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日本社会教育学会第61回研究大会第5室(学習文化活動) 
地域におけるインフォーマルな学習についての 
理論的検討 
荻野亮吾 
(東京大学高齢社会総合研究機構) 
2014/09/27(土)13:25〜13:50 
福井大学教育系1号館2階205講
1. 報告の目的 
 本報告の目的:地域におけるインフォーマルな学習について理論的検討 
を行うこと。 
 近年、社会教育行政の再編とコミュニティの変化についての研究が進め 
られている。具体的には、コミュニティ・ガバナンスと、ソーシャル・ 
キャピタルとの関連を問うといった研究視角が示されている(松田2014; 
佐藤2014等)。 
 ポイントは、社会教育行政の再編(ガバナンスの変容)が、社会関係資 
本の構成にどのような影響を及ぼすのかという点である。しかし、コ 
ミュニティの実態や変化を理論的・実証的に捉える点において、この研 
究の視角は、発展の途上にある。 
 特に問題なのは、社会関係資本の構造的要素と認知的要素のつながりが 
明らかでないこと(※)。具体的には社会関係資本の構築過程と、住民 
の学習との関係が明確でないこと。 
 本報告では、この点を探究するために、地域におけるインフォーマルな 
学習の位置を確認し、アプローチの方法について試論を提示する。 
※この研究に大きな示唆を与えるのが、集落公民館や、自治公民館、字公民館の研究 
である(小林・島袋編2002;末本2013 )。 
2
2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点 
 社会教育を通じたコミュニティの構成や変化を考えるにあたっては、社 
会関係資本の議論を援用することが有用(松田2014; 荻野2014)。 
 社会関係資本の議論は、人々がどのような相互関係の中に埋め込まれている 
かという関係論的視点と、その関係自体がどのように構成されているかとい 
う構造的視点の双方を、その射程に含む。 
 パットナムの研究の重要な点 
 (1)ガバナンスを規定する社会の条件を、社会関係資本として明確化した 
こと、(2)「社会関係」を一種の資本と見なすことによって実証的研究を 
容易にし、経年変化の測定や比較研究への展開が可能となったこと、(3) 
社会関係資本を構築する介入的研究への可能性が開かれた点で重要な意味を 
有する(Putnam 1993=2000; 2000=2006; Putnam and Feldstein 2003)。 
 「社会関係資本」と「ガバナンス」の関連性 
 EUやOECD等の国際的機関や各国政府は、両者の関連性に着目している(荻 
野2014)。日本国内でも、社会関係資本の概念は、ガバナンス概念との関連 
づけで語られることが多い(坂本2011;松田2014)。 
3
2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点(2) 
 生涯学習・社会教育と社会関係資本に関する研究 
 「学習の成果研究センター」の研究:①学習が自己効力感や自信といった非 
認知的能力に与える影響(Hammond 2004: 42-45)、②フォーマルな学習が持 
つ、人種的寛容性や政治的関心、市民組織への参加への影響力(Bynner and 
Hammond 2004: 166-170)、③社会的・経済的地位やジェンダーによって異な 
る社会関係資本の構造的・認知的側面への影響力(Preston 2004a, 2004b)を 
明らかにした。 
 フィールド(Field 2005=2011)は、社会関係資本のタイプで影響力が異なる 
ことや、人的資本と社会関係資本の代替性や補完性について議論を展開。 
 総じて、社会関係資本と生涯学習に関する研究では、フォーマルな教育や講 
座といった教育の機会の効果に注目してきたが(Schuller et al., 2004; Field 
2005=2011)、社会関係資本がインフォーマルな学習に与える影響について 
の研究は少ない。 
 さらに、社会教育研究として重要なのは、社会関係資本を「個人財」ではな 
く、地域の「集合財」として捉える視点である。 
 「個人の生涯学習だけでなく、公民館という社会教育施設の中にソーシャル・キャ 
ピタルが形成され、それがコミュニティにおけるソーシャル・キャピタルの醸成と 
深く関わっているという視点を持つ」ことが重要(松田2012: 26)。 
4
2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点(3) 
 実証的研究へと展開する際に留意すべきポイント(荻野2014) 
 構造的レベルの峻別:社会関係資本の研究を進めるにあたって、ミクロレベ 
ルの社会的ネットワーク、認知的価値観と、マクロレベルの社会関係資本の 
つながりを解明することが重要。 
 ネットワークと「関係基盤」への注目:認知的価値観を規定する社会的ネッ 
トワークと、その「文脈的規定要因」である「関係基盤」(三隅2013)に焦 
点を当てることは、ガバナンスとの接点を考える上で有用である。 
 「関係基盤」は、(1)計量分析と事例分析をつなぎ、(2)ネットワークの構 
造的制約にも対応し、(3)行政からのアクセスポイントとなるという3つの点で、 
分析概念として重要な価値を有する。 
 これまで計量分析では、(1)マクロレベルの社会関係資本とアウトカムの 
関係(例:幸福度、経済発展、安全等)、(2)ミクロレベルの社会的ネッ 
トワークの規定要因とその効果に関する研究が中心だった。 
 事例研究では、(1)地域の社会的ネットワークが文脈的規定要因(関係基 
盤)の影響を受けどのように形成されていくのか、(2)社会教育行政はこ 
の構造的部分にどのように介入できるかが主要な関心となる。 
 以上のレベルごとの概念の布置は、埴淵・中谷(2013)を参照し図1のよう 
に表せる。 
5
社会関係資本の 
文脈的規定要因 
【地域レベル】 
個人レベルの 
社会的ネットワーク 
社会関係資本の 
個人的規定要因 
地域レベルの 
社会関係資本 
集計 
個人レベルの 
認知的価値観 
計量分析(マクロレベル) 
図1 社会関係資本を捉える枠組み 
の対象とする範囲 
地域レベルの 
アウトカム 
個人レベルの 
アウトカム 
【個人レベル】 
社会教育行政の 
介入 
事例研究の対象とする範囲 
6 
計量分析(ミクロレベル) 
の対象とする範囲
3. 中間集団と社会関係資本の関係 
 中間集団への所属の効果 
 社会関係資本の構造的要素と認知的要素の関連に注目すると、地域の中間集 
団への所属と、この中間集団の関係の中で形成される住民意識に焦点が当て 
られてきた。 
 政治学では、中間集団に所属することによる「政治的社会化」(Almond and 
Verba 1963=1974;蒲島1988)、あるいは「市民陶冶機能」(坂本2010)が注 
目されてきた。 
 パットナム(Putnam 1993=2001: @@)も、ボランティア団体への所属は、 
「協同のスキルを涵養し、集合的な努力に対して共有された責任感を洒養す 
る」ことを指摘する。 
 所属する集団によって、形成される価値観は異なる。 
 小林(2000)は、インフォーマルなグループへの所属により「社会的連 
帯」が高まる可能性を指摘する。 
 平野(2002)や池田(2002)は加入団体の数、積極性、水平性・垂直性、 
閉鎖性・開放性等が、信頼や規範、有効感、政治参加に影響を与えるこ 
とが明らかにしている。 
 「政治的社会化」の効果は、所属する集団の教育レベルによって異なり、 
異なる特徴を持つ集団に所属することの効果も存在するとされる(Stolle 
& Hooghe 2003)。 
7
3. 地域における中間集団の布置と関連 
 中間集団の布置と関連:社会学では、地域に存在する「中間集団」が相互 
に結びつくことで、地域住民のネットワークを広げ参加を促すことが明ら 
かにされてきた。 
 地域には、①包括的で自動加入が原則の「住民自治組織」、②行政協力組織や、 
③年齢や性別の組織や、④職業・産業組織といった自動加入を前提とした限定的 
な目的を有する団体、⑤宗教団体や、⑥同郷団体、⑦余暇をめぐる集団、⑧運動 
組織、⑨階層別・階級別組織等の、個別の目的を有した任意組織など、様々な団 
体や組織が存在する(鰺坂2006)。 
 地域社会では、町内会・自治会や地縁団体が活動の基盤として重要な役割を果た 
してきた。 
 ペッカネン(Pekkanen 2006=2008)は、町内会・自治会への所属を主とす 
る、日本の市民社会構造を「政策提言なきメンバー達」であると表現してい 
る。アメリカの市民社会がここ数十年の間に「メンバーシップからマネージ 
メント」(Skocpol 2003=2007)へと移行してきたのに対し、日本では市民 
社会の各種組織の政策提言の機能は不十分でも、地域の小規模な集団の活動 
が活発であったことを示すものである。 
 似田貝(1991、1997)は、地縁団体やサークル・グループのつながりを明ら 
かにしている。高野(2011)は地縁団体の垂直的なつながりの構造と、合併 
による変化を指摘。 
 中間集団の性質は固定的なものでなく、外的要因によって再編や転用のメカニズ 
ムが働くこともある(Putnam and Feldstein 2003: 286-291;荻野2010) 。 
 そして、「社会関係資本の社会構成の問題」(Pekkanen 2006=2008: 159)は、 
中間集団の布置と関連が、地域によって異なるということによって説明される。 
8
3. 中間集団を基盤にしたインフォーマルな学習 
 地域の「関係基盤」と相互の社会的ネットワークの中で生じる、住民の 
認知的価値観の変容をインフォーマルな学習として、研究の対象に据え 
ることができる。 
 ここでは、中間集団への所属の「政治的社会化」の効果を取り上げてきたが、 
集団への所属は社会的ネットワークを広げる効果も持つ。 
 つまり、中間集団への所属は、構造的、認知的な社会関係資本を育む基盤と 
なる。 
 さらに、単なる所属の効果だけでなく、地域にどのような集団が存在し、集 
団同士がどのような関係にあるのかという点も、文脈的規定要因として重要 
となる。 
 「関係基盤」とそれに基づく社会的ネットワークという構造的要素の中で生 
じる住民の認知的価値観の変容をインフォーマルな学習として位置づけるこ 
とができる。 
 地域の社会的ネットワークの基底に位置する中間集団がどのような関係にあ 
るか、住民が各集団への所属を通じて地域活動にどのように関わるのかを把 
握し、この関係の中で、住民のインフォーマルな学習が生じ、コミュニティ 
が構成されて行く過程と論理を捉えることが重要となる。この過程を捉えて 
初めて、社会教育行政が介入できるポイントも明らかになる。(図2) 
9
インフォーマルな学習の研究の範囲 
社会関係資本の 
文脈的規定要因 
【地域レベル】 
個人レベルの 
社会的ネットワーク 
社会関係資本の 
個人的規定要因 
地域レベルの 
社会関係資本 
集計 
個人レベルの 
認知的価値観 
地域レベルの 
アウトカム 
個人レベルの 
アウトカム 
【個人レベル】 
図2 インフォーマルな学習を捉える枠組み 
社会教育行政の 
介入 
10
4. インフォーマルな学習の先行研究(1) 
 インフォーマルな学習への注目 
 近年、インフォーマルな学習は、学習の「成果の認証」や「資格」との関連 
で注目されている(OECD 2007:2010=2011)。OECD(2010=2011: 41) 
は「仕事、家庭生活、余暇に関連した日常の活動の結果としての学習」とし、 
意図的ではない学習を指し、「経験による学習」と同値であるとされる。 
 インフォーマルな学習の定義(Werquin 2007: 3のFigure1より一部抜粋) 
11 
フォーマルインフォーマルノンフォーマル 
Coombs et 
al.,(1973) 
フォーマルな教育:初期 
の教育訓練システムで行 
われるもの。 
インフォーマルな教育: 
真の生涯学習の過程。日 
常的な経験。 
ノンフォーマルな教育: 
公のセクター外で組織化 
されるもの。 
EC(2000) フォーマルな学習:教育 
訓練機関の中で、資格に 
結びつくもの。 
インフォーマルな学習: 
日常的な状況において、 
必ずしも意図的に行われ 
ないもの。 
ノンフォーマルな学習: 
主流の教育システムと共 
存するが、資格に結びつ 
かないもの。 
OECD 
(2007) 
フォーマルな学習:教育 
機関、成人教育機関、職 
場で生じるもの。 
インフォーマルな学習: 
日々の活動、家族、余暇 
活動から生じるもの。非 
組織的・非構造的で、無 
意図的。 
ノンフォーマルな学習: 
計画的だが評価さえず、 
資格に結びつかないもの。 
意図的。
4. インフォーマルな学習の先行研究(2) 
 成人学習論からの示唆 
 成人学習における「経験」の重要性 
経験学習論では、経験のふり返りを通じて意味づけがなされることが重視される 
(Kolb 1984)。 
経験の重要性は、リンデマンやノールズ以来指摘されているが、経験学習論では日 
常的な経験の持つ価値が大きいと考えられている。 
「ふり返り」は、経験を意味づける上で重要な概念 
変容学習とナラティヴ学習においては、学習者が、人生の経験に対して、その解釈 
を通じて向き合っていく過程を扱う(Merriam et al., 2007:214-215)。 
さらに、経験やふり返りが生じる「文脈」を考慮する必要がある。 
レイブらの「正統的周辺参加」の議論は、実践的な集団に人々が参加していく過程 
を学習と捉え直した点に特徴がある。ここでの学習は、実践的共同体に埋め込まれ 
たインフォーマルな学習を指す。 
経験学習論との違いは、人々が参加し、コミュニティや学習の文化に十全に関わる 
こと、その中でそのコミュニティの歴史や前提、文化的価値観やルールを学ぶとい 
う、「文脈」を重視する点にある(Hansman 2001: 46)。 
この考え方は、文脈の役割や社会的相互作用を重視する社会的構成主義の影響を受 
けている(Corte 2010=2013: 48-50)。 
12
4. インフォーマルな学習の先行研究(3) 
 職場学習論からの示唆 
 近年の職場での学習論においては、コルブの経験学習論に依拠しつつ、他者 
からの支援により経験学習のサイクルが適切に機能することに関する定性的 
研究(松尾2011)や、他者からの様々な支援が能力向上に資することを定性 
的・定量的に明らかにする研究(中原2010)が行われてきた。 
 さらに個人レベルだけでなく、職場の規範や信頼といったマクロレベルの影 
響も考慮した分析が行われている(中原2012)。 
 中原(2012: 96-97)が指摘するように、経験学習のモデルでは社会的要因の 
影響が考慮されていないため、「他者」からの支援によってふり返りが促さ 
れること、これを支えるための日常的なコミュニケーションや関係の質が問 
われている。概ね、個人-職場(部署)-組織(-組織外)の3層構造が描かれ 
ている。 
 中原(2012: 187)の職場学習の図を参照すれば、地域でのインフォーマル 
な学習の過程を見る際に、図3のような枠組みを想定できる。 
 個人レベルでの経験学習(集団や地域の活動を通じて学ぶ)、集団レベ 
ルでの状況的学習、そして集団を超えた学習の3つのレベル。 
13
集団での(インフォーマルな)学習 
経験学習 
他のグループへの参加 
経験 
ふり 
返り 
メンバー 
状況的学習 
リーダー 
メンバー 
コミュニケーション 
図3 地域でのインフォーマルな学習の構造 
14
5. インフォーマルな学習を研究するための方法(1) 
 (研究1)インフォーマルな学習の効果を明らかにするために:地域の「中間集 
団」(関係基盤)への所属と、集団の関係に注目した定量的な分析。 
 様々な中間集団への所属(町内会・自治会、地縁集団、市民活動団体、業界 
団体、趣味・スポーツ関係のグループ・サークル)の所属が、地域意識や、 
信頼に及ぼす効果を検証する。 
 同時に、地域レベルの集団の布置、関連も考慮に入れることが必要。 
 例えば、それぞれの集団が水平的にどれほど重なり合っているのか、あ 
るいは重層的な構造になっているか否か(過去と現在の所属の重なり) 
等。 
 これらの構造的要素は、集団の持つ教育機能(関係的要素)を高めたり、 
低めたりすることが予測される。 
 さらに、マルチレベル分析では、地域の特性と、所属集団の(クロスレベル 
の)交互作用効果を分析することも可能。 
→地域特性に応じて、地域への介入のポイント(や効果)が異なる可能性。 
 (例)例えば、大崎・辻(2014)は、高齢化率(マクロレベル)と、所属集団の 
種類(ミクロレベル)の交互作用効果を検証している。この結果、高齢化率が高 
い地域ほど、町内会・自治会に所属することが健康サービスの利用度を高める影 
響力が強いことが明らかにされた。 
15
5. インフォーマルな学習を研究するための方法(2) 
 (研究2)インフォーマルな学習の過程を明らかにするために:地域の 
集団に所属し、活動する中での意識の変容を追う定性的方法。 
 地域の集団や、活動と関わり合う中での段階的な意識の変容を描き出す。 
 この方法では、主観的な「意味世界」の変容がいつ、いかなる過程で生じた 
かを回顧的に振り返ることとなる。 
 (例)自分史やライフ・ストーリー、その他様々なナラティヴの手法も 
有用な方法であると考えられる。 
 ロシター(Rossiter 1999)らが提唱する「発達へのナラティヴ・ア 
プローチ」を、外生的な地域の環境と照合することによって深めて行 
くアプローチ。 
 (例)比較ナラティヴ分析(三隅2014: 183-189):行為の時間的連鎖 
をグラフ化して比較分析する方法。(1)行為者を「関係基盤」によって 
類別し、(2)行為を行為フェイズ、資本投下フェイズ、資本回収フェイ 
ズに3分類する、(3)関係構築・維持、その差し控えや瓦解を「行為」 
に含める方法。 
 このような社会関係資本の蓄積の過程(友人関係、所属集団の変化) 
と、パラレルに起こる意識の変容を捉えていく。 
16
5. インフォーマルな学習を研究するための方法(3) 
 (研究3)インフォーマルな学習のを促進するための働き掛けを明らか 
にする方法:社会教育行政(施設)の介入によって、インフォーマルな 
学習の基盤(関係基盤)がどのように築かれ、組み替えられているのか 
を追う事例研究。 
 現在の行政とコミュニティの関係において、社会教育行政の役割とは、住民 
の関係の形成を通じてインフォーマルな学習を促し、住民が関係の中で集合 
的に社会化されることによって、コミュニティを内的に組み替えていくこと 
にあると考えられる。 
 これまで、社会教育の役割は、意図的な働きかけ(学習機会の提供)を行い 
主体形成を援助することに求められてきた。さらに学習の幅を広く捉えると、 
住民同士のインフォーマルな学習が営まれる「関係基盤」の形成に社会教育 
の役割を拡張して考えることができる。 
 ここでは、インフォーマルな学習の基盤を築くために、社会教育行政(ない 
し施設)はどのような介入が可能なのか、が問題となる。 
 行政による地域課題の設定:例えば適切な地域課題を設定し、住民のグ 
ループ化を促すという方法が考えられる。学級、講座からのグループ化 
はその1つの方法。 
 ネットワークの「連結性」を高める:既存の「関係基盤」をつなぎ直し、 
この基盤上のネットワークの働きを活性化させることで、新たな中間集 
団を創るという方法。(例)「学校支援」というテーマ設定。 
17
社会関係資本の 
文脈的規定要因 
【地域レベル】 
社会教育行政の集計 
個人レベルの 
社会的ネットワーク 
社会関係資本の 
個人的規定要因 
研究1 インフォーマルな学習の効果 
に関する研究(定量的研究) 
地域レベルの 
社会関係資本 
個人レベルの 
認知的価値観 
地域レベルの 
アウトカム 
個人レベルの 
アウトカム 
【個人レベル】 
図4 インフォーマルな学習へのアプローチの方法 
介入 
18 
研究3 社会教育行政の再編と 
社会的ネットワークの再編 
研究2 インフォーマルな学習の過程 
に関する研究(定性的研究)
引用文献(1) 
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講座3 地域社会の政策とガバナンス』東信堂, 173-177. 
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岡寛光・木村修三・深谷満雄訳『現代政治理論叢書3 現代市民の政治文化』勁草書 
房.) 
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Brassett-Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of 
Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 161-178. 
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『学習の本質:研究の活用から実践へ』明石書店, 43-80.) 
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矢野裕俊監訳『ソーシャルキャピタルと生涯学習』東信堂.) 
 Hammond, Cathie, 2004, “Mental Health and Well-Being throughout the 
Lifecourse,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett- 
Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of Education on 
Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 37-79. 
19
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 平野浩, 2002, 「社会関係資本と政治参加――団体・グループ加入の効果を中心に」 
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大学出版会, 43-88. 
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20
引用文献(3) 
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Learning in Adulthood: A Comprehensive Guide (3rd ed.), Jossey-Bass. 
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 中原淳, 2010, 『職場学習論:仕事の学びを科学する』東京大学出版会. 
 ――――, 2012, 『経営学習論:人材育成を科学する』東京大学出版会. 
 似田貝香門, 1991, 「現代社会の地域集団」蓮見音彦編『ライブラリ社会学3 地域社 
会学』サイエンス社, 97-158. 
 ――――, 1997, 「現代都市の地域集団――地域集団の再生の組織論」蓮見音彦・似 
田貝香門・矢澤澄子編『現代都市と地域形成――転換期とその社会形態』東京大学出 
版会, 21-43. 
 OECD, 2007, Qualification Systems: Bridges to Lifelong Learning. 
 ――――, 2010, Recognising Non-Formal and Informal Learning.(=2011, 山 
形大学教育企画室監訳『学習成果の認証と評価――働くための知識・スキル・能力の 
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 荻野亮吾, 2010,「学校―地域間関係の再編の動態についての『社会関係資本』の観点 
からの考察――大分県佐伯市の学校支援地域本部事業を事例として」『生涯学習基盤 
経営研究』34: 41-56. 
 ――――, 2014, 「『社会関係資本』論の社会教育研究への応用可能性」『東京大学 
大学院教育学研究科紀要』53: 95-112. 
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チレベル分析による市区町村間の違いの検討」辻竜平・佐藤嘉倫編『ソーシャル・ 
キャピタルと格差社会――幸福の計量社会学』東京大学出版会, 169-187. 
21
引用文献(4) 
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Advocates, Stanford University Press.(=2008. 佐々田博教訳『現代世界の市民社 
会・利益団体研究叢書日本における市民社会の二重構造――政策提言なきメンバー 
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 Preston, John, 2004a, “A Continuous Effort of Sociability: Learning and Social 
Capital in Adult Life,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela 
Brassett-Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of 
Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 119-136. 
 ――――, 2004b, “Lifelong Learning and Civic Participation; Inclusion, Exclusion 
and Community,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela 
Brassett-Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of 
Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 137-157. 
 Putnam, Robert D., 1993, Making Democracy Work:Civic Traditions in Modern 
Italy, Princeton University Press.(=2001, 河田潤一訳『哲学する民主主義――伝統と 
改革の市民的構造』NTT出版.) 
 ――――, 2000, Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, 
Simon & Schuster. (=2006, 柴内康文訳『孤独なボウリング――米国コミュニティの 
崩壊と再生』柏書房.) 
 ―――― and Lewis M. Feldstein, 2003, Better Together: Restoring the American 
Community, Simon & Schuster. 
 Rossiter, Marsha, 1999, “Understanding Adult Development as Narrative,” in 
Clark, M. Caloryn. & Rosemary S. Caffarella, eds.. “An Update on Adult 
Development Theory,” New Directions for Adult & Continuing Education, 84, 
Jossey-Bass, 77-85. 
22
引用文献(5) 
 坂本治也, 2010, 『ソーシャル・キャピタルと活動する市民――新時代日本の市民政 
治』有斐閣. 
 ――――, 2011, 「ソーシャル・キャピタル論とガバナンス」岩崎正洋編『ガバナンス論 
の現在』勁草書房, 119-139. 
 佐藤智子, 2014, 『学習するコミュニティのガバナンス――社会教育が創る社会関係資 
本とシティズンシップ』明石書店. 
 Schuller, Tom, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett-Grundy, and 
John Bynner, 2004, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, 
Family Life and Social Capital, Routledge, 161-178. 
 Skocpol, Theda, 2003, Diminished Democracy: From Membership to 
Management in American Civic Life, the University of Oklahoma Press.(=2007, 
河田潤一訳『失われた民主主義――メンバーシップからマネージメントへ』慶應義塾大 
学出版会.) 
 Stolle, Dietlind and Marc Hooghe, 2003, “Conclusion: The Sources of Social 
Capital Reconsidered,” in Marc Hooghe and Dietlind Stolle eds., Generating 
Social Capital: Civil Society and Institutions in Comparative Perspective, 
Palgrave Macmillan, 231-248. 
 末本誠, 2013, 『沖縄のシマ社会の社会教育的アプローチ――暮らしと学び空間のナラ 
ティヴ』福村出版. 
 高野和良, 2011, 「過疎高齢社会における地域集団の現状と課題」『福祉社会学研究』 
8: 12-24. 
 Werquin, Patrick, 2007, “Terms, Concepts and Models for Analysing the Value 
of Recognition Programmes”, paper prepared for the OECD Activity on 
Recognition of Non-formal and Informal Learning, EDU/EDPC(2007) 24. 
23
謝辞 
 本研究は、以下の助成を受けて行われたものです。記して感謝を申し 
上げます。 
 平成25〜26年度日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究 
B)「生涯学習を通じたコミュニティ・エンパワメントモデルの開 
発」 
 平成25年度日本公民館学会研究活動促進助成「地域社会の再編 
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24

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  • 1. 日本社会教育学会第61回研究大会第5室(学習文化活動) 地域におけるインフォーマルな学習についての 理論的検討 荻野亮吾 (東京大学高齢社会総合研究機構) 2014/09/27(土)13:25〜13:50 福井大学教育系1号館2階205講
  • 2. 1. 報告の目的  本報告の目的:地域におけるインフォーマルな学習について理論的検討 を行うこと。  近年、社会教育行政の再編とコミュニティの変化についての研究が進め られている。具体的には、コミュニティ・ガバナンスと、ソーシャル・ キャピタルとの関連を問うといった研究視角が示されている(松田2014; 佐藤2014等)。  ポイントは、社会教育行政の再編(ガバナンスの変容)が、社会関係資 本の構成にどのような影響を及ぼすのかという点である。しかし、コ ミュニティの実態や変化を理論的・実証的に捉える点において、この研 究の視角は、発展の途上にある。  特に問題なのは、社会関係資本の構造的要素と認知的要素のつながりが 明らかでないこと(※)。具体的には社会関係資本の構築過程と、住民 の学習との関係が明確でないこと。  本報告では、この点を探究するために、地域におけるインフォーマルな 学習の位置を確認し、アプローチの方法について試論を提示する。 ※この研究に大きな示唆を与えるのが、集落公民館や、自治公民館、字公民館の研究 である(小林・島袋編2002;末本2013 )。 2
  • 3. 2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点  社会教育を通じたコミュニティの構成や変化を考えるにあたっては、社 会関係資本の議論を援用することが有用(松田2014; 荻野2014)。  社会関係資本の議論は、人々がどのような相互関係の中に埋め込まれている かという関係論的視点と、その関係自体がどのように構成されているかとい う構造的視点の双方を、その射程に含む。  パットナムの研究の重要な点  (1)ガバナンスを規定する社会の条件を、社会関係資本として明確化した こと、(2)「社会関係」を一種の資本と見なすことによって実証的研究を 容易にし、経年変化の測定や比較研究への展開が可能となったこと、(3) 社会関係資本を構築する介入的研究への可能性が開かれた点で重要な意味を 有する(Putnam 1993=2000; 2000=2006; Putnam and Feldstein 2003)。  「社会関係資本」と「ガバナンス」の関連性  EUやOECD等の国際的機関や各国政府は、両者の関連性に着目している(荻 野2014)。日本国内でも、社会関係資本の概念は、ガバナンス概念との関連 づけで語られることが多い(坂本2011;松田2014)。 3
  • 4. 2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点(2)  生涯学習・社会教育と社会関係資本に関する研究  「学習の成果研究センター」の研究:①学習が自己効力感や自信といった非 認知的能力に与える影響(Hammond 2004: 42-45)、②フォーマルな学習が持 つ、人種的寛容性や政治的関心、市民組織への参加への影響力(Bynner and Hammond 2004: 166-170)、③社会的・経済的地位やジェンダーによって異な る社会関係資本の構造的・認知的側面への影響力(Preston 2004a, 2004b)を 明らかにした。  フィールド(Field 2005=2011)は、社会関係資本のタイプで影響力が異なる ことや、人的資本と社会関係資本の代替性や補完性について議論を展開。  総じて、社会関係資本と生涯学習に関する研究では、フォーマルな教育や講 座といった教育の機会の効果に注目してきたが(Schuller et al., 2004; Field 2005=2011)、社会関係資本がインフォーマルな学習に与える影響について の研究は少ない。  さらに、社会教育研究として重要なのは、社会関係資本を「個人財」ではな く、地域の「集合財」として捉える視点である。  「個人の生涯学習だけでなく、公民館という社会教育施設の中にソーシャル・キャ ピタルが形成され、それがコミュニティにおけるソーシャル・キャピタルの醸成と 深く関わっているという視点を持つ」ことが重要(松田2012: 26)。 4
  • 5. 2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点(3)  実証的研究へと展開する際に留意すべきポイント(荻野2014)  構造的レベルの峻別:社会関係資本の研究を進めるにあたって、ミクロレベ ルの社会的ネットワーク、認知的価値観と、マクロレベルの社会関係資本の つながりを解明することが重要。  ネットワークと「関係基盤」への注目:認知的価値観を規定する社会的ネッ トワークと、その「文脈的規定要因」である「関係基盤」(三隅2013)に焦 点を当てることは、ガバナンスとの接点を考える上で有用である。  「関係基盤」は、(1)計量分析と事例分析をつなぎ、(2)ネットワークの構 造的制約にも対応し、(3)行政からのアクセスポイントとなるという3つの点で、 分析概念として重要な価値を有する。  これまで計量分析では、(1)マクロレベルの社会関係資本とアウトカムの 関係(例:幸福度、経済発展、安全等)、(2)ミクロレベルの社会的ネッ トワークの規定要因とその効果に関する研究が中心だった。  事例研究では、(1)地域の社会的ネットワークが文脈的規定要因(関係基 盤)の影響を受けどのように形成されていくのか、(2)社会教育行政はこ の構造的部分にどのように介入できるかが主要な関心となる。  以上のレベルごとの概念の布置は、埴淵・中谷(2013)を参照し図1のよう に表せる。 5
  • 6. 社会関係資本の 文脈的規定要因 【地域レベル】 個人レベルの 社会的ネットワーク 社会関係資本の 個人的規定要因 地域レベルの 社会関係資本 集計 個人レベルの 認知的価値観 計量分析(マクロレベル) 図1 社会関係資本を捉える枠組み の対象とする範囲 地域レベルの アウトカム 個人レベルの アウトカム 【個人レベル】 社会教育行政の 介入 事例研究の対象とする範囲 6 計量分析(ミクロレベル) の対象とする範囲
  • 7. 3. 中間集団と社会関係資本の関係  中間集団への所属の効果  社会関係資本の構造的要素と認知的要素の関連に注目すると、地域の中間集 団への所属と、この中間集団の関係の中で形成される住民意識に焦点が当て られてきた。  政治学では、中間集団に所属することによる「政治的社会化」(Almond and Verba 1963=1974;蒲島1988)、あるいは「市民陶冶機能」(坂本2010)が注 目されてきた。  パットナム(Putnam 1993=2001: @@)も、ボランティア団体への所属は、 「協同のスキルを涵養し、集合的な努力に対して共有された責任感を洒養す る」ことを指摘する。  所属する集団によって、形成される価値観は異なる。  小林(2000)は、インフォーマルなグループへの所属により「社会的連 帯」が高まる可能性を指摘する。  平野(2002)や池田(2002)は加入団体の数、積極性、水平性・垂直性、 閉鎖性・開放性等が、信頼や規範、有効感、政治参加に影響を与えるこ とが明らかにしている。  「政治的社会化」の効果は、所属する集団の教育レベルによって異なり、 異なる特徴を持つ集団に所属することの効果も存在するとされる(Stolle & Hooghe 2003)。 7
  • 8. 3. 地域における中間集団の布置と関連  中間集団の布置と関連:社会学では、地域に存在する「中間集団」が相互 に結びつくことで、地域住民のネットワークを広げ参加を促すことが明ら かにされてきた。  地域には、①包括的で自動加入が原則の「住民自治組織」、②行政協力組織や、 ③年齢や性別の組織や、④職業・産業組織といった自動加入を前提とした限定的 な目的を有する団体、⑤宗教団体や、⑥同郷団体、⑦余暇をめぐる集団、⑧運動 組織、⑨階層別・階級別組織等の、個別の目的を有した任意組織など、様々な団 体や組織が存在する(鰺坂2006)。  地域社会では、町内会・自治会や地縁団体が活動の基盤として重要な役割を果た してきた。  ペッカネン(Pekkanen 2006=2008)は、町内会・自治会への所属を主とす る、日本の市民社会構造を「政策提言なきメンバー達」であると表現してい る。アメリカの市民社会がここ数十年の間に「メンバーシップからマネージ メント」(Skocpol 2003=2007)へと移行してきたのに対し、日本では市民 社会の各種組織の政策提言の機能は不十分でも、地域の小規模な集団の活動 が活発であったことを示すものである。  似田貝(1991、1997)は、地縁団体やサークル・グループのつながりを明ら かにしている。高野(2011)は地縁団体の垂直的なつながりの構造と、合併 による変化を指摘。  中間集団の性質は固定的なものでなく、外的要因によって再編や転用のメカニズ ムが働くこともある(Putnam and Feldstein 2003: 286-291;荻野2010) 。  そして、「社会関係資本の社会構成の問題」(Pekkanen 2006=2008: 159)は、 中間集団の布置と関連が、地域によって異なるということによって説明される。 8
  • 9. 3. 中間集団を基盤にしたインフォーマルな学習  地域の「関係基盤」と相互の社会的ネットワークの中で生じる、住民の 認知的価値観の変容をインフォーマルな学習として、研究の対象に据え ることができる。  ここでは、中間集団への所属の「政治的社会化」の効果を取り上げてきたが、 集団への所属は社会的ネットワークを広げる効果も持つ。  つまり、中間集団への所属は、構造的、認知的な社会関係資本を育む基盤と なる。  さらに、単なる所属の効果だけでなく、地域にどのような集団が存在し、集 団同士がどのような関係にあるのかという点も、文脈的規定要因として重要 となる。  「関係基盤」とそれに基づく社会的ネットワークという構造的要素の中で生 じる住民の認知的価値観の変容をインフォーマルな学習として位置づけるこ とができる。  地域の社会的ネットワークの基底に位置する中間集団がどのような関係にあ るか、住民が各集団への所属を通じて地域活動にどのように関わるのかを把 握し、この関係の中で、住民のインフォーマルな学習が生じ、コミュニティ が構成されて行く過程と論理を捉えることが重要となる。この過程を捉えて 初めて、社会教育行政が介入できるポイントも明らかになる。(図2) 9
  • 10. インフォーマルな学習の研究の範囲 社会関係資本の 文脈的規定要因 【地域レベル】 個人レベルの 社会的ネットワーク 社会関係資本の 個人的規定要因 地域レベルの 社会関係資本 集計 個人レベルの 認知的価値観 地域レベルの アウトカム 個人レベルの アウトカム 【個人レベル】 図2 インフォーマルな学習を捉える枠組み 社会教育行政の 介入 10
  • 11. 4. インフォーマルな学習の先行研究(1)  インフォーマルな学習への注目  近年、インフォーマルな学習は、学習の「成果の認証」や「資格」との関連 で注目されている(OECD 2007:2010=2011)。OECD(2010=2011: 41) は「仕事、家庭生活、余暇に関連した日常の活動の結果としての学習」とし、 意図的ではない学習を指し、「経験による学習」と同値であるとされる。  インフォーマルな学習の定義(Werquin 2007: 3のFigure1より一部抜粋) 11 フォーマルインフォーマルノンフォーマル Coombs et al.,(1973) フォーマルな教育:初期 の教育訓練システムで行 われるもの。 インフォーマルな教育: 真の生涯学習の過程。日 常的な経験。 ノンフォーマルな教育: 公のセクター外で組織化 されるもの。 EC(2000) フォーマルな学習:教育 訓練機関の中で、資格に 結びつくもの。 インフォーマルな学習: 日常的な状況において、 必ずしも意図的に行われ ないもの。 ノンフォーマルな学習: 主流の教育システムと共 存するが、資格に結びつ かないもの。 OECD (2007) フォーマルな学習:教育 機関、成人教育機関、職 場で生じるもの。 インフォーマルな学習: 日々の活動、家族、余暇 活動から生じるもの。非 組織的・非構造的で、無 意図的。 ノンフォーマルな学習: 計画的だが評価さえず、 資格に結びつかないもの。 意図的。
  • 12. 4. インフォーマルな学習の先行研究(2)  成人学習論からの示唆  成人学習における「経験」の重要性 経験学習論では、経験のふり返りを通じて意味づけがなされることが重視される (Kolb 1984)。 経験の重要性は、リンデマンやノールズ以来指摘されているが、経験学習論では日 常的な経験の持つ価値が大きいと考えられている。 「ふり返り」は、経験を意味づける上で重要な概念 変容学習とナラティヴ学習においては、学習者が、人生の経験に対して、その解釈 を通じて向き合っていく過程を扱う(Merriam et al., 2007:214-215)。 さらに、経験やふり返りが生じる「文脈」を考慮する必要がある。 レイブらの「正統的周辺参加」の議論は、実践的な集団に人々が参加していく過程 を学習と捉え直した点に特徴がある。ここでの学習は、実践的共同体に埋め込まれ たインフォーマルな学習を指す。 経験学習論との違いは、人々が参加し、コミュニティや学習の文化に十全に関わる こと、その中でそのコミュニティの歴史や前提、文化的価値観やルールを学ぶとい う、「文脈」を重視する点にある(Hansman 2001: 46)。 この考え方は、文脈の役割や社会的相互作用を重視する社会的構成主義の影響を受 けている(Corte 2010=2013: 48-50)。 12
  • 13. 4. インフォーマルな学習の先行研究(3)  職場学習論からの示唆  近年の職場での学習論においては、コルブの経験学習論に依拠しつつ、他者 からの支援により経験学習のサイクルが適切に機能することに関する定性的 研究(松尾2011)や、他者からの様々な支援が能力向上に資することを定性 的・定量的に明らかにする研究(中原2010)が行われてきた。  さらに個人レベルだけでなく、職場の規範や信頼といったマクロレベルの影 響も考慮した分析が行われている(中原2012)。  中原(2012: 96-97)が指摘するように、経験学習のモデルでは社会的要因の 影響が考慮されていないため、「他者」からの支援によってふり返りが促さ れること、これを支えるための日常的なコミュニケーションや関係の質が問 われている。概ね、個人-職場(部署)-組織(-組織外)の3層構造が描かれ ている。  中原(2012: 187)の職場学習の図を参照すれば、地域でのインフォーマル な学習の過程を見る際に、図3のような枠組みを想定できる。  個人レベルでの経験学習(集団や地域の活動を通じて学ぶ)、集団レベ ルでの状況的学習、そして集団を超えた学習の3つのレベル。 13
  • 14. 集団での(インフォーマルな)学習 経験学習 他のグループへの参加 経験 ふり 返り メンバー 状況的学習 リーダー メンバー コミュニケーション 図3 地域でのインフォーマルな学習の構造 14
  • 15. 5. インフォーマルな学習を研究するための方法(1)  (研究1)インフォーマルな学習の効果を明らかにするために:地域の「中間集 団」(関係基盤)への所属と、集団の関係に注目した定量的な分析。  様々な中間集団への所属(町内会・自治会、地縁集団、市民活動団体、業界 団体、趣味・スポーツ関係のグループ・サークル)の所属が、地域意識や、 信頼に及ぼす効果を検証する。  同時に、地域レベルの集団の布置、関連も考慮に入れることが必要。  例えば、それぞれの集団が水平的にどれほど重なり合っているのか、あ るいは重層的な構造になっているか否か(過去と現在の所属の重なり) 等。  これらの構造的要素は、集団の持つ教育機能(関係的要素)を高めたり、 低めたりすることが予測される。  さらに、マルチレベル分析では、地域の特性と、所属集団の(クロスレベル の)交互作用効果を分析することも可能。 →地域特性に応じて、地域への介入のポイント(や効果)が異なる可能性。  (例)例えば、大崎・辻(2014)は、高齢化率(マクロレベル)と、所属集団の 種類(ミクロレベル)の交互作用効果を検証している。この結果、高齢化率が高 い地域ほど、町内会・自治会に所属することが健康サービスの利用度を高める影 響力が強いことが明らかにされた。 15
  • 16. 5. インフォーマルな学習を研究するための方法(2)  (研究2)インフォーマルな学習の過程を明らかにするために:地域の 集団に所属し、活動する中での意識の変容を追う定性的方法。  地域の集団や、活動と関わり合う中での段階的な意識の変容を描き出す。  この方法では、主観的な「意味世界」の変容がいつ、いかなる過程で生じた かを回顧的に振り返ることとなる。  (例)自分史やライフ・ストーリー、その他様々なナラティヴの手法も 有用な方法であると考えられる。  ロシター(Rossiter 1999)らが提唱する「発達へのナラティヴ・ア プローチ」を、外生的な地域の環境と照合することによって深めて行 くアプローチ。  (例)比較ナラティヴ分析(三隅2014: 183-189):行為の時間的連鎖 をグラフ化して比較分析する方法。(1)行為者を「関係基盤」によって 類別し、(2)行為を行為フェイズ、資本投下フェイズ、資本回収フェイ ズに3分類する、(3)関係構築・維持、その差し控えや瓦解を「行為」 に含める方法。  このような社会関係資本の蓄積の過程(友人関係、所属集団の変化) と、パラレルに起こる意識の変容を捉えていく。 16
  • 17. 5. インフォーマルな学習を研究するための方法(3)  (研究3)インフォーマルな学習のを促進するための働き掛けを明らか にする方法:社会教育行政(施設)の介入によって、インフォーマルな 学習の基盤(関係基盤)がどのように築かれ、組み替えられているのか を追う事例研究。  現在の行政とコミュニティの関係において、社会教育行政の役割とは、住民 の関係の形成を通じてインフォーマルな学習を促し、住民が関係の中で集合 的に社会化されることによって、コミュニティを内的に組み替えていくこと にあると考えられる。  これまで、社会教育の役割は、意図的な働きかけ(学習機会の提供)を行い 主体形成を援助することに求められてきた。さらに学習の幅を広く捉えると、 住民同士のインフォーマルな学習が営まれる「関係基盤」の形成に社会教育 の役割を拡張して考えることができる。  ここでは、インフォーマルな学習の基盤を築くために、社会教育行政(ない し施設)はどのような介入が可能なのか、が問題となる。  行政による地域課題の設定:例えば適切な地域課題を設定し、住民のグ ループ化を促すという方法が考えられる。学級、講座からのグループ化 はその1つの方法。  ネットワークの「連結性」を高める:既存の「関係基盤」をつなぎ直し、 この基盤上のネットワークの働きを活性化させることで、新たな中間集 団を創るという方法。(例)「学校支援」というテーマ設定。 17
  • 18. 社会関係資本の 文脈的規定要因 【地域レベル】 社会教育行政の集計 個人レベルの 社会的ネットワーク 社会関係資本の 個人的規定要因 研究1 インフォーマルな学習の効果 に関する研究(定量的研究) 地域レベルの 社会関係資本 個人レベルの 認知的価値観 地域レベルの アウトカム 個人レベルの アウトカム 【個人レベル】 図4 インフォーマルな学習へのアプローチの方法 介入 18 研究3 社会教育行政の再編と 社会的ネットワークの再編 研究2 インフォーマルな学習の過程 に関する研究(定性的研究)
  • 19. 引用文献(1)  鰺坂学, 2006, 「地域住民組織と地域ガバナンス」岩崎信彦・矢澤澄子編『地域社会学 講座3 地域社会の政策とガバナンス』東信堂, 173-177.  Almond, Gabriel A. and Sidney Verba, 1963, The Civic Culture: Political Attitudes and Democracy in Five Nations. Princeton University Press.(=1974, 石川一雄・片 岡寛光・木村修三・深谷満雄訳『現代政治理論叢書3 現代市民の政治文化』勁草書 房.)  Bynner, John and Cathie Hammond, 2004, “The Benefits of Adult Learning; Quantitative Insights,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett-Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 161-178.  Coombs, Philip Hall, Roy C. Prosser and Manzoor Ahmed, 1973, New Paths to Learning for Rural Children and Youth, International Council for Educational Development.  Corte, Erik de, 2010, ”Historical Developments in the Understanding of Learning” in CERI., ed., The Nature of Learning: Using Research to Inspire Practice, 35-68. (=2013, 佐藤智子訳「学習についての理解の歴史的発展」立田慶裕・平沢安政監訳 『学習の本質:研究の活用から実践へ』明石書店, 43-80.)  European Commission, 2000, Memorandum on Lifelong Learning, SEC(2000) 1832.  Field, John, 2005, Social Capital and Lifelong Learning, The Polity Press. (=2011, 矢野裕俊監訳『ソーシャルキャピタルと生涯学習』東信堂.)  Hammond, Cathie, 2004, “Mental Health and Well-Being throughout the Lifecourse,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett- Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 37-79. 19
  • 20. 引用文献(2)  埴淵知哉・中谷友樹, 2013, 「地域コミュニティのソーシャル・キャピタルを規定する 文脈的要因」イチロー・カワチ他編『ソーシャル・キャピタルと健康政策』日本評論 社, 151-172.  Hansman, Catherine A., 2001, “Context-Based Adult Learning,” in Sharan B. Merriam ed., “The New Update on Adult Learning Theory,” New Directions for Adult and Continuing Education, 89, Jossey-Bass, 43-51.  平野浩, 2002, 「社会関係資本と政治参加――団体・グループ加入の効果を中心に」 『選挙研究』17, 19-30.  池田謙一, 2002, 「2000年衆議院選挙における社会関係資本とコミュニケーション」 『選挙研究』17: 5-18.  蒲島郁夫, 1988,『現代政治学叢書6 政治参加』東京大学出版会.  小林文人・島袋正敏編. 2002, 『おきなわの社会教育――自治・文化・地域おこし』エ イデル研究所.  小林久高, 2000, 「政治意識と政治参加の動態」間場寿一編『講座社会学9 政治』東京 大学出版会, 43-88.  Kolb, David A., 1984, Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development, Prentice Hall.  松田武雄, 2012, 「社会教育学研究におけるソーシャル・キャピタル論の枠組み」『生 涯学習政策研究1』(文部科学省生涯学習政策局)21-29.  ――――, 2014, 『コミュニティ・ガバナンスと社会教育の再定義――社会教育福祉の可 能性』福村出版.  松尾睦, 2011, 『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社. 20
  • 21. 引用文献(3)  Merriam, Sharan. B., Rosemary S. Caffarella, and Lisa M. Baumgartner, 2006, Learning in Adulthood: A Comprehensive Guide (3rd ed.), Jossey-Bass.  三隅一人, 2013, 『叢書・現代社会学6 社会関係資本――理論統合の挑戦』ミネルヴァ 書房.  中原淳, 2010, 『職場学習論:仕事の学びを科学する』東京大学出版会.  ――――, 2012, 『経営学習論:人材育成を科学する』東京大学出版会.  似田貝香門, 1991, 「現代社会の地域集団」蓮見音彦編『ライブラリ社会学3 地域社 会学』サイエンス社, 97-158.  ――――, 1997, 「現代都市の地域集団――地域集団の再生の組織論」蓮見音彦・似 田貝香門・矢澤澄子編『現代都市と地域形成――転換期とその社会形態』東京大学出 版会, 21-43.  OECD, 2007, Qualification Systems: Bridges to Lifelong Learning.  ――――, 2010, Recognising Non-Formal and Informal Learning.(=2011, 山 形大学教育企画室監訳『学習成果の認証と評価――働くための知識・スキル・能力の 可視化』明石書店.)  荻野亮吾, 2010,「学校―地域間関係の再編の動態についての『社会関係資本』の観点 からの考察――大分県佐伯市の学校支援地域本部事業を事例として」『生涯学習基盤 経営研究』34: 41-56.  ――――, 2014, 「『社会関係資本』論の社会教育研究への応用可能性」『東京大学 大学院教育学研究科紀要』53: 95-112.  大﨑裕子・辻竜平, 2014, 「健康サービス利用にたいする地域組織参加の効果――マル チレベル分析による市区町村間の違いの検討」辻竜平・佐藤嘉倫編『ソーシャル・ キャピタルと格差社会――幸福の計量社会学』東京大学出版会, 169-187. 21
  • 22. 引用文献(4)  Pekkanen, Robert, 2006, Japan‘s Dual Civil Society: Members without Advocates, Stanford University Press.(=2008. 佐々田博教訳『現代世界の市民社 会・利益団体研究叢書日本における市民社会の二重構造――政策提言なきメンバー 達』木鐸社.)  Preston, John, 2004a, “A Continuous Effort of Sociability: Learning and Social Capital in Adult Life,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett-Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 119-136.  ――――, 2004b, “Lifelong Learning and Civic Participation; Inclusion, Exclusion and Community,” in Tom Schuller, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett-Grundy, and John Bynner, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 137-157.  Putnam, Robert D., 1993, Making Democracy Work:Civic Traditions in Modern Italy, Princeton University Press.(=2001, 河田潤一訳『哲学する民主主義――伝統と 改革の市民的構造』NTT出版.)  ――――, 2000, Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, Simon & Schuster. (=2006, 柴内康文訳『孤独なボウリング――米国コミュニティの 崩壊と再生』柏書房.)  ―――― and Lewis M. Feldstein, 2003, Better Together: Restoring the American Community, Simon & Schuster.  Rossiter, Marsha, 1999, “Understanding Adult Development as Narrative,” in Clark, M. Caloryn. & Rosemary S. Caffarella, eds.. “An Update on Adult Development Theory,” New Directions for Adult & Continuing Education, 84, Jossey-Bass, 77-85. 22
  • 23. 引用文献(5)  坂本治也, 2010, 『ソーシャル・キャピタルと活動する市民――新時代日本の市民政 治』有斐閣.  ――――, 2011, 「ソーシャル・キャピタル論とガバナンス」岩崎正洋編『ガバナンス論 の現在』勁草書房, 119-139.  佐藤智子, 2014, 『学習するコミュニティのガバナンス――社会教育が創る社会関係資 本とシティズンシップ』明石書店.  Schuller, Tom, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett-Grundy, and John Bynner, 2004, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 161-178.  Skocpol, Theda, 2003, Diminished Democracy: From Membership to Management in American Civic Life, the University of Oklahoma Press.(=2007, 河田潤一訳『失われた民主主義――メンバーシップからマネージメントへ』慶應義塾大 学出版会.)  Stolle, Dietlind and Marc Hooghe, 2003, “Conclusion: The Sources of Social Capital Reconsidered,” in Marc Hooghe and Dietlind Stolle eds., Generating Social Capital: Civil Society and Institutions in Comparative Perspective, Palgrave Macmillan, 231-248.  末本誠, 2013, 『沖縄のシマ社会の社会教育的アプローチ――暮らしと学び空間のナラ ティヴ』福村出版.  高野和良, 2011, 「過疎高齢社会における地域集団の現状と課題」『福祉社会学研究』 8: 12-24.  Werquin, Patrick, 2007, “Terms, Concepts and Models for Analysing the Value of Recognition Programmes”, paper prepared for the OECD Activity on Recognition of Non-formal and Informal Learning, EDU/EDPC(2007) 24. 23
  • 24. 謝辞  本研究は、以下の助成を受けて行われたものです。記して感謝を申し 上げます。  平成25〜26年度日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究 B)「生涯学習を通じたコミュニティ・エンパワメントモデルの開 発」  平成25年度日本公民館学会研究活動促進助成「地域社会の再編 と公民館の役割に関する事例研究:公民館を基盤にした『社会的 ネットワーク』形成の観点から」 24