://www.globaldreamers.org/09peace/ に生徒作品を掲載していただいた
ことで、作品自体を印刷して配るよりも楽に、多くの方々に読んでいただくことができた。
 B 研究紀要への発表と教育研究大会等の分科会での発表
   山口県高教研英語部会の研究紀要や日高教の高校生憲法意識調査結果のまとめの冊子に実践報告を投稿した。また
  日本平和大会の平和教育の分科会、山口県の教員組合主催の教育研究大会の英語教育の分科会で発表した。より多くの方に生徒
の真剣なメッセージを読んでいただくことができ、また、質問・ご意見をいただくことで、勉強になった。
 C 高校生交流集会等の分科会での生徒の発表
   昨年度広島で行われた全国高校生交流集会と山口県ハイスクールフォーラムで、平和メッセージに取り組んだ 3 人の生徒が
その過程と感想を発表し、他校の生徒と意見交換をした。他の学校の生徒にも「このようなメッセージ交換に取り組んでみたい」
と言ってくれた生徒がいたと発表した生徒から聞いた。発表する生徒には、準備のためによりこの交流について深く考える機会
となり、他校の生徒にも、このような国際交流の方法があることを知り、実際に送られてきたメッセージの内容に対して自分の
意見を考えてもらうよい機会となった。
 D 教育関係の実践報告コンテストへの応募
   外務省のグローバル教育コンテスト http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/edu/contest/2009/index.html に応募。前述の
ePals や NAIS などにも同様の実践報告のコンテストがある。入賞すればより多くの方に生徒のメッセージを読んでいただく
良い機会となるが、入賞しなくても、審査員の皆さんに読んでいただけるということはそれだけでもありがたい機会と思われる
また過去の受賞者の作品紹介を読むことで参考になる取り組みを学ぶことができた。
 E 平和美術展覧会への参加
   毎年 8 月に岩国市シンフォニア岩国で開かれているジュニア平和美術展覧会で、中国・韓国・イラク・アメリカなどの国の
子ども達の絵が展示されている。本校に送られてきた平和のメッセージと絵も一部展示していただけることになった。出展者は
1500~2000 人、来場者は米軍基地内の学校の生徒・保護者も含め、1 週間で約 2000 人。
本校の生徒が平和メッセージを書くときにも、クラスにより、平和のイメージの絵を描いて、その中にメッセージを書き込む
という形で取り組んだ。英語の文章を自分で書くのは苦手な生徒にも、英文を解釈して、絵ですばらしく美しい平和のイメージ
を描く生徒がいる。授業で紹介したダライ・ラマの平和についてのスピーチや、アメリカ先住民の平和の祈りや、外国から送ら
れてきた平和メッセージの中で感動したところを選んで書き込んだ。言語活動に関連して様々な才能が発揮できる機会がある
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と、普段は英語に拒否反応が出てしまう生徒が、生き生きと活動し、周りの生徒からも賞賛される体験になることもあるので美
術や音楽なども組み合わせていくことを今後も検討したい。 
 F 青少年の国際会議参加者への生徒作品配布
   広島で行われたAPECジュニア会議のワークショップを見学し、休み時間などに参加者や引率の方に生徒の平和
メッセージ・詩・日本紹介のエッセイを印刷したものをプレゼントした。『はだしのゲン』の英語縮刷版を同封した。
授業では、どのようなメンバーに作品を渡したのか(中国新聞の記事を紹介し)説明し、会議内容を紹介した。
 G 新聞地方版に記事として取り上げてもらう依頼
   中国新聞のチューピー祭りで新聞編集部の方とお話する機会があり、平和メッセージ交換の取り組みについて紹介
したところ、学校に取材に来てくださり、地方版の記事に載せていただいた。後日保護者から、記事を読んで関心を
持ったというお話を伺う機会があり、生徒作品そのものは載せてもらえなかったが、報道されたことで、保護者の関
心が高まり、生徒が自分達の作品を発信することに積極的になるための一助となったかもしれない。
 H 広島原爆資料館の子供の意見欄への投稿
広島原爆資料館の Kids’ Space という英語のホームページに平和メッセージを投稿するところがあるので、そこに
投稿し、いくつか載せていただいた。http://www.pcf.city.hiroshima.jp/kids/KPSH_E/top_e.html 生徒にもそのページについ
て授業で紹介。
 I 外国の平和祈念資料館への協力依頼
   中国新聞に連載されている世界の平和祈念資料館の連絡先に、生徒たちのメッセージを何らかの形で紹介していた
だけないか依頼する。http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter_d/w_museum/index.html
Ⅶ 実際に平和のために働いている方による講演会の実施
A 広島大学大学院教授 町田宗鳳氏
  前述の町田宗鳳教授に昨年 11 月に『読書で育てる世界を見る目と自分を見る目』と題して全校生徒向けの講演をしていただ
いた。実際に世界のあちらこちらで平和のための国際会議などに出席されておられる方の、熱意溢れるお話を伺って、大変多く
の生徒が感動し、世界の現状に目を向けることの大切さと、身近なことから見返りを期待せずに人のために働くことを喜ぶこと
の大切さがよくわかったと感想に書いていた。
B 山口大学国際戦略室 今津武教授
元海外青年協力隊事務局次長や JICA の海外支所所長などのお仕事で途上国援助の経験が豊富な今津氏に国際コミュニケー
ションの授業での出前講義をお願いし、世界の貧困の問題についてと援助のお仕事から印象に残っていることなどをご紹介い
ただいた。また図書室で国際理解に関する本の紹介をしていただいた。感想には講義題名にもなっていた「私達には何ができま
すか」という実際に取るべき行動について深く考える機会となったことを書いている生徒が多かった。
Ⅷ 作品交流からの刺激を行動に移すためのヒント紹介
    情報処理室を使用して、直接外国に行って平和を創る活動を今すぐできなくても、そのような活動をしている様々な団体を支援
することはできることを紹介した。 ALTが紹介してくれた海外の 団体のリストと、日本の  「イーココロ!」
http://www.ekokoro.jp/ngo/index.html というホームページで地雷撤去や戦場の子供達を助けたり、飢餓をなくすなど様々な活動
をしている団体を調べたり、クリックするだけで募金ができるページがあることなどを紹介した。また中国新聞の「ひろしま国」
(子供達が作る平和のためのサイト)の行動に移すためのヒントになる記事も紹介した。
http://www.wfp.org/country_brief/hunger_map/map/hungermap_popup/map_popup.html  
http://www.freerice.com - Free Rice
 http://www.definition-of.com - Submit a word’s definition, and a lunch will be donated to a hungry child.
 http://www.freepoverty.com –The more accurate your answer is, the more water is donated.
紹介を聞いて、上記のクイズ形式のページで実際に米や水を寄付する活動をした後、外国の団体と日本の団体を少な
くとも一つずつ調べてどのような活動をしている団体かを、プリントに英語と日本語で書いて提出する課題を出した。
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日本の団体はトップページに ENGLISH のサインが出ているところを探し、日本語版と英語版を比較してそれぞれ活動内
容が簡単にまとめられているところを見つけるよう指導した。
Ⅸ これらの活動に参加した生徒の感想紹介 2009年度国際コミュニケーションについて
  約120名の生徒の中で、「交流している実感が湧かなかった」「平和、平和とうるさい」「個人の努力でどうなる問
題でもない」などの否定的な意見を書いた生徒が4人いた。「実感がわかなかった」と書いた生徒は自分でメッセージ
を発信していなかった。始めは否定的な意見だけを言っていた生徒が、交流の途中で変わってくることもあった。ま
た、在学中は「受験勉強で忙しいから交流のための作文を書く暇はない」と言っていた生徒が、卒業してから母校を訪
れ、「夏休みに交流相手の学校を訪問してみたい」「大学で交流相手の言語を学んだので、生徒とメール交換を個人的に
してみたい」と言ってくれたこともあった。相手校の担当教員と相談し、その学校の校長の許可も取っていただき、訪
問を許可していただき、文通相手を紹介していただいた。「体験型の課題は受験に役に立たない」と思い込んでいる生
徒も多いので、自分で考えた意見を表現するために今まで暗記してきた語句や構文を実際に使ってみることで、記憶に
よりよく定着するし、「実際に使うことでしか本当に使えるようにはならない」ということを説明してきた。それでも
「役に立たない」という批判を浴びることがあるが、卒業してから変化する生徒もあるし、批判を悲観しなくてもよい
のではないだろうか。
 A 外国の生徒とのメッセージ交換について
○「日本視点」と「外国視点」では情報の受け取り方に違いがあるように思えた。それはその国が抱えている「今までの過去の違い」に
よるものだと思う。だから、その国のことをよく勉強し、「確かにこういう考え方もあるな」と広い目で見ていかなければならな
いと思う。
 ○自分たちの中にあるどんな素晴らしい考えも、伝え合わなければ意味を成さないので、とても良い経験になった。同世代の人々で
も考えはそれぞれ違うのだと実感した。
 ○今までは海外の人と交流するのはとても大変なことだと思っていましたが、すごく簡単にできると分かって驚きました。文化の
違いなどから、考え方などが全然違うことを知りました。
 ○書いたエッセイが知らない街の高校生に読んでもらえたというのはすごく嬉しかったです。知らない人に自分の思いが伝わるな
んてなかなかない機会ですので、これからも大事にしていけたらよいなと思います。私たちはつながっているのだと感じました
○自分の考え方、捉え方と全く違う意見や、思ってもみないような意見を読むことができて、凄いなあと思った。国によって、その問
題をどう感じ、捉えているか分かって、人ごとではないのだと思った。
 ○世界で平和を希求する同年代の声が聞けて、様々なことを考えることができた。よい経験だった。
 ○添削という意味以外で、自分の書いた英語を読んでもらって、気持ちや考えを伝えたことはなかったので、ちゃんと伝わったとい
うことに少し驚いてしまい、同時にとても嬉しかった。また、同世代の外国に住む人達の文章を読んだりして、自分と同じ考えも
新たな考えも発見することができて、刺激になった。
 ○自分ではない「他人」、完全に理解し、通じ合うことは無理なのかもしれないが、メッセージのやりとりのような小さなことでも、
相手の考えを知り、考えを認めることができるのだなと思いました。
 ○外国の人は同じ地球に生きているのに、はるか遠くの存在という気がしていましたが、メッセージのやりとりを通して、少しでも
身近に感じることができました。
 ○いろんな考えが聞けたのでよかった。文章の書き方を見て、個性が一杯だなと思った。
 ○まずすごく嬉しかったです。実際に返事が返ってくると思いませんでした。もっと英語を勉強してもっとふれ合ってみたいです。
 ○同じ話題で話しているんだなあと思った。世界とつながっていてとても嬉しかった。
○外国の高校生の思いと自分の思いが共通していたり、「確かに」と共感したりできたのでとても楽しかった。また、もっと外国の高
校生達の意見などを聞きたいと思った。
 ○外国の高校生も私たちと同じように平和について、一生懸命考えているんだなあと思った。
 ○あんなにも遠く、人種も言語も違う人とつながることができて感動しました。 
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