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平成24年度普及指導員試験
     問17~



                3月4日 中嶋
問17

農林漁業の6次産業化に向けた政策的支援に関する次の記述のうち、最も不適
切なものを選びなさい。


ア 総合化事業計画では、農林漁業者と商工業者が連携し、農林水産物の生産、
加工、販売を一体的に行うことを要件としている。
イ 平成23(2011)年度に全都道府県に「6次産業化サポートセンター」が設置さ
れ、6次産業化プランナーが配置された。
ウ 農林漁業者の身近に存在する先導的な6次産業化の実践者を「ボランタリー・
プランナー」として農林水産大臣が任命し、サポート体制の充実が図られている。
エ 平成23(2011)年12月に、農林水産業界、産業界、金融、消費者、シンクタン
ク、研究等の多様な関係者の連携の場として「産業連携ネットワーク」が設立され
た。
オ 農林漁業者の多くは資本力が弱く、大型投資や異業種との連携の障害となっ
ている。
解17
H23白書P189~        正解「ア」
総合化事業計画の認定要件
①【事業主体】農林漁業者等が行うものであること

②【事業内容】次のいずれかを行うこと
ア)自らの生産等に係る農林水産物等をその不可欠な原材料として用いて行う新商品の開
発、生産又は需要の開拓(認定を受けようとする農林漁業者等がこれまでに行ったことのない
新商品の開発・生産)
イ)自らの生産等に係る農林水産物等について行う新たな販売の方式の導入又は販売の方
式の改善
(認定を受けようとする農林漁業者等がこれまでに用いたことのない新たな販売方式の導入)
ウ)ア又はイに掲げる措置を行うために必要な生産等の方式の改善

③【経営の改善】次の2つの指標の全てが満たされること
ア)対象商品の指標 農林水産物等及び新商品の売上高が5年間で5%以上増加すること
イ)事業主体の指標 農林漁業及び関連事業の所得が、事業開始時から終了時までに向上
し、終了年度は黒字となること

④【計画期間】 5年以内(3~5年が望ましい)
認定を受けた農業者は、6次産業化プランナーによる総合的なサポート、日本公庫等によ
る無利子資金(農業改良資金)の償還期限・据置期間の延長、低利の短期運転資金(新
スーパーS資金)の貸付け、新商品開発・販路開拓等に対する補助、加工・販売等施設整
備に対する補助等の支援措置を受けることができます。
問18


農業者戸別所得補償制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選びなさい。


ア 農業者戸別所得補償制度は平成22(2010)年度には「モデル対策」として行わ
れ、平成23(2011)年度から本格実施された。
イ 畑作物の所得補償交付金の対象作物は、麦、大豆、てんさい、でん粉原料用ば
れいしょ、そば、なたねに限られる。
ウ 水田活用の所得補償交付金の対象作物は、米粉用米、飼料用米、WCS用稲、
加工用米に限られる。
エ 米に対する助成には、米の所得補償交付金と米価変動補填交付金がある。

オ 各種加算措置には品質加算、規模拡大加算、再生利用加算、緑肥輪作加算、
集落営農の法人化支援がある。
解18
                  正解「ウ」
H23白書p.181~
戦略作物は主食用米に比べて収益性が低く、作付けの拡大が進まない要因となっ
ています。
水田活用の所得補償交付金は、このような状況を踏まえ、水田で麦、大豆、米粉用
米、飼料用米等の戦略作物を生産する農業者に対して、主食用米並みの所得を確
保し得る水準の交付金を「面積払」で直接交付するものです


  米価変動補填交付金
   米の所得補償交付金の支払いを受けた農業者に対して、「当年産の販売価格」
   が「標準的な価格」を下回った場合、その差額分を米価変動補塡交付金(10a 当
   たりの単価)として直接交付します。



民主党から自民党への政権交代に伴い、平成25年度(2013年度)は農業政策として、
経営所得安定対策が推進されることとなっている。
問19


農業生産基盤に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選びなさい。


ア 平成22(2010)年の水田の整備状況をみると、30a程度以上の区画に整備済みの
田は、水田面積の6割を占めている。
イ 平成22(2010)年3月現在、1ha程度以上の区画に整備された水田は増加してい
るが、水田面積の1割に達しない。
ウ 基幹的農業水利施設の多くは、老朽化が急速に進行しているため、ストックマネ
ジメントによる戦略的保全管理の取組が導入されている。
エ 水田の汎用化等による農地の有効利用を図るため、区画整理や暗きょ排水等の
整備により排水条件を改善することで、水田での畑作が可能となる。
オ 土地改良法では、10年おきに土地改良長期計画を立てることが規定されており、
新たな土地改良長期計画では、市場メカニズムの活用を積極的に行うことを政策目
標としている。
解19
                  正解「オ」
H23白書p.235~
ア ○ (p.235)

イ ○ 1ha程度以上の区画に整備された水田は全体の8%程度(p.237)
ウ ○ ストックマネジメント=農業水利施設に深刻な機能低下が発生する前に、施
設の機能診断に基づく必要な補修・補強等の予防保全対策を実施し、施設のライフ
サイクルコスト(建設・維持管理等に必要なすべての費用)の低減を図る(p.239)

エ ○ 基本計画においては、「水田の有効活用による麦・大豆の生産拡大を実現
する農地の排水対策を重点的に推進するとともに、地下水位制御システム等の新た
な技術の導入を推進する」としています(p.238)
オ ✕ 5年間を1期として土地改良長期計画を立て、土地改良事業の実施の目標
及び事業量を定めることとしています(p.241)。
問20

平成24(2012)年3月、農林水産省は早急に生産現場への普及を推進する必要
があるものとして選定した「農業新技術2012」を発表した。その技術名と技術の
概要に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選びなさい。
        技術名                  技術の概要
ア 農地の排水性を改良する低コ   たい肥・作物残さを心土に投入し、排水性や通気性、
  ストな補助暗きょ工法      保水性を改善する。この技術は、土塊の持ち上げ、有
                  機資材の投入、埋め戻しの3工程を1度に作業するも
                  のである。
イ 操作しやすく、果樹の管理作 小回りがきいて樹間・樹列間の走行が可能で、14°の
  業の安全性を高めた高所作業 傾斜でも作業台が水平であり、軽トラックにも積むこと
  台車              ができる。
ウ トンネルと枝ダクトを組み合わ 株元にトンネルを設置し、トンネル加温用枝ダクトに温
  せた促成なすの低コスト株元   風を通して株元部を直接加温することによって、収量
  加温栽培技術          を落とすことなくハウス内設定温度を下げることができ
                  る。
エ トルコギキョウの低コスト冬季計 生育初期重点施肥、大苗定植の導入、電照による長
  画生産技術           日処理、高昼温・低夜温管理を行うことによって暖房用
                  燃料を削減しても冬季安定生産が可能となる。
オ 酪農の経営改善に貢献する泌 泌乳前期の乳量が急激に高まるように改良し、ピーク
  乳持続性の高い乳用牛への    乳量を高めることによって高泌乳の期間を従来より長く
  改良              保つことのできる牛群に改良する。
解20
                    正解「オ」
・生産コスト低減を支援する技術

酪農の経営改善に貢献する泌乳持続性※の高い乳用牛への改良
泌乳持続性を改良することで、体調を崩しにくく、生産性の高い乳牛をつくり、酪農の収益性を
向上します。※ :分娩後30~40日の泌乳ピーク以降の泌乳量の減少の程度をいう。

トルコギキョウの低コスト冬季計画生産技術
生育初期の重点施肥、大苗定植、電照・温度管理を組み合わせ、切り花品質を確保できる低コ
スト冬季栽培体系です。

トンネルと枝ダクトを組み合わせた促成なすの低コスト株元加温栽培技術
安価な資材を用いて促成栽培の暖房コストを大幅に削減することができる局所加温技術です。

・作業の省力・軽労化を推進する技術

操作しやすく、果樹の管理作業の安全性を高めた高所作業台車
高齢者や女性にも操作が簡単で、水平制御機能の搭載により果樹の管理作業の安全性が向
上した高所作業台車です。

・収量増加と品質の向上のための技術

農地の排水性を改良する低コストな補助暗きょ工法
たい肥等の有機物を簡易に心土に投入することで、生産性の高い土壌に改良する低コスト工法
(カッティングソイラ工法)です。
                  http://www.s.affrc.go.jp/docs/new_technology.htm
問21

次の文章は、植物の生育について述べたものである。
[ ]内に当てはまる最も適切な語句の組合せを選びなさい。

植物はエネルギーを太陽の光から得られる点で、動物と大きく異なっている。植物
は、太陽の光エネルギーを利用して、根から吸収した水と、葉から取り込んだ二酸化
炭素とから、光合成によって[ i ]を作り出すことができるからである。こうして作り出し
た[ i ]から、植物は水と一緒に吸収した[ ii ]などを使って、生育に必要なタンパク質
や脂肪、核酸などの様々な成分を合成する。つまり、植物は光エネルギーを[ iii ]に
変えることができる特徴を持っている。

             i        ii        iii

      ア    無機化合物    有機養分     熱エネルギー
      イ    有機化合物    無機養分    化学エネルギー
      ウ    無機化合物    無機養分     熱エネルギー
      エ    有機化合物    有機養分    化学エネルギー
      オ    有機化合物    無機養分     熱エネルギー
解21
      正解「イ」

          植物はエネルギーを太陽の光から
          得られる点で、動物と大きく異なっ
          ている。
          植物は、太陽の光エネルギーを利
          用して、根から吸収した水と、葉から
          取り込んだ二酸化炭素とから、光合
          成によって有機化合物を作り出すこ
          とができるからである。
          こうして作り出した有機化合物から、
          植物は水と一緒に吸収した無機養
          分などを使って、生育に必要なタン
          パク質や脂肪、核酸などの様々な
          成分を合成する。
          つまり、植物は光エネルギーを化学
          エネルギーに変えることができる特
          徴を持っている。
問22


家畜・家禽の生理に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選びなさい。


ア 鶏には汗腺がないため、乾球温度と湿球温度から計算される体感温度では、湿
球温度の重み付けが牛や豚に比べて小さい。

イ 乳牛では、暑熱時には発汗、脱毛、よだれなどの増加によってミネラル排せつ量
が増加するため、ミネラル要求量は適温時より高まる。

ウ 鶏は歯がないが、食道にそ嚢が発達し、筋胃と呼ばれる胃袋には小石や砂をた
くわえていて、食べた飼料を強い力ですりつぶして消化を促す。

エ 豚は人間と似た構造の胃を持つ単胃動物であるため、草などの繊維は全く消化
できない。

オ 牛などの反すう動物では、アンモニアや尿素などの非タンパク態窒素でも第1胃
内で微生物により微生物タンパク質として合成されるため、これらも反すう家畜の栄
養に貢献する。
解22
                正解「エ」
ア 牛の場合の計算式は、体感温度=0.35×乾球温度+0.65×湿球温度 で求
められます。(豚、鶏の場合のも探しておきます)
イ カリ、ナトリウム、カリウム等を適温時の10%増し位で給与します。重曹を与える
のも有効。
ウ 筋胃とは焼き鳥でお馴染みの「砂肝」のこと。砂がいっぱい入ってるから砂肝。
歯の代わりにこの砂を使って食物をすり潰しています。鶏の消化管の解説は→
http://toriz.info/birds_kikan_syouka.html
エ 間違い。
単胃動物は自身のもつ消化酵素では繊維分(セルロースやヘミセルロース)を分解
できませんが、大腸(豚では特に盲腸)にいる微生物により繊維分を発酵(消化)し
ています。発酵によって繊維分から生成される短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、
酪酸など)は大腸の上皮から吸収され、エネルギー源として利用されます。
オ 反芻動物(牛、山羊、羊など)には胃が4つあり、口の方から順番に第1胃~第
4胃と呼びます。人や豚に相当する(自ら消化酵素を分泌する)のは第4胃。第1胃
はルーメンと呼ばれる巨大な発酵タンクで、そこに存在するルーメン微生物によっ
て繊維分を発酵(消化)することができます。ちなみに、反芻とは、ルーメン微生物
に発酵され易いよう、第1・2胃内の飼料を口腔内に吐き戻して咀嚼し、再び飲み込
むことを意味します。
問23


植物の組織培養に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選びなさい。


ア 茎頂培養では茎先端の分裂組織を植物体から分離し、培地上で培養して植物体
を育成する。
イ 器官培養では葉・茎・根・花などの器官の一部を切り取って培養するが、植物体の
育成、増殖及び育種が目的である。
ウ 葯培養では花粉からカルスあるいは不定胚を経由して2倍体の植物を再生し、染
色体を半数化して半数体の植物を育成する。
エ 胚培養では、交雑育種の過程で受精胚の退化のために種子が得られない遠縁
交雑の場合に、未熟胚を培養して植物体を育成する。
オ 細胞培養の一つに、細胞壁を酵素で消化して作出するプロトプラストの培養があ
る。
解23
                正解「ウ」




葯培養では葯の中の花粉細胞を培養して半数体へと成長させるか、倍数体へと成長させま
す。倍数体へと成長させた場合、必然的にホモ接合体になるので育種の年限を短縮すること
が出来ます。

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