熊本の半導体

1. 熊本での半導体の調査
2022/11/04

2. 半導体産業育成
 東京エレクトロンの東哲郎元社長や黒田忠広・東京大学大学院教授ら7人
 関連産業をはじめ県経済全体の底上げにつなげる狙い
 県内半導体関連産業の現状や課題、長期的な安定性を高めるための他産業との連携策などについ
て議論
 サプライチェーンについては、熊本の枠を超えて海外も含めた連携や、世界標準から見た熊本の
あり方
 シリコンアイランド復活

3. 目標

4. Step1 : TSMC
 台湾積体電路製造（TSMC）の熊本誘致、ソニーグループやデンソーとの合弁会社JASM設立
 自動車や産業機械など、すべてのモノをネットにつなげるIoT産業への対応である
 何ナノ（ナノは10億分の1）メートルといったデザインルールで語られる場合が多いが、正確には
日本が技術を持たない立体のフィンフェット構造デバイスの量産である
＝＞ 既に九州では経済効果も大きく、満点評価だ。

5. Step2:日本版NSTC（米国立半導体技術セン
ター）
 日米で先端半導体の基盤拡充・人材育成に加え、20年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を
確立する狙いだ
 IBMの研究所があるアルバニーで2ナノメートル以下の次世代工程技術を習得、先端ロジック分野
で、日本が強い製造装置や材料産業のサポートのもとに国内に開発・製造拠点を設ける

6. 課題
 半導体製造の後工程（組み立てや検査など）や設計自動化ソフト（EDA）への対応だ。半導体は
微細化を追求する「モア・ムーア」だけでなく、3D積層や小型モジュールを組み合わせてチップ
化するチップレットに代表されるパッケージ実装技術の「モア・ザン・ムーア」技術が重要とな
り、前工程と後工程が融合、業界構造が変化しつつある。前工程の覇者TSMCも後工程に参入、米
インテルはチップレットの標準化団体を立ち上げた。

7. 課題
 人材育成、特にアジアで活躍中の製造技術を熟知するシニア技術者を呼び戻し、活用する仕組み
だ。シニアの年齢を考えれば、喫緊の課題である。
 研究開発エコシステム（生態系）の実現である。東京大学や理化学研究所、産業技術総合研究所
も参加するといわれる日本版NSTCの位置づけだ。屋上屋を架すような研究所ではなく、開発セン
ターとすべきである。応用を絞り、具体的な製品を想定した国内生産拠点からの依頼研究を中心
としたい

8. 課題
 業界エコシステムである。TSMCと争うのではなく、後工程も含めた多品種少量や短納期など、新
たな価値を追求すれば日本の貢献も大だろう。

9. 戦略
 戦略物資である半導体は、石油や為替などと同様、先物市場や戦略備蓄もあってよい。例えば、
データセンター向けの先行発注もあるだろう。
 半導体・デジタル」というように、今回の政策は最上位にデジタルがあり、グリーンもあるプラ
ンを作って終わりではない。実装を大胆に急がねば、幸運の女神も逃げかねない。

10. TSMC
 建設工事が進む台湾積体電路製造（TSMC）の新工場予定地（10月、熊本県菊陽町）
 1兆円規模で建設を進める同社の工場や設備. TSMCの工場建設への投資は9321億円、操業後の生
産高は5年間で2兆円あまりにのぼる
 関連産業やインフラ、そこで働く人々の住宅なども含めた膨大な資金需要
 TSMC進出による熊本県内への経済波及効果は2022年からの10年間で4兆3000億円に及ぶ
 新工場に関連する企業も含めると約7500人が雇用
 県外からの進出や既存企業など約80社が工場を建てたり設備を増強したりすると見込む
 初任給28万円、TSMC, 2024年の工場稼働に向けて1200人の新規採用を計画

11. TSMC

12. 半導体向け関連企業
 半導体製造に欠かせない産業用ガ
スや薬品などを供給する企業が、
熊本県で拠点の新設や移転・拡大
をしている
 半導体生産では多くのガスや薬品
を使用する
 薬品では、半導体の洗浄などに使
われるフッ化水素などがある.需要
が増える中で迅速配送や輸送距離
の短縮のため、熊本への拠点充実
が重要になっている。

13. 半導体向け関連企業
 半導体生産に使われる特殊ガスや水の供給、設備の保守管理などを手掛けるジャパンマテリアル
はTSMCに供給するための工場やガス倉庫棟を、11月に大津町に開設する計画だ。投資額は約30
億円を予定する。
 三井ハイテックから施設を取得して大規模改装をするほか、ガス倉庫棟は建設する。24年1月の全
面稼働を目指す
 TSMCが工場建設を進める熊本県菊陽町と隣接する大津町。半導体製造装置部品のフェローテック
ホールディングスは「この地に工場を造ると即断即決した」（賀賢漢社長）。フェローテックは
約48億円を投資し子会社の新工場を建設する。

14. 熊本
 20億～30億円の用意がある。売却予定の物件を紹介してほしい(コスギ不動産ホールディングス
（熊本市）の小杉竜三取締役)
 台湾でTSMCが工場を建設した地域の周辺の地価は必ず上がるという。熊本でも同様になると予想
しての動きだった
 投資家の知人はすでに熊本市内でマンションを1棟買いした
 熊本の不動産業界では海外の投資家や企業が物件を購入したとか、ゴルフ場を探しているといっ
た噂話でもちきりだ。
 工業団地開発や労働者の住宅設備などの投資も呼び込み、6兆3000億円規模の県内総生産
（GDP）を年平均で2000億円程度、約3%押し上げると予測する

15. 熊本
 熊本大学は2024年度、半導体人材を育成する学部相当の「情報基盤融合学環」（仮称）を新設す
る
 半導体プロセスとデジタルトランスフォーメーション（DX）に関する2コースを設け、定員は1学
年で計60人を想定する。
 必要とされる人材や具体的なカリキュラムなどについては、TSMCの製造子会社であるJASM（熊
本市）とも意見交換
 工学部に半導体に関する学科相当の課程も24年度に新設する
 TSMCがトリガー（引き金）になった。英語やDX人材の教育に力を入れ、半導体人材の育成を進
める
 熊本県立大学と東海大学と共同で「熊本地域大学ネットワーク機構」（仮称）を23年度に立ち上
げる。熊本大の講義を県立大の学生がオンラインで受講できるようにするなど、地域全体で人材
を育成していく

16. 熊本
高等専門学校（高専
熊本高専（合志市、八代市）が2022年春、半導体関連
カリキュラムの高度化と産学連携の活動強化を柱とする
人材育成策を始めた。大塚弘文校長特別補佐は「TSMC
の進出が決まってからは『さあやれ』という感じで走り
続けた」
10月から、佐世保高専（長崎県佐世保市）が4月に始め
た「半導体工学概論」の内容を若干変更して4、5年生向
けに始めた。教員だけではなく、半導体関連企業の担当
者による講義もある

17. 台湾
 TSMC進出を契機に台湾とのつながりが深まる中、新たな商流に乗ろうと進出を考える海外企業は
少なくない。
 商工中金熊本支店の津渡直人支店長は外資が企業買収に動くのは「進出したくても県内に工業用
地はあまり残っていない。今あるところを買った方が早いからだろう」
 日本貿易振興機構（ジェトロ）の福岡貿易情報センターによると、企業名は非公表だがすでに台
湾2社の熊本への進出が固まったという。台湾企業からの相談は非常に具体的なもので、話は急
ピッチでまとまった