SlideShare a Scribd company logo
日本監査研究学会 第41回 全国大会 2018年8月30日
於:近畿大学
テクノロジーの進化と監査
日本監査研究学会課題別研究部会
中間報告
https://www.slideshare.net にスライドをアップしています。
HiroshiTakiで検索してください。
PC、タブレット、スマホで閲覧できます。
はじめに
本部会の目的
 先の読めないイノベーション環境下で、われわれ監査研究者は何を事前に検討すべきであ
るかを明らかにする。
研究の趣旨
 これまでの学会のテーマ
• 監査制度のグローバリゼーションへの対応
• 監査制度の変革 激動の20年 → 現在も継続中
• テクノロジーの進化の問題は対象から外れていた
 テクノロジーの進化
• 少し前はエンロン事件 (規制緩和、金融工学、ブロードバンド・・・)
• 現在は、2013年以降の第3次AIブーム
• そのほか、ブロックチェーン 等々
• 監査はいま、データ・アナリティクス(AIではない)
 監査に対する挑戦
• テクノロジーの進化の監査制度への影響(たとえ監査はAI化しなくても、被監査事業体はどんどん姿を変え、
AI化していく)
• Frey & Osborne (2013)の指摘(監査人の市場はどうなるのか)
2
中間報告書の構成
第1部 監査を取り巻くテクノロジーの進化
第1章 研究課題(瀧 博)
第2章 監査のテクノロジー環境(坂上 学)
第3章 テクノロジーの進化の制度的背景と監査実務の展開方向─ドイツ・インダストリー4.0を踏まえて─
(小松 義明)
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査(井上 直樹)
第2部 監査データ・アナリティクスの動向
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの導入に関する検討―国際監査・保証基準審議会の
データ・アナリティクス作業部会の活動内容を中心に― (堀古 秀徳)
第6章 アメリカにおけるADAの現状 −Guide to Audit Data Analyticsの内容を中心にして−(松尾 慎太郎)
第7章 カナダにおける監査データ・アナリティクスの動向(髙原 利栄子)
第8章 内部監査におけるData Analyticsの動向(中村 映美)
第3部 AI環境下における監査制度
第9章 AI時代に必要とされる監査人の能力(小俣 光文)
第10章 医療分野におけるAIと監査(藤岡 英治)
第11章 AI環境下における可監査性 -ブラックボックス問題と可読性− (瀧 博)
第12章 AI時代の監査報酬を考える:A preliminary report (田口 聡志)
第13章 AI環境下における財務諸表作成者と監査人の法的責任 (瀧 博)
3
人工知能(AI)の扱いについて
 将来の対策
 通説としての定義がない。
 本研究では、ディープ・ラーニング(深層学習)を基礎とするも
のに限定している。
• アルゴリズムが解読できるような伝統的な技術は研究の対象としていな
い。
– これまでのコンピュータ技術とは異なり、検証が難しく、安全性やセキュリ
ティ、さまざまな面で事前の対策が必要と考えられるため。
• 特別のリテラシーあるいはスキルが幅広く必要となることが予想される。
• 現在の会計や監査制度を変えるかもしれない。
4
テクノロジーの進化と監査
第1章 研究課題
瀧 博
(立命館大学)
6つの課題領域
6
テクノロジーの進化
① 会計と監査
② 人的要件
③ 監査市場・
監査人市場
④ 監査基準等
⑤ 法的責任
⑥ その他
① テクノロジーの進化と会計監査
 課題の特徴 2つの領域
① 被監査事業体におけるテクノロジーの進化
– 財務データの標準化、IoT、ブロックチェーン、データマイニング、テキストマ
イニング、AI化 等々
– Industrie 4.0 (ドイツ)、Society 5.0 (日本)
② 監査におけるテクノロジーの進化
– CAAT
– エキスパート・システム
– データ・アナリティクス
 本研究における検討
第2章 監査のテクノロジー環境
第3章 テクノロジーの進化の制度的背景と監査実務の展開方向 ードイツ・イン
ダストリー4.0を踏まえてー
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査
7
② 監査人の人的要件への影響
 課題の特徴
① 専門能力・経験
② 独立性
 本研究における検討
第3章 テクノロジーの進化の制度的背景と監査実務の展開方
向 ードイツ・インダストリー4.0を踏まえてー
第9章 AI時代に必要とされる監査人の能力
8
③ 監査人の市場、監査の市場への影響
 課題の特徴
① 監査人の市場
• 新しく監査プロフェッションを志願する者と受け入れる監査業界・監査事務
所等の市場
• どのような資質・能力をもった人材を受け入れるようにすべきか
② 監査の市場
• 監査人と被監査事業体の市場
• 監査への投資規模、監査報酬
 本研究における検討
第9章 AI時代に必要とされる監査人の能力
第12章 AI時代の監査報酬を考える: A preliminary report
9
④ 監査基準、実務指針等の実務規範への影響
 課題の特徴
① 財務諸表監査の諸概念への影響
• 内部統制への依拠、試査、合理的保証、重要性、適正性 etc.
② 可監査性
• ディープラーニング等の可読性((可)解釈性、説明性、理解可能性)
 本研究における検討
第二部 データ・アナリティクスの動向
第11章 AI環境下における可監査性 ーブラックボックス問題と可
読性ー
10
⑤ 法的責任への影響
 課題の特徴
① 財務諸表作成者および監査人の両者の法的責任が、テクノロ
ジーの進化によってどのような影響を受けるか。
② 財務諸表監査に固有の問題とは。
 本研究における検討
※ 第13章で検討予定でしたが、準備が間に合いませんでした。最終報告書
で議論することにします。
11
⑥ その他監査関連の諸領域への影響
 課題の特徴
 例
– 財務報告のサプライチェーン (資金調達や企業形態の変化などによる
影響)
– 自動化と判断領域の拡大
 本研究における検討
 最終報告に向けて、近未来にどのような問題がありうるかを検
討する。
12
テクノロジーの進化と監査
第2章 監査のテクノロジー環境
坂上 学
(法政大学)
監査データ標準の動向
AICPAは、高度な分析のための標準データモデルとして「監
査データ標準」(ADS)を公表した。
ADSにより、監査プロセスの適時性と有効性を改善すること
が期待されている。
フォーマットとしてはXBRL GLが導入されているが、技術的に
難解ゆえ、理解が進まない点が問題となっている。
モノリシック・タクソノミは、その問題を解決する糸口になるか
もしれない。
14
ディープラーニングの監査への適用可能性
ディープラーニング手法の原型は「単純パーセプトロン」であ
るが、これは一次線形結合式で表現される判別分析と同程度
の処理しかできない。
単純パーセプトロンには線形非分離問題が存在していたが、
それを克服したのが階層型ニューラルネットワークであり、さら
に中間層を多層化したのがディープラーニングである。
ディープラーニングを応用し、倒産分析の精度が上がれば、
ゴーイングコンサーン監査の判断にも大いに役立つことだろう。
15
ブロックチェーン監査
仮想通貨のコア技術としてブロックチェーンがあるが、さまざ
まな分野に適用が可能である。
近年、これを監査に応用しようという動向、ブロックチェーン監
査の導入が活発化している。
現在のコンピュータ技術下では、ブロックチェーンの安全性は
確保されているといえるが、ウォレットに格納されている秘密
鍵の漏洩といった別のリスクも存在する。
何が安全で何が危険なのかを適切に判断できるようになるた
めにも、ブロックチェーンの理解は欠かせないものとなるだろう。
16
訂正事項
『中間報告書』
19頁9行目 「解散事項」→「改竄事項」
19頁18行目 「1,000万円」→「1,500万円」
17
テクノロジーの進化と監査
第3章 テクノロジーの進化の制度的背景
と監査実務の展開方向
ードイツ・インダストリー4.0を踏まえてー
小松 義明
(大東文化大学)
Ⅰ はじめに
ドイツにおけるインダストリー4.0の概念は,情報技術とコミュニケーション
技術を手段として,価値創造プロセスが企業全体にわたってデジタル化さ
れ,インターネットで結ばれることにより,工業生産を自ら制御し,最適化す
ることである。
かかる状況において,監査に関する情報は将来,ビッグデータを分析する
技術によって獲得される。監査人には,新しいビジネスモデルを理解し,リ
スクを認識し,ビックデータを効率的に処理する監査技術を用いることが求
められる。
本章は,まず監査実務の背後にある経済状況としてのインダストリー4.0の
概要を示す。次に,監査実務の変化を検討する際の手掛かりを示すために,
将来の監査人に想定される一つの考え方である「経済監査士2.0」を取り上
げ,今後の展開方向を探る。最後に,研究課題を提示する。
19
Ⅱ テクノロジーの進化の制度的背景と研究課題
1 インダストリー4.0の概要
インダストリー4.0は,ドイツ連邦教育科学省が勧奨して,2011年にドイツ工
学アカデミーが発表したドイツ政府が推進する製造業のデジタル化を目指
すコンセプトであり,国家的戦略プロジェクトである。
特徴的なことは,デジタル化とネットワーク化である。これらは,ビッグデー
タ分析をリアルタイム処理で可能にする。
2 研究対象としてのインダストリー4.0
研究対象はインダストリー4.0への転換シナリオとして捉えることができる。
ポーターによるバリューチェーンを基礎にして転換シナリオが体系化されて
いる(図表1を参照)。
上記の特徴は,さらに「スマート・プロダクション」,「スマート・プロダクト」お
よび「スマート・ネットワーク」の3つの視点を導く。
20
Ⅲ インダストリー4.0による経済監査士2.0の必要性
現代のビジネスモデルを理解し,リスクを認識するための課題に挑戦する
のが「経済監査士2.0」である。ビッグデータを処理し,監査を効率的に支援
する現代的な監査技術を用いる。
経済監査士2.0によってこそ,インダストリー4.0からの課題を乗り越えること
ができると考えられる。
Ⅳ 監査のデジタル化についての10の命題
グロースとゼルホルンの論考において,経済監査士2.0の職業イメージを
説明する手がかりとして10の命題が示されている。
要約すると次のとおりである。①新たな業務分野の登場,➁中心となる IT
知識,③依頼者とのネットワーキング,④ビックデータの分析,⑤デジタル
ラボ,⑥アルゴリズムと検査マクロ,⑦クラウド・コンピューティング,⑧継続
監査,⑨ロボオーディタ―,⑩デジタル世代
21
Ⅴ むすび
経済監査士2.0に向けての10の命題は,デジタル化が伝統的な決算監査
人の業務を陳腐化するのではなく,むしろより多彩にし,複合的な問題提起
に集中させることができることを示唆している。
 経済監査士2.0に向けて,いくつかの検討すべき事項がある。
• 現実の実務状況として,どれ程デジタルトランスフォーメーションは進展して
いるか。
• 監査法人等はいかなる取り組みをしているか。
• 新たな会計プロセスとそれに対応する監査技術の登場により,これまでの
監査概念が変容するか。
新たな監査制度の到来を導くテーマとして,最終報告の課題としたい。
22
テクノロジーの進化と監査
第4章 地方自治体におけるICTの活用と
VFM監査
井上 直樹
(福知山公立大学)
背景
24
④ 監査基準等
⑤ 法的責任
⑥ その他
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査
AIなどICTを活用し
たVFMの高い行政
サービスへの期待
監査基準(実施基準および報告基
準)の設定に必要な論点の考察
③ 目的
ICT活用のVFM監査は、監査基準が
存在しないため実施されていない
② 仮説
⑴ 自治体におけるICTの活用状況
⑵ 監査委員によるVFM監査
① 対象
少子高齢化 財政の悪化 職員数の減少
問題の提起
わが国自治体におけるICTの導入事例(いずれも導入段階)
25
AI
道路の損傷を
自動診断
スマートフォンに
よる総合案内
サービス
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査
認可保育施設
の入所希望者
の割り振り
RPA
申請内容のシ
ステムへの手
入力を自動化
住民票発行等
の窓口業務の
自動化
自治体におけ
る内部管理業
務の自動化
労働集約的な事業等を効率化
余剰資源を別の事業等へ投入・
有効性を向上
海外自治体におけるICTの導入およびVFM監査の事例
26
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査
⇒ 警察、ヘルスケアなどにAI導入が開始された段階
① 監査主体と監査客体の協働によって、KPIを設定
特徴
National Audit Office(2007)Value for Money in Public Sector
Corporate Services: A Joint Project by the UK Public Sector
Audit Agencies.(AI導入以前)
② KPIによるベンチマーキングで他団体と業績比較
③ KPIを組み合わせて事業等の有効性を評価
概要
5つの外部監査機関の共同プロジェクトによって、ICT
など内部管理業務のVFMを測定・監視するKPIを設定
27
④ 監査基準等
⑤ 法的責任
⑥ その他
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査
VFM監査の実施
は限定的
テクノロジー導入によって解決を図る
課題がある程度共通しているため、
KPIを活用したベンチマークの実施
② ベンチマーク
とKPIの設定
効率性に加え、テクノロジーが実現する
有効性を多面的に分析・明確に定義
① VFMの定義
必要と認めると
きに実施
VFM監査の定
義が不明確
判断規準・行為
規準の不存在
ICTに関するVFM監査基準の設定に向けた論点
わが国自治体におけるVFM監査
28
④ 監査基準等
⑤ 法的責任
第4章 地方自治体におけるICTの活用とVFM監査
監査委員によるVFM監査が適切に実施されない主な理由
次年度の課題
結論
ICTに関するVFM監査の実施基準と報告基準の設定
判断規準および監査基準の不存在
テクノロジーの進化と監査
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの
導入に関する検討
堀古 秀徳
(大阪産業大学)
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの
導入に関する検討
データ・アナリティクス作業部会の概要
国際監査・保証基準審議会(IAASB)が設置した作業部会
活動目的:公の利益に資する財務諸表監査を追求する中で、テ
クノロジーの発展に財務諸表監査を対応させていくための方法
や時期についての情報を収集すること
2015年に活動開始
2016年9月:“Request for Input: Exploring the Growing Use of
Technology in the Audit, with a Focus on Data Analytics”(RFI)
を公表
2018年1月:“Feedback Statement: Exploring the Growing Use of
Technology in the Audit, with a Focus on Data Analytics”(FS)
を公表
30
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの
導入に関する検討
RFIの内容①
データ・アナリティクスの便益
• データが複雑かつ大量になる監査環境において、企業および企業環境に
ついてのより効果的で健全な理解を入手するための機会を提供できる
• より大きな母集団の分析から監査証拠を収集する監査人の能力を高める
• 被監査会社それ自身のリスク評価や経営活動に関する追加的な価値ある
情報を被監査会社に提供できる
データ・アナリティクスの限界
• 分析しているデータの監査への関連性について明確な理解が必要となる
• 監査人が合理的な監査意見より高い何かを提供できるわけでも、「合理的
な保証」の意味を変化させるわけでもない
• 職業的専門家としての判断および職業的懐疑心が不要になることはない
• 「プログラムが生成したのだから、その出力情報に誤りはない」という誤解
から生じる「過度の信頼(overconfidence)」について注意を払うべきである
31
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの
導入に関する検討
RFIの内容②
データ・アナリティクスの導入と国際監査基準の改訂
• 国際監査基準は、現在の原則主義の立場を維持しながらも、監査結果を
利用する人々の需要を満たし続けるために、強固(robust)かつ目的適合
的(relevant)であり続ける必要がある
• 解決すべき課題および検討事項
(1)ビジネス環境における環境的な要因および状況によってもたらされる課題
(a)データの獲得、(b)データの概念、(c)法律および規制、(d)資源の利用可能性、
(e)規制当局および監視当局による監視を維持する方法、(f)監査人の再訓練および再教育への投資
(2)監査基準の設定に影響を与える可能性がある課題
(a)一般的なIT統制、(b)企業によって作成された情報、(c)外部データの関連性と信頼性、
(d)リスク評価手続で利用される監査証拠の性質、(e)国際監査基準における現在のリスクと対応の性質、
(f)リスク対応手続で利用される監査証拠の性質、(g)識別された例外に対する作業努力の適切な水準、
(h)リスクの測定、(i)データ・アナリティクスを適用する場合に文書化の要求事項を適用する中での課題、
(j)利用されるデータ・アナリティクスのテクノロジーやツールの開発にかかる品質管理プロセス
32
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの
導入に関する検討
RFIの内容③
利害関係者への質問
(a)財務諸表監査におけるデータ・アナリティクスの利用に強い影響を与える、現在のビジネス環境の
中に存在している全ての状況および要因を検討してきたか?
(b)基準設定上の課題について列挙した項目は、正確かつ完全か?
(c)本作業部会が現在進めている作業を援助するために、基準設定上の課題に対して考えられる解
決策について、利害関係者はどのような見解を有しているか?
(d)本作業部会によって計画されている現在進行中のIAASBの他のプロジェクトへの関与は適切か?
(e)RFIで識別されているイニシアティブ以外に、本作業部会が現時点で気付いておらず、かつ、本作
業部会の作業にさらなる情報を提供することができるその他のイニシアティブは存在するか?
(f)IAASBと本作業部会が進むべき次の段階として、利害関係者はどのような見解を有しているか?
例えば、IAASBと本作業部会が現在検討している活動には、以下のものが含まれる:
(i)適切な場合、IAASBの現在のプロジェクトによって影響を受ける国際監査基準の改訂に注目を集めること
(ii)国際監査基準520“分析的手続”の改訂を探究すること
(iii)識別された課題に対する論点と考えられる解決策をまとめて探究するために、利害関係者との1度以上の会
議を主催すること
(iv)あらゆる公式の基準設定活動に先立つ公式の討議資料協議を視野に入れて、財務諸表監査におけるデー
タ・アナリティクスの利用に関連する論点への接触と探究を継続すること
33
第5章 財務諸表監査へのデータ・アナリティクスの
導入に関する検討
FSの内容
寄せられた回答の概要(回答数:51)
• データ・アナリティクス作業部会の現在の役割と将来の方向性を支持
• 国際監査基準自体の改訂は慎重に行っていくべきと主張するとともに、
データ・アナリティクスの利用に関する実務指針の開発・設定を強く要求
• 回答者の属性ごとに、ヨリ重視している課題が異なっている
最終報告に向けた展望
データ・アナリティクス作業部会の活動状況を追跡
IAASBが描く将来の方向性について検討
34
テクノロジーの進化と監査
第6章 アメリカにおけるADAの現状
−Guide to Audit Data Analyticsの内容を中心にして−
松尾 慎太郎
(東北公益文科大学)
本章の背景
テクノロージーの進化のもとで、Audit data analytics(以
下、ADA)は、監査をより効果的かつ効率的に行うことが
でき、監査の実施方法を変革する可能性を秘めているも
のとして注目されているが、必ずしもADAについての共通
認識があるとは言い難い状況である。
そのような中、2017年、アメリカ公認会計士協会より、
Guide to Audit Data Analyticsが公表された。
36
本章の問題意識と目的
ADAとは一体何なのか、ADAにより監査実務はどのよう
な場面でどのような影響を受けるのか、という問題意識の
もと、本章では、アメリカのプロフェッションにおけるADAに
関する理解の現状について確認することを目的とし、前
述のガイドの内容について検討する。
37
本章の結論と最終報告に向けて
ガイドという性質もあり、既存の監査基準の要求事項に
関して、ADAの利用によりどのように達成されるのか、と
いう観点からの説明がなされていたため、従来の分析的
手続との明確な違いについては確認することができな
かった。
しかし、付録において示されたADAの利用の例示から、
グラフィックスや表の利用といった可視化技術がADAの
特徴であり、データのグルーピングやフィルタリングといっ
たプロセスを行う際に有用であると考えられる。
最終報告に向けては、 ADAの利用に関する実態調査か
ら、未来の監査の展望について検討を行う予定である。
38
テクノロジーの進化と監査
第7章 カナダにおける監査データアナリティクスの
動向
髙原 利栄子
(近畿大学)
第7章 カナダにおける監査データアナリティクスの動向
カナダ勅許プロフェッショナル会計士協会(Chartered Professional
Accountants Canada: CPA Canada)では、監査データアナリティク
ス委員会(Audit Data Analytics Committee:ADAC)を立ち上げ、
2016年6月に監査データアナリティクス(ADA)に関する報告書を公
表。
ADAの定義:米国の定義を踏襲
カナダでは、財務諸表監査における分析的手続を包含する概念
としてADAを捉えており、視覚化することによって監査における
重要事項を迅速に特定できると考えられている。
40
カナダにおけるADA利用の実態調査
 ADACは、2017年9月にカナダにおけるADAsの利用に
関する実態調査を行っている。
 事務所規模によってADAの利用割合は高く、全体とし
て比較的少ない判断や意思決定に専門知識を必要とし
ないアサーションに対してヨリ多くのADAが利用されてい
る。
ADAの利用を推進する要因と障壁となる要因も調査。
41
 実態調査によれば、ADAを推進する要因について、外
的インセンティブ(クライアントからの期待)と内的インセン
ティブ(事務所の競争優位戦略)があるが、中小規模の事
務所はそれら二つの要素が推進要因となるが、大規模事
務所では内的インセンティブのみが推進要因となるという。
こうしたADA利用のインセンティブに関するさらなる詳細
な研究について最終報告で検討したいと考える。
42
第8章 内部監査における Data Analyticsの動向
テクノロジーの進化と監査
中村 映美
(大阪成蹊短期大学)
Ⅱ 内部監査におけるCAATの意義
コンピュータ利用監査技法:CAAT(Computer‐Assisted
Audit Techniques)
①売上取引ごとの利益率算定や前期比較等の数値分析
②特定の条件に合致したデータ抽出
③データの整合性確認
④再計算
内部監査では業務処理(プロセス)のボトムネックの発見
①電子決済のログを分析し、時間を要している案件を抽出
②訂正報告を分析し、訂正報告の多い業務、部門の抽出
③交際費の利用状況と取引状況(売上高)の相関関係の調査
44
Ⅲ ビッグデータによるデータ分析への影響
1 ビッグデータの特性
①データの容量:全世界で生成されるデータの総量が2012年
には2.8ゼタバイト、2020年には40ゼタバイトに到達するとの
予測
②データの処理速度の高速化
③データの種類:会計データ、
金融データ、顧客データ等内部だけでなく、外部のリソース
からもデータを入手
⇒リアルタイムで情報が作成
⇒従来型の過去情報に対する監査から
連続的にモニタリングを行う必要性が生じている
45
Ⅲ ビッグデータによるデータ分析への影響
2 記述型分析から予測型分析、指示型分析への展開
◆ DavenportT.Hによる指摘
ビッグデータの進展に伴い
・第1ステージ:過去に生じた事象の特徴を分析する記述型分析
・第2ステージ:予測型分析
・第3ステージ:指示型分析に進化
⇒企業で実施されているData Analyticsというのは、
従来のCAATの進化形と捉えられることができる
46
Ⅲ ビッグデータによるデータ分析への影響
3 内部監査におけるData Analyticsの実態
◆Stippich and Preberによる指摘
①内部監査では最も多く実施されているのは、記述型分析
②内部監査におけるData Analyticsの活用状況
傾向分析72%、コンプライアンスのモニタリング56%、不正摘発54%、
事業評価や業務評価48%
③使用ツール:エクセル利用77%⇒取り扱い件数の限界
4 内部監査における今後のData Analyticsの導入の課題
①コンピュータ環境整備の見直し
②連続的監査の必要性⇒入手できるデータの信頼性の問題
③内部監査人の専門的能力⇒ITスキルを有する人材の確保
47
第9章 AI時代に必要とされる監査人の能力
テクノロジーの進化と監査
小俣 光文
(明治大学)
対象を認識して手を使う仕事 手先の器用さ
素早く手を動かす能力
働く場所が制限されているか
創造性 オリジナリティ
美術
社会的知能 他者の反応を理解する必要性
交渉
説得
他者の補助や世話
49
FreyとOsborneによるコンピュータ化確率の判断基準
不規則な物体の認知および操作
監査の対象である企業自体は全体として物理的な形態を持たないものの、常日頃
変化しており非常に不規則なものである
創造的知性
監査は単にデータ操作を行ってその結果を示すだけではなく、どのようなデータを
いつ収集するかを判断し、分析の結果を情報の信頼性の観点から解釈し、意見表
明の基礎にまで昇華させて意見を表明するという創造的側面を有している
複雑な社会的交流
監査を実施する際には、経営者の誠実性や企業のカルチャーなどを評価する際に
相互のコミュニケーションは必要不可欠となる
50
監査は「なくならない仕事」の用件をすべて満たす
これからの監査人に必要とされる能力
ビジネスに対する鋭い洞察力
監査クライアントの事業を理解し、ビジネスモデルを評価し、クライアントの事業に存
在するビジネスリスクを識別できる能力
技術とデータから情報を得る能力
IT技術を効果的に使用し、ITがもたらすリスクを軽減し、データを分析し解釈する能力、
ならびに、多数の専門家の知識を結集し、適用し評価するプロジェクト管理能力
ソフトスキル
専門的な判断を適用し、専門的な懐疑心を発揮する能力
51
監査人に必要とされる能力向上の方策
ビジネスに対する鋭い洞察力
ビジネスモデルを理解することに重点を置いたOJTの実施
企業から人を雇用したり監査事務所から企業へ人を派遣したりする人的交流の促進
監査チームに、監査を実施するための適切な訓練を受けた業界の専門家を含める
技術とデータから情報を得る能力
大規模データを効果的かつ効率的に監査できるデータ分析ツールの開発
アドバイザリー業務に使用される分析ツールの一部を監査に導入
ソフトスキル
適切な指導者の指導による心理学的、行動学的な能力の向上
監査チームとクライアントとの遠隔性の排除
52
第10章 医療分野におけるAIと監査
テクノロジーの進化と監査
藤岡 英治
(大阪産業大学)
第10章 医療分野におけるAIと監査
Ⅰ 医療分野におけるAIの活用
2020年度の本格的な活用を目指して医療分野ではAI
の活用(画像診断をはじめとした早期発見、AIによる治
療技術、医療情報の集約など)を進めている。
54
出所)未来投資会議 構造改革徹底推進会合「医療・介護―生活者の暮らしを豊かに」会合、参考資料、2017年10月20日、8頁。
第10章 医療分野におけるAIと監査
Ⅱ 医療分野から監査領域への示唆
AI化においても残る医師の業務
「分析する」 患者データや患者の気持ち等の分析
「説得する」 患者への説明、コミュニケーション
「責任を取る」 最終的な判断の責任は医師
※ AIによる監査が導入された場合、最終的な監査判断
の責任を誰がとるかなど参考にする部分が多い。
先行する医療分野におけるAI活用の動向に注視する
必要がある。
55
第10章 医療分野におけるAIと監査
Ⅲ 法整備の関係~医療分野におけるビッグデータの活用
患者情報は、個人情報保護法で保護されている情報
「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情
報に関する法律」(通称、医療ビックデータ新法)の制定
2017年5月12日
個人情報保護法では個人情報として提供が認められな
かった情報が個人を特定する部分をオプトアウト(選ん
で外す)することによる匿名加工情報として収集が可能。
56
テクノロジーの進化と監査
第11章 AI環境下における可監査性
ーブラックボックス問題と可読性ー
瀧 博
(立命館大学)
II 問題の所在
 Kokika & Davenport (2017)の指摘
 2つの課題
① バイアス
– データ駆動型、相互作用、顕現、類似性、矛盾する目標
② 透明性
– ルールベースによるエキスパートシステムやアナリティクス(線形回帰
分析)は比較的、モデルに入力するデータ、モデルによるデータの加工
と出力は容易である。
– 機械学習やDNNは、しばしば「ブラックボックス」となっており、技術専門
家でも理解、解釈が難しいか、不可能である
– 透明性が確保されなければ、規制当局、会計事務所、被監査組織体も、
こうした機械に意思決定や判断を任せることはできないであろう
 Kokika & Davenport は、これ以上に何も指摘していない。
58
Ⅲ 可読性の問題
1. 人工知能研究者による指摘
– 可読性がないことは弱点
– 可読性は信頼性につながる大事なポイント
– 今後のAI開発では、可読性、説得力が重要に
– 結果が間違っていたとき、結果にたどり着いたロジックを辿れるから
チューニングができる
– DNNでは、可視化できるのは、2層か3層まで
2. 可読性への挑戦
1) 大局的な説明
2) 局所的な説明
3) 説明可能なモデルの設計
4) 深層学習モデルの説明
59
Ⅳ ブラックボックス問題に対する社会的な取り組み
1. 総務省「AI開発ガイドライン」
 9つの原則
① 連携の原則
② 透明性の原則
③ 制御可能性の原則
④ 安全の原則
⑤ セキュリティの原則
⑥ プライバシーの原則
⑦ 倫理の原則
⑧ 利用者支援の原則
⑨ アカウンタビリティの原則
60
Ⅳ ブラックボックス問題に対する社会的な取り組み
2. アメリカ
 『人工知能の研究および開発に関する国家戦略プラン』
(NSTC 2016)
• 戦略3: AIの倫理的、法的、そして社会的な意義の理解と対応
– AIシステムの挙動・意思決定の透明性の確保
– 法律、社会規範、倫理と矛盾しないまたは一致することが検証可能なア
ルゴリズムやアーキテクチャーの開発
– 倫理的推論を統合するAIシステムの最良の設計アーキテクチャーの開
発(監視用のエージェントを別に設定するなど)
• 戦略4: AIシステムの安全性とセキュリティの確保
– 説明可能性と透明性の改善
– 信頼の構築
– 検査と検証の向上
– 攻撃へのセキュリティ
– AIの安全性と価値適合性の長期的な達成
61
Ⅴ おわりに
可読性問題は、工学分野では検討段階である。
AIの社会的な実装については、相当のハードルがある。
監査制度に関しても同様に、被監査事業体、監査人とも
にAIを実装するハードルはかなり高いと考えられる。
最終報告書に向けては、個々の技術的な問題、それが
社会におけるAIの実装にどのような問題をもたらすのか
を組み合わせた議論と、それをベースに監査制度につい
て検討を行う予定。
62
テクノロジーの進化と監査
第12章 AI時代の監査報酬を考える
ー A preliminary report ー
田口 聡志
(同志社大学)
田口聡志 「AI時代の監査報酬を考える
−A preliminary report」
問題意識:
①AI監査の導入と「社会の目」 「社会の目」がAI監査導入をどのように捉えるの
かを知ることは、今後の監査のあり方を考える上でも重要(e.g. 監査期待ギャップ)
②AI投資のコストとベネフィット(Issa, Sun and Vasarhelyi 2016)
→これまであまり議論されてこなかったAI時代の未来の「監査報酬」を考える
(監査法人の経営戦略を考える上でも重要)
64
本研究の目的:AIを用いた監査に係る「監査報酬」について、
「社会の目」がどのように評価するか、またその理由はなにかを
サーベイにより定量的に分析(現状より上?下?)
既存研究との比較と4つの仮説
・監査報酬に関する既存研究との違い
65
RQ:「AI時代の監査報酬は、現状より高くなる? 低くなる?」
→サーベイ or 実験
研究デザイン
66
・サーベイ調査(最終報告では「サーベイ実験」に拡張)
[海外ジャーナルでは、Jury(陪審員)の意思決定実験がトレンド]
+ [テクノロジー導入にかかる「ナノ・ジュリー」「AIジュリー」実験]
「AI陪審員」サーベイ
サンプルサイズ:333, 2017.1実施, 関西の私立大学にて実施
仮想シナリオを読み、AI陪審員として、以下を7段階のリカート尺度で回答
「AI時代の監査報酬は、現状より高くなるべきか否か」(4変化なし)
その「理由への同意度」(7強く同意)
1 2 3 4 5 6 7
結果
67
1 2 3 4 5 6 7
増加減少 (変化なし)
「社会の目」は、AIを利用していなかった時代と比べ、
「AI時代の監査報酬は減少すべき」と考えている
(マンホイットニーのU検定:(U = 29,138, p-value = 0.000)
理由分析1: OLS
68
H1-H4すべて、1%(5%)水準で統計的に有意に支持される結果
理由分析2:主成分分析の結果解釈
69
「社会の目」は、「AIは広く浅く、人間は狭く深く」業務を分担していくというイメー
ジ(「A I広範・人間特化因子」)を持ちつつも、しかし、「報酬は時間で決まる」という
考え(「時間の呪い因子」)から、監査時間が減少することを特に重視して、人間の
役割の量的な意味での相対的低下として捉えている
本研究の現時点での結論と課題
・AI時代の監査報酬のあり方に関するサーベイ調査
→「社会の目」は、AI時代の監査報酬は、
現在よりも低くなることが望ましいと考えている
70
「時間の呪い」
因子
最終報告に向けての課題
①監査法人にとって、AI監査に関する社会への効果的な情報発信の方法は?
→サーベイ実験への拡張可能性
②多様なサンプルへ向けて、被験者の拡張(学生から一般人へ、また監査人
側のデータもとり比較)
→サンプル特性に着目したデータ分析への拡張可能性

More Related Content

Similar to 20130830 Japan Auditing Association

CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線
CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線
CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線
Recruit Lifestyle Co., Ltd.
 
How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)
How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)
How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)
Yasuyuki Kataoka
 
中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介
中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介
中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介
Hironori Washizaki
 
16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...
16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...
16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...
LINE Corp.
 
「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証
「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証
「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証
Kuniharu(州晴) AKAHANE(赤羽根)
 
バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践
バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践
バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践
Yuichiro KATO
 
ソフトウェアテストの最新動向
ソフトウェアテストの最新動向ソフトウェアテストの最新動向
ソフトウェアテストの最新動向
Keizo Tatsumi
 
基本的に物理産業のデジタル化への取組み
基本的に物理産業のデジタル化への取組み基本的に物理産業のデジタル化への取組み
基本的に物理産業のデジタル化への取組み
Hiroshi Takahashi
 
AI_IoTを活用する企業のあり方
AI_IoTを活用する企業のあり方AI_IoTを活用する企業のあり方
AI_IoTを活用する企業のあり方
Osaka University
 
TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用
TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用
TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用
Hironori Washizaki
 
ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化
ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化
ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化Daisuke Sashida
 
科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想
科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想
科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想
scirexcenter
 
半導体( 熊本).pptx
半導体( 熊本).pptx半導体( 熊本).pptx
半導体( 熊本).pptx
outputsomething
 
「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04
「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04
「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04Makoto Nonaka
 
Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用
Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用
Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用
Reiko Rikuno
 
MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...
MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...
MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...
harmonylab
 
超高速開発の基礎概念 20141119 0
超高速開発の基礎概念 20141119 0超高速開発の基礎概念 20141119 0
超高速開発の基礎概念 20141119 0
正善 大島
 
Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善
Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善
Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善
Hironori Washizaki
 
Paradigm shifts in QA for AI products
Paradigm shifts in QA for AI productsParadigm shifts in QA for AI products
Paradigm shifts in QA for AI products
Yasuharu Nishi
 

Similar to 20130830 Japan Auditing Association (20)

CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線
CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線
CET(Capture EveryThing)プロジェクトにおけるﰀ機械学 習・データマイニング最前線
 
How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)
How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)
How to organize data science project (データサイエンスプロジェクトの始め方101)
 
中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介
中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介
中島毅, SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介
 
16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...
16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...
16.02.08_Hadoop Conferece Japan 2016_データサイエンスにおける一次可視化からのSpark on Elasticsear...
 
「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証
「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証
「効率、品質、統制」の共通課題に着目した現場主導によるITS導入の効果検証
 
バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践
バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践
バックキャスティング思考を用いたコア技術戦略の実践
 
ソフトウェアテストの最新動向
ソフトウェアテストの最新動向ソフトウェアテストの最新動向
ソフトウェアテストの最新動向
 
基本的に物理産業のデジタル化への取組み
基本的に物理産業のデジタル化への取組み基本的に物理産業のデジタル化への取組み
基本的に物理産業のデジタル化への取組み
 
AI_IoTを活用する企業のあり方
AI_IoTを活用する企業のあり方AI_IoTを活用する企業のあり方
AI_IoTを活用する企業のあり方
 
TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用
TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用
TISO/IEC JTC1におけるソフトウェア工学知識体系、技術者認証および品質の標準化と研究・教育他への活用
 
ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化
ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化
ソーシャルメディア情報のユーザ行動変容に対する影響と情報拡散要因の明確化
 
科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想
科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想
科学技術イノベーション政策におけるBig-Dataの利活用促進 SPIAS: SciREX 政策形成インテリジェント支援システムの構想
 
半導体( 熊本).pptx
半導体( 熊本).pptx半導体( 熊本).pptx
半導体( 熊本).pptx
 
「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04
「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04
「事実にもとづく管理」によるソフトウェア品質の改善 ー ヒンシツ大学 Evening Talk #04
 
Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用
Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用
Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用
 
MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...
MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...
MultiRec: A Multi-Relational Approach for Unique Item Recommendation in Aucti...
 
超高速開発の基礎概念 20141119 0
超高速開発の基礎概念 20141119 0超高速開発の基礎概念 20141119 0
超高速開発の基礎概念 20141119 0
 
Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善
Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善
Qua s tom-メトリクスによるソフトウェアの品質把握と改善
 
組込みSW開発技術研究会キックオフミーティング
組込みSW開発技術研究会キックオフミーティング組込みSW開発技術研究会キックオフミーティング
組込みSW開発技術研究会キックオフミーティング
 
Paradigm shifts in QA for AI products
Paradigm shifts in QA for AI productsParadigm shifts in QA for AI products
Paradigm shifts in QA for AI products
 

20130830 Japan Auditing Association

Editor's Notes

  1. ・田口論文は、「AI時代の監査報酬を考える」というタイトルで、AIを用いた監査に係る「監査報酬」について、「社会の目」がどのように評価するか、またその理由はなにかを、サーベイにより定量的に分析している。 ・問題意識は2つある ・1つは、監査期待ギャップにもみられるように、「AI監査を社会の目がどのように捉えるか」を知ることが、今後の新しい監査のあり方を考える上でも重要であること ・2つ目は、AI投資のコストとベネフィットをきちんと見極めることが、今後の監査の進むべき方向を考える上でも重要であること
  2. ・既存研究との違いについて、 既存研究では、現実の財務指標などアーカイバルデータを用いて現状の監査報酬を実証的に説明しようというスタンスであるが、 これに対して 本研究では、人間の判断や意思決定に踏み込んで、しかも未来の監査報酬のあり方をエビデンスで語ろうとする点で異なる。 それを可能にするのが、サーベイや実験といった手法である。 ・ここでのリサーチクエスチョン(RQ)は、 「AI時代の監査報酬は、現状より高くなるべきか、低くなるべきか」 そしてそれを社会がどのように考えているのかという点にある。 ・仮説としては大きく4つあり、それぞれ図表に示されるとおりである。 この点は時間の関係から、あとの結果のところで詳しく述べる。
  3. デザインとしては、 先程のべた理由から、 今回はサーベイ調査をおこなっている。最終報告では、これをサーベイ実験に拡張したいと考えている。 特にここでは、一般的なアンケート調査ではなく、 海外ジャーナルの研究トレンドなどを加味して、 被験者に「AI陪審員」になりきってもらい、仮想シナリオを読み、 未来のAI陪審員として、 「AI時代の監査報酬は、現状より高くなるべきか否か」を7段階のリカート尺度で回答させている。 またあわせて、その「理由(これが4つの仮説とリンクしている)への同意度」を、同じくリカート尺度で回答させている。
  4. ここでは時間の関係、および中間報告であることから、主要な結果のみを報告する。 まず、メインの結果として 「社会の目」は、AIを利用していなかった時代と比べ、 統計的に1%水準で有意に 「AI時代の監査報酬は減少すべき」と考えていることがわかった。 これは、AI導入により、監査の品質が上がるから、監査報酬も当然上がるだろうという直感に反する帰結であった。
  5. またあわせて、その理由について、重回帰分析、主成分分析により分析を行っている。
  6. 細かな内容は時間の関係から省くが、 主成分分析の結果から どうやら「社会の目」は、 「AIは広く浅く、人間は狭く深く」業務を分担していくというイメー ジ (これを仮に、「A I広範・人間特化因子」と呼んでおく) を持ちつつも、しかし、 「報酬は時間で決まる」という 考え(これを仮に「時間の呪い因子」と呼んでおく)から、 監査時間が減少することを特に重視して かつ、それを 人間の役割の量的な意味での相対的低下として捉えている、ということがわかった。 特に後者の因子が、 社会の目が最終的に「AI時代の監査報酬は現在より低くなるべきである」と判断する背景にあることがわかった。
  7. 本研究は、未来の監査報酬のあり方について実施したサーベイの結果を報告した。 サーベイの結果、「社会の目」は、AI時代の監査報酬は、現在よりも低くなること が望ましいと考えていることが明らかにされた。 これは、AI監査により監査報酬が上がると期待される直感に反する意図せざる帰結である。 更に本稿での分析結果からすると、 「社会の目」の判断の背後には、特に「報酬は時間で決まる」という「時間の呪い因子」が強烈に効いていることが明らかになった。 最終報告に向けての課題は大きく2つ 第1は、監査法人にとって、AI監査に関する社会への効果的な情報発信の方法はなにかという点 第2は、多様なサンプルに向けて、被験者の拡張をおこなう点